井口健二のOn the Production
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2008年07月27日(日) クローン・ウォーズ、シャカリキ!、夢のまにまに、ハムナプトラ3、アキレスと亀、練習曲、ブロークン

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』
             “Star Wars: The Clone Wars”
1977年から2005年まで続いた実写映画『スター・ウォーズ』
サーガからスピン・オフされたアニメーション作品。
元々は全米で今秋スタートする子供向けテレビシリーズの長
編プレミアという感じの作品で、特に子供のジェダイが活躍
するなど工夫が凝らされている。ただし物語は、エピソード
�兇鉢靴隆屬魴劼阿發里如■咤廚料澗料�の形成ではそれなり
の意味は持つものだ。
因に同様のテレビシリーズは、2003年から2005年までの映画
版のエピソード�兇鉢靴慮�開の間にも放送されていたことが
あるが、今回はそれを仕切り直すことになるもので、それな
りに気合いの入った作品にもなっているようだ。
とは言え、元々が子供向けテレビシリーズということでは、
お話は単純明快になるが、その分、無邪気さに溢れると言う
か、それこそ1977年の第1作で僕らが刮目した冒険心満点の
作品になっている。
物語は、共和国と帝国との全面戦争となったクローン戦争も
激化している頃が背景。オビ=ワンはジェダイ軍の将軍とな
り、アナキン・スカイウォーカーはジェダイに昇格、オビ=
ワンの片腕として活躍している。
そんなときジャバ・ザ・ハットの息子が誘拐され、ジェダイ
に救出の要請が来る。それは共和国にとっては、ジャバ・ザ
・ハットが支配する辺境地区の輸送路を確保するためにも重
要な意味を持つものだった。
そこで、オビ=ワンとアナキンに司令が届き、オビ=ワンが
ジャバ・ザ・ハットとの交渉に向かう一方で、アナキンは新
たに配属されたパダワンのアソーカと共に息子の救出に向か
うが…そこには帝国の陰謀が待ち受けていた。
これに、ヨーダ、アミダラ、パルパティーン、R2−D2、
ドゥークー、メイス・ウィンドゥ、C−3POらも登場して
物語が進められる。因に、ドゥークー以下の3名の声優は、
クリストファー・リー、サミュエル・L・ジャクスン、アン
ソニー・ダニエルスが担当している。
基本的には戦闘シーンの羅列という面もあって、それ自体は
いささかやりすぎの感じもあるが、現在も戦争当事国である
アメリカではこれくらいの刺激がないと現実を超えられない
のかもしれない。
でもまあそんなことは別にして、白兵戦やドッグ・ファイト
など、『スター・ウォーズ』サーガのいろいろな要素が手際
よく集められた作品にもなっている。そんなアクション映像
を再度楽しめる作品というところだ。
ただし、本編で活躍するアソーカは実写版のエピソード�靴�
は登場してこない訳で、この後に続くはずのテレビシリーズ
ではどう処理するのか、その辺はちょっと心配になった。

『シャカリキ!』
『め組の大吾』などでも知られる漫画家曽田正人が1992年か
ら95年まで少年チャンピオンに連載した同名のデビュー作の
実写映画化。
過去の栄光はあるものの、ある事情から落ち目になった高校
の自転車部が、廃部の危機の中、子供の頃から坂道を自転車
で登ることだけを目標にしてきた新入生を引き込んで再度の
栄光を目指すが…
インターハイのロードレースというのは、現在では個人戦し
かないそうだが、原作の漫画が連載されていた当時はまだ団
体戦があったらしい(平成12年まで実施)。そんなちょっと
ノスタルジックな部分も含む青春ドラマが展開する。
巻頭、盆地に広がる市街地を向かいの山まで真っ直ぐに伸び
た道が登場する。こんな道が本当にあるかどうかは知らない
が、もしあったら、僕も自転車で手前から勢いを付けて真っ
直ぐそこを登ってみたくなったかも知れない。主人公はそん
な夢を持って育ってきた。
それがクライマックスのロードレースへと繋がって行く構成
で、映画の前半はよくあるパターンのスポーツものに終始し
てちょっとめげかけたが、後半は自転車の理論や、団体戦の
エース/アシストの役割や駆け引きなども丁寧に描かれて俄
然面白くなった。
実際のレースは2つ描かれるが、後半の山岳コースを含む個
人ロードレースのシーンは、実写された映像にもかなりの迫
力もあって、見応えのあるドラマになっている。ここでは、
ライヴァルとの駆け引きやレースの展開なども納得の行くよ
うに面白く描かれていた。
監督の大野伸介は、今村昌平から北野武、行定勲などの助監
を務めてきた人で、本作がデビュー作とのことだが、本人が
ロードレーサーに魅せられてしまったと言うだけあって、自
転車を愛情を持って捉えている感じなのも嬉しいものだ。
ただ、巻頭のシーンで、多分町並がCGIなのは良いとして
も、最後に合成までしてしまうのはちょっとやりすぎた感じ
がする。
それよりここは、この直線道路の全コースをワンカットで走
破するような映像があれば良かった。予算上の問題はあるか
も知れないが、前半を高速で下って、後半徐々に速度が遅く
なり、それでも坂を上り切る映像なら、掴みは抜群だと思っ
たのだが…

出演は、D−BOYSの遠藤雄弥、中村優一、鈴木裕樹。ヒ
ロイン役が南沢奈央。他に、小林裕吉、小柳友、池田哲哉、
坂本真が共演。さらに柄本明、温水洋一、中越典子、原田泰
造、中井美穂らが脇を固めている。

『夢のまにまに』
美術監督として長年日本映画を支えてきた木村威夫監督によ
る初長編作品。木村監督作品では昨年6月に短編の『馬頭琴
夜想曲』を紹介しているが、その折にも初長編を撮り終えた
ばかりとしていたその作品。
映画学校の学院長を務める主人公と、その学院の生徒との交
流を通じて、戦中、戦後の激動の時代を生きてきた男性のい
ろいろな思いが綴られて行く。そしてその学生が、ある日、
行方不明になるが…
物語の多くの部分は実話に基づいているようで、特に学生と
やりとりされる手紙は、実際の手紙の文面のままだそうだ。
従って物語はかなり私的な部分の多いものだが、それはまた
今年90歳の日本人男性の多くが体験してきた歴史でもあるも
のだ。
そこでは、戦争の悲劇や戦後の闇市での人々の交流が描かれ
る。木村監督は、戦前からの映画人であり、その人生の中で
は戦後の闇市などでも比較的裕福な環境で居られたもののよ
うだが、その辺も正直に語られている。
その一方で、現代の若者が陥る悲劇が、依然として戦争に繋
がっている点は、ここは多分木村氏の思い入れにもよるのだ
ろうが、実は自分の父親がほぼ同じ91歳を迎えている姿を見
ていると、戦争がこの人たちに残した心の傷の深さを思い知
らされる。
戦争は決して終戦によって終わるものではない…。そんなこ
とも訴え掛けているような感じのする作品にもなっている。
そんな思いを明瞭にするために、長野県上田市にある戦没画
学生慰霊美術館「無言館」もフィーチャーされている。
出演は、長門裕之、有馬稲子が主人公夫妻を演じ、主人公と
交流する学生役をミュージカル界の井上芳雄が演じている。
他に、宮沢りえ、永瀬正敏、上原多香子、浅野忠信、桃井か
おりが共演。また、鈴木清順、本作が遺作となった能楽師の
観世榮夫らも登場する。
不思議な瘤のある樹や、闇市の風景、またちょっと痴呆症気
味の妻の描くコラージュなど木村美術も随所に登場する。さ
らに調布の撮影所の撮影風景や、その中で学んでいる学生た
ちの様子も描かれる。不思議なムードがいっぱいの作品だ。

『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』
       “The Mummy: Tomb of the Dragon Emperor”
1999年と2001年に公開されたブレンダン・フレーザー主演の
『ハムナプトラ』(The Mummy)シリーズが、7年ぶりの今
回は中国を舞台にして装いも新たに再登場した。
映画の開幕は2000年前。1人の皇帝が中国を統一するが老化
の恐怖に怯え始める。そこで不老不死の秘法を巡って皇帝と
将軍、女魔法使いの戦いが巻き起こる。そして悪と化した皇
帝を倒すことのできなかった女魔法使いは、皇帝の動きを封
じる呪いをかけるが…
時は巡って1946年。第二次大戦が終戦し、中国国内では国民
党と共産党の戦いが始まろうとしている。そんな中、2000年
前の皇帝のミイラを復活させ、その最強の軍団も甦らせて政
権を奪取しようとする一団が現れる。
そんな陰謀に乗せられたオコーネル一家が、今回は中国で甦
った皇帝のミイラを相手に、人類の存亡を賭けた戦いに挑む
ことになる。
前2作はスティーヴン・ソマーズの監督で、どちらかという
とコメディの要素の強い作品だった。それに対して今回は、
ソマーズは製作に下がり、監督には『トリプルX』などのロ
ブ・コーエンを迎えてアクションの要素もたっぷりの作品と
されている。
そしてそれを支えるのがジェット・リー、ミシェル・ヨー、
イザベラ・リョンら中華系のアクションスターたちで、さら
にスタッフにも中国映画界の人材が数多く起用されて、本格
的なアクション映画に仕上げられている。
それにしてもコーエンは、自作の続編には参加しなかったの
に、今回は他人のシリーズへの参加というのも面白いところ
だ。しかも本作は現代劇ではないが、『ステルス』や『ワイ
ルド・スピード』でも見られたメカフェチぶりが、ちゃんと
発揮されているのにも感心した。
それに、リーが演じているのは秦の始皇帝だと思われるが、
万里の長城から兵馬俑まで、歴史的な事柄がちゃんと押さえ
られているのも感心したところだ。そして物語は、シャング
リラにまでおよぶ壮大なものになっている。
脚本は、ジャッキー・チェン主演の『シャンハイ・ヌーン』
や、ロバート・デ=ニーロ主演『ショウタイム』なども手掛
けたマイルズ・ミラーとアルフレッド・ゴーフ。アクション
コメディの要素もたっぷりと描かれている。
シリーズの共演者では、エヴリン役は、『ジェーン・オース
チンの読書会』などのマリア・べロに交代したが、ジョナサ
ン役はジョン・ハナが3作連続で登場。また、前作では子役
が演じていたアレックス役は今回は新人のルーク・フォード
が演じている。
シリーズは第4作にも続きそうだ。


『アキレスと亀』
昨年の『監督・ばんざい!』に続く北野武監督最新作。
北野作品は、2005年の『TAKESHIS'』と、前作はストーリー
性が希薄で、ある意味難解だったが、本作では画家になるこ
とを刷り込まれた少年が、ただ画家になることだけを目指し
て進んで行く物語として、それは判りやすいものだ。
その少年の名前は真知寿。裕福な家の産まれた少年は、美術
愛好家の父親の庇護のもと、画家になることだけを目標に少
年時代を過ごしている。ところが父親の会社が突如倒産、一
家は離散となる。
そして、芸術に無理解な叔父の家に預けられた少年は悲惨な
生活を強いられるが、それでも画家になる夢は手放さない…
というより、他の勉強を全くしてこなかった少年には、画家
になることしか残された道はなかったのだ。
そんな少年は青年となり、生活のために勤める職場で1人の
女性と巡り会う。その女性は「私なら、彼の芸術、わかると
思う」という一念で、彼と生涯を共にすることになるが…売
れない芸術家の生活は尋常なものではなかった。
こんな物語の流れに沿って北野武本人の手になる絵画が何点
も登場し、またその制作過程なども紹介されて、それはなか
なか面白いものになっていた。特に制作過程の紹介では、い
ろいろ実験的な手法も登場して、それも楽しいものになって
いる。
その一方で、美術品の評価に対してはかなり辛辣に、皮肉め
いた発言も登場するなど、いわゆる世間に対する批判的な部
分も描かれている。と言っても、まあそれなりに常識的な線
で、あまり過激な発言というほどのものではない。
でお話は、その売れない芸術家と生涯を共にすることにした
女性との愛情物語が中心で、それはまあ男のロマンに付き合
わされる女性はこんなものかなあという、ある種の夢のよう
な物語にもなっているものだ。
作品の全体の雰囲気は、『HANA-BI』や『菊次郎の夏』に戻
ったようなところもあって、その間に今回はいろいろな実験
的な絵画手法が、従来の作品のギャグの替りに挿入されてい
るという感じのものだ。
なお劇中に登場する北野武の絵画も、模倣あり、パロディあ
りで、いろいろ面白いものになっていた。

『練習曲』“練習曲”
8月23日から六本木で開催される台湾シネマ・コレクション
で上映される内の1本。2007年の台湾映画興収第1位を記録
した作品。
聴覚障害のある青年が、台湾南部の高雄市を出発して反時計
回りに台湾を一周する自転車旅行に出る。その青年の1週間
の旅の出来事が綴られた作品。行く先々での人々との交流や
遭遇した祭りの様子などを描いたもので、ドラマとドキュメ
ンタリーも混淆している。
そんな構成であるから、ドラマの部分はあまり掘り下げられ
てもいないし、それがどうなると言うようなものでもない。
正直に言って、ちゃんとしたドラマを期待した者には、多少
はぐらかされる感じだったが、こういう作品が人気を得るこ
とも理解はできるものだ。
台湾を一周する間の風景はいろいろ変化して、その間に花蓮
や基隆など聞いたことのある地名が出てくるとそれなりに興
味も湧く。だからそんな気持ちで観る観客も多いのかも知れ
ない。実際この映画の公開後、台湾では自転車で一周旅行す
る人が増えたそうだ。
主演は、美術デザイナーとしても著名だというイーストン・
ドン。彼自身が聴覚障害者だそうで、確かに口調などには独
特なものがある。それで、補聴器を題材にしたエピソードな
どもあるが、それはそれとして描かれているだけのものだ。
他にも、映画の撮影をしている一団や、やはり自転車で母親
の元に向かっている青年や、東欧から来た女性モデル等が登
場する。そのそれぞれのドラマは深くは描かれないが、人々
がいろいろな悩みの中で、それでも未来に向かって行く姿は
描かれている。
実際、監督は、殺伐とした世の中で、そうではない生活もあ
ることを描きたかったと語っているようだが、確かにその通
りの作品ということだろう。そしてその思いが台湾の観客に
も伝わったということのようだ。
その状況は、日本でもあまり変わらないように思えるし、逆
に台湾もそうなのだと改めて思ったりもしたものだが、そん
な気持ちが日本の観客にも伝わればいいと思うところだ。
それにしても台湾って、自転車で1週間で回れてしまうんで
すね…

それから、劇中でモデル役を演じているRuta Palionyteは、
本当にリトアニア出身のスーパーモデルだそうだ。

『ブロークン』“The Brøken”
昨年の11月に『フローズン・タイム』という作品を紹介した
ショーン・エリス監督の長編第2作。前作は短編を引き伸ば
したものだから、最初から長編として企画された作品では、
これが第1作ということになる。
因に、前作の邦題は本作との繋がりを感じさせるが、前作の
原題は“Cashback”で、邦題が似たのは偶然のようだ。
その題名は、breaking a mirrorから来ているもので、鏡が
割れると不吉なことが起こる(イギリスでは7年間不幸が続
くと言われているようだ)という、まさにその通りの物語が
展開される。
その発端は、主人公の父親の誕生日。そこで家族が会食して
いた居間の大鏡が激しく割れて落下する。その場は茶化して
迷信を言い合う家族だったが…。翌日、職場から帰宅しよう
とした主人公は、自分の愛車と同じ車に乗った自分に瓜二つ
の他人を目撃する。
そして、思わずその後を追った主人公は、その車が駐車した
アパートに侵入、自分の住まいとそっくりの部屋にたどり着
く。そしてその帰路、気の動転した主人公は衝突事故を起こ
し、怪我は軽かったが事故前後の記憶を喪失してしまう。し
かもその後、主人公の周囲には次々に怪奇なことが起こり始
める。
前作のちょっとロマンティックな雰囲気からは一転して、本
作はまさにサスペンスホラーという感じの作品だ。そこに鏡
を使った映像は、エリス監督が元々写真家だったことを思い
出させるに充分なトリッキーなもので、なるほどと思わせる
ものがあった。
ただし、物語自体はルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』
を含めて有り勝ちな感じで、ここに前作で見せたような無邪
気さがもう少しあっても良かったかな…という感じはした。
とは言え、鏡を使ったホラー表現などには、なかなか見せる
ものもあった。

主演は、テレビ版『ターミネーター』でサラ・コナー役を演
じているレナ・ハーディ。その父親役にアメリカ版『Shall
we Dance ?』などのリチャード・ジェンキンス。さらに、日
本映画『長州ファイブ』に出演のミシェル・ダンカン、フラ
ンス映画の『ぼくを葬る』で主演のメルヴィル・プポーらが
共演している。
出演者もスター俳優が揃うようになって、いよいよ監督業も
本格的に始動した感じ、次回作も楽しみになる。



2008年07月20日(日) インビジブル・ターゲット、イエスタデイズ、パンダフルライフ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『インビジブル・ターゲット』“男兒本色”
2005年『香港国際警察/NEW POLICE STORY』を始め、最近の
香港でのジャッキー・チェン映画を数多く手掛けるベニー・
チャン監督が、『香港…』にも出演したニコラス・ツェー、
『インファナル・アフェア』のショーン・ユー、ジャッキー
・チェンの息子ジェイシー・チャンの共演で贈る新ポリス・
ストーリー。
武装強盗団に婚約者を殺された刑事、同じ強盗団に屈辱を受
けた警部補、そして、失踪中の兄がその強盗団の一味と疑わ
れている警官。その3人が出会い、事件の真相を明らかにす
るべく行動を開始するが…
この強盗団というのが、元東南アジアの内乱の戦士たちの残
党という設定で、戦闘能力が高い上に冷血。しかも、爆発物
等の扱いにも精通しているとなっていて、格闘技、銃撃戦、
そして爆発火災までが見事に実行される。
中でも、強盗団のリーダー格を演じる『SPL/狼よ静かに
死ね』などのウー・ジンは、『かちこみ!ドラゴン・タイガ
ー・ゲート』で見事なアクションを見せたツェー、ユーのコ
ンビを相手にして、しかも圧倒して行くのだから、その迫力
は尋常ではないものだ。
上映時間は2時間9分もあるが、その時間をほとんど隙間な
くアクションが連続する構成で、正直に言って見終ると観客
にも疲労感が残るほどの激烈なものになっている。つまりそ
れが望みの観客には、これ以上のプレゼントはないと言う感
じの作品だ。
共演は、アンディ・オン、ロー・ワイコンなど『香港…』の
メムバーに加えて、『ドッグ・バイト・ドッグ』のサム・リ
ー、『風雲/ストーム・ライダー』のアーロン・クォックら
も顔を出している。
なおジェイシー・チャンは、普段は二枚目だが、笑顔や泣き
顔になると父親そっくりになるのがご愛嬌。因に彼の本業は
歌手だそうで、確かにカンフーアクションのシーンはそれほ
どではなかったが、炎の中を転げ回るなどのスタントはちゃ
んとこなしていた。
そしてその分のカンフーアクションは、ツェーとユーが強烈
に演じているものだが、上記のウーとの闘いだけでなく、そ
の他の集団相手のアクションなども、見事な破壊の連続と併
せて、本当に見応えのあるものになっている。
香港アクション映画では、今期最強の1本と言えそうな作品
だ。

『イエスタデイズ』
「このミス」等にも選ばれている本多孝好原作の短編小説の
映画化。
余命を宣告された父親に頼まれて35年前に別れた女性の行方
を探す息子の物語。その手掛かりとして一冊のスケッチブッ
クを渡された息子は、そこに描かれた場所を訪ねてみる。そ
してその場所でスケッチブックを広げると…
そこには、35年前の画家を目指していた父親と、ピアニスト
の夢を膨らませる恋人の世界が広がっていた。そして主人公
はその2人と親交を持ち、2人の生活が取り返しのつかない
変化の淵に追いやられて行くのを見つめて行くことになる。
絵を切っ掛けに主人公がその時代に遡るという物語は多分先
例があると思うが、本作の映画化はその点をうまく表現して
いる。しかも、VFXなどもあまり使用せずにそれをやって
のけようとする演出は、それなりに感心しながら観てしまっ
たものだ。
しかも本作は、実は親殺しのパラドックスになるものであっ
て、SFファンとしては始めからその点ではらはらしてしま
うのだが…。主人公がそれに気付いていないというのも面白
いところで、それがある時点でちゃんと指摘されるという展
開にも感心した。
つまりこの主人公は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
のマーティとは全く逆の立場にいる訳で、これはSFファン
には当然すぎていまさら指摘するまでもないことだが、映画
ではこんな単純なパラドックスでも、解決できていない作品
が多く観られるものだ。
実際、SF畑ではない作家がその点に気付いて原作を書いて
いるかどうかは判らないが、SFファンとして観ているとそ
の辺の処理も実にスマートで、これはやられたとも思ってし
まったところだった。

主演は、塚本高史、國村隼、和田聰宏、原田夏希。他にカン
ニング竹山、蟹江一平、中別府葵が脇を固め。さらに高橋惠
子、風吹ジュンが出演している。
監督は、本作が長編映画デビュー作となる窪田崇。ショート
フィルムやミュージッククリップなどで実績のある人のよう
だが、絵作りも含めて気に入ったものだ。
それから脚本は、2006年に東野圭吾原作の『手紙』、高橋し
ん原作の『最終兵器彼女』などを手掛けている清水友佳子。
前者は自分でも気に入った作品(2006年10月20日紹介)で、
本作でもその本領は発揮されていたようだ。

『パンダフルライフ』
中国・成都大熊猫繁育研究基地と、和歌山県南紀白浜にある
アドベンチャーワールドで飼育されているパンダを記録した
ドキュメンタリー作品。
パンダの母親は通常双子を産んで、その一方だけを育てるの
だそうだ。このため成都の研究基地では、母親に好物の蜂蜜
を皿で与え、その隙に赤ん坊を取り替えて2匹を均等に育て
させる工夫をしているようだ。
これに対して南紀では、自然に双子を育てた母親がいるとい
う。そのやり方は紹介されていないが、そうして育って双子
のパンダが本作の主人公となる。そしてその双子のパンダの
中国への帰国や、兄弟の別れなどが描かれる。
その間には、上記の要領で育てられている中国のパンダの様
子や、4頭が仲良く暮らす「おとぼけカルテット」と称され
る若年パンダの様子なども紹介されて、それぞれ愛らしいパ
ンダの映像が満載という作品になっている。
そしてナレーションは、菅野美穂が女性らしい口調も織り込
みながら、妙に感情を高ぶらせたり、押しつけがましくなる
ようなこともなく、ほのぼのとした映像にマッチした解説を
付けている。
ただ、アニメーションを使って解説される元々は肉食のパン
ダが竹を食べるようになった理由や、白黒の模様の理由につ
いては、こんなことで良いのかなという感じではあったが、
まあ中国側の説明がこんなものなのだろう。
それでも、竹を食べるようになっても消化器官は肉食のまま
なので、20%程度しか栄養にならないなどの説明がちゃんと
あったのは、それなりに学術的な面にも気は使われていたよ
うだ。それも程々に行われていたのは良い感じだった。
上野動物園のパンダがいなくなって、直前には『カンフー・
パンダ』も公開される。そんなタイミングを図ったような作
品だが、決して拙速に作られたものではなく、内容的にもし
っかりしたものになっている。特に幼い子供さんには観ても
らいたい作品だ。
なお、この試写会は新設された新宿ピカデリーで行われたも
のだが、2階に広いロビーを持つ劇場はなかなかの雰囲気だ
った。



2008年07月15日(火) 第163回

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※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
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 まずは、SF/ファンタシー映画ファンには今世紀最大の
ニュースと言えるかも知れないこの話題から。
 1927年公開のフリッツ・ラング監督作品“Metropolis”の
完全版が発見されたようだ。
 この作品については、昨年12月15日付第149回でリメイク
の計画を紹介して、その際にオリジナル版の状況についても
解説したが、1927年1月10日にベルリンでプレミア上映され
たオリジナル版の上映時間は210分であったとされている。
しかしその評判があまり芳しくなかったことと、長尺のフィ
ルムはそのプリント代も嵩むことから、製作会社のUFAは
再編集を断行、その結果、同年8月に行われたアメリカ公開
版は上映時間が114分となっていた。
 ただし、この作品の製作はサイレントで行われたもので、
その撮影は毎秒16コマ。これに対して、アメリカでの公開は
サウンド版となっており、その上映は、サウンドトラックの
性能との関係から毎秒25コマで行われたものだ。従ってオリ
ジナル版をそのコマ数で上映すると134分となったはずで、
このときのカットは、毎秒25コマ換算で20分程度だったと考
えられる。因に、サイレント映画の上映で俳優の動きなどが
チカチカとコミカルに観えるのは、通常このコマ数の変化の
せいであって、演出的なものではないことが多い。
 しかしこのときのアメリカ公開版が以後の標準版となり、
その際にカットされた20分のフィルムは完全に失われたもの
と考えられていた。実際、2002年に123分(毎秒25コマ)の
リストア版が作成されたときも、「もうこれ以上のフィルム
は発見されないだろう」とコメントされたものだし、2001年
のユニセフ世界遺産の登録でも、「完全版ではないが、これ
以上のものが得られる可能性はない」として、不完全を承知
で登録が認められたものだ。
 という失われたフィルムの再発見だが、これが何と、南米
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスにある映画博物館に保
管されていたとのことだ。その経緯について、Variety紙や
イギリスBBCなどの報道によると、このロングヴァージョ
ンのフィルムは、1928年に当時ブエノスアイレスでテラとい
う配給会社を経営していたアドルフォ・Z・ウィルスンなる
人物が入手。その後、フィルムはいろいろな人の許を渡り歩
いたが、1992年から同博物館に所蔵されていたとのことだ。
 一方、アルゼンチンでは、1960年代に“Metropolis”の別
ヴァージョンが上映されたとの噂があり、その噂を確認する
べくフェルナンド・ペナという映画研究家が、1980年代から
博物館の所蔵フィルムを調査していた。そして今年の4月、
ついに博物館の調査員がフィルムを発見したというものだ。
その後6月に博物館は同作の著作権を管理するドイツのFW
ムルナウ財団に鑑定を依頼、このフィルムが失われた20分を
含むものと確認された。
 なお研究者の中には、「まだ5分ほど足りない」という意
見もあるようだが、フィルムにはサブのキャラクターを掘り
下げるようなシーンもあり、何よりラングの演出のリズムが
はっきりと刻まれているとのことで、これを完全版と言って
かまわないもののようだ。
 現在フィルムは、博物館を管理するブエノスアイレス市当
局の意向で、博物館からの持ち出しが禁じられており、今後
の取り扱いについては、ムルナウ財団とブエノスアイレス市
が話し合うとなっているが、この作品はすでにユニセフが、
「万人に供すべき世界遺産」として認めているものでもある
し、かなりの擦り傷などもあるとされるフィルムは、一刻も
早くリストアして、僕らにも観せてもらいたいものだ。
 それにしてもこんなことが起こるとは、全く夢のような話
だ。
        *         *
 以下は、製作ニュースを紹介しよう。
 最初はちょっと面白そうな新作の話題で、コロムビアから
“Mythological Veterinarian”というコメディ作品の計画
が発表された。
 物語は、現代の獣医が世界の神秘的な生物を監視している
秘密結社に招かれるというもの。映画会社の発表はここまで
だが、多分、風邪を引いたり翼が傷ついたりしたドラゴンや
キメラの治療を行うことになるのだろうというのがファンサ
イトの予想だ。もちろんそんな単純な話ではないと思うが…
 脚本は、アンドリュー・カーツマンという脚本家のオリジ
ナルで、この脚本家は、2003年7月1日付の第42回で紹介し
たロブ・ミンコフ監督によるテレビアニメシリーズの映画化
“Mr.Peabody & Sherman”や、ジム・キャリーの製作、主演
によりユニヴァーサルで企画中の“Sober Buddies”なども
手掛けている。因にカーツマンは、1982−85年当時のテレビ
『サタデイ・ナイト・ライヴ』のライターで、その頃の日本
公開作では、1989年にジーン・ワイルダー脚本、主演、リチ
ャード・プライヤー共演の『見ざる聞かざる目撃者』に参加
の記録があるだけだが、最近になって上記以外の計画も複数
発表されるなど、活動が活発になっている。
 神秘生物の獣医というと、今なら『ハリー・ポッター』の
ハグリットが思い浮かぶところだが、コメディ作品でこの設
定というのもいろいろな展開が考えられそうだ。後は監督と
主演に誰が起用されるか、主演は『エース・ベンチュラ』の
ジム・キャリーというのも面白そうだが。
        *         *
 お次は競作の話題で、サー・コナン・ドイルが創案した名
探偵シャーロック・ホームズの冒険の映画化が、コロムビア
とワーナーで計画されている。
 まず、コロムビアの計画はコメディで、『スウィーニー・
トッド』のサッシャ・バロン・コーエンがホームズを演じ、
『俺たちダンクシューター』のウィル・フェレルがワトスン
を演じるというもの。因にこの2人は、2006年に全米で大ヒ
ットを記録した“Talladega Nights: The Ballad of Ricky
Bobby”に、ライヴァルレーサー役で出演して以来の再共演
となるものだ。
 題名は未定で、具体的な内容もまだ発表されていないが、
脚本は、今年11月7日に全米公開予定のアニメーション続編
“Madagascar: Escape 2 Africa”も手掛けているイーサン
・コーエンが担当。彼は、今夏公開されるベン・スティラー
監督、主演の戦争アクション・コメディ“Tropic Thunder”
にも参加しているなど評価が高い。なお発表では、ドイルの
キャラクターにインスパイアされた…となっているが、この
顔ぶれではかなり飛んだものになりそうだ。
 撮影は来年の春以降の予定になっている。
        *         *
 一方、ワーナーの計画は、昨年4月1日付第132回で紹介
したライオネル・ウィグラム製作の“Sherlock Holmes”が
進行しているものだが、この計画は、前回の報告からかなり
変更されていて、まず監督には、今年3月30日付で紹介した
『リボルバー』のガイ・リッチーが参加。そして主演には、
『アイアンマン』を大ヒットさせたロバート・ダウニーJr.
のホームズ役が発表されている。
 また脚本も、2001年マイクル・ダグラス主演のサスペンス
作品『サウンド・オブ・サイレンス』などを手掛けたアンソ
ニー・ペッカムが最新版を執筆しており、これからリッチー
監督が手直しを加えて、撮影は今年10月に開始の予定となっ
ている。
 こちらはしっかりとドイルの原作に基づくとされているも
ので、そこにリッチー監督ならロンドンには精通していそう
な感じもするところだ。ただし、ホームズの活躍の舞台とな
るヴィクトリア朝のロンドンはどうなのだろうか。とは言え
この顔ぶれなら、ストレートな作品にはなりそうだ。
 なおダウニーJr.の主演作では、昨年10月15日付第145回で
紹介した“The Soloist”が11月21日全米公開の予定になっ
ているものだが、その前に公開される“Tropic Thunder”に
も出演しているようだ。
 ホームズの映画化は、1905年製作の無声映画から200本近
い作品数があるようで、過去にはピーター・クッシングや、
クリストファー・リーなども名探偵を演じている。しかし、
最近はテレビでの活躍が目立つもので、僕自身、映画版では
1985年公開の『ヤング・シャーロック』くらいしか印象には
残っていなかった。それが一気に2本とは、これで映画での
名探偵復活にもなってほしいものだ。
        *         *
 次はコミックブックの映画化で、ワーナーが、イメージ・
シャドウラインから発表されている“Hiding in Time”とい
うシリーズの権利獲得を発表した。
 この作品は、クリストファー・ロングという原作者による
もので、タイム・トラヴェルを利用した高度な目撃者保護プ
ログラムを描いたもの。まさに題名の通りのもののようだ。
ところがその中でトラブルが発生し、助手の1人が暗殺者に
狙われることとなる。その救出のため、政府機関の科学者が
元犯罪者と共にいろいろな歴史的瞬間を巡って問題の解決に
当たるが…という展開になっている。
 そしてこの脚色に、先にフォックスで、10月17日全米公開
予定の“Max Payne”というヴィデオゲームの映画化を担当
しているビュー・トーメの起用が発表された。
 タイム・トラヴェル物は、前回も書いたようにパラドック
スの扱いが難しいが、本作はどうなっているか。原作がある
ということはそれだけしっかりした展開にはなりそうだが、
原作はしっかりしていても、脚本で打ち壊しになってしまう
こともあるので気になるところだ。因に“Max Payne”は、
DEA(麻薬取締局)の捜査員を主人公にしたアクション・
スリラーとのことで、普通のアクション映画のようだ。
        *         *
 続いてはゲームの映画化で、カプコンが2007年にアメリカ
発売し、200万本を売り切ったというゲーム“Lost Planet”
の映画版を、ワーナーとカプコンの共同製作で進めることが
発表された。
 物語は、人類救済のため、氷の惑星でエルギー源の調査に
向かう遠征隊の冒険を描くものとのことで、根本のテーマは
違うが、何となく『ザ・デイ・アフター・トゥモロー』を思
い出させる感じの作品になりそうだ。
 そしてこの脚本に、『Xメン』『スコーピオン・キング』
を手掛け、『300』のザック・スナイダー監督が現在製作
中の“Watchmen”も担当したデイヴィッド・ハイターの起用
が発表されている。また製作は、元マーヴェルの映画製作を
担当していたアヴィ・アラドが行っており、アラドとハイタ
ーは『Xメン』のコンビ復活となっている。このコンビ復活
で、どのようなアクションドラマが作られるか楽しみだ。
 因にハイターは、『Xメン』には俳優としても登場してい
たようだが、さらにゲームの“Metal Gear Solid”には、英
語版スネイク役の声優として第1作からレギュラー出演して
いるとのことで、現在計画が発表されている同ゲームの映画
版の脚本も手掛けている。
 一方、製作者のアラドは、現在はファンタシー映画専門の
シーサイド・エンターテインメントというプロダクションを
主宰しているが、同社では“Ghost in the Shell”の3D実
写版の計画もドリームワークスと進めており、この計画には
スティーヴン・スピルバーグが監督を希望しているとの情報
もあるようだ。
 さらにカプコンでは、“Resident Evil”(バイオハザー
ド)の第4作の計画もソニーと進めているようで、こちらは
製作総指揮のポール・WS・アンダースンが、8月22日に全
米公開されるリメイク版“Death Race”を終えたら、新たな
動きが出てきそうだ。
        *         *
 『バイオハザード』の続編情報が出たところで、シリーズ
物の話題を後2つ紹介しておこう。
 まずは『ナルニア国物語』の第3章“Voyage of the Dawn
Treader”について、撮影スタジオをニュージーランドから
メキシコに移すことが発表されている。
 シリーズの前2作では、ニュージーランド政府の税法上の
優遇処置や、VFXや特殊な小道具を製作するウェタ・ディ
ジタル、ウェタ・ワークショップが同国に所在することもあ
って、映画の撮影も主にニュージーランドで行われていた。
しかし前作『カスピアン王子の角笛』では、一部の撮影がポ
ーランド、スロヴェニア、チェコでも行われて、スタジオ撮
影にはプラハの撮影所も使用された。
 そして今回は、物語の舞台が大洋になるとのことで、さら
に大きなサウンドステージや、水中撮影用のタンクが必要と
され、撮影をメキシコのロザリントと、バッハ・スタジオで
行うとされているものだ。ただし、一部のロケ撮影はオース
トラリアでも行われることになっている。
 因にバッハ・スタジオは、ジェームズ・キャメロン監督が
『タイタニック』の製作のため新規に建設したスタジオで、
その後は『マスター・アンド・コマンダー』などの撮影にも
使用されるなど、海洋物のメッカとも言える感じのスタジオ
だった。しかし最近、主要な出資者だったフォックスが出資
の取り止めを発表、その存続に赤信号が点りかけていた。そ
こに今回の発表ということで、スタジオの存続にも明るいも
のが見えてきそうだ。
 マイクル・アプテッドが新たに監督を務める第3作の撮影
は、来年1月に開始の予定になっている。
        *         *
 もう1本のシリーズは、『スーパーマン』の計画で、昨年
の10月以来ストップしている“Superman: Man of Steel”の
製作準備にちょっと新たな局面が出てきているようだ。
 その情報が出てきたのは、アンジェリーナ・ジョリー、ジ
ェームズ・マカヴォイ、モーガン・フリーマン共演で映画化
されたアメコミ“Wanted”の原作者としても知られるマーク
・ミラーの発言で、彼がアメリカ人のアクション映画監督か
らのアプローチを受け、新規なアイデアを提供したとのこと
だ。因に、“Superman: Man of Steel”の監督には、現在も
ブライアン・シンガーの契約が生きているものだが、シンガ
ーはニューヨークの出身だから、「アメリカ人のアクション
映画監督」ということに問題はない。
 ただしマーク・ミラーは、“Wanted”の他に“Fantastic
Four”や“Avengers”、それに“Spider-Man”など主にマー
ヴェルで活躍している人材で、それがDCの作品に関るとい
うのが、多少引っ掛かるところにはなっている。しかしミラ
ー自身が、『スーパーマン』のファンであることは以前から
広言されていたことのようで、その噂を聞きつけての監督か
らのアプローチだったとのこと。これには監督側が形振り構
わぬという感じにも観えるが、これでうまく行けば万歳とい
うところだろう。
 マーク・ミラーのアイデアで映画化が進むかどうか、結論
はクリスマスごろまでに明らかになるようだ。
        *         *
 シリーズの次はリメイクで、1984年にジョン・ミリウスが
監督した“Red Dawn”(若き勇者たち)のリメイクがMGM
で計画されている。
 このオリジナルについては、2004年1月1日付第54回でも
紹介しているが、突然ソ連の侵攻の始まったアメリカ大陸を
舞台に、その侵攻を逃れて山岳地帯に立て籠った高校生の一
団が、いろいろな作戦を立てて反攻を繰り広げて行くという
お話。ミリウスの原案から、後に『ウォーターワールド』な
どを監督するケヴィン・レイノルズが脚本を執筆していた。
 その物語がリメイクされるものだが、今回は、ジェレミー
・パスモアという人が書いたストーリーから、『ディスター
ビア』のカール・エルスワースが脚本の執筆を契約。また、
監督には、『スパイダーマン3』や『ボーン・アルティメイ
タム』、それに11月7日に全米公開されている007の新作
“Quantum of Solace”などで第2班監督や、スタントコー
ディネーターなどを務めるダン・ブラッドレーの起用が発表
されている。
 それにしても、原題のRedとは共産主義を指していたもの
だが、今の時代にアメリカ侵攻を実現できる共産勢力がある
とも思えないし、その辺をどのように処理するか。多分そこ
にアイデアがあるからリメイクの話も出てきたのだろうが、
ちょっと興味を引かれるところだ。逆に、完全に架空の話と
して描くことは可能だが、いずれにしても、戦争ごっこのよ
うな作品では許されないもので、それなりに現実味のある物
語が要求される。
 正直なところは、オリジナルの物語は右翼思想の一辺倒で
かなり辟易したが、出演者には、パトリック・スウェイズ、
C・トーマス・ハウェル、リー・トムプスン、チャーリー・
シーンら見事な若手が揃っていたもので、今回のリメイクで
もその辺には期待したいものだ。
        *         *
 後は短いニュースをまとめておこう。
 まずは続けてMGMの話題で、ウィノナ・ライダーが出演
した『エイリアン4』などの脚本家で、『恋するヴァンパイ
ア』などのテレビシリーズの製作者としても知られるジョス
・ウェドンが、“Cabin in the Wood”と題したスリラー作
品の映画化について同社と契約した。この作品は、ウェドン
と、彼とは『ヴァンパイア』以来のパートナーであるドリュ
ー・ゴッダードが共同で脚本を執筆したもので、ゴッダード
はこの作品で監督デビューも果たすことになっている。因に
ゴッダードは、『クローバーフィールド』の脚本を手掛けた
人でもある。ただし本作の内容は明らかにされていないが、
ジャンル分けでは、コメディ、ファンタシー、ホラーとなっ
ているもので、期待は持てそうだ。
 お次は『The Eye』のハリウッドリメイクなどを手掛ける
ヴァーティゴ・エンターテインメントが、エコホラーと称す
る作品を計画している。作品の題名は“The Colony”という
もので、脚本は、ステイシー・タイトルとジョナサン・ペナ
ーという夫婦コンビが執筆したもの。この内、妻のタイトル
は2007年に“Hood of Horror”という作品の監督もしている
ようだ。夫のペナーは同作品に出演している。この作品も、
内容などは一切公表されていないものだが、前作は一応ホラ
ー・コメディのようなので、その線からは興味は引かれると
ころだ。
 最後は、ちょっと…な情報で、『エイリアン』シリーズの
続編について、シガニー・ウィーヴァーが主演を希望してい
るとのことだ。彼女は今年60歳になるそうだが、彼女自身は
ソフィア・ローレンを目標に頑張っているとのことで、その
ウィーヴァーが“Alien 5”について良いアイデアを思いつ
いたとのこと。さらに、そのアイデアを第1作を監督したリ
ドリー・スコットに話したところ、監督も興味を示したとの
ことだ。もしかすると第1作のコンビによる続編が作られる
かも知れないものだ。因に『エイリアン4』は1997年の製作
で、今から実現しても10年以上の間が開くことになるが、最
近は『ランボー』『ロッキー』『インディ・ジョーンズ』な
ど、間隔の開いた続編も多く登場しており、その中では短い
方ということにもなる。後は製作会社の20世紀フォックスが
OK出すかどうかと言うことになるが、果たしてそのOKは
出されるのだろうか。



2008年07月13日(日) 真木栗の穴、アメリカばんざい、ダークナイト、ボーダータウン、マルタのやさしい刺繍、ハンコック、ブロードウェイ♪…、ブタがいた教室

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『真木栗の穴』
山本亜紀子原作「穴」(角川ホラー文庫刊)の映画化。
安アパートに1人住まい作家が、ふと隣部屋が覗ける壁の穴
を発見する。そしてその穴をテーマに、依頼された官能小説
を書き始め、それは好評を呼んで行く。ところが徐々に現実
と妄想との区別が付かなくなって…
鎌倉の釈迦堂切通し。そんな、厭が上にも神秘的な雰囲気を
見事に捉えたのは、三谷幸喜作品などでも知られる高間賢治
カメラマン。日本映画でこのようなスタッフにまで目が向く
ことは滅多にないが、この作品は、その風景からまず魅了さ
れてしまった。
物語は原作もある作品だから、しっかりしているものだが、
最初は見るからに現代的なホラーの作りから、徐々に古典的
な怪談に雰囲気が変わって行く。その辺りの計算された絵作
りにも納得させられたものだ。
脚本と監督は、『自転車とハイヒール』で2001年PFFアワ
ードに入選している深川栄洋。実はこの作品は、当時ぴあの
社内試写室で観たものだが、独自の雰囲気と評価された会話
劇が、僕にはちょっとピンと来なかった記憶がある。
しかし今回は、会話よりもそこに流れる情感のようなものが
巧みに感じられ、語るより見せる映画として成功しているよ
うに思われた。特に、日本映画ではとかく浮きがちなユーモ
ラスなシーンも丁寧に演出されて、気持ちがよかった。
出演は、西島秀俊、栗田麗、木下あゆ美。特に西島は、コミ
カルなシーンから恐怖シーンまで存分に演じているし、栗田
の存在感、木下の初々しさも良い感じだった。他には、キム
ラ緑子、北村有起哉、尾上寛之、田中哲司、松金よね子、利
重剛らが共演。
最近流行りの殺伐としたホラーとは一味違う怪談話。しかも
映像的には官能的なシーンもしっかりと描いて、かなり大人
の雰囲気の作品とも言えそうだが、監督が1976年生まれとの
ことで、その若々しさも良い意味で現れていた感じがした。
公開は10月の予定になっており、物語の背景は夏場の作品で
はあるが、秋が深まってからじっくり観るのも良いように思
えた。

『アメリカばんざい』
2005年に駐日アメリカ基地の矛盾を描いたドキュメンタリー
作品『Marines Go Home』を発表した藤本幸久監督が、アメ
リカ本国での戦争の現状を捉えた作品。
ヴェトナム戦争の時にはあれだけの反戦運動が巻き起こった
アメリカで、現在行われているイラクを含む中東戦争に対す
る反戦運動は、あまり大きな社会の動きとしては報道されて
いないような感じがする。
実はこの映画の最後では、アメリカ国内で反戦デモの映像な
ども登場するのだが、現実には行われていても、それが日本
などではほとんど報道されていないようだ。
もちろんそれは、1970年代に起きたほとんど暴動まがいのデ
モに比べればおとなしく行進するだけで、それではニュース
ヴァリューもないのかもしれない。しかし、それにしてもア
メリカ国内では反戦運動が起きていないかのような印象を持
つのは、無関心のせいだけでもないような感じだ。
その一方でハリウッドでは、2月に紹介した『告発のとき』
のような見事な反戦映画も作られているのだが、それでも世
論が動き出さないのは、何かが巧みに仕組まれている感じも
してくるものだ。
そしてこの映画では、戦争の矛盾、特にはいろいろな甘言で
若者を戦場に送り出していながら、その後のPTSDやホー
ムレスの急増にもなんら対策を講じようとしないアメリカの
現状が描かれる。
しかしそれでも戦場に向かう若者は後を絶たない。その矛盾
についてもこの映画は一応の回答を提示している。それは、
不況と貧困が若者たちに兵役以外の道を閉ざしているという
結論だ。
実際、兵役に付く若者の多くは家族を養うための職もなく、
確実に収入の得られる兵役に向かっているのだという。そし
てそこには、訓練中にいろいろな免許が得られるなどの甘言
も弄されるが、得られる免許の多くは時代後れのものばかり
だそうだ。
そこでふと思いついたのだが、最近の世界不況を招いている
急速な石油価格の高騰には、ニューヨーク市場が大きく関っ
ていることは明らかなはずだ。しかしその対策については、
サミットでも責任転嫁以外の有効な施策は打ち出されなかっ
た。
つまりアメリカは、石油の高騰によって中東産油国を潤わせ
ると共に、国内を不況にして若者たちに兵役以外の道を閉ざ
す。しかも、その戦争は9/11の復讐というお題目で続けられ
る。これは見事な自作自演の物語のようだ。
そしてそれには日本も加担している。この不況が続いて日本
でも若者たちがこぞって兵役に向かう日も近そうだ。

『ダークナイト』“The Dark Knight”
2005年公開『バットマン・ビギンズ』の続編。前作からは、
ブルース・ウェイン役のクリスチャン・ベールを始め、マイ
クル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリー
マン、キリアン・マーフィが揃って再登場し、レイチェル・
ドーズ役のみマギー・ギレンホールに交代した。
また、前作では名のみだったジョーカーがヒース・レジャー
の怪演で登場。さらにハーヴェイ・デントもアーロン・エッ
カートの配役で新登場する。
本作の注目は、何と言っても、バットマンの最大の敵ジョー
カーの登場ということになるが、それを演じたレジャーは本
作の撮影後に亡くなったもので、その怪演ぶりは、俳優とし
ての極限を演じているかのように観えてしまう。
ジョーカーと言えば、1989年版のジャック・ニコルスンの演
技も忘れられないものだが、そのとぼけた雰囲気も踏襲しつ
つ、さらに狂気の面を一層鮮やかに描いてみせている。それ
は今回のシリーズのダークなイメージにもピッタリとマッチ
しているものだ。
物語は、前作でバットマンが活躍した後の出来事、バットマ
ンは前作でゴッサ・ムシティの悪を一掃したはずだったが、
そこには新たな強敵が現れる。つまり、世の中に犯罪者は尽
きることが無く、バットマンは永遠の闘いに挑んで行くこと
になるものだ。
一方、ゴッサム・シティは新たな地方検事を迎えることにな
る。正義感に燃える新検事デントはバットマンの行動にも理
解を示し、彼らは街の浄化のためにタッグを組むことになる
が、同時に彼はレイチェルの愛も獲得して行くことになる。
そしてジョーカーは、ゴッサム・シティのダークサイドを巧
妙に操り、徐々にその足場を固めて行く。そこには、アジア
からの悪の組織の脅威も影を落としていた。
もちろん物語の主な舞台はゴッサム・シティだが、新たに香
港の暗黒街も登場して、バットマンの闘いが世界的な規模で
進められて行くことになる。
前作に引き続き、デイヴィッド・S・ゴイヤーの原案から、
クリストファー&ジョナサン・ノーラン兄弟が脚本を執筆、
クリストファーが監督した。
それにしてもレジャーの怪演は見事で、今後のシリーズでは
そのジョーカーを封印しなければならないのはきついところ
だ。因に、次回作にはいよいよロビンの登場も噂されている
ようだ。

『ボーダータウン・報道されない殺人者』“Bordertown”
1994年1月の北米自由貿易協定(NAFTA)発効により、
メキシコのアメリカ国境地帯には、多数の海外企業が製品の
全量アメリカ輸出を前提とした工場を進出させ、特に賃金の
安い若年の女性労働者を搾取している。
そんな状況下で多発していると言われる婦女暴行殺人事件。
しかしその事件は、両国の信頼関係や利益を損なう恐れがあ
ると考えられ、事件そのものが隠蔽され、その報道も妨げら
れていると言う。
その被害者の総数は5000人を超えるとも言われ、先に紹介し
た『ランボー/最後の戦場』の記者会見で、シルヴェスター
・スタローンが「すでに500人以上の女性が拉致されたと見
られる場所がある」と語っていたが、本作は正にそんな現実
を踏まえた作品のようだ。
物語は、その事件の現地レポートを、ジェニファー・ロペス
扮するシカゴの新聞社に勤める女性記者が命じられるところ
から始まる。
彼女はメキシコ出身者で、過去にはそこでスクープをものに
し報道賞を受賞してシカゴにやってきたのだが、その地には
そのスクープを共に追った同僚が、現在も反政府系の新聞社
を運営していた。
そしてその地で取材を開始した女性記者は、偶然生還した被
害者の女性を保護し、事件の真相に迫って行くが…
報道が国家権力によって圧殺されるというのは、いろいろな
条件下でよく語られる物語だが、特に貿易経済が絡むと、事
は個人から国家レヴェルまで多層に渡るから、この事件のよ
うなことも起こりうると思えてくるところだ。
しかも本作に関連しては、製作も担当したロペスが国際アム
ネスティから顕彰も受けたというのだから、これは本物だろ
う。因にこの地域には、日本企業も多数進出しているとのこ
とで、日本も事件に加担しているとも考えられるものだ。
共演は、アントニオ・バンデラス、マーティン・シーン。
また被害者の女性役を、マヤ・ザパタという新進のメキシコ
人女優が演じている。
脚本、監督はグレゴリー・ナヴァ。ナヴァはこの事件を数年
に渡って取材し、その結果をロペスに相談して実現した作品
とのことだ。

『マルタのやさしい刺繍』“Die Herbstzeitlosen”
夫に先立たれた老境の女性が、若い頃からの夢を追求し始め
たことから巻き起こる波紋を描いたスイス映画。
主人公のマルタは80歳、長年連れ添った夫に先立たれ、人生
の支えを失って何もできなくなってしまっている。しかしあ
る切っ掛けで彼女は、結婚によって諦めていた若い頃の夢を
思い出す。それは手造りのランジェリー・ショップを開くこ
とだった。
その夢を思い出したマルタは、若い頃に恋人を追って渡米し
たことが自慢の進歩的なリージや、夫の介護に追われている
が自立も目指しているハンニ、さらに先輩未亡人のフリーダ
らの協力で、夢を実現するための行動を開始するが…
そこはスイスの田舎町の物語、町の牧師であるマルタの息子
や、政治団体のリーダー格のハンニの息子たちは、ランジェ
リー・ショップの開店は町の伝統を壊すと猛反発、いろいろ
な妨害を始める。だがそれはかえってマルタたちの結束を固
めてしまうのだ。
と言う、まあ最近の年配の女性たちの元気さを象徴するよう
な作品だが、これにスイスの伝統的な刺繍、ヨーデル、さら
に大自然の風景なども絡めてローカル色豊かな物語が描かれ
ている。
共同脚本と監督のベティナ・オベルリは、スイス出身1972年
生まれの女性で、長編監督は2作目。以前にはニューヨーク
のスティーヴ・ブシェミの許で彼の監督作品の編集などを手
掛け、スイスに帰国後にテレビ局に勤める傍ら短編映画など
も監督している。
女性の視点が活かされた作品であることは確かだが、多分、
僕らが考える以上に保守的なスイスというお国柄に対しても
多少の皮肉が込められているようにも感じられる。特に、保
守的な男性に対してはいささか厳しいようだ。
出演は、いずれもスイスのベテラン女優たち。中でもマルタ
役を演じたシュテファニー・グラーザーは初舞台が1939年、
「グレート・レディ」とも呼ばれる人気者とのことだが、実
は常に脇役を演じてきて本作が初の主演作品だそうだ。
2006年の本国公開時には、『ダヴィンチ・コード』、『PO
TCデッドマンズ・チェスト』を抜いて興行No.1を記録した
作品となっている。

『ハンコック』“Hancock”
素性は不明、犯罪撲滅に協力してはいるものの、Too Muchな
パワーを持て余し、行く先々でトラブル続出のスーパーヒー
ローを描いた作品。
ウィル・スミス主演の最新作で、アメリカでは主演作が8作
連続となる1億ドル突破の興行を達成している。
何しろ、飛び上がるときは一緒に周囲のものを吹き飛ばし、
着地点では道路の舗装は目茶苦茶、地面に大きな穴を穿って
しまう。さらには、ちょっと指先で払い除けただけの物が、
その飛んだ先でいろいろなものを破壊する。
でもライフルはおろか、もっと大型の銃器の弾丸も平気で跳
ね返してしまう。だから犯罪者にも容赦なく立ち向かって犯
罪抑止の効果は認められているが、警察を始めとする公の組
織には煙たがられ、さらに一般民衆からも敬遠の声が挙がり
始めている。
そんなスーパーヒーローが、とあるPRコンサルタントの絶
体絶命の危機を救ったことから彼の一家との交流が始まり、
彼の指示にしたがって人々の信頼を取り戻すための作戦が開
始されるが…
以前にスティーヴン・キングの『ファイア・スターター』を
読んでいて、道理の判っていない幼児の超能力者という発想
に唸ったことがある。この作品もそれに近いものがあって、
自分の力の使い方もよく判っていない超能力者が、その力を
如何に使うかを学んで行く物語だ。
元々は2002年に“Tonight,He Comes”という題名でスタート
した企画で、当初は少年と堕落したスーパーヒーローの繋が
りを描くとされたものだったが、紆余曲折を経て今回の物語
になったようだ。
でもまあ、上映時間は1時間32分で、すっきりとした分り易
い作品に仕上がっていることは確かだろう。特に子供との関
わりがそれなりに描かれているのは、最初からの企画が生き
ているのだろうし、その他の部分もよく考えて練られた脚本
と言える。
ビルや山が崩れるなどのド派手なシーンは少ないが、多分現
実に起きたらこんなのだろうなと思わせる現実味のある「有
り得ない」シーンが見事に展開されている。その分のカタル
シスは少ないかもしれないが、人間性は豊かな作品だ。
共演は、シャーリーズ・セロン、ジェイスン・ベイトマン、
ジェイ・ヘッド。監督はザ・ロック主演『ランダウン』など
のピーター・バーグ。また、VFXデザインを『スター・ウ
ォーズ』のジョン・ダイクストラが手掛けている。

『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』
                 “Every Little Step”
1975年に初演されたミュージカル『コーラスライン』の製作
に向けマイクル・ベネットが行ったインタヴューの録音と、
2005年の再演に向けたオーディションの記録を中心に描かれ
たドキュメンタリー。
元々このミュージカルは、ダンサーたちへのインタヴューに
基づいて製作されたものと言われており、そのインタヴュー
の録音が今回公開されているのは貴重なものだ。その中には
ベネットの赤裸々な発言なども含まれている。
一方、再演のオーディションでは、コニー役として沖縄出身
の高良結香が選ばれており、実は試写後に彼女が登壇してア
カペラでの歌の披露とミニインタヴューも行われた。因に、
今回の再演の振り付けは初演でコニーを演じたバイヨーク・
リーが担当したものだ。
基本的には、バックステージ物のミュージカルのさらにバッ
クステージを描いた作品ということになるが、本作の場合は
最初のバックステージがそのまま舞台に反映されているもの
で、その部分でもいろいろと興味深いものがあった。
特にバイヨーク・リーは、元々がベネットの学校時代からの
仲間であり、最も深くミュージカルにも関わった人として、
その最初のインタヴューの発言から舞台に至るまでの流れも
興味を引かれるものだった。
そして再演のオーディションでは、コニー役を巡って高良と
ライヴァルとなったエレーンとの友情や、その他のコンペテ
ィターたちの闘いの様子なども描かれるが、全体的には修羅
場を描くよりも、それを暖かく迎えようとするスタッフたち
の姿が描かれている。
中でも、マイクル・ベネット本人が反映されたとも言えるポ
ール役の選考のシーンは圧倒的な迫力で描かれ、それは感動
的なものだった。また、主役でもあるキャシーのオーディシ
ョンには、やはりそれ相応の人が応募しているなど、その辺
にもこのミュージカルの厚みを感じたところだ。
なお映画では、再演のオーディションが進むのに並行して、
徐々に初演の舞台が完成されて行く構成も巧みに描かれてお
り、それぞれの役柄がそれによって掘り下げられて行く構成
も見事なものだった。
それは、『コーラスライン』という作品の来歴のせいもある
のだろうが、普通のバックステージ物のドキュメンタリーと
は違った感じがして、ミュージカルへの興味を一層掻き立て
られるものにもなっていた。
因に、試写後のミニインタヴューによると、コニー役は1年
契約だった高良の後、親友のエレーンに引き継がれたとのこ
とだ。

『ブタがいた教室』
1990年、大阪の小学校で1人の新任教師が始めた実践教育、
「ブタを飼って、飼育した後、食べる」を巡って、生徒たち
が共に悩み討論を続けた姿を描いたドキュメンタリーに基づ
くドラマ作品。
物語は、「ブタを1頭食べてみる」という実践教育に憧れた
新米教師が、6年生の生徒たちと仔ブタを飼い始めることか
ら始まる。それは、ブタを育てて食べるという世間で普通に
行われていることを実践してみようという考えだったが…
生徒たちは自ら校庭の隅にブタ小屋を作ってしまい、さらに
仔ブタをPちゃんと名付けてペット化してしまう。この時点
で、教師の実践教育の目論見は崩れ、その結果は、最後にペ
ットを殺すことができるかという問題にすり替ってしまう。
はっきり言ってしまえば、この教師はこの時点で自分の間違
えに気付くべきだったし、それはもはや実践教育にはなりえ
なかった。しかしその教育は、子供たちの討論という別の側
面を持つことになる。
今回の映画化では、生徒役の子供たちには台詞の書かれてい
ない台本を渡して、実際に討論をさせてそこから物語を再構
成して行ったのだそうだ。そのやり方が演技を超えた子供た
ちの姿を描き出したのは確かだろうし、それがこの映画の見
所にもなっている。
それはこの映画の制作者たちが、ちゃんとこの物語の本質に
気付いていたことにも寄るのだろう。この物語は、ペットの
ブタを食べるかどうかではなく、子供たちが真剣に討論した
ことを描いているものだ。
映画の結末は実話を変えることはできないものだ。ただし、
本作はそこに重きを置いていない。多分、作劇上ここに山場
を持ってくる誘惑は大きかったはずだが、敢えてそれをして
いないことにも、この映画の制作者たちの見識を感じた。
それにしても、ブタがリノリュームの滑る床をよたよたと歩
く姿は可愛いものだし、子供たちとサッカーをしたり、鼻で
扉をこじ開けるといった姿は見事な演出となっている。この
演出を成し遂げたスタッフにも拍手を送りたいものだ。
出演は、新米教師役に妻夫木聡。他に原田美枝子、大杉漣、
田畑智子らが共演。監督は、『パコダテ人』などの前田哲。
脚本は小林弘利が担当している。



2008年07月06日(日) 胡蝶の夢、オンリーピック、フレフレ少女、ゲット・スマート、フェルメールを探して、三本木農業高校馬術部、ハルク、攻殻機動隊

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『コッポラの胡蝶の夢』“Youth Without Youth”
ルーマニア出身の宗教学者兼作家ミルチャ・エリアーデが、
晩年1976年に執筆した小説「若さなき若さ」を、フランシス
・フォード・コッポラの脚本監督製作で映画化した作品。
コッポラによる監督作品では、1997年『レインメーカー』以
来となる。因にその間には、2000年の『スーパーンヴァ』を
監督したともされているが、今回のプレス資料の監督インタ
ヴューでも2005年撮影の本作を8年振りとしているものだ。
物語の発端は、1938年のルーマニア。戦争の影も見える街で
1人の老人が落雷に撃たれる。その老人の名前はドミニク・
マティ。彼は愛する女性とも別れて自分の言語学研究を全う
しようとしたが、その研究も未完のままその地に終焉の場所
を求めていたのだ。
ところが病院に収容されたマティは驚異的な回復力を示し、
数週間後には健康体を取り戻す。しかも彼の身体は30〜40歳
にしか見えないものになっていた。その状況がヒトラーの耳
に届かぬはずはなく、彼の周囲にはゲシュタポの影が動き出
す。
しかしその戦争も終戦し、彼はスイスの山間で1人の女性と
巡り会う。彼女は、彼が以前に別れた恋人と瓜二つだった。
そして彼女も落雷に遭い、記憶を喪失した彼女は言語学者の
彼にしか判らない言葉を喋り出す。その彼女の言葉に導かれ
るままインドへと旅立った彼らは…
これに、彼にしか見えない分身の自分なども登場して、かな
りファンタスティックな物語が展開される。それに、登場人
物たちが喋る言葉も、各国語から古代語、架空の言語まであ
るという作品だ。
まあ正直に言って、SFファンの僕には純粋にファンタシー
として楽しめる作品だったが、そこにいろいろ理屈を言い始
めるとかなり七面倒くさくなりそうだ。でもそんなことは考
えなくても面白い作品になっている。
コッポラは、一般的には『ゴッドファーザー』や『地獄の黙
示録』で知られるが、元々はBムーヴィの雄ロジャー・コー
マンの許でのソ連映画『大宇宙基地』の改作や、『フィニア
ンの虹』『ワン・フロム・ザ・ハート』『キャプテンEO』
『ペギー・スーの結婚』、さらにブラム・ストーカーの原作
に忠実な1992年版『ドラキュラ』などファンタシーへの志向
も強く、その線でもこの作品に何の疑問も生じない。
また劇中は、古代の言語や架空の言語など、ある種の知的な
遊びに取れる要素も多く、ロケーション撮影された風景も美
しい。海外での評価は、賛否両論多いようだが、あまり面倒
なことは考えず、普通にファンタシーとして楽しみたい。
出演は、ティム・ロス、ブルーノ・ガンツ、それに、ガンツ
とは2004年の『ヒトラー』でも共演のルーマニア出身の女優
アレクサンドラ・マリア・ララが3役を好演している。

『東京オンリーピック(ハイライト版)』
2002年に『スキージャンプ・ラージヒル・ペア』を発表して
話題を呼んだ映像作家の真島理一郎が、自分が好きだという
映像作家たちに声を掛け、海外も含めた15組の作家によって
制作された架空スポーツの映像祭典。
その劇場版は、海外3作家の作品を除く10競技及びその他の
作品による2時間27分で構成される。因に、題名のOnlyPic
とはOnly Picturesの略で、今夏北京で行われるスポーツの
祭典とは関係ない。またPictureをPicと略すのは海外でも普
通に行われているものだ。
という作品だが、全体的には玉石混淆と言う感じで、特に、
『スキージャンプ・ラージヒル・ペア』で感じた新鮮な発想
のようなものが、あまり感じられないのは残念だった。
そんな中で、僕が多少なり気に入った作品を挙げておくと、
まずは、水野貴信監督「女子ヘルマラソン」と児玉徹郎監督
「ホームアスロン」。どちらも題名からパロディになってい
るものだが、発想自体は在来りでも映像や演出が面白かった
ものだ。
この他、筧昌也監督「ブランカー」と中尾浩之監督「巨大相
撲」も観られたが、前者のオチは先に判ってしまう。ここに
は『スペース・カウボーイ』くらいの壮大さが欲しかった。
やってもパクリと言われたかも知れないが。
一方、後者のオチは、技術的にも辻褄が合わせられるように
も思えたもので、もう少しその辺を詳細に描いたら、それは
それでドラマにもなったように思えた。それは多分、本作の
テーマに沿うことにもなったはずのものだ。
その他の作品は、既存の競技の道具立てだけ変えたようなも
のが多く。特に、それが暴力的に終わるという発想は、あま
り好ましいものには思えなかった。
さらに、ドーピングや戦争兵器をあからさまに出して来るの
は不快感が募るもので、それぞれ映像の直後で、ゲスト出演
者の中川翔子が「絶対反対です」と発言してはいるものの、
作家の基本姿勢がそれを認めていることは明らかなものとな
っている。また、それを「お笑いだから」と言ってごまかす
ような態度も、あまり良い感じはしなかった。


『フレフレ少女』
新垣結衣の主演で、高校の応援団を舞台にした青春ドラマ。
新垣は前作『恋空』の大ヒットで、かなり信用の置ける若手
女優とされているようだが、その新作にはちょっと変わった
題材を選んできたものだ。
主人公は読書好きで、小説に描かれたような恋愛に憧れる女
子高生。ところがある日のこと、彼女の脳天を暴投のボール
が直撃。失神した彼女が目を覚ますと、そこには野球部の新
人エースがすまなそうに立っていた。
その姿に突然の恋心が芽生えた主人公だったが、新人エース
には恋のライヴァルも多い。そのため折角書いたラヴレター
も渡せない彼女は、一念発起、部員1名で廃部寸前となって
いた応援団に入団。彼を近くから応援しようとするが…
彼女の努力で団員も揃い廃部を免れた応援団は、早速野球部
の練習試合から応援を開始。ところが、元々が不純な気持ち
の応援ではろくなことになるはずはなく、相手チームの応援
団はおろか、母校の野球部からも二度と応援に来ないでくれ
と言われてしまう。
しかし、彼女たちを鍛えるべく応援団のOBたちが立ち上が
り、ゴールデンウィークの特別合宿が開始される。だがそれ
は地獄の特訓…。しかもその時、彼女は自分が応援すべき目
標を見失い始めていた。

いろいろなことに思い悩むのが青春なら、この作品は見事に
その青春の悩みを描いているものだ。その悩みは、大人の目
から観れば他愛ないものかもしれないが、でもそんなことに
悩むのが青春というものだろう。
と言うことで、本当なら大の大人が感動するような作品では
ないはずなのだが、実は自分がJ2のサッカーチームを応援
していたりすると、正にこの主人公と同じ気持ちの自分に気
づくことがあり、何故か突然に胸に迫ってきた作品だった。
脚本は、『忍たま乱太郎』などの橋本裕志、監督は『となり
町戦争』などの渡辺謙作。
スポーツに限らず何かを応援している人には、いろいろな意
味で自分のしていることへの意義を感じさせてくれる作品。
そんな気持ちを素直に楽しむことのできる作品だ。

『ゲット・スマート』“Get Smart”
1960年代後半に5年間に渡って放送され、日本でも人気のあ
ったTVシリーズ『それ行けスマート』の映画版リメイク。
オリジナルでドン・アダムスが演じたエージェント86号こと
マックスウェル・スマートを、『奥様は魔女』のスティーヴ
・カレルが演じ、エージェント99号には『プリティ・プリン
セス』のアン・ハサウェーが扮している。
また、チーフ役にはアラン・アーキン。この他、ドウェイン
“ザ・ロック”ジョンスンやテレンス・スタンプ、ジェーム
ズ・カーン、ビル・マーレイ、TV『ヒーローズ』で人気の
日本人俳優マシ・オカらが共演。
因に、マシ・オカはブルースという特殊装備担当者の役で登
場するが、その相棒はロイドという名前で、この2人の名前
は007シリーズのQことジェフリー・ブースロイド少佐の
もじりのようだ。さらにこの2人が活躍するスピンオフ作品
も製作されている。
物語は、スマートがまだ情報分析担当官で、彼はエージェン
トを目指して昇進試験を受け続けているが、なかなか昇進が
認められないところから始まる。しかしある事情から、つい
にエージェントとしての出動命令が出されるが…
つまり、オリジナルでも妙に頭でっかちでエージェントとし
ては問題のあるスマートが、何故エージェントになれたかと
いうところから物語が始まるもので、この辺は当時からのフ
ァンとしても納得のストーリー展開となっている。
そして映画では、いまだに続くケイオス(なお字幕では“カ
オス”となっており、これは確かにカオス理論などのKhosか
ら来たものではあるが、原語もケイオスと発音しているし、
やはり昔から親しんでいる呼び名にして欲しいものだ)との
闘いが描かれる。
このケイオスとの闘いが、もちろんパロディ一杯に展開され
るものだが、実はこれが結構まともで、スパイ映画としても
ちゃんと観られるようになっているのには感心した。
これは、最近製作された『アイ・スパイ』などが無理にコメ
ディタッチにして失敗したことへの反省もあるのかも知れな
いが、元々がコメディの本作では、見事にそれがはまってい
る感じにもなっている。
そして登場するパロディやギャグには、見事にオリジナルシ
リーズの味を出しているものもあり、さらに007を元ネタ
にしたような大掛かりなアクションのパロディもあって、こ
れは全編楽しめるものになっていた。しかもそれらが、おそ
らく元ネタを知らなくても笑えるように作られているのは大
したものだ。
アメリカ製のコメディが日本でなかなかヒットしない理由の
1つには、日米の文化の違いもあるものだが、本作はそれを
超えて笑える作品になっている。何とかヒットさせてスピン
オフの“Get Smart's Bruce and Lloyd Out of Control”も
公開してほしいものだ。

『消えたフェルメールを探して』“Stolen”
1990年春。ボストンのイザベラ・ステュワート・ガードナー
美術館から評価総額5億ドルとされる美術品が盗まれた。そ
の中には、レンブラントが唯一海を描いた『ガリラヤの海の
嵐』や、総作品が35点しか確認されていないフェルメールの
『合奏』などが含まれていた。
ガードナー美術館では、その発見に500万ドルの懸賞金を出
しているが、未だにその1点も発見されていない。そして、
創設者から「どの作品も置き換えたり動かしたりしてはいけ
ない」と遺言された美術館の壁には、現在も空の額だけが掛
けられている。
本作はそれらの美術品の捜索を巡るドキュメンタリー。本作
では、その捜索に従事した絵画探偵ハロルド・スミスの仕事
ぶりを中心に、美術館の来歴やフェルメールの絵画そのもの
の鑑賞の仕方などが解説される。
本作の監督レベッカ・ドレイファスは、子供の頃にフェルメ
ールの『合奏』に魅せられ、盗難事件には激しく心を痛めた
そうだ。それが今回のドキュメンタリー製作の動機となって
いるもので、探偵スミスの協力も得て見事な作品を作り上げ
ている。
その内容は、美術品盗難事件の深層に迫るものもあり、また
2004年2月14日付で紹介した映画『真珠の耳飾りの少女』の
原作者トレイシー・シュヴァリエが、フェルメールへの思い
を語るインタヴューなども挿入されて、多岐に渡る関心が描
かれている。
一方、美術館の協力で、開設に至るイザベラとヨーロッパの
エージェントとの往復書簡が開示される。そこでは、当時の
ボストン社交界の華でもあったイザベラが、この美術館に賭
けた執念のようなものも感じられ、その点でも興味深いもの
があった。
なおこのイザベラの書簡の朗読を、最近ではグウィネス・パ
ルトローのお母さんと言った方が通りの良い、1976年『フュ
ーチャーワールド』や、2000年『ミート・ザ・ペアレンツ』
などの女優ブライス・ダナーが担当しているのも懐かしいと
ころだ。
因に、美術品盗難事件の多くは金銭の要求などで解決される
ようだが、本件の場合は何故かそれがうまく行っていない。
実際、本作の中で捜索はかなり犯人に近いところまで迫って
いるようにも見えるのだが、そこから先がいろいろ政治的な
ところも匂わせている感じもあって、これは相当に特殊で難
しいケースのようだ。

『三本木農業高校、馬術部』
1999年春から2001年秋に掛けて、実在する青森県立三本木農
業高校であった実話に基づく物語。
全日本学生大会でも優勝経験のある競技馬が難病により失明
寸前となってその農業高校に引き取られる。その問題馬の世
話係になった1年生の女子生徒が、仔馬の出産などの難事を
経て、最後は「私、目になる」と宣言し競技に出場する。

一度は「女王」とまで呼ばれた名馬が目を患う。それは馬に
とっても過酷な試練であり、気性が荒くなってしまうのは当
然なのかも知れない。そんな気難しい馬と対峙しながら少女
は成長して行く。これは正に青春映画と呼べそうな物語だ。
この物語を、『出口のない海』『夕凪の街 桜の国』の佐々
部清監督が映画化した。監督にとっては、特攻、原爆と重い
テーマが続いたので、少し気楽な作品ということだったよう
だが、本作は春、夏、冬と季節に合せて1年間に渡る撮影で
完成されたものだ。
また本作の乗馬、飛越などのシーンは全て若手の俳優たちが
自身で演じており、その特訓は実際の三本木高校馬術部顧問
の先生の指導のもと行われている。ただしその特訓も相当に
激しく、撮影は満身創痍で行われたとも紹介されていた。
この他、卒業式のシーンなども含め、三本木農業高校の全面
的な協力のもと撮影された作品とのことで、その臨場感とい
うか、画面に漂う何とは無しの落ち着きのようなものも、本
作の雰囲気を高めている感じがするものだ。
出演は、主人公を本作がデビュー作の長渕文音が務め、その
周囲を柳葉敏郎、黒谷友香、松方弘樹らが固める。特にこの
4人が実際に行っている出産シーンは見事だった。この他に
は奥村知史、森田彩香、西原亜希、小林裕吉らが共演。
さらに、主人公が競技馬を世話しているシーンには、実話の
名馬タカラコスモスの姿も登場しているそうだ。
ただし、実話で主人公が出場したのは馬場馬術で、映画のよ
うな障害飛越ではない。実際問題として、盲目の馬といくら
人馬一体になっても飛越は無理というもので、その辺はこの
映画の嘘ということになる。しかし、日本の観客に馬場馬術
を見せても理解は困難であろうし、この程度の嘘は許容範囲
かな…?というところだ。

『インクレディブル・ハルク』“The Incredible Hulk”
『アイアンマン』に続くマーヴェルコミックスの独自製作に
よる人気コミックスの映画化第2弾。アメリカでは1977年か
ら82年まで放送され、日本でも79−80年に放送された人気テ
レビシリーズの映画版リメイク。
因にこの作品は、2003年7月2日付で紹介した『ハルク』の
リメイクでもある。ジョン・ウー監督の前作については、僕
はかなり評価したつもりだったが、興行的に期待通りとは行
かなかったようで、その失敗(?)を踏まえての今回の再映画
化となった作品だ。
その前作と本作との最大の相違点は、前作でニック・ノルテ
ィが演じた主人公の父親が出てこないことだろう。その結果
ハルク誕生の物語は簡略化され、単純に実験中の事故という
ことになっているが、その分、本作の物語が判り易くなって
いることは確かだ。
ただし、エリック・バナ、ジェニファー・コネリーが共演し
た前作がかなり哀愁を込めた作品だったのに対して、本作、
エドワード・ノートン、リヴ・タイラー共演のリメイクは、
多少ドライな感じもする。
特に前作で、軍隊に包囲されたハルクをベティが抱きかかえ
るようにして怒りを沈め、巨大化したハルク身体が縮んで行
くシーンは、名シーンとして印象に残っていただけに、それ
が見られなかったのは、ちょっと残念な気もした。
しかし本作では、リオデジャネイロのファヴェーラを舞台に
したアクションシーンなどが見事に描かれ、特にアクション
コミックスの映画化としては、充分に機能した作品になって
いる。
監督は、フランスでリュック・ベッソン製作・脚本の『トラ
ンスポーター』シリーズや、ジェット・リー、モーガン・フ
リーマン共演の『ダニー・ザ・ドッグ』などを手掛けてきた
ルイ・レテリエ。脚本は、『X−MEN2』などのザック・
ペンが手掛けている。
なお、本作のエピローグにはちょっとした仕掛けがあるが、
この仕掛けが、実はアメリカでは先に公開された『アイアン
マン』と繋がっていて、そちらも見ると納得できるようにな
っている。日本ではこれら公開順が逆になっているのがちょ
っと残念だ。

『攻殻機動隊2.0』
1995年に公開の押井守監督によるアニメーションが、CGI
シーンの追加など全編リニューアルして再公開されることに
なった。
オリジナルは、1999年のウォシャウスキー兄弟作品『マトリ
ックス』に多大な影響を与えた作品として有名だが、1995年
の日本公開は興行成績も上がらず僕も見逃していた。しかし
今回その映像を見ていると、確かに『マトリックス』への影
響の大きさを確認できる。
その他にも、2006年公開『スキャナー・ダークリー』の映像
なども、ほとんどそのまま流用されている感じで、その映像
の目新しさは、オリジナルの公開から10年以上たった今でも
充分に通用するものだ。
物語は、士郎正宗のコミックスからの映画化だが、高度に情
報化された未来の日本を舞台に、サイボーグ化された主人公
たちが、情報操作によるコンピュータ犯罪やサイバーテロに
立ち向かって行くというもの。
そこに「人形使い」と呼ばれるサイバーテロリストが現れ、
それを現実とサイバー空間の両面から追い詰めて行く様子が
描かれる。そしてそこには、捜査陣内での確執なども描かれ
ている。
それにしても、今の社会状況の中でこの作品を見ていると、
かなり現実が近付いてきているという感じもするもので、こ
れを12年も前に見せられても、観客が戸惑うくらいのものだ
ったとも言える。
それくらいに先進的な内容を、さらに先進的な映像で描いて
いるものだが、しかもそれが12年経ってもほとんど色褪せて
いないというのは、この急速な時代の流れの中では驚異とも
言えるくらいのものだ。
また今回のリニューアルに際しては、台詞、音楽、SEなど
の音響も再収録、リミックスされ、特に川井憲次の音楽が大
編成で再録音されているのも聞き物になっている。
公開は、押井監督の新作『スカイ・クロラ』の公開に先駆け
全国5大都市(東京、札幌、名古屋、大阪、福岡)のみで行
われるものだが、できたらその後にでも全国に巡業してもら
いたいものだ。



2008年07月01日(火) 第162回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 気持ちも新たにして、今回はこんな話題から。
 6月24日、アメリカのSF/ファンタシー&ホラー・アカ
デミー選出によるサターン賞の発表があった。その映画部門
だけ紹介しておくと、
 作品賞は、SF『クローバーフィールド』、ファンタシー
『魔法にかけられて』、ホラー『スウィーニー・トッド』、
アクション/アドヴェンチャー『300』、アニメーション
『レミーのおいしいレストラン』、海外作品『イースタン・
プロミス』となっている。
 演技賞は、主演男優:ウィル・スミス(アイ・アム・レジ
ェンド)、主演女優:エイミー・アダムス(魔法に…)、助
演男優:ハヴィエル・バルデム(ノー・カントリー)、助演
女優:マーシャ・ゲイ・ハーデン(ミスト)、若年俳優:フ
レディ・ハイモア(奇跡のシンフォニー)
 また、監督賞:ザック・スナイダー(300)、脚本賞:
ブラッド・バード(レミー…)、音楽賞:アラン・メンケン
(魔法に…)
 さらに、衣裳賞は『スウィーニー・トッド』、メイクアッ
プ賞は『POTC:ワールド・エンド』、特殊効果賞は『ト
ランスフォーマー』がそれぞれ受賞した。
 まあ僕としては、SF作品賞などには、多少異議も挟みた
くなるが、概ねこんなものだろう。
 因に、僕は1970年代にこの団体に一時登録したが、当時は
投票用紙が送られてきても日本で観られた作品はほとんどな
く、試写会の案内も会場がロサンゼルスでは観に行くことも
できず、結局登録の更新をしなくなってしまったものだ。で
も今回の発表リストを観ても、ほぼ全作品が日本公開されて
いるもので、隔世の感という言葉はこういうときに使うのだ
と実感した。
        *         *
 もう一つ選出関係の話題で、映画研究団体American Film
Institute(AFI)の選出による10のジャンルのアメリカ
映画トップ10が発表されている。
 その10ジャンルの内、SF部門は、
1位:2001年宇宙の旅
2位:スター・ウォーズ:エピソードIV
3位:E.T.
4位:時計仕掛けのオレンジ
5位:地球が静止する日
6位:ブレード・ランナー
7位:エイリアン
8位:T2
9位:盗まれた町
10位:バック・トゥ・ザ・フューチャー
ということで、『禁断の惑星』やジョージ・パルが無視され
たのは多少気になるが、今に繋がっている作品ということで
は、こうなるのかも知れない。
 一方、ファンタシー部門は
1位:オズの魔法使い
2位:LOTR/旅の仲間
3位:素晴らしき哉!我が人生
4位:キング・コング
5位:三十四丁目の奇跡
6位:フィールド・オブ・ドリームス
7位:ハーベイ
8位:恋はデジャヴ
9位:バグダッドの盗賊
10位:ビッグ
とのことで、こちらは『ハリー・ポッター』やアメコミ系の
作品が無視されたことに、本国でも疑問の声が上がっている
ようだが、最近の作品にはいろいろ柵があるのかな…という
ところだ。
 因に選出は、2007年12月31日までに公開されたアメリカが
製作/創作の中心となっている英語作品が対象とのことで、
各ジャンル50本ずつ計500本の候補作品の中から、監督、脚
本家、俳優などの映画人と、評論家、研究者など1500人以上
の人たちによって選出されたものだそうだ。
 なお、他のジャンルは第1位だけ紹介しておくと、アニメ
ーション『白雪姫』、ロマンティックコメディ『街の灯』、
西部劇『捜索者』、スポーツ物『レイジング・ブル』、ミス
テリー『めまい』、ギャング物『ゴッドファーザー』、法廷
劇『アラバマ物語』、歴史物『アラビアのロレンス』となっ
ていた。
 因にこの団体も、昔機関誌が出ていた頃は入っていたが、
雑誌の廃刊で脱会したものだ。
        *         *
 お次はイヴェント及び記者会見の報告で、まずは6月29日
に東京ドームで、『スピード・レーサー』のIMAXによる上映
が行われた。
 この会場には、何と縦17.5m×横40mのスクリーンが設置
され、そこにIMAX変換された作品が上映されたものだ。その
迫力は、スタンド席から観ていても相当のものだったが、考
えてみたら、IMAXは70mmフィルムを使っているもので、昔は
都内にも何館も70mmの上映館があったことを思うと、ちょっ
と感慨に耽る気持ちにもなった。もちろんこれほどの巨大ス
クリーンではなかったが、70mmにはその実力があったのだ。
 しかもこの日のスクリーンは、ほぼ1:2.2の縦横比になっ
ているもので、これは基本的な70mmの比率に近いものでもあ
るから、通常のIMAX館での上映よりも70mm映画の上映という
感じがした。まあ、音響はエコーが強くて少々芳しくなかっ
たが、大画面の映像は満足できるものだった。
 という上映会の翌日には、主演のエミール・ハーシュと、
吹き替え担当の赤西仁、上戸彩による記者会見が行われた。
 俳優だけの記者会見では、僕は基本的にあまり質問事項は
ないのだが、ハーシュは9月に『イントゥ・ザ・ワイルド』
も公開されるので、グリーン・スクリーンの前での撮影と、
大自然の中での撮影とどちらが大変か聞いてみた。その答え
は、「自然の中での撮影は大変なことも多いけど、森を観た
り、星空を眺めたり、癒しの効果もある。それに比べるとグ
リーンスクリーンは、精神的なエネルギーを吸い取られるよ
うな感じで苦痛だった。今後は寝室の壁をグリーンに塗るこ
とはできないと思う」というもので、緑色は目に良いなんて
言われるが、過剰になるとそうではなかったようだ。
 因に僕の質問はないが、他の日本アニメが実写化されたら
主演したい作品はあるかという質問に、赤西が「『ワンピー
ス』が好きなので、どんな役でもやりたい」と言っていたの
が面白そうだった。
 以下は、製作ニュースを紹介しよう。
        *         *
 まずはリメイクの計画で、続報がいくつか届いている。
 その最初は、2006年5月15日付の第111回で紹介した“Red
Sonja”の計画で、ヌ・イメージス/ミレニアムで進められ
ているリメイクの製作にロベルト・ロドリゲス、主演ローズ
・マッゴワンの参加が発表された。
 ロバート・E・ハワード原作、マーヴェルコミックスでも
人気を博したこのキャラクターは、1985年にリチャード・フ
ライシャー監督、主演ブリジット・ニールセン、共演アーノ
ルド・シュワルツェネッガーでの映画化がある。今回はその
リメイクとなるものだが、監督には、『レジェンド・オブ・
メキシコ』などの第2班監督を務めたダグラス・アーミオコ
スキーが起用され、デイヴィッド・N・ホワイトの脚本によ
る撮影は10月に開始という計画だ。
 因に、『プラネット・テラーinグラインドハウス』でコラ
ボレートしたロドリゲスとマッゴワンは、2007年10月15日付
第145回で紹介した“Barbarella”のリメイクも狙っている
ものだが、実はマッゴワンの主演ではまだ弱いという意見が
会社側にあって計画が頓挫している。従って今回の計画は、
これを足掛かりに“Barbarella”のリメイクも実現させよう
という意図もあるように感じられ、成功を祈りたいものだ。
        *         *
 お次も、2006年5月15日付第111回などで紹介した“Clash
of the Titans”の計画で、ワーナーで進められているこの
計画に、新たに『インクレディブル・ハルク』でハリウッド
進出を果たしたルイ・レテリエ監督の参加が発表された。
 オリジナルは1981年にレイ・ハリーハウゼンの最後の作品
として公開されたもので、物語は、ゼウスの息子ペルセウス
が、女神アンドロメダの愛を勝ち取るために幾多の試練に立
ち向かって行くというもの。その試練として、天馬ペガサス
の捕獲や蛇の頭髪を持つメデューサとの闘いなどが、人形ア
ニメーションによって映像化されていた。
 そしてこのオリジナルからのリメイクは、9月に全米公開
される『イーグル・アイ』などのジョン・グレンが基本アイ
デアを提出し、『レイダース/失われた聖櫃』などのローレ
ンス・カスダンが脚本を執筆している。
 またこの計画には、共同出資、共同製作として『300』
を手掛けたレジェンダリー・ピクチャーズが参加しており、
前作同様グリーン・スクリーンを駆使した映像化が行われる
ことになるようだ。まあ、ハリーハウゼンの頃も基本的には
ブルー・スクリーンでの撮影だったものだが、今回はさらに
進化したディジタルVFXの成果が観られそうだ。
 公開は2010年の予定になっている。
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 続いては、テレビシリーズからのリメイクで、2007年8月
1日付第140回などで紹介した“The Green Hornet”の映画
版について、製作会社のソニーから公式ロゴマークの発表が
行われた。これで、本作の製作は正式にスケジュールに載っ
たことになるものだそうだ。
 大元は、1936年に放送開始されたラジオドラマで、西部劇
の『ローン・レンジャー』と同じ原作者によって都会を舞台
に創造された物語は52年まで放送された。因に主人公のブレ
ット・レイドは、設定上はローン・レンジャー(ジョン・レ
イド)の遠縁とされていた。また、この放送中の40年と41年
には、連続活劇シリーズも作られている。
 そしてこの原作からのテレビシリーズは、1966年〜67年に
1シーズンだけ製作され、ヴァン・ウィリアムスの主演で、
ブルース・リーが助手カトーを演じたシリーズは、毎回30分
の枠で全26回が放送された。ただし当時は、『バットマン』
などに比べると派手さに欠け、正直1シーズンで終了したシ
リーズではあったが、その後にリーの人気と共に見直されて
行くことになる。
 というシリーズだが、自分的には何故か毎回観ていた記憶
があって、何が魅力だったかはよく覚えていないが、とりあ
えずは今回のリメイクには期待を寄せているものだ。
 その映画化の計画は、かなり以前からユニヴァーサルや、
ミラマックスなどでも進められたが、いろいろな事情で実現
しなかった。それが、昨年4月1日付第132回で紹介したよ
うに、コロムビア傘下のニール・H・モリッツが新たに権利
を獲得して進められることになった。
 この計画では、すでにセス・ローガンの脚本、主演なども
報告されているものだが、今回の報告では2010年6月25日の
全米公開も明記されたようだ。なお脚本は、ローガンがパー
トナーのエヴァン・グリーンと執筆中。その配役にローガン
は、カトー役でチャウ・シンチーの共演を希望しているが、
まだ契約はされていないようだ。
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 もう1本もテレビシリーズからだが、これはちょっと残念
と言うか、映画化ではなくなったもので、2006年8月15日付
第117回で紹介した“The Prisoner”が、6話完結のミニシ
リーズとしてリメイクされることになった。
 オリジナルは、1967年に放送されたイギリス製のアクショ
ンドラマで、物語の発端は元は諜報員だったと思われる男が
ガスで眠らされて拉致され、リゾート風の家で目覚める…と
いうもの。
 そこは、ヴィレッジと呼ばれる場所で、そこで男はNo.6と
呼ばれ、No.2と名告るリーダーから辞職の理由を聞かれるの
だが、男にはその場所が味方のものか、敵方のものかも判ら
ない。従って質問に答えていいかどうかも判らない。そして
シリーズでは、毎回主人公がヴィレッジからの脱出を試みた
り、No.2が奇想天外な懐柔策を展開するなどのドラマが繰り
広げられていた。
 この主人公を、すでに『秘密諜報員ジョン・ドレーク』で
人気のあったパトリック・マッグーハンが演じて、物語は全
17話で完結する仕組みになっていた。また、主演のマッグー
ハンは、原案と共同製作及び一部エピソードの監督も務め、
事実上彼のワンマンシリーズとも言える作品だったようだ。
 というオリジナルからのリメイクだが、今回の計画では、
No.2役をイアン・マッケラン、No.6役を『デジャヴ』などの
ジェームズ・カヴィエゼルという配役で、2人の丁々発止の
対決が行われることになるようだ。本国での放送は2009年の
予定となっている。
 因に、以前の映画化の情報は、『バットマン・ビギンズ』
のクリストファー・ノーランが、『ダーク・ナイト』の後に
撮るという計画だったが、今回の計画との関係は不明。ノー
ランの計画では、『12モンキーズ』の脚本家との契約も発表
されていたが、その後の進展は報告されていなかった。今回
発表は、その『ダーク・ナイト』の公開直前に行われたが、
意図的なタイミングかどうかも判らないものだ。
        *         *
 ここからは続編の話題を紹介しよう。
 まずはちょっと意外な展開で、一昨年7月20日付で紹介し
たポン・ジュノ監督の『グエムル/漢江の怪物』の続編を、
昨年6月20日付で紹介した『クレージー・ストーン』のニイ
・ハオ監督脚本で中国で映画化することが発表された。
 オリジナルは、韓国では観客動員数1200万人を記録する大
ヒットとなったものだが、日本では正直あまり良い成績は残
せなかったようだ。その理由はいろいろ語られているが、僕
自身は怪獣の出自などの設定がちゃんと描き切れていなかっ
たことが不満だったと紹介したものだ。
 という作品が中国では、昨年3月に公開されてNo.1ヒット
を記録したとのことで、今回は物語の舞台を中国に移しての
続編製作となっているものだ。因に、この続編の製作費には
米ドル換算で1200万ドルが予定され、その半額を中国、残り
を香港と韓国の映画会社が負担するとなっている。
 一方、オリジナルの怪獣のVFXは、WETA、オーファ
ネイジなどハリウッド映画も手掛ける工房に発注され、それ
はかなり見事に描かれていたものだが、今回も同じ会社に発
注されるものかどうか、その辺も気になるところだ。
 とは言うものの、何といっても気になるのは物語で、オリ
ジナルでは、韓国と駐留米軍の関係などのかなり政治的な背
景も語られていたものだが、これを政治体制の異なる中国で
どのように語り直すのか、その辺も興味津々となる。撮影は
来年早々に開始され、本国での公開は2009年末の予定とされ
ている。
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 もう1本、続編の話題は、かなり大胆とも言える計画で、
『300』の原作者フランク・ミラーとザック・スナイダー
監督が続編(?)の検討を進めているとのことだ。
 この物語では、オリジナルでジェラルド・バトラーが演じ
たレオニダス王は…なもので、常識的には前日譚かスピンオ
フとなるものだが、製作者たちの発言では続編が作られるこ
とになっているようだ。しかもレオニダス王の物語とのこと
で、果たしてミラーがどのようなアイデアを持ってくるか…
ということになっている。
 因に、同様の問題を抱える続編の計画では、ラッセル・ク
ロウ主演の“Gladiator”と、ウィル・スミス主演の“I Am
Legend”もある訳だが、そんな中でも、“300”の場合は、
ミラーの卓越したアイデアに期待がもたれているものだ。
 この他の続編の計画では、『クローバーフィールド』も噂
が絶えないようだが、監督のマット・リーヴスからは、「特
別なアイデアが浮かばない限りできそうにない」という発言
が出されているそうだ。
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 続いては、タイムトラヴェル物の計画が次々報告されてい
る。
 まずは、2007年1月15日付第115回で紹介した“The Time
Traveler's Wife”に関しては、レイチェル・マクアダムス
のタイトルロールとエリック・バナの共演で、すでに撮影は
終了しており、12月25日の全米公開を目指してポストプロダ
クションが進められている。因に、全米配給はニューライン
だが、日本配給はまだ発表されていないようだ。
 これに続いては、『ウォーク・ザ・ライン』のジェームズ
・マンゴールド監督が、“The Archive”という作品をユニ
ヴァーサルで進めている。この作品については、実は詳しい
内容は報告されていないのだが、『プルーフ・オブ・マイ・
ライフ』のデイヴィッド・オーバーンが執筆したタイムトラ
ヴェル・スリラーという紹介で、この2人の顔合せでどんな
ものができるのか、面白そうだ。
 ただし、オーバーンは『イルマーレ』のアメリカ版の脚本
も担当した人で、タイムパラドックスの処理には多少心配が
残る。しかし、ハリウッド的にそれを押し切る力は持ってい
る人とも思えるので、その辺に期待することにしよう。
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 お次は、SFではないのかも知れないが、『インサイド・
マン』などのスパイク・リー監督が“Time Traveler”とい
う作品を計画している。
 実はこの作品、実話に基づくものということで、アフリカ
系アメリカ人では初のPh.D取得者の1人とも言われるロナル
ド・マレット博士の回想録“Time Traveler: A Scientist's
Personal Mission to Make Time Travel a Reality”の映画
化権を、リーが獲得して共同脚本、監督による計画を進めて
いるものだ。
 作品の内容は、博士が10歳の時に33歳の若さで心臓発作で
急死した父親を救うために、H・G・ウェルズの小説に触発
されて実用化タイムマシンの研究に邁進したというもので、
その結果、研究者にとってはDr.より上の称号とも言われる
Ph.Dを取得。その後も、自ら時間旅行者となるための研究を
続けたというものだ。
 まあこの物語で、映画とはいえタイムトラヴェルが行われ
ることはないと思うが、SFファンにも気になる作品になり
そうだ。
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 そしてもう1本、日本では『グリーン・ノウ物語』として
紹介されているルーシー・M・ボストン原作の児童ファンタ
シーシリーズが、“From Time to Time”の題名でイギリス
で映画化される。
 物語は、グリーン・ノウと呼ばれる屋敷にやってきた少年
が、過去から生きてきている子供たちとの交流を通じて成長
して行く姿を描いたもの。一応、紹介記事では、少年は家族
の過去を知るため時間を遡る…となっているものだ。
 そしてその映画化は、『トゥモロー・ネバー・ダイ』など
にも出ている俳優のジュリアン・フェローズが、自ら製作・
脚本・監督で進めているもので、出演者には、『ハリー・ポ
ッター』シリーズのマギー・スミス、ティモシー・スポール
らの名前も挙がっている。撮影は今秋開始の予定。
 なおフェローズは、2001年ロバート・アルトマン監督作品
『ゴスフォードパーク』の脚本も手掛けた人だそうだ。
 この題名からは最初ジャック・フィニーの映画化かと期待
したが、その期待は外れたものの、『グリーン・ノウ』の映
画化には期待したいところもあるものだ。
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 最後に、以前に掲載した熊本遠征記の末尾に書いた計画に
ついて、青春18切符の利用期間に7月19日は含まれていない
ことが判明しました。3連休でてっきり前倒しされると思っ
たのですが、JRはそういうことはしないようです。それか
らムーンライト九州の運行も8月18日までのようです。どち
らも予定が狂ってしまいました。お詫びして訂正します。


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井口健二