井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2003年01月16日(木) ホワイト・オランダー、クリスティーナの好きなコト

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/)   ※
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『ホワイト・オランダー』“White Oleander”      
ミシェル・ファイファーが母親役を演じる母子ものドラマ。
15歳のアストリッドはアーチストの母親と暮らしている。し
かしある日、母親がボーイフレンドを殺害し、終身刑の判決
を受けてしまう。このためアストリッドは里親に預けられる
ことになる。                     
最初の里親は、元アル中でイエスによって救われたという女
性。しかしアストリッドが刑務所に面会に訪れたとき、母親
は宗教による救いを激しく拒絶する。母親は、獄中にあって
もアストリッドの人生を支配しようとしていたのだ。   
結局、最初の里親との生活はうまく行かず、一旦施設に入っ
たアストリッドは、彼女の美貌ゆえに周囲からの攻撃の対象
となる。しかしそれに立ち向かうアストリッド。そして彼女
は母親譲りの才能で絵を描き、アーチストを目指す少年とつ
きあうようになる。                  
2人目の里親は、売れない女優とTVスタッフの夫妻の家。
夫は、ロケなどで留守がちで、アストリッドは女優との2人
だけの生活となる。しかし女優の繊細な心を読んだ母親は、
彼女の不安を駆り立て自殺へと追い込んでしまう。    
3人目の里親は、ロシア移民の女性。彼女はごみ箱を漁って
使えるものをフリーマーケットで売り捌くことを生業として
おり、アストリッドに逞しく生きる術を教える。     
そして女優の死後、母親との面会を拒否していたアストリッ
ドの基へ、再審請求で有利な証言をしてもらいたいという母
親の弁護人が現れる。                 
何とも壮絶な人生だが、物語の時間経過は3年ほどで、アス
トリッドの15歳から18歳までが描かれる。そしてこのアスト
リッドを演じているのが、79年生まれというから、撮影当時
は多分21歳だったアリソン・ローマン。         
この配役は、ローマンの顔立ちがファイファーに似ていると
いうというのもポイントだろうが、彼女が映画の前半では、
本当に15歳位にしか見えないのだからすごい。『13F』にも
出ていたようだが、これからが楽しみだ。        
また、売れない女優役をルネ(レニーではないと来日のとき
言っていた)・ゼルウィガーが演じているが、劇中で彼女の
出演映画として、本当に出演していた『悪魔のいけにえ』の
1カットが登場するのはご愛嬌。ファンには嬉しいプレゼン
トだ。                        
それから演出は、お涙頂戴の母子ものとは大違い。最初から
最後までものすごい緊張感があって、この緊張感を最後まで
保ち続ける監督の技量にも感心した。          
それにしても、アメリカの里親制度は、こんな連中でもOK
という点にも驚いた。                 
                           
『クリスティーナの好きなコト』“The Sweetest Thing” 
キャメロン・ディアス主演のちょっとエッチなラヴ・スラッ
プスティック・コメディ。               
主人公は、Mr.Right(ふさわしい男)より、Mr.Right Now 
(今できる男)が好みという28歳の女性。女ばかり3人で一
緒に暮らしながら、25歳を越えたら「質より量」を信条に男
漁りに精を出している。                
そんな彼女が偶然であった一人の男に真剣になってしまう。
そして彼の家族の結婚式があると聞きつけ、遠路はるばる彼
の住む町にやってくるのだが…。その前後のどたばたが、ハ
リウッドコメディの乗りで描かれる。          
ディアスはコメディ作品の主演も多いので、この種の作品は
お手にものなのだろう。このかなり飛んでる女性を、実に活
き活きと演じている。                 
まあ、内容をとやかく言うようなものではないし、見ている
間だけ楽しんで、あとは思い出し笑いか何かできればいいよ
うな作品だが、これが格好ヒットしているのは、それなりに
丁寧に作られているからなのだろう。          
なお、ディアスはこの後に『チャーリーズ・エンジェル』の
続編が控えているが、ルームメイト役のクリスティーナ・ア
ップルゲイトは、ソニー配給の『マイ・ラブリー・フィアン
セ』でジャン・レノと共演、同じくセルマ・ブレアは、コロ
ムビア=ソニーが製作するコミックスの映画化“Hellboy”
に出演と、女優の顔ぶれを揃えているのもすごいところだ。




2003年01月15日(水) 第31回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 第29回で報告した郵便の遅延は、未だ完全には復旧してい
ない。それに、今期はキネ旬が決算号で休載でもある。とい
うことで今回は、以前に報告し損ねたちょっと古い情報や、
年始に発表された統計などから紹介することにしよう。  
        *         *        
 まずは全米興行成績の統計で、2002年の年間成績で第1位
に輝いたのは、403,706,375ドルの『スパイダーマン』。2
位は310,306,606ドル『クローンの攻撃』。そして3位と4
位には、早くも『二つの塔』(268,606,211)と『秘密の部
屋』(253,040,825)が入っている。           
この後、5位に一般映画の“My Big Fat Greek Wedding”
を挟んで、6位の『サイン』(227,791,166)と7位の『ゴ
ールドメンバー』(213,117,769)までが2億ドルを突破。
さらに8位『MIB2』(190,418,803)、9位『アイス・
エイジ』(176,387,405)、10位『ダイ・アナザー・デイ』
(154,666,799)というベスト10となった。        
 以下、11位に『スクービー・ドゥー』(153,294,164)、
12位『ビューティフル・マインド』(149,528,920)、13位
『リロ・アンド・スティッチ』(145,771,527)、14位『X
XX』(141,204,016)、15位『サンタクローズ2』(138,
394,397)。そして16位に『マイノリティ・リポート』(132,
024,714)、17位『旅の仲間』(130,860,692)、18位『ザ・
リング』(127,310,732)と続く。なお『ビューティフル』
と『旅の仲間』は、いずれも前年の封切りなので、その分を
合わせると、それぞれ170,742,314ドルと313,364,114ドル
となっている。                     
 この後の19位と20位は一般映画だが、それにしてもベスト
20の内の17本がSF/ファンタシー系の作品というのは壮観
としか言いようがない。これらの作品はそれなりに製作費も
掛かってはいるのだろうが、この種の作品がアメリカ映画の
表看板であることは間違いないところだ。        
 そしてこの結果の歴代順位は、第1位の『タイタニック』
から2位『スター・ウォーズ』、3位『E.T.』、4位『フ
ァントム・メナス』までは変わらなかったが、5位に『スパ
イダーマン』が食い込み、6位の『ジュラシック・パーク』
と7位『フォレスト・ガンプ』を挟んで、8位『賢者の石』
と9位に『旅の仲間』が入っている。なお、『賢者の石』は
前年分を合わせて317,575,550ドルだった。        
 来年はこれに、『二つの塔』と『秘密の部屋』がどこまで
食い込んでこれるかだが、特に、『二つの塔』は前作以上に
好調なようなので、この夏の“Terminator 3: Rise of the
Machines”と合わせて期待したいところだ。       
 この他、2002年の結果のめぼしいところでは、29位に『ス
コーピオン・キング』、30位に『スパイキッズ2』、31位に
『ブレイド2』が並んでおり、飛んで43位に『スチュアート
・リトル2』。そして『タイムマシン』が45位、また『バイ
オハザード』は68位だった。              
 因に、『千と千尋の神隠し』の全米興行成績は5,433,352
ドル。これは175位に位置するが、この公開は元々アート系
で行われたもので、興行成績が期待されたものではない。こ
れを見て、したり顔で「日本で大ヒットの作品もアメリカで
は…」などと書いていた日本のマスコミがあったが、元々そ
んなヒットは期待されていなかったものだ。それよりこの作
品が、興行成績でベスト10や20に入っているハリウッドの作
品に伍して、すでにいくつかの賞を受賞し、アカデミー賞に
もノミネートされるかもしれないということにこそ注目する
べきだろう。                     
        *         *        
 というところで続いては、アカデミー賞の予備候補の情報
を紹介しておこう。この予備候補については、前々回長編ア
ニメーション作品賞部門の予備候補を紹介したが、今回は技
術部門の内で、視覚効果賞と音響編集賞の予備候補が発表さ
れている。                      
 まず、視覚効果賞の予備候補は、『秘密の部屋』『二つの
塔』『MIB2』『マイノリティ・リポート』『スパイダー
マン』『クローンの攻撃』『XXX』の7作品。     
 また、音響編集賞の予備候補は、『秘密の部屋』『二つの
塔』『マイノリティ・リポート』『ロード・トゥ・パーディ
ション』『スパイダーマン』『ワンス・アンド・フォーエバ
ー』『XXX』の7作品。これらの中からそれぞれ3作品が
最終候補として選ばれるはずだ。            
 ここで両方の候補を比較してみると、音響編集賞では『M
IB2』『クローンの攻撃』が抜けている訳だが、『スター
・ウォーズ』シリーズは、第1作と『帝国の逆襲』が受賞。
他の2作も最終候補に挙がっており、今回の予備候補からも
落選というのは意外だった。              
 音響関係ではもう一つ音響効果賞というのもあって、そち
らは大丈夫だろうが。毎年の波状攻撃で迫る『ハリー・ポッ
ター』『ロード・オブ・ザ・リング』に比べると、シリーズ
全体の勢いが陰っているような感じもする。       
 そしてその感じで言うと、視覚効果賞の方も、『秘密の部
屋』『二つの塔』『スパイダーマン』の3本が最終候補の呼
び声が高く、前作で最終候補に残りながら『マトリックス』
に受賞を許したのに続く屈辱になる可能性がある。ただし、
『秘密の部屋』が受賞すればILMの成果ということには成
るのだが…。                     
 最終候補の発表は2月11日だ。            
        *         *        
 以下は、製作情報を紹介しよう。           
 まずはちょっと古くなったが、昨年の11月中旬にコロムビ
アから、『XXX』のロブ・コーエン監督で“Warrior”と
いう計画が発表されている。              
 この作品は、コンピュータ制御の進められたジェット戦闘
機が、搭乗パイロットの操縦を無視して暴走を始めるという
もので、『ワイルド・スピード』などで見せたメカフェチの
コーエン監督の面目躍如という感じの物語。なお製作には、
『スパイダーマン』のローラ・ジフキンが当ることになって
いる。                        
 コンピュータ制御のジェット戦闘機というと、日本でも神
林長平原作『戦闘妖精・雪風』の映像化が進んでいるようだ
が、恐らくは徹底的にドライに描くはずのコーエン作品との
比較も面白そうだ。脚本は、W・R・リッチャー。    
 なおコーエンとコロムビアの計画では、先にザ・ロック主
演による“KIng Kamehameha”が発表されていたが、今回の
発表では“Warrior”が次回作になるということだ。そして
この作品の後には、ヴィン・ディーゼル主演による“XXX”
の続編が予定されている。ということで、ザ・ロックの主演
作はちょっと先になりそうだ。             
        *         *        
 続いては競作の話題で、前々回レオナルド・ディカプリオ
の話題の中で触れた「アレキザンダー大王」の生涯を映画化
する計画が相次いで動き始めた。            
 この競作については第11回でも紹介したが、その後に計画
は再編成され、以前の記事でのディノ・デ・ラウレンティス
製作の計画“Alexander the Great”と、ディカプリオ主演
の計画が合体され、結局、テッド・タリーの脚本を、ディカ
プリオの主演で、バズ・ラーマンが監督することになってい
る。なおこの計画は、ドリームワークスとユニヴァーサルの
製作で実現されるもので、モロッコで1月の撮影開始が予定
されているようだ。                  
 つまり、第11回の記事からは、クリストファー・マカリー
の脚本とマーティン・スコセッシ及びリドリー・スコットの
監督がキャンセルされたということだ。ただし、当初の組み
合わせの中で、スコセッシとディカプリオは、これも前々回
に紹介したハワード・ヒューズの伝記“The Aviator”を、
5月から撮影することが発表されている。なお、前々回のと
きの情報とは製作の順番が逆になっているようだ。    
 一方、第11回の記事では昨年10月に開始されるはずだった
オリヴァ・ストーン監督の計画“Alexander”の方は、よう
やく03年6月に撮影開始されることが発表された。同時に、
主演をコリン・ファレルが務めることも併せて発表されてい
る。なお、前の発表ではヒース・レジャーの主演が予定され
ていたが、その後に変更になったようだ。        
 因に、この計画はインターメディアの製作で進められてい
るものだが、今回アメリカ配給をワーナーが担当することが
発表されている。なお、インターメディアとワーナーの関係
では、以前に紹介したようにインターメディアが製作したこ
の夏の“Terminator 3: Rise of the Machines”のアメリ
カ配給もワーナーが担当することになっており、また上に書
いた“The Aviator”はインターメディアの関連会社が製作、
ワーナーが配給するということだ。           
 またワーナーでは、この“Alexander”の位置づけを、ウ
ォルフガング・ペーターゼン監督、ブラッド・ピット主演の
“Troy”、エド・ズウィック監督、トム・クルーズ主演の 
“The Last Samurai”に続く、歴史大作路線の最終ポイント
としているそうだ。                  
        *         *        
 お次は続編の話題で、97年に公開されてジェニファー・ロ
ペスやアイス・キューブのブレイクの切っ掛けになったとも
言われる巨大生物パニック『アナコンダ』の続編が計画され
ている。                       
 今回の計画は、前作も手掛けた製作者のヴァーナ・ハラー
が進めているもので、コロムビア傘下のジャンル作品レーベ
ル=スクリーン・ジェムズの配給で公開される予定。   
 監督は、テレビの『X−ファイル』の他、『フリー・ウィ
リー2』や『ハロウィン4』、それに97年公開の『ホワイト
ハウスの陰謀』などを手掛けているドワイト・リトル。脚本
は、『ロボコップ』のエド・ニューマイヤーと、マイク・マ
イナーの素案からジョン・クラフリンとダン・ゼルマンがリ
ライトしている。                   
 前作は、ロペス、キューブをブレイクさせたが、他にも、
ジョン・ヴォイドやエリック・ストルツ、オーウェン・ウィ
ルスンらも共演しており、かなり力の入った作品で、興行成
績も1億3600万ドルを稼ぎ出している。今回はこれらの顔ぶ
れの出演は期待されていないようだが、また誰かがブレイク
するような作品を期待したいものだ。          
 なお題名は、“Anaconda II”あるいは“Anacondas”と
いう説もあるようだ。                  
        *         *        
 続けてレーベル絡みの話題で、『ゴーストシップ』が公開
中のジョール・シルヴァ、ロバート・ゼメキスのホラー作品
レーベル=ダーク・キャッスルの次回作に、ハル・ベリーと
ペネロペ・クルスの共演が発表されている。       
 題名は“Gothika”。物語は、べリー扮する女性精神科医
が、ある日目覚めると自分が保護施設の収容者になっている
ところから始まる。しかもその後に、自分が殺人事件の容疑
者になっていることが判明するというもの。ここから自分の
嫌疑を晴らすという展開になりそうだが、これに超自然的な
存在が絡んでくるようだ。一方、クルスが演じるのは、施設
の中のカリスマ的患者という役柄だそうだ。       
 セバスチャン・グティエレスという脚本家の作品で、監督
は未定だが、3月に撮影開始、秋の公開を目指すとされてい
る。因に、トップ女優2人の共演ということで、製作費は、
99年の『TATARI』から『13ゴースト』『ゴーストシッ
プ』と続いたダーク・キャッスルでの歴代最高額が予定され
ているということだ。                 
 なお、ダーク・キャッスルの次回作には、先にロバート・
ゼメキス監督による“Macabre”が発表されていたが、その
後この作品が動いた形跡はなく、今回の作品がこれに替わっ
た可能性もある。となると、監督はゼメキスの線もありそう
だが、ゼメキスは92年の『永遠に美しく…』でメリル・スト
リープとゴーディ・ホーンを向こうに回した経験もあり、実
現すると面白くなりそうだ。              
        *         *        
 CGIアニメーションの話題で、ソニー・ピクチャーズ・
ディジタル傘下に設立されたアニメーション部門で、スティ
ーヴ・ムーアという漫画家の“Open Season”という作品の
CGIアニメーション化が発表されている。       
 この作品は、猟師が獲物になってしまうような、ちょっと
視点を変えた世界を描いた作品ということで、普通のアニメ
ーションとはちょっと趣の違った作品になりそうだ。なお、
原作者のムーアは、“In the Bleachers”という作品が現
在全米200紙に掲載されているということだが、今回の計画
には自らタッチしているようだ。             
 また今回の計画には、ジョン・カールスという製作者が参
加しているが、彼は絵本作家のモーリス・センダクと共にセ
ンダク作品のテレビ化を手掛けた他、トム・ハンクスが進め
ているセンダク作品“Where the Wild Things Are”のアニ
メーション化にも関っているそうだ。          
 なお今回の報道では、ソニー・アニメーションの計画とし
て、先に『ワイルド・スピード』のグレイ・スコットの脚本
による“Shangri-La”が発表されているとあったが、他の題
名は挙がっていなかった。一方、手塚治虫原作“Astroboy”
のテレビシリーズは4月に放送開始だそうだが、劇場版はど
うなっているのだろう。                
        *         *        
 最初に紹介した昨年の全米興行成績で、第68位にランクイ
ンした『バイオハザード』のオリジナルのゲームの発売元カ
プコンが手掛けるもう一つの人気ゲーム“Onimusha”(鬼武
者)を映画化する計画が発表された。          
 といってもこの話題はハリウッド発ではなく、日本の配給
会社ギャガが発表したものだが、製作者には『バイオハザー
ド』を手掛けたサミュエル・サディダが名を連ねているもの
だ。ただし、アメリカではスクリーン・ジェムズが配給した
『バイオハザード』の日本配給はアミューズが行っており、
今回のギャガの発表はその巻き返しを計ったものとも取られ
ているようだ。                    
 因に、ゲーム版の“Onimusha”は、全世界で460万本を売
り上げているそうだが、『バイオハザード』はゲーム自体の
背景が無国籍という感じだったが、“Onimusha”の舞台は明
らかに日本ということで、さてこの映画化はどのように進め
られるのだろうか。                  
 なお、ゲーム版のオープニングアニメーションは、『エコ
エコアザラク』などの佐藤嗣麻子監督が手掛けて00年のSI
GGRAPHで最優秀賞にも輝いているということで、その
辺も考えてもらえると嬉しいのだが。          
        *         *        
 後半は、短いニュースをまとめておこう。       
 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』が公開されたば
かりのスティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクスが再度
組むという噂が広がっている。題名は“Terminal”。ドリー
ムワークスの製作で03年後半に撮影されるということだが、
ドリームワークスでは特に否定はしていないそうだ。   
 アメリカでは“American Pie”が大人気のショーン・ウィ
リアム・スコットの主演で“Tiny Boyfriend”という作品が
パラマウントで計画されている。この作品は、ジェニファー
・ヒースとマイクル・J・ウォルフという脚本家によるもの
で、自分の失敗で身体を数インチに縮めてしまった若者の物
語。当然スコットがその若者の役を演じる。なお、スコット
は01年の『エボリューション』に出演していた他、03年には
“Helldorado”“Bulletproof Monk”“Old School”と、
人気シリーズの最新作“American Wedding”で再びスティ
ーヴ・スティファー役を演じることになっている。      
 『裸足の1500マイル』のフィリップ・ノイスが次回作もオ
ーストラリアで撮る計画が発表されている。題名は“Dirt
Music”というもので、オーストラリアの作家ティム・ウィ
ントンの原作を映画化するもの。内容は、西オーストラリア
の漁村を舞台に不幸な結婚をした女性が情熱的な恋をすると
いうことで、原作は文学賞の受賞作でもあるそうだ。    
 翻訳が出始めた“Abarat”の原作者クライヴ・バーカー関
連の情報で、彼とトッド・マクファーレインが開発したアク
ション・フィギアの“Tortured Souls”を基にした映画の
計画がユニヴァーサルから発表されている。このフィギアは
6体の陰惨なキャラクターからなるもので、これらのキャラ
クターにはそれぞれバーカーが執筆したキャラクターの出自
を描いた小説が添えられており、今回はその小説を映画化す
るというものだ。なお映画化の脚本には、コミックスの映画
化のスペシャリストのハンス・ロディオノフの起用が発表さ
れている。                       
        *         *        
 最後に飛び込んできたホットニュースで、ジョージ・クル
ーニー製作、主演、スティーヴン・ソダーバーグ監督による
『オーシャンズ11』の続編で、“Ocean's Twelve”の計画
が発表された。この計画、ちょっと経緯が面白いので次回に
詳しく紹介することにしよう。              



2003年01月02日(木) アカルイミライ、ボウリング・フォー・コロンバイン、曖昧な未来 黒沢清

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/)   ※
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『アカルイミライ』                  
ハリウッドリメイクが契約されている『回路』の黒沢清監督
の、同作が2000年に発表されて以来の最新作。      
黒沢清監督の作品では、『回路』はあまり感心しなかったの
だが、1997年の『CURE−キュア−』(別ページに書いた
ようにこちらもハリウッドリメイクが契約されている)は、
『リング』よりも恐かった記憶があり、気に入っている作品
だ。                         
初期の作品では『スィートホーム』は見た記憶があり、その
後もどちらかというとホラー主体の監督と思っていた。しか
し1998年の『ニンゲン合格』はホラーではなく、これが僕に
言わせれば何とも消化不良の作品で、ちょっとがっかりさせ
られたものだ。                    
本作もホラーではないということで、実はちょっと及び腰で
見に行ったのだが、何と言うか妙なところで共感しまった。
1955年生まれの監督は、僕より6歳若い訳で、今までは若手
という感じがあったが、本作では見事に中年の感覚に共感し
てしまったのだ。                   
物語の主人公は25歳。周囲とのコミュニケーションが上手く
取れず、いつも浮いてしまっている最近の若者にありがちの
男。彼には、同じ職場で共にアルバイトとして働くただ一人
の理解者がいたが、その男は彼にペットのクラゲを預けて退
職、失踪してしまう。                 
そんな出来事にいらだった主人公は、会社の社長の家に鉄パ
イプを持って押しかけるが、社長はすでに殺されていた。 
犯人は彼の理解者だった男、そして男は、面会に来る主人公
にクラゲを淡水に馴れさせる飼い方を指示し、その目処が立
ったところで自殺してしまう。その葬儀の日、主人公は男の
父親と出会い、廃品を回収してリサイクルするその父親と共
に働くようになる。                  
一方、淡水化したクラゲは川に逃げ出し、そこで大繁殖を遂
げる。そして猛毒のクラゲは被害を出し、駆除が始まるのだ
が…。                        
それで何に共感したかというと、主人公の若者に向ける目か
な。実は持て余し気味だし、若者の生態自体には不愉快なと
ころも多いのだが、それでも自分自身もそうだったのじゃな
いの?と思い出させてくれるような、そんな暖かい監督の目
に共感してしまった。                 
                           
『ボウリング・フォー・コロンバイン』         
               “Bowling for Columbine”
GMの工場閉鎖問題を扱った89年の『ロジャー&ミー』、ナ
イキによる搾取問題を扱った97年の『ザ・ビッグ・ワン』で
勇名を馳せたドキュメンタリー作家マイクル・ムーアが、 
1999年4月20日にコロラド州コロンバイン高校で発生した銃
乱射事件をきっかけに銃社会アメリカを描いたドキュメンタ
リー作品。                      
カンヌ映画祭ではこの作品のために特別賞が創設されて受賞
している。                      
何年度の統計か不明だが、アメリカでは年間11万人を超える
人が銃によって殺されているという。これは先進国の中では
2位ドイツの381人、3位フランスの255人に比べても、文字
通り桁違い、ダントツの第1位だ。           
しかしなぜアメリカだけがこんなに多いのか、映画の前半は
この問題をいろいろな方向から検証する。そして中間に乱射
事件の監視カメラ映像を挟んで、後半は、問題の中心を全米
ライフル協会に絞り、会長チャールトン・ヘストンヘの突撃
インタビューで締め括られる。             
その一方で、事件に対するメディアの取り上げ方の問題にも
迫り、アメリカの病巣を手際よく描き出す。中では、Kマー
トが狩猟用以外の銃器の販売中止を決定するシーンなどもあ
って、メディアの影響力も描かれる。          
さすがに受賞作だけのことはあって、構成が上手いし、2時
間の上映時間だが最後まで飽きさせない。銃社会の問題は、
アメリカ独自の問題かもしれないが、メディアの描き方の問
題は、日本でも同じような状況になってきている感じで、暗
澹とした。                      
                           
『曖昧な未来・黒沢清』                
先に紹介した『アカルイミライ』の撮影を記録したドキュメ
ンタリー。                      
監督や出演者、プロデューサー、美術、衣装スタッフなどへ
のインタビューを通して、黒沢清監督の映画への姿勢が描き
出される。                      
本編『アカルイミライ』の紹介で、僕は黒沢監督をホラージ
ャンルの人と書いたが、このドキュメンタリーの中では本人
がジャンルへの拘わりみたいなものも語っていて、ちょっと
納得した。                      
ただし監督自身が、本編作品ではもっと感情を排した映画を
目指したが、そうならなかったと語る辺りは、感情の表現が
上手いと思った僕としてはちょっと意外だった。     
その他にも、俳優たちの役作りや、それを衣装が助けるとい
った、この本編作品の独自性みたいなものもよく描かれてい
た。                         
本編作品を見るには格好の手引きという感じのドキュメンタ
リーで、面白かった。                 



2003年01月01日(水) 第30回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 新年、明けましておめでとうございます。       
 何とか2回目の正月を迎えることができました。というか
自分の気力が持つかどうかだけの問題なのですが、何とか月
2回のペースを保てるようになりました。今後ともよろしく
お願いします。                    
        *         *        
 ということで新年最初の情報は、待望シリーズの復活で、
ジョージ・ミラー監督、メル・ギブスン主演による『マッド
・マックス』の第4作が製作されるという話題から。   
 このシリーズは、1979年に第1作の“Mad Max”(マッド
・マックス)がオーストラリアで公開され、この作品は80年
のアヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭で審査員特
別賞を受賞。アメリカでは同年にアメリカン・インターナシ
ョナル(AIP)の配給で公開されている。ただしこの第1
作のアメリカ公開は、配給体制の弱さもあって、興行成績は
あまり上がらなかったようだ。             
 しかしこのキャラクターに注目したのがワーナー・ブラザ
ース。同社はシリーズ化の権利を獲得し、81年に製作された
第2作“Mad Max 2: The Road Warrior”(マッド・マック
ス2)のアメリカ配給を手掛ける。さらに83年には、ミラー
監督をアメリカに呼び寄せて“Twilight Zone- The Movie”
の1エピソードを担当させ、次いで第3作“Mad Max Beyond
Thunderdome”(マッド・マックス サンダードーム)の製
作を発表した。                    
 ところが、第3作の準備を開始した直後の83年6月に、ミ
ラー監督の盟友で製作者のバイロン・ケネディがヘリコプタ
ーの事故で死亡、その後に第3作は製作されたものの、シリ
ーズの継続は難しいと言われていた。しかし数年前に、ワー
ナーとミラー監督との間で第4作が計画進行中と発表され、
俄然期待を集めたこともあったが、このときは企画のみで終
ってしまった。                    
 その計画がようやく実現されることになった訳だが、監督
はもちろんミラー、主演はギブスンで、製作はフォックスが
行うことになっている。なお、ミラーは97年にワーナーから
シリーズの権利を買い戻しており、その後、独自に準備を進
めてきたと言うことで、この程、ギブスン主宰のイコン・プ
ロが現在の本拠を置いているフォックスとの間で契約が成立
したものだ。                     
 因に、ミラーとフォックスの関係では、過去に95年と98年
に製作された『ベイブ』の実績がある。このシリーズでは、
第1作の“Babe”はミラーは製作のみ担当しアカデミー賞の
作品賞候補になったが、この受賞式で『ブレイブハート』で
監督賞を受けたギブスンが、ミラーにオスカーを掲げてみせ
たのが印象的だった。                 
 なお、第4作は“Fury Road”の題名で製作され、準備状
況は、すでにミラーの手になる脚本は完成しており、撮影は
2003年5月にオーストラリアで開始の予定。製作費には1億
400万USドルが計上されているということだ。       
        *         *        
 続いては、またまたコミックスの映画化で、DCコミック
ス発行の“Shazam !”を映画化する計画がニューラインから
発表されている。                   
 Shazamというのは、古代エジプトから3000年を生きてきた
魔術師の名前。ソロモンの知恵とヘラクレスの強さ、アトラ
スのスタミナとゼウスの力、アキレスの勇気とマーキュリー
のスピード(名前は彼らの頭文字を集めたもの)を合わせた
神秘のパワー駆使して世界の悪と戦ってきたが、その魔術師
がついに引退を決意する。               
 そして選ばれたのがビリー・バットスン。彼は幼くして両
親を亡くし、今で言うストリートチルドレンのようにして、
新聞の売り子をしながら地下鉄の駅で暮らしていた。ところ
がある日、不思議な人物の手引きで神秘の洞窟に導かれ、そ
こで魔術師から使命を継ぐことを依頼される。魔術師は彼の
正義感を見抜いていたのだ。              
 こうしてビリーは、新聞の売り子から後にラジオ、テレビ
のニュースキャスターを本職とし、緊急の時にはスーパーヒ
ーロー、キャプテン・マーヴェルに変身して活躍するという
ものだ。前半はともかく、後半はどこかで聞いたような設定
だが、実はこのシリーズは、初めは1940年に別の出版社で誕
生したものだったが、53年にDCがスーパーマンの模倣だと
して訴訟を起こし、結局DCはこの裁判には負けたのだが、
72年に権利を買い取って現在に至っている。       
 また、このシリーズは41年に連続活劇になっている他、テ
レビの子供向け実写番組やテレビアニメーションでも放送さ
れた。なお、アニメーションでは、ビリーと幽霊になった魔
術師の関係が、『スター・ウォーズ』のルークとオビ=ワン
の関係を思わせるそうだ。因に、主人公のキャラクターは、
60年製作のオリジナル版『フラバァ』などに主演した俳優フ
レッド・マクマレイをモティーフにしたとも言われている。
 そして今回の計画は、ニューライン及びDCの親会社でも
あるワーナーで、“Batman”などの総指揮も担当しているマ
イクル・ウスランという製作者が発表したもので、ニューラ
インの製作で、実写またはアニメーションによる映画化が進
められるということだ。                
        *         *        
 次は続編で、ミラマックス傘下のディメンションが製作す
るホラーパロディシリーズ“Scary Movie”の第3作の計画
が発表された。                    
 このシリーズでは、2000年の第1作“Scary Movie”(最
終絶叫計画)が全米で1億5000万ドルの大ヒットを記録した
のに続いて、01年に製作された“Scary Movie 2”は7130万
ドルを記録。そして“Lord of the Brooms”と題された第3
作の準備も進んでいたというのだが…。         
 02年11月半ばに突然、前2作を手掛けたキーナン・アイヴ
ォリーと、ショウン、マーロンのウェイアンス一家が他社へ
の移籍を表明。ドリームワークス、フォックス、ユニヴァー
サルなどとの争奪戦の結果、リヴォルーションへ移籍が発表
された。まあ、その理由はいろいろありそうだが、一つには
ウェイアンス一家がシリーズ以外の作品の製作を希望したの
に対し、ディメンション側がシリーズ第3作の03年秋公開を
主張したことが原因のようだ。             
 で、第3作はどうなるかというと、実は今回の計画は、ベ
ン・アフレック、マット・デイモン共演の『ドグマ』などの
脚本家、監督で、親会社のミラマックスとのつながりも深い
ケヴィン・スミスが発表したもので、これに1988年『裸の銃
を持つ男』などのコメディ監督デイヴィッド・ズッカーが加
わって、シリーズを再出発させるということだ。     
 なお脚本は、スミスと、パット・プロフト、ブライアン・
リンチ、クレイグ・マーツィンというチームが契約してすで
に執筆を進めており、03年2月の撮影開始で、秋に公開の予
定ということだ。ウェイアンス一家のパロディは、あまり上
品とは言えないネタが多くて、かなり参ることがあったが、
新しいチームではどうなることか。           
 一方、リヴォルーションに移籍したウェイアンス一家は、
2本の計画を発表している。その1本目は、『インディペン
デンス・デイ』や『サイン』などを題材にしたSF映画のパ
ロディ作品。2本目は、麻薬組織に潜入捜査に入った2人の
FBI捜査官を主人公にした作品だということだ。この2作
ともキーナンの監督で、ショウンとマーロンが主演すること
になっている。                    
        *         *        
 またもや日本製ホラーのハリウッドリメイクで、今度は別
ページで新作『アカルイミライ』を紹介している黒沢清監督
の97年作品『CURE−キュア−』のリメイクの計画が、ユ
ナイトから発表された。                
 オリジナルは同年の東京国際映画祭のコンペティション部
門で上映されて、役所広司が男優賞を受賞しているが、異な
る犯人による同じ手口の連続殺人という発端で、僕は『リン
グ』より恐かったという印象を持っている。リメイク版『ザ
・リング』は、結局オリジナルと同じストーリーになってし
まったが、今回の作品はどうなるか。黒沢監督の『回路』の
リメイクの方はちょっと頓挫しているようなので、それに代
って期待したい。                   
 なお、『ザ・リング』の続編も、前作と同じゴア・ヴァビ
ンスキー監督、アーレン・クルーガー脚本で計画が発表され
たが、こちらは日本の続編とは別の作品を作れるか。僕は個
人的には、日本では映画化されなかった原作の第3作『ルー
プ』の映画化も期待したいのだが。           
 ところで、今回『ザ・リング』の続編の話題に関連して、
テレビの情報番組などで、「日本映画のハリウッドリメイク
初の大ヒット」というコメントが放送されていたが、それは
間違いだと言うことを、ここではっきりさせておきたい。そ
れは、言うまでもなく98年の『Godzilla』があるか
らで、この作品の全米興行収入は1億3600万ドル、この年の
興行成績第10位に食い込んでいるのだ。         
 では、『ザ・リング』はどうかというと、12月最終週の時
点で全米興行収入は1億2600万ドルあまり。ここでの1000万
ドルの開きはもはや追いつく可能性はほとんどない。つまり
『ザ・リング』は『Godzilla』に勝ってはいないと
いうことだ。確かに『Godzilla』は、日本では一部
人たちの思い込みによる批判で評判が悪かったが、その実体
は興行的には決して失敗作ではなかった。        
 もちろん、ここで僕は、『ザ・リング』がヒットしなかっ
たと言っているのではない。全米で1億ドルを超えるという
のは大ヒットに間違いはない。しかし『Godzilla』
は、アメリカでは評価に値する充分な大ヒットを記録したと
いうことをはっきりさせておきたいのだ。        
 日本のマスコミというのは、どうも思い込みの発言が多す
ぎる。僕も思い込みや勘違いで間違うことはあるが、間接的
にせよ他人や他の作品の批判につながるような発言は慎重に
してもらいたい。仮にも普段から映画の情報を伝えている人
物が、よもや『Godzilla』の存在を忘れているはず
はないと思うが、覚えているのであればちょっと調べれば上
の事実は判明するはずで、そうでなければ『Godzill
a』に対して悪意のある発言としか取れないところだ。  
        *         *        
 ちょっと口直しで、アレックス・プロイアス監督、ウィル
・スミス主演によるアイザック・アジモフ原作“I,Robot”
(わたしはロボット)の映画化の計画が発表された。   
 この原作は、アジモフが1940年代に発表した9つの短編を
集めたもの。この中で、有名なロボット3原則が生み出され
たが、この流れがずっと下って99年にロビン・ウィリアムス
主演で映画化された“Bicentennial Man”(アンドリュー
NDR114)につながって行く、ロボットものの原点と言
われる作品集だ。                    
 そしてこの映画化権は数年前にフォックスが契約して、同
社では当初、ジェフ・ヴィンター脚本による“Hardwiered”
という作品の計画を進めていた。この作品は、原作短編集の
いろいろな要素を繋ぎ合わせたものだったようだ。しかし監
督にプロイアスの参加が決定したことで、もっと強力な脚本
が必要とされ、まず『インソムニア』のヒラリー・セイツが
参加、さらに『ビューティフル・マインド』のアキヴァ・ゴ
ールズマンが引き継いで脚本を完成させたということだ。 
 なお物語は、すでにロボットやオートメイション無しには
成立しなくなった人類社会の中で、ロボットたちが如何にし
てその権利と地位を確立して行くかを描くものになるという
ことで、この手の物語は、奴隷解放の歴史を持つアメリカに
とっては、ある意味作りやすい作品と言えそうだ。    
 撮影は03年4月開始ということで、スケジュール的には04
年の夏の公開ということになりそうだ。フォックスでは最初
に書いた“Mad Max”の第4作と並べて公開ということにな
るのだろうか。                    
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 1958年にスタンリー・クレイマー製作、監督で発表された
“The Defiant Ones”(手錠のままの脱獄)のリメイクが計
画されている。                    
 オリジナルはトニー・カーティスとシドニー・ポアティエ
の共演で、白と黒の肌の色の違う2人が手錠で繋がれたまま
脱獄し、野を越え山を越えて逃亡する内に、最初は反発して
いた2人が互いを理解し、友情を持ち始めるという、クレイ
マーらしい社会派のドラマだ。なお、オリジナルはアカデミ
ー賞の脚本賞を受賞しているが、その受賞者の一人ネイザン
・E・ダグラスはブラックリストで追放されたネドリック・
ヤングの仮名だった。                 
 そして今回リメイクを計画しているのは、『ラッシュアワ
ー』シリーズを手掛けるアーサー・サーキシアン。かなり趣
の違う作品だが、どのような手腕を見せてくれるのか。なお
サーキシアンは先にMGMと優先契約を結び、その第1作と
してオリジナルがユナイトで製作された本作が上がっている
ようだ。                       
 他にも、サーキシアンの製作で、アンソニー・マン監督に
よる61年製作の歴史大作“El Cid”(エル・シド)のリメイ
クも検討され、こちらは『007/ゴールデンアイ』のマー
ティン・キャンベルの監督が予定されているそうだ。   
        *         *        
 またまたユース・ファンタシーシリーズの映画化で、パラ
マウントとニケロディオンの共同製作による新シリーズの計
画が発表されている。                 
 計画されているのは、ファンタシー作家のホーリー・ブラ
ックと作家で挿絵画家のトニー・ディターリツィーが執筆し
ている全6巻のグラフィックノベル“Arthur Spiderwick's
Guide to the Fantastic World Around You”の映画化。
この原作は、パラマウント、ニケロディオンと同じくヴァイ
アコム傘下の出版社サイモン&シャスターから2003年5月に
最初の2巻が発行されるということだ。          
 物語は、双子の少年と彼らの姉でティーンエイジャーの少
女が、彼らの叔父さんの古びた屋敷で、妖精やゴブリンなど
の棲む異世界を発見するというもの。ちょっと『ナルニア』
などにも似た感じだが、お子様向けには面白いシリーズにな
りそうだ。                      
 なお、ニケロディオンでは他に、スコット・ルーディンと
バリー・ソネンフェルドの製作で、ジム・キャリーが主演す
る“Lemony Snicket: A Series of Unfortunate Events”
という作品の計画も進めているそうだ。          
        *         *        
 もう1本SFもので、ウィズリー・スナイプスの主演によ
る“John Doe”という作品が計画されている。      
 この作品は、フォックス製作『X−メン』の続編“X-Men
2”などを手掛ける脚本家のザック・ペンが、自らの脚本で
監督デビューを予定しているもので、記憶喪失で発見された
男が、記憶を取り戻して過程で徐々に自分がスーパーヒュー
マンであることに気づいて行くという物語。一方、彼の秘密
を知る暗殺者が存在し、しかも主人公の記憶の中にはいつま
でも謎の部分が残されているというものだそうだ。    
 製作はリヴォルーション、撮影は03年中に開始され、04年
の公開を目指すことになっている。ただし“John Doe”とい
う題名は、元々は身元不明の男性死体を示す警察用語だが、
フォックスが同じ題名のテレビシリーズを製作しており、そ
の関係で題名は変更されることになるということだ。   


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井口健二