井口健二のOn the Production
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2010年10月31日(日) トロン、ゴースト、マクナイーマ、バーレスク、ソウ・ザ・ファイナル、ハーモニー+製作ニュース・その他

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『トロン レガシー』(20分特別フッテージ)
今年12月17日に全世界一斉公開予定のディズニーの新作で、
以前にも7分のフッテージを少し紹介したが、今回は今年の
東京国際映画祭でオープニングを飾った20分間の映像を観る
ことができた。
以前紹介のフッテージでは、トロンの世界に入ってからの様
子だけが紹介されていたが、今回はその前の現実世界からの
導入部を含んでおり、映画の発端部分という感じだ。そこで
は今回の主人公のサム・フリンとその父親との関係などが描
かれていた。
その父親というのは、1982年公開の『トロン』でジェフ・ブ
リッジスが演じていたケヴィン・フリンのことで、紹介され
た映像によると、そのケヴィンはその後はコンピュータ企業
のCEOになっていたが、1986年に再びトロンの世界に旅立
っていたようだ。
しかもそのまま消息を絶った父親の行方を、今回はその息子
が追って行くことになるのだが…。そこには、懐かしいアー
ケードゲーム場の外観からその内部や、そして見覚えのある
マシンなども再現されていた。

脚本は、テレビの人気シリーズ『LOST』などを手掛ける
エディー・キツィスとアダム・ホロヴィッツのコンビ。監督
はPCゲームの“Halo”などを手掛ける一方で、コロムビア
大学に3Dモデルとグラフィックス専門助教授の籍があると
いうジョセフ・コジンスキー。
脚本家も監督も映画は初めてのようだが、製作陣には『ザ・
コア』のショーン・ベイリー、『300』のジェフリー・シ
ルヴァ、それに前作を手掛けたスティーヴン・リスバーガー
らが揃っているから、信用しておこう。
出演は、今年のオスカーを受賞したブリッジスが再登場して
いる他、主演には、2004年5月紹介『トロイ』がデビュー作
というギャレット・ヘドランド。因にヘドランドは、2006年
『エラゴン』などにも出演した若手の有望株だ。
さらに共演者には、2007年11月紹介『ボビーZ』などに出演
のオリヴィア・ワイルド、2009年1月紹介『フロスト×ニク
ソン』などのマイクル・シーン、モデル出身で2007年『ファ
ンタスティック・フォー』などのボー・ガレット、それに前
作でトロンを演じたブルース・ボックスレイトナーも再登場
している。
なお3D撮影には、『アバター』で開発されたフュージョン
・カメラシステムを最新型のSONY CINEALTA F35カメラを用
いて再構築したシステムが使用されたそうだ。

『ゴースト/もういちど抱きしめたい』
1990年に公開されで世界中で大ヒットしたロマンティック・
ファンタシーの名作『ゴースト/ニューヨークの幻』を、現
代の東京を舞台にリメイクした作品。
物語は、愛し合っていた男女の一方が殺されるが、すぐには
昇天せずにゴーストとなって地上に留まる。そして自分が殺
された理由と恋人の危険を察知し、何とかその情報を恋人に
伝えようとするのだが…
まあ、お話自体はオリジナルの通りで、それは主要な台詞ま
で丁寧に踏襲されているものだが、その条件の中で本作は見
事に現代の日本社会を背景にした展開になっている。しかも
現代の日本人ならオリジナルより判りやすい感じのものだ。

その脚本を担当したのは、テレビ脚本家の中園ミホと1995年
『エコエコアザラク』などの佐藤嗣麻子。佐藤は監督も手掛
けた2008年『K−20』や、今年は年末公開予定の『宇宙戦艦
ヤマト』実写版の脚本も担当しているようだ。
オリジナルのファンとしては、いろいろ文句を付けたい人も
出てくるとは思うが、僕はこのやり方で間違ってはいないと
思うし、オリジナルの設定を踏襲することだけに汲々として
いた他のリメイク作品よりはずっと良い出来だと感じた。
とは言うものの、本作にも問題点はいろいろあって、例えば
物語の前半で2人の愛が芽生えるまでの展開は多少安易に感
じた。それは男性の側は他の条件もあるからいいとしても、
今まで愛を信じられなかった女性が恋に墜ちるのにはもう少
し手順が必要だろう。
それと途中に出てくる幼女のゴーストに関しては、彼女の思
いが解決されないままなのは観客としては納得できない。こ
ういう端々のエピソードが蔑ろにされるのは日本映画の欠点
でもあるが、脚本家は自分で描いたエピソードには最後まで
責任を持ってもらいたいものだ。

なお監督はテレビ演出家の大谷太郎。テレビでは数多くの受
賞歴があるようだが、映画の監督は本作が初めてのようだ。
まあ、それほど問題はなかったと思う。
出演は、1998年『リング』などの松嶋菜々子、2000年の韓国
ドラマ『秋の童話』などのソン・スンホ、そしてオリジナル
でウーピー・ゴールドバーグが演じた霊媒師役に樹木希林。
他に、今年8月紹介『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』
などの鈴木砂羽、「劇団☆新感線」の橋本さとしらが脇を固
めている。

『マクナイーマ』“Macunaíma”
ブラジル近代文学の金字塔とも言われるマリオ・デ・アンド
ラーデによる原作の映画化。オリジナルは1969年に発表され
たブラジル映画が、ディジタル・リマスター版となって日本
初公開される。
物語は、アマゾンの密林で赤ん坊が誕生するところから始ま
る。しかしその赤ん坊は最初から黒人の中年男の姿で生み落
とされ、父親からは不吉とされる「マ」で始まる名前「マク
ナイーマ」と名付けられてしまう。
ところがその赤ん坊は、森で魔法の泉の水を浴びたことから
美しい白人の青年に変身し、兄弟と共に都会に出て美しい娘
と恋に落ちる。そして黒人の子供を儲けたりもするのだが…
不吉の影は彼の許を去ってはいなかった。
これに、魔法の石「ムイラキタン」の伝説や、ブラジル先住
民族の「食人」の歴史などが絡み合って、何とも支離滅裂な
物語が展開されて行く。
宣伝では、“モンティ・パイソン”×「エル・トポ」という
コピーが使われるようだが、コメディとしてはイギリスの名
物番組ほど洗練されてはいないものの、俗悪さという意味で
は、確かに毒が満載という感じの作品だ。
因にオリジナルの公開は、ブラジル本国とフランスの記録し
か残っていないが、フランスでは1970年の公開から3年間の
ロングランを記録しているそうだ。なおアメリカではニュー
ヨークのみの限定公開があったようだ。
その作品が、2006年ヴェネチア映画祭で企画されたジョアキ
ン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督の回顧特集のためにディ
ジタル修復されたものだが、ほぼ全編はオリジナルから修復
されたものの、一部にあった欠損部分はフランスに残されて
いたフィルムから追加されたとの事情が巻頭のテロップに記
載されていた。
なお監督のジョアキンは、大学で物理学を専攻しながらシネ
クラブを立上げ、後に映画監督になったという経歴だそうだ
が、この作品のハチャメチャさは、何となく理系人間の感覚
かな…とも思えたものだ。

さらに本作の日本公開に併せ、東京では当時のブラジル映画
を特集するシネマ・ノーヴォという企画上映も行われるよう
だ。

『バーレスク』“Burlesque”(45分特別フッテージ)
11月24日に全米公開、日本では12月18日に公開される音楽映
画の45分間の抜粋版が特別上映された。
物語の舞台は、「バーレスク」という名のショウクラブ。元
ショウダンサーのオーナーが経営するそのクラブは、毎夜大
人の客を相手に華麗なショウを上演していたが、客足は減り
続け、その経営も厳しくなっていた。
そしてオーナーもその状況の理解はしていたが、もはや打つ
べき手段もなく、残された道は新しいスターの誕生だけだっ
た。しかし次期スターを期待される歌手ニッキーには素行の
悪さという問題があった。
一方、アイオアからスターを夢見てやってきたアリは、偶然
入った「バーレスク」の華麗なショウに目を見張る。そして
自分もその一員になりたいと思うのだったが、田舎出で伝も
ない彼女に簡単な道は拓けなかった。
という物語は、すでに上映されている予告編からも判るもの
だが、その予告編ではほんの触りだけだったショウのシーン
が、このフッテージではほぼフルコーラスに渡って公開され
たものだ。

出演は、オーナー役にシェール、ニッキー役に2008年11月紹
介『寝取られ男のラブ♂バカンス』などのクリスティン・ベ
ル、そしてアリ役にグラミー賞で4冠達成のクリスティーナ
・アギレラが映画初出演を果たしている。
他に、2009年『ラブリー・ボーン』でオスカー候補のスタン
リー・トゥッチ、2001年から『スパイ・キッズ』シリーズ全
作に出演のアラン・カミングらが共演。監督は俳優出身で、
脚本家を経て本作が長編デビューのスティーヴン・アンティ
ンが担当している。
元々ショウビズ界のバックステージ物は嫌いではないし、し
かもガールズ・ムーヴィとくればもはや文句のない作品だ。
それに本作では、何と言ってもアギレラの圧倒的というか、
見事なパフォーマンスが堪能できる。それだけで充分と言え
る作品だろう。
なお、日本公開日の12月18日はアギレラの誕生日だそうだ。

『ソウ・ザ・ファイナル』“Saw 3D”
昨日日米同時公開されたシリーズ最終作。試写会は先々週に
行われたが、公開日まで観たことも公表しないという守秘義
務契約書にサインしていたので、紹介が今日のアップになっ
たものだ。
物語は、オリジナルの殺人鬼ジグソウの亡き後、正当な後継
者は誰か…というここ何話かの展開に決着を付けるもので、
その意味では間違いなく『ザ・ファイナル』と呼ぶことので
きる作品になっていた。
その結論はまあそれもありだなと思わせるものだったが、そ
れより本作の興味は、3Dで再現される殺人ショウの数々だ
ろう。つまりは結論に行き着くまでの展開に、いつものよう
に手を代え品を代えの殺戮が、3Dで続くものだ。
特に前作までに登場した殺人ガジェットの数々が、博物館の
ように3Dで展示されていたのにはニヤリとしてしまった。
そんな長く続いたファンのための最後のプレゼントという感
じの作品でもある。
ただ観ていて考えたことは、第1作を観たときのドキドキが
さほど感じられなくなってしまったという悔しさだ。手を代
え品を代えのガジェットは今回も新たなもので楽しめるのだ
が、第1作の時の衝撃には及ばない。
それは慣れ以外の何ものでもないが、それが今回シリーズの
終結を決意した制作者たちの考えでもありそうだ。でもまあ
本作も全米No.1は記録したようだし、遠からずシリーズの再
開はあると考える。その時はまた初心に戻って、本当に恐い
作品を観たいものだ。

脚本は、シリーズは第4作から担当している2008年2月紹介
『フィースト』(2005年製作)などのパトリック・メルトン
とマーカス・ダンスタン。監督は、第1作から第5作までの
編集者で前作から監督に昇格したケヴィン・ゲルタートが引
き続き担当した。
他のスタッフ陣にもシリーズを通しての人材が多いのがこの
シリーズの特徴だ。
出演は、全作に登場したトービン・ベル、第3作から登場の
ベッツィ・ラッセルとコンスタンス・マンディラー。また、
『ヤング・インディ・ジョーンズ』のショーン・パトリック
・フラナリーが新登場の他、第1作以来のケアリー・エルウ
ェズの再登場も注目だ。
なお、日本公開では巻頭に前作までのおさらいの特別映像が
付けられており、1年前の作品を忘れていても大丈夫なよう
になっていた。

『ハーモニー』“하모니”
来年1月に日本公開が予定されている韓国映画。韓国の女子
刑務所を舞台に、そこに収監された重罪犯の女性たちの人間
模様が描かれる。
主人公は殺人の罪で刑に服している。それは已むを得ない事
情による犯罪ではあったが、その罪の重さは10年の刑に及ぶ
ものだった。しかも彼女は収監時に妊娠しており、その子供
は無事に誕生して、女囚たちの間でアイドルのように育って
行くが…
女囚が子供を育てられるのは生後18カ月まで、その時までに
刑期が終っていない場合は里子に出されるのが規則だった。
そして刑期の終らない彼女は、その日までに一度外泊して、
子供に外の世界を見せることが必要だと考えていた。
そんなある日、刑務所をコーラス団が訪問し、その歌声に感
動した彼女は自分たちも歌いたいと考える。しかもそのコー
ラスが成功したら、自分と子供の外泊を許可してくれるよう
刑務所長に願い出る。
こうして主人公によるコーラス団の募集が始まるが、そこに
は故あって死刑囚の元音楽学校の教授や音楽学校を卒業した
ソプラノ歌手なども含まれていた。こうして刑務官のピアノ
を伴奏にコーラスの練習が始まるが。

この主人公を、2009年5月紹介『セブンデイズ』などのキム
・ユンジンが演じて、弁護士から女囚という見事な変身を見
せている。しかも前作はサスペンスで終始緊張感のある演技
だったが、本作では時折コメディの要素もあって演技の幅を
見せてくれた。
他に、2006年8月紹介『ユア・マイ・サンシャイン』に出演
のナ・ムニ、2009年『TSUNAMI』などのカン・イェウ
ォンが脇を固めている。
なお本作の製作では、韓国映画史上初めてチョンジュ女子刑
務所の内部での撮影が許可されたもので、映画の巻頭には韓
国内務省への謝辞が掲げられていたが、セットで撮影された
シーンにも実際の刑務所を見学して得た知識が活用されてい
るとのことだ。
また、本作の物語自体はフィクションとのことだが、女子刑
務所でのコーラス活動はチョンジュ刑務所での実話に基づい
ているようだ。
        *         *
 今回はまず、先日行われたイマジカの内覧発表会を見学し
てきたので、その報告から始めさせてもらう。
 この発表会については、2008年8月1日付の第164回でも
報告したが、今回は2年ぶりに開催されたものだ。その内容
では、まず第1試写室でオープニングの3D映像と、全体の
プレゼンテーション、それに3Dのコマーシャルが1本上映
された。
 その3D上映はRealD-3Dで行われたもので、3Dメガネは
お持ち帰り、前回は第2試写室でDolby-3Dだったが、今にし
て思うとやはりRealD-3Dの方が優れていると感じる。ただし
これも、最新型のMaster Imageには追い掛けられているとこ
ろだが。
 さらに別室では、オープニング3D映像のメイキングなど
も見せてもらえた。またARRI社の最新型ディジタルカメラも
展示されていたが、これは3K仕様とのことで、これでRED
社の4Kにどこまで対抗できるかというところだろう。因に
最近紹介した作品の中でも、『ソーシャル・ネットワーク』
と『サラエボ希望の街角』には、HAL-9000を思い出させる赤
い丸やshoot by REDのクレジットがされていたもので、RED
の浸透もかなりのものになっているようだ。
 この後は、現像工場の見学と別棟のモーション・キャプチ
ャースタジオで行われたAR=Augmented Realityのデモン
ストレーションも見学した。これは遠隔地でのモーション・
キャプチャーデータに直ちにキャラクターを合成してみせる
もので、この日は青海で行われているイヴェント会場と結ん
で実演が行われていたのだ。
 これらの技術が将来的に映画とどのように関ってくるか、
映画の将来にいろいろな夢を育ませて貰えた発表会だった。
 イマジカの久保田さん、今回もありがとうございました。
また次回もよろしくお願いいたします。
        *         *
 さて以下はいつもの製作ニュースを報告しよう。
 まずはジェームズ・キャメロンの情報で、今年4月25日付
でも報告した“Avatar”の続編について、2011年後半の製作
開始と、さらに2作同時に製作して2014年12月と2015年12月
に2年連続で公開することが発表された。
 この続編については、以前の情報では惑星パンドラの海洋
を舞台にしたのになるということだったが、さらにもう1本
はどのような背景で冒険が繰り広げられることになるのか。
いずれにしてもその背景はCGIで制作されるものだが、正
にイマジネーションの極致のような世界の構築を期待したい
のだ。
 またこの2作の製作に関しては、キャメロンは来年早々に
も脚本の執筆を開始して、年後半の撮影開始に臨みたい意向
とのことだ。
 ただしキャメロンには、この他にも“Cleopatra”の監督
をソニーで行うなど複数の情報もあるそうで、それらの製作
が何時になるか、いろいろ心配している向きもあるようだ。
        *         *
 続いては久しぶりにスティーヴン・スピルバーグ監督の情
報で、現在は2011年8月10日の全米公開に向けて第1次世界
大戦を舞台にした“War Horse”のポストプロダクションを
進めている監督の次回作として、“Robopocalypse”と題さ
れた計画が発表されている。
 この作品は、ダニエル・H・ウィルスンという作家の同名
の長編小説を映画化するもので、この原作本は来年6月7日
に刊行予定となっている。内容は、題名通りのロボットもの
で、報道ではロボットが人類に対して反乱を起こす物語との
ことだ。
 因に、原作者のウィルスンについては、2006年5月1日付
第110回で“How to Survive a Robot Uprising”という作品
を紹介した人物で、当時はまだ学生だった研究者が、その後
はテレビのヒストリーチャンネルで科学番組のホストとして
活動する傍ら、ロボット工学の研究書からヤングアダルト向
けのユーモアブックまで様々な書籍を出版。2009年に“The
Nostalgist”というウェブ小説を発表しており、今回は長編
デビューとなったようだ。
 原作本が未刊行でまだ詳しい内容は不明だが、脚本には、
『クローバーフィールド』などのドリュー・ゴダードが契約
しており、それなりの作品にはなりそうだ。
 なおスピルバーグの監督では、現在はピーター・ジャクス
ンと共作の“The Adventures of Tintin”もポストプロダク
ション中となっているが、その前は2008年の『インディ・ジ
ョーンズ』、さらに前は2005年の『ミュンヘン』で、本格的
なSF作品は同年の『宇宙戦争』以来となるものだ。
        *         *
 最後に、2012年7月20日の全米公開が予定されているクリ
ストファー・ノーラン監督による“Batman”シリーズ第3作
の題名が、“The Dark Knight Rises”と発表された。
 脚本は、監督の原案に、前作にも協力したデイヴィッド・
S・ゴイヤーがアイデアを追加し、監督と弟のジョナサン・
ノーランが執筆しているもので、来年春からの撮影が期待さ
れている。なお撮影は3Dではないとのことだ。
 さらにもう1本、トム・クルーズ主演“M: I”シリーズの
新作には“Mission: Impossible: Ghost Protocol”という
題名が付けられている。今までは番号だけだったが、そこに
名称が入った理由も知りたいところだ。
 こちらの脚本は、クルーズとJ・J・エイブラムスのアイ
デアから、テレビ脚本家のジョッシュ・アップルバウムとア
ンドレ・ネメックが執筆したもので、『レミーのおいしいレ
ストラン』などのブラッド・バード監督の許、すでに撮影は
開始されているようだ。



2010年10月24日(日) 第23回東京国際映画祭<コンペティション部門>

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※今回は、第23回東京国際映画祭のコンペティション部門※
※に出品された作品の中から、事前試写で観ることの出来※
※たものについて紹介します。なお、文中物語に関る部分※
※は伏せ字にしておきますので、読まれる方は左クリック※
※ドラッグで反転してください。           ※
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『わたしを離さないで』“Never Let Me Go”(イギリス・
アメリカ合作作品)
1993年の映画『日の名残り』の原作でブッカー賞を受賞した
カズオ・イシグロが、2005年に発表して再度ブッカー賞の最
終候補になった作品の映画化。
田園風景の中にひっそりと佇む寄宿制の学校ヘイルシャム。
そこでは子供たちが絵画や詩の創作を続けながら屈託なく暮
らしていた。美しいルースと聡明なキャシー、それにちょっ
と問題児のトミーもその一員だった。
やがて彼らは18歳になり学校を後にするが、3人はそのまま
コテージを借りて共同生活を続ける。そして3人に関るいく
つかの事件が起き、キャシーは「介護師」を目指すことにし
て、3人はそれぞれの道を歩み始める。しかし彼らの前途に
は過酷な運命が待ち構えていた。
物語は1950年代を分岐点とするある種のパラレルワールド物
と言える。ただしSFであってSFでない…、そんな感じの
作品だ。因に監督のマーク・ロマネクは、本作の物語を「過
酷な運命を懸命に生きることによって生まれるラヴ・ストー
リー」と定義しているようだ。

出演は、今年1月紹介『17歳の肖像』などのキャリー・マリ
ガン、次期“Spider-Man”でピーター・パーカー役のアンド
リュー・ガーフィールド、それに『POTC』のキーラ・ナ
イトレイ。他に、シャーロット・ランプリングらが共演して
いる。
ユアン・マクレガーが主演したよく似た内容の映画を2005年
7月にも紹介しているが、本作ではもっとしっとりと静かに
描いている。その静かさが心に染みる作品になっている。

『ブライトン・ロック』“Brighton Rock”(イギリス映画)
1947年にも映画化されたことのあるグレアム・グリーンの原
作を、1964年を舞台に再映画化した作品。
一見静かな海岸の町ブライトン、しかしその裏側では新興の
勢力と、旧来の地元の組織との熾烈な戦いが始まっていた。
そして地元組織の1人が殺され、その配下の若者によって復
讐が行われたとき、その犯罪の証拠が無辜のウェイトレスの
手に握られてしまう。
そこで若者はそのウェイトレスに接近し、その証拠の奪還を
目指すのだが、彼女の雇主もまたその事件の関係者だった。
そんな中で彼女は若者の真の目的も知らずに彼の真心を信じ
ようとするが…。
映画の背景とされた1964年は、イギリスで死刑が廃止される
前年ということだが、1930年代を舞台に描かれた原作の物語
も台頭する若者と旧来の組織の対決という図式で、それは正
に若者の台頭が始まる1960年代の物語を予見していたと言え
るとのことだ。

そんな物語が、フィルムノアールを思わせる演出の中で展開
されて行く。脚本と監督は、2007年『28週間後…』の脚本を
手掛けたローワン・ジョフィ。過去にはテレビの演出はある
が映画作品は初めてのようだ。
出演は2007年『コントロール』などのサム・ライリー。その
脇をヘレン・ミレン、ジョン・ハート、アンディ・サーキス
らが固めている。またヒロイン役のアンドレア・ライズボロ
ーは『私を離さないで』にも出ていたようだ。

『一枚のハガキ』(日本映画)
2007年5月紹介『陸に上がった軍艦』に続く映画監督・新藤
兼人による自伝を絡めた作品。
新藤監督は第2次大戦も末期になってから、30歳を過ぎなが
ら招集され、呉の海軍に所属、しかし軍艦はすでになく、そ
の任務は奈良の天理教本部や宝塚の大劇場などで、予科練兵
の宿舎を掃除することだったという。
しかし、当初100人いた同期兵は、上官のくじ引きで徐々に
戦地に転属されてほぼ全員が戦死。最後まで内地に残って終
戦を迎えたのは6人だけだったという。そんなくじ運だけで
生き残った新藤監督が、同期兵への思いも込めて描いた作品
だ。
物語の最初の舞台は奈良の天理教本部。その宿舎の掃除を終
えた時、100人の内の60人が上官のくじ引きでフィリピンへ
向かうことになる。そして主人公は、戦地に向かう兵士から
1枚のハガキを手渡される。
そのハガキは故郷の妻からのもので、そこには短いけれど愛
情のこもった文面が記されていた。そして兵士は、「自分は
多分戦死するから、もしお前が生き残ったら、故郷に行って
そのハガキは観たと伝えてくれ。」と託される。
こうしてハガキを託された主人公だったが、そのハガキの送
り主の妻や主人公自身にも、さらなる過酷な運命が待ち構え
ていた。

出演は、豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政。その周囲を大杉
蓮、柄本明、倍賞美津子らが固めている。映画はユーモアも
交えて描かれているが、戦争がもたらす悲劇を静かなタッチ
で描き出している。

『そして、地に平和を』“Et in terra pax”(イタリア映
画)
ローマ近郊の町を舞台に、出所してきたばかりの男と、若い
男性の3人組、大学に通いながら学資を稼ぐためにカジノで
働いている女性。そんな同じ町に暮らしながら、それまでは
顔も知らなかった男女が、ある切っ掛けから接近し事件を起
こして行く。
出所してきた男は仕事もなく、最初は断っていたドラッグの
売人を引き受ける。その男から麻薬を買った3人組。そして
3人はちょっとした弾みで女性に手を出し、その事件で警察
が動き出す。
こうして街角に目立ち始めた警官の姿は、ドラッグの売人た
ちにはやっかいだった。そこで住民たちは独自に犯人捜しを
始めるのだが、そこにもちょっとした問題が絡んでくる。こ
うして事態は八方塞がりの状態になるが…
映画は随所に複数の男女による話し合いのシーンが長廻しで
挿入され、それはそのシナリオや演出だけでも大変だったと
思わせる。だがそんな台詞満載の物語が、後半では一転して
アクション中心の展開となる。
その展開は、最初はかなり強引なようにも感じられたが、観
終ってみればそれなりのバランスで描かれていたようで、特
にクライマックスに至る経緯や、クライマックスでの映像は
鮮烈だった。

脚本と監督は、マッテオ・ポトルーニョとダニエレ・コルッ
チーニの共同で行われているが、2人はれぞれ大学で映画史
と批評研究で学位を取ったという評論家。そんな2人がヴィ
ジュアルアートと音楽関係で経験を積んだ上での、長編監督
第1作となっている。
因に監督たちは、混沌とした現代社会の中で生きる人々の心
理を描きたかったそうだ。

『サラの鍵』“Elle s'appelait Sarah”(フランス映画)
タチアナ・ド・ロネによる同名の原作の映画化。
1942年7月16日−17日に、ドイツ占領下のパリで起きたフラ
ンス警察によるユダヤ人迫害の悲劇。そこに隠された謎を、
アメリカ出身だがフランスに在住している女性ジャーナリス
トが追跡する。
その日、パリのユダヤ人はフランス警察によって老若男女を
問わず一斉検挙され、ヴェルディヴの屋内競技場にすし詰め
状態で留置される。そこではトイレも閉鎖され、食事は疎か
水もほとんど与えられなかった。
そのユダヤ人が去った後のアパルトマンに、主人公の夫の父
親の一家は引っ越してきた。そこに隠された悲劇も知らず。
そして主人公の追跡は、ヴェルディヴに連れ去られた1人の
ユダヤ人少女の数奇な運命をあぶり出して行く。
その時のヴェルディヴの記録は唯1枚の俯瞰写真以外ほとん
ど残っていないのだそうだ。それは何でも記録したナチスの
やり方にそぐわないが、実はそれがフランス警察によって独
自に行われたことだから…という台詞には、何よりこの悲劇
の重さが感じられた。
そして映画では、現代と過去とを巧みに交錯させて、その悲
劇の有り様を見事に再構築して行く。ホロコーストはアウシ
ュヴィッツだけでなく、収容所の被害者名簿に残っていない
人々も襲っていたのだ。

脚本と監督は、2009年に“Walled In”という作品などを手
掛けているジル・パケ=ブレネール。その監督が本作では、
ホロコーストをより身近な感覚で描きたかった…と映画化の
動機を語っている。
主人公のジャーナリストを、2008年6月紹介『ブーリン家の
姉妹』などに出演のクリスティン・スコット・トーマスが演
じている。他に、2003年4月紹介『夏休みのレモネード』な
どのエイダン・クインらが共演。

『ゼフィール』“Zefir”(トルコ映画)
物語の舞台は、時には深い霧が立ち籠める暗く寂しい高原地
帯。主人公の少女は、牧畜が中心らしいその場所に住む祖父
母の許で夏休みを過ごしていた。そこには友達もいたが、彼
女は早く母親が迎えに来てくれることを望んでいた。
そんなある日、彼女のミスもあって1頭の優秀な乳牛が霧の
中に消えてしまう。それと入れ替わるように母親がやってく
るのだが、束の間の親子の時間の後、母親は再び家を出て行
くと話す。それは母親が志願した仕事で、長く掛かる仕事だ
とも。そこで少女は母親の出発を阻止すべく行動を起こすの
だが…。
物語の結末については、何とも言えないものになっていた。
それが意味することも監督の言いたいことも、僕にはよくは
伝わらなかった。でもここに描かれた内容が、単に主人公の
我儘とも言い切れないし、これが一つの結末であることは確
かだろう。

監督のベルマ・バシュは1969年生まれ、イスタンブール大学
で英文学を専攻した才媛で、2006年初監督した短編がカンヌ
国際映画祭の短編コンペティション部門に正式出品されてお
り、その時の評価では、テーマ性などがベルイマンにも例え
られたそうだ。
という女性監督による本作は長編第1作となるが、本作もテ
ーマはかなり重いものになっている。しかしそこに至る過程
などにはいろいろ細やかな描写もあって、その辺には女性監
督らしさも感じられた。
因に、本作の背景となるトルコの高原地帯は、監督自身が子
供時代の夏休みに過ごした祖父母の田舎から想を得ていると
のことだが、本作のようなことが起こらなくても、かなりト
ラウマになりそうな背景だった。

『僕の心の奥の文法』“Hadikduk HaPnimi”(イスラエル映
画)
2002年11月4日付紹介の『ブロークン・ウィング』という作
品で、東京国際映画祭グランプリに輝いたニル・ベルグマン
監督による同作以来となる長編第2作。本作でもすでにエル
サレム国際映画祭で最優秀長編作品賞を獲得している。
舞台は、1960年代初頭のイスラエル。若者の間にはホロコー
ストの記憶もなく、制服姿の青年団など好戦的な風潮も露に
なっている。そんな環境の中に暮らす少年の物語。少年は青
年団に入る年頃となり、その入会の試練を1回はパスするの
だが…
他にも、少年の家の前に生えていた巨木がある日突然切り倒
されてしまうなど、少年の周囲にはいろいろ理不尽な出来事
が起きる。そんな周囲の状況に嫌気が差したのか、少年は自
ら成長を止めてしまう。しかしやがてそれでは居られなくな
って…
映画は、1991年にデイヴィッド・グロスマンという作家によ
って発表された原作に基づくとのことで、監督は22歳の時に
その原作を読んで感銘を受けたのだそうだ。しかし僕にはそ
の意味がよく理解できなかった。
大体、少年が成長を止めてしまうという設定自体が、前後に
何かの説明がある訳でもなく唐突で、その辺にも戸惑いも感
じてしまったところだ。
ただ穿って観ると、主人公の少年、口煩い母親、好色で普段
は良いが時に暴力を振るう父親、優しい姉、途中で居なくな
る祖母、それに近所のスパイかも知れない金髪女性などの登
場人物は、少年をイスラエルとしてそれぞれ関係国を準えて
いるようで…
特に、金髪女性と少年の父親が住居の壁を壊し続けるという
設定には、その尋常でなさもあって気になったところだ。さ
らに少年が縄抜けに執着しているという展開にも、何となく
イスラエルという国家が抱えるディレンマの様なものも感じ
てしまった。
でもそんな見方は間違っているのかな…、その辺がちょっと
気になる作品でもあった。


『隠れた瞳』“La mirada invisible”(アルゼンチン・フ
ランス・スペイン合作映画)
舞台は、ブエノスアイレスにある国家の英雄も多数輩出した
という名門の国立校。そして背景は、1983年3月、アルゼン
チンで6年間続いた軍事独裁政権に対する抵抗勢力の動きが
顕著になり始めた頃の物語。
1人の女性教員がその学校に赴任してくる。23歳でまだ若い
彼女は、不正を見逃さず常に正しいことをしたいと心掛けて
いた。そんな彼女に上司の主事は、「隠れた瞳」となって学
校の不正を見つけるように指示する。
その指示を真面に受けた彼女は、構内でタバコの吸殻を発見
したことを切っ掛けに、生徒の喫煙の事実を発見しようと考
える。それは構内の見回りから始めるが、やがて一番怪しい
男子生徒のトイレに潜むことになる。
ところがその環境が彼女の精神にも影響を及ぼし始めて…。
授業では英雄論や戦争論が教えられ、正に軍政直中という感
じの学校。しかしそれも末期という状況が各所に歪みを生じ
始めている。そんな社会の縮図のような学校がやがて崩壊し
始める。
アルゼンチンの近世史の学ぶと言うことでは理解も生じる作
品かも知れないが、部外者にとっては結局何が言いたいのか
よく判らない作品だった。
1976年生まれのディエゴ・レルマン監督は、混沌とした社会
の中での主人公女性の成長を描いたとのことだが。確かに幼
い精神の持ち主だった女性が結末ではそれなりの成長はして
いるが、この作品の展開ではそこに特別な意味があるように
も取れなかった。


『一粒の麦』“Daca bobul nu moare”(ルーマニア・セル
ビア・オースリア合作映画)
コソヴォで売春を強いられている娘を探すルーマニア人の父
親と、ルーマニアで事故死した息子の遺体を探すセルビア人
の父親。その2人の父親がドナウ川の正規でない渡し船で出
会い、その船の船長が昔その地で起きた出来事を語り出す。
その出来事とは、ルーマニアがカトリックのウィーン王朝に
支配されていた時代のこと、正教会に帰依する住民は教会の
建設を禁止され、その法の目を潜って隣接の村に建っていた
古い木造の教会を移築しようとする。
そして数10頭の牛と人力で教会の移動が始まるのだが…。そ
の物語と並行に、不思議な乗物で遺体を探す父親の物語と、
偶然に同行した娼婦の手引きでコソヴォに向かう父親の物語
が描かれる。
それは時としてユーモラスで、また一方でかなり残酷な物語
にもなって行く。
大きな建物を曳いて行くという映像は、2002年2月に紹介し
た『シッピング・ニュース』を髣髴とさせるが、本作も同様
にユーモアと残酷さが入り混じった作品だった。題名の持つ
意味がそこにも観えてくるが、それが必要なのかどうかはや
はり悩むところだ。
特にコソヴォに向かった父親の物語の結末は、自分が子を持
つ親としては痛切にその痛みを感じてしまう。

1960年生まれのシニツァ・ドラギン監督は、普段はカメラマ
ンとして働き、長編の監督作品は3作目だそうだが、各国の
国際映画祭でも受賞歴があるとのこと。その演出は落ち着い
ていて、ベテランの味も感じられた。
宗教的な背景を持つ作品ではあるが、物語自体にはあまり宗
教臭さはなく、むしろ寓話的に扱われていた。その意味もあ
まり深く考える必要はなさそうで、その映像の美しさが楽し
める作品だった。

『小学校』“¡Primaria!”(スペイン映画)
国立大学の芸術学部で学部長を務めた人物が小学校の教師に
なったら…という、ちょっとメルヒェンなところもある学園
ドラマ。
その先生が教えるのは3年D組。クラス担任は若いが熱意の
ある女性教師で、クラスには多動症という病の子供もいて、
彼には定期的に薬を飲ませる必要がある。でもそれは同級生
の生徒たちが対応してくれる。
そんなクラスを相手に先生は「美術とは何か」という授業か
ら始めるのだが、当然生徒たちは集中してくれない。そこは
担任の女性教師が教室に入って、見事に対応してくれたりも
する。
一方、他のクラスの担任では、一見やる気の全くなさそうな
ベテラン女性教師も居たりして…そんな中で先生はピカソの
「ゲルニカ」を解説して、父兄からやりすぎだとの抗議の電
話が掛かったり、それでも次にはダリを解説したり…
そして徐々に成果を挙げ始めた先生は、年度末の発表会で目
玉となる演劇の大任を担うことになる。それは、北欧神話に
おける世界の始まりの物語という壮大なものだった。そして
多動症の生徒などもうまく使った演劇が始まる。
こんな物語が、ちょっとアヴァンギャルドなシーンや、生徒
役の子供たちが自身で描いたらしいカラフルや奇想天外な絵
画の数々と共に描かれて行く。その中に教師自身の問題や生
徒の家族の問題など盛り込みながら。
欲張った内容の割には物語はよく整理されていて、観ていて
気持ち良く楽しめる作品になっていた。それは、僕が審査員
ならこの作品をグランプリに推したいほどのものだった。

脚本と監督は自らも教師経験があるというイバン・ノエル。
脚本には先生役で主演したフランシスコ・アルフォンシンも
関っているそうだ。

以上でまず10本。なお今年の東京国際映画祭コンペティショ
ンには、全部で15作品が選出されており、9月19日付で紹介
した『海炭市叙景』もそこに含まれます。残りの4本は後日
掲載の予定です。
その他の部門も、今年は30本程度観ることができそうです。
それらの作品も来週以降に順次紹介しますので、よろしく
お願いします。



2010年10月17日(日) サラエボ希望の街角、嘘つきみーくんと…、バスキアのすべて、ソーシャル・ネットワーク、極悪レミー、狼の時代/Date...+製作ニュース

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『サラエボ、希望の街角』“Na putu”
2006年ベルリン国際映画祭で処女作の“Grbavica”(邦題:
サラエボの花)が最高賞の金熊賞に輝いたヤスミラ・ジュバ
ニッチ監督による長編第2作。本作も、惜しくも受賞は逃し
たが、今年の金熊賞候補に選ばれている。
主人公は、サラエボに住むフライト・アテンダントの女性。
彼女は航空官制官の男性と同棲していたが、2人や祖母も望
む子供にはなかなか恵まれなかった。そして彼女は人工授精
も考えるようになっていた。
そんなある日のこと、男性が職場内での失敗から一時休職の
事態となる。しかし、男性にはその原因となった飲酒の癖を
止めることができなかった。そして家でぶらぶらしていた男
性は、昔の戦友の伝でパソコン教室の講師の職を得ることに
なるが…
その戦友はイスラム原理主義者で、その勤務先は原理主義者
たちが集団で暮らしているキャンプの中。この経緯に主人公
の女性は原理主義者たちによる洗脳を危惧し、男性に就職を
断るように頼むのだが。
脚本も手掛けている女性監督の弁によると、登場する宗教は
何でも良かったが、両親も帰依するイスラム教が身近で、自
然とそれで描くことにしたとのことだ。しかし我々にとって
イスラム原理主義と言われると、どうしても構えてしまう部
分がある。
そんな展開で話は進んで行き、当然のように男性は原理主義
へと走り、2人の間に亀裂が生じて行く…。という物語が、
サラエボ近郊の美しい自然や怪しげなキャンプ、それに巨大
モスクの内部などの映像と共に綴られて行く。
監督自身はイスラム教徒ではあるが原理主義者ではないと称
しており、物語も原理主義に対しては批判的な面も描かれて
いる。しかしそれを完全に否定している訳ではなく、僕らの
目からすれば容認しているようにも取れてしまうものだ。
だからそんな目で観ていると、主人公の態度には歯痒さもあ
るし、僕としては、ラマダン明けの祝いのシーンで描かれる
祖母の態度に一番共感できるところがあった。
邦題に付けられた「希望」という言葉には、�,海Δ靴燭い�
いう望みと、�¬世襪ぬね茲悗陵輯兇箸いΓ欧弔琉嫐�がある
と思う。本作は当然�△諒�だが、�,伴茲辰疹豺腓砲蓮∨楮�
で具体的な「希望」を述べているのは同棲相手の男性だけ、
それにはちょっと危険な感じもした。
因に原題は「道の途上」という意味だそうだ。また監督自身
の「希望」は、ルーマニアの再統一のようだ。

出演は、ヨーロッパ映画界において有望な若手に対して贈ら
れるShooting Stars賞を本作で受賞したズリンカ・ツヴィテ
シッチと、プロデューサーも務めるレオン・ルチェフ。特に
ズリンカは日本人にも親しみやすい顔立ちの女優で、彼女の
他の作品も観たいものだ。

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』
2006年の電撃小説大賞で最終選考に残ったという入間人間原
作の映画化。
何だか意味不明の題名だが、登場するのは間違いなくその通
りの2人。そして物語は何故2人がそうなったかを綴って行
く。
ただまあその原因というのが、確かにこんなこともあるかと
は思うがかなり残酷なもので、一般常識からすれば容認しが
たいものだった。さらに物語では、そこに現在進行中の連続
通り魔殺人事件と、幼児の誘拐事件が絡んでくる。
正直に言って僕は、映画の前半ではミヒャエル・ハネケの一
部の作品のような居心地の悪さを感じていた。もちろんそれ
はハネケほどの完成されたものではないが…。でもこんな作
品が一部では持て囃されていることも現実なのだろう。
またテーマ的には、前回紹介した『白夜行』に似たところも
あるが、それも東野ほどには完成はされていない。ただハネ
ケ/東野よりお話の詰めが甘い分、観客としては気楽に観て
いられるかな…?そんな風には感じられた。
しかし、いずれにしてもあまり気持ちの良い話ではないし、
一昔前ならこういう内容はタブーだったのではないかな。そ
れが最近では、このような内容でも描ける「自由」が映画に
は与えられているようだ。

出演は、まーちゃん役には1991年生まれ、2007年『ケータイ
刑事シリーズ』に6代目銭形海役で主演などの大政絢、みー
くん役は2006年7月紹介『フレフレ少女』や2008年2月紹介
『泪壺』などに出演の染谷将太。その脇を田畑智子、鈴木京
香らが固めている。
脚本と監督の瀬田なつきは、2009年1月に紹介した『kis
s!』に「あとのまつり」という作品が記録されているが、
僕は観られなかった作品のようだ。その他にもすでに長編が
何本もあってインディーズでは知られた監督、その商業作品
第1作となっている。
なお、主題歌を柴咲コウが歌っていて、また挿入歌では荒井
由実の「ルージュの伝言」を柴咲がカヴァーしているのも話
題になりそうだ。また本作と『白夜行』は、共に東京国際映
画祭で公式上映されることになっており、その際の特に外国
人観客の反応が楽しみだ。

『バスキアのすべて』
      “Jean-Michel Basquiat: The Radiant Child”
1996年にジュリアン・シュナーベル監督が映画化した『バス
キア』などでも知られる27歳で夭逝した画家の生涯を描いた
ドキュメンタリー。
バスキアは、1960年にニューヨークのブルックリンで、ハイ
チ出身の父親とプエルトリコ生まれの母親の間に生まれた。
移民の子ではあったが、父親は公認会計士、家庭は中流で、
母親は幼いバスキアをよく美術館に連れて行ったそうだ。
そのバスキアは、7歳の時に自動車にはねられて入院、脾臓
摘出の手術を受けたが、その際に母親から贈られた解剖学の
本の図版が後の彼の作品のモティーフになっている。しかし
その年に両親は離婚。バスキアは2人の妹と共に父親に引き
取られ成長する。
17歳の時にバスキアは、友人と共に架空の宗教家のキャラク
ター<SAMO>を創り出し、ダウンタウンでその署名入り
の落書きが話題となる。そしてハイスクールを中退。家も出
て、手書きの絵葉書やTシャツなどを売りながらその日暮ら
しの生活を始める。
やがてクラブの常連となり、バンド活動などを経て若手芸術
家のグループ展に参加。そこで画商や評論家、そしてアンデ
ィ・ウォーホルらにも認められることになる。こうして瞬く
間にスターの座に登り詰めたバスキアだったが…

この作品は、バスキアの友人だった女性監督のタムラ・デイ
ヴィスが、彼の死の2年前に撮影したインタヴューに基づく
もので、実は監督はそのフィルムの公開については、友人か
ら個人的に贈られた作品を転売するような感じて、躊躇いが
あったようだ。
しかし2006年のサンダンス映画祭に短編映画として上映した
際に、これは自分の所だけに留め置いてはいけないと考え、
関係者への新たなインタヴューや、アーカイブ映像などの追
加編集を経て本作を完成させている。
その作品には、正に「バスキアのすべて」が描かれており、
特にバスキアが生の声で自分自身を語る姿は素晴らしいもの
だった。
その他にも、ストリートアートの先駆者キース・ヘリングや
ジュリアン・シュナーベル監督、それにアンディ・ウォーホ
ルらも登場する。そこにはまた1980年代のアートシーンも見
事に描き出されていた。
なお、今年はバスキアの生誕50周年に当っており、本作はそ
の記念作品。今年1月のサンダンス映画祭でプレミア上映さ
れたものだ。

『ソーシャル・ネットワーク』“The Social Network”
インターネットを通じて会員間の交流を促進するソーシャル
・ネットワーク・サーヴィス(SNS)の中でも、世界最多
の登録者数を誇る「フェイスブック」の創設者マーク・ザッ
カーバーグの姿を描いた実話に基づく物語。
その物語を、2008年3月紹介『ラスベガスをぶっとばせ』な
どのベン・メズリックの原作から1992年『ア・フュー・グッ
ド・メン』などのアーロン・ソーキンが脚色、2007年4月紹
介『ゾディアック』などのデイヴィッド・フィンチャー監督
が映画化している。
2003年10月、ハーヴァード大学の学生だったマークは、ガー
ルフレンドとの喧嘩をきっかけにインターネットを使ったあ
るサーヴィスの提供を思いつく。それは学生たちの交流を目
的としたオープンなSNSの構築だった。
しかしそのとき彼は、学内の名門クラブに所属する名士を親
に持つ学生から別のSNS構築の相談も受けていた。ところ
がその相談には耳を貸さなかったマークは、独自にSNSを
立上げてしまう。そしてそれは瞬く間に巨大な規模へと発展
するが…
それはやがて、莫大な損害賠償を請求される訴訟地獄へと彼
を陥れることにもなる。
映画は、この訴訟における交渉テーブルでの証言の模様など
を軸に「フェイスブック」が成功して行く様子や、その間に
マークが協力を求めたナップスターの創設者ショーン・パー
カーなどの姿も描いて行く。
物語は実話に基づくものだから、こんなにあれよあれよとい
う間に大成功を納めてしまうのも実話。その上、その間の主
人公の不適切な行動が彼自身に様々な禍をもたらす…それも
実話に基づいている。しかもそれがたった7年前に始まった
お話なのだ。

出演は、2006年9月紹介『イカとクジラ』などのジェシー・
アイゼンバーグ。その他には次期“Spider-Man”でピーター
・パーカー役に決ったアンドリュー・ガーフィールド、グラ
ミー賞受賞歌手でもあるジャスティン・ティンバーレイク。
それに、フィンチャー監督の次回作品“The Girl with the
Dragon Tattoo”に主演が決定しているルーニー・マーラら
が共演している。
現代が舞台で、魔法も特別な新発明も出てこないお話だが、
実にファンタスティックでわくわくしながら画面に見入って
しまう作品だった。いやあ、現代も実に面白いドラマが誕生
している世界だと再認識させられた。

『極悪レミー』“Lemmy”
1975年イギリスで結成されたハードロックバンド=モーター
ヘッドを今も牽引しているベーシストでリードヴォーカルの
レミー・キルミスターを追ったドキュメンタリー。
レミーが牽引するバンドは、結成当時にはそのヴィジュアル
や過激な歌詞の内容から「史上最悪のバンド」と評されたそ
うだ。その多くを担ったのがレミー本人ということで、本作
の邦題もそのように付けられている。
しかし本作に登場するレミーは、初っ端から「最も影響を受
けたロックバンド」としてビートルズを挙げるなど至極まと
もで、創られたイメージとのギャップを感じさせる。それは
還暦を過ぎた大人の処世術にも観えるが、実際に彼の音楽に
対する姿勢もそこにあるようだ。
それはまた、ベースをギターのように弾きこなす彼のテクニ
ックにも普通ではないものを感じるし、また息子に対する思
いを語るシーンなどには、「極悪」というレッテルとは異な
る1人の男性の姿が描かれていた。
正直に言って「極悪」というレッテルを気にしてこの映画を
観なかったら損することになりそうだ。この映画には還暦を
過ぎても見事にロックしている男が描かれている。しかもそ
こには、世間におもねることなく自ら貫いている男の姿も描
かれていた。
なお映画ファンには、以前から交流があったというビリー・
ボブ・ソーントンとの歓談のシーンが楽しめる。特にソーン
トンが語る『チョコレート』の出演料の話などは、興味深い
ものがあった。
その他、ロック・ミュージシャンからプロレスラーまで数多
くの証言者がレミーについて語るシーンも面白かった。
他に薬物に関する発言なども、いろいろ問題はあるが彼なり
の見識には基づいているようで、それはそれとして理解はし
てあげられるような感じもしたものだ。もっとも根本的な部
分が間違っているかとは思うが。
なお映画には、アーカイブも含めて数多くのモーターヘッド
の演奏シーンが収録されており、耳を聾するその音楽も存分
に楽しむことができる。


『狼の時代』
『Date...』
今年8月に紹介した「青春H」シリーズの第2弾となる2作
品が製作され、今月30日から東京のポレポレ東中野でレイト
ショウ公開される作品のDVDが届いた。
前回の2作品はいずれもファンタシー系の味わいのある作品
だったが、今回はその傾向は無くされたようで、2作品とも
どちらかというと普通のドラマが展開されていた。
その内で先に観た『狼の時代』は、デイトレードで大金を稼
いでいる女と、3つの仕事を掛け持ちしてもその日暮らしの
男の物語。そんな2人がある切っ掛けで出会い、互いに求め
合う存在となって行くのだが…
脚本・監督の内藤隆嗣は、ぴあフィルムフェスティバル(P
FF)の出身、その受賞後のスカラシップで製作した『不灯
港』という作品が海外の映画祭でも評価されたようだが、本
作を観る限りは何か消化不良の感じだ。
出演は、グラビアアイドルの相川由季と、8月紹介の『ゴー
ストキス』にも出演していた林下友昭。林下が演じる硬派の
男というのは、現代にそれなりのインパクトは持つが、ここ
までやるなら結末は逆の方がすっきりするのではないかな…
そんな感じがした。
次に観た『Date...』は、2004年のアメリカ映画『デート・
ウィズ・ドリュー』を基に、売れない俳優が憧れのグラビア
アイドルにデートを申し込もうと悪戦苦闘する姿をドキュメ
ンタリータッチで描くというもの。ただしこの男がかなりエ
キセントリックで…
脚本と監督の藤原健一は、2001年『暗黒街』などの作品があ
るようだが、本作のテーマは監督に合っていたのだろうか。
コメディにしては未消化だし、アクションにしても中途半端
な感じがした。
出演者の中で、鈴木拓也、姑山武司、茅野雅生は『ゴースト
キス』にも出演していた顔ぶれ。一方、女性レポーター役の
杉崎歩美についてはデータが得られなかったが、元体操選手
なのかな、随所で身体の柔らかさが強調されていた。
両作とも「青春」というのにはちょっと登場人物の年齢が高
い気もしたが、まあ青春の定義は年齢だけではないだろう。
その一方で、「H」の部分に関しては第1弾の2作より強め
られている感じだが、シリーズはこの先どちらの方向に進む
のか、多少気になるところだ。

        *         *
 今回の製作ニュースはこの話題から。
 実は、こうなることも事前に多少は心配していたのだが、
11月に全世界一斉公開される『ハリー・ポッター』シリーズ
最終話“Harry Potter and the Deathly Hallows”の前編に
ついて、予告されていた3Dでの上映がキャンセルされるこ
とになった。
 これは、今年2月1日付の製作ニュースでも紹介したが、
“Deathly Hallows”の3D上映はあくまでも『タイタンの
戦い』の成功が前提だった。で、その興行自体は悪い数字で
はなかったのだが、3D変換の出来に関してはあまり芳しい
評価が得られなかった。
 そこで“Deathly Hallows”の3D変換に関しては、より
慎重な変換作業を行うことにしたのだが、それでは11月19日
の世界一斉公開に時間が足りなかったとのことだ。
 3D変換の技術に関しては、以前から述べている『Gフォ
ース』や『アリス・イン・ワンダーランド』でも成功の実績
がある訳だし、充分な時間と経費を掛ければ問題はないはず
のもの。しかし前回紹介した“The Phantom Menace”の変換
には15−27カ月の時間が掛かるとの報道もあるようで、今年
に入ってからの作業開始では、到底その時間が足りなかった
ということになるようだ。
 ただし、来年7月15日に公開予定の“Deathly Hallows”
の後編に関してはその時間も充分にあるので3D上映の方針
は変えないとのこと。さらにその2週間ほど前から3D変換
された前編の限定上映…との観測もあるようだが、その頃に
は各社の夏の大作が出揃い始めて、3D上映館の数が揃わな
いという状況もあるようだ。
 いずれにしてもホグワーツ魔法学校の3D映像が観られる
のは来年7月までお預けになりそうだが、それが成功したら
前編の3D再公開や、さらに遡って『賢者の石』からの3D
再公開の可能性も無いとも言えない。その期待も持って来年
7月を待ちたいものだ。
 もちろんその前に、11月19日からの前編も楽しみだが。
        *         *
 次もワーナーの情報で、2007年『スーパーマン・リターン
ズ』公開の後、滞っていたシリーズの再々開を、『300』
などのザック・スナイダー監督で進めることが発表された。
 この“Superman”の新作に関しては、前作を手掛けたブラ
イアン・シンガー監督のアイデアでは進めないことが決定さ
れ、その後は今年3月7日及び15日付の製作ニュースで紹介
したように、『ダーク・ナイト』などのデイヴィッド・S・
ゴイヤーによるアイデアをワーナー側が採用したとの報道も
されていた。そしてクリストファー・ノーラン監督の期待も
高まっていたものだが…
 そのノーラン監督には“Batman 3/The Dark Knight 2”
の全米公開を2012年7月20日とすることが発表され、来年は
その製作に携わることが確定した。これでは“Superman”の
契約上で必要な、新作を来年中に製作開始することが困難に
なっていたものだ。
 そこで信頼の置ける監督の選考が行われたものだが、そこ
にスナイダー監督が浮上したということだ。因にスナイダー
監督は、シンガー監督の不採用が決まった直後にも一度の名
前が挙がっていたそうだが、そのときは適当なストーリーの
アイデアが無く断念されていたのこと。それが今回は、ノー
ラン=ゴイヤーのアイデアという強力な布陣での監督登板に
なったもので、これは正に鬼に金棒(どちらが鬼で、どちら
が金棒か判らないが)という感じだ。
 なおノーランは、夫人のエマ・トーマスと共に製作者とし
て“Superman”計画全体に眼を光らせることになっている。
またこの製作者には、『ウォッチマン』などを手掛けた監督
夫人のデボラ・スナイダーも名を連ねていて、両夫妻総出の
製作になるようだ。
 前作に主演したブランドン・ラースは新作に出る気はない
ようで、製作準備は主演俳優の選考から始まることになる。
ただし、本作の全米公開もワーナーでは2012年のクリスマス
を期待しているようで、これから年末に掛けてキャスティン
グやロケハンなど、監督は目茶苦茶忙しくなりそうだ。
 因にスナイダー監督は、現在公開中の3Dアニメーション
作品『ガフールの伝説』の監督も手掛けているが、この作品
で見せた飛翔シーンの美しさも、“Superman”の新作に活か
してもらいたいものだ。
        *         *
 最後に、前回報告した“The Hobbit”の映画化について、
共同製作を行うニューラインとMGMの両社から正式のゴー
サインが出されたようだ。
 実はまだMGMの去就も定まらないし、ニュージーランド
俳優組合とのトラブルも解消していないが、とりあえず来年
2月からの撮影開始は決定事項となっている。また監督には
ピーター・ジャクスンが復帰する模様で、2012年の第1部と
その翌年の第2部公開も現実的になってきたようだ。



2010年10月10日(日) デザート・フラワー、ウッドストックがやってくる、ライトノベルの楽しい書き方、ヤコブへの手紙、花々の過失、白夜行+製作ニュース

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『デザート・フラワー』“Desert Flower”
世界的なスーパーモデルで、1987年の『007/リビング・
デイライツ』にも出演していたワリス・ディリーの半生を描
く実話に基づいた作品。
ソマリアの貧しい遊牧民の家に生まれ、封建的で差別的な暮
らしに耐え切れず、たった1人で砂漠を越えた少女の物語。
そして少女は、都会に住んでいた叔母の伝で英国駐在大使に
任命された叔父一家のメイドとなり、ロンドンへと向かうの
だったが…
母国ソマリアで政変が発生し、大使一家に帰国命令が出たと
き、彼女はパスポートだけを手に大使館を脱出、路上生活者
となってしまう。しかも彼女は、6年間もロンドンで暮らし
ていたのに大使館の中だけの生活で、英語をほとんど学んで
いなかった。
ところがそんな彼女は、アパレルショップでアルバイトの店
員をしながらオーディションを受け続けてる女性と出会い、
片言ながらも意気投合した2人は共同生活を開始。さらにそ
の女性の伝でハンバーガーショップで働いていたとき、彼女
に大きな幸運が舞い込む。
と書いてくると、何ともありがちなシンデレラストーリーの
ようだが、実は彼女には、ソマリアでの幼少時代に受けた大
きな秘密があった。その秘密が、彼女がスーパーモデルにな
って以後、徐々に明らかになって行く。
その秘密=FGMについては、僕はすでに2006年3月に紹介
した『母たちの村』でも知っていたものだが、今もなお毎日
6000人以上の子供たちがその被害に遭っているとの報告も映
画の中では紹介されていた。
そして本作は、そのFGM撲滅のため自らの体験を告白し、
ニューヨーク国連本部の演壇にも立った女性の物語なのだ。
しかしその一方でこの映画では、ロンドンで文化的に暮らし
ている人たちの中でさえ、その因習への賛同者がいるという
現実も紹介している。

ワリス・ディリーの自伝からの脚本と監督は、日本には初紹
介になるが、アメリカ生まれのドイツ系女性監督のシェリー
・ホーマンが担当。また主人公のワリス役には、自身もアフ
リカ系スーパーモデルのリヤ・ケベデが扮している。
他には、2006年6月紹介『レイヤー・ケーキ』などにも出演
のサリー・ホーキンス、ティム・バートン作品や『ハリー・
ポッター』シリーズでお馴染みのティモシー・スポールらが
共演。
こんな恐ろしい現実が今も続いている。それを我々は知らな
ければならない。
特に女性には観てもらいたい映画だ。

『ウッドストックがやってくる!』“Taking Woodstock”
台湾出身のアン・リー監督が、1969年8月15〜17日に開催さ
れた「音楽と芸術の祭典ウッドストック」の舞台裏を綴った
実話に基づくドラマ作品。
アポロ11号が月面に着陸した頃のお話。この映画の原作者で
もあるエリオット・タイバーは、グリニッジ・ヴィレッジで
デザイナー/アーチストとしての成功を納めていた一方で、
ニューヨーク州ホワイトレイクにある両親の営むモーテルの
手伝いにも追われていた。
そんな彼の唯一の慰めは、会長職を任されている地元商工会
のイヴェントとして自分の好きな音楽による町興しを企画す
ること。そしてその年も、音楽会の開催は彼の発議によって
商工会の承認を得ていた。しかし、具体的な内容はまだ何も
決っていなかった。
そんなとき、彼は1つの新聞記事を目にする。それは近隣の
ウォールキルの町で行われる予定だった大規模な音楽祭が、
地元民の反対で開催許可を取り消されたというもの。そこで
エリオットはその主催者に電話を掛け、彼の地元での開催を
働き掛けた。
すると主催者の1人はヘリコプターでホワイトレイクに駆け
つけ、他の関係者も次々に現地を訪れる。そしてエリオット
は彼のモーテルから3kmほど先の牧場を借り受けに成功。彼
のモーテルを本部にして音楽祭の準備が開始された。
ウッドストック音楽祭は、その2年前の1967年にカリフォル
ニア州モンタレーで行われたポップフェスティヴァルの成功
を観たニューヨークのプロモーターたちが企画したもので、
そのときすでに前売りは18万枚に達していた。
そんな音楽祭の実施。しかも公称の入場者数は20万人だが、
実際には40万人の人々がその地に集まったとも言われる。た
だし集まった人々の大半はコンサートの模様はほとんど観ら
れず、その周囲ではドラッグやフリーセックスなど、正に解
放区が実現されたというものだ。
そして主人公は、そんな歴史的な出来事の只中にいて、その
影響を真正面から受け、自らも成長して行った若者の姿が描
かれる。
僕自身が、それなりの規模のイヴェントで主催する側に立っ
た経験を持つ者としては、これは本当に眩しいばかりの憧れ
持って観られる作品だった。規模の違いこそあれ自分もそん
な中にいた、そんな記憶も懐かしく思い出された。それが僕
の青春だった。そんな青春を思い出させてくれる作品だ。

出演は、エリオット役をスタンダップ・コメディアンとして
数々の受賞歴を持つというディミトリ・マーティンが演じ、
共演は、2008年2月紹介『燃えよ!ピンポン』などのダン・
フォグラー、今年8月に紹介『ナイト&デイ』などのポール
・ダノ、2008年5月紹介『イントゥ・ザ・ワイルド』などの
エミール・ハーシュ。
さらに、2003年12月紹介『みんなのうた』などのユージン・
レヴィ、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』などのイメ
ルダ・スタウントン、今年7月に紹介『ソルト』などのリー
ヴ・シュライバーらが脇を固めている。
アン・リー監督としては、オスカー受賞の『ブローバック・
マウンテン』、2007年『ラスト、コーション』に続く作品。
製作と脚本は、2000年『グリーン・デスティニー』などを手
掛けて監督の片腕とも言えるフォーカス・フィーチャーズの
ジェームズ・シェイマスが担当した。
なお本作は、フォーカス社製作による監督主導の映画作品を
連続して上映する「監督主義プロジェクト」(DDP)と題
された企画の第1弾として日本公開されるものだ。

『ライトノベルの楽しい書き方』
2005年『電波男』などの著作本を持つ本田透による原作小説
からの映画化。
物語は、さかなオタクの冴えない男子高校生が、文武両道・
才色兼備で、しかも密かにライトノベルの人気作家でもある
同級生女子が作家修業として行う1カ月限定恋愛シミュレー
ションの相手をすることになり…というもの。
まあお話は在来り、それでどこかに多少の捻りでもあるかと
期待はしたがそんなものもあるはずはなく、まずは男子の願
望充足の物語が展開される。でも映画の展開には、ときどき
おや?と思わせる伏線などもあって、それなりに楽しむこと
はできる作品だった。

出演は、ハロプロ/キッズオーディション出身の須藤茉麻、
先月紹介した『君へのメロディー』などの佐藤永典、声優と
して活躍し初の本格的な実写作品出演という竹達彩奈、ミュ
ージシャンでホビー雑誌の連載も手掛ける能登有沙。
他に、声優で歌手としても人気のある國府田マリ子、2009年
『14歳のハラワタ』などに出演の五十嵐令子、同年『仮面
ライダーディケイド』で仮面ライダーブレイド役の鈴木拡樹
らが脇を固めている。
脚本は、ゲームクリエーター出身でアニメの脚本やコミック
スの原作なども手掛けているという高橋龍也。実写作品の脚
本は初めてとのことだが、それなりに壺を押さえたなかなか
の脚色を行っている。
そして監督も、長編の商業作品は初という大森研一が手掛け
ているが、こちらもCMやPV、それにショートフィルムで
は数々の受賞歴があるという実績は、本作でもそれなりに発
揮されていたようだ。
まあ正直に言って演技などにはぎこちないところがあるし、
演出のリズム感も万全というものでもないが、何となく若い
出演者やスタッフが一所懸命に頑張っている感じがして、そ
れが微笑ましくも思えた作品だった。

なお原作には続編もあるようで、同じスタッフ・キャストで
製作されるならそれも観てみたいものだ。

『ヤコブへの手紙』“Pstia pappi Jaakobille”
昨年のカイロ国際映画祭やマンハイム=ハイデルベルグ国際
映画祭でもグランプリを受賞しているフィンランド作品。
女性の終身刑囚が、自分は申請していない恩赦を受けて釈放
される。しかし、肉親のところへも帰れない彼女は、刑務所
の所長の勧めもあって恩赦の申請をしたヤコブという名の盲
目の神父の許を訪れる。
とは言え12年も獄中で過ごしてきた彼女の精神は荒みきって
おり、神父が求める簡単な作業にも乗り気ではないようだ。
それでも神父は彼女を暖かく迎え入れるのだが…
その神父の求める作業とは、神父の許に届けられる救いを求
める手紙を音読し、神父の話す言葉を筆記して返信するとい
うもの。だがそんな作業も嫌々の彼女は、届いた手紙の一部
を井戸に捨ててしまったりもする。
ところが、彼女が神父の許を訪れてからほどなくして、それ
までは毎日何通もあった手紙が届かなくなる。その事態に、
自分は必要とされなくなったと悲嘆する神父。そしてやるべ
き仕事のなくなった主人公は、神父の許を出ていこうとする
のだが…
主な登場人物は、主人公と神父と郵便配達の3人だけ。北欧
フィンランドのかなり寒そうな風景の中で、主人公の心の再
生の物語が綴られて行く。そしてそこに手紙というコミュニ
ケーションの手段が巧みに描かれている。

監督は、1971年生まれというクラウス・ハロ。彼がたまたま
インフルエンザで寝込んでいたときにメールで送られてきた
名前も知らない作家の手になる物語を読み、その内容に注目
して映画化を進めたとのこと。
その作者は、休職中に映画学校で学んでいたという40歳の元
ソーシャルワーカーの女性で、彼女もたまたま教師に勧めら
れて監督にメールを送ったもの。正に偶然の重なりがこの作
品を生み出したようだ。
出演は、ジャーナリスト・作家としても活動しているという
カーリナ・ハザードと、元国立劇場の主演俳優で舞台はすで
に引退しているヘイッキ・ノオウシアイネン。ベテラン演技
者たちの共演が見事な雰囲気を造り出している。

『花々の過失』
1950年生まれ秋田県出身のフォーク歌手友川カズキの姿を、
1979年生まれパリ出身の映像作家ヴィンセント・ムーンが撮
影したドキュメンタリー作品。
被写体の友川については、この歌声はどこかで聞いたことが
あると思っていたら、2004年7月に紹介した三池崇史監督の
作品『IZO』に出演、劇中で5曲も歌っていたそうだ。そ
の他でもこの歌声は聞いた記憶があるが、それがどこでかは
思い出せない。
そんな特徴のある友川が熱唱しているライヴステージの模様
と、友川の経歴、心情、家族のことなどが描かれている。
その友川は、中学生の時に掃除当番で入った図書室で、机上
に広げてあった本の中の中原中也の詩『骨』に衝撃を受け、
自らも表現者になることを決意して詩を書き溜める。そして
上京、路上で自作の詩集を売っていたがそれに飽きたらず、
独学のギターをかき鳴らして歌い始めた。
その絶叫調の歌声は「魂の詩人」「絶叫する哲学者」などと
も呼ばれ、1970年代には大島渚監督らの文化人からも賞賛を
受け、数多くのミュージシャンにも影響を与え続けていると
のことだ。
という友川の姿が、「ミュージックヴィデオの見直し」を提
唱しているというムーン監督によって撮影されている。そこ
にはライヴステージの模様だけでなく、ギターで作曲してい
る姿やスタジオでの録音風景なども描かれている。
さらに友川本人や、その他の人たちによるいろいろな友川の
エピソードなども語られる。その中では、友川は大島監督か
ら『戦場のメリー・クリスマス』への出演のオファーもされ
たが、標準語の台詞を求める監督に、友川が自らの秋田訛り
を譲らず断った話なども語られていた。
ただし、この他の人たちによる証言のシーンで、その人たち
と友川との関係が、後半に登場する息子以外は定かでなく、
どのような人たちによって語られているのかが理解できない
と、何か観ていて納得できない感じがした。
それに試写されたフィルムには英語の字幕が付いていたが、
それが肝心の友川の歌唱に対しては無く、詩が重要と思われ
る友川を描くには片手落ちの感じもした。それに英語字幕の
中で一人称のIが小文字なのも気になったところだ。
ただまあ、その辺のことは末節なのだろうし、
映画では友川
の歌唱の魅力については充分に描かれていたものだ。

『白夜行』
東野圭吾の原作で、1997年に雑誌連載が開始されて99年1月
号で完結、同年単行本が刊行された、文庫本では850ページ
にも及ぶ長編ミステリー小説の映画化。
物語の発端は昭和55年。密室状態の廃工場の中で質屋の店主
が殺された。その捜査に関った所轄署の刑事笹垣は捜索の中
で数々の疑問にぶつかるが、やがて事件は事故死した容疑者
のポケットから被害者のライターが発見され、被疑者死亡の
まま幕引きとなる。
しかし事件の結論に納得できない笹垣は、被害者の妻や質屋
の従業員だった男の後を追い続けた。それはやがておぞまし
い事件の全貌を明らかにして行くことになる。
この刑事の姿に、被害者及び容疑者それぞれの子供たちのそ
の後の人生が重ね合され、そこに学校での苛めや歪んだ性風
俗、その他のいろいろな現代社会の歪みが織り込まれて、平
成10年にまで及ぶ壮大なドラマが展開されて行く。

出演は、堀北真希、高良健吾、そして笹垣役に船越英一郎。
他に戸田恵子、田中哲司、福本史織、今井悠貴らが脇を固め
ている。監督は、2008年7月紹介『真木栗の穴』などの深川
栄洋が担当。
原作はすでに舞台化やテレビドラマ化、韓国での映画化もさ
れており、まあ言ってみれば満を持しての日本での映画化と
いうことになりそうだ。その映画化は、恐らくこれ以降にな
ると時代背景の捉え方が難しくなるぎりぎりの時期のように
も感じた。
つまり昭和55年から平成10年という時代設定が、今なら観客
にも余計な説明無く受け入れられそうだが、これ以降になる
と相当の説明を加えるか、時代設定そのものを動かさないと
観客の理解が困難になる、そんなぎりぎりの時期のような気
がした。
とは言え今回の映画化ならその心配は要らないもので、僕ら
にはちょっとしたノスタルジーを感じながら観ることができ
たものだ。それはまた主人公たちの成長とも重なり合って、
見事に時代を描き切った作品とも言える。
その時代考証や背景の風景の写し方の一つ一つにも納得ので
きる作品だった。
9月に紹介したミヒャエル・ハネケ監督の『白いリボン』と
も比較して論じたくなる作品だが、特に本作の悲しさは、ド
イツ作品とは異なる心理の深さを感じさせてくれた。

        *         *
 今回の製作ニュースは、まずはこの話題から。待望久しい
“The Hobbit”の計画がようやく動き出しそうだ。
 この計画に関しては、2003年『LOTR/王の帰還』の公
開直後からピーター・ジャクスンによる製作が公にされ、そ
の後は、監督にギレルモ・デル=トロが起用されるなど準備
が進められていた。
 ところが準備が進む中で、以前に同原作のアニメーション
を製作したことから映画化権の半分を持つMGMが共同製作
に加わったものの、同社の経営破綻などのあおり受けて製作
に待ったが掛かり、さらにMGMの経営権を売却するオーク
ションにも不成立が続いたことから製作の目途が全く立たな
くなってしまった。
 このためデル=トロ監督は、今年5月に已むを得ず降板を
表明。ただしその際に監督からは、「セットも衣裳も、怪物
たちや戦闘シーンのプランも全て完全に準備されている」と
の発言がされていて、後は諸問題が解決すればいいという状
況になっていたものだ。
 その諸問題に関して、まずMGM問題については、2009年
『インビクタス』なども手掛けるスパイグラス社が最終的な
話し合いに入っていると伝えられており、このまま何とか決
着されそうな気配にあるようだ。
 一方、監督に関しては、デル=トロの降板以降、ジャクス
ンが自ら監督に復帰するという表明はないものの、それ以外
の監督の情報も全くないという状況で、現時点で動き出せば
この2人のどちらかが手掛けることになりそうだ。
 ただしここにきて、製作者としてのジャクスンが撮影地を
『LOTR』3部作を撮影したニュージーランドから東欧に
移すことを発表。それに反発したニュージーランドの俳優組
合が、オーストラリア、イギリス、カナダ、アメリカなどの
俳優組合も巻き込んで本作製作へのボイコットを表明する事
態になった。しかしこれに対しては、何とニュージーランド
政府の首相のジョン・キーが収拾に乗り出したとの情報もあ
り、このまま行ってくれれば、来年早々からの撮影開始が実
現しそうな雰囲気になっている。
 計画では、JRR・トーキンの原作に基づいた第1部と、
その物語から『LOTR/旅の仲間』に繋げるジャクスンら
の書き下ろしによる第2部との2部作構成と言われる“The
Hobbit”の映画化が、僕らの前に登場する日も近づいてきて
いるようだ。
        *         *
 お次はその“The Hobbit”の監督にも一時名前の挙がった
サム・ライミ監督の情報で、“Spider-Man 4”からの降板は
決まっているライミが、“EDF”と題された作品をワーナー
に向けて売り込んでいる。
 この作品は、1997年『エアフォース・ワン』などのアンド
リュー・W・マーロウの脚本によるもので、物語は『トップ
・ガン』と『ラスト・スターファイター』と『インディペン
デンス・デイ』を合わせたようなものと称されているが、詳
細は不明。ただし物語の開幕では、米軍機と中国軍の戦闘機
が宇宙からの巨大な侵入者と戦っているというシーンがある
そうで、ローランド・エメリッヒばりの宇宙からの侵略が描
かれるようだ。因に“EDF”とは、Earth Defence Forceの略
称だそうだ。
 現状ではライミが監督も手掛けるかどうかは明確ではない
ようだが、脚本家はそれなりの実績もある人だし、まずは期
待して待つことにしたい。
        *         *
 最後に、10月23日から開催される第23回東京国際映画祭の
記者会見が行われた。
 それによるとまず今年のコンペティションには、世界76の
国と地域から応募された832本の中から15作品が選出され、
本賞の「東京サクラグランプリ」が競われる。その審査委員
長には1984年『狼の血族』などのニール・ジョーダン監督が
就任しており、その結果が楽しみだ。
 他にも特別招待作品やアジアの風、日本映画・ある視点、
ワールドシネマ、natural TIFFの各部門で計89本の公式上映
が予定され、中には生誕70周年を迎えたブルース・リーの特
集なども企画されているようだ。その他の関連企画を含める
と200本以上が上映される映画祭が、今年も近づいてきた。



2010年10月03日(日) 黒く濁る村、キック★アス、酔いがさめたらうちに帰ろう、ソフィアの夜明け、乱暴者の世界、とびだす絵本+製作ニュース

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『黒く濁る村』“이끼”
『苔』の題名で韓国で大人気を呼んだウェブ・コミックスの
映画化。2003年の大ヒット作『シルミド』を生み出したカン
・ウソク監督が本格ミステリーに初挑戦し、本作でも韓国で
340万人動員の大ヒットを記録した。
20年間も音信不通だった父親の死去の知らせ受け、主人公は
父が暮らしていたという山間の村を訪れる。そして喪主とし
て葬儀を執り行うことになるが、村人たちの態度には「早く
村を去って欲しい」という感情が見え見えだった。
そんな中で村長は彼を歓待しているふうにも見えるのだが、
その態度にも不信感が拭えない。そんな村民の態度もあって
父の死因を追求しようとする主人公は、知人の検察官にも応
援を求め、村に隠された秘密を追い始めるが…
原作のコミックスは、原題のハングルで検索すれば現在でも
ウェブ上で観ることができるものだが、コミックスの吹き出
しなどはGoogle翻訳に対応してくれないので、その展開など
はよく判らない。でも映画を鑑賞した後で観ると、なるほど
映画は原作の雰囲気をよく捉えている感じだ。
ただ、プロローグやエピローグが少し違うようで、その辺が
原作の中に示唆されたものかどうか、その辺が判らないのは
ハングルを読めない自分には心苦しいところだが。しかし、
映画に描かれた展開の壮大さが見事だったとは言うことがで
きる。
それに緩急付けるどころか、ほとんど緊張の糸を張ったまま
で2時間41分を演出し切ったウソク監督の手腕にも敬服とし
か言いようのない作品だった。また過去のいろいろな名作の
要素が、古典的とも言える的確な演出で見事に凝縮されてい
るのも素晴らしかった。

出演は、原作者が構想時に思い描いていたという『殺人の追
憶』などのパク・ヘイルと、『トンマッコルへようこそ』な
どのチョン・ジェヨン。特にチョンは、40代から70代までの
年齢表現を3時間掛けた特殊メイクと共に演じ切っている。
他に、昨年の東京国際映画祭では『よく知りしないくせに』
の題名で紹介されたホン・サンス作品にも出演のユ・ジュン
サン、2006年7月紹介『鬘』や2007年10月紹介『黒い家』な
どのユ・ソン、ウソン監督の前作にも出ていたユ・ヘジンら
が脇を固めている。
謎が謎を呼び、それが観客にも全く予測できない展開で話が
進んで行く。もちろんそれは原作を読んでいる人には承知の
ことかも知れないが、僕には、それを読んでいなかったから
こその醍醐味が味わえた。


『キック★アス』“Kick-Ass”
今年4月第2週の全米公開で初登場1位を記録したものの、
そのちょっと過激な内容から日本公開が危ぶまれていたアメ
リカン・コミックスの映画化が、ファンの要望に応えて劇場
公開されることになった。
物語は、全く冴えない普通の高校生が主人公。しかし、アメ
コミファンの彼には、荒んだ世の中に真のヒーローが現れな
いことが不満だった。そこで彼は、通信販売で手に入れた緑
のコスチュームに我身を包み、自らヒーローになることに挑
戦し始める。
とは言え超能力も資金力もない彼には真のヒーローになるこ
とは難しかった。ところが、それでも頑張っている彼の姿が
YouTubeに投稿されて、それが評判を呼び始める。そしてそ
の内に謎めいた協力者も現れて…
正しくアメコミヒーローの存在を逆手にとったという感じの
見事な作品。ただし原作は、マーク・ミラーとジョン・S・
ロミータJr.というベテランコミックス作家が手掛けている
から、その辺は壺を心得たもので、パロディなども含めて実
にスマートに描かれている。
ただまあ主人公の設定が現実的な分、描写はリアルにならざ
るを得ない面があって、実は映画の前半では、まあ脳天気に
笑っている餓鬼も多少はいたが、大人の評論家の多くは退き
気味だった。それが中盤に来てヒロインが登場した辺りから
一気に雰囲気が変化した。
これはもう演出上のテクニックとしか言いようがないが、今
回はそれに見事に乗せられた感じで、映画の後半は過激な描
写も何のその、思いっきり楽しめて最後にはカタルシスも感
じられたものだ。

製作、脚本、監督は、ガイ・リッチー作品の製作者で2006年
6月紹介『レイヤー・ケーキ』で監督デビューしたマシュー
・ヴォーン。今回は、前作2007年『スターダスト』にも参加
したジェーン・ゴールドマンとの共同脚本で、過激で暖かい
作品を仕上げている。また製作にはブラッド・ピットも名を
連ねていた。
出演は、2008年3月紹介『幻影師アイゼンハイム』で主人公
の若き日を演じていたアーロン・ジョンスンと、2007年公開
の“Superbad”で評価されたクリストファー・ミンツ=プラ
ッセ。それに2008年10月紹介『アイズ』などに出演のクロエ
・グレース・モレッツとニコラス・ケイジ。中でも、1997年
生まれのモレッツが演じたキャラクターは鮮烈だ。
因に本作には、同じスタッフ・キャストが揃う続編の計画も
進行中となっており、その第1作が劇場公開されたのは本当
に良かったものだ。

『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』
漫画家西原理恵子の元夫で、戦場カメラマンだった鴨志田穣
原作による自伝的小説の映画化。
とある居酒屋。宴会をしている若い女性を少し先のカウンタ
席から指でフレームを切って眺めている男がいる。やがて男
は椅子から転げ落ち、そこに妻と2人の子供が駆け寄って介
抱を始めるが…
居酒屋の店員に介抱された男は何とか母親と2人暮らしの家
にたどり着き、そこでも酒を飲み始める。そして吐血。救急
車で運ばれた男の許に離婚している妻も駆けつけるが、アル
コール依存症の男が吐血したのはこれが10回目だった。
こうして男は、元妻の勧めるアルコール依存症の専門医の指
導を受けることになり、さらに依存症治療の施設のある精神
病院にも入院する。そこでは様々な患者たちと顔を合わせ、
そんな環境の中で男のアルコール依存症は治療されて行った
のだが…。
以前にも書いたと思うが、西原原作の映画化はどうにも僕に
は性に合わないことが多い。でも今回は元夫の原作で、そこ
にはアルコール依存症の恐ろしさが見事に描かれていた。
西原の作品は無頼派と叙情派の2面があると言われるそうだ
が、その映画化を観る限り僕には、そのどちらにも何か人に
対する冷淡さのようのものを感じる。でもこんな夫がいたの
では仕方ないのかな、そんな悲しみも感じられた。
ただし本作の原作者は元夫の方で、作品には元妻への感謝の
気持ちが一杯に表わされているものだ。ただそれによって一
層、悲しみが増してくる感じの作品でもあるのだが。

出演は浅野忠信と永作博美。その脇を市川実日子、利重剛、
藤岡洋介、森くれあ、高田聖子、柊瑠美、北見敏之、蛍雪次
朗、光石研、香山美子らが固めている。さらに渡辺真起子、
甲本雅裕、堀部圭亮、西尾まりらが出演。西原も患者の役で
出演している。
脚本、監督、編集は東陽一。2004年のモントリオール映画祭
で受賞した『風音』以来6年ぶりの新作とのことだが、実は
本作には2006年以来関っていたそうで、原作者本人や元妻の
西原などへの取材も行われているとのこと。アルコール依存
症の恐ろしさやその現実もしっかりと描かれた作品だ。
なお本作は、今年の東京国際映画祭「日本映画・ある視点」
部門のオープニング作品にも選ばれている。

『ソフィアの夜明け』“Източни пиеси”
昨年の東京国際映画祭では『イースタン・プレイ』の原題で
上映され、最高賞の「東京サクラグランプリ」及び最優秀監
督賞、最優秀男優賞の3冠に輝いたブルガリアの作品が、改
題されて一般公開の運びとなり、改めて試写が行われた。
作品については、昨年10月16日付の東京国際映画祭の報告の
中でも取り上げているので、物語などはそれを参照してもら
いたいが、作品に対する全体の印象は今回見直してもあまり
変わらなかった。
ただ今回見直していて、登場する若者たちの変わろうとする
思い、変えようとする意志のようなものは昨年観たときより
強く感じられたもので、監督のこの作品に込めた思いがそこ
にあることは確かなようだ。
ヨーグルトでも知られるブルガリアは、元々は農業が主産業
の国だったようで、そんな国がソビエト連邦の庇護下にある
内は良かったが、いざ独立して近代化を進めようとするとい
ろいろな社会の歪みが噴出してくる、そんな感じも受ける作
品だった。
とは言え本作は、主人公を演じたフリスト・フリストフの自
伝的な要素も強い作品と言われており、そんな激動する社会
の真っ只中にいたフリストフが、正に実体験として感じてき
た出来事が綴られているようだ。
昨年の紹介の中でも書いたが、本作ではネオナチなどの存在
が日本の社会とは多少異なる要素になっている。しかし社会
に対する持って行き場のない不満や不安に関しては、今の日
本と変わることのない若者の苦悩が描かれており、その点で
も共感のできる作品だ。
そして上記したように、その若者たちが変わろうとし、変え
ようとする気持ちが伝わってくることに、この作品の素晴ら
しさが感じられるものだ。

監督は、60本を超えるCFなどの演出を手掛け本作が長編デ
ビューのカメン・カレフ。その監督の友人のクリストフは、
今まで演技経験はなかったが、本作をドキュメンタリー調で
撮りたいとする監督がその原案を提供した本人に演じさせて
いる。
他にブルガリア人の配役では、実弟役のオヴァネス・ドゥロ
シャンと主人公の恋人役のニコリナ・ヤンチェヴァは、いず
れも国立演劇映画学院の学生で本作がデビュー作。
一方、トルコ人の配役では、旅行者の娘役を2007年のカンヌ
映画祭に出品された『卵』の演技で各国の映画祭の演技賞や
新人賞を受賞しているサーデット・ウシュル・アクソイ。そ
の母親役のハティジェ・アスランはトルコの国立劇団に所属
しているベテラン女優だそうだ。

以下は多少ネガティヴな評価ですが、作品としては紹介して
おきたいものなので掲載します。

『乱暴者の世界』
今年2月開催のゆうばり国際ファンタスティック映画祭2010
「ゆうばりチョイス部門」で上映された日本映画。
物語は、ティッシュペーパーを紙幣と思い込ませる類の集団
催眠術を使って飲み屋の支払いを誤魔化す黒服の男と、その
催眠術には免疫を持っているらしい主人公の対決を主軸とし
たもの。
黒服の男は自分が行っているのは催眠術ではなく、自分の思
念で作ったパラレルワールドに移動しているのだと主張して
いるが、その主張の根拠は不明。そして主人公が2年前から
同棲している女性を巡って、2人の対決が始まる。
宣伝コピーには「SF風味な青春映画」とあったが、本作の
物語は、それがパラレルワールドだとすればアイデアとして
は面白いかもしれない。しかしそのアイデアがSFとしては
何ら活かされておらず、SFファンとしては不満足…そんな
辺りの作品だ。
その一方で、青春映画としては「こんなものかな」とも思え
るが、同じような「SF風味な青春映画」なら、8月に紹介
した『アワ・ブリーフ・エタニティ』の方が、もう少しSF
だったし、青春映画だった気がする。
つまり基本的にSFを判っていない人たちが、SF風味のア
イデアだけは思いついたが、結局SFにはできなったという
感じの作品。まあ元々「SF風味な青春映画」なのだから、
それも仕方がないが。
それと本作では台詞が同時録音ではなく全てアフレコされて
いるが、これが何とも違和感があった。プレス資料によると
監督の田中圭、脚本の高橋玄は共に香港映画に本拠を置いて
いる人たちだそうで、香港映画はアフレコが決まりだからそ
うしたかったのかな。
それにしても、その台詞が普通に棒読みだったりすると、何
の為のアフレコなのかも解らなくなってしまうもので、その
辺は俳優の質なのか、わざとやっているのか、わざとならそ
の意図が理解できなかった。
出演は、『テニスの王子様』出身の林野健志と、劇団EXILE
所属の秋山真太郎、iPhoneアプリで世界記録を持つという舞
台女優の黒澤ゆりか。つまり主演全員が舞台役者ということ
になるが、舞台の人がアフレコに馴れていないことも確認で
きたようだ。
それに題名の意味も…、作者たちは一体何を言いたかったの
だろう? 8月に紹介した作品では題名にも心に感じるもの
があったが、こちらは全く意味不明だった。


『とびだす絵本3D』
中江義男、上野紀子原作による絵本「ねずみくん」シリーズ
の3作と、松岡達英原作の絵本「ぴょーん」と「しりとり」
の計5冊を3Dで映像化した上映時間が全部で30分の作品。
最初に登場する「ねずみくんのチョッキ」は我が子が好きで
幼い頃に読んで聞かせていた思い出がある。その子もすでに
大学を出て社会人だから、それほど長く読まれてきた絵本と
いうことなのだろう。
因に今回の作品では、「ねずみくん」シリーズからは他に、
「りんごがたべたい」と「うみへいく」が3D映像化されて
いる。それぞれ同じシチュエーションをキャラクターを替え
ながら繰り返す形式の物語で、特に幼児教育には有効な作品
と言えるものだ。
それでその3D映像化だが、実はキャラクターの表現では、
胴体と腕とのつながりの部分などがあまりスムースではない
感じで、何だかぬいぐるみの取り付け糸が緩んで腕が取れ掛
かっている…そんな印象を受けてしまった。
また、「うみへいく」に出てくる浮き輪では3Dがちょっと
いびつで、本来のドーナッツ形が完全には表現できていない
感じもした。この辺が2D−3D変換ではなかなか難しい問
題になりそうだ。
とは言え本作の場合は、元々がリアルさを追求した作品では
ないから、これはこれで了解というところかも知れないが、
出来れば子供には万全なものを観せたい…そんな思いもした
ものだ。
その他「しりとり」でも、キャラクターのつながりの部分で
ちょっと前後感のおかしなところがあり、この辺ももう少し
気を付けて欲しかった。ただまあこれも僕のような捻くれ者
が観るから気が付くだけで、子供の観客には無関係なのかも
知れないが…。
これに対して跳躍を題材にした「ぴょーん」では、ちょっと
掟破りの表現が3Dの効果を高めていた。実はこの手法は、
2月に紹介した『Gフォース』でも少し使われていたものだ
が、特に本作のような作品では有効と言えそうだ。
2D−3D変換はなかなか難しくて、実は今春公開されたア
メリカ作品でも問題にされていたものだが、『Gフォース』
のように成功した例もあるのだから、もう少しなんとか技術
を高めてもらいたいものだ。

        *         *
 今回の製作ニュースは、まずはこの話題から。
 2005年4月15日付の第55回でも報告した“Star Wars”の
映画シリーズの3D化がついに実現することになり、2012年
に公開予定の“The Phantom Menace: 3D”を皮切りに、順次
エピソード番号に従って3D版を公開するとの正式発表が、
ルーカス・フィルムから行われた。
 因に5年前の報告では、当時In-Threeという2D−3Dの
変換会社が、“A New Hope”の冒頭6分間のテストフィルム
をShoWestで発表し、その上映の後にルーカス本人が2007年
の公開30周年に合わせて3D版を公開したいと発言したもの
だが、当時は莫大に掛かる変換費用や、準備期間の短さなど
で実現には至らなかった。
 それが今回は、『アバター』や『アリス・イン・ワンダー
ランド』の大成功を受けて、実施に踏み切ることが正式に表
明されたものだが、ただし今回の発表では以前に関っていた
In-Three社の名前はなく、ILMの監修の許で別のシステム
による2D−3D変換が行われ、すでにその作業は開始され
ているとのことだ。
 とは言うものの2D−3D変換では、今年の春と夏に公開
された3D変換によるアクション作品の評価が芳しくなく、
一部にはそれに続くこと断念した作品も現れたものだが、今
回監修に当るILMは、『アバター』の3D製作にも参加し
ており、その監修というのは信用が置けそうだ。
 それに3D化を、オリジナルの公開順ではなくエピソード
順に行うと言うことは、“The Phantom Menace”以降では製
作にCGIも多用されて、その部分はデータに基づく3D化
も行えるものと考えられるし、それを活かして『エピソード
IV〜VI』の3D化にも万全を期してもらいたいものだ。
 なお5年前の報告では、Topps社の3Diカードについても触
れたが、その際にも紹介した“The Empire Strikes Back”
の3Diカードもようやく発行されたようで、映画シリーズの
3D化にも期待が高まるところだ。それにしても5年前の記
事を書いたときには、今のように3Dが受け入れられること
になるとは、思いも拠らなかったものだが。
        *         *
 お次は、1951年にイギリスの作家ジョン・ウィンダムが発
表、同国で最も権威があると言われるペンギンブックスに、
古典以外で初めて収録されたSF小説とされる“The Day of
the Triffids”、その1962年にも一度映画化されている作品
が、2009年に同作のBBCミニシリーズ版を手掛けたマイク
ル・プレイガと、『トランスフォーマー』などのドン・マー
フィの共同製作で3D映画化されることになった。
 三股に分かれた丈夫な根を動かし歩行もできるトリフィド
と呼ばれる植物が育てられている時代のお話。ある出来事に
よって人類のほぼ全員が失明する事態が発生する。そんな中
で偶然失明を免れた主人公は、他にもいた目の見える人たち
と共に人類の救済に乗り出すのだが…。そこに、実は肉食種
だったトリフィドが脅威となって現れる。
 原作は、米ソの冷戦時代の中で書かれたもので、物語には
その影響も見られるとされるが、イギリスの作家らしい落ち
着いた展開で人類文明の崩壊が描かれている。そして主人公
には、自らの人間性と人類文明を守るためのいろいろな選択
が課せられて行くことになるものだ。
 その作品は上記のように1962年にも一度映画化されている
が、『人類SOS』の邦題で日本公開もされたその作品は、
一部に熱狂的なファンもいるとされるが、多くのSFファン
には結末の描き方などで納得できないものだった。そしてそ
こには当然、上記した主人公への課題などもほとんど描かれ
てはいなかった。
 その作品が今回はリメイクされるものだが、発表に当って
製作者のマーフィは、「原作は、その人間性の追求において
現代にも通じる心を打つ物語であり、現代においても映画化
すれば成功間違いなしの作品だ」との発言も行っており、今
度こそ原作の完全映画化が期待できそうだ。
 因にマーフィは、1994年オリヴァ・ストーン監督の『ナチ
ュラル・ボーン・キラーズ』や、1998年の東京国際映画祭で
ブラッド・レンフロが主演男優賞を受賞した『ゴールデン・
ボーイ』などの製作も手掛けており、社会派的な作品にも手
腕を発揮する製作者と言える。
 しかも今回は、CGIを多用した3Dでの映画化を行うも
ので、以前の作品では特にトリフィドの造形が面白くなかっ
たり、トリフィドが人間を仕留める際の動きなども物足りな
かった不満も解消されそうだ。
 製作時期などは未発表だが、期待して待つことにしたい。


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井口健二