井口健二のOn the Production
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2005年03月31日(木) リンダ・リンダ・リンダ、フォーガットン、デンジャラス・ビューティー2、リチャード・ニクソン暗殺を企てた男



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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『リンダ・リンダ・リンダ』              
『リアリズムの宿』の山下敦弘監督による学園青春ドラマ。
山本監督の紹介では、もっと別の作品を上げるべきなのだろ
うが、僕はこの作品しか見ていないし、また気に入っている
作品でもあるので、こういう紹介にさせてもらう。    
前の作品を見たときにも、何が良いかと言われると、実はよ
く判らない感じがあった。でも、何かしら素朴な、本当に映
画の好きな人が作っているのだろうなと感じさせる、そんな
雰囲気が好きな作品だった。              
本作もそれは同じ、だから何なのと言われてしまうと身も蓋
もないが、見ている間は楽しいし、多分作っている側も楽し
めたのではないかと思わせる、そんな雰囲気が伝わってくる
作品だ。しかも今回は、撮影の体制もかなり大掛かりで、そ
の辺も堪能できた。                  
物語の舞台は高校の学園祭。3日間の学園祭の最終日は、体
育館でのバンド演奏が締めることになっていた。ところがそ
の目玉の女子ロックバンドでは、リードギターが授業で突き
指したのを切っ掛けに仲違いが発生、ヴォーカルがいなくな
ってしまう。                     
しかし、残りのメムバーは出演を決意し、演奏曲にはそれか
らでも間に合いそうなブルーハーツの楽曲を選ぶ。そして、
相談を続ける彼女たちの前に、次に現れた女子をヴォーカル
とすることにしたのだが…ちょうどそこに通りかかったのが
韓国からの留学生だった。               
こうして、キーボードから転向した急造のリードギターと、
日本語の覚束ないヴォーカルで、3日間の徹夜の猛特訓が始
まったが…                      
出演者は、急造ギタリストに、『ローレライ』などの香椎由
宇。留学生を、一昨年の東京国際映画祭で上映された韓国版
『リング』で貞子を演じ、他にはポン・ジュノ監督の『ほえ
る犬は噛まない』などに主演しているペ・ドゥナ。    
特にペ・ドゥナは、主演者たちの中では実年齢が一番上とい
うこともあるし、韓国ですでに主演を張っている実力もある
のだろうが、確かに巧くて、ちょっとした細かい描写などに
も素晴らしい雰囲気を出していた。           
他に、『学校の怪談3』の前田亜季。また、若手女性ミュー
ジシャンの関根史織、湯川潮音、山崎優子らが適材適所とい
うか、巧い使われ方で良い効果を上げている。      
正直に言って、お話は在来りかも知れない。しかしいろいろ
あるこの手の学園ものの中では、特に悪いところもないし、
巧くまとめられた作品という感じだった。また本作では、そ
こに無理矢理感動を盛り込もうともしていないところも好感
が持てた。                      
                           
『フォーガットン』“The Forgotten”          
ジュリアン・モーア、ゲイリー・シニージ共演のサスペンス
ドラマ。『フェノミナン』のジェラルド・ディ=ペゴの脚本
を、『愛がこわれるとき』などのジョセフ・ルーベンが監督
した。                        
主人公の女性は、14ヶ月前、子供だけのキャンプに送り出し
た幼い息子を飛行機事故で亡くした。そして、事故から1年
以上が経つ今も悲嘆に暮れ、立ち直れないまま日々を送って
いる彼女に、周囲の人たちは息子のことは忘れるように言い
聞かせていた。                    
そんな彼女に記憶障害の兆候が見え始める。そして彼女が大
切に飾っていた家族3人の写真から息子の姿が消える。それ
を夫の細工と信じ込んだ彼女は夫を詰るが、夫は彼女に、妊
娠はしたが流産で、息子は生まれなかったと言い始める。 
愛した相手の喪失と、それに関わる記憶の問題は、公開中の
『エターナル・サンシャイン』でも描かれているが、本作は
それとちょうど反対の物語で、その点で興味深かった。  
というところで、以下はネタばれになります。      
実は、この作品のアメリカでのジャンル分けはSFになって
いる。つまり、一般の観客には呆気に取られるような展開が
この後に待ち構えているのだが、正直に言ってSFファンの
立場からすると、この展開ではちょっと物足りない。   
逆にSFにしないでいてくれたほうが、もっと凄いものにな
ったのではないかとも思ってしまうが、それは無い物ねだり
かな…ただし、そこに盛り込まれたいろいろな仕掛けは、ス
カイカムや小型のフライカムを駆使した撮影の見事さもあっ
て、素晴らしい迫力で描かれていた。          
また、ソニー・イメージワークスでケン・ラルストンが手掛
けたVFXも効果的だった。              
例によって日本では、本作はSFとしては売られないことに
なっている。それは仕方のないことではあるが、やはりこの
ような作品がSF映画として正当に評価されることを希望し
たい。僕のサイトを読みに来てくれる人なら、この点は理解
していただけると信じて、あえて記しておく。
      
                           
『デンジャラス・ビューティー2』           
      “Miss Congeniality 2: Armed and Fabulous”
2000年に公開されたサンドラ・ブロック主演作の続編。前作
でミスアメリカ・コンテスト爆破計画を、見事な活躍で未遂
に終らせたFBIの潜入捜査官グレイシー・ハートが、今回
はラスヴェガスで凶悪なミスアメリカ誘拐犯に立ち向かう。
物語は、前作からはあまり日時の経っていない時点から始ま
る。そして、前作の事件で顔の売れてしまったグレイシーに
は、大好きな潜入捜査もままならないという状況。しかも、
事件を切っ掛けに付き合い始めた刑事からは別離を言い渡さ
れて、落ち込む一方なのだ。              
そこで、上司の勧めもあってFBIの顔としての広報活動に
従事することを決意したグレイシーは、ベテランスタイリス
トの指導のもと、見事な容姿に変身。自伝を出版したり、テ
レビのトークショウに出演したりと、セレブな生活を始める
ことになるが…                    
そんなときラスヴェガスでミスアメリカの誘拐事件が発生。
グレイシーはFBIの顔として現地に赴き、記者会見のスポ
ークスパースンを務めることに…しかし彼女自身は、前作で
親友となったミスアメリカの救出作戦に従事したくて仕方が
ない。                        
ところがラスヴェガス本部の捜査員たちは、彼女の存在を煙
たがるばかり、そして…                
正直に言ってつまらない作品ではないと思う。しかし何と言
うか、多分やり過ぎで、しかもその整理がうまく付いていな
い、そんな感じの作品だ。               
例えばニューヨーク本部詰めの主人公が、ラスヴェガスの事
件に派遣される。この状況というのは、ラスヴェガス側に言
わせれば迷惑至極なわけで、現地の捜査担当者との確執が生
じるのは当然のことだ。                
ところがこの映画では、その肝心の部分がうまく描けていな
いから、単に現地の担当者は主人公の妨害ばかりしている全
くの無能に見えてしまう。他の部分も同じようなもので、脚
本はちゃんとしているのに、何か描き方がずれている、そん
な印象を持った。                   
本作の製作総指揮も務めるサンドラ・ブロックのいいところ
を出し切ろうとする努力で、ブロック自身は大車輪の活躍を
するのだが、ちょっと空回りの感じは否めない。ただし、そ
ういうことは別にすると、いろいろなギャグは結構楽しめる
作品だった。                     
例えば前作に引き続き登場のウィリアム・シャトナーは、登
場するなり長年の相棒が…という発言。ここでトレッキーな
ら、「誰のことだ」と突っ込みたくなる。そんな楽屋落ちも
含めたギャグが満載なのだ。              
従って、そういうことが気持ち良く楽しめる人には、それな
りに楽しめる作品になっていると思う。まあそういうことが
楽しめない人には、ここは遠慮してもらうことにしよう。 
前作はマイクル・ケイン、キャンディス・バーゲンという大
御所2人が出演した作品。これに対して本作には、そんな大
御所は登場しない(ケインは出たがったようだが…)。つま
りそんな規模の作品な訳で、映画ファンならその点は認識し
て楽しみたいところだ。                
                           
『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』        
        “The Assassination of Richard Nixon”
ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ共演で、実話からインスパ
イアされた物語という社会派ドラマ。恐らくは優しすぎる性
格が禍して、人生何をやっても失敗続きの男が、追いつめら
れた挙げ句に大統領暗殺を決意する。          
ペンとワッツの共演は『21グラム』に続くものだが、前作
は、理解はするが内容的にどうにも好きにはなれない作品だ
った。それは、ペンがオスカーを獲得した『ミスティックリ
バー』も同じで、ペンはどうも僕の性に合わない俳優という
感じになっていた。                  
そんな心境で見た本作だったが、この作品のペンは前の2作
ほど嫌な感じではなかった。はっきり言って、人生が狂って
しまった責任は本人にもあるのだが、映画を見ていて、あの
時代なら仕方なかっただろうと思わせる、そんな親近感も感
じてしまった。                    
政府が大声で言い続ける政策が、実は口先だけで、全く民間
の役に立っていない。そんな今も変らぬ状況が1970年代にす
でに始まっていた。そんなことが明白に描かれる。それは映
画の中ではニクソン批判なのだが、ブッシュに言い換えても
全く違和感がない。                  
それにこの状況は、今の日本も全く同じな訳で、映画の中の
ニクソンは、そのまま小泉と言い換えることもできそうだ。
なおペンは、オスカー受賞作ではクリント・イーストウッド
監督作に出演していたので、多分共和党支持者だと思うのだ
が、本作のニクソン批判振り、そしてそれがブッシュにも繋
がるような描き方は、ちょっと意外な感じもした。    
なお、映画はウォーターゲート事件の捜査が始まる辺りで終
ってしまうが、実はニクソンが辞任したときに僕はちょうど
アメリカにいて、新聞の号外なども手に入れたものだ。そん
な時代背景の作品ということでも、親近感が沸いたのかも知
れない。                       
当時のアメリカのちょっと荒廃しかかった雰囲気も、うまく
描かれていたように感じた。              



2005年03月15日(火) 第83回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 『マトリックス』シリーズ完結に続いて、『コンスタンテ
ィン』が公開されたばかりのキアヌ・リーヴスの次回作に、
またまたVFX満載の映画の計画が発表された。
 発表された作品の題名は“The 8th Voyage of Sinbad”。
この題名でおやと思われた方もいると思うが、伝説的な特撮
マン=レイ・ハリーハスゼンが手掛けたシンバッド・シリー
ズの最新作が、往年のシリーズを配給してきたコロムビア映
画(ソニー・ピクチャーズ)で計画され、その主演にリーヴ
スの起用が発表されたものだ。
 しかもこの新作の監督を、『XxX』や『ワイルド・スピ
ード』、そして今夏には『スティルス』が公開されるロブ・
コーエンが担当することも発表されている。上記の作品では
メカマニアを唸らせたコーエン監督が、アラビアンナイトの
世界でどのような物語を描き出すかも楽しみだ。
 因にこの計画については、2002年1月1日付の第6回でも
一度紹介しているが、当時の発表では、監督をジョン・シン
グルトンが担当することになっていた。しかしその計画は実
現しなかったもので、新たにVFXアクションには手慣れた
コーエン監督で計画の練直しが進められているようだ。
 脚本は、3年前の報告と同じ『T3』のオリジナルを手掛
けたテディ・サラフィアンの脚本からとなっているが、今回
はこれをチャーリー・ミッチェルという人がリライトしてい
るということだ。また、サラフィアンの脚本に対してはコー
マック&マリアンヌ・ウィバリーという共同執筆者の名前も
上がっていた。
 物語は、紀元8世紀の中国を舞台に、シンバッドと彼の船
の仲間たちがアラジンの魔法のランプを捜すというもので、
そこには美しい女皇帝や超自然のパワーを操る黒幕の将軍、
さらに摩訶不思議な怪物たちとの闘いも描かれるとある。
 そしてこの怪物たちは、現代では当然CGIで描かれるこ
とになるものだが、この視覚効果は、先日のアカデミー賞で
オスカーを受賞した『スパイダーマン2』のジョン・ダイク
ストラ率いるソニー・イメージワークスが担当することにな
るようだ。ハリーハウゼン特撮が持つ独特の雰囲気を、彼ら
がどこまで再現するかにも注目したい。
 なお、以前のシリーズでは、第1作のシンバッド役はケヴ
ィン・マシューズ、第2作はジョン・フィリップ・ロー、第
3作はパトリック・ウェインがそれぞれ演じていたもので、
リーヴスは第4作にして4代目となる。ただし、今回の題名
の“The 8th Voyage of Sinbad”は、第1作“The Seventh
Voyage of Sinbad”から取られたものと考えられ、ここから
新たなシリーズの開幕となるのだろうか。
        *         *
 昨年度、全米興行No.1の大ヒットを記録した『シュレック
2』に続いて“Shrek 3”、さらに“Shrek 4”の計画が正式
に発表された。
 これらの計画に関しては、『シュレック2』のプロモーシ
ョンで来日したドリームワークスのジェフリー・カツェンバ
ーグが公表していたものだが、2007年5月に全米公開予定の
“Shrek 3”については、すでにマイク・マイヤーズ、エデ
ィ・マーフィ、キャメロン・ディアス、それに『シュレック
2』から登場したアントニオ・バンデラスらの声の再登場も
決まって、プレプロダクションが開始されているようだ。
 それに続いて今回は、“Shrek 4”の計画が報告されたも
ので、報告では、脚本に1995年に公開された『赤ちゃんバン
ザイ?!』の脚本監督でも知られるティム・サリヴァンの起用
が発表されている。以前のカツェンバーグの発言では、シリ
ーズの全体は4部作になるということで、従ってサリヴァン
の脚本が最終話ということになるが、一体どのような展開に
なるのだろうか。
 因にサリヴァンは、ケンブリッジ大卒で、弁護士の資格を
持ちながらスタンダップコメディアンとしてロンドンの舞台
に立ち、そこからイギリス映画界に進出した人物。またイギ
リス映画時代のサリヴァンは、主に古典文学の脚色を手掛け
ていたようだが、1995年に自作のオリジナル脚本を監督した
上記の作品が高い評価を受けた上に興行的にもヒットし、そ
の成功でハリウッドに招かれたということだ。ハリウッドで
はすでにニューライン作品などの脚本や、パラマウントでは
自作を監督する予定もあるそうだ。
 多分、物語はドリームワークス側が用意したものを、サリ
ヴァンが脚色するということになるのだろうが、本シリーズ
は、元々が古典的な妖精物語をベースにマイヤーズやマーフ
ィらのコメディのノリをミックスした作品で、これに古典文
学を脚色してきたという実績や、スタンダップコメディアン
だったという経歴が最大限に発揮されることを期待したい。
 一方、シリーズの関連では、『シュレック2』でバンデラ
スが演じた「長靴をはいた猫」を主人公にしたスピンオフの
計画も報告されている。“Puss in Boots”と題されたこの
作品では、デイヴィッド・H・スタインバーグという人が脚
本を担当、バンデラスの声の出演も決定しているようだが、
公開に関しては劇場にするか、直接DVD売りになるか未定
のようだ。
        *         *
 久しぶりに競作の話題で、パキスタンでの取材中に誘拐さ
れ、殺害された元ウォール・ストリート・ジャーナル記者ダ
ニエル・パールについて描いた作品が2本計画されている。
 その1本目は、記者の未亡人マリアンヌ・パールが発表し
た回想録“A Mighty Heart: The Brave Life and Death of
My Husband Danny Pearl”を映画化するもので、この計画は
2003年にワーナーが映画化権を獲得して、当時の計画ではブ
ラッド・ピットらのプランBが、ジェニファー・アニストン
の未亡人役で製作を進めることになっていた。
 これに対して今回発表された2本目は、フランス人ジャー
ナリストのベルナルド=アンリ・レヴィが、現地調査を敢行
して発表した英題名“Who Killed Daniel Pearl?”という書
籍に基づくもの。この本の中では、パール記者がパキスタン
の諜報機関とアルカイダの関係を暴く証拠を掴んだために殺
されたという筋書きになっているとのことだ。
 そしてこの作品の映画化権をビーコン・ピクチャーズが獲
得し、エド・ズウィックの監督で映画化する計画が発表され
ている。因にビーコン社では、レヴィの本が英訳される前に
映画化権を押さえたそうだ。
 ただし今回の2つの計画では、前者は未亡人によるパール
記者本人の人物像に迫ったもののようだし、後者は事件その
ものを検証した作品のようで、作品のテーマには違いが見ら
れる。従って、競作とは言っても内容は全く違ったものにな
りそうだ。これは逆に言うと、これらの企画を合体すること
も可能なようにも思えるもので、また、後者の監督に予定さ
れているズイックは、『ラスト・サムライ』などワーナーと
の関係も浅くないものがある。ということで、ここは何とか
競作回避という線も考えてもらいたいところだ。
 競作というのは、最近の『アレキサンダー』の例を見るま
でもなく、なかなか両方が上手く行くということがないもの
だが、今回はどうなるだろうか?
        *         *
 ところで、ジェニファー・アニストンとプランBの関係で
は、現在メリル・ストリープとの共演で“Wanted”という作
品がワーナー傘下で進められている。
 この作品は、元潜入捜査官のキム・ウォゼンクラフトによ
る原作小説を映画化するもので、アニストン扮する女性警官
が陥れられて刑務所に収監される。しかしそこでストリープ
扮する囚人と同房になり、刑務所内に横行する暴力から逃れ
るために2人で脱獄計画を練る、というお話。これを“The
Longest Yard”のリメイクなどを手掛けるシェルドン・ター
ナーが脚色したものだ。
 ただし監督は未定とされていて、この作品の製作が何時に
なるかは不明だが、この計画自体は今年3月になってから発
表されたもので、現状で前の記事の競作作品をアニストンと
プランBで進めることに問題はないようだ。
        *         *
 3月3日に撮影開始されたばかりのブライアン・シンガー
監督“Superman”に関連して、撮影の行われているオースト
ラリア・ニューサウスウェールズ(NSW)州の州政府関係
者から、早くもその続編を期待する発言が飛び出した。
 もちろんこの続編の計画は、まだワーナーからのGoサイン
も出ていないものだが、実は、過去にNSW州で撮影された
『マトリックス』の2本の続編では、1億6000万ドル以上の
経済効果をもたらしたということで、ハリウッド映画の大作
には一地方政府に期待を抱かせるだけのものはあるようだ。
 因に、“Superman”の撮影に関しては、当初は同国クィー
ンズランド州のWBムーヴィランドの隣地に恒久的なセット
を建設して、撮影終了後はアトラクションとして利用する考
えもあったようだ。しかしそれでも経費が掛り過ぎるという
ことでその計画はキャンセルされ、替って当地のフォックス
スタジオにある2つのサウンドステージと、その間の敷地を
使って巨大なゴッサムシティのセットが建設されたものだ。
 そして、そのセットを使って撮影が行われている訳だが、
NSW州の関係者は、「我々はこの作品の製作に対して全面
的な協力を行っているし、続編が作られる際にも、その体制
は変わらない」と語っている。
 なお、続編に関しては一応準備は開始されているようで、
実はクラーク・ケントが幼年時代を過ごしたニュー・イング
ランドの風景を求めて、ロケーションハンティングも行われ
ている。そしてその候補地としてもNSW州の田園地帯が検
討されているようだ。ここまで来れば続編の撮影もかなり有
力と言えそうだが…因に今回の記事では、この続編の題名が
“Red Sun”になるとも報告されていた。
        *         *
 ロビン・ウィリアムスが久しぶりに本格コメディに主演す
る計画で、“RV”というその作品の監督を『MiB』などの
バリー・ソネンフェルドが担当することが発表された。
 今回の作品は、『チャーリーと14人のキッズ』のジェオフ
・ロドキーのオリジナル脚本から、ローウェル・ガンツ、バ
バルー・マンデルのベテランコンビがリライトしたもので、
物語は、最新式のRV車をレンタルしてコロラド州ロッキー
山中のキャンプ場を目指した一家が、その道中やキャンプ場
の近所付き合いなどで様々なトラヴルに見舞われるというも
の。そしてこの一家の父親をウィリアムスが演じるものだ。
 因にウィリアムスの主演作では、近年にもジャンル分けが
コメディとなっているものはあるが、いずれも犯罪が絡むな
どダークな色合いもので、本作のような本格的なコメディは
1997年の『フラバー』以来となるようだ。
        *         *
 『キル・ビル vol.2』から1年、鳴りを潜めていたクェン
ティン・タランティーノ監督の次回作に、『13日の金曜日』
の続編の可能性が高まってきた。
 この計画は、2003年公開の『フレディーVSジェイソン』が
全米で8200万ドルという予想を超えるスマッシュヒットとな
ったことを受けて、製作元のニューラインが進めているもの
で、従来は低予算で製作されて来たシリーズの新作に、同社
では最大規模の製作体制を取ることを決めたようだ。そして
一応の題名は“The Ultimate Jason Vorhees Movie”と名付
けられている新作では、タランティーノは脚本と監督も担当
することになっている。
 誕生25周年を迎える元祖スプラッターホラー・シリーズの
新作に、『パルプ・フィクション』でオスカー脚本賞を受賞
したタランティーノがどのような新風を吹き込んでくれるこ
とか、楽しみだ。因に報告では、「タランティーノは、古典
的なホラー映画シリーズで楽しむための陰謀を企てている」
と紹介されていた。
        *         *
 またまたゲーム業界から映画への参入で、『リディック』
のゲーム版の脚本と製作などを手掛けたフリント・ディルと
ジョン・ズーアのチームが、ディメンションと映画製作に関
する2年間の優先契約を結んだことが発表された。
 彼らはすでにディメンションとの間で、“Backwater”と
いうオリジナルゲームの契約を結んでいるが、この脚本をさ
らに映画に発展させることが検討され、彼らの製作総指揮に
よる映画製作が進められているということだ。そして今後は
これをモデルケースとして、彼らが執筆する脚本を、ゲーム
と映画の両方で製作する契約を結ぶことになったものだ。
 なお、彼らが手掛けた『リディック』のゲーム版は、昨年
度の映画原作ゲームのベスト作品に選ばれているそうだ。ま
た彼らは、ディメンション作品でロベルト・ロドリゲス監督
のDGA脱退につながった映画“Sin City”のゲーム版や、
ワーナー作品の『コンスタンティン』のゲーム版の製作など
にも関わっている。
 因に、ディメンションの親会社となるミラマックスは、創
始者ボブ&ハーヴェイ・ワインスタイン兄弟のディズニーと
の決別に揺れているが、兄弟は決別後にミラマックスから離
脱した後も、ディメンションの名前は自分たちのものにする
方針ということで、今回の契約もその新生ディメンションと
結ばれたものになるようだ。
        *         *
 今夏の大作“War of the World”(宇宙戦争)をパラマウ
ントと共同製作しているドリームワークスが、同作の脚色を
手掛けたデイヴィッド・コープの新企画に対し、ユニヴァー
サルと共同で200万ドルの契約を結んだことが発表された。
 この作品は、“Ghost Town”という題名のみ紹介されてい
て詳しい内容は明らかにされていないが、ジャンルはロマン
ティックコメディということだ。そしてコープは、監督も手
掛けることになっている。また脚本は、コープとジョン・カ
ムプスが執筆することになっているが、その執筆は“War of
the World”の撮影が完了し次第開始されるということで、
多分そろそろ着手されているというところだろう。
 因に、企画段階での200万ドルという金額は、ハリウッド
でもかなり高額のようだが、『ジュラシック・パーク』『ミ
ッション・インポッシブル』『スパイダーマン』と続くコー
プの作品歴では当然と考えられているようだ。
 一方、コープが監督を手掛けるのは、昨年公開の『シーク
レット・ウィンドウ』に続くことになるが、スティーヴン・
キングの原作を脚色した前作に対して、今回はオリジナルの
アイデア。また、どちらかというとアクション中心の作品で
実績のあるコープが、どのようにロマンティクな、しかもコ
メディを見せてくれるかにも興味を引かれるところだ。
 なお、コープとカムプスは、『ジュマンジ』の続編と称さ
れるクリス・ヴァン・オールズバーグ原作“Zathura”の脚
色も担当している。
        *         *
 2002年4月15日付の第13回で紹介した“The Wicker Man”
のリメイクが、以前の情報通り、ニコラス・ケイジの主演、
ニール・ラビュートの監督で実現されることになった。 
 この作品は、以前にも紹介したように、1973年にエドワー
ド・ウッドワードとクリストファー・リーの共演で映画化さ
れたオリジナルをリメイクするもので、イギリス製作のオリ
ジナルでは、若い女性ばかりの連続失踪事件を追う刑事が、
スコットランド西海岸の小さな島で、謎めいたコミュニティ
ーの秘密に迫るというもの。
 そしてリメイク版では、舞台を現代のメイン州に移すとい
うことで、撮影は7月15日からカナダのヴァンクーヴァーで
行われることになっている。なお以前の紹介では、舞台はア
メリカ西海岸となっていたが、情報が間違っていたようだ。
まあオカルト的な話は、西海岸でもできないことはないが、
やはり東海岸の方が雰囲気がある。
 ただしこの計画、多分ケイジの刑事役で製作されることに
なるのだろうが、ケイジの風貌はどちらかというとリーの方
に通じるところがあり、ちょっと考えてしまうところだ。
 製作はミレニアム、また共同製作でランダル・エメット、
ジョージ・ファーラのエメット/ファーラが参加することに
なっている。
        *         *
 そしてもう1本、ミレニアム=エメット/ファーラの計画
では、ブルース・ウィリス主演、リチャード・ドナー監督に
よる“16 Blocks”という計画も進められている。
 この作品は、リチャード・ウェンクが執筆した脚本を映画
化するもので、内容は、年配の警官が近くにある裁判所まで
の犯罪目撃者の移動を警護するというもの。多分ウィリスが
年配の警官を演じ、題名通り16ブロックを移動するというこ
とのようだが、ここに飛んでもない冒険が待ち受けていると
いうお話だそうだ。
 この作品が、ドナー監督で、この夏にニューヨークで撮影
されることになっている。因にドナーは、2003年にマイクル
・クライトン原作を映画化した『タイムライン』以来の監督
作品になる。
 この他、ミレニアム=エメット/ファーラでは、すでにブ
ライアン・デ=パルマ監督、ジョッシュ・ハートネット、ヒ
ラリー・スワンク、スカーレット・ヨハンセン共演で、ジェ
ームズ・エルロイの原作を映画化する“The Black Dahlia”
と、ジョン・トラヴォルタ、ジェームズ・ガンドルフィーニ
共演の“Loney Hearts”がプレプロダクションの状態にある
ようだ。
        *         *        
 『アレキサンダー』の評価は今一つだったようだが、今度
はロシアから、アレキサンダー以上の帝国築いた蒙古人ジン
ギス=カンの生涯を映画化する計画が発表された。
 この作品は、1996年にトルストイ原作による『コーカサス
の虜』を発表したセルゲイ・ボドロフ監督が、同作でも組ん
だ脚本家のアリフ・アリエフと共に進めているもので、ロシ
ア人のセルゲイ・セリアノフが製作を担当、香港人で『グリ
ーン・デスティニー』や『HERO』を手掛けたフィリップ
・ローがこれをバックアップしている。
 英語題名は“Mongol, Part 1”とされているもので、この
Part 1というのが何の意味なのかは判らないが、撮影は6月
にカザフスタンで開始されるということだ。そしてこの作品
では、若き日のジンギス=カンを“Coach Carter”のチャニ
ング・テータムが演じ、その兄弟役で浅野忠信の共演も発表
されている。
 なお撮影は、ロシア語、モンゴル語、広東語、カザフ語、
そしてタタール語で行われるということだ。また撮影の技術
的なサポートは、ヨーロッパの技術者たちによって行われる
ことになっている。
 最終的には、ヨーロッパのかなり奥まで版図を広げたジン
ギス=カンだが、当時と変らぬ自然が残るといわれるカザフ
高原で、一体どのようなスケールの物語が作り出されるか、
ボドロフ監督の手腕に期待したい。



2005年03月14日(月) 迷宮の女、バタフライ・エフェクト、英語完全征服、ダニー・ザ・ドッグ、ラヴェンダーの咲く庭で、コックリさん

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『迷宮の女』“Dedales”                
最近、時々紹介される多重人格を扱ったフランス製のサスペ
ンス映画。                      
フランス映画では、フィルムノアールと世界的に呼ばれた時
代から、犯罪捜査ものの伝統があるが、本作はその伝統にも
沿って、心理サスペンスが見事に展開している。     
事件は確認されるが死体のない連続殺人事件が発生。そこに
は防犯カメラの映像や目撃者の証言なども数多く残されてい
るが、犯人像が特定できない。そこで、優秀だが他の捜査官
の顰蹙を買うプロファイリング専門の捜査官が呼ばれる。そ
して彼の直感的な捜査で犯人が逮捕される。       
その半年後、多重人格の傾向のある犯人の治療のため、専門
の精神科医が精神病院に呼ばれる。彼はその犯人の中に4つ
の人格を見いだし、その内のミノタウロスと名告る凶暴な人
格に事件の鍵があることを突き止めるが…        
映画は、この2つのストーリーが時系列を入れ篭にして構成
されているが、その構成自体は、VFXなども使って判りや
すく整理されて違和感もなく、なかなか見事な作品だった。
そしてギリシャ神話をモティーフにした謎解きも良くできて
いた感じだ。

多重人格ものというと、最近では『“アイデンティティー"』
が、その展開や映像化の手法でも傑出していたが、それとは
比べられないものの、本作も見事な作品になっている。特に
犯人役を演じたシルヴィー・テスチュの演技は見事だった。
ただ結末が、映像的にちょっとアンフェアな感じがした。し
かしこの手の作品には、2度見て確認する作業が要求される
もので、僕はまだ1度しか見ていないので結論は控えたい。
                           
『バタフライ・エフェクト』“The Butterfly Effect”  
昨年の今頃に全米で公開されて、興行1位を記録したサスペ
ンス作品。                      
この手の作品はどうしてもネタばれになるので、以下は気を
付けて読んでください。                
主人公には子供の頃に3人の遊び仲間がいた。初恋の少女と
その兄、そしてちょっと太めの少年。また、その頃の主人公
は、時々一時的に記憶を喪失することがあり、その治療の目
的で日記を付けることが習慣になっていた。       
しかし、子供の頃の彼の周辺には忌まわしい出来事が多く発
生し、そのため彼と母親は町を離れなくてはならなくなる。
その日、見送りに来た少女に「必ず迎えに来る」という言葉
を残し、主人公は町を離れる。             
その後、主人公には記憶喪失が起きることもなく、成長して
州立大学で心理学を学ぶ学生となっている。そして少女との
約束も忘れられ、楽しい学園生活を送っていたのだが、ふと
日記を読み返したとき、彼は喪失したはずの記憶がそこに書
かれていることに気づく。               
そして彼の周囲に変化が生じ始める。          
簡単に言ってしまえば、ジャック・フィニーの『ふりだしに
戻る』なのだけれど、この映画の脚本、監督を手掛けたエリ
ック・ブレスとJ・マッキー・グラバーは、実に緻密に、そ
して大胆にこの物語を構築している。          
彼らが先に脚本を手掛けた『デッド・コースター』は、正直
に言って僕が買わない作品の一つだが、その頃すでにこの作
品は進行していたと言うことで、片手間の仕事と本腰の仕事
の違いは歴然のようだ。                
まあ、本当は片手間でも良い仕事をしてほしいとは思うとこ
ろだが、それでも、そのおかげで本作が実現したのだから、
それなりの仕事ではあったということだろう。      
泣き笑いのバランスもうまく構成されているし、謎解きも見
事、特に結末は拍手ものだ。アメリカでリピーターが出たの
も理解できる。

なお日本公開は、SF/ファンタシー系の路線では宣伝され
ない予定だが、その手の映画のファンには特に満足してもら
える作品のように思えた。               
                           
『英語完全征服』(韓国映画)             
原題はハングルだが、漢字表記は邦題と同じものだそうだ。
英会話学校を舞台に、女性主人公の恋愛騒動を描いた有りが
ちのコメディ作品だが、これにアニメーションや合成も取り
入れて、相当の作品に仕上げられている。        
主人公は役所の窓口係。ある日、窓口に来た外国人に誰も対
応できず、上司から役所を代表して英会話学校行きを命じら
れる。そしてやってきた完全征服が売り物の学校だったが、
初心者のクラスは多士済々、その目的もまちまちだ。   
そんな中で、主人公はプレイボーイ気取りのセールスマンに
心を引かれ、勉強への意欲も増すのだったが、彼の方は金髪
の女性教師が目当てで彼女にはつれない。そして勘違いや、
誤解の積み重ねで物語は進行して行く。         
まあドタバタではないけれど、日本で言えば吉本か松竹新喜
劇のような関西風のノリの物語が展開する。これにアニメー
ションや合成が取り入れられて、笑いあり涙ありの映画とし
てはなかなかの出来という感じだ。           
韓国映画の良さは、昔の日本映画の良いとこ取りというのは
以前にも書いたと思うが、この作品にもそんな良さが感じら
れた。それ以上でも以下でもないけれど、見ている間は楽し
めるし、意外とタップダンスのシーンなどがしっかりしてい
るのは気に入った。                  
                           
『ダニー・ザ・ドッグ』“Danny the Dog”        
中国出身のカンフースター=ジェット・リーと、先日のアカ
デミー賞で助演男優賞受賞のモーガン・フリーマンの共演に
よるアクションに彩られた人間ドラマ。         
脚本はリュック・ベッソン、監督は『トランスポーター』の
ルイ・レテリエが担当した。              
リー扮する主人公ダニーは、子供の頃に拉致され、ボブ・ホ
スキンス扮するギャングの男に闘士として育てられた。普段
は首輪をしておとなしいダニーだが、一旦その首輪が外され
ると、彼は殺人マシンとなって闘犬のように相手に襲いかか
る。                         
しかしある日、骨董品の置かれた倉庫で出番を待つ内に、フ
リーマン扮する盲目のピアノ調律師に巡り会う。そしてその
人間性に触れる内、彼の人生が変わり始める。      
映画では、巻頭と最後に大掛かりな武闘シーンがあり、中間
にもいくつかの武闘シーンが用意されている。これらの振り
付けは、『マトリックス』がユエン・ウー・ピン担当し、見
事なアクションが展開する。              
しかし、映画の全体はアクションに流されることなく、見事
な人間ドラマを描いている。そして演じられるアクションに
も、それぞれに違う意味が持たせられ、それに合わせて演じ
方も微妙に変化して行く。このあたりのバランスが見事な作
品だった。                      
また、台詞は全編英語なのだが、リーの役柄は外界から隔離
されて成長したという設定で、喋りがたどたどしいというの
も、巧いとしか言いようのない設定だった。       
実は、試写会の翌日にリーの記者会見があり、その席でリー
は、初めて役作りをしたと語っていた。確かに今までのリー
が演じた役は、どれもただ強いだけの男で、ただアクション
さえできれば良く、その意味では役作りなど必要がなかった
のだろう。                      
しかし本作では、少年の心のまま大人になってしまった主人
公など、今までのリーには見られない役柄で、役作りが必要
とされた。そしてその孤独感を体感するために、撮影後もホ
テルに戻らず、ただ一人でスタジオで一夜を過ごしてみたり
もしたそうだ。                    
そんなリーの意気込みが伝わってくる作品とも言える。  
なお、記者会見では、映画のキーとなるモーツアルトのピア
ノソナタが、フジ子・ヘミングの生演奏で紹介された。それ
は素晴らしい演奏だったが、演奏後のコメントで、彼女は、
「リー本人は素敵だけど、この映画は嫌いです。」と言って
しまった。                      
確かに、高齢のご婦人には刺激の強すぎるアクション映画だ
ったかも知れない。しかし、リー自身も「この作品はハリウ
ッドでは作れない」と言っているように、ただの見た目が派
手なアクションだけではない、見事な人間ドラマが描かれた
作品だ。                       
                           
『ラヴェンダーの咲く庭で』“Ladies in Lavender”   
『ジェームズ・ボンド』シリーズでMを演じるジュディ・デ
ィンチと、『ハリー・ポッター』でマクゴナガル先生を演じ
るマギー・スミス。このイギリスを代表するデームの称号を
持つ2人の女優が共演した人間ドラマ。         
第2次大戦前夜のイギリスの寒村での物語。ディンチとスミ
スが演じるのは、海辺の館に住む仲の良い姉妹。遺産によっ
て慎ましいが安定した生活を送っていた2人は、ある日、海
岸に漂着した1人の若者を救助する。          
その若者は、最初は英語が通じなかったが、やがて片言のド
イツ語でポーランド人であることが判る。そして若者の看病
を続けるうち、姉妹の妹に微妙な感情が生まれ始める。  
しかしその内に、彼にはヴァイオリニストの才能があること
が判明する。そしてその音色に誘われるように、ドイツ語を
話す若い美貌の女性が現れる。             
スミスが姉を演じ、ディンチが妹を演じる。特にこの妹が、
恥じらうように若者を見つめる姿は、当時の時代背景なども
表わしながら、実に素晴らしく演じられている。映画は間違
いなくこのディンチが主演の作品だ。          
一方の若者役は、『グッバイ、レーニン!』のダニエル・ブ
リュールによって、初々しく演じられている。      
また『スター・トレック』のデイヴィッド・ウォーナーや、
『トゥルーマン・ショー』のナターシャ・マイクルホーン、
『ハリー・ポッター』でスプラウト先生役のミリアム・マー
ゴリーズらが脇を固めている。             
そしてもう一点、この映画の陰の主役とも言えるのが、ジョ
シュア・ベルによるヴァイオリンの演奏だ。ベルは、1998年
の『レッド・バイオリン』でも演奏を担当していたが、特に
本作では、若者が村人との交流を深めるシーンなどが見事な
演奏で描かれていた。                 
因に、本作では姉をスミス、妹をディンチが演じていたが、
実際の年齢は同い年で、ディンチの方が19日ほどお姉さんの
ようだ。                       
                           
『コックリさん』(韓国映画)             
2000年『友引忌』、2002年『ボイス』に続くアン・ヒョンギ
監督の韓国ホラー第3作。               
山間の寒村の女子高で、いじめにあっていた都会からの転校
生が、いじめグループへの復讐のためにコックリさんを使っ
て忌まわしい霊を呼び出す。そして復讐が始まるが…   
僕は、『友引忌』は見ていないが、『ボイス』は最後でいろ
いろな駒がピタッと揃うパズルのような面白さが気に入った
作品だった。                     
それに比べると本作は、確かにスケールも大きく、演出も格
段に巧くなっていることは認めるが、日本のホラー映画には
なくて、『ボイス』で感じられた新鮮さのようなものが、少
し物足りないと言うか、日本映画と同じになってしまったよ
うな感じがした。                   
つまり『ボイス』という作品は、ホラーでありながら、その
辻褄の合わせ方が妙に理詰めだったりして、その辺が僕の気
に入ったものだが、考えてみればそれはホラーの本質ではな
い訳で、今回の作品は本来のホラーに戻ったというところな
のだろう。                      
その意味では、恐怖感の煽り方も良かったし、見ている間は
楽しめる作品だった。                 
なお、コックリさんは、韓国ではブンシンサバと呼ぶようだ
が、映画の中での呪文が日本語で「分身様、分身様、御出で
下さい」と聞こえるのは面白かった。解説によると「サバ」
はインドの古代語から来た仏経用語らしいが、「様」と書く
こともあるようだ。                  



2005年03月01日(火) 第82回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は、日本時間2月28日に発表された第77回アカデミー
賞について書こうと思っているが、まずはその前に、前々回
アカデミー賞候補と一緒に紹介したVisual Effects Sociaty
(VES)賞の結果から報告しておくことにしよう。なお、
この賞の受賞式は2月16日に行われた。
 前々回候補を紹介した映画関係の10部門の中で、まず実写
映画での環境創造賞は“Spider-Man 2”でのニューヨークの
夜景、VFXに使用された特殊効果賞は“The Aviator”、
ミニチュア及び模型賞も“The Aviator”のFX11の墜落シー
ンが受賞している。さらに合成賞は“Spider-Man 2”の列車
シーンが受賞した。
 一方、実写映画でのアニメーションキャラクターの演技賞
には“Harry Potter and the Prisoner of Azkaban”のヒポ
グリフ、アニメーション映画でのキャラクターの演技賞には
“The Incredibles”のボブ・パー(Mr.インクレディブル)
が選ばれた。また、VFX映画における俳優の演技賞には、
“Spider-Man 2”におけるアルフレッド・モリナが選ばれて
いる。
 さらに、単独のVFX賞は“The Day After Tomorrow”の
津波シーンに贈られ、VFX中心でない映画でのサポートV
FX賞は“The Aviator”が受賞。そして、本賞とも言える
VFX中心の映画におけるVFX賞には“Harry Potter and
the Prisoner of Azkaban”が選ばれた。
 つまり作品別では、“The Aviator”と“Spider-Man 2”
が3部門ずつ、“Harry Potter”は2部門だがVFX中心の
映画におけるVFX賞を受賞したということで、この3作が
2004年のVFXを代表する作品ということになったようだ。
 それにしても、具体的に対象となったシーンも含めて受賞
作を見渡すと、成程どれも納得できるものばかりで、さすが
に専門家たちが選んだ賞と言うことが出来そうだ。来年もこ
の賞には注目したい。
        *         *
 ということで、続いてはアカデミー賞の講評だが、僕が一
番気になったVisual Effects部門には、ソニー・イメージワ
ークスが担当した“Spider-Man 2”が輝いた。この受賞は、
上記のVES賞とは異なる結果になったものだが、以前リチ
ャード・エドランドにインタヴューしたときに、「オスカー
は専門家でない人たちが選ぶから、見た目派手なものが受賞
しやすい」と言っていたのを思い出して納得した。
 もう一部門、Makeup賞は、“Lemony Snicket's A Series
of Unfortunate Events”が獲得。この作品については昨日
付の映画紹介で掲載しているが、確かにジム・キャリーの変
化ぶりは面白かったし、3候補の内の1本は見ていないが、
まあ順当な線と言えそうだ。
 で、その他では、やはり“The Aviator”が5部門の最多
受賞は果たしたものの、主要な賞ではケイト・ブランシェッ
トの助演女優賞しか得られなかったことが気になる訳だが、
正直に言ってアカデミー賞のVFX部門では無視されたもの
の、VES賞では最多受賞するような作品は、なかなかオス
カーでの主要賞の受賞は難しいということだ。
 それにこの手の作品では、昨年“Return of the King”に
大量の賞を出したところでもあり、2年連続その手の作品と
いうのは考え難い。結局オスカー獲得には、そういう時期の
問題も大きく影響するということだ。これはもう、エドラン
ドも言っていたように、専門家や評論家が選んでいるのでは
ないのだから、仕方のないことと言わざるを得ない。
 また、昨年の“Return of the King”はニューライン製作
配給で、いわゆるメイジャー作品ではなかったものだが、今
年は主要賞のほとんどをメイジャーが獲得しているのは、各
社が巻き返したと言うこともできるかも知れない。おかげで
ミラマックス配給の“The Aviator”などが割りを喰ったと
も言えそうだ。
 なお、長編アニメーション賞は“The Incredibles”、ま
たオリジナル脚本賞は“Eternal Sunshine of the Spotless
Mind”となっており、これも順当という感じだ。それから
5本の候補が全てSF/ファンタシー系で気になった作曲賞
には“Finding Neverland”が選ばれた。ジョニー・デップ
主演のこの作品は7部門で候補になっていて、候補の数では
“The Aviator”に次ぐものだったが、アメリカではミラマ
ックスが配給しており、上記の状況があるとすれば、1つぐ
らい取っておくのが順当というところだろう。
        *         *
 以上でアカデミー賞の講評は終わりにして、以下は定例の
製作ニュースを紹介することにしよう。
 まずは、昨日付の映画紹介に掲載した“Hitch”(最後の
恋のはじめ方)が、ロマンティック・コメディ映画史上最高
のオープニング成績、しかも2週連続の週末興行成績第1位
という大ヒットを記録したウィル・スミスの主演で、ちょっ
と捻ったスーパーヒーロー物の計画が進められている。
 計画されている作品の題名は、“Tonight, He Comes”。
実はこの計画については、2002年8月15日付の第21回でも一
度紹介しているが、落ちぶれたスーパーヒーローが一般市民
との生活の中で自分を取り戻して行くという物語。以前の報
告では12歳の少年との交流が中心となるとされていたが、今
回の情報では主婦との恋愛が描かれるということで、映画の
企画も2年半も経つといろいろ進化するようだ。
 オリジナルは、6年ほど前にヴィンセント・ンゴという脚
本家が発表したもので、以来、映画化されていない優秀脚本
の一つとして各所で話題に上っていた。そして前回報告した
時点では、このオリジナル脚本を、『ビューティフル・マイ
ンド』でオスカーを受賞したばかりのアキヴァ・ゴールズマ
ンが再構築し、ゴールズマンの製作で、『ブレア・ウィッチ
・プロジェクト』などのアーチザンが映画化するとなってい
たものだ。また当時の報道では、監督候補にトニー・スコッ
トの名前が上がっているともされていた。
 しかし、スコットの名前は早々に消えたようで、その後は
『コラテラル』などのマイクル・マン監督の線で企画が進め
られていた。ところがアーチザンでは充分な製作体制が取れ
ないことが判明し、結局同社は製作を断念してしまった。 
 これに対してゴールズマンは計画を続行、マン監督も製作
者に引き入れ、ついには『ターミネーター3』のジョナサン
・モストウを監督として起用することに成功する。そして監
督に決まったモストウは、新たに10ページの概要を作成して
スミスに提示。これを見たスミスが、映画への主演を了承し
たというものだ。
 そして、この配役が決まった時点で再度映画化権の交渉が
行われ、映画各社の争奪戦の末、スミスとの関係の深いコロ
ムビアが権利を獲得している。なお、この争奪戦にはフォッ
クスも参加しており、同社はアーチザンが断念した後、最も
熱心にゴールズマンに働きかけをしていたということだが、
先週の“Hitch”の大ヒットが生まれた直後に、コロムビア
との契約がなされたということだ。
 計画は現在、ヴィンス・ギリガンという脚本家が、モスト
ウの意向に合わせたリライトを行っている段階。因にギリガ
ンは、“The X-Files”の脚本家/プロデューサーの他、マ
ンが製作総指揮を務めたテレビシリーズ“Robbery Homicide
Division”などの脚本も担当しているそうだ。
 なお、この企画は、スミスもモストウも次回作とはしてい
ないものだが、ハリウッド情報によると、2006年のクリスマ
スシーズンの公開が期待されているということだ。
        *         *
 お次は、またまたシリーズ物の計画で、テリー・ブルック
スという作家によってすでに第5巻までが発表され、2006年
に第6巻が出版される予定の“Magic Kingdom”シリーズの
第1巻“Magic Kingdom for Sale”を、『ヴァン・ヘルシン
グ』のスティーヴン・ソマーズ監督で映画化する計画がユニ
ヴァーサルから発表された。
 物語は、最愛の妻を亡くした弁護士が、過去の生活を断切
ろうとした矢先に不思議な広告を目にし、全財産を注ぎ込ん
でそれに応募してしまう。それは魔法王国の支配者になると
いうものだったが、応募が叶っていざその王国を2人の子供
と共に訪れてみると、そこは悪魔や怪物たちが入り乱れての
大混乱の真っ最中だった…
 これが発端の物語ということだが、ここから少なくとも6
巻の話が続くとすれば、かなり楽しめるシリーズになりそう
だ。そしてこの映画化のための脚色に、『きみに読む物語』
や『ナショナル・トレジャー』などを手掛けた大ベテランの
ローウェル・ガンツ、ババルー・マンデルのコンビが当たる
ことも発表されている。
 なおソマーズ監督は、現在は、同じくユニヴァーサル製作
の“Flash Gordon”のリメイク脚本を執筆中だそうだが、今
回の報道によると、そちらは脚本と製作のみで紹介されてい
て、本作では監督を担当することになっている。またソマー
ズ監督関連のユニヴァーサルの計画では、2004年9月1日付
の第70回で紹介した“Airborn”や、その他に“Flame Over
India”“The Big Love”などが進行中ということだ。
        *         *
 もう1本シリーズ物の映画化の計画で、こちらはワーナー
から“Midnight for Charlie Bone”という作品を第1作と
するシリーズの映画化権を獲得したことが発表された。  
 この作品は、ウェールズ出身のジェニー・ニモという作家
が発表しているもので、原作本はすでに3冊が発刊されてい
るようだが、ワーナーでは上記の第1作に続く4作分までの
映画化権を獲得したとしており、とりあえずシリーズは第5
巻までは続くようだ。
 シリーズの内容は、写真を見るだけでその写真が撮られた
ときの被写体の人々の会話を聞くことの出来る能力を持った
10歳の少年を主人公としたもので、主人公はこの能力を使っ
て行方不明になった少女の行方を捜そうとするのだが、この
行為が、彼の人生を策謀と危険に満ちたものに変えて行くと
いうもの。一応は若年向けのファンタシーとなっているが、
主人公の能力も特殊だし、ちょっと不思議なムードの作品に
なりそうだ。
 製作は、ワーナー傘下のサンダーロードというプロダクシ
ョンで進められ、ここからすでにニール・オルシップという
脚本家に脚色の依頼もされている。なおオルシップは、長年
テレビのナイトショウなどで、ホスト用の台本を書く仕事を
してきた人だそうだが、今回の起用は、彼が先にワーナーに
提出したオリジナル脚本が首脳陣の目に留まって実現したと
いうことだ。ファンタシーの脚色にナイトショウの台本作家
という組み合わせも気になるところだ。
        *         *
 お次もワーナーで、2005年2月号のヴァニティ・フェア誌
にジュディ・バカラックという雑誌記者が発表した“U Want
Me 2 Kill Him?”と題された記事に基づく映画化権を獲得
し、この計画を、3月に“Superman”の撮影を開始するブラ
イアン・シンガー監督で進めることが発表されている。
 この作品は、題名の表記からも判るようにインターネット
を題材としたもので、14歳と16歳の少年がネットを通じて知
り合い、14歳の少年が殺人を計画し、16歳の少年がそれを実
行して行くという内容。しかもその展開には、かなり捻った
ものがあるということだ。そしてシンガー監督は、この計画
の脚本から監督まで全権を委ねられることになっている。
 シンガー監督は、“Superman”の前にも、『X−メン』の
2作などVFXを多用したアクション映画を監督していて、
今回の計画は、彼の最近の作品の傾向とは異なるものだ。し
かし、元々のシンガー監督には“The Usual Suspects”や、
イアン・マッケラン、ブラッド・レンフロ共演による“Apt
Pupil”(ゴールデン・ボーイ)などのようにダークな心理
描写を扱った作品もあり、本作はその路線での作品というこ
とになりそうだ。
 なお、本作は実話に基づく作品ということで、映画化には
慎重を期す必要があり、製作には記事を書いたバカラックも
コンサルタントとして参加することになっている。
 一方、シンガー監督には、2004年3月15日付の第59回で紹
介した1970年代SF映画のリメイク“Logan's Run”の計画
もまだ健在のようだ。
        *         *
 断じて、アイザック・アジモフ原作ではない“I,Robot”
を発表したアレックス・プロイアスの監督で、“Knowing”
と題された超常現象もののスリラーが計画されている。
 この作品については、2003年7月15日付の第43回で一度紹
介しているが、ライン・ピアソンという小説家がオリジナル
脚本を書き下ろしたもので、内容は、過去から未来に渡る恐
ろしげなものが、一杯に詰まったタイムカプセルを開けてし
まった男の物語ということになっている。
 そしてこの計画は、実は数年前からコロムビア傘下のエス
ケープ・アーチスツで進められていたもので、2002年にロバ
ート・レッドフォードが主演した『ラスト・キャッスル』を
手掛けたロッド・ルーリーや、『ドニー・ダーコ』のリチャ
ード・ケリーといった監督たちが計画に参加していた。しか
しなかなか実現に至らず、ついにコロムビアは手を引くこと
になってしまった。
 従って、現在はエスケープ・アーチスツが単独で計画を進
めているものだが、同社ではプロイアスを監督に起用すると
共に、脚本のリライトに、スタン・ウィンストン・スタジオ
のスタッフで、『ジュラシック・パーク』などの製作コーデ
ィネーターを務めたスタイルズ・ホワイトと、その妻のジュ
リエット・スノーデンのコンビを起用して、映画化の実現を
目指すことにしたものだ。なお夫妻は、今年公開されるホラ
ー作品で“The Boogeyman”の脚本も手掛けている。 
 因に本作の配給は、報道の時点では未定ということだが、
エスケープ・アーチスツ製作の近作の配給はパラマウントと
ソニーが行っており、配給がソニー=コロムビアに戻る可能
性もあるようだ。
        *         *
 ディズニー・アニメーションから、“Peter Pan”(ピー
ター・パン)の前日譚を映画化する計画が発表されている。
 計画は、ピュリッツァー賞受賞コラムニストで、2002年に
ティム・アレンとレネ・ルッソの共演、バリー・ソネンフェ
ルド監督で映画化された“Big Trouble”などのユーモア小
説の作家でもあるデイヴ・バリーと、“The Diary of Ellen
Rimbauer”などの作品で知られるサスペンス作家リドリー
・ピアスンが共同執筆した“Peter and the Starcatchers”
という子供向けのベストセラー本を映画化するもので、この
原作本は、昨年8月にディズニーの出版部門から刊行された
ということだ。
 本の内容は、ジェームズ・バリーの原作からヒントを得て
創作されたもので、8歳のピーターに率いられてネヴァーラ
ンドと呼ばれる船で暮らす孤児の少年たちの冒険を描いてい
る。そしてある日、ピーターと仲間のモリーは、魔法の星の
粉の入ったトランクが、海賊黒ひげの手に落ちる前に取り戻
さなければならなくなる、というお話が展開されるものだ。
 なお今回の計画では、監督や脚本家などのスタッフはまだ
発表されていないが、製作は3D−CGIによる長編アニメ
ーションで行われることになっている。
 ディズニーからは、一昨年に続編の『ピーター・パン2/
ネバーランドの秘密』が公開されているが、今回は前日譚と
は言ってもちょっと正統派とは異なるようで、その辺がどう
なるかも楽しみだ。
        *         *
 後は短いニュースを2つ紹介しておこう。
 まずは、『エイリアンvsプレデター』を発表したポール・
W・S・アンダースン監督で、“Man With the Football”
という計画が発表されている。この計画は、実は1994年に立
上げられたもので、当時はシルヴェスター・スタローンの主
演ということでキネマ旬報にも紹介した記憶があるが、題名
の中のFootballというのは、常にアメリカ大統領の傍に置か
れている核戦争の開始を指示する命令装置の入ったブリーフ
ケースのこと。そして物語は、このブリーフケースがテロリ
ストの手に渡ったことから始まるサスペンスを描いたものと
いうことだ。脚本は、2002年版『ローラーボール』や『ゴー
ストシップ』のジョン・ポーグが執筆している。製作はニー
ル・モリッツ、コロムビアが配給する。
 もう一つは続報で、昨年10月1日付の第72回で紹介したテ
レビ版『スーパーマン』の主演俳優ジョージ・リーヴスの死
の謎を探る“Truth,Justice and the American Way”にベン
・アフレックとダイアン・レインの出演が発表されている。
この作品には、事件を捜査する刑事役でエイドリアン・ブロ
ディの出演がすでに発表されていたが、今回発表されたアフ
レックはリーヴス役、そしてレインは、リーヴスとの不倫関
係が伝えられたハリウッドの映画会社の重役の妻トニ・マニ
ックスの役ということだ。リーヴスの死に関しては、一般的
には自殺と伝えられているが、いろいろ不審な点もあるよう
で、これに不倫話まで出てくると、かなり生臭いものになり
そうだ。製作配給はフォーカス・フィーチャーズ。
        *         *
 最後にファンには期待の情報で、劇場版“Star Trek 11”
の計画が、ごく初期の段階ではあるが開始されていることが
公表された。
 “Star Trek”に関しては、現在放送中の“Enterprise”
の製作打ち切りが発表され、アメリカでは5月13日の放送を
以て、1987年9月26日“Star Trek: The Next Generation”
の開始から足掛け19年間連続したシリーズが途切れることに
なっているが、実はこの発表に対して、2月13日にはパラマ
ウントスタジオ前でトレッキーによる抗議行動が行われた。
 そして今回の情報は、これに関連して報じられたもので、
それによると、テレビ及び映画版シリーズ製作者のリック・
バーマンは映画版の第11作の準備を開始し、エリック・イェ
ンドルセンという脚本家がこれに契約したということだ。
 因にイェンドルセンは、2002年に『ER』のエリク・ラ=
サルが出演した“Crazy As Hell”という病院を舞台にした
ミステリー作品で脚本を担当している他、ナショナル・ジェ
オグラフィック製作で、ロバート・レッドフォードが主演す
る予定の“On the Wing”という作品の脚色も手掛けている
そうだ。
 現状で、この計画がどの世代を描いたものになるかなどの
詳細は全く不明だが、以前の報道では、ウィリアム・シャト
ナーが再びカーク船長を演じたいと言っているなどの情報も
伝えられており、出来るだけ多くのファンを満足させる作品
を期待したいものだ。


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井口健二