井口健二のOn the Production
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2005年07月31日(日) キャプテン・ウルフ、真夜中のピアニスト、蝋人形の館、800発の銃弾、ヘイフラワーとキルトシュー、ふたりの5つの分かれ路

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『キャプテン・ウルフ』“The Pacifier”        
『リディック』『XXX』『ワイルド・スピード』などのア
クション俳優ヴィン・ディーゼル主演によるホーム・コメデ
ィ。監督は、『女神が家にやってきた』のアダム・シャンク
マン。                        
アクション俳優がコメディに挑戦するのはハリウッドでは定
番の路線だが、それぞれそれなりの成果を上げるのは、アク
ションの身のこなしや勘所が、コメディの演技にも通用する
ということなのだろうか。本作もそんな感じの作品だ。  
主人公は海軍特殊部隊のリーダー。今日も、重要機密を握る
博士の救出作戦を敢行するのだが、今一歩のところで作戦は
失敗、自分は重傷を負い博士も死なせてしまう。     
そして2カ月後、傷の癒えた主人公に新たな任務が発せられ
る。それは、博士の重要機密を入手するため未亡人がスイス
の貸金庫に向かう間、家に残る5人の子供たちの身の安全を
守り抜くこと。                    
しかし子供たちは、父親を亡くしたばかりで情緒不安定。一
方、子供の頃から寄宿制の士官学校で育った主人公には、子
供の扱い方など判るはずもない。こうして悪戦苦闘の任務が
開始されるのだが…                  
映画はいきなり救出作戦のアクションから始まり、その後も
ことあるごとにアクションが展開する。しかし、それを単純
などたばたコメディにはせず、アクションはアクション、コ
メディはコメディと、それぞれがしっかり描かれているのが
素晴らしいところだ。                 
この辺は、多分アクションはお任せで行けそうなディーゼル
と、コメディをしっかりと撮れるシャンクマンの息がピッタ
リと合っているというところだろう。          
しかも、展開の中に『サウンド・オブ・ミュージック』がう
まく援用されていて、その辺の捻りもうまく機能していた。
つまり、軍隊のように育てられた子供たちの許に現れる奔放
なマリア先生とは正反対に、自由気ままな子供たちの中に軍
人の主人公が現れるという訳だが、そんな裏返しのギャップ
もうまく描かれていた。まあ無茶な展開も多少はあるが、そ
れなりにバランスは取れていた感じだ。         
慣れない男の子供の世話ということでは、エディ・マーフィ
の“Daddy's Day Care”と比較できるが、全員幼児のマーフ
ィ作に比べて、こちらの長男長女はハイティーンの設定。そ
こには青春映画に雰囲気もちょっとあって、それも良い感じ
だった。                       
なお試写会は日本語吹き替え版で、小学生以下の子供が満載
の会場だったが、そこそこ静かに見られたのは、アクション
に絡めた笑いがうまく機能していたと言うところだろう。さ
すがディズニーという感じの作品だった。        
                           
『真夜中のピアニスト』                
          “De Battre Mon Cœr S'est Arrêté”
1978年に公開されたハーヴェイ・カイテル主演のアメリカ映
画“Fingers”(邦題:マッド・フィンガー)を、現代のパ
リを舞台にリメイクした2005年のフランス映画。     
かなり暴力的な手段で地上げを行う不動産ブローカーの主人
公が、ある日、昔の知人から彼の隠された才能であるピアニ
ストのオーディションを受けることを勧められる。そして、
再びピアノに向かい始めた彼は、ピアノこそが自分の人生で
あることに気付くのだが…               
オリジナルは、ガイド本によるとかなり高い評価を受けてい
る。しかし本作の脚本を手掛けたトニーノ・ブナキスタはオ
リジナルが気に入らなかったのだそうで、その辺が修正され
ての本作となっているようだ。             
ということで、本当はここでオリジナルとの比較をできると
良いのだが、残念ながら僕はオリジナルを見ていない。従っ
てその比較はできないが、本作だけで見ると実にフランス映
画らしい人間味に溢れた作品になっていた。       
ここであえてフィルム・ノアールと呼ぶ気はないが、非合法
すれすれの世界で生きる主人公の悩みもうまく描かれている
し、その一方で、ピアノを必死に練習する主人公の姿にも好
ましい雰囲気があった。                
僕自身、小学生の頃にピアノを習っていたことがある。と言
っても、妹に教えに来ていた家庭教師に、ついでに教えられ
ていた程度のものだったが、映画の中でレッスンを受ける主
人公の様子には、何となく自分ことも思い出して懐かしくも
あった。                       
また、このレッスン教師が東洋人の留学生という設定になっ
ているのだが、その雰囲気も良い感じだった。正直なところ
は、もっとレッスンのシーンが長くても良いような感じもし
たくらいのものだ。                  
といっても、点描のように描かれるこのシーンによって、主
人公の別の顔も際立たせられているもので、この辺の長さの
バランスが一番良いというところなのだろう。      
主演はロマン・デュリス。彼はこの後には『ルパン』の公開
があるようだ。                    
                           
『蝋人形の館』“House of Wax”            
1933年公開のフェイ・レイ主演作品“Mysterly of the Wax
Museum”を、1953年にヴィンセント・プライス主演でリメイ
クした作品(肉の蝋人形)のさらにリメイク。1933年のオリ
ジナルには、史上初の現代を舞台にしたホラー映画という歴
史的意義があるそうだ。                
ということで今回のリメイクでは、物語はさらに現代化され
て、アメリカンフットボールの観戦に向かう若者たちが、ふ
と立ち寄った町で事件に巻き込まれることになる。    
カーナビにも出てこないような寂れた町。そこには、教会や
ガソリンスタンドや映画館など共に、なぜか立派な蝋人形館
があり、ごく自然な感じの人々の生活を再現した蝋人形が飾
られている。しかしその町の街路には人影がほとんど無い。
そして、切れたファンベルトの替えを求めて立ち寄った若者
たちに、恐怖の体験が待ち受ける。           
まあ、よくある巻き込まれ形ティーンズホラーのパターンと
いうことにはなるが、さすが3度も映画化されただけのこと
はあって、その無気味な雰囲気や、いろいろ仕込まれた仕掛
けには、楽しめるものが一杯という感じの作品だ。    
特に蝋人形館の無気味さには、他では到底出せない特別なも
のがある。蝋人形館は、世界各地に作られているが、そのい
ずれにも恐怖がテーマのコーナーが設けられているのは、元
来そういう雰囲気があるからなのだろう。この作品はそうい
う特性を存分に活かしている。             
出演は、『24』のエリシャ・カスバートと、やはりテレビ出
身のチャド・マイクル・マーレイ、それにホテル王ヒルトン
の令嬢パリス・ヒルトン。因にヒルトンの演技は、まあ話の
種にはなるという感じだ。               
しかし、そういったことを凌駕するのが、クライマックスの
VFXの見事さ。元々この作品では、蝋人形の溶けるシーン
が売り物になるが、これが現代のVFXを駆使するとここま
で描けるのかというくらいの豪華さで、これは大いに満足で
きるものだった。                   
製作は、ロバート・ゼメキス、ジョール・シルヴァ主宰のダ
ークキャッスル。ホラー専門のブランドだが、手を替え品を
替え、まだまだ種は尽きそうにない。          
                           
『800発の銃弾』“800 Balas”            
『どつかれてアンダルシア(仮)』などのアレックス・デ・ラ
・イグレシア監督による2002年作品。          
かつて、400本以上のマカロニ・ウェスタンが撮影されたと
いうスペイン南部アルメリア地方。その“西部劇の聖地”を
舞台に男のロマンを歌い上げた作品。          
主人公はかつてスタントマンとして活躍し、クリント・イー
ストウッドやジョージ・C・スコットのスタントダブルを務
めたことが自慢の老優。今は名残りのウェスタン村でスタン
ト・ショウの座長を務めている。しかし観光客も減り、村の
先行きは不透明だ。                  
そんな彼には一つの暗い過去があり、そのために家族とも別
れ、一人で老境を迎えようとしている。ところがその彼の許
に、孫と名乗る少年が現れる。そしてその孫の登場が、飛ん
でもない事態の引き金となってしまう。         
ウェスタン村というのは日本にもいろいろあるが、どこも西
部劇ごっこが好きでたまらない良い年の大人たちが楽しみで
やっているような雰囲気がある。この主人公たちもそれに似
たところがあって、生活は苦しくてもそれが生き甲斐という
感じが好ましい。                   
でも、現実はそんなことばかりは言ってられず、不況やその
他諸々の世間の波が彼らにも襲いかかってくる。そうなった
ときに一体どうすればいいのか。この主人公の行動は余りに
過激だけれど、やれるものなら…これが男のロマンというも
のだろう。もちろん蛮勇に過ぎないことは明らかだが。  
なお撮影地は、マカロニ・ウェスタンの他にも、『アラビア
のロレンス』『ドクトル・ジバゴ』『パットン大戦車軍団』
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』なども撮影された場
所だそうで、そう言えば見たような風景が出てくるのも楽し
かった。                       
主演は、実際に『さすらいの一匹狼』などのマカロニ・ウェ
スタンで活躍していた1936年生まれのサンチョ・グラシア。
因に、彼はハリウッド西部劇の『100挺のライフル』にも
出演していて、劇中の台詞にあるラクエル・ウェルチとも共
演しているそうだ。                  
                           
『ヘイフラワーとキルトシュー』            
             “Heinahattu ja Vilttitpssu”
フィンランドで2002年に公開され、同国の歴代興行成績第1
位を記録したというカイサ・ラスティモ監督作品。    
元々は童話の原作があるようだが、物語の主人公は、小学校
に上がる直前の姉と幼い妹の姉妹。その姉ヘイフラワーには
一つ心配事がある。それは、自分が学校に行ったら妹キルト
シューの面倒を誰が見るのかということ。        
実は、父親はジャガイモ研究を続けている研究者で、家には
居るのだが何時も研究に没頭し、家族のことなど顧みない。
一方、母親は大学出の今は専業主婦だが、料理も洗濯も苦手
で、大学出の女性が家事をするのはおかしいと主張、外での
仕事を探している。                  
そしてヘイフラワーは、何時も良い子で妹の面倒を見、両親
もそんなヘイフラワーに妹を任せきり。だからヘイフラワー
は、自分が学校に行ったら、キルトシューが独りぼっちにな
ってしまうのではないかと心配なのだ。         
しかし、キルトシューはそんな姉の心配などお構いなしに、
いろいろな我儘や主張をして姉を困らせる。そして両親は、
何時でもヘイフラワーに我慢するように言い続けるのだが…
ついにヘイフラワーが切れる日がやってくる。      
僕自身は次男だが、兄は年が離れていてすぐ下に妹がいた。
だから、境遇的にはヘイフラワーに似たところがあるが、僕
の妹はこんなに我儘ではなかったから、妹のせいでこんな風
になったことはないと思う。              
しかし、何時も良い子でいることには何となくそう躾られて
いた感じがあって、確かにこんな風に切れてしまいたいと思
ったことはあったと思う。そんな気持ちで見ていると、この
姉の姿は本当に愛しくなってしまうものだ。       
弟妹というのは、疎ましくもあるが、愛しくもあるもので、
これは独りっ子の多い現代では通用しなくなってしまう感情
かも知れないが、それを知っているものには、本当に愛しい
と思える作品。世のお兄さんお姉さんに捧げたい作品だ。 
                           
『ふたりの5つの分かれ路』“5×2”          
『8人の女たち』『スイミング・プール』などのフランソワ
ーズ・オゾン監督の2004年作品。            
オゾンは1998年の長編第1作以来毎年1本ずつ新作を発表し
ている。僕は最近の3作しか見ていないが、どれも女性が主
人公で、しかもかなり芯の強い女性が描かれている感じがす
る。この作品も、主人公は男女のカップルだが、やはり女性
の方が中心の映画だ。                 
物語は、離婚調停を進めるカップルの姿から始まる。やがて
調停は完了するが、そのまま2人でホテルに行ってしまうよ
うなカップルだ。つまり、憎くて別れたのではないというこ
と。ではなぜ離婚するのかというと、それが時間を遡って検
証される。                      
2人には子供がいるが、その子が幼い頃、出産の時、結婚式
の夜、そして出会いの時。これに最初のシーンが加わって5
つの分かれ路となるが、確かに男女の関係ってこんなものか
も知れないと思わせるような微妙な関係が描かれる。   
そしてそれぞれの時に別の路が選ばれていたなら、多分2人
の人生は全く別のものだったのだろう。でも、だからといっ
て2人の歩んだ路が、結局は離婚という結末であったとして
も、それはそれで満足だったのではないか、そんなことも思
わせる。                       
僕自身、結婚生活がそろそろ30年近くなってくると、確かに
このような分かれ路はあったのかなあと思えてくる。日本の
社会はこの物語ほど開放されてはいなかったと思うし、こん
なに具体的なことが起こるような社会でもないと思うが、精
神的には…という感じだ。               
だからこの映画には、それなりの共感が持てるというところ
だろう。その意味では、オゾン監督の前の2作よりも身近に
感じられる作品だった。                
なお映画では、時間の移動のタイミングごとに往年のポップ
スが流され、ボビー・ソロの『頬にかかる涙』、ウィルマ・
ゴイクの『愛のめざめ』、ザ・プラターズの『煙が目にしみ
る』など懐かしい曲を聞けたのも嬉しかった。  



2005年07月30日(土) 私の頭の中の消しゴム、シン・シティ、愛を綴る詩、そしてひと粒のひかり、エコーズ、チャーリーとチョコレート工場

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『私の頭の中の消しゴム』(韓国映画)         
若年性アルツハイマーを題材にした純愛ドラマ。原作は、読
売テレビが2001年に製作した『Pure Soul』という
番組で、これを韓国を舞台にリメイクしたもののようだ。 
主人公の女性は、最近ちょっと物忘れが多いことを気にして
いた。コンビニで買ったものと財布を忘れたり、会社に来る
道筋が判らなくなったり。しかしそんなものは、彼女が最近
感じた強いストレスのせいだと思っていたのだが…    
一方、その健忘症は彼女に幸運ももたらす。コンビニで買っ
たものを忘れたことが、一人の男性との出会いを演出してく
れたのだ。そしてその男性との出会いから、彼女の幸福な人
生が始まると思われたが…               
前にも書いたと思うが、ごく近い近親者に同じ病気の患者が
いる関係で、この種の物語にはいろいろ思うところがある。
実際、試写会では半信半疑で見ている人も多いのかも知れな
いが、僕自身は自分の経験に照らしてほとんどが納得して見
ている。                       
もちろん、現実はこんなに甘くはない面もあるし、現実に自
分の近親者の周囲での無理解による不愉快の経験も無い訳で
はない。だからこの作品が、周囲の人の理解の中で終わるに
しても、これからが大変だと思ってしまうところはある。 
とは言っても、このような幸せが訪れることを本当に祝福し
たくなるのも、本心から言えるところだ。でも、そういうこ
とも患者本人は記憶していられない訳で、周囲の自己満足で
しかないことも確かなことだ。             
それにしても、今年に入ってからだけでも何本もの同様の作
品があり、それだけ関心も高いのだろうが、それぞれの作品
で症例が見事に異なっているのも、この病気の多様性と、対
応の難しさを見せているようだ。            
映画では前半で、人を許すことの重要性が説かれる。そこで
は人が過去にした行為を忘れることと説かれるのだが、それ
が後半の物語に見事に反映されて行く。僕は原作の番組は見
ていないが、この対比の仕方が見事なドラマを作り上げてい
た。                         
アルツハイマーではない自分には、この前半の物語も重要に
捉えたいと感じたものだ。               
                           
『シン・シティ』“Sin City”             
原題にはFrank Miller'sという冠が付く。1980年代にバット
マンを描いて、以後のアメリカンコミックスの方向性を決定
づけた立て役者の一人と言われるフランク・ミラーが1992年
に発表したグラフィックノヴェルの映画化。       
このグラフィックノヴェルを、『デスペラード』のロベルト
・ロドリゲス監督が、ミラー自身を共同脚本、共同製作、共
同監督に招き入れて映画化した。さらに、一部の演出にはロ
ドリゲスの盟友クェンティン・タランティーノも参加してい
る。                         
物語の舞台は、ロサンゼルスを模しているようだが、正規に
はベイシン・シティ、通称シン・シティ(罪深き街)と呼ば
れる街のオールドタウン。そこは娼婦たちによって自治が敷
かれ、彼女たちは一定の取り決めの下で折り合いを付けた生
活を続けていた。                   
そして、そこで暮らす女たちとその街に通う男たちとの間で
は、幾多の物語が展開されて行く。しかしその一方で、その
街の支配を狙う外部からの圧力も動き始めていた。    
映画は、原作の第1話、第3話、第4話に基づくという3つ
の物語のオムニバスになっている。それぞれの主人公はミッ
キー・ローク演じるマーヴ、クライヴ・オーウェン演じるド
ワイト、ブルース・ウィリス演じるハーティガン。    
彼らを、ジェシカ・アルバ、デヴォン・青木、ブリタニー・
マーフィ、ロザリオ・ドースン、カーラ・ギグノらの演じる
娼婦たちが囲み、さらに、ベネチオ・デル=トロ、イライジ
ャ・ウッド、ジョッシュ・ハートネット、ニック・スタール
らが敵役で登場する。                 
この顔ぶれが、ロドリゲスがこれを撮ると言った途端に、一
も二もなく参集したというのだから、この原作及び監督の魅
力は相当のものだったということだろう。        
また、3つの物語は、それぞれが復讐であったり、愛しい人
を守る戦いであったり、状況に対する防御であったりといろ
いろだが、そのいずれもが男女の純愛に彩られ、一方、男た
ちはその愛のため、自らを省みず戦いの場に赴くと言う展開
だ。                         
現代では描き難くなった純愛の物語、しかもこれが、原作者
自身の指揮する映像美と、ロドリゲスの強烈なヴァイオレン
スアクションで描かれるとあれば、これは確かに俳優たちに
とっては魅力的な企画だったに違いない。        
そして完成された作品は、僕は残念ながら原作を知らないの
だが、知る人によると、描かれた映像そのものからカメラの
アングルに至るまで、全てが完璧にミラーの世界になってい
るということだ。もちろん、それがミラーを共同監督に呼び
入れた目的という作品だ。               
なお、撮影はテキサス州オースティンにあるロドリゲスの自
前のスタジオで行われたものだが、HDで撮影された全ての
シーンにディジタル処理が施され、モノクロの画面の一部に
だけ着色がされたり、コントラストが強調されるなど原作コ
ミックスの画調が見事に再現されている。        
ディジタル処理とはこんな風にも使えるという実証を行って
いるような、ある意味非常に実験的な作品でもある。しかし
その実験は見事に成功していると言えるだろう。     
1967年に大島渚監督が白土三平原作『忍者武芸帳』を、原作
コミックスの駒絵のモンタージュだけで映画化したことがあ
る。その時にも斬新な映像に感激したものだが、本作はさら
にそれを究極に進めたものとも言える。         
アニメ化でも実写化でもない、コミックスの新しい映像化の
方法が提示された作品。すでに続編の製作も決定しており、
原作は、全7巻で完結されているようだが、その全貌を見た
くなるような作品だ。                 
                           
『愛を綴る詩(仮題)』“Yes”             
『耳に残るは君の歌声』などのイギリスの女流監督サリー・
ポッターの最新作。                  
北アイルランド・ベルファスト生まれの女性と、レバノン・
ベイルート生まれの男性が、ロンドンで巡り会ったことから
始まる運命のドラマ。                 
女性は幼い頃にアメリカに移住して、そこで育ち結婚もした
が、夫婦生活は破綻している。そして義理で出席したパーテ
ィで、料理人として働く男性と出会う。男性は、本国では外
科医だったが、思想の違う患者の治療を禁じる国に幻滅し、
国を捨てた。                     
女性は、宗教嫌いの祖母に育てられたために無宗教だが、男
性は国に幻滅しても宗教は捨てられない。そしてそれぞれ本
人との関わりは無くても爆弾テロの陰がつきまとう。宗教も
主義も主張も異なる2人の恋愛。ある意味現代の縮図のよう
な物語が展開する。                  
そして、脚本も手掛けるポッター監督は、この物語の台詞を
全て韻を踏んだ韻律詞の形式で書き上げている。     
元々が詩人でもあるポッターにとって、台詞に詞の形式を採
ることは自然の流れでもあったようだが、残念ながら字幕で
それは判らないものの、何となくリズムの感じられる映画に
はなっているようだった。               
実は、ポッターの作品は、『オルランド』『タンゴ・レッス
ン』と順番に見ているが、この2作はあまりピンとは来なか
った。しかし前作『耳に残るは…』では、かなり大掛かりな
作品を見事にまとめ挙げて注目したものだ。       
そして本作は、前作ほどの大仕掛けではないが、ベルファス
ト、ベイルート、そして最後はハバナなどにも現地ロケを敢
行して、恋愛劇を見事にまとめている。         
それと、これが目的でもあろうが、詞の形式で書かれた台詞
の饒舌なこと。2人の口論のシーンが最初に書かれたという
ことだが、主に言い争いに終始するいろいろな場面での台詞
の多さが見事に物語を作り上げて行く。         
一方で、狂言回しのように登場する清掃婦の人を食ったよう
な解説も、見事に映画を作り上げていた。        
時節がら、映画の中で爆弾テロなどの話が出るとはっとする
が、物語はそれと直接関わるものではない。しかしその陰の
中で生きなければならない男女の物語だ。        
                           
『そして、ひと粒のひかり』“Maria Full of Grace”   
アメリカのケーブル向けの番組製作会社HBOの資金提供で
製作されたアメリカ=コロンビア合作映画。       
昨年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞して全米公開された
作品。主演のカタリーナ・サンディノ・モレノは今年のアカ
デミー賞主演女優賞に、コロンビア出身の俳優としては初め
てノミネートされた。                
主人公のマリアは17歳。コロンビアの花卉農園で働いていた
が、監督主任との折り合いが悪く仕事を止めてしまう。しか
し家には働きの無い姉などがいて、一家の家計は彼女の肩に
掛かっている。しかも愛してもいない男の子供を身籠もって
しまう。                       
そんな人生を逃げ出そうと彼女は首都に働き口を求めるが、
働き口は簡単に見つかるものではない。しかし首都に送って
くれたバイク乗りの男から簡単に金の稼げる運び屋の仕事を
紹介される。それは麻薬をつめたゴムの粒を胃袋に納め渡米
するというものだった。                
そして67粒の麻薬とひと粒の命をお腹に抱いて、彼女はアメ
リカへと向かう飛行機に乗り込むが…          
原題の副題には、Based on 1000 true storiesと書かれてい
る。物語は、ジョシュア・マーストン監督の脚本によるもの
だが、彼は偶然に取材した運び屋で逮捕されたコロンビア人
女性の話からこの物語を思いつき、綿密な調査の上、脚本を
書き上げたということだ。               
実際、映画の中に登場するアメリカ側で彼女たちの更生を支
援する男性も、実在している人物ということで、彼は今まで
に400体以上の途中で死んだ、若しくは殺された女性たち遺
体をコロンビアに送り返したという。          
つまりこの物語は、すべて実話に基づき、このようなことが
今も現実に行われているということなのだ。しかもその映画
がコロンビアで作られたということにも驚かされる。最早こ
の実態は、隠しようもない事実ということなのだろう。  
ただし、映画はフィクションとして結末もちゃんと設けられ
ており、その部分では救われる感じもする。その一方で、ド
キュメンタリー調の演出も見事な作品だった。また、モレノ
の容姿と演技力にはこれからの活躍も期待させた。    
                           
『エコーズ』“Stir of Echoes”            
リチャード・マシスンの1958年作で、早川SFシリーズにも
納められた『渦まく谺』を、『スパイダーマン』や『宇宙戦
争』の脚本家デイヴィッド・コープが自らの脚本、監督で映
画化した1999年製作の作品。              
元々の映画化権は、原作の発表直後からユニヴァーサル映画
が40年にわたって所有していたものだったが、コープが偶然
見つけた原作本に惚れ込み、映画化権を買い取って自ら映画
化を進めた作品。その入魂の脚本は、流行のスプラッターや
ホラーコメディの路線を排し、極めてオーソドックスなホラ
ーサスペンスに仕上がっている。            
ふとしたことから死者の霊を見ることのできる能力を身に付
けてしまった主人公が、その霊の導きによって殺人事件を解
決して行くことになるが…という『シックス・センス』『ア
ザーズ』を髣髴とさせる物語。ただし本作は、アメリカでは
『シックス・センス』に1カ月遅れで公開されたものだ。 
残念ながら僕は原作を未読だが、映画は主人公の苦しみや、
事件が解き明かされるにしたがって主人公を襲う恐怖などが
手際よくまとめられており、結末の良さも含めて極めて満足
度の高い作品になっていた。              
そしてこの主人公を、『ミスティック・リバー』などのケヴ
ィン・ベーコンが演じ、狂気との狭間をさ迷いながらも、真
実に近付いて行く男を鬼気迫る演技で好演している。なおベ
ーコンがホラー映画に出演するのは、無名時代『13金』に出
て以来だったそうだが、この翌年にはSFホラーの佳作『イ
ンビジブル』にも主演している。            
しかし、そのベーコンが顔負けの素晴らしい演技を見せるの
が、主人公の息子を演じたザカリー・デイヴィッド・コープ
という子役。撮影当時6歳だった彼の演技力には感心した。
因にこの子役は監督と似た名前だが、苗字のコープはCopeと
書き、親戚ではないそうだ。              
コープの監督作品では、昨年『シークレット・ウィンドウ』
が公開されたが、この作品は僕にはあまり買えるものではな
かった。しかし本作は、見事なストーリーテリングと丁寧な
映像演出でこのような作品なら、また期待してみたいと思っ
たものだ。                      
                           
『チャーリーとチョコレート工場』           
         “Charlie and the Chocolate Factory”
ロアルド・ダールの1964年作『チョコレート工場の秘密』の
映画化。同作は1971年に“Willy Wonka and the Chocolate
Factory”の題名で映画化されたことがあり、本作はそのリ
メイクでもあるが、前作の脚本も手掛けた原作者は前作の出
来が気に入らなかったそうだ。             
そこで今回の映画化では、監督をティム・バートンが担当。
彼は1996年に製作を担当したダール原作『ジャイアント・ピ
ーチ』の映画化でダールの遺族に認められ、今回は原作の発
表40周年の記念事業としての映画化に、遺族側から指名され
たものだ。                      
さらに、主演のウィリー・ウォンカ役を、監督とは4度目の
コラボレーションとなるジョニー・デップ、またチャーリー
・バケット役には、デップと『ネバーランド』で共演したば
かりのフレディ・ハイモアが起用されている。      
なお、脚色は『チャーリーズ・エンジェル』のジョン・オー
ガストが担当した。                  
物語の舞台は、従業員はいないのに製品だけ出荷されてくる
謎に包まれたウィリー・ウォンカのチョコレート工場。その
工場主ウォンカから、世界中に5枚だけ封入されたゴールデ
ン・ティケットを見つけた子供たちを工場見学に招待すると
いう発表が行われる。                 
そしてその5枚目の発見者となったチャーリーは、元工場の
従業員だった祖父を付き添いに工場見学に参加するのだが、
同行するのは大金持ちの娘やテレビゲーム狂いなど変な奴ば
かり。そしてその見学コースにはいろいろな罠が仕掛けられ
ていた。                       
原作は、イギリスでは『ハリー・ポッター』『指輪物語』に
次いで第3位の子供の支持を受けているということだが、そ
の子供心をくすぐる謎に包まれた工場内での、大仕掛け満載
の、ちょっと意地悪な冒険物語が見事に映画化されている。
物語自体はほぼ原作通りで、実は原作者が脚色した1971年の
映画化でも、その辺はちゃんとしていたとは思うのだが、今
回の作品と比較すると、そのセットや装置の大掛かりなこと
と、VFXを駆使した見事な映像化に大きな違いがあると言
えそうだ。                      
中でも、すべて1人の俳優で演じられているウンパルンパの
無気味さや、本物のリスを使った殻剥き場のシーンなどは、
到底1971年の技術では作れなかったものだろう。     
また、1971年作はアンソニー・ニューリーの楽曲によるミュ
ージカル仕立てで、その中では『マダガスカル』でも歌われ
た‘Candy Man’の歌なども登場していたものだが、本作で
も歌はふんだんに登場する。ただし今回の歌は、原作に書か
れたダールの詩にダニー・エルフマンが曲を付けたもので、
かなり毒の詰まった歌が登場するという仕掛けだ。    
この他、ウンパルンパの踊りが往年のMGMミュージカルの
パロディになっていたり、またあっと驚くMGM作品のパロ
ディも登場する。これはまるでMGMは昨年ソニーに買収さ
れたが、往年の名作はワーナーに権利があることを主張して
いるかのようだった。                 
なお、デップとハイモア以外では、チャーリーの母親役を監
督夫人でもあるヘレナ・ボナム=カーターが演じ、またクリ
ストファー・リーが重要な役で出演している。      



2005年07月15日(金) 第91回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 最初は、映画製作とは直接関係はないが、気になった話題
から。
 この作品については、僕には試写状も届かなかったし、別
段ここで取り上げる義理もないものだが、6月末に公開され
たSF映画“War of the Worlds”(宇宙戦争)について、
結末がいい加減だとか、捻りが無いなどという批判を見かけ
たので、SFファンとして一言ここで述べておきたい。
 確かにこの物語はあっけなく終結する。しかしそれは、H
・G・ウェルズが描いた原作通りの展開なのであって、しか
もこの原作は、この結末のあっけなさゆえに成立している物
語とも言える。従って、もしこれ以外の結末を付けたとした
ら、それは最早ウェルズの映画化とは呼べなくなってしまう
ものなのだ。
 ここで、上記のようなことを言っている人たちが、例えば
地球人が大々的に反攻して侵略者を叩きのめすようなものを
期待していたのだとしたら、それこそが思い上がりというも
のであって、そのような物語はウェルズが最も否定したかっ
たものだろう。
 つまりこの物語のテーマは、思い上がった地球人にさらに
上位のものがいるかも知れないということを教えたかったも
のであって、その侵略の前に為す術もなかった地球人が自然
界の微生物によって助けられるという皮肉を描いたものなの
だ。しかしそういうことも理解できずに、ただ地球人はいつ
でも偉いという思想に固まっている人たちこそ哀れというも
のだろう。
 ついでに書いておけば、1996年に公開されたローランド・
エメリッヒ監督の“Independence Day”では、地球人の反攻
によって侵略者を撃退するが、ここで侵略者を倒すために利
用した手段は、正にこのウェルズの原作にオマージュを捧げ
ているものなのだ。そしてこの作品がウェルズの没後50周年
の年に公開されたことも考えると、エメリッヒのSFへの思
い入れを感じたものだ。
 つまり、ウェルズの原作に絡めて地球人が反攻する作品は
すでにこのとき作られているのであって、それを改めて作る
必要性は全く無かったとも言える。日本人が歴史を顧みない
国民であることは、あらゆる面で言えることだが、多少なり
ともオピニオンリーダーになるような人たちは、もう少し考
えて発言してほしいと思うところだ。
        *         *
 もう一つ、こちらはポジティヴな話題で、俳優のモーガン
・フリーマンが、半導体メーカーのインテルと組んで、映画
の配信を行う新会社を設立したことが発表された。
 この話題は、インターネット関連の情報なので、日本のウ
ェブ上でも一部で報道されていたようだが、その新会社のこ
とはさておいて、僕はフリーマンとインテルという組み合わ
せが気になったところだ。
 実はこの組み合わせについては、2002年6月15日付の第17
回で報告しているが、フリーマンが長年計画しているアーサ
ー・C・クラーク原作“Rendezvous With Rama”の映画化で
も協力が発表されているもので、今回の報道でその関係が切
れていないことが確認できてほっとしたものだ。
 一方、この映画化に関しては、2002年12月15日付の第29回
で報告したようにパラマウントの参加も発表されているが、
上記したパラマウント製作“War of the Worlds”では、フ
リーマンがウェルズの台詞を代弁するナレーターを務めたり
もしており、この人間関係はかなり期待が高まるものとも言
えそうだ。
 ただしこの計画に関しては、監督にデイヴィッド・フィン
チャーの名前も発表されているが、フィンチャーは後述する
ように、これもパラマウントも絡んですでに来年までスケジ
ュールが詰まっており、このままだとまだ時間が掛かりそう
だ。そこで、何とかその間隙を突いてもらいたいと言う感じ
ではあるが、あまり拙速に作られても困るものだし、いろい
ろ悩むところだ。
        *         *
 以下は、いつものように製作ニュースを紹介しよう。
 まずは、上の記事でも触れたデイヴィッド・フィンチャー
監督の情報で、2002年公開の“Panic Room”(パニック・ル
ーム)以来、新作の無かった監督に、今年2月1日付の第80
回で紹介した“Zodiac”に続けて、“The Curious Case of
Benjamin Button”の計画も、ワーナー+パラマウントの共
同で進められることが発表された。
 後者の“Benjamin Button”については、ここでは紹介し
ていなかったようだが、“The Great Gatsby”(華麗なるギ
ャツビー)などのF・スコット・フィッツジェラルド原作の
短編小説を、“Forrest Gump”などのエリック・ロスの脚色
で映画化するもの。年齢が徐々に若返って行くという不思議
な状況に陥った50代の男性が、30代の女性に恋をするが…と
いう特殊な状況の中での男女の恋愛が描かれるものだ。
 そしてこの物語を、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシ
ェットの共演で、ニュー・オーリンズを舞台に描く計画とな
っている。因にピットとフィンチャーは、“Seven”“Fight
Club”に続いて3度目の顔合せになる。
 なおこの計画は、実はパラマウントとワーナーの共同製作
では、“Zodiac”より先に進んでいたものだが、VFXの多
用による製作費の高騰などが予想されて頓挫していた。しか
し今回の発表で、この作品も、“Zodiac”の製作完了後の来
年10月に撮影開始されることになったようだ。フィンチャー
としては本当に念願の作品だったようで、無事完成すること
を期待したい。
 一方、“Zodiac”については、主人公の捜査官を演じるマ
ーク・ラファロ、新聞記者役のロバート・ダウニーJr、共演
のジェイク・ギレンホール、アンソニー・エドワーズらに加
えて、ゲイリー・オールドマンの出演が決定され、今年9月
の撮影開始が発表されている。なおオールドマンが演じるの
は、サンフランシスコ在住で「不法行為の帝王」とまで呼ば
れたメルヴィン・ベリという弁護士の役、彼は、1969年に殺
人鬼からのクリスマスカードを兼ねた犯行予告の手紙を受け
取った人物ということだ。
        *         *
 お次は、1972年にジョージ・ロイ・ヒル監督で発表された
“Slaughterhouse 5”(スローターハウス5)などの原作者
カート・ヴォネガットが1963年に発表した“Cat's Cradle”
(猫のゆりかご)を映画化する計画が、レオナルド・ディカ
プリオのプロダクションから発表された。
 この作品は、常温で水を結晶化させる新たな構造の氷(ア
イス9)を巡る終末的な地球の姿を描いたもので、一時はノ
ーベル文学賞の呼び声もあったアメリカ人作家の出世作であ
り、代表作とも呼ばれている作品の一つだ。
 物語は主に、カリブ海に浮かぶ小島国サン・ロレンゾで進
む。その島にはボコノン教と呼ばれる独自の宗教があり、そ
の教えによって国の政治も経済も成立しているのだが、その
裏にはアイス9(それは一旦地上の水と接触すれば、一瞬の
内に世界中の水を凍結させ、人類を破滅に導く)による究極
の終末思想が形成されていた。このボコノン教の思想が一時
は学生の間でも大いに持て囃されたものだ。
 そして今回はこの脚色を、クライヴ・カッスラー原作の映
画化“Sahara”(サハラ)の脚色を手掛けたばかりのジェー
ムズ・V・ハートと、彼の息子のジェイクが担当することに
なっている。因に父親は、ロシア生まれの女流作家エイン・
ランドが1957年に発表した社会主義に屈したアメリカを描い
た近未来小説“Atlas Shrugged”の脚色も、『サハラ』を製
作したボウルドウィン宛に手掛けているようだ。
 なお、ディカプリオは先にワーナーと優先契約を結んで、
新作の“The Departed”は同社で製作されているが、本作の
製作に関しては未定のようだ。
        *         *
 ロバート・アルトマン監督がミネアポリスで撮影を開始し
た新作“A Prairie Home Companion”に、メリル・ストリー
プ、リリー・トムリン、リンゼイ・ローハン、ウッディ・ハ
レルソン、ケヴィン・クライン、ジョン・C・ライリー、そ
してトミー・リー・ジョーンズらの出演が発表されている。
 この作品は、1974年の放送開始以来、全米で500局以上に
ネットされ、数多くの賞にも輝いている同名のラジオ番組を
モティーフにしたもので、多くのミュージシャンやパフォー
マーが登場したこの番組の「最後」の1日を、番組司会者の
ガリソン・ケイラーが執筆した脚本で描こうというもの。因
に、脚本はフィクションとして描かれているものだが、映画
にはケイラー本人も自身の役で登場するようだ。
 そして映画では、大団円を迎える番組の出演者や舞台裏な
どの様子が描かれることになるが、これだけの役者陣を揃え
て、“Gosford Park”(ゴスフォード・パーク)などでお馴
染みのアルトマンお得意のアンサンブル劇が思い切り展開さ
れることになりそうだ。なお、ストリープとトムリンは番組
に出演する姉妹の役、ローハンはこの騒ぎに紛れ込んだ純朴
な少女の役、またジョーンズは番組の終了を決めたスポンサ
ーから派遣された人物の役ということだ。
        *         *
 全米で1億ドルを突破した“Batman Begins”の続編製作
は当初から決まっていたようなものだが、そのキャスティン
グの噂が飛び交い始めている。
 それによると、まず敵役として続編にはトゥー・フェイス
が登場し、その役には2000年に“Model Behavior”というテ
ィーン作品に出ているジャスティン・ティンバーレイクとい
う噂だ。また、降板が噂されているケイティ・ホームズに変
わる新たな恋人役には、『スクービー・ドゥー2』や『ハッ
カビーズ』、それに新作の“Wedding Crashers”などに出て
いるアイラ・フィッシャーの名前が挙がっている。
 なお続編の敵役については、第1作の中では別の名前も出
ていたものだが、第1作も敵役はラーズ・オ・グールとスケ
アクロウの2人だったし、続編も2人ということになるのだ
ろうか。一方、恋人役の役名は不明だが、ラーズ・オ・グー
ルの娘のタリアという説もあるようだ。
 それにしても、まだ駆け出しと言っていい俳優の名前が並
んでいる感じだが、第1作のキリアン・マーフィもそれに近
いものだったし、前のシリーズではハリウッドの大物スター
を並べた製作方針から、今回は180度方向転換ということに
なるのだろうか。
 バットマンのクリスチャン・ベールには3作の契約という
情報もあり、主要なキャスティングは継続される模様だが、
さて、この続編の製作は一体何時になるのだろう。
        *         *
 お次も続編の話題で、今年20年来と言われるアメリカ映画
界の不振の原因は、続編ばかり作り過ぎているせい、という
意見もあるようだが、それにもめげずソニーから3本の続編
の計画が発表されている。
 その続編は“I Know You Did Last Summer 3”(ラスト・
サマー3)、“Hollow Man 2”(インビジブル2)、そして
“Road House 2”(ロード・ハウス2)の3本。
 この内、1997年と1998年に前作が作られた『ラスト…』の
第3作については、オリジナルも手掛けた『ワイルド・スピ
ード』や“Stealth”などの製作者ニール・モリッツが進め
ているもので、脚本はマイクル・ウェイスが執筆中となって
いるが監督は未定。また主人公は10代の若者ということで、
前2作に主演したジェニファー・ラヴ・ヒューイット、フレ
ディ・プリンゼJrと、第1作に主演のサラ・ミッシェル・ゲ
ラーら、オリジナルキャストの再演はなさそうだ。
 一方、人間を透明にする実験の顛末を描いた『インビジブ
ル』はレッド・ワゴンの製作で、オリジナルは2000年にポー
ル・ヴァーホーヴェンの監督で映画化されたものだが、今回
の続編では、脚本のジョール・スワッソンと、監督のクラウ
ディオ・ファーがすでに決定しているということだ。
 そして、『ロード…』のオリジナルは、1989年にジョール
・シルヴァの製作、パトリック・スウェイジの主演で発表さ
れた作品だが、実はこのオリジナルは、当時はMGM傘下の
UAで製作されたもので、昨年のMGM買収の効果がいよい
よ現れて来ているようだ。
 まあ、これらの作品はいずれも大作と呼べるものではない
が、それぞれオリジナルの製作当時は話題になったもので、
その続編が登場すればそれなりに話題にはなりそうだ。ただ
し今回の計画では、配給をコロムビアにするか、ホラーブラ
ンドのスクリーン・ジェムズにするか、あるいは直接DVD
での発売になるかは未定ということだ。
        *         *
 続いては新技術の話題で、ドルビー研究所が新たに開発し
た3D上映システムの第1作として、ディズニーが今年11月
4日に全米公開する“Chicken Little”に採用されることが
発表された。
 この新システムの詳細は明らかではないが、従来の赤青フ
ィルタを使用したものではないとされており、敢えてこのシ
ステムに対比されているということは、最近話題になってい
る琥珀と水色のフィルタを使うシステムの可能性もありそう
だ。またこのシステムは、専用のデジタル上映館で実施され
るもので、全米では25都市100館程度の上映になるようだ。
 因に、現在の全米のデジタル上映館は80館程度と言われて
いるが、今回の上映はそれとは別に新規に設置される100館
で行われるもので、これにより全米のデジタル上映館の数が
一挙に2倍以上に増える勘定だそうだ。
 一方、今回の“Chicken Little”の製作では、あらかじめ
2Dで製作されたCGIアニメーションを3D化したものと
いうことだが、この3D化に当ってはディズニーの要請に応
えてILMが技術協力をしたということだ。しかしそれは、
単なるポストプロの枠を超えて共同製作に近いものだったと
も言われている。ただし今回の3社間の契約は相互に排他的
なものではなく、今後はそれぞれの会社が開発した新技術は
独自に使用できるということだ。
 まあ、具体的なシステムが判らないと正確なことは言えな
いが、これによって今までより多くの映画会社の3Dへの参
入が期待されているようだ。
 最近の3D映画の制作システムでは、ソニーとジェームズ
・キャメロンが開発して“Ghost of the Abyss”やロベルト
・ロドリゲス監督の“Spy Kids 3-D”で採用されているもの
や、昨年の“The Polar Express”でIMAX社が開発した
システムが実用化されているが、今回はそれとは違う方面か
ら出てきたもので、新しい動きになるものだ。
 ただし今回の技術では、実施は新規に設置されるデジタル
上映館に限るということで、日本では、新規のシステムとい
うことではなかなか採用が難しそうだ。今回のケースでは、
ドルビー研究所が直接働きかけるとなれば、それなりの動き
も出そうだが、1館でもいいから日本で採用されることを期
待したい。
        *         *
 後は続報をまとめておこう。 
 1本目は、2003年3月15日付の第35回でも紹介した“The
Secret Life of Walter Mitty”(虹を掴む男)のリメイク
で、製作を担当するパラマウントから、主演にオーウェン・
ウィルスンを起用することが発表された。
 このリメイクでは、当初はジム・キャリーの主演で、ニュ
ーラインでの製作が進められていたものだが、オリジナルを
製作したサミュエル・ゴールドウィンの子息で、リメイク権
を持つゴールドウィンJrとニューラインとの意見が相違し、
以前の紹介ではこの製作権がパラマウントに移されたことを
報告したものだった。
 しかしその時、併せて報告されたスティーヴン・スピルバ
ーグの監督は結局実現しなかったもので、さらにキャリーの
出演もキャンセルとなっていた。そして現在は、リンゼイ・
ローハン主演の“Mean Girl”などを手掛けたマーク・ウォ
ーターズ監督と、脚本はリチャード・ラグラヴェニース執筆
によるものが進行しているようだ。
 その主演にウィルスンの起用が発表されたものだが、キャ
リーとウィルスンでは、コメディの方向性が多少違うような
感じもする。ただし、オリジナルはダニー・ケイが演じてい
たもので、その点から言うとウィルスンの方が近いような感
じもするものだ。しかし、似すぎてもリメイクの意味が無く
なるわけで、その辺がどうなるか仕上がりが楽しみだ。
 なお、1947年製作のオリジナル版では、第2次大戦で行方
不明になった王冠の宝石を巡るエピソードがあるが、リメイ
クではその部分で現代的な味付けがされているようだ。
        *         *
 2本目は、2003年1月1日付第30回などで紹介した“Mad
Max”の第4作の計画で、当時、撮影開始寸前まで行きなが
ら、イラク戦争の勃発のために無期延期となってしまった計
画について、監督のジョージ・ミラーはまだあきらめていな
いことを宣言している。
 これはオーストラリアの映画雑誌Empireが行ったインタビ
ューでの発言のようだが、その中でミラーは、「人々が期待
を持っていてくれる限り、監督は常に前の作品より良いもの
を作ることを目標に作品を作り続ける」と答えており、実際
“Mad Max VI”については「現実的な希望がある」と答えた
ようだ。ただし、主演のメル・ギブスンについては、契約か
らは程遠い状況にあるようで、ギブスン抜きの“Mad Max”
は考えにくい面があるし、その辺が問題になりそうだ。
 なおミラー監督本人は、現在はCGIアニメーション作品
“Happy Feet”(2003年4月15日付第37回参照)の製作が追
い込みに掛かっているようで、当面はその完成を目指すとし
ている。
 それにしても、今回のミラーの発言は、サンフランシスコ
に新スタジオを建設した苗字は違うが同じ名前のアメリカ人
監督にも聞かせたいものだ。
        *         *
 最後は、今年1月1日付の第78回で紹介した“Pirates of
the Caribbean”の続編にチョウ・ユンファの出演が正式に
発表された。
 この情報は、以前の紹介では続編2本に出演という話だっ
たが、今回の正式発表では“Pirates of the Caribbean 3”
のみへの出演となっているようだ。またこのパート3は、副
題が“World End”になるとの情報もあり、これは香港の海
賊が世界の果てのカリブ海に向かうのか、それともスパロー
船長らが香港に出向く可能性もありそうだ。
 なお撮影は、現在中断中だが、8月にロサンゼルスで再開
され、その後にカリブ海に戻ってパート2の続きと、パート
3の撮影が行われるということだ。なお公開は、パート2は
“Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest”の題名で
2006年7月、またパート3は2007年の夏の公開予定となって
いる。



2005年07月14日(木) さよならCOLOR、青空のゆくえ、空中庭園、チャッキーの種、銀河ヒッチハイク・ガイド、アイランド、奥様は魔女

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『さよならCOLOR』
竹中直人が原田知世をヒロインに迎えて監督・共同脚本・主
演した最新作。
竹中の監督作品は本作が5作目になるようだが、今までの作
品は1本も見ていない。これは多分試写状をもらっていなか
ったせいだと思うが、演技者としての竹中はいろいろ見てき
たので、それなりに興味はあったものだ。
物語の舞台は鎌倉。総合病院の勤務医として働く主人公は、
40代半ばで独身だが、飲み屋の女将が愛人だったり、女子高
生に援交を申し込まれたり、女性看護師のお尻を触っても冗
談で済ませられる程度の男性だ。
そんな主人公の前に一人の女性患者が現れる。彼女は主人公
の高校時代の同級生で、彼の憧れの的だったのだが…彼が名
前を告げても、彼女は彼のことを全く覚えていない。他の同
級生や先生のことは詳細に思い出せるのに、なぜか彼の思い
出だけが欠落している。
結局、彼の学生時代はそんな存在でしかなかった人間のよう
だ。しかし憧れの女性を前にした主人公は、彼女の病気克服
のため全力を挙げ始める。それは、同時に彼女に自分の存在
を思い出してもらう為でもあった。そしてその努力は徐々に
彼女に伝わって行くが…
ドラマになるような華やかなものではなかった青春。しかし
多くの学生時代はこの主人公のようなものであったはずだ。
そんなドラマにならない青春を見事にドラマにしてみせた、
そんな感じの作品。エピソードとして描かれる思い出には、
甘酸っぱいものを感じさせる。
そして彼女の為に全力を傾ける現在の主人公の姿が、実に等
身大で分り易く、見事に描かれて行く。
共演は、段田安則、雅子、中島唱子、水田芙美子。特に段田
の演じる普段とは違ったキャラクターが良かった。また、共
に医師役でゲスト出演の内村光良と中島みゆきが、それぞれ
良い感じで、竹中の監督としての力量を感じさせた。
実は先日、自分も同窓会があって、そこではお互い覚えてい
たりいなかったりでも、意外と自分が考えている以上に覚え
ているものだとも感じた。だから、こんな風に忘れられてし
まうということにはちょっと疑問に感じるところもあるが、
それは映画として、作品は素晴らしいものだった。

『青空のゆくえ』
『ココニイルコト』『13階段』などの長澤雅彦監督の最新
作。僕は上記の作品は見ていないが、第3作の『卒業』とい
う作品は東京国際映画祭で見て、それなりに評価をした記憶
がある。
中学3年の夏休み直前。バスケ部のキャプテンが家族の都合
でアメリカへ転校することを発表する。ところがその時、彼
が「やり残したことがある」と発言したことから、いろいろ
な波紋が広がり始める。
彼の周囲には、幼馴染みや、同姓なので名前を呼んだことの
ない学級委員長、バスケ部の女子キャプテンや、彼だけが話
し相手だった突っ張りの少女、さらに帰国子女などもいて、
それぞれの間で彼の思惑とは違った確執が始まる。
一方、彼には1年の時に不良少年グループに目を付けられ、
彼が助けることができずに登校拒否となってしまった友人も
いる。そしてその原因となった不良少年や、バスケ部の副キ
ャプテンなど、さまざまな人間関係が描かれて行く。
同じ日に見た『さよならCOLOR』とは正反対の、皆の注
目を浴びている少年の物語。でも彼自身に自覚はなく、また
男女の関係の自覚も薄い。そんな彼の態度が、一層、皆の思
いを乱れさせるのだが…そんなことにも無頓着だ。
ありそうで、なさそうで、そんな青春ファンタシーといった
感じの作品。今の中学生がこんなに清純かどうかも分からな
いが、ファンタシーとしては見終って清々しい気持ちになれ
る作品だった。
『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』のように
特殊なことをやっている訳でもなく、ごく普通の子供たちの
お話。何かテーマがあれば物語も作り易いが、この作品はそ
うではない。それでもこれだけの物語がある。そんなところ
にも魅力を感じる作品だ。
出演は、主人公に映画初出演の中山卓也。彼を取り巻く少女
たちに森田彩華、黒川芽以、多部未華子、悠城早矢、西原亜
奇。他の男子生徒に、佐々木和徳、三船力也、橋爪遼。  
いずれも1986−89年生まれで、新人といってもCMやドラマ
などの演技経験を積んでいる子達が多く、すでに他の映画で
主演の子や顔を見るとおやと思う子もいた。個性も豊かで、
今見ておくとこれからが楽しみなメムバーとも言えそうだ。

『空中庭園』
角田光代原作の婦人公論文芸賞受賞作の映画化。
東京郊外の団地に住む一家の物語。一家の住む部屋にはルー
フテラスがあり、そこには母親が丹精を込めた空中庭園が作
られている。そして一家は、家族の間に秘密を持たない主義
で、高校生の娘と息子にも、彼らを身籠もった過程まであか
らさまに話すほどの開放された家庭だ。
しかしその実体は、父親は2人の女性と不倫を重ねており、
娘も息子も登校はせず街をふらついている。そして母親は、
家族の前でも周囲の人々の前でも、いつもにこやかに振舞っ
ているのだが、実はこの母親には、家族に絶対言えない秘密
があった。
そしてある日、母親がパート先の同僚の若い女性に、彼女の
母から聞いたという高校時代の忌わしい思い出を暴露された
辺りから、この家族の関係が崩壊し始める。母親は、自分の
忌わしい過去から逃れるために理想の家族を作ろうとしてい
たのだが…
昨年の韓国映画『誰にでも秘密がある』ほどではないにして
も、どんな家族にでも互いに家人に言えない秘密はあるもの
だろう。しかしこの一家の場合は、秘密を持たないという約
束があるがゆえに、一層歪んだ秘密になってしまっている。
しかし、どんな秘密があろうと無かろうと、結局のところ家
族は家族なのであって、そんな「理想の」家族の現実が、ダ
ークなユーモアを彩りにして描かれて行く。そしてその戯画
化によって、現代社会における家族の一面が見事に描き出さ
れた作品と言えそうだ。
出演は、母親に小泉今日子、長女を鈴木杏。また大楠道代、
ソニン、永作博美といったちょっと癖のある顔ぶれが脇を固
めている。中でも小泉のいつも作り笑いを浮かべている表情
が、物語全体に無気味な感じを与えて、見事な世界を構築し
ていた。
小泉はアイドルと呼ばれていた時代から、ちょっと他の同年
代の女性タレントとは違う感じの人だったが、『踊る大捜査
線 THE MOVIE』でのハンニバル・レクターのパク
リ以外の何者でもない役柄を演じた辺りから芸風が広がった
感じで、本作でもいい味を出していた。
そして演出も、要所で血糊をたっぷりと使用するなど、かな
り過激な描き方で、この異常だけれど普通な物語を見事に描
き出している。万人向けの作品とは言えないかも知れないけ
れど、映画らしさという点では満足できるし、特に結末の演
出は見事だった。

『チャッキーの種』“Seed of Chucky”
1988年に始まった“Child's Play”シリーズの第5作。 
このシリーズは1991年までに3作が作られたが、そこで一時
中断。その後1998年に、ウッディ・アレン監督の『ブロード
ウェイと銃弾』で1994年度のオスカー助演賞候補にもなった
女優ジェニファー・ティリーを迎えた“Bride of Chucky”
で復活し、今回はその後を受けた7年ぶりの新作となる。
そして今回の物語は、チャッキーと前作の花嫁ティファニー
との間に生まれた子供が、その後に行方不明となりイギリス
で腹話術の人形となっているところから始まる。その子供は
自分の手首にあるMade in Japanの刻印から、両親は日本人
だと思っているが…
一方、女優のジェニファー・ティリーはチャッキーの惨劇の
“実話”の映画化に主演しているが、オスカー候補の実績も
あり、ウォシャウスキー兄弟の監督デビュー作“Bound”に
も主演している自分にこんな役しか回ってこないことに苛立
っている。
そして、その映画に登場するチャッキーとティファニーの人
形は、ワイアーに繋がれて人形師の意のままに操作されてい
るのだが、そこにイギリスから密航してきた子供が現れたこ
とから、意識を目覚めさせる。そして再び惨劇が始まる。
実はこのシリーズも以前の作品は見ていなくて、今回チャッ
キーとは初遭遇だった。しかし基本的な設定は、チャッキー
がヴードゥーの秘術により殺人鬼の魂の憑依した人形という
くらいで、それさえ判っていれば別段問題はなかった。
そして本作では、ティリーが本人役で主演するなどパロディ
感覚一杯に物語が展開し、そのパロディも、『サイコ』から
『シャイニング』までの正に王道を行くものばかりで実に判
りやすい。また、人形一家の親子関係などもうまく描かれて
いて、かなり面白かった。
他にもラッパーのレッドマンが本人役で登場したり、映画監
督でもあるジョン・ウォーターズがパパラッチに扮して重要
な役を演じるなど、一部にはハリウッドの裏側も見えたりし
て、映画ファンには興味のつきない作品と言えそうだ。
なお監督は、第1作から全作の脚本を手掛けているドン・マ
ンシーニが満を持して担当。製作は、こちらも全作を手掛け
るデイヴィッド・カーシュナーで、正に大事に育て上げてき
たシリーズの最新作という感じだ。
因に、製作会社のローグは、ユニヴァーサルの傘下でアート
系作品を専門に扱うフォーカスが新たに立上げたホラーブラ
ンドで、同ブランドからはすでに多数の企画が発表されてい
て、これからが楽しみと言えそうだ。

『銀河ヒッチハイク・ガイド』
       “The Hitchhiker's Guide to the Galaxy”
銀河バイパス建設のために突如破壊された地球の唯一人の生
き残りとなった主人公が、ガイドブックの執筆者や、逃亡中
の銀河大統領、地球生まれのヒロイン、それに欝病のロボッ
トらと共に、銀河を旅して回る物語。
1978−1980年に放送されてカルト的な人気を誇ったBBCの
SFラジオドラマの映画化。
因に、今回の映画化では、原作者のダグラス・アダムスが自
ら脚色を手掛けたものだが、その完成直後にアダムスが他界
したために、仕上げだけ『ジャイアント・ピーチ』などのケ
アリー・カークパトリックが担当している。
そして完成された映画は、英米では5月末の週に公開され、
いずれも公開第1週に興行成績第1位を記録したものだ。
とは言うものの、日本では大元のラジオドラマは放送されて
いないし、アダムスが自ら執筆したノヴェライズの翻訳はあ
るものの、さして評判になった訳ではない。従って、日本で
は原作のファンで見に来る観客はほとんど望めない状況と言
えそうだ。
しかし作品は、確かに原作からの引用部分もあるが、ほとん
どのシーンは本作だけでも理解できるようになっており、特
に、ロボット・マーヴィンのキャラクターなどは、アラン・
リックマンの声のお陰で『ギャラクシー・クエスト』のトカ
ゲ頭を思い出したりして、これだけで充分に楽しめた。
他にも、最初と最後に流れるイルカの歌の歌詞も笑えるし、
また映画の全体を通じてはいろいろなギミックのオンパレー
ドで、特に後半の惑星創造のシーンの映像はVFXも決まっ
て見事なものだ。
出演は、主人公に『アリG』のマーティン・フリーマン、銀
河大統領に『コンフェッション』のサム・ロックウェル、ガ
イドの執筆者役に『ミニミニ大作戦』のモス・デフ、ヒロイ
ン役に『あの頃ぺにー・レインと』などのズーイー・デシャ
ネル。
他にも、ジョン・マルコヴィッチが怪しげな伝導師役で登場
したり、また、名演技を見せるマーヴィンの着ぐるみには、
『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』にも出演して
いる侏儒役者のウォーウィック・デイヴィスが入っているそ
うだ。
英米では『エピソード3』『宇宙戦争』の2大作の前に公開
されたが、日本では後の公開になる。同じSFジャンルの作
品と言うことになるが、2大作のような殺伐としたものでは
なく、柔らなユーモアと暖かさに溢れた作品で、見ていて心
が和む感じがした。

『アイランド』“The Island”
『アルマゲドン』のマイクル・ベイ監督による近未来SF。
地球全体が汚染され、汚染を逃れた人々は施設に集められて
集団生活を送っていた。そこでは簡単な作業が日課としてあ
るだけで、食事も充分に与えられる。そして彼らの希望は、
地上でただ一カ所汚染のない“アイランド”への移住者を決
める抽選に当ることだった。
そしてこの日も、一人の黒人男性がアイランドへの抽選に当
り、彼は喜んで旅立って行ったが…そんな生活に疑問を感じ
る男が現れた。彼は、夜ごと自分がアイランドへ向かう船か
ら転落して溺れる悪夢に苦しめられていたのだ。
以下、ネタバレになります。
まあこの筋立てで、クローン技術が背景にあると聞けば、大
抵のSFファンならこの謎は簡単に見破ってしまうところだ
ろう。しかしこれがこのままで終わらせないのが、監督マイ
クル・ベイの腕の見せ所という感じの作品だ。
楽園からの逃亡というテーマでは、僕としては1976年に映画
化され、その後テレビシリーズにもなった“Logan's Run”
を思い出さない訳には行かない。しかし、至って牧歌的な風
景だった1976年作に比べると、その逃亡の描き方もずいぶん
様変わりしたものだ。
何しろ主人公は、かなり早い時間に謎を見破って施設を逃亡
してしまうのだが、それから後は、まあ見てくださいと言う
ような展開となる。しかも主な舞台は未来のロサンゼルスに
なるのだが、これがちょっとレトロな未来図という感じでニ
ヤリとさせられた。
他にも、奇抜なデザインの乗物や、未来の大陸間鉄道まで登
場するが、これらもまた、どれもちょっとレトロな雰囲気を
出しているのも良い感じだった。美術は、ニール・ジョーダ
ン監督作品や、最近では『トロイ』を手掛けたナイジェル・
フェルプス。
VFXアクションもどんどん手慣れてきて、本当に何でもで
きそうな感じになってきているが、アクションの出来映えは
一面では掛ける物量の勝負にもなってくる訳で、こういう作
品を見せられると、日本映画はどう踏ん張っても足下にも及
ばないと感じてしまう。
中心はフリーウェイでのチェイスということになるが、『マ
トリックス・リローデット』を髣髴とさせるスピード感に、
さらに現実味と重量感を付け加えた感じで、その迫力には目
を見張るものがあった。VFXはILMが担当している。

元々はもっと未来を想定して描かれた物語だったようだが、
現実のクローン技術の進歩に合わせて最終的には今から15年
ほどの未来に設定された。従って、全体的な雰囲気は現代と
さほど変わらないが、その中に未来が存在する。そんな現実
感が楽しめた。
原案とオリジナル脚本は、『すべては愛のために』のカスピ
アン・トレッドウェル=オーウェン。これを、この秋公開の
“The Legend of Zorro”や、来年公開夏予定の“Mission:
Impossible 3”を手掛けたアレックス・カーツマン、ロベル
ト・オーチーのコンビが完成させている。
主演は、ユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソン。
これに、ショーン・ビーン、スティーヴ・ブシェミ、マイク
ル・クラーク・ダンカン、そして『イン・アメリカ』でオス
カー候補となったジャイモン・フンスーらが共演している。

『奥様は魔女』“Bewitched”
1964−1972年に亘って放送された往年の人気テレビシリーズ
を、『めぐり逢えたら』のノーラ・エフロン監督とオスカー
女優ニコール・キッドマン主演で劇場版リメイクした作品。
オリジナルのテレビシリーズは、今でも再放送が続いている
ほどの人気番組だが、日本での放送開始は1966年だったとい
うから、まあ僕などはもろにそれを見ながら育った世代と言
えそうだ。その僕が見てこの映画化は、見事にその人気番組
の雰囲気を再現しているものだ。
物語はオリジナル同様、人間界で暮らすことを夢見る若い魔
女が、ハリウッドに引っ越してくるところから始まる。彼女
は、人間界では魔法を使わずに暮らそうとしているが、彼女
の父親はこの考えには大反対だ。
一方、『奥様は魔女』のテレビシリーズでのリメイクが企画
され、そのダーリン役に落ち目の映画スター男優の起用が決
まる。彼は自分を引き立たせるため、サマンサ役には新人の
起用を求めるのだが、例の鼻を動かす仕種のできる女優がな
かなか見つからない。
そして、ふと見かけた女性が見事に鼻を動かしていたことか
ら、彼女を起用するのだが…この女性が、実は本物の魔女だ
ったという展開になる。
まあ、このテレビシリーズのリメイクという辺りが捻りと言
えば捻りだが、この部分は言わば往年のシリーズのファン向
けのサーヴィスという感じで、ここには知っていれば知って
いるほど面白い楽屋落ちが次々と登場してくる。
しかし映画はこの部分を除いても、いわゆる魔女もののコメ
ディをストレートに作り上げているもので、その部分は安心
できると言うか、本当に当時のファミリー向けのテレビシリ
ーズの雰囲気を見事に再現したものになっている。
正直に言って、もっと大掛かりな今風の大特撮シーンが出て
くるのではないかとも期待はしたが、そんなものはこの作品
には不似合いだったと言うところだろう。と言っても、もち
ろんVFXは当時とは比べものにならない進化を遂げている
が…
キッドマン以外の出演者では、ダーリン役の落ち目の俳優に
ウィル・フェレル、魔女の父親役にマイケル・ケイン、エン
ドラ役のベテラン女優(魔女ではない?)にシャーリー・マ
クレーンなど。
特にフェレルは、アメリカでは大評判の主演作“Elf”も日
本では未公開のコメディアンだが、途中で魔法に踊らされる
シーンの芸達者ぶりは見事なもので、僕はようやくフェレル
を見ることができたということでも、うれしく感じられたも
のだ。



2005年07月01日(金) 第90回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 最初に事務連絡を3つ。
 一つ目は訂正で、前回の6月15日付で紹介した“Asterix
aux Jeux Olympiques”の記事で、ジェラール・ドパルデュ
ーが再演するのはオベリスク役、ラングマンが捜すことにな
るのがアステリックス役だった。この配役は、大ベテランの
ドパルデューが主人公を演じていると思い易いが、体形の関
係で彼が演じているのはオベリクスの方。実は以前に映画紹
介を書いたときにも間違えそうだなと思ったものだったが、
案の定、間違えてしまった訳で誠に面目ないと思っている。
 お次は、先日、某パーティの会場で“Batman Begins”の
サウンドトラックについて、作曲家が2人いるのは何故かと
いう質問を受けた。僕は音楽に関しては専門ではないので、
その場で直ぐには答えられなかったが、調べてみたらちょっ
と面白いのでここに紹介しておこう。
 これは、Variety紙に掲載された“Batman Begins”のFilm
Reviewによるものだが、この作品におけるハンス・ジマー
とジェイムズ・ニュートン・ハワードの音楽は、本当の意味
でのコラボレーションが行われたものだということだ。
 それは、一方が物語の展開に合わせた音楽を作曲し、他方
がその曲にコミックスの映画化に合わせたエレメントを加え
ると言うものだそうで、具体的にどちらがどの役割を担当し
たかは明らかにされていなかったが、従来のように2人の作
曲家がそれぞれ独立した場面を担当すると言うようなもので
はなく、真にコラボレーションを行ったということだ。
 そしてこのコラボレーションは、シリーズの第2作でも継
続されるということで、本編の中で匂わされていた続編も、
この作曲家2人立で行くことになるようだ。それにしても、
『ライオン・キング』での受賞を含む6回のオスカー・ノミ
ネーションのジマーと、同じく6回のオスカー・ノミネーシ
ョンのハワード。それぞれ手掛けた作品は100本以上という
人気作曲家2人のコラボレーションとは、製作者がこの音楽
に掛ける意気込みも相当なようだ。
 それともう一つ、同じパーティの席で、昔のテレビドラマ
の話題が出て、その中で、「有人衛星が通信機の故障で地上
と連絡が取れなくなり、その軌道の真下の都市が町中の電灯
を点滅して連絡を取る話は何か」という質問を受けた。これ
には、「デジル劇場」でリー・マーヴィンが主演した“Man
in Orbit”と即答ができたのだが、それ以上のデータは記憶
していなかったので、ここに調べ直した結果を報告する。
 今回調べ直したところによると、この作品には原作があっ
て、1970年代にTVシリーズ化された“The Immortal”(不
死身の男)の原作者でもあるジェームズ・ガンがGalaxy誌の
1955年2月号に発表した“The Cave of Night”という作品
が基になっているようだ。そしてこの作品は、当時のGalaxy
誌の掲載作品をラジオドラマ化していた“X Minus One”と
いうNBCラジオの番組で放送され、さらにその番組がテレ
ビ化されることになってドラマ化権も設定された。しかし、
そのテレビ化は実現しなかったものの、その後にその権利が
デジル・プロダクションに売却されて、1959年5月11日に上
記の題名で放送されたということだ。
 物語は、通信機は故障したものの、実は宇宙から地上への
一方的な通信は行われており、主人公は聞こえているかどう
かも判らないまま、宇宙から見た地上の様子を伝え続ける。
そこには国境の無い世界が広がっており、彼は平和を訴え続
けるのだが、やがてそれが…というお話だ。日本では1963年
以降に放送されたものだが、僕は子供の頃に見て非常に感動
した記憶がある。できれば見直してみたいものだ。
 なお、ガンの原作と、“X Minus One”で放送されたラジ
オドラマの音源は、インターネット上の電子出版のサイトで
有料ダウンロードが可能になっているようだ。
 以上で事務連絡は終りにして、以下はいつものように製作
ニュースを紹介しよう。
        *         *
 日本では1961年に『南海漂流』の邦題で公開された1960年
製作のディズニー作品“Swiss Family Robinson”のリメイ
クが、ジョナサン・モストウの監督で計画されている。
 この原作は、1743−1818年にスイスで生涯を送ったヨハン
・デイヴィッド・ウィースという人が執筆したもので、牧師
でもあったウィースが、自分の4人の息子のために語って聞
かせた物語が基になっているということだ。従って、物語の
成立は18世紀ということになりそうだ。お話は、4人の息子
を抱えたスイス人の一家が新天地オーストラリアへの移住を
目指して航海を始めるが、途中で船が難破して絶海の孤島に
流れ着き、そこでのいろいろな苦労を重ねる内に家族の絆を
深め、また息子たちも成長して行くというもの。なるほど、
息子たちに読み聞かせたという感じのお話だ。
 そしてこの原作は、ハリウッドでは戦前から繰り返し映画
化が行われており、戦前では、1940年にRKOで、翌年『市
民ケーン』を同社で発表するオースン・ウェルズがナレーシ
ョンを担当した作品が製作されている。また、上記のディズ
ニー作品は、後に『素晴らしきヒコーキ野郎』や『バルジ大
作戦』を撮るケン・アナキンの監督で、アニメーション合成
などの特殊効果を活かしたアクションで評価が高い。なお、
ディズニーランドに設けられているアトラクションのツリー
ハウスは、この作品に由来したものだ。
 この他、1958年にはパティ・デュークの主演によるテレビ
版があるそうだし、1975−76年のシーズンには、アーウィン
・アレンの製作、マーティン・ミルナーの主演によるテレビ
シリーズも作られている。また1965−68年に、やはりアレン
が製作したテレビシリーズの“Lost in Space”(宇宙家族
ロビンソン)が、この原作からインスパイアされた作品であ
ることは言うまでもないところだろう。
 そして今回の計画は、1960年ディズニー版のリメイクを、
『T3』のモストウ監督で進めるもので、因にモストウは、
60年版が子供の頃に大好きだった映画の1本なのだそうだ。
また製作者のトッド・リーヴァーマンも、このようなイヴェ
ントムーヴィには、モストウのような才能が欠かせないと期
待を膨らませている。
 なお、今回のリメイクでは、製作者とディズニーとの話し
合いの結果、背景を現代にするということで、グレッグ・ポ
ワリエールの脚本から、『ブレーキ・ダウン』と『U−57
1』でもモストウに協力した脚本家のサム・モンゴメリーが
リライトを行っている。ただし、配給を担当するブエナ・ヴ
ィスタの首脳からは、原作通りの時代背景に戻す可能性も示
唆されているそうだ。
 一方、モストウ本人も、2002年8月15日付第21回で紹介し
ている“Tonight, He Comes”が、ウィル・スミスの主演で
コロムビアで進み始めており、また“Terminator 4”の計画
も、『T3』を手掛けたマイクル・フリアースとジョン・ブ
ランケイトの脚本待ちという状態だそうで、これらが先に進
行する可能性はあるようだ。
 従って計画の実現には、まだ多少時間が掛りそうだが、子
供が夢見るようなファンタシーが一杯に詰まった作品には、
大いに期待を持ちたいところだ。
        *         *
 お次は、ちょっと意外なところから登場してきた話題で、
25年前の1980年に亡くなった俳優スティーヴ・マックィーン
の遺品の中から、彼が生前映画化を夢見ていた作品の1700ペ
ージに及ぶストーリーボードや覚え書きが発見され、改めて
その実現をワーナーで行うことが発表された。
 この作品は“Yucatan”と題されたもので、マックィーン
の息子のチャドと、孫のランス・スローンが遺品の整理をし
ている中で、古い2個のトランクに詰められた特注の皮表紙
で装丁された16冊の本を発見。それを開くと、中には映画化
を目指した詳細なストーリーボードやノートがぎっしりと納
められていたということだ。
 作品の内容は、主人公を含む窃盗団の一味がメキシコに赴
き、そこで数百年に渡ってユカタン半島に隠されてきた財宝
を発見するというもの。そこには、生前マックィーンが興味
を持っていたという征服者に支配されたメキシコの歴史や文
化が織り込まれる一方、マックィーンの代表作『大脱走』を
髣髴とさせるオートバイによるチェイスなどのアクションも
満載で、もしこの作品が『ジョーズ』よりも前に公開されて
いたら、アクション映画の歴史が変わっていたかも知れない
と思えるほどの完成度の高いものだということだ。
 そしてワーナーでは、この作品の製作者に『ハリー・ポッ
ター』シリーズのデイヴィッド・ヘイマンを指名し、さらに
脚本化を、テレビシリーズ“Prison Break”のクリエーター
で製作も手掛けるポール・ショイリングに依頼。ショイリン
グは、現代にマッチするよう多少の手直しはするものの、マ
ックィーンの意志を最大限に尊重した脚本を完成させるとし
て、すでに自ら現地に赴いて海底洞窟に潜水するなどの実地
調査を行っているそうだ。また、チャドとランス・スローン
も製作総指揮として参加することになっている。
 ただし今回の計画は、まだ監督も出演者も製作時期も未定
のものだが、最近再公開された『大脱走』やパニック映画の
最高峰とも言える『タワリング・インフェルノ』などを見て
も、マックィーンのアクションは当時の水準からは頭抜けて
洗練されたものだった。そのマックィーンが夢見た作品の映
画化には、一刻も早く出会いたいものだ。
        *         *
 “The Polar Express”が大成功を納めたCGアニメーシ
ョンの新技術パフォーマンス・キャプチャーの第2弾は、す
でに“Monster House”が2006年夏の公開を目指して製作中
だが、それに続いて、再びロバート・ゼメキスの監督による
“Beowulf”の計画が正式に発表された。
 この作品については、今年2月1日付の第80回でも1度紹
介しているが、10世紀にイギリスで完成された長編叙事詩に
基づくもので、物語では主人公が巨大な怪獣と戦う姿なども
描かれている。また脚本は、『もののけ姫』のアメリカ版を
手掛けたニール・ゲイマンと、『パルプ・フィクション』の
ロジャー・アヴェリーが共同で作り上げたものだ。
 そして今回はこの出演者に、レイ・ウィンストン、アンソ
ニー・ホプキンス、ブレンダン・グリースン、ロビン・ライ
ト・ペンが発表された。なお新技術では、出演者は声だけで
なく、演技も取り込まれることになっているが、昨年紹介さ
れたトム・ハンクスによるパフォーマンスはかなり愉快なも
のだった。しかし今回の出演者もそれは全員了承済というこ
とで、ホプキンスもその中に含まれる訳だが、彼がセンサー
の付いたボディスーツを着て演技をしている姿を想像すると
かなり面白そうだ。
 これはぜひとも撮影風景も見せてもらいたいものだが、同
時にこれだけの顔ぶれが揃って撮影がうまく行けば、この後
に続く俳優への交渉も楽になるもので、今後に製作される作
品への展望も大いに開けそうな感じだ。
 なお、出演者のトップに挙がっているウィンストンは、ア
ンソニー・ミンゲラ監督の新作“Breaking and Entering”
や、マーティン・スコセッシ監督による『インファナル・ア
フェア』のアメリカン版リメイク“The Departed”にも出演
しているということだ。
        *         *
 2002年1月15日付の第7回と2004年2月1日付の第56回で
も紹介したPCゲーム“American McGee's Alice”の映画化
の計画が、ようやくユニヴァーサルから発表され、この監督
を“The Texas Chainsaw Massacre”のリメイク版を手掛け
たマーカス・ニスペル。主演を“Scooby-Doo”やアメリカ版
『呪怨』のサラ・ミッシェル・ゲラーで進めることが報告さ
れた。
 この作品は、以前にも紹介したように、ルイス・キャロル
の『不思議の国のアリス』の物語をゴシック調に描き直した
もので、大人になったアリスが不思議の国を再訪し、トラン
プ兵たちと戦いを繰り広げるという内容。ゲームのジャンル
はファンタシーアクションとなっているが、かなりダークな
物語が展開されることになりそうで期待が持てる。
 ただしゲラーは、現在はドウェイン‘ザ・ロック’ジョン
スン共演による“Southland Tales”というSF作品を7月
撮影開始の予定でワーナー・インディペンデンスで準備中、
さらに秋からは、同じくWIで、メリッサ・バンク原作のベ
ストセラー“The Girls' Guide to Hunting and Fishing”
を映画化する計画も予定されており、今回の計画が実現する
のは、ちょっと先になりそうだ。
 なお、映画化の題名は“Alice”となるようだ。
        *         *
 “Pirates of the Caribbean”の2本の続編の撮影でバハ
マに滞在中のジョニー・デップが、撮影中の作品に付いてイ
ンタビューに答え、作品に対する並々ならぬ思いを語ってい
る。
 それによると、まず彼がジャック・スパロー船長を再演し
た経緯については、「この役が好きでたまらない」、「請わ
れれば“Pirates 7”までもやりたい」とのことだ。また、
噂されているローリング・ストーンズのキース・リチャーズ
の出演については、まだ実現はしていないものの、デップ自
身が出演交渉をして良い感触を得ているそうで、後はストー
ンズのツアー日程との兼ね合いということだが、「実現すれ
ば最高だ」とも述べている。
 まあ、リップ・サーヴィスの面も多分にあるとは思うが、
それにしてもデップクラスの俳優が、ここまで役にのめり込
んでいるというのも珍しいこと。各社持っている作品のシリ
ーズ化には躍起となっているところで、主演俳優のこの発言
は製作者には願ってもないところだろう。後は、脚本家と監
督の意向もあるとは思うが、これらはいざとなれば取り替え
は利くものものだし、製作者のブラッカイマーが本気になっ
たら、これは面白そうだ。
 なお、4月に始まった撮影は9カ月以上掛りそうだという
ことで、先日は出演者の一人が耳の治療でロンドンに戻った
ために、1カ月半ほど中断するとも発表されていたが、デッ
プには“Charlie and the Chocolate Factory”のプロモー
ションも挟んで、相当に余裕のある撮影体制が採られている
ようだ。
        *         *
 後半は短いニュースをまとめておこう。
 まずは続編の話題を3つ。
 その1つ目は、5月1日付の第86回で紹介した“National
Treasure”の続編の計画が正式に発表されている。
 この発表は、ディズニー・スタジオと製作者のジェリー・
ブラッカイマーによって行われたものだが、ジョン・タート
ルトーブ監督の再登板も予定され、脚本は上の“Swiss …”
にも登場のグレッグ・ポアリエールが新たに担当することに
なっている。ただし続編の題名は“National Treasure 2”
となっていて、先日監督が中国で口走った“International
Treasure”ではないようだ。
 とは言え、製作の準備が開始されたのは事実で、今後数年
以内に、またまた世紀の謎に挑む大冒険を見ることができそ
うだ。
 お次は“Resident Evil”(バイオハザード)で、すでに
プレプロダクションが開始されている第3作に続く、第4作
の計画が報告されている。
 このシリーズでは、昨年9月15日付の第71回でも紹介した
ように、第1作の監督と第2作の脚本製作を担当したポール
・W・S・アンダースンが、第3作となる“Resident Evil:
Afterlife”の脚本をすでに完成させているが、今回はさら
に第4作の構想が明らかにされたもので、それによると第4
作では東京を舞台にするということだ。
 因に、アンダースンの構想では、第1作ではゲームの始ま
る前、第2作がゲームそのもので、第3作はゲームの後=ゲ
ームが世界に拡散して行く姿を描くとしていたが、さらに第
4作の舞台が東京というのは、一体何を描こうというのだろ
うか。この第4作の構想は、恐らくは第3作の脚本執筆中に
発展してきたものと思われるが、かなり気になるところだ。
 ただし、実はプレプロダクション中と言われる第3作の監
督もまだ決定しておらず、この監督が決定して撮影が近々に
行われたとしても、第4作の製作はさらに2年ほど先という
ことになりそうだ。
 続編の話題3つ目は、マット・デイモン主演で2002年に第
1作の“The Bourne Identuty”が発表され、昨年第2作の
“The Bourne Supremacy”が製作されたジェイスン・ボーン
シリーズで、第3作の“The Bourne Ultimatum”の脚本に、
前2作を手掛けたトニー・ギルロイが三度契約したことがユ
ニヴァーサルから発表された。
 このシリーズはロバート・ラドラムの原作に基づくものだ
が、実は記憶を失った政府機関の殺し屋という基本的な設定
は用いられているものの、ストーリーの展開はかなり自由に
作り替えられているということで、今回もギルロイの手腕に
期待が集まっている。また製作状況では、監督は未定で、主
演のデイモンに関しては彼以外に考えられない当たり役にな
っているものだが、そのデイモンからも、脚本を読んで判断
するという返事が来ているそうで、全てはギルロイの脚本に
掛っているようだ。
 なおこのシリーズでは、故ラドラムの原作は第3巻で終っ
ているものだが、果たして映画化も第3作で終りにするもの
かどうか、すでに自由な発想で物語が展開しているのなら、
この後も延長戦が可能になりそうだが、これもギルロイの腕
に掛っているようだ。
        *         *
 最後にもう1本、リメイクの情報で、『呪怨』のアメリカ
版リメイク“The Grudge”を成功させたサム・ライミのゴ
ースト・ハウスから、ホラー映画の古典中の古典とも言える
“Monkey's Paw”をリメイクする計画が発表されている。  
 この物語は、元々はW・W・ジェイコブスというイギリス
人作家の短編小説に基づく舞台劇がオリジナルとなるようだ
が、願いを叶える「猿の手」のミイラを手に入れた一家が、
願いは叶うもののどんどん不幸に陥れられるというお話で、
記録によると1915年の無声映画による最初の映画化から、主
にイギリスで繰り返し製作され、またオムニバス映画の1篇
としても映画化が行われているようだ。
 そして今回は、その最新の映画化を、“Invasion of the
Body Snatchers”のリメイクにも関わっているデイヴ・カジ
ャニッチと、トム・マカリスターの脚色で進めるもので、最
新技術を駆使したリメイクが期待される。
 なおゴースト・ハウスでは、この他に、“The Grudge 2”
や、ライミ監督の出世作“The Evil Dead”のリメイク、ま
た香港出身のホラー監督パン兄弟のアメリカ進出の計画など
も進めているものだ。


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井口健二