井口健二のOn the Production
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2011年01月30日(日) 市民ポリス69、神々と男たち、ブルーバレンタイン、トゥルー・グリット、悲しみのミルク、アトムの足音が聞こえる+ニュース

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『市民ポリス69』
2008年11月紹介『特命係長・只野仁』などの柳沢みきお原作
マンガからの映画化。元つかこうへい劇団のベテラン脇役・
酒井敏也が映画初主演を飾っている作品。
東京の犯罪発生率が現在の数倍になった時代。その対策に苦
慮した東京都は、主に軽犯罪を取り締まる目的で善良な都民
100人を強制的に選び、彼らに一カ月の限定で警察官の権限
を与える「市民ポリス」制度を発足させた。
ただし、貸与されるのは身分証明兼身元を隠し用のナンバー
の付いたマスクと麻酔銃のみ。しかも緊縮財政のおりからか
報酬は微々たるもので、負傷しても治療費も出ない。そして
30日間を無事に満了すると精巧なスカイツリーの模型が貰え
る仕組みだ。
そんな市民ポリスに選ばれた気弱な宅配便の運転手が、最初
はただ30日間を無事に過ごすために犯罪を目撃しても見て見
ぬ振りをしていたが、やがて権力行使の快感を知り、徐々に
重大犯罪に手を染めて行くようになる…というお話。
アイデアは「裁判員制度」の流れなのかな、正にお上の思い
付きが市民に迷惑を与える…そんな典型のような話だ。しか
も一般人が犯罪に触れることで、その心理に多大な影響を与
えて行く、そんな恐ろしさも描かれている。
とは言うものの本作は、主演者の配役からも判るようにコメ
ディタッチの作品で、いろいろなギャグを取り混ぜながら物
語は進んで行く。そしてそこには「市民ポリス」制度に反対
する市民運動家なども登場する。

共演は、プロデューサーも兼ねる桐生コウジ、他に女性アイ
ドルグループ「ももいろクローバー」の早見あかり。そして
清水章吾、津田寛治、原紗央莉。さらに佐藤二郎、錦野旦、
山本浩司、つぶやきシローらが脇を固めている。
監督は、2008年『GSワンダーランド』などの本田隆一。監
督が脚本と編集も兼ねた前作はテレビで鑑賞して感心した作
品の1本だった。そんな感覚から本作にも期待を持って観に
行ったものだ。
でもその期待とはちょっと違ったかな。それは簡単に言えば
テンポがいま一つで、これは恐らくは主演者のテンポに合わ
せてしまったところもあるのだろうが、そこに何か一工夫が
欲しかったところだ。
脚本にテンポ付けるのも監督の仕事だと思うし、前作にはそ
れなりのテンポがあったと思うので、監督にはその辺のとこ
ろを期待したいものだ。


『神々と男たち』“Des hommes et des dieux”
昨年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、東京国際映画祭
WORLD CINEMA部門で上映された作品が一般公開されることに
なり、改めて試写が行われた。
1996年アルジェリアで起きた事件に基づく。以前はフランス
国内の扱いだった時もあるアルジェリアには多くのキリスト
教修道院が存在し、彼らは農業や医療などの普及にも務め、
それぞれが周囲に暮すアラブ人住民の支えになっていた。
そこにはイスラム教徒も多く存在したが、修道僧たちもコー
ランを研究し、互いの存在を認めあっての暮しが長く成立し
ていたものだった。ところがそこにイスラム原理主義が台頭
してくる。
そして武装イスラム集団がテロ活動を開始し、爆破テロなど
でアルジェリア国内の世情が混乱し始めても、修道僧たちは
周囲の住民たちと共に生きることを「御主」の意志として、
フランス政府の帰国命令も無視して生活を続けていた。
そんな状況下で、武装イスラム集団の中には修道僧たちの考
えを理解し、その立場を尊重するグループもあったが…
事件は現実のものだからその結末なども変わるところはない
が、その事件の推移自体は謎が多く残っているそうだ。その
部分は別として、物語はその事件に立ち向かった修道僧たち
の宗教への思いを強く謳い上げたものになっている。
それは、繰り替えし登場する敬虔なチャントのシーンなどが
見事に描き出しており、その男声チャントを聞くだけでも価
値のある作品とも言える。もちろんそこは宗教の頑迷さにも
繋がるが、それは言っても仕方のないこと、ストーリーは実
話に基づくものだ。

出演は、2003年紹介『マトリックス』2作や2003年12月紹介
『タイムライン』などにも出演のランベール・ウィルスン、
1979年『007/ムーンレイカー』で悪役を演じたマイクル
・ロンズデール、昨年11月紹介『君を想って海をゆく』に出
演のオリヴィエ・ラブダン他。
脚本と監督は、俳優としてジャック・ドワイヨン監督1996年
『ポネット』で主人公のお父さんを演じていたグザヴィエ・
ボーヴォワ。監督としては5作目の作品になっている。

『ブルーバレンタイン』“Blue Valentine”
ライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズの2人が、
揃ってゴールデン・グローブ賞ドラマ部門の主演賞にノミネ
ートされた作品。
2人が演じるのは、関係がちょっとぎくしゃくしている感じ
の若い夫婦。郊外に建つ一軒家に幼子と住む夫婦の妻は看護
師として少し離れた病院で働いているが、夫は家の壁の塗り
替えなどに余念がなく、職に就いている様子がない。
そんな一家にちょっとした事件が起き、夫婦は子供を妻の実
家に預けて2人だけの時間を過ごすことになる。そしてその
2人だけの時間に並行して、2人の出会いの時の様子が描か
れて行く。
それは、大学で医学を学んでいた女性と、高校も中退で引っ
越し業者の手伝いをしていた男性の物語。そんな2人がどの
ようにして出会い結婚したか。そして今の2人の関係は…そ
んな切ない物語が展開されて行く。
僕自身が結婚して30年以上も過ぎてみると、こんな事ってあ
ったよな〜、そんな感じの物語が展開される。実際に映画の
中には正に僕の実体験そのままのようなエピソードも描かれ
ていた。
でもそれを克服して結婚生活を続けられたか否か、その境目
は僕自身が何処にあったのかも判らない。ちょっとした言葉
の違いが事を大きくしたり、収束させたり、そんな人生の機
微のようなものが描かれていた。
映画を観ていて、僕には男性の方に非が多いようにも感じた
が、観る人に拠っては違う意見もあることだろう。そんな結
論の出ない…出せない物語。若い人にはこれからの人生の参
考に、年寄りには人生の回顧の切っ掛けとして観るとよい作
品だ。

共演は、共に2006年の4月紹介『迷い婚』と5月紹介『ポセ
イドン』、それに2008年『クローバーフィールド』などに出
演のマイク・ヴォーゲル。また、夫妻の1人娘を演じたフェ
イス・ウラディカは2004年生まれ、アメリカではCM界の人
気者だそうだ。
脚本と監督はデレク・シアンフランス。1997年23歳の時に発
表した作品が6つの国際映画祭で受賞するなどしたものの、
その後はドキュメンタリーに進んでいた監督が、11年間温め
てきた作品とのことだ。
それから、劇中に「未来」があることも監督の拘わりだった
ことにエンドクレジットを観ていて気付いた。その「未来」
が何を示しているかは、観る者の感性に委ねられているもの
だが、僕は明るい未来を信じたくなった。


『トゥルー・グリット』“True Grit”
前回も『シリアスマン』を紹介したイーサン&ジョエル・コ
ーエン兄弟監督の最新作で、先日発表されたアカデミー賞の
ノミネーションでは、作品、監督、主演男優、助演女優を含
む10部門に選ばれている。
1968年に発表されたチャールズ・ポーティス原作の西部劇小
説に基づく。同じ原作からは1969年にもヘンリー・ハサウェ
イ監督、ジョン・ウェイン、キム・ダービーの主演で映画化
(邦題:勇気ある追跡)があり、同作はウェインに初のオス
カーを齎している。
14歳の少女が殺された父親の仇を撃つため、インディアン居
留地に逃げ込んだならず者を追跡しようとする。しかし彼女
だけではどうにもならず、やむなく「真の勇気」を持つと見
込んだ1人のシェリフに同行を求めるが…
その旅には同じならず者を追うテキサスレンジャーの男も加
わって、3人は危険に満ちた荒野の中をそれぞれの目的に向
かって進んで行く。そこには信頼や友情も生まれるが、その
一方で意見の違いも存在することになる。

1969年の映画化は当時西部劇が斜陽の中での作品で、僕自身
も公開当時に観てはいるが、あまりピンと来なかったと記憶
している。それでもウェインが受賞したのは功労賞的な意味
があると当時も言われたものだ。
その作品のリメイクとなるが、コーエン兄弟はこれはリメイ
クではなく原作の再映画化と称しており、実際に兄弟は幼い
頃から原作小説を読み耽って、何時かは自分たちで映画化し
たいと思っていたのだそうだ。
従って本作は、1969年版以上に原作に忠実なものになってお
り、登場人物の台詞の多くも原作のままのものが採用されて
いるとのことだ。そしてその作品は、登場キャラクターたち
の人間関係を豊かに描いた作品にもなっていた。
さらに本作は、コーエン兄弟初の本格西部劇ということにも
なっている。因に2年前のオスカー受賞作も西部を舞台にし
ていたが、あれは現代劇だったとのこと。本作ではコーエン
兄弟が新たな道に歩み出した作品とも言われている。
出演は、シェリフ役に昨年12月紹介『トロン/レガシー』の
ジェフ・ブリッジス、テキサスレンジャー役に2009年12月紹
介『インビクタス』のマット・デイモン、そして語り手でも
ある少女役に全米規模のオーディションで選ばれたヘイリー
・スタインフェルド。
なおオスカー助演賞候補にも挙がっているスタインフェルド
は、撮影時に実際に14歳だったようだ。
他に2008年3月紹介『ノー・カントリー』でもコーエン兄弟
と組んでいるジョッシュ・ブローリン、2005年12月紹介『メ
ルキアデス・エスラーダの3度の埋葬』などに出演のバリー
・ペッパーらが脇を固めている。

『悲しみのミルク』“La teta asustada”
2009年のベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞と国際批評家
連盟賞をW受賞し、昨年のアカデミー賞外国語映画部門にも
ノミネートされた2008年製作のペルー映画。
1980年代のペルーを混乱と恐怖に陥れた武装集団「センデロ
・ルミノソ」。その武力闘争の中で行われた集団レイプなど
の悪魔的な行為によって精神的に深く傷つけられた人々。そ
んな暗い歴史の影を背負って生きる女性の物語。
ベッドの中で衰弱した女性が歌っている。それは目の前で夫
を殺され、レイプされた自身の経験を即興で歌っているもの
だった。その歌に女性の娘である主人公も加わり、2人の心
が通じあったところで母親は事切れる。
ペルーの首都リマの郊外の高台に位置するスラム地区。そこ
で主人公と母親は、叔父の家に身を寄せて暮していた。そし
て母親が亡くなった今、主人公はその遺体を故郷の村に埋葬
したかったが、我が子の結婚を控える叔父にはその費用を出
す余裕がなかった。
そこで主人公は自らの手でその費用を捻出しようとするのだ
が、主人公には母親が恐怖の中で授乳したことによる「恐乳
病」と呼ばれる病があり、それにより引き継いだ母親の恐怖
から逃れることが出来なかった。それは医者からは病気では
ないと言われていたが…
「南米のポル・ポト」とも呼ばれた赤色集団。その恐怖の時
代を生きた人々の心の傷は余りにも深い。それはアンデス系
先住民「ケチュア」の人々には特に深いもので、彼らは即興
の歌の中にその悲しみを表わし続けている。
その一方でこの作品は、彼らの明るく踊り歌う婚礼の儀式の
様子なども描くが、さらに彼らを搾取する、扉1枚を隔てた
豪邸に住む富裕な白人の存在なども描き出している。

脚本と監督は、1974年にリマで生まれ、1990年代後半にスペ
インのマドリッドに移住し、現地の映画学校で脚本を学んだ
後、ニューヨーク大学の映画科で監督術の勉強をしたという
クラウディア・リョサ。
叔父には映画監督ルイス・リョサや、1990年の大統領選挙を
フジモリと争った政治家であり、2010年ノーベル文学賞に輝
いた南米を代表する反骨の文学者マリオ・バルガス・リョサ
もいるという一族の才媛が、その第2作とした作品だ。
出演は、監督の第1作にエキストラとして出演し見出された
というマガリ・ソリエル。映画はミュージカルかと思うよう
な歌唱の連続で始まるが、それら歌のほとんどはソリエルが
実際に即興で歌っているものだそうだ。
そんな歌を愛する人々が悲しみの縁に沈んでいる。ここにも
僕らの知らない世界が存在しているようだ。

『アトムの足音が聞こえる』
2007年9月に『コンナオトナノオンナノコ』を紹介している
富永昌敬監督が、サウンド・クリエーター大野松雄氏の姿を
追ったドキュメンタリー。
大野氏は1930年東京の神田生まれ。文学座の研究生としてこ
の世界に入るが、それは役者を目指したからではなく、単に
「大学生が勉強を嫌になったから」とのこと、そして舞台美
術などの裏方をするが、やがてNHK効果団に入局する。
そこで当時ドイツで生まれたばかりの電子音楽に巡り会い、
1年ぐらいでNHKを退局、フリーの音響技師として何本か
の実験映画に関った後、1963年に始まった『鉄腕アトム』の
音響効果を手掛けることになる。
その後は東京の青山にスタジオを構え、そこは若手芸術家の
溜まり場ともなって行くが、ある日突然姿を消したという。
それは資産を騙し取られて借金取りに追われていたなどの話
も語られるが、本作ではその理由は追求していない。
そんな大野氏はその後は関西にいて、実はそれ以前から関っ
ていたある活動の継続に尽力していた。それは滋賀県に在る
知的障害者施設の発表会での音響の提供だった。
そして本作では、2009年東京国際アニメフェアでの功労賞受
賞の報告や、同年草月ホールで行われたライヴ公演の様子な
どが記録されている。

試写の後で宣伝の人から監督の名前で観に来たのですかと聞
かれて、「いえいえアトムの足音です」と答えてしまった。
それほどにあの足音は印象に残っていたものだし、実際に大
野氏の名前も、多分SFサウンドに詳しい友人の情報などか
ら記憶に在ったものだ。
でもその大野氏の実際の姿は全く知らなかったし、氏が現在
も行っている素晴らしい活動のことなどは全く考え及びもし
なかった。本作は、そんな素晴らしい人物の業績を知るだけ
でも満足できる作品と言えるものだ。
また本作では、大野氏が若いサウンド・クリエーターたちと
交歓する姿なども描かれており、その中で実演される「アト
ムの足音」の誕生の原理などは、僕自身が多少は音響技術を
噛ったものとして興味深く観ることが出来た。
因に富永監督の上記の作品では、劇中に挿入されたドキュメ
ンタリー的なシーンに感心したことを紹介文でも述べていた
が、本作でその資質は充分に活かされていたようだ。
        *         *
 今回のニュースは、25日発表されたアメリカアカデミー賞
のノミネーションで、まず10本の作品賞には、『ブラック・
スワン』“The Fighter”『インセプション』『キッズ・オ
ールライト』『英国王のスピーチ』“127 Hours”『ソーシ
ャル・ネットワーク』『トイ・ストーリー3』『トゥルー・
グリット』『ウィンターズ・ボーン』が選ばれた。
 一方、気になるVFX賞候補は、『アリス・イン・ワンダ
ーランド』『ハリー・ポッターと死の秘宝Part 1』『ヒアア
フター』『インセプション』『アイアンマン2』の5本で、
9日付で報告した予備候補からは“Scott Pilgrim vs. The
World”と『トロン/レガシー』が落選となった。でもまあ
これは、前回に紹介したVES賞の候補と見比べるとこんな
ものかな…という感じだ。
 以下は、このページで取り上げた作品別に紹介すると、
 1月2日紹介『英国王のスピーチ』が作品、監督、脚本、
主演男優、助演男優、助演女優、美術、撮影、衣裳、編集、
音楽、録音の12部門で最多候補。
 今回紹介『トゥルー・グリット』が作品、監督、脚色、主
演男優、助演女優、美術、撮影、衣裳、録音、音響編集の10
部門。
 7月11日紹介『インセプション』が作品、脚本、美術、撮
影、音楽、録音、音響編集、VFXの8部門。
 10月17日紹介『ソーシャル・ネットワーク』も、作品、監
督、脚色、主演男優、撮影、編集、音楽、録音の8部門。
 前回紹介『ブラック・スワン』が作品、監督、主演女優、
撮影、編集の5部門。
 6月27日紹介『トイ・ストーリー3』も、作品、長編アニ
メーション、脚色、歌曲、音響編集の5部門。
 次回紹介予定『キッズ・オールライト』が作品、脚本、主
演女優、助演男優の4部門。
 11月2日付「東京国際映画祭<コンペティション以外>」
で紹介の『ウィンターズ・ボーン』も、作品、脚色、主演女
優、助演男優の4部門。
 3月21日紹介『アリス・イン・ワンダーランド』が美術、
衣裳、VFXの3部門。
 11月14日紹介『ハリー・ポッターと死の秘宝Part 1』が美
術、VFXの2部門。
 さらに、今回紹介『ブルー・バレンタイン』が主演女優、
『トイ・ストーリー3』に併映『デイ&ナイト』が短編アニ
メーション、11月21日紹介『ヒアアフター』がVFX、7月
25日紹介『ソルト』が録音、1月16日紹介『塔の上のラプン
ツェル』が歌曲、11月7日紹介『ザ・タウン』が助演男優、
12月12日紹介『トロン/レガシー』が音響編集、2月21日紹
介『ウルフマン』がメイクアップの各部門の候補になってい
る。
 このページで取り上げた作品では、候補になった部門がそ
こそこ散けているようだが、特に今年はどれも気に入ってい
るので、出来るだけ多くの作品に受賞して貰いたいものだ。
 因に、『トイ・ストーリー3』のアニメーション作品によ
る作品賞候補は、1991年の『美女と野獣』、昨年の『カール
じいさんの空飛ぶ家』に続くもので、昨年から作品賞候補が
10本に拡大されて2年連続となっている。
 その『トイ・ストーリー3』が、脚本賞ではなく脚色賞の
候補というのはちょっと意外だったが、紹介を観るとジョン
・ラセターらのストーリーに基づくとされているもので、こ
れだとオリジナルシリーズの続編は脚色ということになるの
かな。
 それから、日本では映画祭でのみ上映された『ウィンター
ズ・ボーン』は、実はアメリカでも映画祭の他は限定上映の
みという作品で、このような作品が4部門での候補というの
も見事なものだ。この4部門は強敵が多いが、昨年の東京国
際映画祭では一番気に入った作品でもあったので、これを機
会に日本での一般公開も期待したい。
        *         *
 最後に製作ニュースをちょっとだけ。
 2012年7月20日公開予定の“The Dark Knight Rises”に
新登場するキャットウーマンの配役に、アン・ハサウェイの
出演が発表された。この役柄は以前の映画化ではミシェル・
ファイファーやハリー・ベリーなども演じたものだが、今回
はどんな魅力でバットマンを誘惑してくれるのだろうか。
 一方、ディズニーからは当初2012年6月8日と発表されて
いた“John Carter of Mars”の全米公開期日が、3月9日
に繰り上げになった。この期日は過去には2007年『300』
などアクション物の成功を生み出した期間とされており、本
作にもそのような期待が持たれているようだ。
 それから2012年12月公開予定の“The Hobbit”に関して、
ピーター・ジャクスン監督が緊急手術を受けたとのこと。病
名は胃穿孔で手術は問題なく成功したが、撮影開始は公開に
影響ない程度で少し遅れるようだ。



2011年01月23日(日) ピュ〜ぴる、シリアスマン、お家をさがそう、ランウェイ☆ビート、ヨギ&ブーブー、四つのいのち、ブラック・スワン+ニュース

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『ピュ〜ぴる』
洋裁やニットのコスチューム作品及びそれを着てのパフォー
マンスなどで評価されている「ピュ〜ぴる」というアーティ
ストの姿を、2001年から2008年まで8年間に渡って撮影し、
2010年に発表されたドキュメンタリー作品。
監督・撮影・編集は、2001年の映画『ウォーターボーイズ』
などに俳優として参加していた松永大司。因に松永は、監督
としては2008年『蛇にピアス』のメイキング作品なども手掛
けているようだ。
元々クラブで遊び仲間だった監督が、アーティストから「自
分の生き様を撮って欲しい」と頼まれたのが始まりだったそ
うだ。そこで友人からヴィデオカメラを借りて撮影を開始す
るが、最初は撮る目的も撮り方も判らないままだった。
それが撮影開始から1年ほどして作品として完成させようと
思い立つ。ところがこの撮影には終りがないと気付き、そこ
で全体を2部作と考えてその第1部として完成されたのがこ
の作品。従って撮影は今も続けられているとのことだ。
という経緯は後でプレス資料を見て知った情報だが、確かに
試写を観ているとその経緯が判る作品だった。特に作品の前
半では、アーティストを写すのか作品を写すのかも明確でな
く、焦点ずれなどの技術的な問題も含めて「何だこりゃ」と
いう感じだった。
ところが映画が後半になり、アーティスト本人に焦点が絞ら
れてくると、それは一転してアーティストの魂の叫びを写し
取っているような衝撃的な作品になってくる。そこには正に
1人の人間の姿が描かれているものだ。
ただしそこに描かれている事柄自体は、僕自身の感性として
理解できるものではないが、アーティストであるピュ〜ぴる
自身の思いがそこに繋がったことに疑問は感じないし、その
決断の結果には反論の余地がない感じがした。
それにこの作品では、ピュ〜ぴるの存在を認めてそれを支援
する周囲の人たち(家族や監督を含む)の関係が暖かくて、
それは観ていて気持ちの良い作品だった。そのピュ〜ぴるが
これからどのように進化するのか、それも観てみたい感じが
したものだ。


『シリアスマン』“A Serious Man”
昨年のアカデミー賞では作品賞と脚本賞の2部門にノミネー
トされ、National Board of Review選出の脚本賞などを受賞
したコーエン兄弟監督の作品。
時代は1967年。舞台はアメリカ中西部ミネソタ州ミネアポリ
ス郊外の住宅地。主人公は、地元の大学で物理学を教えてい
る男性。2週間後に迫った息子のユダヤ教の成人式だけが気
掛かりだったごく平凡な主人公の日常が、ある日突然狂い始
める。
それは学内での成績を巡る問題や、主人公の家に居候してい
る無職の兄、家族や隣人や、頼んでもいないレコードクラブ
からの代金の督促に、さらにはコミュニティの中心であるユ
ダヤ教のラビまで、とにかくありとあらゆるトラブルが主人
公に降りかかる。
因に映画では、最初にユダヤの伝説という感じのシーンがス
タンダードの画面で描かれており、そこに暗示された不幸の
連鎖が主人公に襲い掛かっているのかな。でもそれは主人公
に提示されている訳でもなく、とにかく唯々不幸になり続け
る。しかもその結末は…
いやはや、元々不条理好きのコーエン兄弟だが、2008年3月
紹介『ノーカントリー』でオスカーの作品、監督、脚本賞を
トリプル受賞した後、2009年1月紹介『バーン・アフター・
リーディング』を挟んで描いた本作は、正にその極致を行く
ものになっていた。
それでまあ、その意味などはあまり深く追求しても仕方のな
いもののようで、とにかくこの不条理なトラブルに巻き込ま
れた男性の、他人から観れば滑稽な姿を面白く観ていれば良
いだけのもののようだ。
ただその中で、主人公が授業で黒板に書き記す板書や、兄が
手帳に描いている記述などは、これは一体何なんだと言いた
くなるほど詳細に作られているもので、それもまたその度に
「へえ〜」と言いながら観てればいいのかな。でもそれなり
に楽しめたものだ。

出演は、2008年10月紹介『ワールド・オブ・ライズ』に出て
いたというマイクル・スタールバーグ、1994年『スターゲイ
ト』に出ていたというリチャード・カインド、ウディ・アレ
ン作品に常連だったというフレッド・メラメッド。
さらに、2005年2月紹介『最後の恋のはじめ方』に出ていた
というアダム・アーキン、また映画は初出演のサリ・レニッ
ク、アーロン・ウルフ、ジェシカ・マクマヌス。つまりほと
んどが無名と言っていい俳優たちだが、この不条理劇にはそ
れが填っていたようだ。


『お家をさがそう』“Away We Go”
1999年の映画デビュー作『アメリカン・ビューティー』で、
いきなりアカデミー監督賞を受賞したサム・メンデス監督に
よる2009年の作品。
主人公は、結婚はしていないが仲睦まじく愛し合っているカ
ップル。その女性が想定外の妊娠をし、2人はコロラドに住
む男性の両親の家の近くで出産の準備を始める。ところがそ
の両親が突然ベルギーに引っ越すと言い出し、2人は困惑す
る。
そこで2人は、全米からカナダまでの各地に住む親戚や知人
の家を訪ね歩き、出産と生まれて来る子供のために良い環境
を求めることにするのだが…。果たして2人は理想の環境を
見付けることができるのか?
舞台はコロラドからアリゾナ州のフェニックス、ツーソン、
ウィスコンシン州のマディスン、カナダのモントリオール、
フロリダ州のマイアミ、そしてサウスカロライナ。移動手段
もレンタカーから鉄道、飛行機と様々に乗り換えて旅の様子
が描かれる。
それは理想の環境を求めての旅だが、その一方でアメリカの
家族事情や社会の状況など、アメリカが抱えるいろいろな問
題も描いて行く。それはちょっと嫌味な部分もあるけれど、
それらを主人公2人が互いの愛情で乗り切って行く姿は心暖
まるものだ。

主演は、昨年1月紹介『恋するベーカリー』などのジョン・
クラシンスキーと、2000年から7年間「サタデー・ナイト・
ライヴ」のレギュラーを務めたというマーヤ・ルドルフ。因
に2人は、『シュレック3』のランスロット役と髪長姫役で
も共演していたそうだ。
さらに、ジェフ・ダニエルス、キャサリン・オハラ、ポール
・シュナイダー、メラニー・リンスキー、クリス・メッシー
ナ、マギー・ギレンホールらが脇を固めている。中でもギレ
ンホールのエピソードは強烈で、考えさせられた。
なお、前回紹介したようにメンデス監督には、次回作“Bond
23”が今年後半に撮影開始と発表されているものだが、こん
な素敵な作品を作る監督が一体どんなジェームズ・ボンドを
生み出すか、興味津々という感じだ。

『ランウェイ☆ビート』
2008年12月紹介『カフーを待ちわびて』などの原田マハ原作
の映画化。その映画化に『おくりびと』の製作者と『ソラニ
ン』の脚本家、そして『NANA』の監督が顔を揃えた。
主人公は東京の下町月島の高校に通う女子生徒。ある日、怪
我で入院した母親を見舞いに行って1人の若者と巡り会う。
難病で入院中の妹を見舞いに来ていたその若者は、奇抜なフ
ァッションを見事に着こなしていた。
そしてその翌日、彼女のクラスにその若者が転校生として入
ってくる。その若者は大手アパレルメーカーの社長の息子だ
ったが、その父親とは疎遠で、長らく祖父の許で暮らしてき
た。しかし妹の病気のこともあって東京に出てきたのだ。
そして彼女のクラスには、若年層に人気の出ている新進モデ
ルや地元のがき大将、クラブのDJをしながら実家のもんじ
ゃ焼き屋も手伝っている女子などもいて、クラスは文化祭に
自分たちでデザインしたファッションショウの出展を計画し
ていたが…
転校生が天才的なファッションデザイナーで、そこにはちょ
っとした挫折もあるけれど、結局はうまく行って、そして主
人公たちの未来が開けて行く。同じ原作者の以前に紹介した
映画もそうだったけれど、そんな夢物語が描かれる。
それはまあ、大人の眼からすると甘々の話ではあるけれど、
家族や級友や街の人々なども巻き込んで夢のようなことを成
就する。これもまあファンタシーなのかな。魔法の出てこな
い『ハリー・ポッター』というところなのかも知れない。

出演は、昨年6月紹介『最後の忠臣蔵』の桜庭みなみ、若手
演劇集団D-BOYSの瀬戸康史、モデル出身の桐谷美玲、2009年
7月紹介『TAJOMARU』などに出演の田中圭、二世タレントの
IMALU。
他に、吉瀬美智子、RIKACO、田辺誠一、中村敦夫。さらに西
岡徳馬、いとうまい子、七瀬なつみ、菅田俊、つみきみほ、
風間トオルらが脇を固めている。
なお『NANA』の監督は、今年正月のヴァラエティ番組で
飛んでもない演出を行って見事に名う手の出演者たちを騙し
ていたが、今回の作品では何とか真面な演出が出来ていたよ
うだ。

『ヨギ&ブーブー/わんぱく大作戦』“Yogi Bear”
ハナ=バーベラの往年の名作アニメーション『クマゴロー』
を、3Dの実写とCGIキャラクターで映画化した作品。
子供の頃に『珍犬ハックル』と共に楽しんだ往年のアニメー
ションが3Dで帰ってきた。お話は昔の通りキャンプ客のお
弁当を狙うクマと、それを阻止せんとする公園レンジャーと
の攻防を描くものだが、本作ではさらにいろいろな味付けが
されている。
それは自治体の抱える赤字の問題や、さらに森林破壊や自然
保護の問題など、実に現代を描いているものだが、それらを
本来の観客である子供にも判りやすく、その一方で大人の眼
にも納得できるように巧みに描いているものだ。
そこにはオリジナルでは犬猿の仲だったレンジャー隊長との
共同作戦など、一歩踏み出した新たな展開も描かれていた。
それが往年のファンにどう受け取られるかが多少の不安材料
だが、全体の雰囲気はアニメーションの味を良く受け継いで
いる感じがした。
特に、ヨギベア(クマゴロー)が繰り出すいろいろな作戦や
珍発明が、実写の画面で見事に映像化されている点には感心
した。さらにアニメーションさながらのアクションシーンも
ふんだんに登場する。
実は、先に発表されたアカデミー賞長編アニメーション部門
の予備候補に本作が入らなかったことが話題になって、アニ
メーションとしてどうなのか心配したが、本作を観て納得。
これは正に実写版の映画化で、そこにアニメーションの主人
公が登場する作品だ。
つまり単純に本作はアニメーション作品ではなかったもの。
しかもその実写シーンの撮影には、ジェームズ・キャメロン
製作によるフュージョン3Dカメラが使用されており、ロケ
地ニュージーランドの大自然の景観が本物の3Dで観られる
ものだ。

監督は、元ILM所属で『キャプテンEO』などを手掛け、
2008年8月紹介『センター・オブ・ジ・アース』(ディジタ
ル3Dでは初の実写作品)で長編映画監督デビューを果した
エリック・ブレビグの第2作となっている。
アメリカ版の声優は、ヨギ役が『ゴーストバスターズ』など
のダン・エイクロイドと、ブーブー役は昨年10月紹介『ソー
シャル・ネットワーク』にも出ていたジャスティン・ティン
バーレイクが担当。
他に2003年『ロスト・イン・トランスレーション』や『最終
絶叫計画』シリーズなどのアンナ・ファリス、テレビやイン
ディペンデンス映画で活躍のトム・キャバナー、2008年『ク
ローバーフィールド』などのT・J・ミラーらが実写で出演
している。
ただし日本公開は吹き替え版になるようで、そのヨギ役は茶
風林、ブーブー役には林勇、その他もベテランの声優たちが
担当しているようだ。またテレビ放送時のクマゴローを担当
した滝口順平が巻頭のナレーションで懐かしい声を聞かせて
くれている。
それから本作にはLooney Tunesの短編が併映されるが、今回
の作品は“Rabid Rider”。昨年9月26日付でタイトルのみ
報告した作品が観られる。因に、題名はSegwayのような乗物
のことのようで、それを手に入れたコヨーテがいつものよう
な失敗を繰り広げるものだ。

『四つのいのち』“Le quattro volte”
昨年の東京国際映画祭natural TIFF部門で上映された作品が
一般公開されることになり、改めて試写が行われた。
イタリア南部カラブリア州の山間部。丘の上に城塞都市が聳
え、その周囲を森が囲んでいる。その一画では伝統の炭焼き
が行われており、その土饅頭のような小山を箆で叩き固める
音が周囲に響き渡っている。
その音が聞こえる草地には山羊の群れが放牧されており、牧
羊犬が忙しく走り回って群れ纏めている。その群れに付き添
う羊飼いは高齢で、時折咳き込んでは息苦しそうだ。そして
帰宅した老羊飼いは、霊験あらたかな教会の埃を水に溶いて
飲下し床に就く。
そんな日常の中で繰り広げられる老人と仔山羊、祭りの主役
となる樅の大木と木炭、四つの命の誕生と再生が描かれる。
さらにそこには村が行う2つの祭りの様子なども紹介され、
それらが静謐な長廻しの映像で描かれる。
作品の中に特定の台詞はなく、従って映画は無字幕。ただ豊
かな自然の営みが描かれる中で、その営みに則したドラマが
展開されて行く。それにしてもイタリア南部の土地柄でこん
なに雪が降るとは思わなかった。そんな自然も見事に描かれ
ている。

脚本監督を手掛けたミケランジェロ・フラマルティーノは、
ミラノ工科大学建築科に入学した後、映像に転じたとのこと
で、ある種の技術的な興味を持って作品が描かれているよう
なところもある。それが意外と人間や自然の営みに通じてい
るものだ。
出演者は、皆そこに住む住人たちだそうで、唯一プロと言え
るのは映画の前半で活躍する牧羊犬。驚異的な長廻しの撮影
の中、劇中最もドラマティックとも言えるシーンを見事に演
じて、カンヌ国際映画祭では活躍した犬に与えられるパルム
ドッグ賞を受賞したそうだ。
なお昨年の映画祭で鑑賞したときには、「四つのいのち」の
組み合わせが多少気になったが、原題をexcite翻訳で直訳す
ると「四つの時間」となるようで、まあそんなニュアンスの
作品のようだ。

とにかく静かな映画で、natural TIFF部門で上映するのに相
応しい作品であったことは間違いない。

『ブラック・スワン』“Black Swan”
ピョートル・チャイコフスキー作曲のバレエ「白鳥の湖」を
モティーフに、その主役の座に賭けた女性の姿を描き、主演
のナタリー・ポートマンがゴールデングローブ賞などすでに
20冠以上を達成している作品。
主人公はニューヨークの名門バレイ団に所属する若い女性。
そのバレイ団ではプリマドンナが今シーズン限りで引退する
ことになり、来シーズンに向けて新しいプリマの座を競うオ
ーディションが行われていた。
そのシーズンの開幕を飾るのは「白鳥の湖」。1人のプリマ
が清純な白鳥と妖艶な黒鳥を演じ分けることが至難の業と言
われる名作が、新プリマに科せられた課題となっていた。そ
して主人公はその有力候補の1人だったが…
優等生タイプの主人公には白鳥は完璧に踊れても、黒鳥が課
題とされてた。一方、奔放なタイプのライヴァルは黒鳥を完
璧に踊れる素質を持っていた。そして配役発表の日が近づく
中で主人公には精神的な重圧がのしかかってくる。
この種のバックステージものでは、最近だと『オペラ座の怪
人』が頭に浮かんでくるところだが、その作品の歌唱に対し
て本作はダンス。そしてミュージカル作品がどちらかという
とロマンスに重きを置いたのに対して、本作ではホラーの要
素もたっぷり織り込んだ作品になっている。
しかもそれが心理学的な背景に基づくかたちで描かれている
から、そこにはストレス社会の現代に生きる人々のほぼ全員
が感じているような恐怖が描き出されているものだ。

共演は、昨年4月紹介『ザ・ウォーカー』でも中心的な役を
演じていたミラ・クニスと、2009年10月紹介『ジャック・メ
スリーヌ』で東京国際映画祭主演男優賞を受賞したヴァンサ
ン・カッセル。他に、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライ
ダーらが脇を固めている。
監督は、1998年『π』などのダーレン・アロノフスキー。考
えてみたらこの監督の作品はデビュー作以降は観る機会がな
かったが、SF作品も手掛ける俊英がホラー演出やVFXも
駆使してその手のファンも唸らせる作品を作り上げている。
        *         *
 今回のニュースは賞レースの話題で、まずは上でも書いた
ゴールデン・グローブ賞では、昨年10月紹介『ソーシャル・
ネットワーク』がドラマ作品、監督、脚本、オリジナル作曲
の4冠を達成。その他の本ページで紹介した作品では、1月
紹介『英国王のスピーチ』が主演男優、昨年11月紹介『バー
レスク』が歌曲、昨年6月紹介『トイ・ストーリー3』が長
編アニメーション、そして今回紹介『ブラック・スワン』が
主演女優賞受賞となっている。
        *         *
 お次は、前回予告したVES賞のノミネーションを今年も
映画部門のみ紹介しておく。
 VFX主導映画のVFX賞候補は、『トロン/レガシー』
『インセプション』『アリス・イン・ワンダーランド』『ア
イアンマン2』『ハリー・ポッターと死の秘宝:part 1』
 VFX主導でない映画のVFX賞候補は、『ソルト』『ロ
ビン・フッド』『ブラック・スワン』『グリーン・ゾーン』
『ヒアアフター』
 長編アニメーション賞候補は、『塔の上のラプンツェル』
『ヒックとドラゴン』『トイ・ストーリー3』『シュレック
4』『ガフールの伝説』
 短編アニメーション賞候補は、『キャッツ&ドッグズ』に
併映された“Looney Tunes - Coyote Falls”、『トイ・ス
トーリー』に併映された“Day & Night”、他に“Paths of
Hate”“Tick Tock Tale”“Cat Shit One - The Animated
Series”
 実写映画におけるアニメーションキャラクター賞候補は、
『ナルニア国物語/第3章』のReepicheep、『ハリー・ポッ
ター』のドビー、『ハリー・ポッター』のKreacher、『キャ
ッツ&ドッグズ』のキティ・ガロア
 アニメーション映画におけるアニメーションキャラクター
賞候補は、『ガフールの伝説』のディガー、『塔の上のラプ
ンツェル』のラプンツェル、“Megamind”のMinion、『ヒッ
クとドラゴン』のToothless
 アニメ映画におけるエフェクトアニメーション賞候補は、
『シュレック4』『ヒックとドラゴン』『ガフールの伝説』
『トイ・ストーリー3』
 実写映画における背景賞候補は、『トロン/レガシー』の
Disc Game、『インセプション』のParis Dreamscape、『プ
リンス・オブ・ペルシャ』のSand Room、『アイアンマン』
のStark Expo
 実写映画におけるモデル/ミニチュア賞候補は、『インセ
プション』のHospital Fortress Destruction、『シャッタ
ー・アイランド』のWard-C/Lighthouse、『アイアンマン』
のHammer Military Drones、『エクスペンダブルス』のThe
Palace Explodes
 実写映画における合成賞候補は、『インセプション』の全
体、『ヒアアフター』の津波シーン、『トロン/レガシー』
の全体、『アリス・イン・ワンダーランド』のStolen Tarts
 以上、前回からは単独VFX賞とマットペインティング賞
の2部門が消えて、代りに短編アニメーション部門が新設さ
れ、映画関係は10部門となったようだが、この中から受賞作
の発表は2月1日に行われる。
 次回はいよいよアカデミー賞候補の発表だ。



2011年01月16日(日) 津軽百年食堂、婚前特急、アメイジング・グレイス、ゲンスブール、塔の上のラプンツェル、リセット、グリーン・ホーネット+製作ニュース

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『津軽百年食堂』
昨年11月『世界のどこにでもある、場所』という作品を紹介
したばかりの大森一樹監督による作品。森沢明夫原作による
同名の小説からの映画化。
主人公は青森県弘前市から東京に出て来ている男女。男性は
弘前で100年続く大衆食堂の4代目だが、故郷を飛び出して
東京の大学を卒業。しかし東京での就職はままならず、特技
のバルーンアートでその日暮らしのような生活している。
一方、女性は弘前の写真館の娘で、幼い頃からの憧れだった
カメラマンの道を目指し、東京でカメラマン助手をしながら
それなりの実績も挙げ始めている。しかも遊び場だった写真
館もそこを守ってきた父親もすでに亡く、故郷との柵も少な
い。
そんな2人が東京で偶然出会い、ちょっとした経緯から1軒
の家をシェアして住むことになるのだが、女性には師匠であ
るカメラマンを思う気持ちが強く、お互いの思いはなかなか
はっきりとはしない。
そして男性には、食堂を1人で切り盛りしていた父親が交通
事故に遭って一時食堂を閉めなくてはならなくなり、祖母か
ら「弘前に戻って食堂の営業を続けてくれ」という要請の電
話が架かってくる。
その頃、師匠が急病で倒れその代役を立派に果たした女性に
も、1人立ちの道が開けてくるのだが…。そんな2人の関係
に100年前の食道開業当時のエピソードが絡んで、100年の歴
史を背景にした物語が展開される。
大森監督は、1991年に発表した『満月』でも弘前を舞台にし
たファンタスティックな物語を描いているが、今回はファン
タシーではないけれど男女の正にロマンティックな物語が展
開されている。
まあそれは多少甘々のお話ではあるけれど、殺伐とした現代
に、たまにはこんなのも良いかなというようなもの。それに
弘前「さくらまつり」の風景も、ちょっと不思議な雰囲気も
醸しながら気持ち良く描かれていた。

出演は、お笑いコンビ・オリエンタルラジオの藤森慎吾と中
田敦彦、2008年8月紹介『櫻の園』などの福田沙記。他に、
昨年3月紹介『ヒーローショー』のちすん、藤吉久美子、大
杉蓮、かとうかず子、野村宏伸、手塚理美、伊武雅刀らが脇
を固めている。

『婚前特急』
複数の自主映画(短編)で各地映画祭のグランプリなどを獲
得している前田弘二監督による商業映画第1作。因に監督は
本作の前に、同じ主人公の17歳と21歳の時を描いた作品を携
帯ドラマとして発表しているようだ。
その本作の主人公は24歳のOL。親友の女性は結婚を決めた
が、本人は人生を楽しむことを第1目標に年齢や生活環境も
異なる5人の彼氏の間を渡り歩いている。その彼氏たちは事
情を知っている者も知らない者もいて状況は様々だ。
ところが結婚した親友から結婚の意義を諭され、ちょっと真
剣に考え始めた主人公は5人の彼氏の査定を始めるのだが、
中の1人がどうにも駄目な男であることが判明する。そこで
まずその男を切るべく作戦を開始するが…
正直に言って僕の感覚だとこういう女性は願い下げにしたい
ところなのだが、これが電車の中でも携帯電話を弄くり通し
の連中には理想なのかな。そんなちょっと歪な感じでも観て
いた作品だった。
でもまあ、それはシチュエーションと割り切って観れば、そ
れなりにこれが現代なのだろうし、その点ではなかなか鋭い
感覚で描いている感じはした。少なくとも社会性ということ
では、凡庸な監督よりは見所がありそうだ。

出演は、2008年6月紹介『蛇にピアス』以来の映画主演とな
る吉高由里子。他にモデル出身で2008年8月紹介『櫻の園』
などの杏、昨年9月紹介『海炭市叙景』などの加瀬亮、ミュ
ージシャンで2006年5月紹介『ハチミツとクローバー』など
に出演の浜野謙太。
さらに、榎木孝明、石橋杏奈、青木崇高、吉村卓也、吉岡睦
雄、宇野祥平、白川和子らが脇を固めている。
物語的には上記したように不満はあるが一応了解はする。し
かしその展開では、結論として相手は1人の男性に絞られる
のだが…、その理由付けが薄弱で、これは全く納得できなか
った。
その男性が選ばれた決定的な理由、それはもっと明確に提示
されるべきものだ。これでは主人公自身がますます駄目に見
えてしまうし、現代のヒロインであるはずの設定も生きない
感じもした。


『アメイジング・グレイス』“Amazing Grace”
18世紀に作られた賛美歌「アメイジング・グレイス」。その
歌を背景に奴隷貿易の廃止に立ち上がった政治家ウィリアム
・ウィルバーフォースの実話に基づく物語。
20代で政治家となったウィルバーフォースは、英国議会に奴
隷貿易の廃止のための法案を出し続けていた。ところが貿易
立国であるイギリスの議会は、人道的な問題は理解していて
もその廃止は貿易商たちの不利益になるという理由でいつも
不成立だった。
そんな彼の支えとなったのは、元奴隷貿易船の船長で、その
航海中のある出来事から神の恩寵を感じ賛美歌「アメイジン
グ・グレイス」を作詞した神父ジョン・ニュートンの存在だ
った。そして愛する妻の後押しも受け、活動を続けた彼に遂
に転機が訪れる。
映画の中でも戦争の英雄は称えられ易いが、平時の英雄はな
かなか人の目に留まらないというような台詞が出てくるが、
正にその通りだろう。しかも物語の背景にはフランス革命や
アメリカ独立戦争などが絡むから、日本人には一層馴染み難
いものになっている。
しかしこのような人物がいたからこそ現代の世界がある訳だ
し、その意味で我々も知っておくべきことのように思える。
こういう他国人にはなかなか目に触れにくい物語が観られる
のも、映画の存在意義の一つのようにも思えるものだ。

主演は2005年、07年のアメコミ映画化『ファンタスティック
・フォー』に主演していたヨアン・グリフィス。2006年製作
の本作は丁度その間に撮った作品のようだ。共演は、2007年
12月紹介『つぐない』などのモローラ・ガライ。
他に、『つぐない』などのベネディクト・カンバーバッチ、
2004年12月紹介『オーシャンズ12』などのアルバート・フィ
ニー、『ハリー・ポッター』シリーズなどのマイクル・ガン
ボン、2008年3月紹介『幻影師アイゼンハイム』などのルー
カス・シーウェル。
監督は、2002年11月紹介『イナフ』や、日本では2月公開予
定の『ナルニア国物語/第3章』にも起用されているマイク
ル・アプテッド。実話に基づく脚本は、2002年『堕天使のパ
スポート』でオスカー候補に挙げられたスティーヴン・ナイ
トが担当した。

『ゲンスブールと女たち』“Gainsbourg (Vie héroïque)”
僕の中ではヨーロッパでの放送禁止が話題になった『ジュ・
テーム・モア・ノン・プユ』が一番印象に残っているかな。
フランスの作詞作曲家・歌手で、映画出演や監督作品もある
セルジュ・ゲンスブールの生涯を描いた作品。
帝政ロシア・ウクライナ出身ユダヤ人の両親の許、パリで生
まれたゲンスブールは、幼い頃から容姿にコンプレックスを
持ち、真面な学校にも行けずに画家になる夢を持って絵画学
校に通うが、それも途中で断念してしまう。
ところが、キャバレーで上演されるミュージカルでのピアノ
伴奏の職を得て、やがて自分もステージに立つようになり、
1958年に歌手としてデビュー、ボリス・ヴィアンらの大絶賛
を浴びることになる。
その後もヒット作は続くが自分で歌うより他のアーチストに
楽曲を提供することが多くなり、そのスキャンダラスな歌詞
と斬新で美しいメロディを求めて、エディット・ピアフやフ
ランス・ギャル、アンナ・カリーナといった人たちが彼の許
を訪れた。
その中でもブリジット・バルドーとは瞬く間に恋に落ち、デ
ュエットで録音した『ジュ・テーム〜』1st Ver.は世間を騒
がせるが、当時夫のいたバルドーが発売直前にリリース中止
を懇願、結局お蔵入りとなってしまう。
これによってバルドーとは別離。しかし1968年に映画の共演
でイギリス人女優ジェーン・バーキンと出会い、翌年に録音
した『ジュ・テーム〜』2nd Ver.は、BBCが放送禁止にし
たことなどが逆宣伝となって大ヒットを記録する。
さらに1979年にはフランス国家「ラ・マルセイエーズ」をレ
ゲエに編曲した曲をリリースしてマスコミからは国家への冒
涜として非難され、右翼の攻撃も受ける。そしてそれを沈静
化させるため、競売に出た作詞者による直筆の原詞を破産覚
悟で買い取る。
その一方で、1970年代末に別れたバーキンにはその後も楽曲
を提供したり、2人の間に生まれたシャルロットに対する愛
情など。とにかく過激というか、破天荒なゲンスブールの生
涯が描かれている。

監督は、現代フランスコミックス(バンドデシネ)の重要な
作家の1人と言われるジョアン・スファール。自らもユダヤ
人で「僕の師匠は常にゲンスブールだが、無理して歌手にな
って彼の気分を害したくなかったから漫画家になった」と言
う作家が、初監督作品として本作を手掛けている。
主演はエリック・エルモスニーノ、バーキン役に『スパイダ
ーマン3』に出ていたというルーシー・ゴードン、バルドー
役に“Asterix & Obelix”シリーズの第1作に出演していた
というレティシア・カスタ。
他に、2008年9月紹介『ヘル・ボーイ』などのダグ・ジョー
ンズ、2010年6月紹介『セラフィーヌの庭』などのヨランド
・モロー、前回監督作品を紹介した故クロード・シャブロル
らが脇を固めている。
バルドーとバーキンを見事に似せて見せた2人の女優の演技
も素敵だったし、画面に登場する主人公の相棒=イマジナリ
ー・フレンドの造形も流石バンドデシネ作家の作品という感
じで見事に決まっていた。希代のアーチストの奇抜な生涯を
観るということでも面白い作品だった。


『塔の上のラプンツェル』“Tangled/Rapunzel”
1937年に史上初の長編アニメーション作品『白雪姫』を生み
出したディズニーが、その記念すべき第50作目として、同じ
くグリム童話に材を取って作り上げた作品。
ただし本作はグリム童話の『髪長姫』をベースにはしている
が、ストーリーは巧みに改変されていて、全く新しい夢と冒
険の物語が展開される。そこにはラプンツェルが塔に閉じ込
められる理由なども分かり易く描かれているものだ。
因にこの原作は、1940年代にウォルト・ディズニー本人も映
画化を企画したが、諸般の事情で断念したというもの。その
物語が、ある意味現代的な視点で描き直されているという感
じでも作られている。
その物語の始まりはかなり昔。永遠の若さの得られる魔法の
花を見つけた魔女が密かに1人でその恩恵に預かっていた。
ところが妊娠したその国の王妃の具合が悪くなり、国王の命
令で薬草を探していた兵士がその花を摘み取ってしまう。
そしてその花の力で王妃は回復し姫が誕生するが、花は失わ
れてしまう。しかし姫の髪に花の力が宿っていることを知っ
た魔女は、姫を拉致して隠れ谷の塔に幽閉、自分の子として
育て始める。しかもその髪は一度切ると力を失うことから、
髪を長く伸ばしたまま…
こうして10数年が過ぎ、魔女は姫の長い髪を伝って塔を出入
りし、姫には不自由ない暮らしをさせていた。しかし姫は、
毎年自分の誕生日になると遠くの空に舞う不思議な光に心を
馳せ、外の世界への憧れを募らせていた。
2009年7月紹介『プール』や同年10月16日付東京国際映画祭
コンペティション作品『台北に舞う雪』にも描かれた「コム
ローイ=天燈」が物語のキーとして登場し、詩情豊かな物語
が展開される。
その一方で、動物を使ったコメディリリーフや、アクション
もバランス良く描かれるのがディズニーアニメーションの真
骨頂だ。それに本作の物語では、若い女性の外の世界への憧
れや怖れなども丁寧に描かれていた。
なお試写は2Dで行われたが、一般公開は3Dでも実施され
る。アクションシーンや特に数万の天燈が空を舞うシーンな
どには、再度3Dで見直したい気分になった。


『リセット』“Vanishing on 7th Street”
1998年『ワンダーランド駅で』や2004年『マシニスト』など
の作品で知られるブラッド・アンダースン監督の最新作。
物語の舞台はミシガン州デトロイト。ある日、町中が突然停
電となり、その闇の中で人々が消えて行った。それは衣服や
持ち物を抜け殻のように残して、人体だけが消失するという
奇妙な光景だった。
しかし何人かは取り残されており、その中にはテレビの突撃
レポーターだった男性や病院で理学療法士の仕事をしていた
女性。そして7番街にある映画館の映写技師だった男性。さ
らにカフェで母親の帰りを待っていた少年などがいた。
そんな彼らが少年のいたカフェに集まってくる。そこは自家
発電で照明の絶えない場所だった。つまり彼らは経験で人々
が消えた状況に闇が関り、明かりがその危険を減らすと考え
たのだ。ただし人々が消えてからは太陽も上がらず闇が外界
を支配していた。
ところがそのカフェの自家発電機が不調になり始め、一方、
突撃レポーターだった男性は人々が消えた後の衛星回線でシ
カゴにも男性が残っていることを知っており、皆でそこに向
かうことを提案するが…
照明が消えたときにその周囲の闇の中から何物かがじわじわ
と迫ってくる。それは正しく子供の頃、寝床に入って部屋の
電気が消されたときに感じていた言いようのない恐怖感。そ
れがまた味わえる、そんな感じの作品だった。
その恐怖感の描写にはなかなか良い感じのものもあったし、
演出上のテクニック的なものには感心するところもある作品
だった。しかしストーリーが…、これでは一体何が言いたい
のか、よく判らなくなってしまっている。
恐らく監督たちは、「神の摂理」のような感覚で纏めたつも
りなのだろうが、それでは神に頼り過ぎだろう。それはノア
の洪水でも良いが、それにしては主人公たちが残された理由
が明確でないから、結果として何を言いたいのか判らなくな
ってしまう。
特にこの展開と結論では、主人公たちの行動は単に「神」の
目的を遅延させているだけとも取れて、それは物語の展開と
してはおかしなものだ。ここはこじ付けで良いから、何らか
の残された理由付けが欲しかった。

出演は、『スター・ウォーズ:エピソード2/3』のヘイデ
ン・クリステンセン、2009年11月紹介『2012』などのタ
ンディ・ニュートン、1993年『スーパー・マリオ』のルイジ
役が懐かしいジョン・レグイザモ。
俳優の顔触れはそこそこだと思うが、皆さんSFがお好きな
ようだ。因にクリステンセンは役名がルークというもので、
それを聞いたときには「お前はアナキンだろう」と突っ込み
を入れたくなった。


『グリーン・ホーネット』“The Green Hornet”
1960年代に放送されていたアクションTVシリーズが、3D
映画としてリメイクされ、日米ほぼ同時に公開されることに
なった。
オリジナルは1936年に放送開始されたラジオドラマで、その
後にコミックスや連続活劇にも広がった作品。そして日本で
も放送されたTVシリーズではブルース・リーが相棒役で出
演し、見事なカンフーアクションを披露していたことも後に
話題になったものだ。
主人公は若くして大都市の新聞社を経営する男性。しかし彼
は、世論の力だけでは社会を浄化し切れないと考え、拳法の
達人の助手と共にスーパーヒーローとして活動を始める。し
かもそのやり方は悪人を装って悪の真髄を叩くと言うもの。
こうして主人公はグリーン・ホーネットと名告り、自らの新
聞でその悪行を書き立てながら、助手のカトーと共に犯罪現
場に現れては悪人を倒して行く。だがそれは警察と犯罪組織
の両方から追われる綱渡りの活動となるものだった。

というちょっとトリッキーなスーパーヒーローの活躍だが、
その映画化では2008年11月紹介『無ケーカクの的中男』など
のセス・ローゲンが脚本と主演を務め、監督には2007年2月
紹介『恋愛睡眠のすすめ』などのミシェル・ゴンリーが起用
されている。
つまりこれはかなりコメディタッチの作品が予想されるもの
だが、ローゲンの前記の作品でもかなり真面目な芯が通って
いたし、ゴンドリーには独特の映像感覚にも期待が寄せられ
ていたようだ。
そして今回の物語では、グリーン・ホーネットの誕生の経緯
から裏社会のボス倒すまでが描かれ、また映像では、クライ
スラー・インぺリアルを改造した超重装備の愛車ブラック・
ビューティーやカトーの戦闘時のヴィジョンなどが、3Dの
効果も交えて表現されていた。
それはまあ、『ダーク・ナイト』ほどアーティスティックで
はないし、『スパイダーマン』ほど華麗でもないけれど、あ
る意味現実的ではあるし、僕自身が記憶しているTVシリー
ズも丁度こんな風だったかなあ…と思える作品だった。

共演は、2008年2月紹介『王妃の紋章』などのジェイ・チョ
ウ、昨年8月紹介『ナイト&デイ』などのキャメロン・ディ
アス。他に昨年のオスカー受賞者クリストフ・ヴァルツ。ま
た『T2』のエドワード・ファーロングも出ていたようだ。
なお本作の3Dは2Dからのコンヴァージョンによるものだ
が、球面も滑らかだったし、奥行感もしっかりあってあまり
問題は感じなかった。
        *         *
 今回の製作ニュースはちょっとだけ。
 まずは、日本版は2006年6月と10月に紹介『DEATH NOTE』
のハリウッドリメイクが動きだし、その監督に1987年『リー
サル・ウェポン』などの脚本家シェーン・ブラックの起用が
発表されている。製作は、日本版と同じくワーナーが行うも
ので、脚本にはアンソニー・バガロティとチャック・マンド
リーという名前も発表された。
 因にブラックの監督に関しては、昨年3月7日付で紹介し
たようにコムビアから“Doc Savage: The Man of Bronze”
の計画も発表されているものだが、実はその計画でも脚本に
はバガロティとマンドリーの名前が挙がっており、どうやら
この3人はセットで動いているようだ。
 製作時期などは未発表だが、ブラックの作品では1993年の
『ラスト・アクション・ヒーロー』のような作品もあって、
SF/ファンタシーにはそれなりの思い入れもありそうなの
で期待したいところだ。それにしてもコロムビアの計画の方
はどうなったのかな、それも心配なところだが。
        *         *
 一方、ソニー/コロムビアの関連では、MGMの資金難で
止まっていた“Bond 23”の製作を、2012年の公開を目指し
て今年後半から撮影開始することが発表されている。
 この計画に関しては昨年4月25日付で報告したようにサム
・メンデス監督が準備を進めていたものだが、今回の発表に
よると監督と主演のダニエル・クレイグは戻るようで、後は
女敵役に予定されていたレイチェル・ワイズの去就が気にな
るところだ。因に本作は、1962年の『ドクター・ノオ』で始
まった映画シリーズの50周年記念作品となるものだ。
 なお現状で、MGMとソニーとの間には直接の契約関係は
ないようだが、MGMが海外配給権と引き換えに製作の半額
負担をソニーに要請することは間違いないと見られているそ
うだ。
        *         *
 最後に、毎年紹介しているVES Awardのノミネーションが
1月10日に発表されているが、その詳細については次回報告
させてもらいます。



2011年01月09日(日) 僕が結婚を決めたワケ、引き裂かれた女、再会の食卓+製作ニュース

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『僕が結婚を決めたワケ』“The Dilemma”
2006年5月紹介『ダ・ヴィンチ・コード』や2009年1月紹介
『フロスト×ニクソン』などのロン・ハワード監督による最
新作。
copyrightは2011年、アメリカでも年明けに試写が開始され
たばかりで、海外の紹介記事もまだ挙がって来ていないとい
う最新作が、日本では1月14日から一般公開されることにな
り、緊急試写が行われた。
物語の主人公は、学生時代からの親友と組んで自動車メーカ
ーに新型車の企画を売り込んでいる40歳独身の男性。彼には
親友の紹介でつきあい始めた女性がいて、彼女は主人公のギ
ャンブル依存症を解消させるなど、もはや欠け替えのない存
在だ。
しかも同棲はしているが互いに束縛しない関係で、それは自
由を謳歌できて楽しいもの。しかし親友からは早くプロポー
ズしないと彼女を失うと忠告される。そこで彼女の誕生日に
プロポーズすることを決意し、植物園での演出も準備するの
だが…
その植物園で目撃した出来事から、主人公は結婚の現実を考
えなければならなくなり、それは同棲相手の女性や親友との
関係にディレンマを生じさせて行く。こうして精神的重圧も
高まる主人公に、メーカーと契約した試作車の納期も迫って
くる。
特に邦題からは、ラヴコメのような軽い印象を受けるし、実
際にコメディタッチの作品ではある。しかし描いている内容
の本質は現実的でそれは現代の夫婦生活で誰にでも起こりう
る物語になっている。その辺はさすがハワード監督作品とい
うところだろう。
ただしそんなシリアスとも言える内容を、見事にコメディの
オブラートに包んで、さらに昔の若者の憧れだったアメ車の
情報なども彩りにして、この作品は観客にも心地よく描かれ
ている。
それは特に乗用車に関する蘊蓄では、ライトなエコカーへの
皮肉と、ヘヴィなアメ車への礼賛が満載なもので、ここでは
ハワード監督が1973年『アメリカン・グラフィティ』での主
演者の1人だったことも押さえておくべきだろう。

そんな本作の主演は、2007年11月紹介『ブラザー・サンタ』
などのヴィンス・ヴォーン、その恋人役に2002年3月紹介、
ハワード監督の『ビューティフル・マインド』でアカデミー
助演賞を受賞したジェニファー・コネリー。
また、親友夫妻役で2005年2月紹介『最後の恋のはじめ方』
のケヴィン・ジェームズと、2003年8月紹介『SIMONE
/シモーヌ』などのウィノナ・ライダー。他に、クィーン・
ラティファ、2009年9月紹介『パブリック・エネミーズ』な
どに出演のチャニング・テイタムらが脇を固めている。
因にライダーは、『シモーヌ』でも観せた劇中で演技をする
という実に臭い芝居を、本作でも見事に演じていた。


『引き裂かれた女』“La fille coupée en deux”
昨年9月に亡くなったフランス・ヌーヴェルヴァーグ時代か
らの名匠クロード・シャブロル監督による2007年の作品。
ミロシュ・フォアマン監督の1981年『ラグタイム』にも描か
れた20世紀初頭のアメリカでの事件(スタンフォード・ホワ
イト殺害事件)を基に、監督と、義娘で助監督も務めるセシ
ル・メストルの共同脚色・台詞で再構築されたサスペンス・
ミステリー。
主な登場人物は、ベストセラー作家の男性とテレビでお天気
キャスターを務める女性、そして彼女を見初めた大金持ちの
プレイボーイ。作家は自作の宣伝のため訪れたテレビ局で彼
女と出会い、偶然彼女の母親が務める書店で行われたサイン
会で再会する。
一方、プレイボーイは以前から嫌悪している作家のサイン会
を妨害する目的で書店を訪れ彼女を見初めるが、すでに作家
に心を引かれている彼女の態度はつれなかった。それで余計
に恋慕の情を高めたプレイボーイは彼女に猛然とアタックを
開始するが…
こうして物語が開幕し、様々な経緯の後、やがて起きる事件
の裁判で、女性は被告の情状酌量ための証人として、被害者
の名誉に関わる証言をしなければならなくなる。それが本作
の題名の所以にもなっているものだ。

このヒロイン役に2004年2月紹介『スイミング・プール』な
どのリュディヴィーヌ・サニエ、作家役には2009年4月など
で紹介『トランスポーター』シリーズのフランソワ・ベルレ
アンがガラリと違う演技を見せてくれる。またプレーボーイ
役には、2007年2月紹介、シャブロル監督『石の微笑』にも
主演していたブノア・マジメルが扮している。
ヌーヴェルヴァーグの後、シャブロルは商業監督としても成
功するが、その当時はフランスのヒッチコックとも呼ばれて
いた。そんなシャブロル監督作品の中でも特にミステリーの
風合の強い本作は、監督のベスト20にも選出される評価とな
っているそうだ。
しかも余分の描写を廃し、観客を目撃者の立場で作品に参加
させる描き方は、ヒッチコック作品の一面に通じるもので、
ブロンド髪のヒロインやプレイボーイの若者など、ヒッチコ
ックへのオマージュとも感じられる作品だった。

『再会の食卓』“團圓”
2008年1月紹介『トゥヤーの結婚』でベルリン国際映画祭金
熊賞に輝いたワン・チェンアン監督が、1949年の中華人民共
和国成立により中台に分断された家族の再会を描き、2010年
の同映画祭で銀熊賞(脚本賞)を受賞した作品。
中華人民共和国の成立に伴って台湾に脱出した国民党軍の兵
士たち。当初は直ぐにも反攻が始まると考えていた彼らは、
本土に家族を置き去りにしていた。そして国交が断絶したま
まの40年が過ぎ、音信不通だった兵士が家族の許に帰ってく
る。その兵士だった夫は台湾で再婚し、子供の成長を一緒に
見守った再婚の妻はもう亡くなっていた。
一方、当時身重だった妻は人民軍兵士に救われたが、元国民
党軍兵士の家族を迎えた生活には言い知れぬ苦難があったよ
うだ。そして連れ添った人民軍兵士との間にも子供が誕生し
ている。その元人民軍兵士の男性は健在で、台湾からやって
きた元国民党軍兵士を精一杯の歓待で迎えるが…。元国民党
軍兵士の来訪の目的は明らかだった。
国家の政変に揺れ、世界的な戦争に明け暮れた20世紀は、世
界の各地で多くの国民に悲劇をもたらした。そんな悲劇の一
つが描かれている。
僕自身の父が、第2次大戦後の数年間をシベリアに抑留され
ていた人で、その出征時に母のお腹にいた第一子(僕の兄)
とは帰国時に初対面だった。その関係には、もちろん年齢的
な違いはあるが、この映画の長男と男性との間のようなもの
があったのかも知れない。そんなことも考えながらこの映画
を鑑賞していた。
因に長子の誕生で父の生家に身を寄せていた母には、音信不
通の父を諦めて再婚する話もあったと聞いている。そうなっ
ていたら僕はこの映画の長女のような立場だったのかな、そ
れもまた微妙なものだ。

いずれにしても戦争のもたらす悲劇というのは、単に戦場で
の生死に限られるのではなく、この作品に描かれたような悲
劇は様々な形で世界中で存在しているのだろう。そんな様々
な悲劇を描いて行くことも映画の使命のように感じられた。
出演は、2009年『2012』にも出ていた中国出身の国際派
女優リサ・ルー、青島生まれ台湾育ちの元人気歌手で中台の
交流にも尽力しているというリン・フォン、それに上海の人
気俳優というシュー・ツァイゲン。さらに若手女優のモニカ
・モーが共演している。
なお映画には、変りゆく上海の景観も描かれているが、そん
なことを気楽に楽しめるのは幸せなことだ。
        *         *
 今年最初の製作ニュースは、前回昨年度のベスト10に選ん
だ『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督の次回作として
“Elysium”という題名が発表され、その作品に、前作にも
主演したシャルト・コプリーに加えて、マット・デイモン、
ジョディ・フォスターという2人のオスカー受賞者の出演が
取り沙汰されている。
 上記の原題名は、日本語ではエリュシオンとなるもので、
ギリシャ神話で「善人が死後に住む所」という意味のもの。
ただし映画の内容は厳しく箝口令が敷かれているようだが、
情報によると遠い未来の地球以外の星を舞台にした物語で、
『第9地区』と同様に現代の地球社会の状況を巧みに反映し
た作品になるとのことだ。
 製作は前作と同じくMedia Rights Capitalが担当し、配給
権はこれから交渉されるとのこと。因にMRCはユニヴァー
サルと契約があるそうだが、同社にはブロムカンプ監督の本
来のデビュー作になるはずだった“Halo”を蹴った経緯があ
り、一方、『第9地区』のアメリカ配給を手掛けたソニーは
同作の続編の方に執着していて、“Elysium”はそれに当た
らないということのようだ。
 しかも、ここに来て2人のオスカー俳優の共演(デイモン
の受賞は演技賞ではないが)では、配給権の交渉にも熱が入
りそうだが、監督自身は何よりハリウッドに束縛されない映
画作りが希望だそうで、その辺もこれからの交渉の鍵になり
そうだ。
        *         *
 お次はすでに何度か報告しているが、一時ブロムカンプの
名前も監督候補に挙がっていた“The Hobbit”の映画化に関
して、それぞれ2012年と13年の12月に公開が予定されている
2部作に、何とイライジャ・ウッドの出演が発表された。
 ピーター・ジャクスンの監督で行われる2部作の撮影は、
今年2月からニュージーランドで開始されることになってい
るものだが、その配役では新たにマーティン・フリーマンが
ビルボ・バギンズを演じることと、ガラドリエル役のケイト
・ブランシェット、ガンダルフ役のイアン・マッケラン、ス
メアゴル役のアンディ・サーキスらの再登場は発表され、さ
らにオーランド・ブルームらにも再登場の噂はあった。
 しかしイライジャ・ウッドとなると、その役は当然フロド
・バギンズのはずだが、フロドはビルボに指輪を託されるま
ではその存在すら知らなかったはずで、これは一体どのよう
な話の展開になるのか。つまりこれは、JRR・トーキンの
原作に基づくPart 1ではなく、ジャクスンらが新たに書き下
ろしたPart 2での展開となるのだろうが、その知られざる物
語が益々興味の湧いてくるものになってきた。
 ところでこの製作に当っては、最後まで懸念されたのが製
作費の半分を負担するMGMの動向だった。しかし今回の報
告では、最終的にこのMGM負担分を、残り半分を出資する
ニューラインの親会社であるワーナーが肩代わりすることに
なり、製作費の問題も解決することになった。またこの肩代
わりと引き換えにワーナーが全世界の配給権も確保すること
になった模様で、これによって2012年、13年の公開も滞りな
く行われることになりそうだ。
 ただし今回の契約では、MGMが所有する映画化権の半分
に関しては言及されていないとのことで、これによってもし
かすると作られるかも知れない“The Hobbit”の更なる続編
に関しては、MGMが従前の権利を保有するようだ。それに
してもこんな情報がわざわざ紹介されるのは、当初は3部作
と噂された続編の可能性が、まだ完全には消えていないとい
うことなのかな。
 いずれにしても2012年12月の“The Hobbit-Part 1”の公
開が待ち遠しくなるところだ。
        *         *
 続いてもキャスティング関連の情報で、パラマウントが進
めている“Hanzel and Gretel: Witch Hunters”という作品
に、昨年2月紹介の『ハート・ロッカー』でオスカー候補に
なったジェレミー・レナーと、4月紹介の『プリンス・オブ
・ペルシャ』と『タイタンの戦い』にも出ていたジェマ・ア
タートンの出演が発表された。
 この作品は、グリム童話で語られた物語の15年後を描くも
ので、オリジナルで彼らを拉致した魔女を倒した兄妹がその
後は魔女退治の賞金稼ぎとなって活躍しているというお話。
脚本は、ハリウッド映画のスタッフとして数多くの作品に参
加しているD・W・ハーパーに、2007年1月紹介『主人公は
僕だった』などに主演のウィル・フェレルが協力したという
もので、多分コメディとして作られているのだろう。
 そして監督には、2009年12月紹介の雪山ゾンビ映画『処刑
山』を手掛けたノルウェーの新鋭トミー・ウィルコラの起用
が発表されている。
 因にアタートンが演じるGretel役には、当初は『ドラゴン
タトゥーの女』のノオミ・ラパスの配役が噂されていたもの
で、監督も北欧人なら好適かとも思っていたが交替になって
しまった。もしもそのまま進んでいたら、『処刑山』の紹介
の時に言及した僕としては嬉しいものだったが、ラパスのあ
の雰囲気でコメディは、多少考え難いことは確かだ。
 なお本作の撮影は、レナーが現在参加している“Mission
Impossible: Ghost Protocol”の終了後、“The Avengers”
の開始までの間に行われるようだ。
        *         *
 ここからは監督の情報で、まずは昨年4月4日付で報告し
たワーナー版“Godzilla”の製作に、ガリス・エドワーズと
いうイギリス人監督の起用が発表されている。
 この監督は、実はこれまでの経歴には“Monsters”という
低予算のSF映画が1本あるだけなのだが、この作品が昨年
末に発表されたBritish Independent Film Awardsで、最優
秀監督賞と最優秀技術賞の2部門に輝くという快挙を成し遂
げており、その手腕を見込んでの今回の起用となっているよ
うだ。また監督には、2009年7月紹介『ホースメン』などの
デイヴィッド・キャラハムが手掛けた脚本に対するリライト
の期待も寄せられているとのことだ。
 直接の映画の製作は、ワーナー傘下で『ダーク・ナイト』
『300』、それに昨年4月紹介『ハングオーバー』なども
手掛けるレジェンダリーが担当するもので、娯楽作品に関し
ては間違いないものが期待できる。ただし公開時期は2012年
と発表されており、2011年になってからの監督の決定、さら
に脚本のリライトで、今後のキャスティングや撮影、VFX
の製作などが間に合うものかどうか。多少心配される状況に
なっているようだ。
        *         *
 もう1人の監督は、2009年5月紹介『ターミネーター4』
などのMcGの情報で、ユニヴァーサルが玩具メーカーのハス
ボロ社と契約して進めている“Ouija”というボードゲーム
からの映画化に交渉されていることが公表された。
 McG監督は、2000年と2003年にコロムビアで『チャーリー
ズ・エンジェル』を手掛けた後は、ワーナーに移って2006年
の“We Are Marshall”と『T4』を監督したが、その当時
いくつか発表された計画はいずれも実現しなかったようで、
最近ではフォックスで“This Means War”という作品がポス
トプロダクション中となっているものだ。
 それで結局は各社を渡り歩く監督となっているものだが、
その次回作として今回はユニヴァーサル作品が公表された。
因にこの計画には、2005年4月紹介『サハラ』などのブレッ
ク・アイズナー監督の名前も挙がっていたが、その競争相手
を蹴落としての起用ということのようだ。
 脚本は、『トロン:レガシー』を担当したエディー・キツ
ィスとアダム・ホロヴィッツが手掛けたもので、その内容は
スーパーナチュラル・アクション・アヴェンチャーとだけ紹
介されていたが、情報によると『インディ・ジョーンズ』と
『ハムナプトラ』の要素が含まれたものとのことだ。撮影は
今年の後半に開始されて、全米公開は2012年11月9日に予定
されている。
 なお、ユニヴァーサル=ハスボロ社の計画では、昨年1月
10日付で題名だけ紹介した“Battleship”という作品が先行
しており、ピーター・バーグ監督、リーアム・ニースン主演
で撮影中の作品は、2012年5月18日の全米公開が予定されて
いるものだ。
        *         *
 海外のニュースはもう一つ賞レースの話題で、12月12日付
で紹介したアカデミー賞VFX部門の予備候補から7本に絞
られた作品名が報告された。それによると残ったのは:
“Alice in Wonderland”
“Harry Potter and the Deathly Hallows Part 1”
“Hereafter”
“Inception”
“Iron Man 2”
“Scott Pilgrim vs. The World”
“Tron: Legacy”
 今後はこの7本についてそれぞれ15分に纏められた映像が
1月20日にアカデミーのVFX部会員の前で上映され、その
後に映画スタッフとの質疑応答が行われて、最終候補の5本
が選ばれることになっている。因に、アカデミー賞VFX部
門の最終候補は昨年から5本に拡大されているが、現時点で
の7本から2本落とされるだけというのもかなり微妙な感じ
もするところだ。
 一方、2Dから3Dへのコンバージョンは現状ではVFX
の一部と見做されているとのことで、その伝で行くと今回の
絞り込みでは、“Alice”を除く“The Voyage of the Dawn
Treader”“Clash of the Titans”“The Last Airbender”
が軒並み落とされたことを、問題視する向きもあるようだ。
因に“Tron: Legacy”は3Dカメラで撮影された作品という
ことになっている。
 何れにしてもこの中から落とされる2本はどれとどれか、
これはちょっと予想しても面白そうだ。
        *         *
 最後に新年早々一つ記者会見が行われたので、その報告を
する。
 と言っても映画製作ではなくて、実は1月6日に刊行が開
始された「男はつらいよDVDマガジン」に関連して監督の
山田洋次、共演の倍賞千恵子らによる記者会見が行われたも
のだ。それでまあマガジンの刊行に関しては他でも報道され
たと思うが、会見の中でいくつか気になる発言があったので
紹介しておこう。
 その一つは記者からマドンナについて質問された際に、山
田監督からは、「映画を撮るときには常に女優を美しく撮影
することを心掛けた。それは監督だけでなく、カメラマンや
照明、メイク、衣装などスタッフ全員の仕事だった」という
発言があった。そして続けて「最近の映画やテレビは、女優
を美しく撮っていない」との苦言も呈されていた。
 また、今回のマガジンで売りの一つになっている山田監督
書き下ろしの連載小説については、映画以前の寅さんを描く
と言うものだが、「映画で寅さんを描くに当って渥美清さん
の思い出話しを数多く参考にした。渥美さん自身がコメディ
アンになるまでにどのような生活を送ってきたのか、それは
かなり恐ろしい体験もされていたようなのでその辺を想像し
ながら書いている」とのことだった。
 そして当然その映画化への期待については、「柴又の昭和
30年代を再現して描くのが難しい。『オールウェイズ』のよ
うな作品もあるが、自分たちが同じようなことをできるかど
うか。それに渥美さんの少年時代を演じられる、特に骨格や
鰓の張った子役を探すのも大変そうだ」との回答だった。
 過去の日本映画の話だし、このページの本来の目的とは違
うものだが、これらの発言には僕自身いろいろ考えるところ
もあったので、ここに報告させてもらうことにした。



2011年01月02日(日) 心中天使、洋菓子店コアンドル、英国王のスピーチ、コリン LOVE OF THE DEAD+ベスト10

明けましておめでとうございます。
本年もよろしく願いいたします。

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『心中天使』
2000年に『溺れる人』という作品を発表して国内外で高い評
価を得ている一尾直樹監督による10年ぶりの第2作。試写前
に監督の挨拶があり、「かなりユニークな作品になったと思
うので、よろしくお願いします」とのことだった。
その物語は、3人の若い男女が、それぞれの場所はばらばら
だが同じ瞬間に上方を見上げて失神するところから始まる。
3人はほどなくそれぞれに回復はするが、以後それぞれの生
活の何かがおかしくなっているようだ。
そんな生活の中で彼らは、それぞれの感じる違和感を克服で
きないままに生活が破綻して行く。それはそれぞれに独立し
た物語ではあるが互いにシンクロしているようで、やがてそ
れぞれは重大な局面へとつながって行くのだが…
題名は、プレス資料に書かれた監督の言葉によるとダブルミ
ーニングなのだそうで、チラシなどには敢えて「しんちゅう
てんし」と平仮名の添え書きがされている。因に英語題名は
“Synchronicity”とされるようだ。
それで上記の物語の続きは、題名の漢字から直感されるよう
な展開にはならず、これがユニークというか、かなり観客を
混乱させるものになっている。それはある種ファンタスティ
ックではあるし、多分僕のような人間が評価しなければなら
ない作品なのだろう。
また監督は、プレス資料によると「人類史上、個人が最も孤
独に生きていると思える現代で、その孤独からの脱却を描き
たかった」とのことのようなのだが、果たしてこの描き方で
観客にそれが理解されるかどうか。
それは、仮に観客に混乱を与える展開であったとしても、結
論がそれしか観えてこないのであればそれはそれで良いのだ
が。僕にはそこまでの結論が、プレス資料を参照しなければ
観えてこなかった。
でもそれは、何度か観れば理解できるものかも知れないし、
その意味ではリピーターを誘える作品ではありそうだ。僕自
身、上記の理解を踏まえた上でもう一度観る機会があれば…
とは思っているところだ。

出演は、2007年に川瀬直美監督がカンヌ映画祭グランプリを
獲得した『殯の森』などに主演の尾野真千子と、2006年6月
紹介『夜のピクニック』などの郭智博、それにテレビドラマ
『ゲゲゲの女房』に出演の菊里ひかり。
他に國村隼、萬田久子、今井清隆、遠野あすか、麻生裕未、
風間トオル、内山理名らが脇を固めている。
なお監督は、1996年に作・演出を手掛けた演劇が、発表され
た演劇祭の審査委員長を務めていた筒井康隆から絶賛された
ことがあるそうだ。また映画の中では、シオドア・スタージ
ョンの異色短編集『一角獣・多角獣』の中の一文が繰り返し
引用されていた。

『洋菓子店コアンドル』
江口洋介、蒼井優主演で、洋菓子が人々の心を繋いで行く、
そんなヒューマンなドラマが描かれる。
主人公は、九州から恋人を追って上京してきたパティシエー
ル。彼女は恋人が就職したはずの洋菓子店を訪ねるが、その
恋人はすでに辞めて行き先も判らないと言われる。そこで行
く宛てのない彼女は、スタッフ募集していたその店で働くこ
とにするが…
テストとして自信を持って作ったケーキは、洋菓子店の女性
オーナーシェフからは商品にならないと酷評され、ちょうど
来ていた評論家からもその造り方や出来映えに注文を付けら
れてしまう。
しかしオーナーシェフからは働くことを許され、やがて彼女
の作ったケーキを常連客に、「お試し」として出して貰える
ようになって行くが…。そのオーナーシェフが突然倒れ、洋
菓子店は休業を余儀なくされてしまう。
こんなお話に、主人公の恋人との再会や、伝説のパティシエ
と呼ばれていた評論家の秘められた過去とそこからの再生、
さらに口うるさい常連客のエピソードなどが絡んで、人を幸
せにするケーキを巡る物語が展開される。
実は先に家人に試写を観てもらったが、女性の目から観ると
江口扮する評論家がパティシエ姿で喫煙していたり、厨房で
の衛生管理などが気になったようだ。その辺は僕も気にはな
ったが、全体としてはそれなりに洋菓子の製作手順なども紹
介されて、最近のスウィーツブームにはうまく適合しそうと
言える作品だった。
ただ僕としては最後のシーンで、評論家の車に同乗していた
蒼井扮するパティシエーヌが奥さんに観えたらどうなるか、
少しヒヤヒヤしてしまったが…。まあそんなことは枝葉末節
のものだ。

共演は、江口のりこ、戸田恵子。他に、加賀まりこ、鈴木瑞
穂、佐々木すみ江、嶋田久作らが脇固めている。
脚本(共同)と監督は、10月紹介『白夜行』も手掛けていた
深川栄洋。前作の厳しい内容のドラマに比べると本作は落ち
着いて観ていられたが、この他にも2008年7月紹介『真木栗
の穴』や昨年1月紹介『60歳のラブレター』なども手掛け
る監督は、多作の上にかなり守備範囲の広い人のようだ。

『英国王のスピーチ』“The King's Speech”
1936年12月、兄の英国王エドワード8世が離婚歴のあるシン
プソン夫人との結婚のために退位したことから、急遽その跡
を継ぐことになったジョージ6世を巡る物語。
先代の英国王ジョージ5世の次男として誕生したジョージ王
子(ヨーク公)は、幼い頃に左利きを右利きに直されたり、
X脚の矯正などによる精神的重圧から吃音症となり、人前で
話すことや人前に出ることも嫌がる内向的な性格だった。
そんなヨーク公には、後のエリザベス2世女王となるエリザ
ベス王女やマーガレット王女を授かった妻がいた。その妻の
勧めでヨーク公は、オーストラリア人で民間人の言語聴覚士
ローグの指導を受け、吃音症は徐々に克服されて行く。
ところがそのヨーク公に、上記の経緯から英国王への即位が
求められる。しかも当時の世界情勢は、ドイツにヒトラーが
現れるなど戦雲が立ち込めていた。そしてその戦争を始める
のは議会だが、その国民への説明は国王が行うことが慣例と
なっていた。
すなわち即位したジョージ6世には、国民に向かって演説を
行う義務があったのだ。そんな英国王にやがて訪れるドイツ
との開戦の日。果たして吃音症の王は国民に向けラジオ放送
されるその演説を、首尾良く行うことが出来るのか…
世に言う「王冠を賭けた恋」として美談のように伝えられる
エドワード8世の退位だが、その裏側ではこのようなドラマ
ティックな出来事が進行していた。それは吃音症という障害
(しかも王家の)を扱うということで多少タブーだったのか
も知れない。
しかしここに語られる物語には、国民のために自らの障害を
克服し、その王としての役目を全うしたジョージ6世の素晴
らしい人物像が描かれているものだ。因にジョージ6世は、
戦時中も戦後もロンドンに留まり、国民と苦楽を共にしたこ
とでも知られているそうだ。
そんな英国王の、国民も詳しくは知らなかった秘話が描かれ
ている。

出演は、ジョージ6世にコリン・ファース、その妻にヘレナ
・ボナム=カーター、ローグにジェフリー・ラッシュ。他に
ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、ジェニファー・イ
ーリー、デレク・ジャコビ、マイクル・ガンボンらが脇を固
めている。
オーストラリア人のラッシュが初の製作総指揮も手掛け、母
親がオーストラリア人というトム・フーパーが監督。脚本は
1988年のフランシス・フォード・コッポラ監督『タッカー』
などのデイヴィッド・サイドラーが執筆した。

『コリン LOVE OF THE DEAD』“Colin”
製作費は45ポンド(主にロケ先で足りなくなったテープ代)
のみ。他は、フェイスブックなどの告知で集まった人たちの
ボランティアという基本無予算で製作されたゾンビ映画。
物語の舞台はゾンビ化が蔓延しているロンドン。遠くに銃声
や砲声が聞こえ、テレビではアメリカ政府が国内での原爆使
用を承認したというニュースも報じられている。そんな中で
ハンマーを片手に1軒の家に入って行く若者。その腕からは
血が滴っている。
家に入った若者はひとしきりその家の住人らしい名前を呼ぶ
が、やがて腕の血に気づき袖をまくり上げる。そこには噛み
跡と思われる傷跡から血が流れ出ていた。そう若者はすでに
ゾンビに噛み付かれ、ゾンビ化の道を歩み始めていたのだ。
そんな若者がゾンビの群れに入って人間を襲ったり、そこか
ら救出されて実家に閉じ込められたり、さらにゾンビに噛み
付かれるまでの経緯などが描かれる。つまりこの作品は、ゾ
ンビの視点からゾンビ映画を描いているものだ。
現代ゾンビ映画の創始者も言えるジョージ・A・ロメロは、
ブーム化しているゾンビ映画について、「死者に敬意を表し
て描かなければいけない」と語っているが、本作はまさにそ
れを地で行くような作品だ。
実際、多額の資金を掛けて製作されたロメロ=ゾンビ作品の
リメイクの中には、到底死者への敬意が表されているとは思
えない作品も数多く観られるが、その意味で本作はロメロ=
ゾンビ映画の正統な継承者とも言えるものだ。
しかもこの作品には、ゾンビを遊び半分で襲撃したり、利用
しようとする人間の姿や、それに対するしっぺ返しなど、ロ
メロも描き切れなかったゾンビ・ワールドが見事に描かれて
おり、それはまさにロメロ=ゾンビの発展形とも言える。

製作、監督、脚本、撮影、編集、録音はマーク・プライス。
大学でコンピュータによる映画製作は学んだが、実際の映画
製作の知識のほとんどは書籍やDVDの特典で付いてくるメ
イキングヴィデオから得たという在野の新人が、映画界に新
風を吹き込んでいる。
また、特殊メイクのミシェル・ウェッブと、出演者のアラス
テア・カートン、デイジー・エイトケンズ、タット・ウォー
リーらは商業作品に参加したことのある経験者だが、彼らも
本作には無償で協力しているとのことだ。
なお、プライス監督の次回作には、“Thunderchild”という
第2次世界大戦を背景にしたホラー作品が、今度はちゃんと
通常予算で準備中だそうだ。
        *         *
 以上が、昨年末最後に鑑賞した試写作品なので、以下には
2010年の個人的なベスト10を紹介させて貰うことにします。
対象は昨年度に日本国内で一般公開された作品で、例年通り
ベスト10は、外国映画とSF/ファンタシー映画のそれぞれ
について選出してあります。
 外国映画
1 フーズン・リバー(2009年12月紹介)
2 ハート・ロッカー(2010年2月紹介)
3 インセプション(2010年7月紹介)
4 白いリボン(2010年9月紹介)
5 クロッシング(2010年2月紹介)
6 オーケストラ(2010年2月紹介)
7 ミレニアム/ドラゴンタトゥーの女(2009年10月紹介)
8 君を想って海をゆく(2010年11月紹介)
9 デザート・フラワー(2010年10月紹介)
10 シチリア!シチリア!(2010年9月紹介)
 1位と2位の作品はフィクションではあっても現在の世界
の状況を見事に描いた作品に思えた。3位の作品は視覚効果
やSF映画として優れているのと同時に、描かれるドラマの
巧みさにも感激した。4位の作品もフィクションだが、人間
の心の闇の部分を描き切った作品と思えた。
 5位に選んだ作品には、同名のアメリカ映画(2010年9月
紹介)もあってどちらも素晴らしい作品だったが、ここでは
あえて韓国映画の方を挙げる。6位の作品はゴールデン・グ
ローブ賞の外国語映画部門の候補にも選ばれているが、コメ
ディのスタイルの中に見事な人間ドラマが描かれていた。
 7位は3部作が一気に公開された内の第1作で、シリーズ
の開幕としても登場するキャラクターの新鮮さでも感心した
作品だった。8位と9位は共に題名からは想像もできない厳
しい内容の物語でどちらも感動した。10位は堂々とした歴史
絵巻にこれも感動したものだ。
 SF/ファンタシー映画
1 インセプション(2010年7月紹介)
2 月に囚われた男(2010年1月紹介)
3 トイ・ストーリー3(2010年5月紹介)
4 第9地区(2010年3月紹介)
5 ゾンビランド(2010年5月紹介)
6 デイブレイカー(2010年9月紹介)
7 サロゲート(2009年11月、12月紹介)
8 アワ・ブリーフ・エタニティ(2010年8月紹介)
9 ウルトラマンゼロ(2010年12月紹介)
10 ちょんまげぷりん(2010年6月紹介)
 1位の作品は、視覚的にも物語でも間違いなくSF映画史
に残る作品と思える。万人に受ける作品でもあったし、特に
エンドクレジットに掛かってからの展開が見事だった。それ
に対して2位はコアなSFファン向けと言える作品で、この
2作の順位は逆でも良いくらいのものだ。
 3位はSF/ファンタシー以外の部分の良さが際立つ作品
だったが、10年ぶりの3部作の結論がまさに完璧に締め括ら
れたことにも感激した。それにしても1995年に初めてのフル
CGIアニメーションとして登場した第1作を観た時には、
ここまでの発展は考えてもいなかった。
 4位はテーマの面白さや製作の経緯などにも興味を引かれ
た。なお昨年は、本作の他にも『9』(2010年2月紹介)と
『NINE』(2010年1月紹介)という題名の作品もあって、特
に後の2作品は紛らわしかったが、いずれもそれぞれに興味
の湧く作品だった。
 5位のゾンビ映画に関しては、ジョージ・A・ロメロ監督
の『サバイバル・オブ・ザ・デッド』(2010年4月紹介)も
公開されたが、今回はコメディ版の方を選択した。上記の映
画紹介に書いた来年公開の作品もあって、ゾンビ映画の可能
性もますます広がりそうだ。
 6位のヴァンパイア映画に関しても、『エクリプス/トワ
イライト』(2010年9月紹介)なども公開されて、こちらも
ブーム化しているが、本作ではその中でも最も本来のシチュ
エーションが活かされており、さらにSF映画としても評価
できる作品だった。
 7位はSF/ファンタシーと視覚効果がうまくマッチング
していた作品と言えるものだ。同様の作品では、『Gフォー
ス』(2009年12月紹介)『アリス・イン・ワンダーランド』
(2010年3月紹介)『アデル』(2010年4月紹介)などもあ
ったが、SFと言う観点でこの作品を挙げておきたい。
 8位〜10位はいずれも日本の作品。一昨年は過半数の6本
を占めたから、それに比べると多少寂しい感じはするが、そ
れなりに頑張ってはいてくれるようで嬉しいものだ。なお、
超大作の方は試写状を貰っていないので選考の対象外となっ
ている。
 因に、2010年の試写会で観た作品は、映画祭関連を含めて
360本、DVDのサンプルで観た作品が10本の計370本。試写
状を貰ったのに時間の都合などで観られなかったのは昨年も
2本でした。
 今年もこんな調子でやっていきますので、何卒よろしくお
願いします。


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井口健二