井口健二のOn the Production
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2004年09月30日(木) Movie Box−ing、爆裂都市、薄桜記、ブエノスアイレスの夜、トリコロールに燃えて、2046

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『Movie Box−ing』            
2002年の4月1日付で紹介した『パコダテ人』を誕生させた
函館港イルミナシオン映画祭のシナリオ公募で、2002年度の
短編部門を受賞した3作品を映画化した短編映画集。   
プレスシートの巻頭に「どれがいちばん面白い!?」とあっ
たが、僕は躊躇無く3本目に上映された『巡査と夏服』が面
白かった。                      
1本目の『RUN-ing』は、シュールさが売りの作品のはずだ
が、妙に説明的すぎてシュールさに入って行けなかった。 
2本目の『自転少年』は、同じ監督の最初の中編を前に見て
いるが、同じように子供を主人公にした作品で、子供の一所
懸命さばかりが目立ち、前の作品と同様、その一所懸命さが
ドラマから遊離してしまっている感じがする。      
これに対して3本目の作品は、ドラマもちゃんとあるし、一
所懸命さも見えるし、特に、結末に向かっての引っ張りも良
く演出されている感じがした。また、エンディングには技術
的な工夫も感じられた。                
なお2本目と3本目は、一昨年、昨年と発表会を見せてもら
ったニューシネマワークショップが制作にクレジットされて
いたが、いよいよプロが育ち始めたというところだろうか。
そういえば、今年の発表会の案内がまだ届かないがどうなっ
ているのだろう?                   
楽しみにしているのだが。               
                           
『爆裂都市』“爆裂都市”               
独立系の洋画配給会社で、日本映画や香港映画の製作も手掛
けるアートポートが、2004年香港で製作した最新アクション
映画。                        
『フルタイム・キラー』『トゥームレイダー2』のサイモン
・ヤム、『ダブル・タップ』のアレックス・フォンらが演じ
る香港警察と、千葉真一、しらたひさこらが演じる国際テロ
組織の闘いが描かれる。                
物語は、要人の狙撃事件に始まって、警察とテロ組織との対
決の様子などが手際よく描かれる。後半ちょっとバタバタす
る感じはあるが、謎解きやその解決策なども破綻はあまり見
られないし、全体的には98分によくまとまっている感じだ。
また、海外での上映がどうなるか知らないが、千葉やしらた
らが、日本語の台詞でそのまま喋っているのには感心した。
もちろん重要な台詞は母国語で喋るのが一番な訳だし、この
感覚は大事にしてもらいたいとも思った。        
まあ、千葉が日本語で話しているのに、相手がそのまま英語
や広東語で返事をするのは違和感がないことはないが、お互
いに相手の言語を理解していれば、こういう会話も成り立つ
はずで、そんな理解で見られればいいというところだろう。
アートポートには、この後も製作作品があるようなので期待
して行きたい。                    
                           
『薄桜記』                      
1959年製作の市川雷蔵、勝新太郎共演作品。1969年に37歳で
夭折した大映スター市川雷蔵の映画デビュー50年周年記念で
行われる「市川雷蔵祭」の1本として上映される。    
市川も勝も1931年の生まれだから、2人とも28歳のときの作
品。市川は丹下典膳、勝は堀部(中山)安兵衛に扮して、赤
穂浪士の動きに絡めた2人の剣豪の数奇な運命が描かれる。
高田馬場の決闘から、吉良家討ち入りまで時間の中で、偶然
1人の女性に思いを寄せた2人の剣豪。しかしその思いは、
過酷な運命の中で翻弄される。             
当時ロッテルダム映画祭のオープニングに選ばれたという作
品。                         
当時としてはリアルさが追求されたという市川雷蔵の作品だ
が、剣戟シーンには、最近のリアルだけが売り物の殺伐とし
たものではなく、ある意味華麗さも演出されている。当時の
海外映画人が憧れた日本の侍映画という感じの作品だ。  
映画は、安兵衛のモノローグに始まって高田馬場の決闘へと
続き、勝主演の作品かと思いきや、途中から市川の主演へと
摺り替わって行く。微妙と言うか、かなり思い切った構成だ
が、それがちゃんと納得できるところに納まって行くのだか
ら不思議な感覚だった。                
僕は、学生時代からほとんど洋画一辺倒で通してきたから、
この辺の日本映画はほとんど見ていない。だからかえって新
鮮に感じるのかも知れないが、このように見事な作品を見せ
られると、ちょっと続けて見たくなる感じがした。    
                           
『ブエノスアイレスの夜』“Vidas Privadas”      
『オール・アバウト・マイ・マザー』のセシリア・ロスと、
メキシコの新星ガエル・ガルシア・ベルナル共演で、1976年
のアルゼンチン軍事クーデターに翻弄された女性の運命を描
いた作品。                      
主人公のカルメンは、軍事クーデターの際に逮捕されて夫を
失い、自身も拷問を受けた痛手から解放後はスペインに移住
し、必要なとき以外は祖国に帰ることはなかった。その上、
彼女はその時以来、男性の身体に触れることも嫌悪する性癖
となっていた。                    
そんな彼女が唯一行える性的な行為は、隣室の男女の営みの
声を聞きながら自慰に耽ること。そして元貴族の父親の財産
分与の為に5年ぶりに帰国した彼女は、その手続きに掛かる
2週間の間、家族に内緒でアパートを借り、その行為を行お
うとしていた。                    
しかし雇った若いカップルの男に興味を引かれた彼女は、翌
日からは彼だけを呼び寄せ、ポルノ小説を朗読させて、その
声を聞きながら自慰を行うようになる。そんな日々が続くう
ち、彼も彼女に興味を抱くようになるが…。       
最初は、ちょっと異常な性癖を持つ女性の姿が描かれ、政治
的な意味合いは、言葉では語られるものの深刻には描かれな
い。しかし、物語が進むうちに彼女や彼女の周囲の人たちが
徐々に過去の出来事を語り始め、政治的な背景が次第に濃く
なって行く。                     
7月14日付で紹介したアントニオ・バンデラス主演の『ジャ
スティス』も、アルゼンチンの軍事クーデターを描いていた
が、クーデターに絡んで行われた虐殺行為などは、今も真実
が語られないままの部分が多いようだ。         
そんな恐怖の時代を告発する両作だが、バンデラスは超能力
を交えて描き、本作では異常な性癖を交えて描くなど、わざ
と正面を外して描いているようにも感じる。未だに、当時の
ことを正面切って描くことは難しいかのようだ。     
実際、映画の中でも、当時の拷問を行っていた軍人が、今も
比較的恵まれた生活をしている姿なども描かれており、問題
の根は僕らが想像する以上に深いもののようだ。     
                           
『トリコロールに燃えて』“Head in the Clouds”    
シャーリズ・セロンの主演で、20世紀前半を自由に生き抜い
た女性の姿を描いた作品。               
時代は1930年代、セロン扮する主人公のギルダは、実は14歳
の時に占い師から34歳より先の人生が見えないと言われてい
た。そんな彼女は、人生を自由気ままに送ろうとし、アメリ
カに渡っては映画に出演し、パリでは写真芸術家として成功
する。                        
そんな彼女と共に暮らしたアイルランド人のガイとスペイン
女性のミアは、彼女の奔放さに振り回されながらも、共に彼
女を愛し続けていた。しかし2人はスペイン内乱の支援に向
い、パリはナチの侵攻を受ける。そんな中でも、彼女は奔放
に生き続けるのだが…。                
共演は、ガイに、セロンの実生活のパートナーでもあるスチ
ュアート・タウンゼントと、ミアにペネロペ・クルス。  
映画は主にカナダで撮影されているが、ディジタル合成によ
って、戦前のパリが見事に再現され、空にはプロペラ機が旋
回するなど、その雰囲気が素晴らしかった。       
また、ギルダがフランス人の父親とアメリカ人の母親という
設定で、彼女は英語とフランス語を話し、スペイン内乱のシ
ーンではスペイン語、さらにナチ将校はドイツ語と、基本は
英語の作品だが、各国語が飛び交うのも心地よかった。  
なおセロンは、オスカーを受賞した『モンスター』の次の作
品ということになるが、前作では13kg増やしたという体重を
減量し、特に巻頭では20歳前後の役ということで愛らしく登
場してみせたのは見事。                
しかし映画の中で何回か見せる険しい顔が、『モンスター』
を思い出させたのはショックだった。僕が前作を見てから間
なしなので、記憶が鮮明なこともあるのだろうが、それだけ
前作が強烈だったということもある。『モンスター』という
作品が、それだけのリスクを持った作品だったことも改めて
理解できた。                     

『2046』“2046”                 
2000年に撮影が開始されるも、中断。そして昨年突如撮影が
再開され、今年のカンヌ映画祭に招待されたものの、編集の
遅れによってプレス試写のないまま本上映が行われるなどし
て話題を撒いたウォン・カーウァイ監督の最新作。    
題名の2046とは、1997年に本土返還された香港が、50年間は
現体制が維持されるとした約束の期限の年号。      
しかし映画の物語は1960年代を背景とし、2046は、トニー・
レオン扮するその時代に生きる主人公が書く未来小説の題名
でもあり、その小説の中では、人々が夢見る場所の番地でも
ある。そして主人公が住もうとし、ある女性が住むアパート
の部屋の番号も2046。                 
物語は、主人公が愛した、または愛そうとした複数の女性た
ちとの関係が綴られる。同時に、木村拓哉扮する日本人男性
とアパートの経営者の娘の中国人女性との恋も語られる。そ
して主人公が執筆する未来小説の世界も描かれる。    
映画をシンプルに見れば、何人もの女性を愛しながらも真実
の愛を求めようとする男の物語。しかし木村が演じる小説の
主人公が、作家を演じるレオンとダブリ始める辺りから、現
実と小説が交錯し、不思議な世界を構築され始める。   
とは言うものの、それが本当に監督によって意図された物語
かどうか、僕が勝手に勘繰っているだけなのかも知れない。
いずれにしても、もう1回見て確認したくなる映画だ。  
なお撮影は約5年のブランクを置いて行われた訳だが、木村
は微妙に風貌が変っているのが見えて面白かった。もっとも
映画の中でも数年が経ったという設定になっている。   
これに対して、木村の相手役のフェイ・ウォンは、後半はア
ンドロイドという設定で化粧によっても変化が隠されたよう
だ。一方、レオンの相手役のチャン・ツィイーは全然変らな
いが、これは恐らく再開後のみの出演なのだろう。    
しかし、両方で出演したはずのレオンやコン・リーは全く変
化が判らなかった。多分、年齢的なものもあるのだろうが、
大したものだと思った。                



2004年09月29日(水) 血と骨、パニッシャー、クリスマス・クリスマス、ナイトメア・ビフォア・クリスマス、巴里の恋愛協奏曲、ターンレフト・ターンライト

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『血と骨』                      
梁石日の原作を、崔洋一の脚本監督で映画化した作品。同じ
コンビでは、1993年の『月はどっちに出ている』が作られて
いる。                        
梁石日の原作の映画化では以前に『夜を賭けて』を見ている
が、崔洋一監督の作品を見るのは今回が初めて。いずれにし
ても在日の韓国朝鮮の人たちの姿を描いたものなので、基本
的には日本人の自分とは別世界の話になるが、今回は、戦後
の混乱期などが背景になっているので、日本人の自分の目に
も判りやすかった。                  
戦前に済州島から出稼ぎにやってきた男の一代記を、その息
子の目から描いている。原作者の父親がモデルということだ
が、傍若無人、暴力に明け暮れる男の生き様が描かれる。そ
の一方で、男は金に執着し、家族や親戚を搾取しながら小金
を貯め込んで行く。また、数多くの女を愛し、それがまた幾
多の確執を生んで行く。                
まあ、確かにひどい男の物語だが、その当時に生きた人たち
のヴァイタリティのようなものは見事に描かれている。自分
の父親も多分同世代だと思うが、特に戦後の混乱期に、目端
を利かせて小金を稼いで行く様子は、ある部分では似ている
感じがした。                     
楽天やライヴドアの社長のように何100億を稼いだ訳ではな
いが、この映画の主人公のように小金を稼いだ奴は、当時は
ざらにあった話かも知れない。小さいけれどそれでも満足で
きる夢を、数多くの人が実現できた時代の物語という感じが
した。こんな夢を、今の時代の大多数の人たちが失っている
ことは間違いない。                  
なお、主人公の韓国人妻を演じた鈴木京香の老けのメイクや
演技が結構様になっていた。              
                           
『パニッシャー』“The Punisher”           
マーヴェルコミックス原作の映画化。          
犯罪組織によって家族を奪われた元FBI捜査官の男が、法
の手が及ばない組織のトップを追いつめて行く。しかしこれ
は復讐ではない、自らの正義に基づく制裁(punish)だ。 
言うなれば、アメリカ版「必殺仕事人」というところだが、
コミックスでの最初の登場は1974年ということなので、どち
らが先なのだろうか。                 
今回の映画化はその発端で、元捜査官がパニッシャーとなっ
て、最初の仕事を仕上げるまでが描かれる。まあ、誰が見た
ってこの最初の仕事は復讐以外の何物でもないと思うが…。
それは別として、ヒーローコミックスの映画化といっても、
本作は基本的に生身の人間の話だから、銃撃戦などはあるけ
れど、ど派手なCGIアクションなどは事実上描けない。そ
の替わりに主人公の人間性が描かれるかというと、それも無
表情であまり無いのだが…。              
本作では、主人公が隠れ住むアパートの住人たちがそれなり
に丁寧に描かれていて良い感じだった。実は、彼ら自身が世
間からは見捨てられたような存在なのだが、その彼らが主人
公に寄せる友情というか、家族愛のようなものの感じが、清
涼剤的に利いていた。中でも、『X−メン』や『ファム・フ
ァタール』などのレベッカ・ローミン=ステイモスが、儲け
役で良い感じだった。                 
主演は、パニッシャーに、『ドリームキャッチャー』などの
トム・ジェーンと、最初の仕事の相手となる組織トップの男
にジョン・トラヴォルタ。今回は、トラヴォルタの方がいろ
いろ人間的に描かれているのも面白いが、シリーズ化された
ら毎回の敵役が楽しみになりそうだ。          
『スパイダーマン』などよりは、もう少し年齢層が上の観客
を狙った作品と思われるが、その手のアクションものにも関
わらず、ベッドシーンが全く無いというのもすがすがしいも
のだった。また、使用される銃器にもかなり凝ったものが使
われていたようだ。                  
                           
『クリスマス・クリスマス』              
WAHAHA本舗の座付作家すずまさ原作によるファンタスティッ
ク・ラヴコメディ。                  
主人公は、恋も仕事も倦怠期の男。そんな男がある日、ふと
したことから「ファンタジー保存協会」なる秘密組織に関わ
り、その理念に賛同して、一緒に活動することになる。  
「ファンタジー保存協会」とは、UFOやネッシーから、カ
ッパ、ツチノコに至るまで、世界中のファンタスティックな
出来事を演出(捏造)して、ファンタジーを保存しようとす
る世界的な組織。当然その存在は秘密で、その秘密保持に失
敗すると、組織からの除名と、本部が研究開発したプチ魔法
による「おしおき」が待っている。           
ところが彼の関わった支部は、秘密の保持に失敗。除名と恐
怖の「おしおき」を回避するためには、組織の最大イヴェン
トであるクリスマスの日、プレゼント配りでのノルマ達成し
かないことになるが…。                
アイデアは悪くないし、物語の展開もさほどの破綻もなく良
くまとまっている。本部から届いた封筒が状況に応じて変色
したり、プチ魔法が実在していたりという辺りの、展開の押
さえも上手く機能している。さすが長く芝居を書いている人
の作品という感じだ。                 
出演は、主人公に大倉孝二、その恋人に伊藤歩、彼女の周辺
の人の役で柴田理恵。一方「保存協会」側には、近藤芳正、
生瀬勝久、古田新太ら。他に久本雅美、マギーなどの劇団系
の役者が脇を固めている。               
監督は、ミュージックヴィデオやTVCF演出を手掛け、本
作が映画初演出の山口博樹。最近、この種の日本映画を見る
機会が増えているが、当り外れも大きい中で、今回は当りの
方に入りそうだ。                   
                           
『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』         
          “The Nightmare Before Christmas”
1993年、『バットマン』の成功で力を得たティム・バートン
が、独自の企画で作り上げた人形アニメーション。その日本
公開10周年を記念した再上映が行われる。        
クリスマスの約2カ月前に行われるハロウィン。幽霊や怪物
たちが我がもの顔に町を歩き回るこのお祭りを仕切るのは、
ハロウィンタウンの住人たち。しかし、そのリーダーのカボ
チャ大王ジャックは自分のやっていることに虚しさを感じて
いた。そして、ふと紛れ込んだクリスマスタウンの活気に、
自らその町のリーダーになり替わることを試みるが…。  
監督は、同じくバートンが製作したロアルド・ダール原作の
映画化『ジャイアント・ピーチ』も手掛けたヘンリー・セリ
ック。セリックは現在、バートンの新作“Corpse Bride”も
製作しているヴィントン・スタジオに所属しているが、本作
は彼らのコラボレーションの原点とも言える作品だ。   
十年一昔とは言うけれど、この手の作品が色褪せることは全
く無い。自分が良かれと思ってしたことが酷い結果を生んで
しまう。でも、過ちを認めることが何より大事、そんなメッ
セージが見事に描かれた作品。             
またジャックを中心に、幽霊犬のゼロや、ジャックに思いを
寄せるサリーなどのキャラクターは今見ても素晴らしい。 
なお、今回の再上映では、日本では劇場未公開だったバート
ンの初期の短編“Vincent”と“Frankenweenie”も併映され
る計画だが、実は、僕はスケジュールの都合で日本語吹き替
え版の試写を見てしまったので、これらの作品を確認できて
いないのが、残念。                  
因に、日本語吹き替え版では、ジャックの声を、歌も含めて
市村正規が担当している。               
                           
『巴里の恋愛協奏曲』“Pas sur la bouche!”      
オペラ作家アンドレ・バルドと作曲家モールス・イヴァンに
よる1925年初演のオペレッタを、1922年生まれのアラン・レ
ネが監督した2003年の作品。              
なお、本作のオリジナルは1931年にも映画化されているそう
だが、今回の再映画化でレネは、上映時間との関係で楽曲の
削除や脚本のアブリッジはしたものの、他の楽曲や台詞には
ほとんど手を加えず、オリジナルのままで1920年代の舞台を
再現しているそうだ。                 
といっても、カメラワークや映像効果には、さすが大ベテラ
ンの手腕が発揮されているという感じで、舞台的な演出も随
所に取り入れて、見事な作品に仕上げている。また、映画の
開幕をトーキー初期の雰囲気にしているのも楽しめた。  
主人公は、フランス人の実業家の妻。彼女は夫との関係も冷
めかけて愛人づくりに励んでいるが、夫は、女は最初に愛を
交わした男の元に必ず戻ってくるという信念の持ち主で、妻
の奔放な行動も意に解さない。             
ところがその妻には、夫と出会う前のアメリカ旅行でアメリ
カ人と結婚したという過去があり、それはたまたま法律上の
手続きの関係で、フランスの戸籍に記載されていなかっただ
けなのだ。つまり、彼女が最初に愛を交わした男性は…。 
そんな過去の秘密を隠し続けてきた彼女だったが、ある日、
夫が自宅に招待したアメリカの取引先の実業家が、その元夫
だったからさあ大変。しかもその元夫は、未だに彼女との愛
を諦めていなかった。                 
さらに、彼女の若い愛人には別の若い女性が言い寄るなど、
彼女を中心に見事なダブル三角関係が…。いやはや、さすが
フランスと言うべきなのだろうか、80年も前にこんなにも見
事なラヴコメディを作り上げていたとは…。       
オペレッタなので歌曲もふんだんに登場するが、特にアメリ
カ人の歌には何となくアメリカ的な感じがするなど、これも
見事。そしてその歌を、大ベテランのサビーヌ・アゼマや、
『アメリ』のオドレイ・トトゥらが自ら歌っていることも注
目される。                      
それにしても、一昨年の『8人の女たち』など、最近のフラ
ンス映画に、ちょっと懐古趣味的なオペレッタ風作品が続い
ているのは興味深い。                 
                           
『ターンレフト・ターンライト』“走左向・走右向”   
台湾の絵本作家ジミー(幾米)原作の「君のいる場所」を、
香港のワイ・カーファイが脚色、ジョニー・トーと共同の監
督、製作総指揮で作り上げたラヴコメディ。       
金城武、ジジ・リョンの共演で、台北が舞台の香港映画。 
主人公の2人は、実は同じアパートの隣同士に住んでいる。
しかし建物の構造上、出入り口は別々で、しかも1人は左の
出口から出て左に向かい、もう1人は右の出口から出て右に
向かうため、2人がその場所で出会うことはない。    
そんな2人が偶然公園で出会い、名前は名乗らず、電話番号
だけを交換するが、急に降った雨でその筆跡が読めなくなっ
てしまう。こうしてお互いを求め合う探索が始まるが、偶然
が偶然を呼んで、2人はいつも擦れ違うばかり。さらに2人
の出会いを妨害する連中も現れる。           
確かに、あまりに偶然が重なりすぎる話ではあるが、これが
ラヴコメディの本領というところだろう。赤ん坊や犬の使い
方も利いているし、回想シーンの使い方などもさすがに見事
なものだ。                      
台湾ならではの事情を描いた部分もあるし、最後の電話は、
ちょっと辻褄が合わないような気もするが、そんな枝葉末節
は横に置いて楽しみたい作品。脇役を勤めた『THE EYE』の
エドマンド・チェンと、テリー・クワンのキャラクターも利
いていた。                      



2004年09月15日(水) 第71回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は、ちょっと雑談風に始めてみよう。
 先日インターネットの検索で自分の名前を入れてみたら、
初めて見るサイトがトップに挙がっていた。そこで試しに覗
いてみると、そこでは“Star Wars”のEpisode VII〜IXのこ
とが話題になっていて、最近流れた噂に対するルーカスフィ
ルムの公式発表の中の、「7話以降の計画は最初から無かっ
た」という報道に対して、当時の情報がどうなっていたか検
証されていた。そして、当時出版された『ジェダイの復讐』
(新発売のDVD−Boxでは『ジェダイの帰還』になるよ
うだ)の単行本に書いた僕の記事が引用されて、名前が登場
していたものだった。
 それはそれでいいのだが、そのサイトを読んでいて一つ気
付いたことは、27年も前の話など最早知らない若い人も多く
なっているという現実だった。そんな訳で、ここでは当時の
状況を多少説明させてもらうことにする。
 まず、このシリーズが全9話で構成されるということは、
当時(27年前)映画の仕事をしていた人たちには常識だった
ような気がする。ただしその情報の出処については記憶が曖
昧で、多分“Star Wars”の公開時か何かの、Timeあるいは
Newsweek誌辺りの特集記事が発端だったと思うが、現在は資
料が手元にないので確かめることが出来ない。なおここで言
う“Star Wars”とは“Episode IV−New Hope”のことだ。
 そして記憶をたどると、確かその記事では“Star Wars”
は、それぞれが3部作となる3つの物語の、真中の3部作の
第1話だという説明があって、なぜ真中から始めたかという
ことについては、それが一番製作費が掛からなかったからと
いうものだ。つまりこれは、当時のジョージ・ルーカスに対
して行われたインタヴュー記事での発言で、そこではルーカ
ス本人が全9話だと言っていたことになる。
 しかし、当時のルーカスの置かれた状況を考えると、彼の
頭の中には確かに全9話の構想があったとしても、それを他
人に話せるような状況であったかどうか、つまり彼は目前に
迫った続編『帝国の逆襲』の構想を進めなければならず、さ
らに『ジェダイの復讐』までは構想したとしても、その後に
前日譚の3部作が続くとなれば、Episode VII〜IXの構想を
ルーカスフィルムが会社として検討する余裕など、全く無か
ったとも考えられる
 そう考えると、今回の報道でルーカスフィルムが会社とし
てEpisode VII〜IXの検討をしたことが無いという発言は、
あながち嘘ではないような気もしてくるものだ。
 それともう一点気になる事実として、当時ルーカスが協力
を仰いでいた女性SF作家リー・ブラケットの存在がある。
彼女は“Star Wars”の公開の翌年の1978年に、『帝国の逆
襲』の第1稿を遺して亡くなるが、生前にルーカスとブラケ
ットが全9話の構想を話し合ったことは当然考えられること
だ。そこでもし、ブラケットのEpisode VII〜IXの構想が、
ルーカスの考えと違っていたら。しかもその違いを修正でき
ないまま彼女が亡くなったとしたら。そしてルーカスが彼女
の意見を尊重して『帝国の逆襲』を作ったとしたら。
 この『帝国の逆襲』の脚本は、ブラケットとローレンス・
カスダンの共同の名義になっているが、これがブラケットの
意見を尊重したものとすれば、それは当然Episode VII〜IX
にも続く設定となっていたはずで、この時点でルーカスが、
最早自分の構想した物語を描くことを出来なくなってしまっ
た可能性は、充分に考えられるところではないだろうか。な
おルーカスは、『帝国の逆襲』も、『ジェダイの復讐』も、
なぜか自分では監督しようとしなかったものだ。
 そう考えると、ルーカスがEpisode Iの発表以降、Episode
VII〜IXはないと言い切るようになったことも判るような気
がしてくるものだ。以上はあくまでも僕の想像だが、今回の
騒ぎを見ていて、ふとそんなことを考えてしまった。
 因に、今回の情報は、ルーカスフィルムの契約スタッフの
1人が、Episode VII〜IXについての守秘義務を伴う契約を
結んだというものだが、実は、同じような情報は今年の1月
にも流されていた。その時は、チューバッカ役のピーター・
メイヒューが、今回新規に登場するEpisode IIIへの出演契
約を結ぶにあたって、その契約書にはEpisode VII〜IXへの
出演も含むとあったというものだ
 しかしこの種の契約において、先を見越してこのようなこ
とを書くのは常套手段だし、これだけで即Episode VII〜IX
の実現につながるものではない。このため1月の時にはあえ
てサイトに書かなかったものだが、そのときに情報をお伝え
しなかったことについては、ここでお詫びしておきたい。
 ということで、僕自身はEpisode VII〜IXについては、か
なり懐疑的なのだが、実は“Star Wars”に関しては、最近
別の情報が流されていて、それはテレビシリーズ化の計画が
進んでいるというものだ。この情報によると、テレビシリー
ズはEpisode IIIとEpisode IVの間を繋ぐものになるという
ことで、アナキン・スカイウォーカーが本当のダース・ベー
ダーになるまでを描くものだとされている。
 しかしそれが出来るなら、Episode VIの続きの物語も、す
でに公認された小説シリーズがいくつも存在している訳で、
それらをテレビシリーズ化できない理由は全くない。もちろ
んそれはEpisode VII〜IXということにはならないが、もし
それが実現して成功すれば、そこから映画版の最後の3部作
が見えてくることも期待したいのだが…。
        *         *
 今回は最初に長々と書いてしまったので、以下は製作ニュ
ースを大急ぎで紹介することにしよう。
 まずは、前回3作品を報告したばかりのダコタ・ファニン
グの計画で、ドリームワークスからもう1本、何とスティー
ヴン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演“War of the
World”への出演が発表された。この作品は前にも紹介して
いるように、1898年に発表されたH・G・ウェルズの原作を
デイヴィッド・コープ脚本で現代化して映画化するもので、
撮影は今年の11月に開始、公開は来年夏に予定されている。
 一方、前回報告した“Dreamer”は9月14日に撮影が開始
されており、この撮影が1カ月半ほどで終れば、スケジュー
ル的には問題は生じないものと思われる。しかしまだ11歳の
少女スターには、学業との兼ね合いも難しくなりそうだ。
 また、報告されている予定では、ドリームワークスで4作
品が連続することになるが、専属契約を結んでいる訳でもな
い特定の会社との連続出演を他の会社が放っておくものかど
うか。そうなると前回報告した“Alice in Wonderland”と
“Through the Looking Glass”の前に他社の作品が挟まる
ことも考えられ、その場合には、成長の早い子役にはアリス
を演じられる期間は限られるので、すこし心配になってくる
ところだ。
 なお、彼女の新作では、ロバート・デ=ニーロと共演した
“Hide and Seek”が年内に全米公開される。
        *         *
 お次は、『ブレイド』シリーズ第3作“Blade: Trinity”
の年末全米公開が予定されている脚本家デイヴィッド・ゴイ
ヤーが、ワーナーとの1年間の優先契約を結び、少なくとも
3作品の計画が進められていることが報告された。
 ゴイヤーとワーナーの関係では、すでに製作中の“Batman
Begins”の脚本を担当しているが、実はゴイヤーは、今まで
は『ブレイド』の製作元のニューラインと優先契約を結んで
おり、“Batman”への参加はその契約の下で特別に認められ
たものだった。
 しかしその契約が年内で満了することから、新たにワーナ
ーとの優先契約が結ばれることになったものだ。因に、ワー
ナーとニューラインは、現在は同系列の会社なので、この契
約は問題なく行われたようだ。そしてこの新契約の下では、
ワーナーが権利を所有する73年製作のMGM作品“Soylent
Green”(ソイレント・グリーン)のリメイク計画が進めら
れている他、2作品のDCコミックスからの映画化も予定さ
れているということだ。
 なお、今回の1年契約はあくまでも初年度のことで、ワー
ナーでは来年以降、複数年契約を期待しているそうだ。ただ
しゴイヤーの予定では、すでにニューラインで“Alone”と
“Y: The Last Man”、ディズニーで“Unique”、ミラマッ
クスで“Murder Mysteries”、ドリームワークス/ソニーで
“Descent”などの計画も進んでいるようで、優先契約を結
んでも即実効という訳には行かないようだ。
        *         *
 16世紀から生き続ける不死者の戦士たちが、現代の世界で
壮絶な戦いを繰り広げる“Highlander”(ハイランダー)シ
リーズは、ラッセル・マルケイ監督、ショーン・コネリー、
クリストファー・ランバートの共演で、第1作が1986年にフ
ォックスから公開されたものだ。
 その後このシリーズは、1991年と94年に続編が製作され、
92−98年にテレビシリーズと、98年にはテレビで女性戦士を
主人公にした傍系シリーズ、またテレビ用のアニメーション
シリーズも製作され、さらに2000年にはテレビシリーズのキ
ャラクターも交えた劇場版も製作されている。
 そして新たにそのシリーズの劇場版を、2本製作する計画
が発表された。
 その1本目は実写映画版で、“Highlander: The Source”
という題名。ミラマックス傘下のディメンションが年内に製
作を開始する計画で、来年公開が予定されている。因にシリ
ーズの映画版では、コネリーの出演は第2作までだったが、
ランバートは2000年作まで常に登場しているようで、今回は
どうなるのだろうか。
 そして2本目は、題名は紹介されていなかったが長編アニ
メーションとして製作されるもので、テレビシリーズの中心
脚本家だったデイヴィッド・アブラモウィッツが脚本を執筆
し、『東京ゴッドファーザーズ』のマッドハウスがアニメー
ションを担当。公開は再来年の予定になっている。
 なお、内容については明らかにされていないが、アニメー
ション作品の製作を担当しているケヴィン・イーストマンと
いう人は、2000年に製作された“Heavy Metal 2000”(ヘヴ
ィメタルFAKK2)で原作者の1人としてクレジットされ
ていたようだ。
 また、このアニメーション作品の製作は、Imagiという会
社を通じて行われているが、この会社は、ドリームワークス
の製作で、史上最高の製作費が投入されるNBC放送のアニ
メーションシリーズ“Father of the Pride”の製作でも中
心的に動いている会社だそうだ。
        *         *
 今回もドリームワークスの話題が多いが、『スクリーム』
シリーズなどのウェス・クレイヴン監督が同社で進めている
スリラー作品“Red Eye”の主演者に、ニューラインが今夏
公開した“The Notebook”に主演のレイチェル・マクアダム
スと、『コールドマウンテン』などのキリアン・マーフィの
起用が発表された。
 この作品は、カール・エルスワースの脚本によるもので、
飛行機の女性客が、乗り合わせた見知らぬ男から、彼女の父
親の生命と引き換えに、機内で進む暗殺計画への加担を強い
られるというもの。マクアダムスとマーフィはこの女性客と
暗殺者を演じることになる。
 なお、マーフィの起用について、クレイヴンの説明による
と、マーフィは出演を熱望して、彼自身の結婚式の2日前に
も関らずニューヨークからロサンゼルスへ出向き、空港のレ
ストランで監督と打ち合わせをして、寝不足による真赤な目
のままで東海岸へ戻っていったそうだ。また監督は、彼のよ
うな俳優が、本作のようなジャンルの作品に興味を持ってく
れるのは嬉しいとも語っていた。
 因にこの作品、内容紹介だけ読むとサスペンスドラマのよ
うに見えるが、クレイヴンは、本作のジャンルをホラーだと
称している。確かに彼の監督歴から考えるとそれも有り得る
が…。となると、紹介された物語の後にどのような展開が待
ち受けているのか、完成が待ち遠しい作品になりそうだ。
        *         *
 ワーナーが、『ジャック・ライアン』シリーズなどの製作
者メイス・ニューフェルドと組んで進めている宇宙SF作品
“Cosmonaut”に、夫婦脚本家チームのロバート&ミシェル
・キングの起用が発表された。
 この作品は、現在建設中の国際宇宙ステーションが完成し
た後を舞台にしたもので、その宇宙ステーションで発生した
初めての殺人事件が描かれる。その被害者が残したダイイン
グメッセージ(題名)からロシア人の宇宙飛行士が疑われる
が…というお話で、オーストラリア人作家ピーター・マカリ
スターが執筆した原作は、ベストセラーになったということ
だ。因に、英語で宇宙飛行士は、astronautとなる。 
 そしてワーナーでは、昨年春からこの作品の映画化計画を
進めていたものだ。なお、夫のロバートは『バーティカル・
リミット』などの脚本で知られる他、1994年に公開された野
球が題材のファンタシー映画“Angels in the Outfield”の
テレビ版続編で、2000年放送の“Angels in the Infield”
では、夫婦で脚色し、夫が監督したこともあるそうだ。
        *         *
 9月の第2週に日米同時公開され、全米は週末3日間の興
行収入で約2400万ドルを記録して第1位となった“Resident
Evil”(バイオハザード)に、予定通り第3作の計画が発
表された。
 この第3作については、来日記者会見を行った主演のミラ
・ジョヴォヴィッチも期待を表明していたものだが、今回の
成績は充分にその期待に応えるものだったようだ。そしてこ
の第3作の発表は、第1作の監督で第2作では脚本を担当し
たポール・W・S・アンダースンが行っている。
 なおアンダースンは、このゲームを基にしたシリーズの映
画化では、最初から3部作にする計画だったということで、
その第1作はゲームの前の物語、第2作はゲームそのもの、
そして第3作ではゲームの後を描く計画だということだ。そ
の題名は“Resident Evil: Afterlife”になるとしている。
 またアンダースンは、自分はどの作品も常に3部作を念頭
に置いて製作していると語ったそうで、彼の関係した作品で
続編が作られたのは今回が2度目だと思うが、その内、他の
作品の続編も実現してもらえるのだろうか。
        *         *
 香港で、『男たちの挽歌』を共に手掛け、その後共にハリ
ウッドに進出した監督ジョン・ウーと、俳優のチョウ・ユン
ファが、再び手を組む計画が発表されている。
 作品の題名は、“The War of the Red Cliff”というもの
で、1700年前の中国の歴史に基づく物語ということ。ただし
映画化は、その600年後に中国で書かれた“Romance of the
Three Kingdoms”という小説の一部を映画化するとも紹介さ
れていた。年代的には『三国志』の頃(3世紀)ということ
になりそうだが、9世紀ごろに書かれた小説というのは何な
のだろうか。
 なお、製作は中国資本で行われるもので、製作費は3600万
ドルが予定されているということだが、これはチャン・イー
モウ監督による『HERO』の3000万ドルの抜いて中国映画
の新記録になるそうだ。撮影は2006年に予定されている。
        *         *
 あとは短いニュースをまとめて紹介しよう。
 まずは、今年5月15日付第63回で紹介した“The Bad News
Bears”のリメイク計画で、監督に『スクール・オブ・ロッ
ク』のリチャード・リンクレイターの起用が発表された。こ
の計画では、“Bad Santa”を手掛けたグレン・フィカーラ
とジョン・レクアが脚本を執筆し、ビリー・ボブ・ソーント
ンがオリジナルでウォルター・マッソーが演じた飲んだくれ
のコーチ役を演じることが先に発表されているが、やはり子
供主体の映画であることに変りはなく、前作でも子供たちの
演技を見事に引き出したリンクレイター監督の手腕が期待さ
れる。後はテイタム・オニールの役に注目が集まりそうだ。
 お次は、以前に紹介したかどうか思い出せないが、往年の
テレビシリーズ“Hawaii Five-O”の映画化計画で、脚本に
“Ocean's Twelve”を手掛けたジョージ・ノルフィの起用が
発表された。ハワイ警察の刑事を主人公に、リゾート地で起
こるさまざまな事件を解決したオリジナルシリーズは、アメ
リカCBSで1968年から80年まで12年間も続いた人気番組。
その映画化の計画で、配役などは未定だが、製作のワーナー
では、来年春の撮影、2006年夏の公開を目指している。因に
ノルフィは、“Ocean's Twelve”の脚本では“Honor Among
Thieves”という全く関係なかった脚本から見事に“Ocean's
Eleven”の続編にマッチした脚本を作り上げたということ
で、今回は往年のテレビシリーズのコンセプトにマッチした
脚本づくりが期待されているようだ。
 “Living Dead”シリーズの第4作“Land of the Dead”
の撮影開始が近づいているジョージ・A・ロメロがトロント
で開かれたホラー映画ファンの集いに登場し、新作について
語っている。それによると、新作の撮影ではCGIの使用も
検討されているが、100人以上のゾンビ役のエキストラが登
場するシーンもあるということだ。そして今回のゾンビは、
“Day of the Dead”の流れを引き継いで、少しづつ学習す
るようになってはいるが、走ることは全くしないそうだ。一
方、その前に進めていた“Diamond Dead”についても、絶
対にやりたい作品ということで、どこかがゴーサインを出し
てくれればすぐにでもということだ。確か以前の情報では、
スコット・フリーの製作でゴーサインが出たというものだっ
たはずだが、どうやら誤りだったようだ。
        *         *
 最後に、ぎりぎりで飛び込んできたビッグニュースで、一
時はワーナーが有利と見られていたMGMの買収について、
ソニーの交渉が合意したことが発表された。
 この情報に関しては、今年5月1日付の第62回でも報告し
ているが、最終的にソニーは、50億ドルを若干下回る金額で
1987年以降のMGM/UA作品の権利を獲得することになっ
た模様だ。これによりソニーは、以前から所有しているコロ
ムビア/トライスターの権利と合せて、8000本を超える映画
の権利を所有、これはハリウッドでは最大の規模になるとい
うことだ。
 この権利の活用については、名作のリメイクや続編、シリ
ーズ化なども考えられる訳だが、MGM/UAのシリーズと
いっても、いまさら『ロッキー』の復活はないだろうし、確
かに“The Pink Panther”は来年復活するが、007はピア
ーズ・ブロスナンの降板決定で多少勢いが陰っていて、思い
切ってハル・べリー=ジンクスの再登板でもないと持ちそう
もない。それに比べれば、コロムビアの『スパイダーマン』
やスクリーン・ジェムズの『バイオハザード』の方がよっぽ
ど勢いがあるというところだろう。
 今回の買収はDVDの次期規格の覇権争いの面もあるが、
それにしてもソニーはかなり危ない賭けに出ている感じだ。



2004年09月14日(火) エイプリルの七面鳥、ゴースト・ネゴシエーター、沈黙の聖戦、ソウ、恋に落ちる確率、赤いアモーレ、アンナとロッテ、約三十の嘘

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『エイプリルの七面鳥』“Pieces of April”       
『アバウト・ア・ボーイ』などの脚本家ピーター・ヘッジス
の初監督作品。                    
アメリカ中のオーヴンが七面鳥を焼くために忙しくなるとい
う感謝祭。その日、エイプリルは、離れて暮らす家族を招待
して七面鳥を焼こうと決心する。実は、母親と反りの合わな
いエイプリルは、今まで母親のために料理などしたことが無
かった。しかし母親がガンで余命いくばくもないと判り、そ
れをする気になったのだ。               
ところが下ごしらえも済み、いざ焼きに入ろうとしたとき、
オーヴンが点火しないことが判明する。彼女はアパートの各
部屋を訪ね、オーヴンを借りようとするのだが…。    
一方、招待を受けた家族は父親が運転する車で、エイプリル
の住むN.Y.へと向かう。同乗するのは母親、弟、妹、そ
して祖母。しかし、エイプリルとの思い出が不愉快なものば
かりの一家は、思い出すたびに停車を余儀なくされ、行程は
遅々として進まない。果たして、一家は揃って感謝祭の七面
鳥を食べることが出来るのか。             
ほぼ同じ年頃の娘が、一人暮らしを希望して家を出ている一
家の父親としては、いろいろ思い当たる節もあるし、所詮家
族ってこんなものだろうとも思える。その辺のところが、実
に見事に描かれた作品だ。               
人種の坩堝と言われるN.Y.で、人種を超えて協力ができ
あがって行く描き方も素晴らしかったし、いろいろ描くべき
ことがちゃんと描かれている。ある意味、理想論の映画かも
知れないけれど、そんなところが素敵な作品だった。   
なお、本作でオスカー候補にもなった母親役のパトリシア・
クラークスンと、主人公エイプリル役のケイティ・ホームズ
の演技が素晴らしく、ホームズ出演の“Batman Begins”が
益々楽しみになってきた。               
                           
『ゴースト・ネゴシエーター』             
東京テアトルを中心にした“ガリンペイロ”製作による邦画
作品。先に紹介した『犬猫』がその第3弾で、本作が第4弾
となる。                       
現世に出没する幽霊と直接交渉し、成仏させるエキスパート
を主人公にした日本映画。               
主人公は、高校時代の事故で幽霊が見えるようになってしま
った女性。その特技を活かしてこの職業に就いていたが、現
在は結婚して仕事を辞めようと思っている。そして最後の仕
事として臨んだ新婚家庭の幽霊も、彼女なりに決着をつけた
のだが…。                      
その夜、デートの最中に仕事の依頼が入る。その幽霊は八王
子の音楽大学に出没するもので、すでに普通の人の目にも見
えるほどに力をつけていた。              
タイトルからして『ゴーストバスターズ』からのインスパイ
ア作品であることは判るが、視覚効果満載で描かれたハリウ
ッド作品に比べて、チープな作品であることは否めない。と
は言うものの、アイデアでは良い線に行っていると思ったの
だが…。                       
何だか、展開にもろにチープさが出てしまっているような作
品になってしまった。                 
第1に、音楽大学で歌われる歌が『恋のバカンス』というと
ころから退いてしまう。それを歌う幽霊が南野陽子だから難
しい歌は無理だったのかも知れないが、それにしても、とい
うか、いくらなんでもという感じにさせられてしまう。  
第2に、設定を延々とナレーションする感覚も判らない。こ
れは往年のテレビ番組のパロディのつもりらしいが、時代錯
誤というか、しかもここだけパロディにしても自己満足でし
かない。もちろん中にもそれなりの衣装なども出てくるがパ
ロディが生きていない。                
他にもいろいろあるが、大体この映画は展開にいろいろなエ
ピソードが多すぎる。だからそれぞれのエピソードの底が浅
くなってしまっているし、その結果全体の印象が薄っぺらな
ものになってしまっている。              
例えば主人公が仕事を辞めたい理由も、これだけでは物足り
ないというか、ここにもっとドラマがあっていい。それに、
ちゃんと納得できるような交渉をしているシーンも、一つは
見せるべきだろう。逆に、はなわのエピソードなど何のため
にあるのか、必要性が感じられない。          
と、ここまで脚本の問題点を羅列したが、多分、この脚本は
読めば面白かったのだろうと思う。しかしそれは、読む側が
行間を埋めていたからで、その行間を埋めて固定した映像に
して提示するという作業が、本作では監督によってなされて
いない。                       
大体、試写で配られたプレス資料に監督の言葉が無い辺りか
ら、監督のこの作品に対する思い入れの無さが見えてくる。
本職はテレビの監督らしいが、とりあえず脚本通りに撮りま
したでは、この手の作品は面白くはならない。      
『犬猫』は、製作費的にはもっと低予算だったろうと思える
が、あの作品には監督の思い入れがいっぱい詰まって、それ
が見る側に伝わってくる嬉しさがあった。しかしそのような
感覚がこの作品からは伝わってこない。         
それと、本来、日本映画においてプロデューサーは脚本を兼
ねるべきではないと思う。しかも新人監督に撮らせるような
作品では…。結局この映画では、その辺から全てが野放しに
なってしまって、作品に文句を言える人が内部にいなかった
ところに問題がある。                 
再びプレス資料によると、プロダクションノートを寄稿して
いるアシスタントプロデューサーの人には、それなりの感覚
があったようなのだが、その感覚を活かせるような製作体制
を作ることが必要のように感じられた。         
以上、必要があると感じるのでここに記す。ただし僕は『犬
猫』は好きだし、この映画も嫌いではない。       
                           
『沈黙の聖戦』“Belly of the Bast”          
スティーヴン・セガールと、『HERO』『LOVERS』
のアクション監督=チン・シウトンが手を組んだアクション
作品。                        
タイを舞台に、娘を反政府組織に誘拐された元CIAのエー
ジェントが、娘の救出のために作戦を繰り広げる。    
セガールは実際に元合気道の師範で本格的な武道家。一方、
シウトンはワイアアクションで時代を築いた人。この2人が
手を組んで一体何が始まるかというところだが、残念ながら
まだ完全にしっくりとは行かなかったようだ。      
特に前半は、セガールは深呼吸と合気道の形をしているだけ
で、相手が勝手にすっ飛ぶといったワイアアクションが目立
ち、水と油のような感じがした。            
しかし後半、トム・ウーとの絡みで1対1の勝負となったシ
ーンや、その前の女優の名前は不明だが、謎の女レナとの闘
いの辺りは、多分相手の俳優がシントウFXを判っている面
もあるのだろうが、それなりの見せ場になっていた。   
この部分をもっと作り込んで、映画の全体に活かせるように
なれば、面白いアクションが生み出される可能性はあるとも
感じた。                       
セガールも、ハリウッド大手を離れてからはなかなか良い作
品に出会えないが、まだ52歳、もう一と花咲かせてもらいた
いものだ。                      
なお、お話はいつもの通りなので、あえて紹介はしないが、
勧善懲悪ハッピーエンドの展開は、安心して見ていられる。
                           
『ソウ』“Saw”                    
今年2月の米サンダンス映画祭で絶賛され、カンヌ映画祭の
マーケットで世界中の映画会社が飛び付いたという作品。 
10月末の日米同時公開では、アメリカはライオンズゲートの
配給で2000館の拡大上映が行われ、日本も全国一斉の公開が
決まっている。                    
荒廃した、巨大なバスルームらしい白いタイルで覆われた空
間。その対角に位置するパイプに鎖で繋がれた2人の男。そ
の間に転がる死体。そして一方の男に、他方の男を殺せば助
けてやるという指令が下る。それは連続殺人鬼が仕掛けた巨
大なパズルだった。                  
サイコパスもので、いかにも異常なシチュエーション、作為
ありありの展開が宣伝の売りとなる作品。従来この手の作品
では、話題性はあるが、ヒットはそこそこというのが常識だ
ろう。それを敢えて拡大公開に踏み切るのは、興行者が今ま
での作品にない面白さを感じたからに他ならない。    
作品を作り上げたのは、原案・監督のジェームズ・ワンと、
原案・脚本・主演のリー・ワネル。僕が見た試写会では、2
人の挨拶と上映後ティーチインが行われた。       
2人はオーストラリアの映画学校の同級生ということで、プ
レス資料ではワネルがワンを立てている風が見えるが、実際
の作品には、ワネルの脚本の見事さが光る。       
ティーチインでの質問にもワネルが主に答えていたし、脚本
に関する質問の答えで、撮影中に細かな修正はしたが、決め
のせりふは絶対に動かさなかったという辺りには、自信があ
ふれていた。                     
この脚本に、8分のDVDを添えたオファーに対して、ケア
リー・エルウェズ、ダニー・グローヴァー、モニカ・ポッタ
ーらが応じたのだから、脚本の完成度は本当に高かったとい
うことだろう。                    
物語は、閉じ込められた2人の男の行動と、過去の経緯の説
明、同時進行で進む別の事件などが交錯するが、それらの結
びつきが巧みで混乱が無く、これほど判りやすい映画は見た
ことがないと思えるほど上手く作られていた。      
R−15指定なので、多少血みどろのシーンはあるがスプラッ
ターというほどではない。               
なお、アメリカでは突っ込みどころの沢山ある映画というこ
とで、ティーチインでもその手の質問が出ていたが、ほとん
どは枝葉末節の意見だった。              
すでに、業界の人にもリピーターが出ているようで、これは
ちょっと行けそうな感じだ。              
                           
『恋に落ちる確率』“Reconstruction”         
昨年のカンヌ映画祭でカメラ・ドールと批評家週間最優秀作
品賞を受賞したデンマーク製作の作品。         
舞台はコペンハーゲン。恋人もいて友達にも恵まれた男が、
ふと行き違った女性に魅かれてしまう。女性は作家の妻で、
夫の講演会に同行してスウェーデンから来ていたが、夫は作
品の仕上げにも忙しく、相手にされずに一人で街を彷徨って
いたのだ。                      
そんな2人が出会い、恋に落ちるが、女とベッドを共にした
男が自宅に戻ると、そこでは彼が住んでいた部屋そのものが
消失し、友達も恋人さえも彼の存在を記憶していない。別の
女を愛したことが、彼の住む世界そのものを変えてしまった
ようだ。                       
男は、作家の妻との逃避行を望みながらも、元の恋人も忘れ
られない。しかし彼が元の恋人を再び愛したら、作家の妻の
記憶から彼の存在が消えてしまうことに…。そんな究極の選
択を迫られる物語。                  
男女の関係の一つの側面が描かれていると言えばそんなもの
だろう。この条件では、普通なら心変わりした男の方が、恋
人や女の存在を忘れてしまうのだろうが、それを逆にしてみ
たという感じだろうか、そんな特殊なシチュエーションが実
に上手く描かれていた。                
しかも本作では、登場する元の恋人と作家の妻を同じ女優が
演じているから、よけいに話が面白くなる。もちろん髪形な
ども大幅に変え、別人としての配役だが、見ている方として
は、男が女に弄ばれているような感じにも写る。     
しかし2人が別人であることの証が、彼に住んでいた部屋の
消失という物理的な変化で描かれる訳で、その辺の脚本の巧
妙さにも感心した。                  
撮影は全てコペンハーゲン市内で行われているが、空中写真
で登場人物たちの位置を示すなどの手法も使われ、その辺の
斬新さがカメラ・ドール受賞につながったようだ。    
なお、原題は上記の英語題名が使用されており、その意味と
登場人物の一人が作家という設定からは、別のテーマも読み
取れるが、それは物語の本質では無いと思う。      
                           
『赤いアモーレ』“Non ti Muovere”          
セルジオ・カステリット脚本・監督・主演、ペネロペ・クル
ス共演による2004年イタリア映画。           
主人公は、学会発表も行うベテランの医師。医師の妻はジャ
ーナリストで、彼は妻を愛してはいるが、避妊リングを装着
している彼女に距離も感じている。そんなある日、彼の車が
道端で故障し、彼は、自宅の電話を貸してくれた女性を襲っ
て強姦してしまう。                  
その女性は、移民の子で雑草のように生きている女。しかし
再び女性の元を訪れた医師は、彼女を愛し続けると同時に、
妻にも子供を持つことを希望する。そして…。      
物語は、主人公の娘が交通事故で瀕死の重傷を負い、主人公
の勤める病院に運び込まれるところから始まる。その発端以
後、時間を縦横に行き来して物語が綴られて行くが、その構
成が実に巧みで素晴らしかった。            
監督の妻でもあるマルガレート・マッツァンティーニ原作、
イタリアではベストセラーになり、文学賞も受賞した小説の
映画化。原作は、主人公の回想という形で描かれているよう
だが、映画化ではその時々の物語として描くことで、妻以外
の女性を愛した男と、そんな境遇でも男を愛し続ける女の至
上の愛が見事に描かれる。               
ヴァラエティ紙の評ではペネロペ・クルスの変貌ぶりが評価
されたようだが、女優ならこのくらいはやるだろうという感
じではある。しかし、かなりきついメイクで登場していた彼
女が、途中でその化粧を落とすシーンには、なるほどと思わ
せるものがあった。                  
                           
『アンナとロッテ』“De Tweeling”           
オランダの女性作家テッサ・デ・ローが1993年に発表したベ
ストセラー小説の映画化。               
第2次世界大戦前のドイツに生まれ、両親の死によって一人
はドイツの貧しい農家、もう一人はオランダに裕福な家庭に
引き取られた幼い双子の姉妹の生涯を描いた歴史ドラマ。 
ドイツで育った姉は自立し、オーストリア出身のナチ親衛隊
の将校と結ばれる。オランダに育った妹はユダヤ人との親交
も結び、音楽とドイツ語を学びながら、母国への留学を夢見
る。そしてナチス台頭の中、姉妹の運命は激動して行く。 
物語は、仲良く歌い遊ぶ幼い姉妹の描写から始まる。そして
一転して現代の老いた姉が妹を訪ねるシーンが続くが、姉の
態度には躊躇が見られ、再会した妹の態度はそっけない。そ
の間の2人に何があったのか。その歴史が綴られて行く。 
ドイツ人の姉妹の運命を、そのドイツに侵攻されたオランダ
の作家が描いた物語。ナチスの政権下でその情報しか持たな
い姉と、オランダでユダヤ人も多くいる中で暮らす妹。その
ギャップは、僕らには完全には理解できないけれど、ここに
描かれる物語はその一端を見せてくれる。        
もちろん大きな歴史の流れの中で、個々人の生き方は世情に
左右されるしかない面はあるのだけれど、お互いの持つ情報
の違いが、あんなにも良かった姉妹の仲を、いとも簡単に引
き裂いてしまう。そんな歴史の非情さを見事に描いた作品だ
った。                        
                           
『約三十の嘘』                    
土田英生の同名の舞台劇の映画化。安物の羽毛蒲団を高値で
売りつける詐欺師のグループを描いた作品。土田と、『とら
ばいゆ』の大谷健太郎、そして『ジョゼと虎と魚たち』の渡
辺あやが共同で映画用の脚本を書き、大谷が監督した。  
舞台は、大阪発札幌行きのトワイライトエキスプレス。その
列車のスーパー・スィート・ルームに5人の男女が乗り込ん
でくる。それは、年に数億稼ぐと言われた伝説の詐欺師グル
ープの再会だった。                  
しかし彼らは3年前、仲間の裏切りで稼ぎを持ち逃げされ、
リーダー格の男は自信を無くしてグループを解散してしまっ
たのだ。そして当時の2番手の男が、元リーダーも含めた再
召集を掛け、彼らは集まってきたのだが…。そこにもう一人
の参加者が現れる。                  
物語は、その行きの様子が描写された後、一転、詐欺に成功
して7千万円の札束を納めたスーツケースを囲んでの帰路が
描かれる。そしてそこでの仲間同士の疑心暗鬼、虚々実々の
展開が描かれる。                   
これを演じるのが、椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠
一、八嶋智人、伴杏里。あと2人ほどせりふのある役はいる
が、事実上この6人だけで進む物語だ。しかも舞台は列車の
中。見るからに舞台劇という感じの作品だ。
ただし、元の舞台では恋愛劇はなかったということだ。これ
に対して映画では、椎名、中谷、妻夫木の三角関係が微妙に
上手く描かれていて、全体として良くできた展開になってい
る。それのなかったという舞台劇が信じられないくらいだっ
た。      
俳優の演技は、日本映画にしては概ね良好。多少引っかかる
部分も他のメンバーが上手くカバーしていた。もちろんナチ
ュラルでないことは日本映画の常だが、元々詐欺師の話とい
うことなので、その辺は了解しやすかった感じはある。  
それと映像では、トワイライトエキスプレスの疾走するシー
ンが随所に織り込まれ、これが結構良いアクセントになって
いた。特に、途中で真昼に空撮されたシーンでは、完璧なパ
ンフォーカスで、まるでジオラマの中を走る模型のような映
像があり、これが見事。この部分は、鉄道ファン、模型ファ
ンにも見てもらいたい感じがした。           
なお、映画に登場するスーパー・スィート・ルームは現実に
は無いということで、それも嘘っぽくて良い感じだった。 



2004年09月01日(水) 第70回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は記者会見の報告から始めよう。
 11月27日に公開される“The Polar Express”のプロモー
ションでロバート・ゼメキス監督の来日記者会見が行われ、
製作に使用された新技術performance capture systemの実施
風景を撮影したメイキング映像が公開された。
 このシステムは、VFXの制作を行うソニー・イメージワ
ークスが開発したもので、俳優の演技をそのままデータ化し
てCGIアニメーションに変換すると紹介されていた。
 その全貌が公開されたものだが、映像を見ると、主演のト
ム・ハンクスは多分体温を遮断するための厚手のボディスー
ツを着用、そして全身の各所に165個と言われる赤外線発生
器を取り付けて演技を行っていた。その赤外線発生器は、大
体BB弾ぐらいの大きさの白い球で、細かな表情を採るため
に顔面だけで数10個、残りが全身にばらまかれているという
感じ。そしてその球の発する赤外線を、セットの周囲に設置
された80台から最大200台の赤外線カメラで同時に撮影し、
球の動きを直接データ化してコンピュータに取り込んでいる
ということだった。
 またセットは、壁やドアなどが赤外線を反射しないように
艶消しされた金属のメッシュで形成され、特に俳優が手にす
る小道具もメッシュで作られているのが傑作だった。一方、
セットに置かれたベッドは普通のマットが敷かれているよう
に見えたが、これは下面からの赤外線の検出は行っていない
ということの現れだろう。
 そしてこのシーンは、予告編でも紹介されている主人公の
少年が北極急行の到着を目撃するシーンなのだが、実はこの
少年もトム・ハンクスが演じているというのも驚きだった。
このためベッドなどは少年とハンクスの比率に合せて拡大さ
れた物になっている。その中で演じるハンクスの顔の表情や
身体の動きがデータ化され、それに合せて少年の映像が作ら
れたようだ。
 因にハンクスは、予告編にも登場する車掌や、少年の父親
など5役を演じているということだ。他にも主題歌を提供し
たスティーヴン・タイラーは、ゲスト出演として劇中のロッ
クシンガーと、妖精の役も演じているそうだ。
 というperformance capture systemの紹介だったが、ゼメ
キスの発言によると、ハンクスは、演技中に照明のセッティ
ングやフィルムの交換などで中断されることが無く、一気に
演じられるので、舞台での芝居のように集中できて良かった
と言っていたそうだ。ただ唯一の不満は、ボディスーツ以外
の衣装を着られなかったことだとか。
 また今回は未公開のシーンもいくつか紹介されたが、その
中には、原作には登場しないプレゼント工場の内部らしきも
のも写されていた。ところがこのシーンの映像は未完成だと
いうことで、背景は線画のみ。大体この時期に監督が現場を
離れ、来日までしているのに未完成のはずはないと思えるの
だが、こういう映像が簡単に作れるのも、CGIならではの
効果と言えそうだ。
 なお、質疑応答では、発表されているImax-3Dでの上映に
関しては、これも簡単な変換でできたと自信ありげだった。
また第2弾となる“Monster House”についても、準備はす
でに進められている様子だった。
        *         *
 ついでに、あと2件、記者会見の報告をしておこう。
 まずは、9月11日の公開の『バイオハザードII』のプロモ
ーションで、主演のミラ・ジョヴォヴィッチの来日記者会見
が行われた。この会見で、ジョヴォヴィッチは作品の出来に
も相当の自信があるらしく、雄弁に質疑に応じていたが、特
に第3作の可能性に関しては、第2作の結果次第で、そのた
めにはぜひとも第2作をヒットさせて欲しいと、意欲満々の
感じだった。今回第2作は、脚本と監督もつぼを得た感じだ
し、僕も第3作には期待したいところだ。
 一方、9月4日公開の『ヴァン・ヘルシング』も、出演者
5人とスティーヴン・ソマーズ監督を交えた来日記者会見が
行われた。この会見では、監督に続編の可能性と、次回作の
計画についての質問が出たが、どちらも未定としたものの、
次回作については、次もVFX満載の作品になりそうだとい
うことだった。これは前回紹介した“Flash Gordon”の線が
固いと見て良さそうだ。
        *         *
 以下は、いつもの製作ニュースを紹介しよう。
 まずは、“Man on Fire”(マイ・ボディガード)でも名
演技を見せてくれた天才子役ダコタ・ファニングの企画が、
ドリームワークスから2本発表されている。
 1本目は、カート・ラッセルとの共演で、“Dreamer”。
この作品で彼女が演じるのは、ケンタッキーの牧場主の娘の
役で、本来なら屠殺される骨折した競争馬を介護してレース
に出場させるというお話。これに挫折した騎手の復活も絡む
というものだ。元々は実話に基づく父と息子の話だったそう
だが、彼女の出演で父と娘の物語に改訂されることになって
いる。撮影は9月14日に開始される。
 そしてもう1本は、ディズニーのアニメーションでも有名
なルイス・キャロル原作の“Alice in Wonderland”(不思
議の国のアリス)の映画化の計画で、ついに映画での本格主
演ということになりそうだ。
 この計画では、彼女が出演し、ナレーターも務めたテレビ
シリーズ『TAKEN』の脚本家レス・ボーエンが新たな脚
色を担当し、さらにヒットの具合では、キャロルが執筆した
続編の“Through the Looking Glass”(鏡の国のアリス)
の映画化も行われることになっている。
 因に、『不思議の国のアリス』の映画化は、1933年に当時
のパラマウントのオールスターキャストで製作されたものが
あり、戦後は1950年にイギリスで実写と人形劇の共演による
もの、そして1951年のディズニー・アニメーション。さらに
1972年にピーター・セラーズらの出演によるものと、1999年
にジム・ヘンスン・クリーチャーショップが関った作品が記
録されている。またTVムーヴィでは1985年にオールスター
キャストによるものがあるようだ。
 これに対して、『鏡の国のアリス』の映画化は、1966年に
TVムーヴィと、1985年には同年のTVムーヴィの続きとし
て製作されたもの、それに1987年にアンドレア・ブレスチア
ーニとリヒャルト・スラプツィスキー監督によるおそらくア
ニメーション思われる作品がある以外は製作された記録が無
く、今回の計画が実現すれば、ハリウッドでは初めての映画
化になるようだ。
        *         *
 お次は、各社の参入が相次いでいる劇場用CGIアニメー
ションの情報で、ソニー傘下のソニー・ピクチャー・アニメ
ーション(SPA)から今後の製作計画が発表されている。
 同社の動向に関しては、昨年1月15日付の第31回と今年3
月1日付の第58回でも報告しているが、その際にも紹介した
熊と鹿と森林レンジャーを主人公にした“Open Season”と
いう作品が、第1作としてマーティン・ローレンスとアシュ
トン・カッチャーの声の出演で製作が進められている。
 これに続く第2作には、ペンギンの主人公が、『エンドレ
スサマー』張りのサーフィンテクニックを披露する“Surf's
Up”という作品が、『トイストーリー2』のアッシュ・ブ
ラノンと、『ターザン』のクリス・バックの共同監督で準備
が進んでいるようだ。
 そして新たに第3作の計画として、続編もヒットしたコメ
ディ作品“Barbershop”の脚本家ドン・D・スコットが脚本
と製作を担当する“Big Nasty”という計画が発表された。
この作品は、宇宙を舞台にした物語という以外に詳しい内容
は明らかにされていないが、ミュージカルになるという情報
もあるようだ。
 一方、ソニーでは、上記の“The Polar Express” に続く
performance capture systemの第2弾“Monster House”の
配給を手掛けることも発表しており、CGIアニメーション
では一気に攻勢を掛けることになりそうだ。
 ただし今回の報告では、第31回で紹介した“Shangri-la”
については題名が消えていた。また、待望の“Astroboy”に
関しては、第65回で紹介したように実写とCGIの合成で進
められることになるようだ。
        *         *
 続いては、『冷血』や『ティファニーで朝食を』などの原
作者としても知られる作家トゥルーマン・カポーティの伝記
映画が、ワーナー・ブラザース傘下のワーナー・インディペ
ンデンス・ピクチャーズで計画され、その出演者に多彩な顔
触れが集まっている。
 まず発表されたのは、マーク・ウォルバーグで、彼は『冷
血』のモデルとなった殺人鬼ペリー・スミスを演じる。また
サンドラ・ブロックがカポーティの従妹で『アラバマ物語』
の作家ハーパー・リーに扮し、カポーティ役はイギリス人の
俳優トビー・ジョーンズが演じる。因にジョーンズは、『ハ
リー・ポッターと秘密の部屋』で妖精ドビーの声を当ててい
る人だそうだ。
 さらに、カポーティと親交のあった歌手のペギー・リー役
にグウィネス・パルトロウ、また作家の支援者役で『ヴィレ
ッジ』のシガニー・ウィーヴァーの出演も発表されている。
 なお物語は、1997年にジョージ・プリムプトンによって発
表されたカポーティの口述自伝“Truman Capote: In Which
Various Friends, Enemies, Acquaintance and Detractors
Recall His Turbulent Career”に基づき、ダグ・マクグラ
フが脚色、マクグラフの監督で映画化されるもので、特に、
作家とペリー・スミス及びディック・ヒコックの2人の殺人
者が、死刑を待つ間に続けた交流が描かれるようだ。
 映画化の題名は“Every Word Is True”で、来年1月1日
から撮影開始の予定になっている。
        *         *
 またまた往年の人気テレビシリーズの映画化で、アメリカ
では1964年から65年に放送され、日本でも65年からフジテレ
ビ系で放送された“The Munsters”(マンスターズ/おじい
ちゃんはドラキュラ)を、“Scary Movie”シリーズの最初
の2作を手掛けたウェイアンス兄弟の脚本で映画化する計画
がユニヴァーサルから発表された。
 このシリーズは、邦題の通り吸血鬼の祖父に、同じく吸血
鬼の母親、それにフランケンシュタインの怪物の父親と、狼
男の息子、さらに普通の女性の娘の一家を主人公にしたもの
で、アメリカでは1988年−91年にリメイク版も製作された人
気番組。彼らは普通の生活を送ろうとしているが、なぜか隣
人たちは彼らを恐れており、その理由が判らないことから騒
動が生じるというものだ。
 因に、息子のエディ・マンスターのキャラクターは、ベン
・スティラーが長らく自作のコントのキャラクターとして演
じ続け、それでも人気が保たれてきたと言われている。
 そして今回の映画化では、ウェイアンスは過去にユニヴァ
ーサルと組んだことはなかったが、TVシリーズの権利が同
社にあることを知り、たまたま以前ニュー・ラインで彼らの
“Most Wanted”という作品を手掛けたマリー・ペアレント
という人物が同社の海外担当重役を勤めていたことから、そ
の伝を頼って今回の計画実現に漕ぎ着けたということだ。
 ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男が揃うのは『ヴ
ァン・ヘルシング』と同じだが、オリジナルは世間に受け入
れられない一家のちょっとペーソスも漂うコメディで、この
設定にウェイアンスの毒気がどう発揮されるかも気になると
ころだ。
        *         *
 1985年にジョン・ヴォイト主演で映画化された“Runaway
Train”(暴走機関車)をリメイクする計画がフォックスか
ら発表された。
 この作品は、元々はリーダーズ・ダイジェスト誌などにも
紹介された実話に基づくもので、操縦不能になった機関車を
人的被害を最小限に食い止めようとする人々の行動を描いて
いる。そしてこの作品は、最初に黒澤明監督がハリウッドで
の映画化を目指したものの、トラブルで実現せず、その後に
脚本が改作されて85年の映画になっているが、アンドレイ・
コンチャロフスキーが監督したこの作品もかなりの評価を得
ているものだ。
 今回は、その作品の新たな脚本の執筆を“Constantine”
などのマーク・ボマックが契約したもので、彼は先にフォッ
クスで“Die Hard 4”の脚本を契約しており、それに続いて
本作の脚色を進めるということだ。
 なお85年作品には、はっきりと黒澤明の脚本に基づくと記
載されていたものだが、今回の報道で黒澤監督の名前は一切
紹介されておらず、その辺がちょっと気になる。もっとも、
今回の報道では、85年作品についても触れられていないが、
内容はコントロールを失った機関車を中心にした物語とされ
ており、同じ原作によることは間違いないようだ。
 また、ボマックはディズニーでジェリー・ブラッカイマー
製作による“Unnatural History”というアクション映画の
脚本のリライトも契約している。この作品は、自然史博物館
に閉じ込められた家族が、夜になって生命の甦った展示品の
怪物たちと、生き延びるための闘いを繰り広げるというもの
で、ちょっと気になる作品になりそうだ。
        *         *
 前日付の『ブラインド・ホライズン』の記事でも紹介して
いるランドール・エメットとジョージ・ファーラが主宰して
いるエメット/ファーラ・プロダクションから、新たに3本
の脚本を契約したことが発表された。
 1本目は、ローデリック&ブルース・テイラーという脚本
家チームが執筆したもので“Love and Hate”。フロリダの
南部を舞台に、女性警官が幼馴染みで、死者から甦った友人
につきまとわれるというお話。すでにスティーヴン・ローリ
ーによるリライトも行われ、製作準備も進んでいるようだ。
 2本目は、マット・ライリー執筆の“Altitude Rush”と
いう脚本で、アメリカ大統領を脅迫する計画を阻止しようと
する友人グループの行動を追ったもの。
 そして3本目は、スチュワート・ヘイゼルダインが執筆し
た“Underground”という脚本で、退役軍人の主人公がロン
ドンの地下鉄を襲う洪水から、テロリストを守らなければな
らなくなるというもの。経緯がよく判らないが、アクション
映画にはなりそうだ。
 この他、エメット/ファーラでは、ジャスティン・ティバ
ーレイクとモーガン・フリーマンの主演による“Edison”と
いう作品の撮影が完了しており、また、MGM/ディメンシ
ョン製作の“The Amityvill Horror”が撮影中、さらにアル
・パチーノの主演による“88 Minutes”という作品が準備中
とのことだ。
        *         *
 続報で、2002年10月15日付の第25回で報告したトニー・ス
コット監督による“The Warriors”(ウォリアーズ)のリメ
イク計画で、脚本に、テレビシリーズの“The Sopranos”で
4度のエミー賞候補に挙げられたテレンス・ウィンターの起
用が発表された。
 この計画は、1979年に製作されたウォルター・ヒル監督の
同名の作品を、21世紀にマッチするようにアップデートして
リメイクするもので、当初用意されたジョン・グレン、トラ
ヴィス・ライトによる脚本から、ジョエル・ワイマンがリラ
イトしていることも報告されていた。その脚本に、さらにリ
ライトが加えられるもので、どのような問題が生じているか
は不明だが、そろそろ完成を期待したいところだ。
 なおウィンターは、“The Sopranos”では製作総指揮も務
めており、今年のエミー賞には彼が担当した脚本2作がノミ
ネートされている他、昨年以前にも2作で候補に挙げられた
ことがあるということだが、実はこのウィンターは、1995年
から独立系で放送された“Xena: Warrior Princess”の脚本
も担当していたということだ。
 この作品は、“Hercules: The Legendary Journeys”から
スピンオフして製作された女性が主人公のヒロイックファン
タシーシリーズで、オリジナルより成功を納めたとも言われ
たもの。ファンタシー系の作品でも実績のある脚本家には、
多いに期待したいところだ。
        *         *
 後半は短いニュースをまとめておこう。
 まずはファインラインから、“Roofworld”という未来物
のスリラーの計画に、コマーシャル出身のチャーリー・スタ
ドラー監督の起用が発表されている。この作品は、1988年に
発表されたクリストファー・ファウラー原作の同名の小説を
映画化するもので、ロンドン市街の屋上に暮らす公民権を失
った人々の物語。何となく『メリー・ポピンズ』の煙突掃除
夫を思い出して、それだけでもファンタスティックな雰囲気
だが、ここでどのような物語が展開するのだろうか。なお監
督は、ゲイリー・オールドマン主演の“Dead Fish”という
アクションコメディに続く第2作ということだ。
 お次も空中のお話で、“Airborn”という飛行船を舞台に
したファンタシーアドヴェンチャーの計画がユニヴァーサル
で進められている。この作品は、ケネス・オペルというカナ
ダの作家が発表した小説を映画化するもので、飛行船の客室
係として働く15歳の少年が、もと気球乗りの老人から美しい
生物の話を聞かされ、老人の孫娘と共にその生物を探しに行
くというもの。何か美しい物語が誕生しそうだ。なお、製作
はスティーヴン・ソマーズのプロダクションで行われるが、
ソマーズは脚本にも監督にもタッチしない予定だそうだ。
        *         *
 最後にちょっと気になる情報で、“Sperman”の新監督に
就任したブライアン・シンガーが、スーパーマン(カル=エ
ル)の父親のジョー=エル役にパトリック・スチュアートを
希望しているという噂が広がっている。 
 スチュアートは、テレビ/映画の“Star Trek: The Next
Generation”シリーズでのピカード艦長役で有名だが、同時
に、シンガーが監督した『X−メン』及び『X−メン2』で
はDr.Xを演じていたもので、シンガーが彼を招きたい気持
ちはよく判る。しかしこれでは、フォックスが進めようとし
ている“X-Men 3”を完全にばらばらにしてしまうことにな
る訳で、果たしてそこまでのことが出来るかどうか。
 因にこの役は、McG監督のときにはジョニー・デップが
希望しているという情報もあったものだが、その線は完全に
消えたようだ。しかし物語的には、予定通りカル=エルのク
リプトン星脱出から地球到着が描かれるようで、地球での養
父ジョナサン・ケント役には、ジョン・サクソンがカメラ・
テストを受けたという情報もあるようだ。
 いずれにしても、2006年夏の公開に向けて“Sperman”の
製作準備は着々と進んでいるようだ。


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井口健二