井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2002年12月16日(月) ゴーストシップ、アウトライブ、カルマ、オズワルド、テープ、ラスムス、おばあちゃんの家、六月の蛇

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/)   ※
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『ゴーストシップ』“Ghost Ship”           
『TATARI』『13ゴースト』に続くダークキャッスル製
作のホラー映画第3弾。                
ダークキャッスルは、『ローズマリーの赤ちゃん』も製作し
た監督/製作者ウィリアム・キャッスルの思想を受け継ぐこ
とを主旨として、ジョール・シルヴァとロバート・ゼメキス
が設立したプロダクションで、ホラー専門に毎年1作ずつ製
作している。                     
そして前の2作はいずれも60年代に製作されたキャッスル作
品のリメイクだったが、本作でついにオリジナル作品に進出
となったものだ。                   
物語の舞台は、1962年に行方不明となったイタリア船籍の豪
華客船。その船が40年振りにべーリング海で発見される。 
物語の主人公は、1隻のタグボートで大型船も回収するサル
ヴェージチーム。公海上で発見された無人船の所有権は発見
者のものになるという国際条約に基づいて、彼らは危ない回
収作業に命を張っている。               
そんな彼らにうまい話が持ち込まれる。べーリング海の公海
上で船影を見たという話を、気象観測用飛行機のパイロット
が持ちかけたのだ。彼らは、回収で得た儲けは山分けという
ことで、2つ返事で船の目撃現場へと向かう。      
そして発見した船にタグボートを横付けにした彼らは、客船
に乗り込み、そこで大量の金塊を発見するのだが…。   
一方、チームの紅一点エップス(『ER』ハサウェイ看護婦
役のジュリアナ・マグリースが主演)は、船内で不思議な少
女の姿を目撃する。そして少女は、40年前から続く恐ろしい
真実を語り始める。                  
リメイクされた前の2作は、VFXを凝らしたり、いろいろ
工夫はしていたが、話自体の古さは否めなかった。それでオ
リジナル作品となったのだろうが、わざわざテーマを60年代
に行方不明になった幽霊船にする辺りは、よく判っていると
いう感じだ。                     
物語自体は、典型的な幽霊船もので、最近だとここに宇宙か
らの怪物が出て来たりするのだが、本作はそういうことはな
く正統派で進む。しかし大掛かりなスプラッターシーンを描
く辺りは、60年代の映画とはちょっと違った雰囲気にもなっ
ている。                       
とは言うものの、正直に言ってあまり恐くはない。実はキャ
ッスルの作品も、恐さよりは仕掛けで楽しませていたという
ことで、この作品も恐さよりは見事なVFXを見せようとい
う意識が高いと言えそうだ。特にスプラッターシーンの出来
は見事だ。                      
                           
『アウトライブ』“飛天舞”              
韓国の女性漫画家キム・ヘリンの同名の原作コミックスの映
画化。                        
元朝末期の中国を舞台に、「飛天神記」を名付けられた武術
の秘伝書を巡って、漢民族とモンゴル族、それに高麗族が壮
大な争奪戦を繰り広げる。               
主人公は、高麗族の男ジナとモンゴル族の女ソルリ。この2
人の波乱万丈の恋物語がメインテーマだが、彼らに絡む主な
登場人物だけでも10人以上という物語で、プレスシートに掲
載された相関図もかなり複雑。ここで簡単に纏めて紹介でき
るようなものではない。                
原作は3年に渡って連載されたということで、かなり壮大な
物語なのだろう。これを1時間57分に纏めたのだから、纏め
る方も大変だったろうが、見る方も予備知識を入れておかな
いと、物語が理解できなくなってしまいそうだ。     
実際プレスに掛かれたストーリーも、それだけだと分かり難
かったが、映画を見ているうちになるほどと納得できるとい
う感じで、原作(翻訳は出ているようだ)を読んでいる人は
別として、読んでいない人は事前にストーリーを読んでおく
ことをお勧めする。                  
韓国のこの種の作品(武侠物と呼ばれるようだ)では、先に
『燃ゆる月』が公開されているが、この作品も負けず劣らず
の壮大さで面白かった。                
特に、今回はオープンセットの撮影を上海で行ったり、アク
ションシーンの演出には香港のチームを招き、さらにVFX
はILMが担当するという力の入れようで、製作者たちの意
気込みが感じられるし、またそれに相当する物語でもある。
                           
『カルマ』“異度空間”                
『男たちの挽歌』などのレスリー・チャン主演の香港製作の
幽霊映画。                      
一方の主人公は作家志望の女性。彼女が訪れたアパートは、
設備は古いが、広さは充分、その割には安い家賃に彼女は引
っ越しを決めるのだったが…。引っ越したその日から怪しい
物音や、居るはずのない人影が見え始める。       
彼女は医者に相談するが、彼女自身に自殺未遂などの過去が
あり、周りには中々信じてもらえない。そんな中で、実は以
前にその部屋に住んでいた大家の妻と息子が、事故で死んで
いたことが判明する。                 
もう一人の主人公は新進の精神科医。大学の講師も努める彼
は、幽霊など頭から否定する考えで、たまたま同僚の妻の従
兄弟だった女性を診察することになる。そして治療が進み、
彼女の前から幽霊が消え始めた頃、今度は彼の行動が異様に
なり始める。                     
『シックス・センス』以降の作品という感じだが、本当に幽
霊だったのか、それとも幻覚だったのかは、結局明らかにさ
れない。それでも構成にちょっと捻りがあって、そこそこ面
白かった。                      
チャンは、日本でもかなりの人気スターだと思うが、後半ぼ
ろぼろになって行く辺りは、結構良くやっているという感じ
もした。                       
                           
『Hello! オズワルド』“Oswald”            
アメリカCBSネットワーク他で2001年8月から放送され、
大人にも異例の人気を博したという子供向けアニメーション
シリーズ。1本12分で全52話あるそうだが、その内の4本を
日本で劇場公開するというもの。            
主人公は青くて丸いタコのオズワルド。それにペットのホッ
トドックのウィニー。さらにペンギンのヘンリーや、花のデ
イジーなどが、ビッグシティという町を舞台にいろいろな物
語を展開する。                    
といっても、本当にお子様向だから、話は単純、繰り返しも
多い。ということで、これだけ聞くと退屈そうな感じだが、
これが実にうまい。単純な繰り返しの中に見事なリズムがあ
って、大人が見ていても感心するくらいに面白いのだ。  
ゆったりとした時間の中で、童心に帰って見るには本当に良
くできた作品だと思う。正直言って、日本では子供より大人
に受けるのではないかという感じだ。          
                           
『テープ』“Tape”                  
舞台は、モーテルの1室。登場人物は、ヤクの売人、映画監
督、女性検事補の3人だけという心理ドラマ。      
ある町で映画祭が開かれ、そこで映画監督ジョンの作品が上
映されることになり、高校時代の仲間だったヤクの売人ヴィ
ンセントも祝いに駆けつけている。しかしその町には、高校
時代のヴィンセントのガールフレンドだった女性検事補エイ
ミーが暮らしていた。                 
ヴィンセントの部屋にジョンが現れ、最初は他愛もない話に
興じているが、やがてヴィンセントはジョンとエイミーとの
関係と追求し始める。高校時代の終りの頃にジョンはエイミ
ーと寝て、その後エイミーとヴィンセントの仲が切れてしま
ったのだ。                      
執拗な追求に、ついにジョンはエイミーを暴力的に襲ったこ
とを告白する。それを聞くやヴィンセントは小型テープレコ
ーダーを取り出し、今までのジョンの言葉を録音していたこ
とを告げる。そしてすぐにやってくるエイミーに謝罪するこ
とを要求する。                    
そこへエイミーが登場し、3人の葛藤が始まる。     
元は舞台劇だそうだが、何しろ会話が面白い。ヴィンセント
の巧みな誘導にジョンが思わず真実を語ってしまう辺りは、
かなりの長台詞の応酬で見応えがあった。        
演出は、舞台の雰囲気を出そうというつもりか、ちょっとカ
メラを振り回し過ぎという感じの部分もあったが、全体的に
は問題ないし、舞台を尊重しようという感じが見ていて好ま
しい。                        
ただし、撮影にはPAL方式のデジカメが使われていて、は
っきり言って良い画質ではない。まあ、NTSCではなく、
PAL方式を使っているだけましというところだろうが…。
                           
『ラスムスくんの幸せをさがして』“Rasmus På Luffen” 
今年1月に亡くなったスウェーデンの女性児童文学者アスト
リッド・リンドグレーンの原作の映画化。        
孤児院で暮らすラスムスはお金持ちの里子になることを期待
しているが、、里子になって孤児院を出て行くのは巻毛の女
の子ばかりだということに気付き、厳しい先生にも嫌気がさ
して孤児院を出て行くことを決心する。         
そしてある夜、孤児院を抜け出したラスムスは、一夜を明か
した干草小屋で、神様に選ばれた風来坊と自称するオスカル
と巡り会う。                     
オスカルはアコーディオンを手に、道端や軒先で唄ってはお
金や食べ物を恵んでもらうという風来坊。その暮らしに興味
を引かれたラスムスは、子供にはきつい暮らしだと言われな
がらも、オスカルと行動を共にすることになる。     
ところが町で強盗事件が発生し、風来坊たちが取り調べられ
る。そして最初は釈放されたオスカルだったが、次に老婦人
が襲われ、オスカルとラスムスが近くにいたのを目撃された
ことから、嫌疑はオスカルに掛かる。          
そしてその場をなんとか逃げ出したオスカルとラスムスは、
隠れた廃屋で強盗の一味と遭遇してしまう。       
製作は1981年だから、20年以上も前の作品ということになる
のだが、古臭さを余り感じないのは、まあ、原作がリンドグ
レーンだからということになるのだろう。それでもテンポや
演出などにも、古さを感じさせないのだから大したものだ。
監督は、リンドグレーン作品の映画化を数多く手掛けている
オル・ヘルボム。手慣れているということもあるだろうが、
主人公たちの演技のバランスも良く、児童文学らしい柔らか
な雰囲気で、見事な作品だ。              
                           
『おばあちゃんの家』(韓国映画)           
韓国では観客400万人を動員したという少年と老女の一夏の
生活を描いた作品。                  
7歳のサンウは母子家庭で育ってきたが、ある年の夏、母親
が職捜しをする間を、山村の祖母の家に預けられる。その家
はテレビはあるが故障で映らず、退屈を持て余すサンウは祖
母に当たり散らす。しかし祖母は、口が利けないこともあっ
てそれを耐えているというか、大きな愛情でそれを包み込ん
でいる。                       
最初サンウは持参した缶詰めばかり食べているが、それも尽
きてしまったある日、手話で食べたい物を訊かれてフライド
チキンを要求する。しかし祖母は鶏を一羽丸茹でにする。一
旦はそれを拒否したサンウだったが、空腹で食べてしまう。
そして雨の中を鶏を買いに行くなどして寝込んでしまった祖
母を、サンウは看病し始める。             
都会から来たサンウの荒れた生活態度と、祖母を筆頭に山村
に住む人々の愛情豊かなサンウへの接し方が対比され、自然
に包まれた山村の良さが描かれる。           
と書くと、かなりあざとい作品のように読めてしまうが、何
と言うか、祖母の描き方が上手く、一方、サンウの我儘振り
の描き方もユーモアに包まれているので、悪い印象を与えな
い。                         
なお、サンウを演じているのはCM出演もある子役だが、祖
母はロケ地の山村に住む素人だそうだ。このおばあさんが、
口が利けないという設定の上手さもあるが、実に絵になって
いる。この辺の企画の上手さも、韓国では受賞の対象になっ
ているようだ。                    
                           
『六月の蛇』                     
『鉄男』などの塚本晋也の監督で、02年のヴェネチア国際映
画祭で審査員特別大賞を受賞した作品。         
企業の重役を夫と暮らす主人公は、心の電話相談室でカウン
セラーをして優秀な実績を上げているが、夫婦生活はセック
スレスで本人の心は満たされていない。         
そんな彼女のところへ一束の写真が送られてくる。それは彼
女が自慰にふける姿を写したもので、同封された携帯電話で
写真のネガがほしければ命令に従うように脅迫される。  
脅迫者は彼女に電話相談をした男で、男は、彼女が自分の本
当にしたいことをしなさいと言って自分を救ったように、彼
女自身に本当にしたいことをさせるのだと言う。     
そしてミニスカートで、下着を着けずに町を歩かされた彼女
は、ポルノショップでリモコン式の大人のおもちゃを買わさ
れる。                        
願望充足型のポルノ作品と言ってしまえばそれまでだが、モ
ノクロ(カラーポジフィルムを使って青くプリントされてい
る)の画面に篠突くような雨が降り続け、極めて濃密な映像
が展開する。                     
ヴェネチアでの受賞の他、シッチェス国際映画祭でも美術監
督賞を受賞しているだけのことはある。映画の前半は彼女の
側を描き、後半は彼女の行動に疑問を持った夫を描き、最後
に電話の男と交錯する、そんな構成も登場人物たちの心理を
際立たせて見事だった。                
なお、日本公開は一般映画の扱いで行われるようだ。   



2002年12月15日(日) 第29回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 最初に訂正。前回の“Where's Waldo?”(ウォーリーを
探せ!)の記事で、「原作ではウォルド、日本版ではウォー
リーとなっており」と書いたが、大元の原作がイギリスで出
たときの主人公はWallyで、それがアメリカで出版されたと
きにWaldoに変えられたのだそうだ。それならこれは『ハリ
ー・ポッターと賢者の石』の場合と同じだから、日本ではイ
ギリス版を公開すれば問題はないことになる。ということで、
とりあえず訂正。林さん情報をありがとうございました。 
 続いて言い訳、実は11月半ば頃からアメリカからの郵便物
が大遅配になっている。これは多分クリスマスメールのせい
で、昨年は9月11日と炭素菌事件の為にほとんどクリスマス
メールが送られなかった分が、今年に倍加しているようだ。
 そんな訳で、キネマ旬報の記事の方はインターネットで凌
いでいるが、ヘッドラインのインデックスからだけだと記事
も見落とし易い。実際、後から対応する号が届いてみると、
別に興味を曳かれる記事があったりという具合で、紙媒体の
重要性を再認識している感じだ。            
 ということで、ここでは後から届いた記事なども含めて紹
介させてもらうことにするが、全体的にニュースがちょっと
古くなっている面もあるので、ご了承ください。     
        *         *        
 まずは、ロバート・デニーロの『ブロンクス物語』以来の
監督第2作として計画されている“The Good Shepherd”と
いう作品に、レオナルド・ディカプリオの主演が期待されて
いる。                        
 この作品は、『フォレスト・ガンプ』や『アリ』などのエ
リック・ロスの脚本で、アメリカ中央情報局CIAを作り上
げたジェイムズ・ウィルスンの40年に亙る半生を描くもの。
といってもこの主人公は架空の人物で、何人かの人物をモデ
ルにして冷戦時代を通してのCIAの歴史を描き出すという
ものだ。                       
 因に本作は、アメリカン・ゾイトロープで10年近く前から
企画されていたもので、以前にはMGMやソニーなどでも検
討されたが、ようやくユニヴァーサルとデニーロが主宰する
トライベカの協力で実現の目処が付いたということだ。従っ
てアメリカ配給はユニヴァーサルが担当する。      
 ただし、本作の撮影は03年秋からの予定だが、02年クリス
マスにはアメリカで、『ギャング・オブ・ニューヨーク』と
“Catch Me If You Can”の2作品が同時公開されている人
気者のディカプリオの03年の予定では、マイクル・マン監督
によるハワード・ヒューズ伝記映画“The Aviator”がすで
にスタートしており、さらにテッド・タリー脚本、バズ・ラ
ーマン監督でアレクサンダー大王を描く歴史大作や、『ギル
バート・グレイプ』のラッセ・ハルストロームの監督で小型
核兵器を巡るスリラー“Bombshell”など計画が目白押し。
 特に、ハルストローム作品は、ディカプリオ自身が製作を
買って出ているということで、これらの企画を掻い潜って、
秋までにディカプリオのスケジュールが空けられるかどうか
が、デニーロ作品への出演の鍵になりそうだ。      
 なお、ディカプリオとデニーロは、93年の『ボーイズ・ラ
イフ』と、96年の『マイ・ルーム』で共演しているが、今回
のデニーロの出演は、ちょい役だけの予定だそうだ。   
        *         *        
 お次は、02年夏公開の『トータル・フィアーズ』では、主
演がベン・アフレックに交替して再出発したジャック・ライ
アンシリーズの傍系で、『トータル…』や『今そこにある危
機』にも登場したエージェントのジョン・クラークを主人公
にした作品の映画化が計画されている。         
 この人物は、『今そこにある危機』ではウィレム・デフォ
ー、『トータル…』ではレーヴ・シュライバーが演じている
ものだが、原作者のトム・クランシー自身が彼を主人公にし
た2冊の原作“Rainbow Six”と“Without Remorse”を発
表しており、映画化権を持つパラマウントでは以前から映画
化を期待していたものだ。しかしいろいろな状況で実現が遅
れていた。                       
 その計画がようやく進み始めたもので、まず映画化される
のは“Rainbow Six”。この作品は、元ネイヴィSEALの
クラークがCIAから独立して多国籍の対テロリスト組織を
作り上げるまでの話で、シリーズの最初としては好適な作品
ということだ。                    
 因に、以前の計画は“Without Remorse”を映画化するも
のだったが、この原作は先に発表されてはいるが物語は組織
ができてからの話で、映画シリーズのスタートには不向きだ
った。しかしその後にクランシーが、発端となる“Rainbow
Six”を発表。晴れて映画化開始となったもので、当然シリ
ーズ化が目指されるが、そうなるとジャック・ライアンと並
行で物語が進むことになりそうだ。           
 そしてこの映画化の脚色と監督に、パラマウントで製作さ
れるマイクル・クライトン原作“Timeline”の脚色を終えた
ばかりのフランク・カペロの起用が発表されている。   
 なおカペロは、キアヌ・リーヴス主演、ワーナー製作で計
画されているコミックスの映画化“Constantine”の脚本を
手掛けている他、93年製作の“American Yakuza”や、95年
にラッセル・クロウと豊川悦司が共演した『No Way Back/
逃走遊戯』という作品の監督歴がある。         
        *         *        
 久しぶりにスティーヴン・セガールの話題で、75年にシド
ニー・ポラック監督、ロバート・ミッチャム、高倉健共演で
映画化された“The Yakuza”(ザ・ヤクザ)をリメイクする
計画が発表された。                  
 オリジナルの物語は、ミッチャム扮する主人公が、誘拐さ
れた友人の娘を救出するために、数年前まで住んでいた日本
を再訪する。そして以前に親交のあった高倉扮するやくざの
男と協力して事件を解決するというもの。        
 この作品は、日本通で知られ“Mishima”などの監督作品
もあるポール・シュレーダーと、74年の『チャイナタウン』
でアカデミー賞を受賞したロバート・タウンの脚本で、アク
ションもあるが、かなり様式美みたいなものを追求していた
ようにも記憶している。といっても、高倉健が賭場で刀を抜
いて見栄を切ったり、確かエンドクレジットは英語だが、黒
地に朱で縦書きされていたような、いろいろな勘違いが笑え
る作品でもあった。                  
 その作品を、さらに日本通のセガール主演でのリメイクと
いうことで、勘違いを修正してくれることも期待したいが、
オリジナルはそれで評価されている面もある訳だし、セガー
ル自身もその手の勘違いは好きそうな感じでもあるから、ど
うなることか。それにしても、多分セガールがミッチャムの
役だろうが、さて健さんは誰が演じるのだろう。     
 なお、セガールの主演ではもう1本、アダム・グリーンマ
ンの脚本で“The Rescue”という作品も企画されている。こ
の作品は、ヴェトナム帰還兵を主人公に、彼のペンパルで資
金の援助もしていた少年の音信が跡絶えたことから、少年の
住んでいた東ヨーロッパを訪れ、少年に何が起こったか、そ
の消息を探すというもの。2作とも異国の地で事件を解決す
るお話になりそうだ。                 
        *         *        
 ディズニーアニメーションでは02年度最高のヒット作とな
った“Lilo & Stitch”の脚本、監督を共同で手掛けたクリ
ス・サンダースとディーン・デュボアが、新たにディズニー
傘下にプロダクションを設立、アニメーションと実写映画の
製作を行うことが発表された。             
 なお、設立されたプロダクションでは、2人は共同または
個々に計画を進めるということで、すでにサンダースは題名
未定のCGIを使った作品の監督を単独で開始しており、デ
ュボアは“The Gunshoe Chronicles”という題名のネッシ
ーのような怪獣の登場するキー・ウェストを舞台にした実写
作品を、単独で監督する予定で脚本の執筆に入っているとい
うことだ。                       
 一方、2人は共同で、ヴィデオで発表される計画の“Lilo
& Stitch”の続編と、テレビシリーズ化の計画も進めてお
り、これらはすでに作業に入っているようだ。      
 因に、ディズニー傘下の同様のプロダクションではヤコブ
スンとクックのチームがあり、ここでは外部の才能を招請す
る方針で『オールド・ルーキー』や『ロイヤル・テネンバウ
ムス』、それに『サイン』を成功させている。      
        *         *        
 アニメーションの話題が出たついでに、第2回を迎えるア
カデミー賞長編アニメーション作品賞の話題を紹介しておこ
う。                         
 アカデミー賞の最終候補は、今年度に付いても来年の2月
11日に発表されることになっているが、その前の予備候補が
発表されている。この予備候補として昨年度は、第7回で紹
介したように9本が選ばれたものだが、今年度は17本がアカ
デミーの事前の審査をパスしたようだ。         
 その17本は、“Adam Sandler's Eight Crazy Nights”  
“Alibaba & the Forty Thieves”“Eden" “El bosque  
animado(The Living Forest)”“Hey Arnold! The Movie”
“Ice Age”“Jonah -- A Veggie Tales Movie”“Lilo & 
Stitch”“Mutant Aliens”“The Powerpuff Girls Movie”
“The Princess and the Pea”“Return to Never Land” 
“Spirit: Stallion of the Cimarron”“Spirited Away”
“Stuart Little 2”“Treasure Planet”“The Wild
Thornberrys Movie”。                    
 因に選定の条件は、年度内にアメリカ国内で初公開された
作品で、且つ一般上映されていること。また長編アニメーシ
ョンの基準は、上映時間70分以上で、アニメーションシーン
が75%以上を占める作品となっている。さらに、昨年度は予
備候補が9本だったために最終候補は3本だったが、事前審
査段階で候補が16作品以上の場合には最終候補は5作品に拡
大され、候補が8作品未満の場合には最終候補は選出しない
という規約があるということで、予備候補が17本の今年は、
5本が最終候補に選ばれることになりそうだ。      
 そこで注目は、その5本にどの作品が選ばれるかというこ
とになる訳だが、大ヒットを記録した“Ice Age”と“Lilo
& Stitch”はまず間違いないところだろう。従って残る数は
3本。その中に日本人としての期待は、“Spirited Away”
(千と千尋の神隠し)が選ばれるかどうか。前回は、最終候
補が3本ということで“Final Fantsy”は涙を呑んだが、今
回はどうなるだろう。                 
 また、アメリカでは“Stuart Little 2”が予備候補に選
ばれたことが話題になっているようだ。なお、この審査は製
作者の申請の基づいて行われるもので、製作者のコメントに
よると、アニメーションシーンが75%以上を占めるという条
件をクリアしているのだそうだ。確かにスチュアートは、リ
アルに見えてもCGIキャラクターだった訳で、それを考え
ると製作者のコメントも理解できる。しかしそうなると、デ
ィジタルエフェクトの多用された作品はどうなるかというこ
とにもなってくる訳で、これは今後の課題になりそうだ。 
        *         *        
 またまた各国映画からのハリウッドリメイクで、今回は日
本、スウェーデンの作品のリメイクの情報が1本ずつ届いて
いる。                        
 まずは日本から、97年製作、黒沢清監督の『CURE』の
リメイク権がユナイテッド・アーチスツと契約されている。
この作品は、同じ手口の連続殺人が発生するが、犯人がすべ
て別人という事件を発端にしたホラー作品で、97年の東京国
際映画祭のコンペティション部門に出品され、役所広司が男
優賞を受賞している。僕は、『リング』より恐かったと記憶
している作品だ。なおリメイクの脚本は、先にニューライン
で“American Princess”という作品を手掛けているデニス
・バートックとトム・エイブラムのコンビが担当することに
なっている。                     
 一方、スウェーデン作品は、英題名が“The Invisible”
というもので。この作品のリメイク権をスパイグラスが獲得
している。内容は、10代の2人の若者が不可視になる。その
一方は少年で、彼の死によって文字通りの不可視になるが、
もう一人の少女は、彼女の母親の死によって比喩的な不可視
になっているというもの。そして物語は、超自然的な展開を
するということだ。この脚本はミック・デイヴィスという脚
本家が手掛けたものだが、実は元々は英語で書かれたものを
スウェーデン語に翻訳して映画化されたということ。従って
今回のリメイクに当っての脚本はすでにあるということにな
るが、その他のスタッフキャストは未定のようだ。    
 なお、北欧映画からのリメイクでは、『インソムニア』が
すでに公開されているが、今回の作品もあのような雰囲気の
ものなのだろうか。                  
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 まずは、配役の情報を2つ。             
 以前に紹介したパラマウント製作、フィリップ・K・ディ
ック原作“Paycheck”の映画化にベン・アフレックの主演が
期待されている。この作品は、現在ジョン・ウーの監督で準
備が進められており、これで俳優が決ればいよいよ撮影開始
ということになりそうだ。               
 もう1本はワーナー製作の往年のテレビシリーズからのリ
メイク“Starsky & Hutch”に、ラッパーのスヌープ・ドッ
グの出演が発表された。役柄は、テレビではアントニオ・フ
ァーガスが演じた情報屋のハッギー・ベア。オリジナルの物
語では主人公たちに情報を提供すると共に、コメディリリー
フの役割りも果たしていた。ただし、映画版はベン・スティ
ラーとオーウェン・ウィルスンの主演で、コメディ要素は充
分にある訳で、これにさらにコメディリリーフとなるのだろ
うか。なお、ドッグは、デンゼル・ワシントンがオスカーを
受賞した『トレイニング・デイ』にも出演していた。   
        *         *        
 ついでにワシントンの情報で、62年にジョン・フランケン
ハイマーが監督した“The Manchurian Candidate”(影な
き狙撃者)のリメイクの計画が発表されている。この作品は、
リチャード・コンドンの原作をジョージ・アクセルロッドが
脚色したもので、朝鮮戦争を背景にしたスリラー。85年に再
公開されて、カルト的な人気を獲得しているということだ。
またこの作品は、主演のフランク・シナトラを俳優としてブ
レイクさせた作品としても知られている。そして今回は、こ
のシナトラが演じた役をワシントンが演じるもので、パラマ
ウントが製作、リメイクの脚本は『トータル・フィアーズ』
のダン・ぺインが担当している。            
        *         *        
 最後に、注目している人も多いこの情報で、アーサー・C
・クラーク原作“Rendezvous With Rama”(宇宙のランデ
ブー)の映画化に、パラマウントの参加が発表された。これ
は映画化を進めている俳優モーガン・フリーマンのプロダク
ションが、パラマウントとの間で新たに優先契約を結んだこ
とから公表されたもので、この契約では、まずビル・ハーロ
ウ原作のミリタリー小説“Circle Williams”の映画化が予
定されているが、それに併せてクラーク原作の映画化にパラ
マウントが参加することが発表されたものだ。       
 なお、クラークの映画化については、ブルース・マッケナ
の脚本も完成しており、デイヴィッド・フィンチャーの監督
も決っているものだが、極めて大量のCGIが使われること
などで製作費の高騰が予想され、当初進められていたプロパ
ガンダでの製作が断念されていた。しかしここにパラマウン
トの参加が表明されたことで、実現に向けて大きく前進した
と言えそうだ。                    



2002年12月02日(月) ブラッド・ワーク、抱擁、ブラッディ・マロリー、ケミカル、ヘヴン、銀幕のメモワール、レッド・ドラゴン、リロ&、ウォーク・トゥ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/) ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ブラッド・ワーク』“Blood Work”          
クリント・イーストウッドの監督デビュー30周年記念作品。
FBIのプロファイラーだった主人公は、彼を名指したサイ
コキラーを追い詰めた瞬間、心臓発作で倒れる。     
2年後、心臓移植手術が成功し、仕事は引退したものの普通
の生活に戻った彼の元に、一人の女性が現れる。彼女は、移
植された心臓が姉のもので、強盗事件に巻き込まれて死亡し
た姉の仇を撃って欲しいと要求する。          
私立探偵免許もなく、最初は資格がないと断った主人公だっ
たが、警察に出向くことだけは了承。市警察を訪れた彼は、
術後2カ月で危険だという主治医を後目に、徐々に事件にの
めり込み、それによって自分の精神が高揚して行くことを感
じる。                        
『ダーティー・ハリー』の血気にはやる主人公から、今や70
歳を超えて初老以上になってしまったイーストウッドだが、
それでも捜査に懸ける情熱は変わらずというか、『スペース
・カウボーイ』より様になっているのは、やはりこういう作
品が好きなのだろう。                 
謎解きも上手くできているし、大掛かりなスタントアクショ
ンなどはさすがにないが、現役刑事とのやりとりや、独自の
捜査のやり方など、映画全体の雰囲気は面白かった。   
マイクル・コナリー原作『わが心臓の痛み』の映画化だが、
映画全体の雰囲気は『LAコンフィデンシャル』のブライア
ン・ヘルゲランドの脚色の力が大きいと感じた。     
                           
『抱擁』“Possession”                
90年のブッカー賞を受賞したA.S.バイアットの原作の映
画化。                        
ヴィクトリア女王の桂冠詩人だったランドルフ・アッシュを
研究するミッチェルは、アメリカ人ながら大英博物館の特別
研究員として働いている。そのミッチェルがアッシュの蔵書
に挟まった2葉の書簡を見つける。それは生涯を妻に捧げた
と言われるアッシュが別の女性に恋心を打ち明けたものだっ
た。                         
その女性とは、ヴィクトリア朝で活躍した女流詩人クリスタ
ルベル・ラモットであると確信したミッチェルは、ラモット
の縁者で研究者でもあるモードと出会い、過去に起こった出
来事を調べ始める。                  
映画は、ヴィクトリア朝の2人の詩人と、現代の2人の研究
者を交錯させながら、愛の物語を綴って行く。      
これに、モードの元恋人で2人を出し抜こうとして俗物教授
と結託するライヴァル研究者が登場したり、映像では、過去
のシーンでのドアの開閉やカメラがパンすることで、現代に
切り替わるなど、かなり奇を衒った演出も見せるのだが、そ
れがあまり気にならないのは、いかにもフィクションですと
言い切っているような潔さにある。           
大人のファンタシーというか、パソコンのテキストゲームを
やっているような、そんな感覚を楽しめる作品だった。  
                           
『ブラッディ・マロリー』“Bloody Mallory”      
超自然のモンスターを超能力を駆使して退治する「女性」ば
かりの特殊部隊の活躍を描いたフランス製アクション映画。
ディジタルエフェクトが手軽になったおかげで、最近この手
の作品が次々登場してくる。しかし今回はフランス映画とい
うことで、ちょっとそのテイストの違いが面白かった。お話
は、ほとんどアメリカ映画のB級アクションなのだが、その
雰囲気は間違いなくフランス映画なのだ。        
主人公は、結婚したばかりの夫がヴァンパイアだったことが
判り、ウェディングドレスのままで夫を惨殺したという過去
を持つ女性。しかもその時にヴァンパイアの血を浴びたため
に魔界と通じる能力を身に付け、時々夫を呼び出しては情報
を得るという設定だ。                 
その他、特殊部隊には、口は利けないが両方向のテレパシー
と、人格そのものを他人や動物に乗り移らせる能力を持った
少女や、爆発物専門のおかま、それに政府機関との連絡係で
もある男性の刑事が監督官として加わっている。     
ところがある日、モンスター退治に乗り込んだ修道院で逆襲
にあい、刑事は殉職。しかもその直後、600km離れた場所
で、フランス訪問中のローマ法王が同じモンスターたちに誘
拐されるという事件が発生する。            
そして主人公たちは、村人全員が突然行方不明になったとい
う村が怪しいとにらみ、その村の入り口の門から魔界へと潜
入。そこで加わった元法王の警護隊員と共に、法王救出に向
かうのだが…。                    
監督は、日本のアニメの大ファンだそうで、随所にそのオマ
ージュらしきものが見られ、ついでに音楽は『攻殻機動隊』
『リング』の川井憲次に担当させるという念の入れよう。ま
あ珍品と言えば珍品だが、話自体にそれほどの破綻もなく、
B級としては充分に楽しめた。             
それとエピローグによると、次の作戦地は日本のようで、こ
れは是非とも続編を作ってもらいたいものだ。      
                           
『ケミカル51』“The 51st State”          
『スター・ウォーズ』にも出演している黒人俳優のサミュエ
ル・L・ジャクスンが、自らの製作主演で発表したイギリス
=カナダ合作のアクション映画。            
主人公は、30年前、薬学部を卒業して薬剤師としての未来を
約束されながら、麻薬吸引中を警察に咎められ、薬剤師とし
ての道を閉ざされたという男。             
男はその後、地下社会でドラック調合のカリスマと呼ばれる
ようになったが、その仕事に嫌気が差し、一世一代の大勝負
に出る。それはアメリカの売人を裏切り、新たに完成した究
極のドラッグの処方をヨーロッパの組織に売って大金を得よ
うというものだ。                   
しかしアメリカの売人を殺害しようとした計画は失敗。そう
とは知らずにリヴァプールに着いてみると、出迎えたのは大
のアメリカ嫌いのチンピラ。しかも、このチンピラの元恋人
の凄腕の女スナイパーが、アメリカの売人の命を受けて町に
舞い戻ってきた。                   
これに、ドラッグを狙うネオナチのグループや悪徳警官が絡
み、しかも町はマンチェスター=ユナイテッドを迎えてのサ
ッカーで盛り上がっている真っ最中という、かなりスラップ
スティックな笑いの要素も盛り込まれた作品だ。     
まあ、この手のイギリスのチンピラものもいろいろと出てく
るが、イギリスコメディの伝統みたいなものも確立している
ので、どれを見ても当たり外れはあまりない。唯、ちょっと
人が死にすぎるかな、これもいつものことではあるが。  
原題は「51番目の州」で、これは通常はプエルトリコかカナ
ダを指すようだが、この映画では舞台がリヴァプールという
ことで、アメリカではその辺も話題になっていた。後は、ジ
ャクスンのキルト姿も見ものだった。          
                           
『ヘヴン』“Heaven”                 
『トリコロール』のクシシュトフ・キェシロフスキ監督の遺
稿脚本を、『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァが監
督した男女の恋愛ドラマ。               
女は、イタリア在住のイギリス人で小学校で英語を教えてい
る教師。彼女の夫は麻薬の過剰摂取で死亡し、その麻薬の元
締めが夫の友人の実業家の裏の顔であることを知っている。
そしてその魔手は彼女の教え子たちにも伸び始めている。 
彼女はその事実を何度も警察に訴えたが、聞き届けられず、
ついに教え子の一人が死亡した日、彼女は手製の時限爆弾を
持って実業家のオフィスを訪ねる。そして置いてきた爆弾の
爆発音を聞いた彼女は、警察に犯行を報告し逮捕される。 
男は、警察の前の本部長の息子。父の後を追って警察に勤め
るようになるが、何か目標のあるような人生ではない。その
彼が、書記として女の尋問に立ち会い、女が英語でしか答え
ないと主張したために、資格のある彼は通訳をすることにな
る。                         
しかし彼女の仕掛けた爆弾が、爆発の寸前に掃除婦に回収さ
れ、掃除婦と居合わせた親子3人を死亡させて、目的の実業
家を殺せなかったと知らされたとき、罪悪感で失神した彼女
を介護した男は、彼女に恋するようになる。       
そして警察内の不正にも気付いた男は、女の脱走と実業家の
殺害を手引きしてしまう。               
見事にドラマという感じの作品だ。結末に至るまで、フィク
ションそのものという感じだが、これが映画というものだろ
う。それと女を演じるケイト・ブランシェットの存在感。前
作『シャーロット・グレイ』でもそうだったが、まさに圧倒
的だった。                      
                           
『銀幕のメモワール』“Lisa”             
1926年生まれのピエール・グランブラ監督が、1927年生まれ
のジャンヌ・モローを主演に迎えて描いた第2次世界大戦を
背景にした悲恋ドラマ。                
ブノワ・マジメルが扮する映画監督のサムは、第2次大戦前
夜に活躍し、謎の失踪をした映画俳優の生涯を追っている。
その彼が発見した1枚の写真には、俳優に寄り添うリザとい
う女性が写っていた。サムはリザを捜しだし、思い出を聞き
出そうとする。                    
それは結核サナトリウムで起きた出来事。その近くで行われ
た映画の撮影を見に行ったリザは、俳優に恋をし、全てを捧
げる決心をする。しかしナチの侵攻が始まり、映画人たちも
戦場に駆り出されて行く。               
やがてサナトリウムにもユダヤ人狩りの手が伸び、リザは、
ユダヤ人を匿う院長の手助けをすることになる。そこへ捕虜
収容所を脱走した俳優が現れ、彼も匿われることになるのだ
が、それは悲劇への幕開けとなる。           
今年76歳の監督は、長くテレビで仕事をしており、本作が26
年ぶりの映画への復帰作品だそうだ。そんな監督が撮りたか
ったもの、それは第2次大戦中にフランスの各地で起きたで
あろう悲劇の物語だ。                 
監督自身はユダヤ人のようだが、ここでは告発をしようとい
うのではなく、ナチに協力してユダヤ人狩りに手を貸した人
々が居たという事実を、フランス人の心に残る深い傷として
描いている。                     
また、映画ではモローが演じる現代のリザと、マリオン・コ
ティアールが演じる若き日のリザを巧みに交錯させて見事に
描いている。75歳のモローの演技にも感動した。     
                           
『レッド・ドラゴン』“Red Dragon”          
トマス・ハリスの原作でハンニバル・レクターが登場した第
1作の再映画化。                   
同じ原作では、1986年に“Manhunter”(邦題・刑事グラハ
ム/凍りついた欲望)の題名で、マイクル・マン監督による
映画化があり、今回はその再映画化となる。       
ただし、原作もオリジナルの映画化も、元々はレクターに重
点を置いたものではなかったが、今回はプロローグとエピロ
ーグも追加されてレクターが前面に登場している。そしてそ
のレクター役は、当然のことながらアンソニー・ホプキンス
が演じている。                    
監督はブレット・ラトナー。MTVの出身で、ジャッキー・
チェン、クリス・タッカー共演の『ラッシュアワー』などで
知られるこの監督に、ハンニバル・レクターはイメージがち
ょっと違うと思われるが、意外とこれが良かった。    
確かに、ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』や、リド
リー・スコット監督の『ハンニバル』のような芸術作品とい
うものではないが、実にハリウッド映画らしいちょっと軽め
の乗りがこの作品には活かされている感じがした。    
実際、前2作のようなグロテスクな描写も少ないし、その割
りにはサスペンスの盛り上げも堅実で、派手なアクションも
あり、楽しめる。それに、デミ作品でオスカーを受賞したホ
プキンスを始め、複数回の候補になった俳優がずらりと並ぶ
配役も見ものだ。                   
物語は、重傷を負いながらもレクターを逮捕(これがプロロ
ーグで描かれる)し、喝采を浴びるが、FBIを引退したグ
ラハムの基へ、元の上司が訪ねてくる。元上司は満月の夜に
起きた2つの一家皆殺し事件を、次の満月までに解決する協
力を要請しに来たのだ。                
グラハムは、気遣う家族を残して協力に向かう。そして事件
現場を訪れた彼は早くも犯人の特徴を掴み、犯人像の絞り込
みに貢献する。しかし犯人の目的が判らない。そこで彼は収
監されているレクターを訪ね、条件と引き換えにヒントを得
ようとするのだが…。                 
こうして、グラハムとレクター、そしてレッドドラゴンと名
乗る殺人鬼との三つ巴の戦いが始まる。         
上にも書いたように、前2作に比べると軽く作られているの
で、前2作の好きな人には少し物足りないかも知れない。し
かし娯楽映画としてはこれで充分。前作の最後でレクターは
東京に向かっているが、この調子ならその作品も作りやすく
なりそうだ。                     
                           
『リロ・アンド・スティッチ』“Lilo & Stitch”     
アメリカでは夏前に公開されて、第1週は『マイノリティ・
リポート』を抜いて、週末興行第1位に輝いたディズニー製
作の今年の長編アニメーション。            
物語は、銀河連邦所属の科学者が、本来は禁止されている生
物実験で作り出した究極の生物兵器のモンスター。そいつが
護送の途中で脱走し、野生生物保護地区の地球という星に逃
げ込んだことから始まるアドヴェンチャー。       
元々親は無く手に触れるものをすべて破壊するようにプログ
ラムされたモンスターと、交通事故で両親を亡くし姉との二
人暮らしで突っぱてしか生きていけない少女との交流が、ハ
ワイを舞台に描かれる。                
ディズニーアニメのSFネタは、前回の『アトランティス』
が何ともはやという感じだったが。今回はそれなりに捻りも
利かせて結構面白い。アクションもどんどんエスカレートし
て行くのがうまく展開しているし、作品自体の出来は良いと
思う。                        
ところが、突然ロズウェル1973年なんていう台詞が出てくる
と、アメリカでは大受けになるのだろうが、日本ではねー。
かと言って落ちに関わるので、事前に解説しておくという訳
にも行かないし、難しいところだ。           
他にも、『トイ・ストーリー』を含め、様々なSF作品のパ
ロディめいたエピソードもあって、SFファンなら理解でき
るし面白いと思えるのだが…。             
逆にお子様は、そんなことは気にせずに楽しめるのかな。多
分ディズニーの期待はその辺にあるのだからそれで良しとし
て、できればSFファンにもアピールする宣伝をしてもらえ
ると面白いという感じだ。               
                           
『ウォーク・トゥ・リメンバー』“A Walk to Remember” 
『メッセージ・イン・ア・ボトル』のニコラス・スパークス
の原作の映画化。                   
高校の不良グループのリーダー格だった男子が、懲罰として
行かされた演劇部と奉仕活動で、幼なじみだった女子と付き
合う羽目に陥る。彼女は牧師の娘で、頭は良さそうだが、だ
さくて皆からは浮いている。そんな偶然の出会いが、やがて
恋へと変って行くのだが、彼女は白血病で余命1年と知らさ
れる。                        
『ある愛の詩』を引き合いに出すまでもなく、いつまでたっ
てもこの手の映画は登場してくる。最近では『オータム・イ
ン・ニューヨーク』もあったが、今回は高校生同士という辺
りがちょっと目新しい。この手の作品で男性の人生観が変っ
て行くのは定石だが、この話では高校生ということで、主人
公だけでなく周囲まで変って行くというのは新機軸だろう。
最初は今さらと思いながら見始めても、最後にはちょっとほ
っとしてしまう。ケヴィン・コスナーの主演で映画化された
同じ原作者の前作は、ちょっとあざとくて気に入らなかった
が。今回の物語は、否定しない。殺伐とした世の中で、たま
にはこんな話があっても良いじゃないかというところだ。 



2002年12月01日(日) 第28回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は、久々に記者会見の話題から。         
 第22回で作品を紹介したフランス映画『8人の女たち』の
11月23日公開を前に、監督のフランソワ・オゾンと、出演者
のヴィリジニー・ルドワイヤン、リュディヴィーヌ・サニエ
の来日記者会見が11月18日に行われた。この内のサニエは、
第24回で報告したように、製作中の実写版“Peter Pan”で
ティンカー・ベルを演じており、僕としてはそのことを聞き
たかったが、他の映画の記者会見でそういう質問をするのは
失礼というものだ。                  
 ところがこの日は、記者会見の後でパーティがあって、そ
こでサニエのそばに行くチャンスがあり、その時、「ティン
カー・ベル?」と呼びかけたところ、笑顔で服の袖を上げて
フィギュア付きのブレスレットを見せてくれた。ほんの一瞬
で、細かいところまでは見えなかったが、フィギュアは多分
ディズニーのアニメーションのティンカー・ベルで、それを
見せてくれたときの嬉しそうな顔は、本当に役が気に入って
いるようだった。                   
 実はこの日の彼女の服装は、普通では手首が袖に隠れてい
るもので、このとき以外は袖を上げることはなかったから、
そのブレスレットを目撃したのは、僕とその時に近くに居た
2、3人だけだと思うが、サニエの嬉しそうな笑顔とかわい
い仕種で、一層“Peter Pan”への期待が高まったという感
じがした。来年、“Peter Pan”のプロモーションでの来日
があったら、その時はちゃんと質問をしてフィギュアを確認
したいものだ。                    
        *         *        
 以下は、いつものように製作情報を紹介しよう。    
 まずは人気シリーズの続編の情報で、ユニヴァーサル配給
“Jurassic Park”の第4作の計画が発表された。     
 このシリーズは、マイクル・クライトンの原作に基づいて
1993年にスティーヴン・スピルバーグが監督した第1作に始
まり、1997年にはクライトンが新たに執筆した続編に基づく
“The Lost World: Jurassic Park”がスピルバーグ監督で
映画化された。さらに2001年には、ピーター・バックマン他
脚本で、ジョー・ジョンストン監督による第3作“Jurassic
Park III”が製作され、このときスピルバーグとクライトン
の名前が外れたことで、新たにシリーズとしての再出発が切
られたものだ。                   
 そして今回発表された計画では、製作は第1作から変らず
キャスリーン・ケネディだが、脚本はウィリアム・モナハン
が担当することになっている。因にモナハンは、リドリー・
スコットの監督で予定されている18世紀を舞台にした歴史ド
ラマ“Tripoli”の脚本も担当しているということだ。   
 監督やキャスティングは未定だが、流れから行くとスピル
バーグが監督することはなさそうだ。また出演者では、前2
作の主演は、共に第1作に出演したジェフ・ゴールドブラム
と、サム・ニールが別けているが、今度はどちらが主演する
のか、それともまったく別の主人公が登場するのだろうか。
 なおシリーズは、第3作からは純粋にアドヴェンチャムー
ヴィとなっており、今回もその中での手を替え品を替えての
展開になるのだろうが、僕自身は、いつの日かクライトン、
スピルバーグによる本当の結末が見たいと思っている。また
シリーズ3作目までの全世界興行収入の合計は、19億ドルに
達しているということで、本作で合計20億ドル突破の期待も
あるようだ。多分達成は間違いないだろうが。      
        *         *        
 お次は、またまた往年のシリーズからの映画化の情報が届
けられた。                      
 今回、映画化されるのは“Mighty Mouse”。日本のテレ
ビでも一時期放送されたスーパーネズミが活躍するアニメー
ションによるアクションシリーズで、これをオールCGIで
映画化する計画が、パラマウントと、今年のアカデミー賞で
初の長編アニメーション作品賞の候補3本の内の1本に選ば
れた“Jimmy Neutron: Boy Genius”や、“The Rugrats
Movie”などを手掛けるニッケルオディオンの製作で進めら
れるというものだ。                      
 “Mighty Mouse”は、元々は1944年にスタートしたカート
ゥーンと呼ばれる劇場用アニメーションシリーズで、当時は
全部で74本が製作され、これらの作品は1955年以降にCBS
が権利を獲得してテレビ放映された。日本でもこれが輸入さ
れて放送されていたものだ。また、この内の“Gypsy Life”
というエピソードが、1945年のアカデミー賞短編アニメーシ
ョン賞の候補にもなっているそうだ。さらに1979年にはフィ
ルメーションでテレビ用に48本の新作が製作されている。 
 因に、テリートゥーンでは1942年発表の“Supermouse”
という作品があり、最初はこれをシリーズ展開しようとした
のだが、全く同じ月にコミックスで同名の作品が発表され、
キャラクターの展開でコミックスに遅れを取ったために名称
を変えたのだそうだ。しかしこれによって、最も有名な動物
のスーパーヒーローが誕生したと言われている。      
 そして今回の計画は、この映画化を、『M:I−2』を監
督したジョン・ウーの製作で進めるというもので、ウーのパ
ートナーのテレンス・チャンと、ニッケルオディオンのトッ
プが共同で製作。またコンセプトデザインは、バリー・ジャ
クスンとニッケルオディオンのアニメーションスタッフが行
うと発表されている。ただし、脚本と監督は未定のようだ。
 なお、発表の席で製作担当のチャンは、「サイズはちっぽ
けなヒーローが活躍する点に魅力を感じている。実にクール
な設定だし、これを“Jimmy Neutron”や“Rugrats”のス
タッフと共にやれることは最高だ」と語っている。     
 設定では、このヒーローは、「光より速く空を飛び、力は
軌道を外れた地球をパンチ一発で元の軌道に戻すほど。また
地上にいて冥王星からの助けを呼ぶ声を真空中を伝わる音波
で聴くことができ、X線や遠隔地を見る視覚を持つ。さらに
世界中や月面にも情報を収集するための基地がある。」とい
うことだ。これでネズミの世界を守るために戦っているとい
うのだが、さて、この設定を映画化ではどのように活かすの
だろうか。                      
 それからジョン・ウーの関係では、以前、1990年代前半に
映画化もされた人気テレビシリーズ“Teenage Mutant Ninja
Turtles”をオールCGIで復活させるという発表もあった
が、その方はどうなっているのだろう。         
        *         *        
 ついでにもう1本、パラマウントとニッケルオディオンの
話題で、日本でもお馴染みの絵本“Where's Waldo?”(ウォ
ーリーを探せ!)の映画化の計画が発表されている。   
 この作品は、マーティン・ハンフォードが発表している子
供向けのシリーズ絵本に基づくもので、原作は大判見開きに
展開する絵の中から主人公のウォーリーを探すというゲーム
形式になっている。これは、かなり事細かに描かれた絵の中
から主人公を探すことも大変だが、その他にも絵の中にはい
ろいろな情報が描かれていて、それらをヒントに従って探し
出すという楽しみもあるものだ。            
 そしてこの映画化の計画は、昨年の6月頃から報告されて
いたものだが、以前の報道では、脚本を『スモール・ソルジ
ャー』や『マウスハント』のアラン・リフキンが担当するこ
とが紹介されていた。これに加えて今回は、この映画化の監
督に、今年夏に公開されて全米で5,100万ドルの興行成績を
上げた“Like Mike”という作品のジョン・シュルツの起用
が発表されたもので、いよいよ実写による映画化が進められ
ることになるようだ。                 
 ゲーム感覚の原作を、リフキンがどのように脚色している
かも興味津々だが、原作のシリーズは各巻のテーマがそれぞ
れ異なっており、歴史ものやSF、確か1冊は映画がテーマ
のものもあったはずだ。今回はその内のどの巻が映画化され
るのか、またシリーズ化を目指すのかなど、これからの情報
が楽しみだ。                     
 それと、上にも書いているように主人公の名前は、原作で
はウォルド、日本版ではウォーリーとなっており、この辺を
どうするのかも気になるところだ。           
        *         *        
 『ザ・リング』のハリウッドリメイクは成功を納めたよう
だが、それに続いて今度は韓国映画からのハリウッドリメイ
クの話題が相次いでいる。               
 まず1本目は、英語の題名が“My Wife Is a Gangster”
というもので、この作品は、日本語で検索できるサイトでは
『粗暴の女房』という題名で紹介されているようだが、韓国
では2001年の秋に公開されて大ヒットを記録した作品。お話
は、暴力組織の女ボスが、最愛の妹の遺言に応えるために結
婚しなければならなくなり、彼女は何も知らない男を見付け
て結婚に漕ぎ着けるが、男は結婚後に真実を知り、女は結婚
後に本当に彼を愛していることに気付く、というラヴコメデ
ィ仕立ての作品のようだ。               
 そしてこの作品の再映画化権が、『ザ・リング』の製作に
も関ったロイ・リーとダグ・デイヴィスンが主宰するヴァー
ティゴという会社を通じてミラマックスにもたらされ、同社
では“Serendipity”の脚本家のマーク・クレインと契約し
て、ハリウッド版の脚本を執筆させるということだ。なお、
ヴァーティゴは、リメイク版の製作も担当することになって
いる。またミラマックスでは、オリジナルの韓国映画のアメ
リカ配給権も100万ドルで獲得しているそうだ。      
 もう1本は、英語の題名が“Marrying the Mafia”とい
うもので、この作品は検索サイトでは見つからなかったが、
こちらはワーナーがリメイク権を獲得している。      
 お話は、弁護士の男が一夜の相手を見つけるが、その女は
マフィアのボスの娘で、男は彼女と結婚するか、抹殺される
かの選択を迫られるというもの。上の作品とよく似た題材の
ようにも思えるが、この作品もヴァーティゴの仲介でワーナ
ーとの契約が結ばれた。                
 因に、韓国映画のリメイク権は、今年だけで5作品の契約
が結ばれているということで、ワーナーではこの他に、日本
でも話題になった“Il Mare”のリメイク権を先に契約して
いるということだ。                  
 また、韓国だけでなく、香港映画の“Hitman”のリメイク
権がワーナーと契約されており、さらにタイ香港合作で、ダ
ニー&オキサイド・パン兄弟監督の“The Eye”は、トム・
クルーズ主宰のクルーズ/ワグナーが映画化権を獲得。パラ
ウントでのリメイクが計画されているそうだ。      
 日本映画だけでなく、アジア映画の才能をハリウッドが注
目し始めているということだ。             
        *         *        
 続いては、前回“The Phantom”のリメイクに関ることを
紹介した脚本家のスティーヴン・E・デ=スーザの情報で、
彼が執筆した“Blast!”という脚本が、“Hellraiser III”
のアンソニー・ヒコックスの監督で映画化されることが発表
された。                       
 デ=スーザは、1988年『ダイ・ハード』の脚本で一躍注目
され、その後は1994年『ストリート・ファイター』で監督デ
ビューを果たすなど活躍したものだが、最近はあまり名前が
聞かれなかった。そのデ=スーザの復活が始まった訳だが、
今回発表された作品は、『ダイ・ハード』のオイル・リグ版
と言われているもので、彼お得意のスペシャル・イフェクト
満載のアクションムーヴィとなりそうだ。        
 主演は、先にユニヴァーサルから公開された“Undercover
Brother”でブレイクしたエディ・グリフィン。撮影は今月
中に南アフリカで開始され、製作費は2,000万ドルが計上さ
れている。                      
 なお、この作品の製作はMPCA(Motion Picture Corp.
of America)という会社で行われているが、同社ではキュー
バ・グディングJr.主演による“Boat Trip”というコメディ
作品の公開が、来年3月にアーチザンから予定されており、
また“American Pie 2”のデイヴィッド・スタインバーグの
脚本で“Barely Legal”というティーンズコメディの撮影も
完了しているということだ。              
 一方、主演のグリフィンは、彼自身の脚本、主演によるコ
メディ作品“My Baby's Mama”が、ミラマックスの製作で、
来年公開が予定されているそうだ。           
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 『スパイダーマン』を製作したローラ・ジスキンが、オス
カー受賞者の特撮マン、スタン・ウィンストンと組んでファ
ンタシー映画を製作する計画が発表されている。この作品は
“Me and My Monster”という題名で、ウェブサイトなどで
展開する“Greg the Bunny”という作品のクリエーター、ダ
ン・ミラノと、“Playing Mona Lisa”の監督を手掛けたマ
シュー・ホフマンの脚本を映画化するもの。お話は、子供時
代に普通でない怪物と友情を結んだ少年が、大人になって彼
の人生を変えて行くというもので、ウィンストンは、製作だ
けでなく怪物の創造者としての出演も考えられているという
ことだ。製作はコロムビア。なおウィンストンはすでにホラ
ー映画などの製作を手掛けたことがある。        
 1966年にマイクル・ケインとシャーリー・マクレーンの共
演で映画化された“Gambit”(泥棒貴族)のリメイクがユニ
ヴァーサルで進められている。お話は、美しい女性が大金持
ちの家にあるお宝を盗み出す計画を立て、大金持ちに接近す
るが…。この後、どんでん返しが何度も登場するというコメ
ディ作品。実は、当初はヒュー・グラントの主演で、ジョエ
ル&イーサン・コーエン兄弟の脚本によるリメイクが予定さ
れていたものだが、現在はその線は無くなっているようで、
代って“Igby Goes Down”という作品を監督したバー・ステ
ィールスが、脚本のリライトと監督のために7桁($)の契
約を結んでいる。ただしスティールスは、コーエン兄弟の脚
本を尊重して監督する気持ちだそうだ。         
 ワーナーからまたまたスーパーヒーローものの計画で、ワ
ーナー傘下のDCコミックス発行の“Ball & Chain”という
作品の映画化が発表されている。といってもこの作品、実は
離婚したカップルが、2人一緒でなければスーパーパワーが
発揮できないという設定で、ちょっと捻ったロマンティック
コメディのようだ。コミックスの原作者のスコット・ロブデ
ルが映画化の脚色も手掛けている。           
 俳優のアンディ・ガルシアが監督デビューする計画が発表
されている。作品の題名は“The Lost City”。キューバの
首都ハヴァナの黄金時代を背景にしたもので、脚本はキュー
バ出身の作家G・カブレラ・インファンテが自身の複数の小
説を元に脚色したものだそうだ。ガルシアは主演もし、共演
者には、ロバート・デュヴォール、ダスティン・ホフマン、
ベネチオ・デル=トロ、ベンジャミン・ブラットらの名前が
挙がっている。配給は未定だが、製作費の2,000万ドルは、
すでにロサンゼルスにあるプラティナムという会社の全額出
資が決っており、撮影準備は万端整っているようだ。なお、
ガルシアはここ10年ほどキューバ音楽を題材にしたドキュメ
ンタリー作品の監督を続けており、正しく満を持しての劇映
画監督デビューとのこと。そしてその作品として、どうして
もこの物語が撮りたかったのだそうだ。         
 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリ
アーの監督でニコール・キッドマンが主演し、来年のカンヌ
映画祭でのプレミア上映が予定されている“Dogville”が、
3部作になることが発表された。この作品は、アメリカの小
さな町に現れたキッドマン扮する女性が、地元の人々の先入
観を覆して行くという物語で、キッドマンはすでに同じ役で
後2作に主演することを了承しているということだ。そして
第2部は“Mandalay”という題名で来年8月の撮影が予定さ
れているが、この予定は、キッドマンが次回作の“The Step
ford Wives”と、その次の“Birth”の撮影を終了した後と
いうことで、しっかりと1年間の予定が立っているようだ。


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井口健二