| 2009年12月31日(木) |
Gフォース、ミュータント・クロニクルズ、インビクタス/負けざる者たち(改稿)+他 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『スパイアニマル Gフォース』“G-Force” 『POTC』や『ナショナル・トレジャー』などのジェリー ・ブラッカイマー製作によるVFXアクション・コメディ。 特殊な訓練を受けたモルモットのチームが地球の危機に立ち 向かう。 主人公は、FBIの秘密研究所で訓練を受けたモルモットた ち。ところがその秘密研究所に予算打ち切りの危機が迫り、 実力を証明するためにとある企業の機密を盗み出す任務を敢 行する。 その企業は元兵器商人が隠蓑としているもので、そこでは何 か陰謀が進んでいるらしい。しかしFBIでは2年間も調査 を続けているが尻尾を掴めないでいた。そんな企業の会長の 家に潜入した主人公たちは、首尾よく機密資料をメモリーに ダウンロードするが… このモルモットたち小動物や、その他のメカニズムなどをV FXで描いているものだが、そのVFXはソニー・イメージ ワークスの担当で、『スチュアート・リトル』の実績が見事 に活かされている感じだ。 ただし、後半のアクションシーンなどは派手では有るけど、 何処かで観たようなシーンの羅列だったりもして…。でもま あ本作は、基本的にお子様向けのディズニー作品な訳で、こ の辺でOKかなという感じのところだ。 人物の出演は『アンダーワールド』『POTC』などのビル ・ナイが中心。一方、声の出演者にはニコラス・ケイジ、ペ ネロペ・クルス、ジョン・ファヴロウ、スティーヴ・ブシェ ミ、サム・ロックウェルなど錚々たる顔ぶれが並んでいる。 ストーリー原案と監督は、『未知との遭遇』以降の数多くの SF映画でVFXマンとして活躍してきたホイト・イェット マンJr.。因に長編映画の監督はデビュー作。 脚本は、2002年の『アイ・スパイ』や『ナショナル・トレジ ャー』の2作などを手掛けたコーマック&マリアン・ウィー バリー。昆虫のキャラクターなど生物の寿命を考えると多少 無茶なところは有るが、まあお子様映画ということで了解し たい。 なおこの作品に関しては、7月19日のホームページで3Dに ついて少し紹介しているが、今回の試写は2Dだったので、 その点は3D試写が始まってから改めて報告したい。
『ミュータント・クロニクルズ』“Mutant Chronicles” 1987年の『ウォール街』でマイクル・ダグラスにオスカーを もたらしたエドワード・R・プレスマン製作によるアクショ ン・アドヴェンチャー。 西暦2707年。地球はそれぞれがヨーロッパ、アメリカ、アジ ア、オーストラリアを拠点とする4つの企業によって支配さ れ、稀少となったエネルギーを巡る争いに明け暮れていた。 そんな戦場の1つで砲撃によって抉られた地表に巨大な紋章 が現れ、砲弾の作烈によってその紋章が打ち砕かれる。そし て、そこからは異様な風体の怪人の群れが出現し、戦場の兵 士たちを殺戮し始めた。 それは古代に天空から現れ地球を蹂躙したミュータントたち の巣窟で、それは1人の英雄の活躍によって封印されていた ものだった。しかしその封印が説かれた今、地球に英雄は存 在せず、逃げ惑う人類は最後の手段として火星への移住を開 始するが… 一方、古代からの歴史を綴った書「Mutant Chronicles」を 信奉する宗派の修行僧がその書物に書かれた英雄の復活を信 じ、企業に働き掛けて世界中の精鋭を結集、ミュータントの 巣窟へ潜入してその大元の破壊を試みる。それは正しく決死 の闘いだった。 この修行僧を『ヘルボーイ』のロン・パールマンが演じ、世 界から集められた精鋭として『パニッシャー』のトーマス・ ジェーン、『シン・シティ』のデヴォン青木、また企業家の 役で『チェンジリング』などのジョン・マルコヴィッチらが 共演している。 脚本は1997年『イベント・ホライズン』などのフィリップ・ アイズナー。監督はCMディレクター出身のサイモン・ハン ター。因に監督は長編2作目のようだが、CM出身らしく映 像表現に力点を置いた作品になっている。 ただし製作のプレスマンは、過去に1994年『ストリート・フ ァイター』や、同年スタートの『クロウ』シリーズなども手 掛けているが、いずれもトーンが暗めになる傾向が有り、本 作でもそれは踏襲されている。 舞台を28世紀としている割には、戦闘シーンに登場の兵器が あまり未来的でないなど、いろいろ悩ましい部分は有るが、 それなりにグロテスクなミュータントの風体など、そのダー クなイメージを魅力と感じる人はいるだろう。 因に、登場するのがミュータントかどうかは、今さら論議す るほどのことでない。これがSFの現状というところだ。
なお、先に掲載した作品について試写を見直して修正しまし たので、改めて掲載します。
『インビクタス/負けざる者たち』“Invictus”(改稿) 日本代表がニュージーランド代表に145-17という屈辱的な大 敗を喫したことでも記憶される1995年開催第4回ラグビー・ ワールドカップ南アフリカ大会を巡る物語を、モーガン・フ リーマンの製作主演によりクリント・イーストウッド監督で 描いた作品。 1990年に釈放されたネルソン・マンデラが1994年南アフリカ 大統領に就任、アパルトヘイトの撤廃により国際社会への復 帰が認められて開催された第4回大会は、以前はラグビー強 豪国であった南アフリカが世界のラグビー界に返り咲く大会 でもあった。 しかし長年に亙る国際交流の禁止で競技感覚を失っていた代 表チームはイングランドとのテストマッチで惨敗、また、ス プリングボクスとも呼ばれる白人選手を中心に固められた代 表チームは、ある意味アパルトヘイト時代の象徴ともなって 行く。 そして黒人中心で動き出した社会は、スプリングボクスの愛 称や緑と金のチームカラーの変更も決議するが…これに対し て大統領は、これこそが人種間の融和の象徴であるべきと主 張。大統領と代表チーム主将フランソワ・ピナールとの二人 三脚の挑戦が始まる。 このようにして物語は、ラグビーというスポーツ競技を題材 に、人種間の対立とそこからの融和に至るまでの道程を描き 出して行く。それはもちろん限られた範囲の物語でしかない けれど、そのシンプルさが物語のテーマを明確に描き出して いるものだ。 その中では、特に融和や隣人愛などが声高く謳われ、それが 映像でも見事に表現されて行く。これが映画の持つ使命の一 つのようにも感じられた。そしてそのメッセージは、時代を 超えた今こそ熱く語り継がれるべきものとも思えた。 出演は、マンデラ役にモーガン・フリーマン、ピナール役に マット・デイモン。因にマンデラ大統領の登場シーンでは、 当時のニュースフィルムにフリーマンの顔をすげ替えたもの もあるが、その中で子供の持っている新聞の写真が元のまま なのはご愛嬌だ。 その一方で、見事に再現された1995年当時の競技場の風景も 登場するが、特に決勝戦などは超満員の観客席はCGIと思 われ、それも見事だった。また、その競技場に設置された巨 大映像装置の下部に「SONY JumboTron」の文字が観え るのも懐かしかった。 なお原題は、映画の中でも紹介される19世紀イギリスの詩人 ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの著作に因むもので、こ の単語は直訳すると「征服されざる者」というような意味に なるようだ。 * * 年内はこれが最後の更新となるので、一応、僕的な今年の ベスト10を挙げておきます。特に講評は書きませんが、対象 は今年日本公開された作品で、ベスト10は外国映画とSF/ ファンタシー映画のそれぞれについて選出してあります。
外国映画 SF/ファンタシー映画 1スラムドッグ$ミリ… 1屋根裏部屋のポムネンカ 2戦場のレクイエム 2クローンは故郷を目指す 3エレジー 3●REC/レック2 4アライブ 4サマーウォーズ 5それでも恋するバル… 5携帯彼氏 6パイレーツオブロック 6アサルトガールズ 7屋根裏部屋のポムネンカ 72012 8チェンジリング 8鴨川ホルモー 9キングコーン 9きみがぼくを見つけた日 10ホルテンさんの初め… 10TAJOMARU
因に、2009年試写会で観た作品は366本。DVDのサンプ ルで観た作品が7本。計373本は、昨年の400本より多少減り ましたが、こんなものでしょう。なお、試写状を貰ったのに 時間の都合などで観に行けなかったのは2本です。事実上の 試写会が1回しかなかったりしたものですので、止む終えま せんでした。来年もこんな調子でやっていきたいと思ってい ますので、よろしくお願いいたします。
| 2009年12月27日(日) |
すべて彼女の…、処刑山、海の金魚、やさしい嘘と贈り物、フローズンR、パーフェクトG、パラノーマルA、シェルター、サロゲート(追) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『すべて彼女のために』“Pour elle” 2007年2月紹介『チャーリーとパパの飛行機』の父親役など のヴァンサン・ランドンと、ドイツ出身の国際女優ダイアン ・クルガーの共演で描く究極の夫婦愛の物語。 無実(?)の罪で投獄された妻を救うために、一介の国語教 師が究極の手段に訴え出る。本作の成立の経緯は良く判らな いが、実話の映画化と称してもいいほどの迫真したドラマが 展開される。 主人公は、妻とまだ幼い1人息子の3人家族で暮らす高校の 国語教師。だがその平穏な家庭の暮らしが突然の警官の乱入 で一変する。出版社に勤めていた妻の上司が殺され、妻がそ の容疑者となったのだ。 妻は拘留され、裁判が続く中で夫は妻の無実を信じるが、目 撃者や物的証拠、それに犯罪の動機などで妻の不利は否めな い。やがて判決が下され、夫婦は絶望の淵に立たされる。そ して夫が取った行動は… 物語では、一応回想シーンで妻以外の犯人が示されるが、そ の描き方は微妙で、勘繰れば真犯人は妻であってもいいよう な展開にもなっている。だが仮にそうであったとしても、こ の夫の妻への愛情は揺るぎないものだったということになる だろう。 夫や妻が追い詰められて行く過程も丁寧且つ納得の行くよう に描かれているし、ノンフィクション、フィクションを問わ ず同様のテーマの作品はいろいろある内でも、本作は完成度 の高い作品と言えそうだ。 因に、本作はハリウッドでのリメイクが進められており、そ の監督と脚本は、2006年『クラッシュ』と2007年『硫黄島か らの手紙』で2年連続オスカー脚本賞を受賞したポール・ハ ギスが、自身では初のリメイク作品として手掛けることにな っているそうだ。 令状なしの身柄拘束や家宅捜索など、観ていて気になる点も ままある作品だが、フランス警察の横暴さを見せるというこ とでなら、これも有りかも知れない。でもまあそんな末節に 拘わる暇もないほどに緊迫した物語が展開されて行く。 1人息子の態度や妻の持病など、いろいろな要素が巧みに構 築され、最後まで全く目の離せない作品となっていた。
『処刑山』“Død snø” ナチスドイツの残党が冷凍のゾンビとなって若者たちを襲う ノルウェー産のホラー作品。 背景は現代。男女5人のグループが街道で車を降り、徒歩で 雪深い山間のロッジを目指している。そこはグループ内の男 のガールフレンドが所有するもので、ガールフレンド自身は 別途スキーによる山越えで現地を目指しているらしい。 そしてロッジに着いた若者たちは思い思いのやり方で雪山を 楽しみ始めるが、夜になり、離れて建つトイレに向かった1 人が異様な人影を目撃する…。その地には、戦時中ナチスの 基地が置かれ、敗戦後に暴虐の限りを尽くしたまま姿を消し たという歴史が有った。 今年11月紹介の『誰がため』や、『ミレニアム/ドラゴンタ トゥーの女』にもナチスの話は出て来たが、ヨーロッパ特に 北欧圏におけるナチスの影というのは、ナチスとの関係も複 雑だし、ミステリーからホラーまでいろいろな題材になるも のだ。 そんな中でホラーの本作は、基本的には娯楽作品となるもの だし、取り立ててナチスだからどうのという展開が有る訳で はないが、日本で言えば落ち武者に相当するのかな。でも、 近代兵器を持っている分、いろいろ面倒(?)になったりも する。 ただし本作は背景が雪山だから、ゾンビもジョージ・A・ロ メロばりにゆらゆらとという訳にも行かず、突然走り出した り…と言うのは、まあ本作に限っては仕方ない面も有りそう だ。実際、足元が覚束ない状態ではゆっくり歩く方が様には ならない感じだろう。 そんな訳で、物語の主題はゾンビ対若者の闘いとなるものだ が、ここでのゾンビの倒し方がいろいろ凝っていて、それは アメリカの若年向けテレビ局が選ぶ映画賞で、『スペル』や 『ソウ5』と並び、ホラー作品賞、切断賞、死闘賞などの候 補にもなったとのことだ。 因に、ノルウェー語の原題は英語では“Dead Snow”になる ものだが、製作者は当初“Red Snow”に相当するノルウェー 語の題名を付けたかったのだとか。しかしその題名は別の作 品で使われていたために変更したとのことだが、そのセンス も良い感じだ。 スタッフ・キャストには馴染みが無いが、脚本・監督のトミ ー・ウィルコラは、『キル・ビル』のパロディなどで頭角を 現した若手とのこと、共同脚本のスティッグ・フロード・ヘ ンリクセンの名前と共に注目しておきたい。
『海の金魚』 2008年2月に紹介した『チェスト!』の雑賀俊郎監督による 鹿児島3部作の第2弾。 鹿児島錦江湾で毎年行われる鹿児島カップ火山めぐりヨット レースを題材にした青春ドラマ。 主人公は、地元の高校に転校してきた少女と、漁港に係留さ れているヨットで1人暮らしている少女。転校生の少女は父 親の血を引く天才ヨット乗りらしいが、その孤高な態度は級 友を寄せ付けない。 一方、1人暮らしの少女には漁民たちから立ち退きの要求が 出ているが、意に解さない態度を取っている。そして授業の 進捗を伝えにくる級友や、漁民の嫌がらせを止めに入る若者 もいてくれる。 その内の授業内容を伝えに来ている級友が転校生の少女にも 声を掛け、4人のグループが作られて行く。さらにその周囲 には、水族館で獣医を務める女性ヨット乗りや転校生に反発 する男子生徒などもいて、物語が展開される。 そして、ヨットに1人暮らしなのに自分では操船できない少 女を中心に、転校生を仲間に入れようとする行動や、海に出 たまま行方不明になった父親が残した宝(?)の地図への思 いなど、いろいろな物語が所狭しと盛り込まれている。 『チェスト!』の時は主人公が小学生だったから苛めなどの 多少暗いエピソードもあったが、主人公が高校生となるとそ んな話題も発生せず、全体としてすっきりした物語に仕上が っている。漁民の嫌がらせにしても取り敢えずは大人同士の 話のものだ。 そんな中で、ヨットレースでの勝負をクライマックスに置い て、主人公たちの成長が適切な展開で描かれていた。その間 の葛藤もそれなりに上手く描かれていたように思える。 出演は、2008年6月紹介『愛流通センター』に出演していた 入来茉里と、モデル出身の田中あさみ。他に賀来賢人、白石 隼也、柄本時生。さらに今年9月に紹介した『白夜』の吉瀬 美智子、高嶋政宏、芳本美代子、小島よしお、4月紹介『海 の上の君は、いつも笑顔』の麻宮美果らが脇を固めている。
『やさしい嘘と贈り物』“Lovely, Still” 1994年『エド・ウッド』でオスカー受賞のマーティン・ラン ドーと、1974年『アリスの恋』で受賞エレン・バースティン の共演によるラヴストーリー。 主人公はかなり高齢の男性。近所のスーパーマーケットに勤 めてはいるようだが、仕事は座ってスケッチを描いているだ け、でも高齢者故か他の従業員も文句は言わないようだ。そ んな男性はクリスマスを控えた夜、自分宛のプレゼントに何 かを包んでいる。 その男性は、毎夜もやもやした得体の知れない悪夢に悩まさ れており、寝起きは芳しくないようだ。しかしそれでも毎日 通勤し、勤務先では若い経営者ともフランクに話し合えるな ど尊敬を持って迎えられている。 そんなある日、男性の家の近所に若い女性と2人暮らしの高 齢の女性が引っ越してくる。その女性との出会いは、最初は ちょっとぎくしゃくしたが、女性の積極的な態度もあってす ぐに打ち解けるようになる。しかも彼女からデートを申し込 まれて… こうして高齢者同士の交際が始まるが、これにはスーパーマ ーケットの経営者や他の従業員たちも協力して、いろいろな デートの心得が教え込まれる。さらに経営者は行き付けのレ ストランに予約までしてくれる。(以下はネタばれです) ネタばれといっても、ポスターには最初からそのことがコピ ーとして書かれているから隠しようもないのだが、僕自身は 幸い事前の情報を入れることなく観ることができた。その目 で観ていると、このネタばれが多少もったいなくも感じられ たところだ。 でもまあ最近の社会の状況でいうと、これは明かした方が観 客動員には繋がるのかもしれない。とは言うもののテーマ的 には2004年11月に紹介した『きみに読む物語』と被るところ が多いし、その辺は難しい部分でもある。 ただし本作では後半に1つ大きな展開が有って、そこでの周 囲の協力などを後で考えると、いろいろ心に染みてくる感じ がした。多分、最後のキーになる品物は、偶然そこにあった のではないのだろう。 なお、何も知らずに観ていても途中で結末は2つに1つだな あと考えていた。それくらいにいろいろとヒントは設けられ ている作品だ。因に、もう1つはもっとオカルト的なものも 考えたが、幸いそういう方向性ではなかったようだ。
『フローズン・リバー』“Frozen River” 雪が降り積もった厳冬のカナダ国境の河に面するアメリカ・ ニューヨーク州の最北部の町を舞台にした白人とネイティヴ 2人の女性が主人公の人間ドラマ。 白人の女性はギャンブル依存症の夫に苦しめられ、今も新居 の購入資金を持ち逃げされて残金を払わなければ手付け金も 取られるという瀬戸際に立たされていた。そして、夫の姿を 求めて立ち寄ったビンゴ会場で夫の乗用車を発見する。 その車に乗っていたのはモホーク族の女性。彼女は「車はバ ス停に捨ててあったから拾ったのだ」と主張する。しかし結 局は白人女性の言い分を認めるが、返す前に車で凍結した河 を渡って欲しいと頼み込む。それには充分な報酬も有るとい う。 国境の河を渡ることは違法行為だが、モホーク族の居留地は 河の両岸に跨がっており、彼らは自由に往来する権利を持っ ているという。そして車が河を渡った先には、アメリカに不 法入国しようとする東洋人が待っていた。 こうしてそれなりの現金を得た白人女性は、モホーク族の女 性とは理解しあえないまま、金のために違法な渡河を重ねて 行くが… 女性が主人公で雪の風景というと、1996年の『ファーゴ』や 2005年の『スタンドアップ』を思い出すが、物語の厳しさと いう点ではどの作品も同じであっても、本作には何処か他の 作品にはない暖かさが感じられた。 そこには人を信じるということの素晴らしさが見事に描き出 されており、特に最近は殺伐とした映画が多くなってきてい ると感じた矢先にこの作品を観られたことで、何かほっとし た気分にもさせてくれたものだ。 出演は、本作でオスカー候補になったメリッサ・レオと、実 際にネイティヴアメリカンのミスティ・アップハム。他に、 2004年『ヴィレッジ』などのチャーリー・マクダーモット、 『バットマン・ビギンズ』などのマーク・ブーン・ジュニア らが共演している。 脚本・監督は本作が長編デビューのコートニー・ハント。自 身の短編映画を基にしたものだそうだが、本作ではサンダン ス映画祭のグランプリを受賞の他、オスカー脚本賞にもノミ ネートされた。 なお本作は、アカデミー賞で2部門の候補になったにも拘ら ず日本公開の目処が立っていなかったものを、東京渋谷の映 画館シネマライズが直接権利を獲得し配給にも乗り出すこと にしたもので、その意気にも感じているものだ。
『パーフェクト・ゲッタウェイ』“A Perfect Getaway” 2000年『ピッチブラック』、2004年『リディック』、そして 現在その第3弾の製作開始も伝えられている監督・脚本家の デヴィッド・トゥーヒーによる最新作。 1993年『逃亡者』、1995年『ウォーターワールド』などの脚 本家としても知られるトゥーヒーだが、彼が監督も手掛ける とかなり捻った展開になることが多いようだ。本作もその例 に漏れない作品だ。 物語に登場するのは、ミラ・ジョヴォヴィッチと『サハラ』 などのスティーヴ・ザーン、TV『LOST』のキエレ・サ ンチェスと『ドリームキャッチャー』などのティモシー・オ リファント、『グラインドハウス』のマーリー・シェルトン と2009年『スター・トレック』に出演クリス・ヘムズワース の3組のカップル。 舞台はハワイのカウアイ島。ミラとスティーヴのカップルは 片道1日のトレッキングでしか辿り着けないという美しい浜 辺を目指している。その旅に他の2組のカップルが関ってく ることになるが… そこにオアフ島でカップルが殺された事件が報告され、その 犯人もカップルでカウアイ島に向かったことが伝えられる。 しかし電波状態が悪くそれ以上の情報は得られない。果たし て犯人はどのカップルなのか。 飛び切り美しい大自然の中で、極限状態のサヴァイバルが開 幕する。 この後の展開は、予想通りのかなり捻ったものになって行く が、そうかなあと予測して観ている目にもさほどの破綻はな いように思えた。凝った作りの作品であることは確かだ。た だまあこれを観ていて観客が楽しいかというと微妙なところ も有る訳で… アクション映画と割り切ればそれもいいのだろうが、それな りに感情移入して観てしまう観客としては、多少割り切れな い感じはしてしまう。ただし結末には、成程そうだったのか と思わせる巧みさはあった。 ストレートに描いたら唯のサヴァイバルでしかない物語を、 こんな風に料理してみせるという辺りがトゥーヒーの面白さ とも言えるのだろう。 因に、今回の日本公開は98分のヴァージョンで行われるが、 本作には108分のディレクターズカットも存在するようで、 チャンスが有ったらそれも観てみたいものだ。
『パラノーマル・アクティビティ』“Paranomal Activity” 製作されたのは2007年。その年のホラー映画祭で受賞を果た してドリームワークスがリメイク権を獲得するも、リメイク してもそれ以上の作品は望めないと判断されて、今年9月に アメリカで限定公開。当初は12館だった興行が話題を呼び、 5週目には全米2500館に拡大して累計1億ドル超の興行を達 成したという製作費15,000ドルの作品。 体裁は、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバ ーフィールド』など、この手の作品に有りがちな素人が家庭 用の機材で記録したと称するもので、その中に超常的な映像 が写されていた…という作品だ。 ただまあ、家庭用の撮影機材の進歩もすごいもので、本作で は価格3,000ドルのソニー製HDカメラが使用されて、実際 の映像の中でも鏡に映るシーンが有るから本当にそれで撮影 されていると思われるが、その映像はプロ用のカメラでも遜 色の無いものになっていた。 物語は、8歳の時から周囲で異常現象が起きているという女 性と、その謎を解き明かして彼女を守ろうとする男性を主人 公に、多少外部の人間の登場もあるがほとんどは2人だけの 演技で、超常現象に見舞われる顛末が描かれている。 その超常現象は手を替え品を替えのいろいろなものが登場す るが、、それなりに恐怖感も煽られるもので、ショッキング というよりも、久々にぞくぞくする感じが味わえるものにな っていた。 ただしお話の展開には多少無理な感じのするところも有り、 その辺がリメイクでも検討されたのだろうが、より良くはな らなかったのかな。因に本作の結末はスティーヴン・スピル バーグの意見で追加撮影されたものとなっているようだ。 脚本・監督は1971年生まれ、イスラエル出身の元ソフトウェ アデザイナーという肩書きの人で、ゲームソフトの開発を手 掛けた後に本作で監督デビュー。次回作には“Area 51”と いう作品がすでに撮影完了と発表されている。 なお本作の日本公開はアメリカ公開と同じく86分のヴァージ ョンとなるが、他に99分のエクステンデッド・ヴァージョン も有るようだ。
『シェルター』“Shelter” 2002年『めぐりあう時間たち』など4度のオスカー候補にな っているジュリアン・モーアと、2006年6月紹介『マッチ・ ポイント』や2005年のテレビラマ“Elvis”でゴールデン・ グローブ賞受賞のジョナサン・リス・メイヤーズ共演による 超常心理サスペンス。 モーアが扮するのは女性心理学者。多重人格など存在しない という立場でその病を装った犯罪者の実体を暴き成果を挙げ ている。そんな彼女に、多重人格の存在を認めているらしい 父親の心理学者から1人の患者が紹介される。 メイヤーズが扮するその患者は、最初は大人しく診察にも応 じていたが、父親が行ったあることを切っ掛けに態度を豹変 させ、多重人格の症状を見せる。しかもその人格の一方は、 患者が6歳の時に起きた殺人事件の被害者のものだった。 その事実に興味を持った主人公は過去の事件の背景を調べ始 めるが、それはやがて驚愕の真実を彼女の前に曝すことにな る。 多重人格の話は、最近ではダニエル・キースの著作などでも 話題になっているが、本作ではプロローグからそのことが否 定され、かなり小気味よい展開で話が進められて行く。しか も多重人格の症状自体が普通のものとは異なり、その辺の興 味でも引っ張られる。 そしてその結末は超常的なもので、その謎解きもなかなか巧 みに作られている作品だ。脚本は2003年『“アイデンティテ ィー”』などのマイクル・クーニー。前作も多重人格が物語 の背景に有ったが、本作では真正面からそれを描いている。 監督は、スウェーデン出身のマンス・マーリンドとビョルン ・ステイン。幼馴染みという2人の監督の経歴では、『ジェ ネシス』(原題Storm)という作品が過去にDVDで紹介さ れているようだが、本作でハリウッドに進出、日本でも本格 公開となるものだ。 共演は、2007年3月紹介『ハリウッドランド』に出演のジェ フリー・デマン、2007年6月紹介『ウィッカーマン』などの フランセス・コンロイ、今年9月紹介『君がぼくを見つけた 日』で主人公の幼少時代を演じていたブルックリン・プロウ ルクスなど。 基本は超常ドラマだが多重人格ものとしても面白く、特に、 メイヤーズの人格が変化する際の切り替えは見事だった。ま た、映画の中で明かされるタイトルの意味にも興味深いもの が有った。
『サロゲート』“Surrogates”(追記) 11月15日付で紹介した作品だが多少気になることが有ったの で試写を見直した。因に気になったのは、遠隔操縦のロボッ トを通じてそのオペレーターを殺せるかという点なのだが、 それに関しては安全装置を先に破壊する…などの説明は有っ ても、肝心の死因についてはやはり映画の中でも誤魔化され ていたようだ。 しかし、再観すると別の点にも目が行くもので、それでこの 作品が意外とSFになっていることに気付かされた。それは 端々の設定の細かさなどにも拠るものだが、中でも軍事目的 で兵器として開発された装置が、人を殺すという理由で軍が 手を引いたという下りには、やられたと思ってしまった。こ の発想は間違いなしのSFと言えるだろう。 お陰で、この作品の脚本家と監督のチームの評価も少し変え なければと思ったものだ。試写で観た時に「何だこりゃ」と 思ってそのままにした『T3』も、見直すと何か別のものが 観えてくるのかな。
| 2009年12月20日(日) |
プリンセスと魔法のキス、COACH、マザー・テレサ、ランニング・オン・エンプティ、アンダンテ、半月、フィリップ、ハンナ・モンタナ+他 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『プリンセスと魔法のキス』 “The Princess and the Frog” ピクサー製ではないディズニー・アニメーションの最新作。 童話の“The Frog Prince”(カエルの王子)をモティーフ に新たなプリンセス物語が構築された。 物語の背景はジャズエイジのニューオルリンズ。白人と黒人 との貧富の差が未だに大きな時代。そして物語の主人公は、 大きな白人のお屋敷でメイドとして働く貧しい黒人の少女。 しかし彼女には父親が果たせなかったレストランを開くとい う夢があった。 そんなある日のこと、ヨーロッパから1人の王子が来訪し、 お屋敷では歓迎の仮装舞踏会が開かれる。ところがそこで働 いていた主人公の前に1匹のカエルが現れ、「自分は魔法で 変身させられた王子、キスをしてくれたら魔法が解ける」と 告げる。 そこで主人公は意を決してキスをするのだが…実は魔法を解 くことができるキスはプリンセス限定で、そうでないキスの 結果はもっと恐ろしいことに…。こうして主人公とカエル王 子の大冒険が始まる。果たしてこの物語は、一体どのような ハッピーエンドを迎えられるのか? 脚本と監督は、『リトル・マーメイド』『アラジン』も手掛 けたジョン・マスカーとロン・クレメンス。前の2作は一応 オリジナルに沿った物語だったが、今回は全く新しい、今ま でになかった物語が展開される。 そんな映画の全体は、古き良き時代のディズニー・アニメー ションという感じだが、魔法がブードゥー教という辺りから ニヤリとしてしまう。さらに結末は見事で、成程そういうこ とだったのかと思わず頷いてしまったものだ。 なお声の出演では、『ドリーム・ガールズ』に出演していた アニカ・ノニ・ローゼと、ブラジル出身のブルーノ・カンポ スが主人公2人を演じる他、オープラ・ウィンフリー、テレ ンス・ハワード、ジョン・グッドマンらが脇を固めている。 また音楽は、アカデミー賞常連のランディ・ニューマンが担 当。楽曲には今話題のR&BアーティストNi-Yo(ニーヨ) も参加しているとのことで、今年度のオスカーにも名を連ね るかな。 因に作品は、すでにゴールデン・グローブ賞の長編アニメー ション部門にノミネートが発表されているようだ。
『COACH』 1967年生まれ、現在は新横浜プリンス・スケートセンターの インストラクターを務める傍ら、オリンピック代表選手・安 藤美姫のサポートコーチなども担当しているプロフィギュア スケーター西田美和を主演に迎えたスポーツドラマ。 主人公は、以前にはオリンピック代表の最終選考まで進んだ フィギュアスケーター。しかし確実視されていた選考会の直 前に失踪し、その後はアイスショウのダンサーや子供相手の スケート教師などをして暮らしている。そして、現在40歳に して独身。 そんな彼女が、指導の方針を巡って後輩の反発にあったり、 生徒の父兄からも批判を浴びたり、さらに昔の恋人から自分 が生んだ訳でもない娘を押しつけられたりもしてしまう。そ んなこんなで自信を失い始めていた彼女の前に、鬼と呼ばれ た昔のコーチが姿を現す。 ということで、40歳の現役最年長と言われるプロスケーター が再びオリンピックに挑戦するという物語が描かれる。もち ろんこれはフィクションです。 映画の成立は、最初に西田の主演ありきという感じだったよ うで、『ロッキー』をモティーフにしたと思われる展開は、 多少無理はあるが。まあ仕方ないかなあという感じのもの。 ただし、監督に意識がどの辺にあるかは判らないが、最近の フィギュアスケート事情に一石を投じる感じがしたのは僕の 勘繰りだろうか。 というのも、本作の中に1990年に競技としては廃止されたコ ンパルソリー・フィギュアへの言及があり、氷上に西田が見 事なエッジ痕を描いてみせるシーンが登場するのだ。コンパ ルソリーは正にスケートの技術を競うもので、選手が氷上に 描いたエッジ痕を審査員が定規で計ってポイントを付けるよ うなものだった。 それは昔のオリンピック中継などを観ていたときには、競技 の後で審査員が防寒具と滑り止めのブーツを履いて定規を持 ってのこのこと登場し、その姿の滑稽さと、審査が終わるま での間怠っこしさで当時は飽き飽きしたのだったが、今にし てみるとあれこそがスポーツ競技だったのではないかとも思 えてくる。 そんなノスタルジーも感じさせてくれる作品。まあ、クライ マックスシーンなどはご愛嬌ということで、それ以外の部分 を楽しみたい。 西田以外の出演者は、鬼コーチ役の平泉成、他に金子昇、時 東あみ、2006年9月に紹介した『日本心中』の重信メイ、そ れにオーディションで選ばれたという子役の小松崎夕楠。 また、佐野稔、伊藤みどり、荒川静香、安藤美姫ら新旧スケ ーターのゲスト出演。さらに吉野沙香、五嶋りさ、和泉佑三 子、森ほさちら宝塚出身女優の共演も観られる。なお主題歌 をつんく♂が担当している。
『すばらしいことを神様のために』 “Something Beautiful for God” 『マザー・テレサと生きる』 マザー・テレサの生誕100周年を記念して『マザー・テレサ 映画祭』と称するドキュメンタリー作品7本の上映が計画さ れ、その内の2本の試写が行われた。 マザー・テレサ関連のドキュメンタリーでは、2007年7月に 今回の映画祭でも上映される『母なることの由来』と『母な るひとの言葉』を紹介しているが、それぞれ歴史的な作品と なっていた。 そして今回試写が行われたのは、1996年にBBCで放送され た記念碑的な作品と、日本人では初めて映像取材が許可され たという千葉茂樹監督による生前3回も来日したマザー・テ レサの日本での活動及びその後に残された影響を描いた作品 となっている。 特に前者のBBC作品では、最初は冷静に、ある意味厳しく 取材していたインタヴュアーが徐々に感化されていく様子が 見事に捉えられていて、それは出色のドキュメンタリーにも なっていた。 また後者では、東京・山谷のどや街で活動する民間ホスピス 「きぼうのいえ」なども取材されおり、確かこれは山田洋二 監督『おとうと』のモデルにもなった夫妻だと思うが、その 献身的な姿の背景も観えてくるものだ。 その他、マザー・テレサと日本の意外に深い繋がりも本作の 中では克明に描かれていた。それは僕のように名前は聞いた ことがあっても、その実体は前回紹介した作品を観たときに 初めて知ったような人間には、さらに驚きの事実だったとも 言える。 信仰の強さというよりも、これらの作品に描かれている弱者 への無関心が、自分自身はもとより現代に生きる全ての人間 に突きつけられるような感じの作品だった。特に自己宣伝と 政治運動に奔走しているような「宗教家」に観てもらいたい 作品だ。 なお『映画祭』では、この他に千葉茂樹監督による1979年作 品『マザー・テレサとその世界』、1981年作品『マザー・テ レサの祈り/命それは愛』と、マザー・テレサが亡くなる前 年に製作されたドイツ作品『マザー・テレサの遺言』が上映 される。
『ランニング・オン・エンプティ』 何をしているんだか、何をしたいんだかも良く判らないよう な最近の若者の生態を描いた作品。 主人公はバンドをやっているらしい若者。その携帯電話に同 棲相手の女性から誘拐されたという電話が掛かってくる。し かしそれは狂言で、その同棲相手は別の男性の部屋に転がり 込んでいる。 その後、主人公の携帯電話には金融業者と称する男から「借 金を返さなければ、女を売り飛ばす」という電話も掛かって くるのだが、男は金作に奔走する訳でもなく、依然としてぐ だぐだしたままの生活を送っている。 そんな感じの若者たちの日常が綴られて行く。 正直に言ってこの手の作品は何本も観てきた気がするし、そ の大半は試写を観てもサイトにはアップしなかった作品だ。 そんな気分でこの作品も観ていたのだが、本作では物語の後 半で話が妙に入り組んできて、思わず「はぁ」という感じに なった。 だからといって、この映画自体を諸手を挙げて気に入った訳 ではないのだが、この展開を作れる作家なら、この次も期待 したくなってきてしまったものだ。 脚本・監督は、2008年3月に紹介した『休暇』の脚色を担当 していた佐向大。以前に監督した自主映画が注目されたよう だが、商業映画は本作が監督デビュー作となる。『休暇』の 脚本も的確に作られていたが、本作でも物語の背景となる工 場街の風景などが的確に捉えられている感じがした。 出演は、『リンダ、リンダ、リンダ』などの小林且弥、『呪 怨白い老女』などのみひろ、『実録・連合赤軍』などの大西 信満、『死神の精度』などの杉山彦々。これら若手共演の脇 を、菅田俊、大杉漣、角替和枝らベテランが固めている。 シリアスでもないしコメディでもない。でもまあ何となく現 実的な部分もあるし、思わず笑ってしまう部分もある。それ でいて全体の纏まりは上手く付けられていて、映画としての 完成度はあると思えた。現在はまだ低予算の作品というとこ ろだろうが、その内に何か作ってくれそうな…そんな期待も 感じられた。
『アンダンテ〜稲の旋律〜』 親の期待を一身に受けて成長したもののその期待に応えられ ず、それも原因の一つとして対人恐怖症で引き籠りとなった 女性が、ふと訪れた田園の町で新たな目標を見つけ歩き出す までを描いたヒューマン作品。 主人公は幼い頃からピアノの個人レッスンを受け、友達と遊 ぶ暇もなく成長した。しかし母親の期待に反して父親はピア ニストになることに反対し、父親の勧める大学には行ったが 中退、父親の伝で勤めた会社にも馴染めなかった。 そんな主人公は引き籠りとなり、家庭内の空気は冷え切って 行く。そして父親と喧嘩した主人公は、思わず家を飛び出し そのまま電車を乗り継ぎ田園の広がる町へとやってくる。そ こでも、最初は人とは会うことのできない主人公だったが… その主人公が田園で繰り広げられるいろいろな出来事の中で 少しずつ心を開き、やがて農業という産業に目覚めて行く。 しかしそこで行われている農業の未来にもいろいろな問題が 立ちはだかっていた。 ということで映画は単に女性個人の問題だけでなく、日本の 農業の現状やその問題点などにも広がって、それなりに社会 性も持った物語に仕上げられている。 と言っても、農業が抱える問題に関してはそれほど深刻に描 かれているものではなく、主人公の成長物語の彩り程度。そ れに本作はJAの協力で作られているので、その辺は頭の隅 に置きながら観た方がいいかも知れない。 主演は、『ミス・サイゴン』などのミュージカルの舞台で活 躍している新妻聖子。本作が映画初出演とのことだが、しっ かりとした演技で、またピアノの演奏なども吹き替えなしで 演じているのはさすがという感じだ。 共演は筧利夫。他に秋本奈緒美、松方弘樹、宇都宮雅代、村 野武範、中条きよし、D−BOYS出身で『轟轟戦隊ボウケ ンジャー』などの三上真史、2008年6月紹介『ロックンロー ル★ダイエット』などの紗綾らが脇を固めている。 監督は2008年8月紹介『春琴抄』などの金田敬。今年は7月 にも1本紹介しているが、今回はちょっと傾向の違った作品 でも、それなりの腕を見せていた感じだ。
『半分の月がのぼる空』 アスキー出版電撃文庫で発行部数140万部を記録し、すでに アニメ化やテレビドラマ化もされているという橋本紡原作の 映画化。 粋がっているだけで未だ初な少年が偶然入院した病院で不治 の病の少女と出会う。そして彼女が要求する無理難題に応え て行くうちに徐々に恋心が芽生え…。一方、その病院には、 優秀な心臓外科医だったが、妻の命を救えなかったことがト ラウマの医師がいて… ということで物語は、不治の病を承知で少女に純愛を捧げて 行く少年の破茶目茶な愛情表現と、医師が如何にしてトラウ マを乗り越えて行くかの葛藤を描いて行くことになる。 ただし物語の展開は、若者たちの方はそれなりに描けている ものの、医師の方がほぼ1シーンだけというのは、ちょっと 物足りなくも感じるところ。でもまあ映画の観客層を考える とこれも仕方がないのかな…。それをギャグにしてしまった のはやりすぎにも思えたが。 出演は、『鉄人28号』などの池松壮亮と、放送中のテレビ シリーズ『小公女セイラ』に出演の忽那汐里、それに医師役 の大泉洋。また濱田マリ、蛍雪次郎、中村久美、西岡徳馬、 『大阪ハムレット』の森田直幸らが脇を固めている。 監督は、去年7月に『真木栗ノ穴』と今年1月に『60歳の ラブレター』、さらに2月紹介の『非女子図鑑』にも関って いた深川栄洋。脚本はテレビドラマの『魔王』の脚本などを 手掛け、演出家でもある西田征史。 プレス資料によると、原作の若い部分を脚本に任せ、大人の 医師の部分を監督が腐心したように受け取れるが、結局脚本 に引き摺られるところが多くて、監督自身の狙いがあまり出 せていないのではないかとも感じられた。 それはもちろん観客には原作読者も多く含まれている訳で、 そんな葛藤が原作に描かれていないのだとしたらそれも仕方 のない面はあるが、映画にはそれなりの仕掛けも施されてい たようだし、それをやれるのならもう少し別の工夫も欲しか ったところだ。 なお撮影は、原作の舞台でもある伊勢市で全面的に行われて おり、地元の協力で商店街を封鎖するなどかなり大掛かりな 撮影も実施されているようだ。
『フィリップ、きみを愛してる!』 “I Love You Phillip Morris” ジム・キャリーとユアン・マクレガーがゲイのカップルを演 じる実話に基づいた人間ドラマ。 キャリーが演じるスティーヴ・ラッセルはIQ169という 天才。元警官で結婚もし1人娘も誕生するが、交通事故に遭 って重傷を負い、病院に収容された彼は、以後は正直に生き ることを心に決める。そして妻にゲイであることをカミング アウトする。 その後、フロリダにやってきた主人公はボーイフレンドと暮 らし始めるが、とかくゲイの生活は金が掛かる。そこで始め たのが詐欺師稼業。天才の頭を使って次々詐欺を成功させる が、やがて警察の捜索を受けることに。 こうして刑務所に収監された主人公の目に、マクレガー扮す る金髪碧眼の青年フィリップのおどおどとした姿が飛び込ん でくる。その青年を守らなければと感じた主人公は、咄嗟に 「弁護士」と名告り、彼の保護者となって行くが… キャリーが主演だからコメディ風なのは当然だが、真面目く さった顔でひょうひょうと詐欺を働いて行く姿は映画として は最高のエンターテインメントの部類だろう。脚本・監督は 2001年『キャッツ&ドッグス』、2003年『バッド・サンタ』 などの脚本を手掛けたグレン・フィカーラとジョン・レクア のコンビ。彼らの初監督作品となるものだ。 そして本作では、キャリー、マクレガーの2人がキスシーン から濡れ場まで、かなりきわどい演技を見せるのだから、こ れは相当の観ものと言える。 それにしても人気スターの2人にこんな危険な演技をさせる とは…という感じもするが、製作はリュック・ベッソン率い るヨーロッパ・コープで、これはハリウッド映画とは違うテ イストの作品だ。 共演は、2008年11月紹介『無ケーカクの的中男』などに出演 のレスリー・マンと、2008年『チェ』2部作でラウル・カス トロ役を演じていたロドリゴ・サントス。因にレスリーは、 1996年の『ケーブルガイ』でもキャリーと共演している。 なお本作では、描かれている出来事自体はすべて実話に即し ているが、台詞や手口などは多少ドラマティックにしている とのこと。これは、「それが映画だ」という監督たちの判断 によるのだそうだ。
『ハンナ・モンタナ/ザ・ムービー』 “Hannah Montana: The Movie” 日本ではCSのディズニーチャンネルやテレビ東京系列でも 放送されたティーンズ向けの人気ドラマ『シークレット・ア イドル ハンナ・モンタナ』の劇場版。 今年の春にはドラマのキャラクターであるハンナ・モンタナ のコンサートの模様を収めた3Dフィルムも公開されたよう だが、今回はオリジナルのドラマの劇場版となる。 普通の少女がある日突然人気アイドルに、しかし自分を観る 周囲の目が変ることを嫌った少女は、自分がアイドルである ことを隠そうとする。そして偶然その秘密を知ってしまった 親友たちの協力も得て、何とか事実を隠し続けるが… オリジナルのテレビ番組は観ていないが、日本の少女向けア ニメでもそんな話はあった様な気もするし、如何にも10代の 女の子が喜びそうな設定だ。そしてその秘密がばれそうにな って…という形でお話は進んで行くようだ。 というテレビシリーズから派生された劇場版の作品だが、今 回の物語は人気者の状態が続いておばあちゃんの誕生祝いに も行こうとしなくなった娘を案じた父親が、無理矢理主人公 を田舎に連れて行ってしまうところから始まる。 ところがその故郷は開発で揺れ動いており、開発業者の買収 が進む牧草地を守る資金集めのため、主人公が親友だと言っ てしまったハンナ・モンタナのコンサートが開かれることに なるが、もちろん主人公にはその町出身の普通の少女という 顔もあって…結局いつもの展開となるものだ。 まあ、お話自体にはかなりの無理もあるが、それをとやかく 言う筋合いのものでもない。何はともあれティーンズ向けの お話が、歌と踊りも満載で進められて行く。 昨年11月に紹介した『ハイスクール・ミュージカル』も同様 に、オリジナルはディズニーチャンネルの番組だが、本作は さらに若年層向けの番組。正に他愛ないという感じのお話だ が、観客層もその辺がターゲットなのだ。 出演はテレビシリーズと同じで、主人公のハンナ・モンタナ /マイリー・スチュアート役にマイリー・サイラス。その父 親役を実の父親でもあるカントリー歌手のロビー・レイ・サ イラス。2人のデュエットシーンは聞き物だ。 他に、『アグリー・ベティ』にも出演のヴァネッサ・ウィリ アムズ、『スパイ・キッズ2、3D』にも出ていたエミリー ・オスメント、『ナショナル・トレジャー』に出演のジェイ ソン・アールズ、『めぐりあう時間たち』のマーゴ・マーテ ィンデイルらが脇を固めている。 * * 最後に、1979年『エイリアン』や1990年『トータル・リコ ール』の映画用オリジナルストーリーを執筆したダン・オバ ノンの訃報が伝えられた。死因などは明らかではないが、短 期の入院の末に亡くなったとのことだ。USCの同級生ジョ ン・カーペンターと共に『ダーク・スター』で登場し、数々 の名作を残した脚本家の冥福を祈りたい。
| 2009年12月13日(日) |
エクトプラズム、ニューヨークアイラブユー、鷹の爪3、完全なる飼育、蜉蝣峠+製作ニュース他 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『エクトプラズム/怨霊の棲む家』 “The Haunting in Connecticut” 2002年にディスカバリー・チャンネルで放送されたドキュメ ンタリー番組に基づいて描かれたというホラー作品。1987年 にコネチカット州のサジントンという町の屋敷に引っ越して きた一家を襲った超常現象の謎が解き明かされる。 主人公となるのは末期ガンの長男を抱える一家。その深夜に 亙る通院に疲れた母親が病院の近くに見付けた屋敷に一家は 引っ越してくる。しかしその屋敷は長く空家のままとなって いた曰く付きのものだった。 今まで観てきたホラー映画では、何でそんなところに引っ越 してきたの?という疑問符が付き纏うことがままあったが、 それに対する本作の理由付けは納得させられた。実話に基づ くというのがどこまでかは判らないが、これなら仕方ないと いう感じになるものだ。 そしてその屋敷に纏わる過去の事件と現在の一家の暮らしが シンクロし、恐ろしくも哀しい出来事が描かれて行くことに なるのだが…。その物語も最初は死期の近い長男から、その 範囲が徐々に広がって行くという過程も納得できた。 それに何より本作では、久しぶりに本気で観客を恐がらせよ うという演出が行われているもので、先に公開されたサム・ ライミ製作の作品などよりは、よほどちゃんとした恐怖を味 わうことの出来る作品だった。 ただし、本作が長編デビュー作のピーター・コーンウェル監 督は、ちょっと過去の名作に捉らわれ過ぎている傾向もあっ て、いくつかのシーンではどこかで観たような演出だなー、 と思ってしまうのはご愛嬌というところだろう。 脚本は、ロジャー・コーマンの門下生というアダム・サイモ ンと、1991年の『アイアン・メイズ』で東京国際映画祭の脚 本賞を受賞しているティム・メトカーフ。どらかというと、 この脚本が本作の決め手となっているのかも知れない。 主演は、1999年リメイク版『ホーンティング』にも出ていた ヴァージニア・マドセン。他にテレビシリーズ『ヴェロニカ ・マーズ』のカイル・ガルナー、2003年7月紹介『アララト の聖母』などのイライアス・コーティアス、『ファイナル・ デッドコースター』に出演のアマンダ・クルーらが脇を固め ている。
『ニューヨーク、アイラブユー』“New York,I Love You” 2006年12月に紹介した『パリ、ジュテーム』に続く、都会を 背景にしたオムニバス映画の第2弾。『パリ…』と同様、世 界中の映画監督たちが集まって大都会ニューヨークをいろい ろな角度から描いてみせる。 今回のプロジェクトに参加した監督は、ファティ・アキン、 イヴァン・アタル、アレン・ヒューズ、岩井俊二、チアン・ ウェン、ジョシュア・マーストン、ミーラー・ナーイル、ブ レット・ラトナー、ランデル・バルスマイヤー、シェカール ・カプール、そして初監督に挑戦したナタリー・ポートマン の11人。 前回の時はコーエン兄弟を含めて22人21組だったから、監督 の人数は半減、時間も前作の120分に対して103分と短くなっ ているが、セグメントの数が減った分、各々の平均時間は長 くなっているものだ。 そして内容的には、前回はそれぞれのセグメントが明確に独 立して、中にはヴァンパイアが登場するなどかなりファンタ スティックなものもあったが、今回は何となく全体のイメー ジが統一されている感じで、全体が大掛かりなアンサンブル 劇のように作られている。 つまり、ある日の大都会ニューヨークの各所で起きた1日の 出来事が点描的に描かれている感じもするものだ。因に各監 督に示された撮影ルールの一つは、視覚的にニューヨークが 特定できることだったそうだ。 そして物語に登場するのは、ナタリー・ポートマン(自監督 編ではなくミーラー・ナーイル編)、『50歳の恋愛白書』 のブレイク・ライヴリー、『スター・トレック』のアントン ・イェルチン、シャイア・ラブーフ、『イエスマン』のブラ ッドレイ・クーパー。 また、オーランド・ブルーム、ヘイデン・クリステンセン、 クリスティーナ・リッチ、『ジャンパー』のレイチェル・ブ ライスン、ロビン・ライト・ペン、イーサン・ホーク、マギ ー・Q、ジョン・ハート、『ナショナル・トレジャー』のジ ャスティン・バーサ。 さらにジェームズ・カーン、アンディ・ガルシア、クリス・ クーパー、イーライ・ワラック、ジュリー・クリスティ、バ ート・ヤング、スー・チーなど、誰を紹介すればいいのか迷 うほどのスターたちの共演が観られる。 それぞれのお話は短いが、それぞれに心に染みる物語が描か れており、それらが全体として現在のニューヨークを描いた 物語を作り上げて行く。『パリ…』の発展形としても、これ は見事な作品だ。 因にエンドクレジットには、次回のプロジェクトは“上海、 我愛你”になると書かれていたようだ。
『秘密結社 鷹の爪 The Movie 3』 2006年4月−6月にテレビ朝日系列で放送され、2009年10月 から第2シリーズが放送中というアニメシリーズの劇場版第 3弾。因に、劇場版の第1弾は2007年3月、第2弾は2008年 5月に公開されているそうだ。 全編Flash Movieで製作された作品とのことで、正直に言っ て動きは滑らかではないし、これをアニメーション作品とし て認めて良いか否かも迷うものだが、インターネット時代に はこれもこれで通用してしまう…というところのもののよう だ。 それにこの種の作品では、独り善がりでファンには喜ばれる だろうが一般的には理解の外にある作品…という危惧も感じ てしまう。しかも僕はテレビシリーズも劇場版の前の2作も 観ていない。そんな不安で一杯な気持ちのまま試写会を観に 行った。 で鑑賞した結論は、確かに動きなどは特有のものなのだが、 中に盛り込まれたギャグのセンスなどは充分に楽しめるもの になっていた。これも恐らくシリーズなどを観ている人には もっと笑えるのだろうが、そうでない僕でも気持ち良く楽し めたものだ。 この辺は多分、監督・脚本・キャラクターデザイン・録音・ Flash制作から声の出演まで兼ねるFROGMANなる人物のバラン ス感覚の良さということなのだろう。まずは本作の来歴など を全く知らなくても充分に楽しめる作品になっていた。 お話は、劇場版第2作のエンディングで鷹の爪の面々が長期 休暇を取り、それぞれ故郷に帰っていたメンバーが基地に戻 ってくるというところから始まる。この辺は有り勝ちなもの だ。 ところが彼らの留守中に基地が荒らされ、鷹の爪団の頭脳で あるレオナルド博士が行方不明。そこでメンバーは博士の故 郷であるアメリカはテキサス州に博士の行方を捜しに出かけ るのだが… 一方、国連ではアメリカ新大統領が核兵器の完全廃棄を宣言 し、世界の軍需産業が大混乱に陥っていた。そして博士の行 方不明にその軍需産業の影を認めた鷹の爪団は… 物語的には真っ当だし、そこに程よくギャグがちりばめられ ていて、秋口以降に観た日本アニメに、何というか、かなり 退いてしまっていた自分には、久々に心地よい作品だった。 まあ真面目に評価するには多少抵抗もあるが、これなら認め られる範囲の作品だ。 なお、本編のクライマックスシーンを何故か『ALWAYS三丁目 の夕日』などの山崎貴監督=白組が担当、ここだけ豪華なC GIが登場する。また主題歌には、イギリス製作のオーディ ション番組で話題になったスーザン・ボイルが歌う『夢やぶ れて』がフィーチャーされている。そんな遊び心も心地よく 楽しめた。
『完全なる飼育〜メイド、for you〜』 1999年〜2004年に計6本が製作された成人向け映画シリーズ を、5年ぶりに復活させた作品。 物語は、第1作の時は実際の拉致監禁事件を題材にした松田 美智子の原作を用いて映画化されたようだが、第2作以降は その設定のみを借りてそれぞれ異なる展開になっているそう で、シリーズの各作品で相互の関係はほとんど無いようだ。 因に僕は、2004年製作の若松孝二監督による第6作は試写で 観たが、サイトにはアップしなかった。その内容は、雪深い 田舎町を舞台にしたもので、それなりにオリジナルの物語を 踏襲しているようには観えたものだ。 そのシリーズの第7作が、今回は『バトル・ロワイアル�供� などの深作健太監督により映画化され、作品がパート3Dで 撮影されているために、試写会は3Dの上映設備を持つ会場 で1回限定で行われた。 第7作の物語の舞台は東京の秋葉原。その現代風俗の最先端 とも言われる街を背景に、メイド喫茶の女性店員と、憧れて いた彼女を偶然拉致してしまったマンガ喫茶の店長との交流 が描かれる。ただし今回は、物語の途中で主人公の男女が街 に出て行くシーンがあるなど、今までの拉致・監禁というシ リーズのイメージからはかなり違っていた。 主演は、『テニスの王子様』出身の柳浩太郎。他に前田健、 西村雅彦、竹中直人らが共演。そして飼育女優とも呼ばれる ヒロイン役にはサンズエンターテインメント所属のグラビア アイドル亜矢乃が扮している。 正直に言って好奇の目で観られ易い作品だが、過去の出演者 には第1作で犯人役を務めた竹中直人(以後も第6作を除い て登場)を始め、第4作の山本太郎、第5作の北村一輝、第 6作の大沢樹生、佐野史郎などかなりの俳優が揃っている。 その理由がどこにあるのかよく判らないが、男優にとっては 挑戦してみたくなる役柄なのだろうか。 なお本作の3Dシーンは濡れ場を中心に何度か登場するが、 画面の隅に表示される3Dマークを見落としやすく、2重に 観え始めて初めて気付くこともあった。何故全編3Dにしな かったのかもよく判らないが、3Dマークの表示にはもう少 し工夫が欲しかった感じもしたところだ。
『蜉蝣峠』 歌舞伎や海外のオペラ、バレーなども紹介してきた舞台面を そのままHDで撮影し、ディジタル映画館で上映するシステ ムが日本の現代演劇にも進出した作品。ゲキ×シネと呼ばれ るプロジェクトは2003年にスタートし、すでに7作品ほどが 公開されているようだ。 その第8作は宮藤官九郎の脚本を、いのうえひでのり演出に より劇団★新感線が上演した作品。蜉蝣峠と呼ばれる場所に 過去の記憶を失って暮らしていた男と、そこからは8里ほど 離れた場所に所在する歓楽街で暮らす女の悲しい因縁話が展 開される。 時代は江戸の末期かな。年貢の取り立てに苦しむ農民と、そ れを取り締まる領主や代官たち。そしてその間で甘い汁を吸 おうとする渡世人の面々。物語はその渡世人たちの暮らしを 中心に進められるものだ。 宮藤の脚本による映画作品は何本か観ているが、以前にも書 いているように、僕には好きな作品と気に入らない作品が両 極端になるものだ。それは特に宮藤の舞台劇を映画化した作 品で気に入らないことが多いと感じていた。 しかしその舞台は評判を呼んでいるもので、本物の舞台は観 たことの無い僕には、その辺のギャップが理解できないでい た。そんな訳で今回のゲキ×シネには、その舞台の様子も検 証できるかも…という期待も持って試写を観に行った。 それでその舞台は、歌や激しい踊りも満載で、さらに紗のカ ーテンにアニメーション映像が写し出されたり、回り舞台を 巧妙に用いた舞台転換など、なるほどこれなら生で観たらそ の迫力も格別だろうなと思わせるものだった。 結局のところ舞台と映画は違うものだし、それぞれには一長 一短があってその補完は容易ではない。従って舞台劇を映画 化するには相当の覚悟を持った改変が必要なのだが、その辺 で今までに観た宮藤の舞台が原作の映画化作品は、中途半端 で物足りなかったようだ。 それが今回のゲキ×シネでは、舞台面をそのまま撮影するこ とで舞台の特性は活かされている。それに今回は撮影に16台 のソニー製CineAltaのカメラが使用されたとのことで、その 多角的な撮影では、生の舞台とはまた違った良さも生み出さ れているものだ。 出演は、劇団看板役者の古田新太と、客演の堤真一、高岡早 紀。他に若手の勝地涼、木村了、さらに劇団所属の梶原善、 粟根まこと、高田聖子、橋本じゅんらが共演している。 もちろん生の舞台とは違うのだろうが、これはこれで満足の できる作品。一般当日2500円、前売り2000円の入場料はちょ っと高いが、舞台公演のチケットは入手困難なものだそうだ から、それも仕方がないだろう。 * * 久しぶりのニュースは賞関係の話題だから、前々々回には アカデミー賞アニメーション部門の予備候補を報告したが、 今回はVFX部門の予備候補が発表されている。 まずエントリーされたのはアルファベット順に “Angels & Demons”『天使と悪魔』 “Avatar” “Coraline”『コララインとボタンの魔女』 “Disney's A Cristmas Carol”『Disney'sクリスマス・キ ャロル』 “District 9” “G-Force” “G.I.Joe: The Rise of Cobra” “Harry Potter and the Half Blood Prince”『ハリー・ポ ッターと謎のプリンス』 “Sherlock Holmes” “Star Trek” “Terminator Salvation”『ターミネーター4』 “Transformers: Revenge of the Fallen” “2012”『2012』 “Watchmen” “Where the Wild Things Are”『かいじゅうたちのいると ころ』 の15本。この内、邦題を併記したのはこのページで以前に紹 介している作品だ。この内から来年2月2日には3本の最終 候補が発表される。 ところで上記した作品の内で、“Coraline”と“Disney's A Cristmas Carol”は、以前に紹介したアニメーション部門 の予備候補にも選ばれており、CGI万能の現代のVFXと アニメーションの境界も論議されることにもなりそうだ。そ の一方で今回のリストからは、“Night at the Museum 2” “The Lovely Bones”“X-Men Origins: Wolverine”などが 漏れており、その判断基準も話題になっているようだ。 * * 後は製作ニュースで、VFXが上記の予備候補にも挙がっ ている“Avatar”のジェームズ・キャメロン監督が、1966年 に公開されたSF映画“Fantastic Voyage”(ミクロの決死 圏)のリメイクを計画していることが公表された。 このリメイク計画は、元々は2007年9月15日付第143回で も紹介したようにローランド・エメリッヒ監督も進めていた ものだが、当時『紀元前1万年』は完了していたエメリッヒ 監督は、その後は『2012』に邁進したために頓挫してい たようだ。 その計画にキャメロンが乗り込んできたものだが、計画で はキャメロンは監督はせずプロデュースのみ行うとのこと、 しかし当然3Dでの製作になるとのことで、あの体内世界が 3Dで映像化されるのは楽しみだ。ただし、2007年当時に用 意されていたマリアンヌ&コーマック・ウィバリーのチーム による脚本はエメリッヒと共にキャンセルされた模様で、脚 本は新たにキャメロンが、2007年『AVP2』などを手掛け たシェーン・サレルノと共同で執筆するとなっている。 なお今回の報道では、“Fantastic Voyage”の影響を受け た作品として1989年の『ミクロキッズ』は挙がっていたが、 1987年の『インナースペース』が無視されていたのは意外だ った。同時期の作品だし、特に体内巡りというストーリーで はこちらの方が正統だと思えるのだが…。世間の評価という のはそんなもののようだ。
| 2009年12月06日(日) |
サベイランス、コララインとボタンの魔女 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『サベイランス』“Surveilance” デイヴィッド・リンチの娘ジェニファーが、1993年『ボクシ ング・ヘレナ』以来となる14年ぶりに監督した作品。 監督の前作はいろいろ物議を醸した問題作だが、監督自身は その後は出産を経てCM監督として活躍したり、また交通事 故の後遺症で苦しんでいた時期もあったとのことで、別段前 作のせいで干されていた訳ではないようだ。本作はそんな監 督の映画復帰作となる。 物語の舞台はサンタ・フェ。そこでは凶悪な連続殺人事件が 起きており、FBIの捜査官が捜査の指揮を取るためにやっ てくる。それは地元警察にとっては煙たい存在だ。そして最 近の事件での3人の生存者に対しそれぞれ調書を取り始める が… その3人とは、同僚を殺された地元警官と、麻薬仲間を殺さ れた若い女性、そして家族を殺された幼い少女。しかし彼ら の証言には微妙な食い違いが生じている。それは彼らの主観 のためなのか、そんな証言の間に実際の出来事?がフラッシ ュバックで挿入される。 脚本は、監督の短編作品などで一緒に仕事をしたことのある ケント・ハーパーの原案によるとなっているが、日本人には 最近『TAJOMARU』も製作された黒澤明監督の『羅生門』が思 い浮かぶところだ。 ただし本作の物語は、細かい人間ドラマよりも謎解きの方に 主眼がおかれている感じで、それはそれでドライで良い感じ ではあるものだ。そしてまあ父親譲りというかかなりグロテ スクな映像がそれを飾って行く。 ただ、何というか全体的にシンプルなのが物足りなくも感じ てしまうところだが、逆にねちねちとしつこいのよりは好ま しいと感じる向きもあるかも知れない。因に父親は、本作の エンディングは邪悪すぎるとして気に入っていないそうだ。 出演は、『ベンジャミン・バトン』などのジュリア・オーモ ンド、『スターシップ・トゥルーパーズ』などのマイクル・ アイアンサイド、『インディペンデンス・デイ』などのビル ・プルマン。 他に、『ゾディアック』などのペル・ジェームズ、『リービ ング・ラスベガス』などのフレンチ・スチュアート、そして 『リボルーショナリー・ロード』などの子役のライアン・シ ンプキンスが見事な演技を見せてくれる。
『コララインとボタンの魔女』“Coraline” 1993年公開のティム・バートン原案による『ナイトメアー・ ビフォア・クリスマス』で、実際の監督を任されたヘンリー ・セレックが、2007年『ベオウルフ』などの脚本を手掛けた 作家ニール・ゲイマンの原作を脚色監督した作品。 因にゲイマンの原作は、2003年度のヒューゴー賞、ネビュラ 賞、ローカス賞、ブラム・ストーカー賞を総浚いしている。 そしてゲイマンは、その原作の出版1年半前に原稿をセレッ クに送り、2人で映画化を目指したものとのとだ。 物語は、郊外のアパートに引っ越してきた一家の1人娘が主 人公。一家の母親は原稿の執筆に追われる作家で、家事一切 は父親が行っているという家庭。その両親は、自分が親の目 から見ればそれなりに主人公を大事にしているようだが、子 供はそうは思わない。 そんな主人公が、引っ越してきた家の片隅で、壁紙に覆われ た小さなドアを発見する。そのドアの鍵を母親が見付けて開 けてみるが、その裏側は煉瓦の壁に塞がれていた。ところが その夜、部屋に現れたネズミの後を追ってそのドアを開けて みると… 現実の世界とはちょっとだけ違うパラレルワールド。そこの 母親は明るくて料理や家事も得意。そして父親もいつも楽し く歌っている。そんな理想の世界に主人公は魅かれて行くの だが、そこには落とし穴も待っていた。 元々原作は娘が思い付いたストーリーにゲイマンが肉付けし たものだそうだが、子供の夢のようなものが見事に描かれて いて、それでいて現実の親の姿も嫌みにはなっていない。そ んなバランス感覚が賞を総ざらいする評価にもなっているの だろう。 そしてその物語からセレックが脚色しているが、その脚色に ゲイマンは殆ど口を挟まず自由にやらせてくれたそうだ。そ んな各自の才能が見事な相乗効果を生み出している感じがし た。さらにコンセプトアートに、日本人イラストレーターの 上杉忠弘が参加しているのも注目だ。 なお本作は、人形アニメーションでは初の最初から3Dで撮 影された作品(『ナイト…』は後付で3Dに加工された)。 残念ながら試写は2Dだったが、予告編だけ3Dで見せても らった中でも、なるほどと思われるシーンが見られた。3D 試写は年明けからなので、その時改めて報告したい。
最近、身辺がばたばたしておりますので、製作ニュースは 次週辺りから再開させていただきます。
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