井口健二のOn the Production
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2010年01月31日(日) コロンブス永遠の海、ノン、バレンタインデー、昼下がりの情事、しあわせの隠れ場所、鉄拳、月に囚われた男、トイ・ストーリー(3D)

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『コロンブス永遠の海』“Cristóvão Colombo - O Enigma”
2007年9月に『夜顔』を紹介している1908年生まれのポルト
ガル監督マヌエル・デ・オリヴェイラによる2007年の作品。
『夜顔』と同じく監督99歳の時の作品になるが、映画の後半
では監督自身が夫人と共に登場して赫灼とした姿を見せてお
り、その健在ぶりも示される。その後も監督は年1、2作の
発表を続けていて、今年も新作を準備中だそうだ。
物語は、映画の製作当時に話題になっていた「コロンブス=
ポルトガル人説」に基づき、その検証やコロンブス及びポル
トガル人の業績を語っているもので、映画の前半では、若く
してアメリカに渡ったポルトガル人青年のドラマなども描か
れるが、大凡はセミドキュメンタリーというかルポルタージ
ュの雰囲気で綴られている。
従って、その映画製作もそれほど体力のいるものではなかっ
たかも知れないが、少なくとも映画の前半では、1946年に設
定された時代の雰囲気を良く再現しているし、その演出は確
かなものだ。

出演は、監督の孫に当る俳優リカルド・トレパが晩年を監督
自身が演じる主人公に扮し、相手役をポルトガルの作家アウ
グスティナ・ベサ=ルイーシュの孫娘のレオノール・バルダ
ックが演じる。その晩年を監督夫人が演じているものだ。
また、ナレーターと主人公らが見学する美術館の館長役を、
ジョン・マルコヴィッチの監督作品に出演したこともあると
いうスペインの俳優ルイーシュ・ミゲル・シントラが演じて
いる。
他に、エンジェルという役名で登場する少女がロレンシア・
バルダックという名前で妻役の女優と同じ姓だが、2人は姉
妹なのかな。さらに主人公の母親役で、オリヴェイラ監督の
1993年作『アブラハム渓谷』などのレオノール・シルヴェイ
ラが出演。
「コロンブス=ポルトガル人説」というのは聞いたことはあ
ったが、ここまで丁寧に検証されると信じたくなってくる。
特にコロンブスが名付けたキューバという地名が、その説に
よる彼の生地と同じというのには、納得させられたところだ

『ノン、あるいは支配の空しき栄光』
          “'Non', ou A Vã Glória de Mandar”
ポルトガルのマヌエル・デ・オリヴェイラ監督による1990年
の作品。本作は以前にも日本公開されているらしいが、今回
は上記作品の公開に先駆けて4月下旬に岩波ホールで限定公
開が行われることになり、改めて試写を観せて貰えた。
基本の物語は、1974年春頃の出来事で、国連の勧告に反して
植民地を手放そうとしない軍事政権によってアフリカの植民
地に送り込まれたポルトガル兵たちが、ブッシュの広がる荒
れ地を輸送トラックで移動して行くというもの。
そのトラックには大学でポルトガル史を研究していたという
少尉の率いる小隊が乗車しており、荷台の彼らは派遣した政
権への不満を語り合っている。そして少尉は、彼らにポルト
ガルが経てきた敗北の歴史を語り始める。
それは最初に紀元前2世紀のローマ軍との戦い、次は15世紀
後半の統一王国の模索、さらに16世紀後半のモロッコ遠征、
そして現在(1974年)の植民地維持のための戦い。それらは
何れもが空しい戦いの歴史だった。
しかしポルトガルにも、戦いとは関係の無い栄光や技術革新
の歴史がある。それは新世界への進出やヴァスコ・ダ・ガマ
の業績など。それらを忘れて戦いを続けることの空しさ。オ
リヴェイラの作品には常に死と破滅が描かれるそうだが、本
作もその例に漏れない。
それにしてもポルトガルという国には、ヨーロッパのスペイ
ンの先にある大西洋に面した小国ぐらいにしかイメージが無
かったが、本作と上記の『コロンブス…』を観て印象を新た
にすることができた。これも映画の効用と言えるものだ。

出演者では、『コロンブス永遠の海』でナレーターと館長役
を務めていたルイーシュ・ミゲル・シントラが少尉の役に扮
し、彼が語る各歴史のエピソードの中にも登場する仕組みに
なっている。
他に、オリヴェイラ監督1997年作品『世界の始まりへの旅』
にも出演のディエゴ・ドリアらが登場している。
現在100歳を超えても元気な監督が、20年前に作った作品と
いうことで、さらに精力的な作品になっているが、映画の中
の戦闘シーンでは1200人のエキストラと350頭の馬が登場し
ているそうで、当時すでに80歳の監督の作品とはとても思え
なかった。

『バレンタインデー』“Valentine's Day”
1990年『プリティ・ウーマン』などのゲイリー・マーシャル
監督が、2月14日一日にロサンゼルスで起きる出来事を描く
アンサンブル劇。
男女が恋心を告白する日。女から男へというのは日本だけの
決まりようで、この映画に描かれたアメリカの様子では、男
性から「特別」な女性への愛の告白をする日となっているよ
うだ。そんないくつもの愛の告白が描かれて行く。
そこにはその想いが成就するものもあれば、それをきっかけ
に思いも拠らない事態に発展してしまうものもある。そして
それが永遠に続くものであったり、乗り越えていかなければ
ならないものであったり、また時間が解決してくれるもので
あったりもする。
そんな様々な恋愛模様が綴られて行く。それは、個々の物語
は一々書き出せるようなものでなくても、その当事者にとっ
ては、もしかしたら一生で一度かも知れない重要な物語ばか
りだ。そんな素敵なラヴストーリーが綺羅星のようなスター
たちによって描かれる。

出演は、オスカー俳優のキャシー・ベイツ、ジェイミー・フ
ォックス、シャーリー・マクレーン、ジュリア・ロバーツを
始め、『シカゴ』でノミネートのクィーン・ラティファと、
『レイチェルの結婚』でノミネートのアン・ハサウェイ。
他に、『シン・シティ』のジェシカ・アルバ、『NEXT』
のジェシカ・ビール、『イエス・マン』のブラッドリー・ク
ーパー、『フェースト』のエリック・デイン、『魔法にかけ
られて』のパトリック・デンプシー。
さらに『プリティ・プリンセス』のヘクター・エリゾンド、
『スパイダーマン3』のトファー・グレイス、『デアデビル
/エレクトラ』のジェニファー・ガーナー、『バタフライ・
エフェクト』のアシュトン・カッチャー。
『トワイライト』のテイラー・ロートナ、『ビバリーヒルズ
・チワワ』のジョージ・ロペス、『誰かが私にキスをした』
に出演のエマ・ロバーツ、“Aliens in the Attic”のカー
ター・ジェンキンス、そしてシンガー・ソングライターのテ
イラー・スィフト。
物語の中には、日本人とは感覚の違うものもあるかも知れな
いが、数ある中には自分にも当てはまるものがきっとある。
そんな感じのする作品だ。

『団地妻 昼下がりの情事』
「ロマンポルノRETURNS」と題された企画シリーズの
第1弾。
1971年11月20日にスタートした「日活ロマンポルノ」。その
第1弾として製作された内の1本が、西村昭五郎監督、白川
和子主演による「団地妻 昼下りの情事」。それと同じ題名
を冠された作品が、新たなスタッフ・キャストで再製作され
た。
団地暮らしの若夫婦。しかし夫は仕事に追われて過労気味、
夜の生活では前技も疎かで妻を充分に満足させることもでき
ない。そんな妻が夫の留守中に何をしているか…。そんな団
地妻の生態が描かれる。
とは言うものの、オリジナルはかなり凄絶なお話で話題にな
ったものだが、それに比べると本作は普通のピンク映画とい
った程度。でもまあ、題名をそのまま映画化するとこの方が
正しいような気もするし…。オリジナルのファンとの間で評
価が分かれそうだ。

本作の監督は、2008年5月紹介『落語娘』や、1990年公開と
2008年8月紹介『櫻の園』などの中原俊。脚本は2008年2月
紹介の『あの空をおぼえている』などの山田耕大。いずれも
ロマンポルノの全盛期を支えた大ベテランたちだ。
主演は劇団・東京乾電池所属の高尾祥子。共演は2009年『蟹
工船』などに出演の三浦誠己。他に遠藤雅、志水季里子。ま
たオリジナルに主演した白川和子が特別出演のかたちで登場
している。
実は昨年、アダルトヴィデオをかなりの本数観る機会があっ
て、それはまあ殆どが直截的な、単目的としか言いようの無
い作品ばかりだったのだが、その多くが団地妻を題材にして
いた。
それは観ているときにはそれなりにオリジナルの影響力みた
いなものも感じたが、結局、人間の考えることなど、あまり
多くのヴァリエーションは無いのかも知れない。今も昔もこ
んなことばかり考えているのが男であり人間なのだろう。
ただ、オリジナルの自暴自棄気味の過激さには当時の時代背
景もあったのだろうが、そんな時代の活力みたいなものが失
われたのは多少残念なところではある。それは多分、今の時
代の感覚には合わなかったのだろうが…
なお、本作は日活と衛星放送スカパーの共同製作によるもの
で、2月13日には劇場公開と同日でPPVによる放送も開始
されることになっている。

『しあわせの隠れ場所』“The Blind Side”
主演のサンドラ・ブロックが、ゴールデングローブ賞の主演
女優賞(ドラマ部門)を獲得した作品。
2009年のNFLドラフトの1巡目、全体の23位で指名され、
今季12月−1月の新人月間MVPにも選出されたボルティモ
ア・レイヴンズのオフェンスタックル=マイクル・オアー選
手と、高校時代から彼を支援し続けた1人の女性の行動を描
く。
それは全くの偶然だった。家族で食事に行った帰り道、冷た
い雨の降る中を半袖のTシャツと半ズボンだけで歩くオアー
を資産家の妻であるリー・アンが目に留め、彼が我が子と同
じ学校の生徒と知った彼女は、運転していた車に彼を乗せて
自宅につれて行く。
そのオアーは、体格の良さからスポーツで大成するのでは…
と見込まれてミッション系の高校に進学していたのだが、体
格は良くても実際にスポーツをしたことはなく、しかもそれ
までろくな教育を受けていないオアーは授業にもついて行け
そうになかった。
そんなオアーだったが、いろいろな適性検査などでも及第点
を取れない彼には、一つだけ際立った特性があった。それは
…。そんなオアーの特性に着目したリー・アンは彼の支援を
始めるが、アメリカ南部の社会では周囲と確執を生むことに
もなってしまう。
しかしそんな障害も何のその、リー・アンは徹底的なオアー
の支援を開始する。それには彼女の家族も巻き込まれて…
ブロックはドラマ部門で受賞を果たしているが、映画自体は
かなりのユーモアも織り込んで、こうと決めたら脇目も振ら
ない女性の行動力を描いて行く。それは一面では資産家の妻
の気紛れでもあったのかも知れないが、兎に角その推進力の
凄さ。
実は、プロダクションノートに掲載されたブロックの発言か
ら類推すると、本物のリー・アンはもっと凄い人だったよう
で、現実味を添えるためにかえって押さえ気味に演じられて
いるようでもあるのだが、そんな女性の行動力が見事に楽し
く描かれている。

共演は、オアー役に『僕らのミライへ逆回転』などに出演歴
はあるが、メイジャー作品へはデビュー作となるクイントン
・アーロン。
他に、熱血家庭教師役のキャシー・ベイツ、実際はカントリ
ーミュージック界のスーパースターでもある夫役のティム・
マグロウ、10代でLAタイムズ紙に寄稿するなどのジャーナ
リストでもある娘役のリリー・コリンズ、『ハンコック』な
どに出演の子役のジェイ・ヘッド。
脚本・監督は、2002年『オールド・ルーキー』などのジョン
・リー・ハンコックが、見事なヒューマンドラマを作り上げ
た。

『鉄拳』“Tekken”
1994年にナムコが発表した対戦型格闘ゲームの映画化。世界
を席巻する超巨大財閥=三島財閥の跡目相続を巡って開催さ
れる格闘技大会「The King of Iron Fist Tournament」を背
景に、名声や復讐、あるいは野望に燃えた格闘家たちの闘い
が始まる。
映画の主人公は風間仁。都市を外れた貧民街に生きる仁は、
格闘家の母親に仕込まれた技を駆使して、財閥が開発する新
兵器を盗みだし闇組織に転売することを生業としていた。し
かし財閥の警察機構に追われた彼の目の前で家が爆破され、
母親が殺される。
こうして財閥への復讐を誓った仁は、各財閥の代表選手が集
まるトーナメントに市民代表として参加し、勝ち上がって三
島財閥に鉄槌を下そうとするが…その前には、財閥の総師三
島平八の息子一八などが待ち構えていた。

出演は、2006年2月紹介のタイ映画『トム・ヤム・クン!』
にも出演していたという中国系イギリス人俳優ジョン・フー
が仁役を演じ、その母親役を『カラテ・キッド2』や『ジョ
イ・ラック・クラブ』などのタムリン・トミタ。
また、ケイリー=ヒロユキ・タガワや、『24』に出演のイ
アン・アンソニー・デールらの日系人アメリカ俳優も顔を揃
えている。
監督は、2004年『アナコンダ2』などのドワイト・リトル。
脚本は、1997年『スポーン』などのアラン・B・マッケルロ
イが担当している。
格闘ゲームの映画化ではすでに『ストリート・ファイター』
などの作品が製作されているが、ゲームを再現する格闘シー
ンはともかく、その背景となるドラマの構築及びその格闘技
との融合が難関となる。
しかし本作の場合は、上記のストーリーはほぼゲームのコン
セプトにも書かれており、その点ではやりやすかったとも思
えるが、実際はさらにそこに「鉄拳2」に登場の風間準と仁
という登場人物を配してよりドラマティックなものにしてい
る。
このドラマの部分が、本作ではそれなりに納得できるように
も作られており、アクション映画としても面白いのになって
いた。

『月に囚われた男』“Moon”
新人監督の作品でありながら、しかも本格SF作品でありな
がら、本国イギリスのアカデミー賞で作品、監督、脚本、主
演男優など10部門のノミネートを獲得しているダンカン・ジ
ョーンズ原案監督、サム・ロックウェル主演作品。
月の裏側に位置するエネルギー資源「ヘリウム3」の採掘基
地に3年間の契約で赴任した男が、人気の満了まで余すとこ
ろ2週間となったときに、思慕の情の発露なのか基地にはい
ないはずの人影が観え始める。そして採掘装置の故障を修理
に出掛けた男は…
いやはや久し振りに見事なSF作品で、その物語の展開の素
晴らしさやその背景にあるであろう物語の広がりなど、本当
に堪能できる作品だった。ただし、これ以上は何を書いても
ネタバレになりそうだ。

監督は、『2001年宇宙の旅』や『サイレント・ランニン
グ』などからこの物語を思いついたと言うことだが、宇宙に
進出した人間の孤独やそこでの慰みなどが実に丁寧に描かれ
ている。
因に監督は、1977年の『地球に落ちてきた男』に主演したロ
ックのカリスマ=デイヴィッド・ボウイの息子とのこで、す
でにCMなどで実績のある映画作家の長編デビュー作となる
ものだが、父親譲りの感性が見事に開花した感じだ。
一方、主演のロックウェルは2003年6月に紹介した『コンフ
ェッション』の屈折した主人公の演技が出色だったが、本作
でも幻覚に悩まされながらも職務を遂行しようとする姿や、
真実を見極めた後での毅然とした態度などのメリハリが見事
に演じられていた。
とは言え、その真実がSFに慣れていない観客にどこまで理
解されるか。もちろん映画の中の説明でも了解はできるのだ
が、そこより奥にある物語にこの作品の本当の素晴らしさが
あるようにも感じられる。
それは実は別のある映画を例に引けば理解もされやすいのだ
が、それを書くとネタバレになってしまう。これはジレンマ
だ。
なお、共演者は殆どいないが、唯一主人公のアシスタントと
なる人工知能ロボット「ガーティ」の声優でオスカー俳優の
ケヴィン・スペイシー。ロックウェルの1人芝居に感激して
の応援出演だそうだ。

『トイ・ストーリー/トイ・ストーリー2(3D)』
      “Toy Story in 3-D”“Toy Story 2 in 3-D”
1995年と1999年に製作されたCGIアニメーションシリーズ
の第1作と第2作が、今年夏の第3弾を3Dで公開するのに
先駆け、3D化されて再公開される。なお、日本公開は2本
立てでの上映となるようだ。
物語は、人間の前では動かない喋らないを基本のルールとし
ている玩具たちの人間には観えないところでの活動を描くも
の。
その第1作では、男の子が大事にしているカウボーイ人形の
ウッディをリーダーとする玩具のグループに新たなスペース
レンジャーの人形バズがやってくる。そして一家の引っ越し
と絡んでのウッディとバズの冒険が展開される。
また第2作では、実はヴィンテージ物の高価な玩具だったウ
ッディがうっかり玩具コレクターの手に落ちて…。そこから
の新たな出会いや、バズたちによる救出作戦の冒険が描かれ
た。

というお話の2作品だが、今見直しても技術的には全く問題
はないし、物語のユニークさなどでは最近の作品と比べても
全く遜色はない。
実は、僕自身が初めて1作目を観たときには、初のCGIア
ニメーションということで、人物の表現などにもっとリアル
さを期待してしまったりもしたものだが、今から思えばこれ
はアニメーション作品なのだし、この表現で良かったのだと
再確認できた。
そして今回は、それがさらに3D化されているものだが、観
ていると見事な3D演出が随所に登場して、これは最初から
想定されていたのではないかと思えるほどのものになってい
た。今さら2Dでは観られないとも思えるほどだ。
オリジナルの声優はトム・ハンクス、ティム・アレンらが務
めているが、今回は3D公開ですべて吹き替えとなるため、
オリジナル上映時と同じく唐沢寿明、所ジョージらの声優と
なる。その中では、故名古屋章、故八代駿らの声も聞くこと
ができる。
なお、上記のように公開は2本立てとなるが、これは合計の
上映時間で2時間53分となるもので、一興行の3D上映では
『アバター』の2時間42分を超えるものになる。



2010年01月25日(月) 第182回

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※今回は試写会が多かった上に、書きたいこともいろいろ※
※あるので臨時に更新します。            ※
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 まずは賞レースの情報で、ここ数年紹介しているアメリカ
Visual Effects Society選出のVES賞のノミネーションが
1月18日に発表された。その内から映画部門の候補作品だけ
報告しておく。
 VFX主導映画のVFX作品賞候補は、『2012』『ア
バター』“Discrict 9”『スタートレック』『トランスフォ
ーマー』
 VFX主導でない映画のVFX作品賞候補は、『天使と悪
魔』“The Box”『インビクタス』“The Road”『シャーロ
ック・ホームズ』
 アニメーション作品賞候補は、『くもりときどきミートボ
ール』『コララインとボタンの魔女』『アイス・エイジ3』
『カールじいさんの空飛ぶ家』“9”
 単独VFX賞候補は、『2012』の脱出シーン、『アバ
ター』の脱出シーン、『アバター』のネイティリのシーン、
『ノウイング』の墜落シーン、『タームネーター4』の脱出
シーン
 実写映画のアニメーションキャラクター賞候補は、『アバ
ター』のネイティリ、“Discrict 9”のChristopher、『G
フォース』のバッキー、“Watchmen”のDr.Manhattan
 アニメ映画のアニメーションキャラクター賞候補は、『コ
ラライン』のコラライン、『アイス・エイジ3』のバック、
『モンスターVSエイリアン』のBOB、『カールじいさん』
のカール
 アニメ映画におけるエフェクトアニメーション賞候補は、
『…ミートボール』『コラライン…』『モンスターVSエイリ
アン』『カールじいさん…』
 マットペインティング賞候補は、『アバター』“Franklyn"
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『スター・トレック』
 ミニチュア賞候補は、『アバター』『コラライン』『ナイ
ト・ミュージアム2』『ターミネーター4』
 背景賞候補は、『2012』の全体、『アバター』の浮か
ぶ山、『アバター』のジャングル、『アバター』の柳の樹の
広場
 合成賞候補は、『アバター』の全体、『アバター』の最後
の戦闘、“Discrict 9”、『シャーロック・ホームズ』
 以上、映画関係は11の部門賞が48のノミネーションから選
ばれるが、その内で『アバター』が11の候補を数えるのが今
年の特徴と言えるものだ。ただし『アバター』は、いくつか
の部門でダブル、トリプルの候補となっているので、11の全
てが受賞という訳には行かず、最大でも7部門に留まる。と
は言え、これは元々対象にならないアニメーション映画関連
とVFX主導でない映画の部門を除く、全部門を独占するこ
とになるもので、その可能性は高そうだ。
        *         *
 お次はすでに結果が出ているもので、アカデミー賞の前哨
戦とも言える1月17日に発表されたゴールデン・グローブ賞
で、何と『アバター』がドラマ作品賞と、ジェームズ・キャ
メロンの監督賞の2部門を受賞した。
 ゴールデン・グローブ賞はハリウッド駐在の外国人記者の
団体が選出するもので、その対象は映画とテレビの両部門に
分けられ、さらに作品賞と主演男女優賞はドラマとコメディ
/ミュージカルの2部門に分けられているものだが、一応は
ジャーナリストの選出ということで、映画関係者が選ぶアカ
デミー賞より公正な選出が行われていると信じたいものだ。
 ただし選出メンバーの人数があまり多くないようで、一部
の意見に左右されたり、またあまり専門的でない世間の評価
に迎合しやすいということも言われている。でもまあそれな
りの権威もある訳で、アカデミー賞にもかなり影響力がある
ことは事実のようだ。
 ということで『アバター』の高評価は、アカデミー賞にも
大いに期待を抱かせるところだ。例によって演技賞は無関係
だろうが、2003年の『LOTR/王の帰還』と、キャメロン
自らが1997年『タイタニック』で打ち立てたオスカー11冠の
偉業を今回も期待したいものだ。まずは2月2日に行われる
オスカー候補の発表が待たれる。
        *         *
 そこでまあ、試写を観なかった『アバター』“Avatar”に
関しては、このページで作品の紹介はしていないものだが、
僕も一般の興行では鑑賞したので、ここで自分の意見を多少
述べさせて貰いたい。
 まず、映画を観ての僕の感想は、舞台となるパンドラ星の
「観光映画」としては良くできているというものだ。それは
樹上の世界から浮かぶ山の景観まで、特に風景に関しての3
D映像が見事に表現されていた。
 因にこの映像の生成に関しては、1月17日に23分にも及ぶ
メイキングのヴィデオがネット上で公開されたが、特に俳優
のパフォーマンスをキャプチャーするヴァーチャルスタジオ
の中で、カメラまでもがヴァーチャル化されて、キャメロン
が手持ちで自由に動き回るモニターの画面に、そのまま背景
やCGIのキャラクターまで合成された映像が写し出されて
いるのには目を見張った。
 このヴィデオは、検索サイトで“Creating the World of
Pandora”を検索して、1月17日以降の日付のページを開け
ば観られるはずのものだが、モニターの角に位置や角度を検
出するためのサイコロ状の反射器が設けられたヴァーチャル
カメラや、表情をキャプチャーするために顔の前に装着され
た小型カメラなど、ここまでやっていたのかと思わされるも
のだった。これなら、キャメロンのように頭の中にしっかり
とヴィジョンのある監督には鬼に金棒という感じだし、そう
でない監督にも目で観てCGI世界を演出できるのは、今後
の展開にも夢を抱かせるものだ。
 ということで、映像的には正に驚嘆させられた作品だが、
物語としては今一つの感じがした。それはまず、アバターの
設定が、そのヴィジュアルの雰囲気など1973年にフランスの
アニメ作家レネ・ラルーが発表した“La planète sauvage”
(邦題:ファンタスティック・プラネット)に酷似している
のが気になった。この設定がそこから想を得ていることは間
違いないだろう。その他、浮かぶ山の景観なども動画の3D
映像には目を見張るが、イメージとしては過去にSFアート
で描かれてきたものだ。
 それに何より、後半がただの戦争映画になってしまうのに
は幻滅してしまったところで、それはナパーム弾で焦土作戦
を展開するところから進駐軍の撤退まで、ヴィエトナム戦争
を再構成してアメリカ人に警鐘を鳴らしたいという意図はあ
るのだろうが、所詮、派手な戦闘シーンを描いたのではその
崇高な狙いも不明瞭になってしまう。
 戦闘シーンを描いたら反戦映画は成立しないというのは、
最近に他からも聞いて僕だけの意見ではないようだが、この
作品を観ていてその思いを新たにした。そして、この作品に
関してはもっと自然の力を強調する形でも物語は作れたはず
で、結局アメリカ人は戦争が好きなんだ…という感想しか浮
かんでこなかった。
 技術的には今後の発展も期待したいが、それが戦争映画に
しか活かされないのは残念に感じたところだ。
 以上をこの作品の紹介とさせていただきます。
        *         *
 以下は製作ニュースを紹介しよう。
 まずは、2008年8月15日付第165回などで紹介したロバー
ト・E・ハワード原作“Conan the Barbarian”の映画版リ
メイクの続報で、その監督を2003年版“The Texas Chainsaw
Massacre”などのマーカス・ニスペルが担当し、主人公を、
テレビシリーズ“Stargate Atlantis”などに出演のジェイ
ソン・モモアという俳優が演じることが報じられている。
 因にこの配役では、『トワイライト』に出演のケラン・ル
ッツと、ニスペル監督が昨年発表した“Friday the 13th”
に出演のジャレド・パラデッキという名前も挙がっていたよ
うだが、その3人の中では最も無名に近い俳優が選ばれたこ
とになるようだ。
 なお、モモアは1979年ハワイホノルル生まれとのことで、
“Stargate…”以前には、ハワイが舞台の“Baywatch”にも
一時期出演していたものだが、何れも主演という訳ではなか
った。ただし現在製作中のセルヴィデオ向けの“Stargate:
Extinction”では主演もしているようで、これからブレイク
する可能性は高そうだ。シュワルツェネッガーが主人公を演
じたときもほぼ無名だったのだから、ここでそういう俳優が
選ばれるのも順当と言ったところだろう。
 脚本はまだ完成していないようだが、撮影はブルガリアと
南アフリカで行われることになっている。製作はライオンズ
ゲイト、ミレニアム、ヌ・イメージスと、2009年3月15日付
第179回で紹介したパラドックス社。前の3社の共同製作は
最近のジャンル映画では老舗級だ。
 それから今回の映画情報をアメリカのデータベースで検索
し直したら題名が“Conan”だけになっていた。改題の発表
はまだ無かったと思うが、チェックするときには気をつける
必要がありそうだ。
        *         *
 前々回に公開日を報告した“Pirates of the Caribbean:
On Stranger Tides”の製作に関して、その撮影が今年の夏
にハワイのオハフ島とカウアイ島で行われるとの報告がされ
た。
 その他の製作状況はあまり変わっていないようだが、公開
まで1年を切っての撮影開始となるもので、その分、脚本に
じっくり時間を掛けているにしても、VFXなどに掛ける時
間が充分に取れるのかどうか、多少心配になるところだ。
 ただまあこれで、主演のジョニー・デップには、前回も紹
介した“The Tourist”にじっくり取り組んでもらえること
にはなりそうで、俳優のスケジュール的には好都合と言えそ
うだ。後は、両作品がトラブル無く撮影されることを祈りた
いものだ。
 因に、この撮影に掛けられる予算は8500万ドル(85億円)
だそうで、世界不況下のこの時期に、黙っていてもそれだけ
のお金が落ちる撮影地の地元は大いにラッキーだという意見
もあるようだ。
        *         *
 次もディズニーの話題で、いよいよ『アリス・イン・ワン
ダーランド』の公開も近づいてきたティム・バートン監督の
次ぎなる計画として、“Maleficent”という題名が報じられ
ている。
 この題名は、何を隠そう1959年にディズニーが映画化した
『眠れる森の美女』(Sleepng Beauty)でオーロラ姫を眠り
に陥れる魔女の名前。つまりぺローやグリム童話でも知られ
る物語を魔女の側から描こうとするもので、『アリス…』で
は1951年映画化の『不思議の国のアリス』の後日談を描いた
バートン監督が、再びちょっとに捻ったディズニーアニメー
ションの再構築をするという計画だ。
 元々バートン監督は、映画界でのキャリアの第1歩をディ
ズニーのアニメーターとして記したもので、ディズニーアニ
メーションへの尊敬の念には疑いの無いものだが、その視点
での物語の再構築には期待が持てる。ただしこの魔女は、デ
ィズニーアニメーションに登場する幾多の魔女の中でも、最
も性悪とも言われている存在で、その立場に立っての物語が
一体どうなるのかも楽しみだ。
 ただバートンの監督では、主人公の魔女役は『アリス…』
にも登場のヘレナ・ボナム・カーターが演じるのでは…?と
いう意見もあるようで、その辺ではいろいろ心配する人もい
るようだ。
        *         *
 最後にもう1本新しいニュースで、ソニー・ピクチャーズ
が、2007年にアメリカのSF作家ジェフ・サマーズが発表し
た“The Electric Church”という長編小説の映画化権を獲
得したことを発表した。
 この原作は、元々はエッセイストで、2001年頃から小説も
書いていたサマーズが満を持して出版した作品とのことで、
紹介文によると、ジョージ・オーウェルやフィリップ・K・
ディックを思わせるアンチユートピアを舞台にした『ブレー
ド・ランナー』のようなアクションスリラーが展開されてい
るようだ。
 そしてこの作品には、アヴェリー・ケーツという同じ人物
を主人公にした続編が毎年1作ずつ発表されており、その内
の“The Digital Plague”“The Eternal Prison”と題され
た2作の権利も一緒に契約されている。なお、シリーズでは
4作目となる“The Terminal State”と題された作品も今年
出版の予定だそうだ。
 ということでシリーズ化も視野に入れた映画化が行われる
ことになりそうだが、ソニーではこの脚色に、先にワーナー
で進められているダン・シモンズ原作“Hyperion”の脚色も
担当しているトレヴァー・サンズを契約して、映画化の準備
を進めている。因にサンズは、1994年“Finding Interest”
という作品の脚本と監督を手掛けているが、この作品は暗殺
者をテーマにしたもので、“The Electric Church”の主人
公アヴェリー・ケーツも同じ仕事をしているものだ。
 その他のスタッフ・キャストは未発表だが、本作の主人公
にはそれなりのファンもいるようで、キャスティングも注目
されることになりそうだ。
        *         *
 もう1つ、これは直接映画の話題ではないが、ちょっと気
になる情報で、2008年10月1日付第168回などで映画化の計
画を紹介している“Artemis Fowl”について、前回紹介した
ときに読んでいた第6巻“The Time Paradox”から続く第7
巻の出版が遅れるとのことだ。
 この第7巻に関しては、“The Atlantis Complex”という
題名まで発表されて、2010年の出版が予定されていたものだ
が、その遅延の理由を、最近出版された第6巻のペーパーバ
ック版に作者のオーエン・コルファー自身が記述している。
それによると、何とその作者がダグラス・アダムス原作で、
2005年には映画化もされた“The Hichhiker's Guide to the
Galaxy”の続きを執筆していると言うのだ。
 この映画化された原作については、2004年7月の映画紹介
でも書いたように原作者のアダムスが2001年に他界して、当
時計画されていた第6巻が未完となっていたものだが、今回
の情報はコルファーがその執筆を始めたとのこと。そのため
“Artemis Fowl”の第7巻の執筆出版が遅れるとのことだ。
 どちらも人気の高いシリーズで、そのどちらを優先しろと
も言えないところだが、個人的にはやはり最近のシリーズで
ある“Artemis Fowl: The Atlantis Complex”を早く読みた
いと思っているものだ。



2010年01月24日(日) 誰かが私にキスをした、カケラ、桃まつり−うそ、17歳の肖像、バッド・ルーテナント、コララインとボタンの魔女:3D(追記)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお文中の※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『誰かが私にキスをした』
           “Memoirs of a Teenage Amnesiac”
2005年11月5日付の「東京国際映画祭2005(コンペティ
ション)」で紹介した『女たちとの会話』(日本公開題名:
カンバセーションズ)のハンス・カノーザ監督の新作。
『女たち…』と同じくガブリエル・ゼヴィンという人の原作
脚本だが、元々はアメリカのハイスクールが舞台だったとい
う設定を、東京のインターナショナルスクールに変更し、掘
北真希、松山ケンイチ、手越祐也、アントン・イェルチンの
共演で映画化した。
主人公は、東京のインターナショナルスクールに通っている
女子高生。学校では年次で作られる写真集の編纂に関ってい
てチーフと呼ばれる存在だったらしいが、ある日、校舎前の
階段を転落、怪我は軽かったが逆行性健忘症で最近4年間の
記憶を失ってしまう。
そんな彼女の最近の記憶は、救急車の中で恋人と称して付き
添ってくれた男性(松山)が話してくれたことだけ…。
そして、退院した彼女は学校に戻ってくるが、4年分のブラ
ンクは、親しげに話しかけてくる同級生や教師がいても、何
もかもが新しい体験となる。そして彼女は、再び付き添って
くれた男性と巡り会うが…彼には秘められた過去があるよう
だった。
そんな彼女には、写真集の編纂で協力者だったという日本人
の男子生徒(手越)や、テニス部の部員で彼女の恋人と周囲
からも言われているアメリカ人の男子生徒(イェルチン)も
いて、彼女の気持ちは彼らの間を揺れ動くことになる。

テーマとなる記憶喪失では、最近はアルツハイマー症との関
係でいろいろなドラマが作られているが、本作の場合は高校
生が主人公。それでも物語の展開は在来りかなあと思って観
ていたら、映画の後半では映像も含めてかなり面白いものに
仕上げられていた。
ただまあ、インターナショナルスクールとは言っても日本が
舞台の作品で、その学園風景などには多少の違和感を感じて
しまうところもないではないが、その辺はある種の無国籍と
いう感じで了解したい。本来ならアメリカのハイスクールに
日本人の生徒がいる感じだろう。
共演は、清水美沙、渡部篤郎、桐島かれん、桐谷美鈴、それ
にジュリア・ロバーツの姪に当るというエマ・ロバーツ。ロ
バーツは2007年版“Nancy Drew”で主演していたようだ。
因に本映画の製作は、2008年1月紹介『結婚しようよ』など
も手掛けた葵プロモーションが担当しており、従って本来の
映画の国籍は日本映画となる作品だ。
なお、20日に行われた記者会見での監督の発言によると、監
督自身が幼少時にシンガポールのインターナショナルスクー
ルに通っていて、そこで頭を打って一時的な記憶喪失の経験
もあるとか。だから本作の主人公には特別な思い入れもある
のだそうだ。
また監督には、日本にインターナショナルスクールがあるこ
とを、日本の観客に知らしめたいという意図もあるそうで、
それなら上記の違和感も仕方がないという感じがした。

『カケラ』
桜沢エリカ原作のコミックス『ラブ・ヴァイブス』を、監督
実績もある俳優奥田瑛二の娘で、ロンドン大学の芸術学部と
ニューヨーク大学監督コースで学んできたという安藤モモ子
が脚色監督した作品。
つきあっている男はいるが心の中に満たされないものを感じ
ている女性と、男性も女性も同じ人間だから…という意識を
持つ女性が巡り合い、夫々に欠けた部分を埋めようとして行
く物語。
主人公のハルは東京で1人暮らしをしながら大学に通ってい
る。そんな彼女にはベッドを共にする男性もいるが、前の彼
女とは別れたと言っていながら関係を続けているその男の真
心が感じられない。
そんな彼女がある日、街角の喫茶店で1人の女性と出会う。
その女性リコは、事故や外科手術などで身体の一部を失った
人のために、その部分を修復するパーツを作る仕事をしてい
た。
こうして、心に欠けたものを感じているハルと、人の欠けた
部分を満たす仕事をしているリコの関係が始まるが…

この主人公を、2008年11月紹介『プライド』などの満島ひか
りが演じ、相手役にはオーディションで選ばれたという新人
の中村映里子が起用されている。他に、津川雅彦、かたせ梨
乃、光石研、根岸季衣、志茂田景樹、永岡佑らが共演。また
監督の妹の安藤サクラも出ていたようだ。
原作は読んでいないが、映画では女性が抱え込んでしまう問
題を丁寧に描き出している感じがする。と言っても僕は男性
だからその点も良くは判っていないのだろうが。でもこの映
画作品を観ていると、上手く若い女性の心が描けている感じ
がするところだ。
監督は、すでに父親の作品の助監督などで日本映画の現場も
慣れているようで、長編デビュー作とは思えない堂々とした
演出ぶり、決して親の七光とは言えない作品だ。特に主人公
たちの思いが見事に伝わってくる感じで、上記の経歴も伊達
ではないと思えた。

『桃まつり−うそ』
一昨年2月と昨年1月にも紹介した『桃まつり』の第3弾。
女性映画人による短編映画集が、今年は全11作品を3プログ
ラムに分けて3月13日から東京渋谷ユーロスペースにてレイ
トショウで公開される。
例年2本ほどが試写会に間に合っていなかったが、今回は全
11本が揃っての試写が行われた。試写の順にコメントを記載
しておく。
『−壱のうそ』
「迷い家」(監督:竹本直美、出演:染谷将太)
毎回紹介している監督だが、今回は前回に似たムードの作品
を観せて貰えた。発端から結末までのかなりの部分を観客の
想像に委ねる手法は短編だからこそ許されるものとも思える
が、前作も本作もその利点を上手く扱っている。初年度のよ
うな作品も観たいが、今回の手法もいろいろなシチュエーシ
ョンでとことん突き詰めて貰いたい感じもする。
「代理人会議」(監督:石毛麻梨子/大木萠、出演:吉岡睦
雄)
修学旅行で起きたトラブルへの対応を検討する会議が開かれ
るが、そこに集まったのは当事者の代理人ばかりで…。アイ
デアは面白いが、代理人会議というシチュエーションと問題
となっているトラブルが上手く絡んでいない感じがする。も
っと代理人だからこそ生じる展開が欲しい。ただ無責任とい
うだけでは物足りない。
「FALLING」(監督:加藤麻矢、出演:春山怜那)
僕の立場だとそれなりの時点で物語の展開に気づいてしまう
もので、そこからが何とも落ち着かない気分で観ることにな
ってしまった。ただ基本の設定はそれなりに押さえられてい
たし、文句を付けるつもりはないが、監督はアン・ライスの
著作に触発されたようで、全体に詰めが甘い感じなのはその
せいでもありそうだ。
「愚か者は誰だ」(監督:渡辺裕子、出演:野村宏伸)
浮気女に振り回される夫と、素行調査を依頼された男、そし
て浮気相手の男を巡る物語。テーマは有り勝ちかも知れない
が、展開はそれなりに面白いし、映像及び俳優に対する演出
もしっかりしている感じだ。ただ、結末で男の目蓋が動いた
のは演出か否か、その辺は明確にした方が良いような感じが
したが。
『−弐のうそ』
「きみをよんでるよ」(監督:朝倉加葉子、出演:森崎さあ
や)
親子と称している年の離れたカップル。その男性が援助を求
めた山間の別荘は、孤独な若い男性が管理をしていた。音に
対する演出が良い感じだし、メモを書くときのちょっとした
間合いなどが実に巧みに演出されている感じがした。物語も
短編という器の中にピッタリと填っており、それを細やかな
演出が際立たせている感じの作品だ。
「カノジョは大丈夫」(監督:安川有果、出演:前野朋哉)
久しぶりに会った中学生時代の男女が、ふとベッドも共にし
てしまうが…。全体的に良く纏まっている感じだったが、そ
れ以上のポイントがこれと言ってなかった印象の作品だ。良
い点も悪い点も特には挙げられない。正直に言って、何か印
象に残るほどの衝撃も感じられなかった。短編映画にはそれ
が欲しい。
「shoelace」(監督:福本明日香、出演:ともさと衣)
年上の既婚者と不倫を続けている女性が、不倫相手の娘と出
会って…。靴紐を結んでくれる関係、そんな絆が上手く表現
されていた。ただし本作では、撮影はDVで行われたようだ
が、試写会場のプロジェクターとの相性が悪いのか画質がか
なり劣悪で、特に背景の紅葉した林などが見られない状態に
なっていたのが残念。
『−参のうそ』
「バーブの点滅と」(監督:益田佑可、出演:石黒淳士)
家に帰ったら恋人が掃除機に吸い込まれ掛かっていた…カフ
カの「変身」を髱髴とさせる不条理劇。アイデアは面白いが
排泄の問題などいろいろ気になってしまった。勿論、割り切
って観てもいいのだが、逆にそこに拘わると、女性の口には
何でも吸い込まれそうで、そんな映像をクレイアニメで描い
ても面白そうだ。因に本作の画質も芳しくなかった。
「1-2-3-4」(監督:玉城陽子、出演:樋口史)
10年前に共に芸術を志して共同生活をしていた4人の男女。
やがて1人の男性は別の道に進んで成功を納め、男女のカッ
プルは土壌汚染の囁かれる団地に暮らしている。そしてもう
1人の女性が妊娠したと報告する。その相手は別の道に進ん
だ男性だった。複雑な男女関系を背景に物語が進んで行く。
ある種の青春ドラマが上手く纏められていた。
「テクニカラー」(監督:船曳真珠、出演:洞口依子)
ショウパブに出演してマジックショウを演じている母娘を巡
るどたばた劇。僕としては娘の特殊能力が多少気になるとこ
ろだが、お話はそんなことには関係なく進んで行く。それが
また好ましい感じの作品でもあった。脇役でマメ山田が出て
いるが、初めて奇を衒わずに演出されている感じで、それも
好ましかった。
「離さないで」(監督:福井早野香、出演:奥田恵梨華)
スランプに陥っている女流作家の元に届いた1通の手紙。そ
こには当事者しか知らないはずの彼女の高校時代のある事件
の真相が綴られていた。かなり複雑な物語が、26分の上映時
間の中に見事に描かれていた。今回の11作はどれも見応えの
ある作品ばかりだったが、その中でもこの作品の纏まりの良
さに感心した。

今回で3回目を迎える『桃まつり』だが、作品の水準は年々
上がっている感じで、今回の11本はいずれも楽しめた。ただ
上記した複数の作品で画質が著しく悪くなり、鑑賞に支障が
生じたのが残念。プロジェクターとの相性か、方式変換時の
問題かは判らないが、昨年の東京国際映画祭の上映でも一部
の作品の同様の問題が感じられたもので、ディジタル製作−
ディジタル上映に関しての相性など何らかの検討が必要にな
りそうだ。

『17歳の肖像』“An Education”
ナショナル・ボード・オブ・レヴューの主演女優賞など、す
でに11冠、38以上のノミネーションを勝ち取っているイギリ
スBBC提供の青春映画。1961年、まだインターネットも携
帯電話もない時代を背景に、ロンドン郊外に住む当時16歳の
女性の成長が描かれる。
主人公のジェニーは地元の高校に通う女子高生。利発で成績
優秀、教師たちも一目を置く彼女は、ラテン語が少し苦手だ
がオックスフォード大学への進学を目指している。それは恐
らくは学歴で苦労したのであろう父親の期待でもある。
そんな彼女は、チェロ奏者としてアマチュアオーケストラの
練習に参加して、そこで知り合った同年のボーイフレンドも
できる。しかしある雨の日、楽器ケースを抱えてバス亭に佇
む彼女のそばに1台の高級車が止まり、その車を運転する男
性に声を掛けられる。
その男性デイヴィッドは、ジェニーの両親にも上手く取り入
り、彼女をコンサートなどの社交の場に連れ出す。それは堅
物の父親の許で成長してきた16歳の少女には目を見張るよう
な世界だった。
こうして新しい世界に憧れ、デイヴィッドとの交際を深めて
行くジェニーは、やがてデイヴィッドの隠された面にも気付
いて行くが…

原作は、イギリスの人気ジャーナリストのリン・バーバーの
回想録。その実体験に基づく原作から『アバウト・ア・ボー
イ』などの原作者ニック・ホーンビィが脚色、2003年12月紹
介『幸せになるためのイタリア語講座』などのロネ・シェル
フィグが監督した。
主演は、本作だけですでにゴールデン・グローブ賞のノミネ
ートなど、8冠、11ノミネーションを達成しているキャリー
・マリガン。実は2005年版の『プライドと偏見』や『パブリ
ック・エネミーズ』にも出演ているイギリスの新星が一躍賞
レースに躍り出た。
他に、昨年9月紹介『エスター』などのピーター・サースガ
ード、『サロゲート』などのロザムンド・パイク。また父親
役でアルフレッド・モリーナ。さらに『シックス・センス』
などのオリヴィア・ウィリアムズ、エマ・トムプスンらが共
演している。
時代背景はイギリスでもビートルズ以前となるものだが、ま
だ女性が慎ましやかであった時代? そんな時代に生きなが
らも、真っ直ぐに将来を見据えた若い女性を主人公にした、
ある種の爽快感も感じる作品。欧米での高評価も理解できる
作品だ。
それにしても、すでにオードリー・ヘップバーンの再来とも
称されるマリガンの初々しさが堪らない作品だった。

『バッド・ルーテナント』
  “The Bad Lieutenant: Port of Call - New Orleans”
ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督の1人とされる
ウェルナー・ヘルツォークが、アメリカ映画を代表する俳優
の1人であるニコラス・ケイジを主演に迎えて、アメリカの
悪徳警官の姿を描いた作品。
カトリーナ・ハリケーンで荒廃したニューオルリンズを舞台
に、浸水した留置場から容疑者を救出するために$55の高級
下着を泥水に漬けることも厭わなかった警部補(ルーテナン
ト)が、持病となった腰痛を和らげるためにドラッグの常用
へと走って行く。

製作のエドワード・R・プレスマンは、1992年にもハーヴェ
イ・カイテルの主演で同名の作品を手掛けているが、本作は
リメイクではなく、類似の設定で新たな物語を描き出してい
るもののようだ。
因に、1992年作ではレイプ事件が扱われているが本作の事件
は殺人。そのためオリジナルではヌードの絡みのシーンなど
も多く、アメリカでの指定は当初は成人映画のNC-17、その
後に再編集でR指定を受けている。それに対して本作は最初
からR指定だった。
なお日本では、前作は18歳未満お断りの成人映画だったが、
今回はR−15の指定となっている。つまり子供でも観ること
はできるものだ。
そして今回の物語では、ドラッグを得るためあらゆる手段を
講じる主人公が描かれるが、その間のケイジの演技が正に迫
真、腰が本当に痛そうで、これではドラッグに手を染めても
仕方がないと思わされた。そんな主人公の転落の様子が実に
丁寧に描かれる。

共演は、『ゴーストライダー』でもケイジの相手役を務めた
エヴァ・メンデスと、『トップガン』などのヴァル・キルマ
ー。他に『もしも昨日が選べたら』などのジェニファー・ク
ーリッジらが出演している。
それにしても、奇才とも呼ばれるヘルツォークの監督作品だ
が、本作はこれといった特別な感じのするものではない。脚
本はテレビの『L.A.LOW』で脚本や製作も手掛けたウィ
リアム・フィンケルスタインが担当して、むしろオーソドッ
クスとも言える作品だ。
ただし途中に挿入されるワニとイグアナの映像は、エンドク
レジットによるとヘルツォーク自身が撮影まで担当するほど
の拘わりだったそうで…。それがまあ何を意味しているかは
いろいろ考えてしまうところだが。

『コララインとボタンの魔女−3D』(追記)
昨年12月にも一度紹介している作品だが、3D上映での試写
を観られたので改めて報告しておきたい。
見直して、なるほどこれは3Dの特性が良く活かされている
という感じの作品だった。それは、特に裏庭の景観などが見
事に表現されていた。また、別世界に向かうトンネルの表現
なども、3D効果が上手く利用されているものだ。
以前『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の3D化された
映像を観たときには、2Dとあまり変わらない印象を受け、
人形アニメーションでは元々3Dの印象を持つから、そんな
ものかとという感じを受けたが、今回最初から3Dで計算さ
れた作品は違った。
それは決して飛び出してくることが強調されたものではない
(一部にはその効果もある)が、全体として見事に3Dの効
果が発揮されていた。特に最近の3Dでの特徴である奥行き
感も本作では見事に表現されていた。
その他、作品に描かれる様々なエピソードが何れも3D効果
を最高に狙ったものになっている。正しく3Dで観るべき作
品、2Dで観ては損という感じだ。
        *         *
 なお、今回は賞レースなどのニュースも多いので、別立て
でそのページも更新することにします。



2010年01月17日(日) 噂のモーガン夫妻、シャーロック・ホームズ、ソラニン、アーマード、NINE+製作ニュース

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※それと時々製作ニュースも掲載しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『噂のモーガン夫妻』
          “Did You Hear About the Morgans?”
『セックス・アンド・ザ・シティ』のサラ・ジェシカ・パー
カーと、『ノッティングヒルの恋人』のヒュー・グラントの
共演によるラヴコメディ。
重要犯罪の目撃者を守る「証人保護プログラム」を背景に、
保護される2人がニューヨーカーのセレブで、しかも離婚寸
前の別居中だったら…というお話。
パーカーが演じるメリルはニューヨークで手広く不動産を手
掛けている。その手腕は抜群でセレブ誌の表紙を飾るほどの
評判だ。一方、グラント演じるポールは敏腕弁護士だが、出
張先でふとしたことで浮気をしてしまう。
そして夫の浮気を許せないメリルはポールを追い出してしま
うのだが、ポールは未練たらたらで復縁を迫っている。そし
てようやく実現した謝罪の会食でも、憤懣の冷めないメリル
は顧客が待っていると席を立つ。
ところが、言い争いながらも顧客の待つ場所までやって来た
2人は、その顧客が殺されるのを目撃、さらに確認に出てき
た犯人と顔を見合わせてしまう。しかも、その顧客の男が、
武器商人との繋がりのある人物だったことから…

こうして保護プログラムの対象となった2人はニューヨーク
を離れた場所に偽名で暮らすことになり、ワイオミングの片
田舎で年配のシェリフ夫妻の家に連れてこられるが…
このシェリフ夫妻を、『ライラの冒険』などのサム・エリオ
ットと、『あなたは私の婿になる』や『BTTF3』などの
メアリー・スティーンバージェンが演じていい味を出してい
る。
他に、『コクーン』の2部作に出演したウィルフォード・ブ
リムリーや、『17歳のカルテ』に出演していたエリザベス
・モス、『テェンジリング』などのマイクル・ケリーらが共
演。
脚本と監督は、ヒュー・グラントとは『トゥー・ウィークス
・ノーティス』『ラブソングができるまで』でも組んでいる
マーク・ローレンス。因に、ブリムリーが演じる頑固老人の
孫娘役で歌や踊りを披露しているグレイシー・ローレンスは
監督の実娘だそうだ。
物語自体は、他愛もないと言えば他愛もないが、離婚が日常
化している現代にはちょっと考えさせられる良い感じのお話
だ。そんなお話が、ワイオミングの大自然を背景に展開され
る。

『シャーロック・ホームズ』“Sherlock Holmes”
サー・コナン・ドイルが創造した著名な探偵を、2009年1月
に紹介した『ロックンローラ』などのイギリス人監督ガイ・
リッチーが、『アイアンマン』のロバート・ダウニーJr.の
ホームズ役と、『A.I.』のジュード・ロウのワトソン役で
描いたアクション作品。
舞台はヴィクトリア朝のロンドン。1人の男がその街区を駆
け抜け、とある無気味な館に侵入する。そこでは怪しげな儀
式が執り行われおり、今しも若い女性がその生け贄になろう
としていた。
その侵入してきた男こそ、ロンドンでも売り出し中の名探偵
シャーロック・ホームズ。そして、少し遅れて来たワトソン
やレストレード警部率いる警察隊の協力で儀式は阻止され、
女性は救出、儀式の主宰者たちは補縛されるのだが…
やがて補縛された首謀者のブラックウッド卿には絞首刑が宣
告され、ホームズの同居人でもあるワトソン医師がその死亡
を確認する。ところが程なくして、ブラックウッドの墓が内
側から破壊され、ブラックウッド卿が黒魔術の力で復活した
との噂が流れ始める。
一方、ホームズには旧知の仲であるアイリーン・アドラーか
ら行方不明者の捜査の依頼が舞い込む。さらに、ワトソンは
メアリーと婚約中で…
本作の敵役となるのは宿敵モリアティ教授でなく、怪しげな
黒魔術を使うブラックウッド卿と名告る人物。その国家を揺
るがす陰謀をホームズらが阻止するまでを描くという展開の
作品だ。

その物語は映画だけのオリジナルなものだが、その間では、
ホームズが推理をしていないときには欝病気味であったり、
壁に女王のイニシャルを刻んでいたり、ボクシングに興じた
りといった、ドイルによって創造されたキャラクターのエピ
ソードが描かれる。
そして映画の全体では、建設中のロンドン橋などのヴィクト
リア朝のロンドンがCGIで見事に再現され、そのクラシッ
クな背景の中で格闘技や爆発などのアクションが繰り広げら
れて行く。
共演は、『きみがぼくを見つけた日』などのレイチェル・マ
クアダムス、『シリアナ』などのマーク・ストロング、『ヘ
ンダーソン夫人の贈り物』などのケリー・ライリー、『幻影
師アイゼンハイム』などのエディ・マーサン。
脚本は、新人マイクル・ロバート・ジョンスンのオリジナル
から、『インビクタス』のアンソニー・ペッカムと『ジャン
パー』のサイモン・キンバーグが磨きを掛けた。
僕はシャーロキアンではないので単純に楽しめたが、専門家
の目にどう写るかはちょっと心配でもある。でもまあ、ヴィ
クトリア朝ロンドンの再現は見事だし、まだ計画はされてい
ないが続編にも期待が持てそうだ。

『ソラニン』
発行部数が累計60万部を超えているという浅野いにおの原作
によるコミックスの映画化。OL2年目で自由を求めて仕事
を止めてしまった女性と、フリーターの男性。学生時代の仲
間意識のまま今に至ってしまった男女の先行きの見えない現
実が描かれる。
将来に何の夢も希望も持てない現代の若者たち。男性は多少
音楽への夢があるようで、デザイナーの才能もあるらしいの
に、学生時代からのバンド仲間と貸しスタジオで練習だけを
繰り返している。
そんな中で、ちょっとした切っ掛けから「ソラニン」と題さ
れた1つの曲を作り上げる。ソラニンとはジャガイモの芽な
どに含まれる毒素のこと。その曲をCDに納めてレコード会
社に送るが…現実は厳しい。

物語の展開は、如何にも有り勝ちなもの。こんな話、何百回
も聞いたよな…という感じのものだ。でも何かが良い、そん
な気分にもさせられた。それはこの作品のどこかに描かれて
いる純粋さに憧れのようなものを感じてしまったせいなのか
も知れない。
自分も若かった頃にはこんな風に純粋だったかな。あの頃の
夢って何だったんだろう。年を取ってそれが一時の夢でしか
なかったことを理解していても、そんな夢にふと憧れてしま
う。
現代の現実がさらに厳しいものであることも事実だろう。だ
からこんな純粋さが憧れになるようにも感じられた。
主演は、『篤姫』の宮��あおいと2008年『蛇にピアス』など
の高良健吾。因に2人は映画の中の演奏も自ら演じており、
特にライヴシーンでの「ソラニン」の演奏は見事に撮られて
いる。
共演は、2007年の映画『GROW』などの桐谷健太、音楽バ
ンド「サンボマスター」の近藤洋一、2008年のオムニバス映
画『TOKYO』などの伊藤歩。他に美保純、最近は俳優業
も忙しいと聞く財津和夫らが登場する。
脚本は、ぴあフィルムフェスティバル出身の高橋泉、監督は
PVやCM、それにwowow放送のショートフィルムなどを手
掛けてきた三木孝浩の長編デビュー作となっている。

『アーマード/武装地帯』“Armored”
『クラッシュ』のマット・ディロン、『クリムゾンリバー』
のジャン・レノ、『マトリックス』3部作のローレンス・フ
ィッシュバーン、『キャデラック・レコード』のコロンバス
・ショート共演によるアクション作品。
何ともむさい連中ばかりが集まった作品だが、背景は金融機
関の現金輸送を担当する警備輸送会社。そこで行われようと
している狂言強盗計画に巻き込まれた新人警備員の恐怖と戦
慄の物語が展開される。
ショートが演じる主人公はイラク戦争からの帰還兵。両親が
相次いで病死し、14歳の弟と2人暮らしだが、家には病院か
ら届く請求書が山積みで家屋も抵当で押さえられそうになっ
ている。そして、絵の才能はあるが学校を休み勝ちの弟には
施設への収容が宣告されている。
そんな主人公は亡父が務めていた警備会社に就職、訓練期間
を経て正規採用となり、その歓迎会の席で先輩たちの経験を
聞かされる。そこには仲間を人質に取られてやむなく現金を
渡した事件も語られるが…。その事件では犯人も捕まらず、
金も行方不明ままだという。
そして主人公の耳に悪魔が囁き始める。それは誰にも危害を
及ぼさないスマートな犯行のはずだった。しかし思いも拠ら
ない事態が主人公を窮地に陥れて行く。

共演は、TVシリーズ『プリズン・ブレイク』のアマウリー
・ノラスコ、『ジェリコ』のスキート・ウールリッチ、『ヒ
ーローズ』のマイロ・ヴィンティミリア、そして1983年の映
画『ライトスタッフ』でガス・グリソム飛行士を演じていた
フレッド・ウォード。
脚本はアメリカ映画アカデミーが主宰する脚本コンペティシ
ョンに応募された作品とのことで、6000本以上あった中から
審査に立ち会ったサム・ライミ監督が見いだして、直ちに映
画化が進められたとのことだ。
監督は、2007年10月に紹介した『モーテル』のニムロッド・
アーントル。1992年『レザボアドッグス』などのベテラン撮
影監督アンジェイ・セクラとのコラボレーションで、テンポ
の良いアクションを描き出している。
意外な脱出口など、ちょっとお手軽に感じる部分もあるが、
堅牢な現金輸送車の特徴も活かしたスピーディな物語が展開
される。

『NINE』“Nine”
2008年5月のリヴァイヴァル上映の際に紹介したイタリアの
名匠フェデリコ・フェリーニ監督による『8½』を、ブロー
ドウェイで舞台ミュージカル化した作品の映画版。
1960年代のイタリア映画界を背景に、初期の作品は持て囃さ
れたものの、最近はヒットも儘ならなくなったダニエル・デ
イ・ルイス演じる映画監督が、次回作の構想を練って行く姿
が描かれる。
しかし、記者会見は行われたもののシナリオは最初の1行も
書けていない。それでも勝手に衣装やセットは作られ始め、
彼の周囲には自分の本妻や人妻の愛人、新たなミューズや雑
誌の女性記者、さらに子供の頃に目撃した娼婦や母親の亡霊
までもが関わってきて…
この女性たちを、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クル
ス、ニコール・キッドマン、ケイト・ハドスン、ミュージシ
ャンのファーギー、ソフィア・ローレン。さらに衣裳デザイ
ナーの役でジュディ・ディンチという豪華な顔ぶれが演じて
いる。
物語は1963年製作のオリジナルとほぼ同じで、そこに夫々の
女性ごとに歌と踊りのシーンが加えられている。その中でも
踊りは、各女優が大勢の女性ダンサーを従える形のかなり激
しい振り付けが展開されるもので、それだけで堪能できる見
事なものだ。
ただし、オリジナルでクラウディア・カルディナーレが演じ
た巫女の話が除かれているのはちょっと残念。そのキャラク
ターは、ケイト・ハドスンが演じた女性記者が引き継いでい
るような感じではあるが…
それにオリジナルでは、主人公の次回作としてはSF映画が
構想されていたもので、それが“ITALIA”と題された歴史劇
になっているのも僕としては残念なところだが、本作に登場
するセットの足場は、オリジナルに出てきた発射台へのオマ
ージュなのかな。
また本作では、その撮影自体がローマ郊外のチネチッタで行
われており、正門や外観や撮影ステージなどが見事に写し出
されている。これも当然オリジナルへのオマージュと言える
が、さらに映画ファンにとっては最高の贈り物でもあるもの
だ。
女優陣とその踊りが豪華すぎて、多少物語が置き去りに感じ
るところもあるが、エンディングにはちゃんとドラマが用意
されて納得できる結末にもなっている。とにかく全てを堪能
できる作品だった。
        *         *
 製作ニュースの最初はちょっと残念な情報で、前回も紹介
した“Spider-Man 4”の延期に関して、サム・ライミ監督、
トビー・マクガイア主演による現状の体制での製作を中止す
ることが発表された。それと同時にソニーからは、2012年の
公開を目指して新たな配役によるシリーズの再開を目指すこ
と発表された。しかもこの新展開では、以前にライミによっ
て拒絶されたジェームズ・ヴァンダービルトの脚本が採用さ
れるとのことだ。
 この経緯に関しては、昨年8月30日付でも紹介したが、当
時はライミ監督が進めていた“Spider-Man 4”に続く“5”
“6”の脚本に関して、ソニー側からヴァンダービルトとの
契約を結んだことが発表されていた。ところが『ゾディアッ
ク』などの脚本家は、実は当初“Spider-Man 4”の脚本を契
約し、その際に3部作からなる構想を提出してソニー側の了
解を得ていたものだったのだ。
 しかしその後に就任したライミ監督は、以後のシリーズを
毎作読み切りで行きたいと希望。それに合せて“Spider-Man
4”の脚本の書き替えも実行してしまった。そして一旦はそ
の意見に沿って1月からの撮影が計画されていたものだが…
結局、その後もソニーとライミの間での話し合いは続いてい
たようで、その話し合いが最終的に決裂、ソニー側はライミ
の計画を中止して、新たに仕切り直すことにしたようだ。
 なおこの発表に関連しては、SPEの製作トップを務める
エイミー・パスカルから、「我々はこの10年間、ライミ及び
マクガイアと共に3本の『スパイダーマン』映画を作る旅を
続けてきた。それは、このジャンルの映画製作に新たなハイ
レヴェルの目標を造り出すことになった。10年前、我々は自
らの作品が映画史を塗り替えようとは考えてもいなかった。
我々は、その歴史に再び挑戦することにした」とのステート
メントが発表された。
 一方、ライミからも「『スパイダーマン』映画を作ること
は自分に課した大いなる実験だった。我々は第4作について
も同様に進める気持ちだったが、スタジオ側は新たな方向性
を持ちたいと考えていた。私自身にはそれが大変危険なもの
のように思われた」とのコメントが発表されている。
 結局、これは両者の意見が決裂したと言うことになるが、
ソニー側ではピーター・パーカーを高校生に戻して最初から
やり直す意向とも伝えられ、『バットマン・ビギンズ』の例
に習った新シリーズの構築が検討されることになるようだ。
ただし、その製作期間は2012年公開の期限を切られた2年間
しかない訳で、ヴァンダービルトの構想が第3作の続きだっ
たとすれば、そもそもの発端から前の第1作とは異なるもの
を作り直さなければならない。新たな監督やキャスティング
など、問題は山積みのものだ。
 因に監督には、昨年全米で大ヒットしたロマンティック・
コメディ『(500)日のサマー』を手掛けたマーク・ウェブが
交渉されているとの情報もあり、また主演には、『ハイスク
ール・ミュージカル』は卒業したけどザック・エフロンが起
用されるという噂もあるようだ。さらに、1月から撮影開始
予定だった“Spider-Man 4”には、敵役としてフェリシア・
ハーディ=Black Cat役のアン・ハサウェイと、Vulture役で
ジョン・マルコヴィッチの出演も噂されていたが、それらも
どうなるか気になるところだ。
        *         *
 次も続報で、昨年11月8日付で報告した“Terminator”の
権利について、『ソウ』シリーズを配給しているライオンズ
ゲイト社が1500万ドルと将来の配給収入の5%を加算すると
いう条件で参加し、現在トップだという状況がハルシオン社
の管財人から発表された。
 なおハルシオン社では、以前紹介したようにこの権利には
7000万ドルの価値があると破産宣告を行う裁判所に申し立て
ているものだが、本音では最低でも5000万ドルは欲しいよう
で、上記の条件がそれに合致するか否かが今後の問題になり
そうだ。また、2月4日が入札の期限とのことで、それまで
により良い条件の対抗馬が出なければ、ライオンズゲイト社
が権利を取得することになる。つまりそれまでにハルシオン
社がより多くの金を出せるスポンサーを見つけられるかと言
うことだ。
 ただし、金額が吊り上がっても2月8日までは100万ドル
単位で金額を引き上げることができるそうで、そうなれば、
そこからが本格的な争奪戦ということなる。因に『T4』は
2億ドルの製作費で全世界から3億7100万ドルの配給収入を
得ており、その価値が1500万ドルということはなさそうだ。
        *         *
 2008年1月15日付の第151回で紹介した“Wickie und die
starken Manner”(英題名:Vicky the Viking)は、2009年
9月にドイツ、オーストリア、スイスのドイツ語圏で公開さ
れ、ドイツでは4110万ドル相当の年間第1位の興行成績を納
めたそうだ。その成功を受けて第2作の計画が発表されてい
る。
 計画されている作品は、“Wickie auf grosser Fahrt”と
題されているもので、その英訳は“Vick's Big Journey”と
なるもののようだ。そしてこの第2作の撮影はドイツの実写
映画では初となる3Dで実施されることも発表されている。
 元々はスウェーデンの作家ルーネ・ヨンソンが著わした児
童文学を原作とする作品だが、その人気の一部は1974−75年
に放送されたアニメーション『小さなバイキングビッケ』の
存在があるとも言われており、その人気は今でも健在とのこ
となので、何かの機会に日本でも上映して欲しいものだ。
        *         *
 もう1本ドイツ関係の話題で、2007年のアカデミー賞で外
国語映画部門のオスカーを受賞したドイツ映画“Das Leben
der Anderen”(邦題:善き人のためのソナタ)を監督した
フローリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクが、スパ
イグラス社が2005年のフランス映画“Anthony Zimmer”から
リメイクする“The Tourist”の監督に返り咲くことが発表
された。
 この作品は、アメリカ人の旅行者がインターポールの女性
捜査官によって操られ、危険な捜査活動に知らずに協力させ
られると言うもの。そしてこの旅行者役にジョニー・デップ
と捜査官役にアンジェリーナ・ジョリーの共演も発表されて
いる。
 元々この計画では、トム・クルーズとシャーリズ・セロン
という配役でドナースマルクが監督するものだったが、クル
ーズの配役が『アバター』などのサム・ウォーシントンに交
代し、さらに「創造上の相違」を理由に監督が降板、一時は
アルフォンソ・キュアロン監督なども取り沙汰された。その
計画で今回はウォーシントンが降板し、さらにジョリーとデ
ップの配役が決定したもので、その監督にドナースマルクが
返り咲いている。
 ただしこの計画では、撮影の開始時期が春頃とされている
もので、そうなるとデップは前回紹介した“Pirates of the
Caribbean: On Stranger Tides”との兼ね合いはどうなるの
か、またジョリーも“Wanted 2”や“Kay Scarpetta”など
噂されている計画が目白押しで、その間を縫っての製作は可
能なのだろうか。



2010年01月10日(日) 恋するベーカリー、アイガー北壁+製作ニュース

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『恋するベーカリー』“It's Complicated”
メリル・スリープ、アレック・ボールドウィン、スティーヴ
・マーティン共演による熟年ラヴ・コメディ。
ストリープ扮する主人公は若い頃にフランスで修行したとい
うパン職人。ボールドウィン扮する弁護士と結婚して3人の
子供も儲けたが、10年前に夫の浮気で離婚した。しかし経営
するベーカリーは成功し、3人の子供も立派に育て上げてい
る。そして最後まで家にいた娘が巣立ち、息子も大学を卒業
して社会人となる。
そんな彼女は、自宅を増築して理想のキッチンを作ろうと計
画しているが、その打ち合わせの席で出会ったマーティン扮
する建築士に心引かれるものを感じる。ところが息子の卒業
式出席のためニューヨークを訪れた彼女の前に、元夫が姿を
現す。しかも元夫は若い妻との仲が思わしくないようだ。
こうして発生した熟年三角関係に、主人公はどのような結論
を出すのか…
脚本・監督は、2004年2月に紹介した『恋愛適齢期』などの
ナンシー・マイヤーズ。監督の前作『ホリデー』は観ていな
いが、本作は『恋愛…』と同様の熟年男女を描いたもので、
実はマイヤーズもストリープも同い年の自分としては、解か
り易く見ることの出来る作品だった。
ただまあ、男性の自分としては、何事にも優柔不断でぐずぐ
ずしてしまうボールドウィンの役柄に親近感を持ってしまっ
たもので、そうなってくるといろいろ身にも詰まされるし、
かなりやばい感じのお話にはなってしまう。
とは言え、映画はストリープが主人公なのだし、そういう映
画として観れば、これが正解なのだろう。彼女の生き方には
賛同する女性は多いはずだ。そしてそれは、これから女性に
愛を捧げようとする男性にもいろいろヒントは多い作品とも
言えそうだ。
共演は、『ホリデー』にも出演のジョン・クラシンスキー。
他に、ケイトリン・フィッツジェラルド、ゾーイ・カザン、
ハンター・ハリッシュという3人がストリープの子供たちを
演じて、見事な家族を描き出している。
因に本作は、すでにナショナル・ボード・オブ・レヴューの
アンサンブル演技賞を受賞。またゴールデン・グローブ賞で
は、ストリープが11月に紹介した『ジュリー&ジュリア』と
共にコメディ部門主演女優賞にWノミネートされている他、
作品賞、監督賞の候補にも挙げられている。
それにしてもストリープの役柄が、『ジュリー&ジュリア』
に続いてフランスで勉強した料理人と言うのも面白いところ
だ。

『アイガー北壁』“Nordwand”
1936年8月に開催されるベルリンオリンピックに先駆け、同
年の7月にアイガー北壁の初登攀を目指したドイツ人登山家
を巡る実話に基づく物語。
標高3970mのアイガー山頂は1858年に初登頂され、その後は
各稜線からの登攀も次々に成功されるが、北壁だけは落石が
多発する地質などから極めて困難とされていた。その中で、
1934年に行われた初挑戦は失敗、1935年には2人の登山家が
3500m地点で遭難して帰らぬ人となる。
しかし、ドイツ=オーストリアの併合を目論むヒトラーは、
その北壁の克服を併合の象徴と位置づけ、初登攀を成し遂げ
た者にはオリンピックと同じ金メダルを授与すると表明、登
攀は国家の威信を賭けた挑戦へとなって行く。そして1936年
7月、ドイツ人の登山家2人とオーストリア人登山家2人が
それに挑むのだが…
アイガー北壁というと、1975年のクリント・イーストウッド
監督主演による『アイガー・サンクション』がまず頭に浮か
ぶ。その作品に描かれた気象の急変ぶりや落石の危険などは
本作でも克明に描かれているものだ。
ましてや本作は実話に基づく映画化な訳で、特に結末の強烈
さはフィクションではありえない、正しく「事実は小説より
奇なり」という感じのものだった。しかしこれが、正にこの
通り起きた出来事だったのだ。
さらにこの登攀がナチスの宣伝のために半ば強制的に行われ
たという話や、祖国から追放されたオーストリア人登山家の
話など、描かれている歴史的な事実にもいろいろ興味深いも
のがあった。これは正に歴史に翻弄された人々の話でもあっ
たのだ。
出演は、2009年6月紹介『バーダー・マインホフ』のヨハン
ナ・ヴォカレク、2006年3月紹介『戦場のアリア』や2008年
5月紹介『スピード・レーサー』にも出演のベンノ・フェル
マン、2003年公開『グッバイ、レーニン』などのフロリアン
・ルーカス。
他に2002年版『ソラリス』に出演のウルリッヒ・トゥクール
らが出演。また、2人のオーストリア人登山家を共にウィー
ン生まれのジーモン・シュヴァルツとゲオルク・グリードリ
ッヒが演じている。
監督は、CMやミュージックヴィデオ、また舞台演出やオペ
ラ演出なども手掛けるというフィリップ・シュテルツェル。
長編映画は2作目のようだが、観ていて凍えるような寒さを
感じるほどのしっかりとした演出を見せている。因に本作の
雪山シーンは、巨大な冷凍倉庫の中に極寒を再現して撮影さ
れているそうだ。
それにしても、快晴の陽を浴びていた北壁が一瞬にして雪山
に変貌するアイガーの驚異は1975年の作品にも描かれていた
が、7月だというのに雪が降り積もる山岳の恐怖は、本作で
はより明白に捉えられている感じがした。
ユングフラウ鉄道の状況なども判り易く描かれているし、目
と鼻の先にいながら助けることの出来ないもどかしさも、手
に取るように判る作品だった。
        *         *
 製作ニュースは、今回も目欲しいものはあまりないが、ま
ずは既報のシリーズ化が進む“Pirates of the Caribbean”
で、次の作品となる第4作の全米公開日を2011年5月20日に
決定したことが発表された。
 実はこの年の5月には、先にソニーから“Spider-Man 4”
の5日公開が発表されていて、どちらも第4弾となるVFX
大作の競合が心配されていたものだが。この発表の直前に今
年前半に予定されていた“Spider-Man 4”の実写撮影が脚本
完成の遅れにより困難になったという報道があり、ソニーか
らも公開延期が公式に発表されていた。そこで、当初は27日
と噂れていた“POTC 4”の全米公開日が繰り上げられること
になったものだ。
 ただし、元々このシリーズの全米興行では、最初の2作は
7月公開だったが、第3作の“At World's End”は5月25日
に封切られており、このタイミングでの公開は経験済み。夏
休み興行の先陣を切る5月、それも競合作のない公開は興行
的にもかなりの期待が持てそうだ。
 とはいうものの、実は“POTC 4”の製作も、昨年8月9日
付で報告したように年明け早々の撮影開始と言われていたも
のが今だに動き出しの報告はなく、脚本の進捗状況などに多
少の不安も生じている。
 ただしその内容に関しては、先に“On Stranger Tides”
という副題が発表されていて、さらに物語のエッセンスは、
PKD賞受賞者でもある作家のティム・パワーズが1988年に
発表した同名のファンタシー文学賞の候補作から取るという
報道もあり、キャラクターの変更などの問題は残るものの、
物語自体はできあがっていると考えられるものだ。
 因にその原作の物語は、カリブ海を舞台にして2人の海賊
が「若返りの泉」を求めて競争を繰り広げるものとのこと。
一方、映画の第4作は第3作が終った時点から始まるとの情
報もあり、すでにジョニー・デップとジェフリー・ラッシュ
の共演もあるとされている物語の展開では、第3作で死んだ
誰かを生き返らせるのでは…?という読みもあるようだ。
 監督は、既報の通り『シカゴ』『SAYURI』、そして
今春公開“Nine”のロブ・マーシャル。そろそろ撮影開始の
報告が聞きたいものだ。
        *         *
 この他の2011年の公開作品では、当初は6月17日から、一
時は5月20日とも発表されていたマーヴェル製作“Thor”の
公開日が、“Spider-Man 4”が抜けた後の5月6日に繰り上
げられることも発表されている。こちらは、製作会社は違う
とは言え同じマーヴェル原作同士の挿げ替えで順当という感
じだが、ディズニーが“POTC 4”の公開日を20日に決めたの
も、その動きを察知してのことなのかも知れない。
 そしてこの作品に関しても1月撮影開始を目指して、準備
がかなり進んできているところだ。
 なおこの作品に関しては、昨年5月24日付などでも紹介し
ているが、マーク・プロトセヴィッチとザック・ステンツ、
アシュレー・ミラーの脚本から、監督は既報の通りケネス・
ブラナーが担当。主人公のThor役にも既報の通り『スター・
トレック』のクリス・ヘムスワースが起用されている。
 さらにその共演者として、人間界では医師として活動する
主人公の助手で恋人でもある看護婦ジェイン・フォスター役
にナタリー・ポートマン、主人公の生みの親のオーディン役
にアンソニー・ホプキンス、そしてマーヴェル製作スーパー
ヒーローシリーズには全て登場する計画のニック・フューリ
ー役サミュエル・L・ジャクスン。
 他に、『マンマ・ミーア!』で3人目の父親候補を演じた
ステラン・スカーシュゴード、『リーサル・ウェポン4』な
どのルネー・ロッソ、『バベル』『スペル』のアドリアナ・
バラッザらが登場する。
 マーヴェル製作らしい豪華なキャスティングで、日本では
多少知名度の低いヒーローではあるが、頑張ってもらいたい
ところだ。
        *         *
 昨年3月1日付第178回の紹介では2010年12月17日の全米
公開となっていたワーナー製作によるDCコミックスの映画
化“Green Lantern”も、多少遅れたものの2011年6月17日
の公開に向けて製作が進み始めているようだ。
 この作品については、2007年11月1日付第146回で内容の
紹介をしているが、昨年2月15日付第177回で紹介したよう
に、新たにマーティン・キャンベル監督の起用が発表され、
製作準備が進められていたものだ。
 そしてこの映画化については、昨年8月紹介の『あなたは
私の婿になる』でサンドラ・ブロックの相手役を務めたライ
アン・レイノルズが主人公のグリーン・ランタンことハル・
ジョーダンを演じることが先に発表されていたが、今回はそ
の相手役として昨年11月紹介の『50歳の恋愛白書』と12月
紹介『ニューヨーク、アイラブユー』にも出演のブレイク・
ライヴリー共演が発表されている。
 テレビの“Gossip Girl”でも人気の女優の役柄は、主人
公が勤務する航空機会社の社長の娘ということで、物語が原
作通りなら、物語の前半では主人公の帰りを待ちわびる役柄
となりそうだ。撮影は3月に開始の予定とされている。
 と言うことで、2011年の初夏には、ジャック・スパローと
Thor、それにグリーン・ランタンの揃い踏となりそうだ。
 因に、この年の夏には、『ハリー・ポッター』シリーズの
最終巻『死の秘宝』の後編の公開も7月15日に予定されてお
り、さらに2008年11月15日付の第171回などで紹介した“The
First Avenger: Captain America”も、出演者などは未定な
ものの、『ナルニア国物語』を手掛けたクリストファー・マ
ーカス、スティーヴン・マクフィリーの脚本、『オーシャン
・オブ・ファイアー』『ジュマンジ』などのジョー・ジョン
ストン監督による映画化の公開が7月22日と発表されている
もので、ファンにはまた忙しい夏になりそうだ。
        *         *
 最後に新しい計画を一つ。
 1984年にデヴィッド・リンチ監督で映画化されたフランク
・ハーバート原作“Dune”のリメイクが計画され、その監督
に昨年6月紹介した『96時間』のピエール・モレルの起用
が発表された。
 原作は1965年に第1巻が刊行され、以後原作者のハーバー
トが1986年に亡くなるまでに6巻のシリーズが発行されて、
そのスケールの壮大さや時代に先駆けたエコロジーの思想な
どで巻を追うごとにベストセラーとなったものだ。それは、
ちょうど第4巻が発行された頃にアメリカを旅行していた僕
の目には、書店の店頭に堆く詰まれた本の山とその山が見る
見る消えて行く様子に、唖然とした記憶も残っている。
 その作品の映画化は、初めは1975年頃にチリ出身の映画監
督アレハンドロ・ホドロフスキーによって着手され、SF画
家のクリス・フォス、メビウス、H・R・ギーガー、特撮に
はダン・オバノンらの参加も得て進められたが、約1年間の
準備の後に製作資金の調達の失敗などで、上映時間は10時間
だったとも言われる計画は頓挫してしまった。
 その計画を復活させたのが、1982年の『コナン・ザ・グレ
ート』も手掛けたプロデューサーのディノ・デ=ラウレンテ
ィスで、彼は全てを白紙に戻した上でその監督に『エレファ
ント・マン』が絶賛を浴びていたリンチを起用。カイル・マ
クラクラン、ヴァージニア・マドセン、スティング、マック
ス・フォン・シドー。さらにパトリック・スチュアートらも
共演した作品は1984年12月に全米公開された。
 しかし、公開時に上映時間が短縮されたと言われる作品は
興行的な成功を得られず、その後に長尺版も発表されはした
が、失敗作というレッテルは貼られたままのものだ。因に僕
個人としては、この作品のプロモーションで来日したリンチ
監督らの記者会見でMCをさせて貰ったものだが、この会見
には当時滅多に記者会見に応じないとされていたリンチが登
場するとのことで、海外からも記者が駆け付け、彼らが発す
る深い質問の数々に司会席にいて興奮した記憶も、懐かしい
思い出となっている。
 という作品のリメイクになるが、今回の計画も実は2008年
4月1日付第156回で紹介しているように、すでに2年近く
準備が進められていたもので、当時は『ハンコック』などの
ピーター・バーグ監督の起用が発表され、その時点で脚本家
を選考中となっていた。そしてその脚本家にはジョッシュア
・ゼトマーという人物が選ばれ、すでに脚色は完成されてい
たようなのだが、今度はバーグ監督がボードゲームを題材と
する“Battleship”という作品への参加を表明して降板、改
めて監督の選考が行われていた。
 その監督にモレルの起用が発表されたもので、長編監督は
4作目という実績は多少気になるが、デヴィッド・リンチは
3作目でこの原作に挑戦した訳だし、ピーター・バーグも監
督の実績はさほど無かったから、結局この作品はそういう巡
り合わせになるものなのだろう。
 因に、脚本家のゼトマーも、公式には本作が初脚本となる
ものだが、実は『007慰めの報酬』で撮影現場での脚本の
リライトを担当しており、また彼が執筆した“Villan”とい
う脚本は2006年度の「製作されていない優秀な脚本10本」に
選ばれた後、現在はレオナルド・ディカプリオの製作で映画
化が進められるなどの実績の持ち主ではあるようだ。
 キャスティングなどもまだ決まっていない作品だが、今度
はトラブル無く映画を完成させて欲しいものだ。



2010年01月03日(日) 第181回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 新年最初ということで、試写会も有りませんでしたので、
久し振りにニュース欄を復活します。
 まずは嬉しいニュースで、特にSF/ファンタシー映画の
分野で活躍する2人の映画人に、それぞれサーの称号が贈ら
れることが発表された。
 1人目は、『新スタートレック』のピカード艦長や『X−
メン』のプロフェッサーX役でお馴染みの俳優パトリック・
スチュアートに英国女王からサーの称号が贈られることが発
表された。受賞の理由は「ドラマへの貢献」とされており、
元々がシェークスピア俳優でもあるスチュアートにはいろい
ろなドラマへの貢献が有ると思うが、イギリスはともかく、
アメリカだとドラマ=テレビドラマという感覚が強いから、
これは『新スタートレック』の評価ということでも考えたい
ところだ。それにしては少し遅いが。
 なお、サー・スチュアート本人からは、「大変な喜びで、
非常に光栄に思う」とのコメントが発表されている。因に、
先にサーの称号を授与された『X−メン』の共演者のサー・
イアン・マッケランにはSerena(高貴な人)というニックネ
ームが有るそうで、今後は2人ともそうなってどうするのか
という問題も有るようだ。
 そして2人目は、そのマッケランが出演した『LOTR』
3部作で世界的ヒットを飛ばしたピーター・ジャクスン監督
に対して、母国ニュージーランド政府からサーの称号が贈ら
れることが発表された。因に、ニュージーランドは英連邦の
一員なので、この称号もイギリス女王から贈られることにな
るのかな。
 こちらの授与の理由は「映画への貢献」とのことで、特に
『LOTR』が同国へもたらしたいろいろな影響が高く評価
されたようだ。同作では、2004年のアカデミー賞を総浚えす
るなどニュージーランド映画界の名前を一躍高めたが、さら
にロケ地ツアーなどの観光事業への貢献も高いようで、いろ
いろな意味での貢献度は高そうだ。サー・ジャクスン本人か
らは、「自分の人生で2004年のオスカー受賞以上のサプライ
ズは無いと思っていたが、間違いだった」というコメントが
発表されている。
        *         *
 人に受賞に続いては作品の選出で、毎年年末に発表される
アメリカ国会図書館が選定する「保存すべき映像」2009年版
の25本に、1957年製作の“The Incredible Shrinking Man”
(縮みゆく人間)が選出された。
 『アイ・アム・レジェンド』などの原作者のリチャード・
マシスンが自らの小説を脚色し、脚本家として初めて映画に
関った作品としても記憶される本作は、翌年のアメリカSF
大会で授与されるヒューゴー賞のドラマ部門を受賞、ファン
の間では最初から高く評価されていたものだ。その作品が、
今回は公的な機関から選定を受けたもので、その事実は単純
に喜びたい。
 因に今回の選定では、この他に1979年製作の“The Muppet
Movie”、1983年製作のPV“Thriller”なども一緒に選ば
れている。また、1911年に実写とアニメーションの合成を成
功させた“Little Nemo”という作品も選定されている。な
お、過去の選定作品については、昨年1月1日付の本ページ
もご参照ください。
        *         *
 さて、めでたい話はこれくらいにして、次は製作ニュース
と行きたいところだが、実は年末は海外もクリスマス休暇な
どでめぼしい情報が少ない時期。そんな中でサー・ピーター
・ジャクスンが主宰するウェタ・ワークショップから新たな
ファンタシーシリーズの映画化権の獲得が報告された。
 報告されたのは、イギリス在住の作家イラストレーターの
フィリップ・リーヴが2001年に発表した“Mortal Engins”
という作品。すでに6巻が発刊され2010年には第7巻の刊行
も予定されている“Hungry City Chronicles”と題されたシ
リーズの第1巻となっている。
 因にこの作品は、2006年に創元SF文庫から『移動都市』
の邦題で翻訳出版され、2007年に横浜で開催された世界SF
大会/日本SF大会(併催)にて星雲賞海外部門を受賞して
いるもので、その内容紹介によると、物語の背景は最終戦争
後の世界。大都市は移動しながら小都市を貪るという「都市
自然淘汰主義」に則り、移動しながら互いを狩ったり狩られ
たりという闘争を繰り広げている。そんな時代を背景に、移
動都市ロンドンに暮らす少年の成長を軸にした冒険物語が展
開されるようだ。
 つまり映画化では都市が移動するという状況が描かれるこ
とになる訳で、これは『LOTR』を手掛けたVFX工房の
ウェタ・ディジタルには腕の見せ所という感じの作品になり
そうだ。
 ただし、本作の映画化に関してはジャクスン本人が監督す
るか否かは未定。またジャクスンは、今年夏に撮影開始予定
の“The Hobbit”については、監督はギレルモ・デル=トロ
に任せるものの、その脚本にはジャクスンも参加しており、
その原作を脚色する“Part 1”の脚本は完成しているが後続
となる“2”の脚本は未完成とのことで、現在は新作のプロ
モーションで世界中を飛び回っている状態では、上記のサー
の称号の授与式典への出席も含めて、ジャクスンのスケジュ
ールは満杯。つまり、ジャクスンが監督するしないに関らず
今回報道された作品の実現はまだ先のことになりそうだ。
        *         *
 ニュースはもう1つ。
 いよいよ年明けからの本格的な製作開始が予定されている
ディズニー/ピクサー製作による“John Carter of Mars”
に関連して、火星の教皇マタイ・シャン役で出演の予定され
ている俳優マーク・ストロングが、撮影について語っている
記事が報告された。
 その記事によると、いくつかのシーンの撮影はアメリカの
ユタ州でも行われるが、彼自身の出演シーンの殆どはロンド
ン郊外のスタジオで行われるとのことだ。そのスタジオには
360度の全ての角度にカメラが配置されていて、それにより
俳優の全身が撮影される。そしてその俳優の全身に火星人の
容姿が被せられるもので、俳優自身の才能でキャラクターに
いろいろな要素を付け加えることができる…としている。
 つまりこれは、『Disney'sクリスマス・キャロル』で使わ
れたのと同様のパフォーマンス・キャプチャーが行われるこ
とになるようだが、同作品を手掛けたロバート・ゼメキスは
今回の製作には参加していないもので、陰での協力が有るの
かどうかは判らないが、取り敢えずは独自の技術として実施
されることになるようだ。
 因にディズニーでは、『POTC』でビル・ナイが演じた
デイヴィ・ジョーンズの表情のモーション・キャプチャーを
俳優本人が行っていたが、それに似た技術はすでに持ってい
るということなのだろう。ただし、今回紹介した記事の中で
ストロング自身は「これはモーション・キャプチャーではな
い」と発言しているものだ。なおストロングは、2008年10月
紹介の『ワールド・オブ・ライズ』の他、日本では3月公開
予定の『シャーロック・ホームズ』にもホームズの敵役とし
て出演しているとのことだ。
 その他の配役は、ジョン・カーター役に2006年9月紹介の
『スネーク・フライト』に出ていたというテイラー・キッシ
ュ。デジャー・ソリス役に2006年7月紹介の『イルマーレ』
に出演していたリン・コリンズ。因にこの2人は昨年公開さ
れた『ウルヴァリン』で共演していたようだ。
 また、緑の巨人タルス・タルカス役に『スパイダーマン』
などのウィレム・デフォー、緑色人のソラ役に『マイノリテ
ィ・リポート』などのサマンサ・モートン、緑色人の皇帝タ
ル・ハジェス役に『スパイダーマン3』などのトーマス・ヘ
イデン・チャーチ。
 さらに、赤色人のカントス・カン役にロバート・E・ハワ
ード原作による2009年製作の“Solomon Kane”でケイン役を
演じているジェームズ・ピュアフォイ、赤色人の王子サブ・
サン役に2009年2月紹介『パニッシャー』などのドミニク・
ウェスト、緑色人の老女サルコジャ役に4月日本公開予定の
“Clash of the Titans”のリメイクにも出演しているポー
リー・ウォーカー。そして、原作者のエドガー・ライス・バ
ローズ役として、『Disney'sクリスマス・キャロル』に出演
していたダリル・サバラという1992年生まれの俳優がキャス
ティングされている。
 脚本は、『スパイダーマン2』の映画用ストーリーを手掛
けたマイクル・シェイボン。その脚本を『ウォーリー』など
のアニメーション監督アンドリュー・スタントンが改訂し、
初の実写作品として監督も担当するものだ。
 映画の全米公開は、2012年夏に予定されている。
        *         *
 最後に記者会見の報告で、1月15日に日本公開される映画
『かいじゅうたちのいるところ』のプロモーションとして、
製作者と監督スパイク・ジョーンズ、主演マックス・レコー
ズによる来日会見が行われた。
 作品については、すでに昨年11月に紹介しているのでそち
らを参照していただくとして、会見では映画に登場するかい
じゅうたちの創造の方法について質問してみた。ただしこの
質問は、本来的にはVFXのスタッフに聞くべきものだが、
今回はその方面からの来日はないし、実は会見で質問が途切
れそうになったので無理を承知でしたものだ。
 その回答は、まず製作者からは「主演が子役なので、CG
Iなど使わずに、出来るだけ自然な形で撮影できる方法を検
討した」というものだった。そして監督からは、「かいじゅ
うの演出は極めて危険なもの。こちらの言うことはなかなか
聞いてくれないし、ほら僕は指まで食われちまった」と、指
を内側に曲げて失ったように見せるパフォーマンスまでされ
てしまった。
 この後を受けて、主演のレコーズが「実際の撮影は、着ぐ
るみの中にオーストラリア人の俳優が入って行われたので、
普通に俳優と対しているようにできたし、別にそこで難しい
ところはなかった」という発言を聞くことができた。
 この質問は、元々上記のように無理を承知でしたもので、
僕自身が事前に回答は予想して、それ以上の回答を期待して
いたものではなかったが、監督のパフォーマンスや特に主演
のレコーズが真面目に答えてくれたのは期待以上だった。
 最近の記者会見は、事前に質問の仕込まれていることが多
くて、僕自身がその質問者を依頼されているとき以外はなか
なか質問のチャンスも無いが、今後も出来るときには面白い
回答を貰える質問をして行きたいものだ。

 ということで、今年もこんな調子でやっていきますので、
何卒よろしくお願いいたします。


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井口健二