井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2002年11月16日(土) Sweet Sixteen、エルミタージュ幻想、トランスポーター、24アワー・パーティ・ピープル、ボーン・アイデンティティー

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/) ※
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『Sweet Sixteen』“Sweet Sixteen”    
『ブレッド&ローズ』『ナビゲーター』に続いて今年3本目
のケン・ローチ監督作品。00年、01年ときて、本作は02年の
作品だ。                       
スコットランドの小さな町に住むリアムは15歳。天文観測と
サッカーの好きな少年だが、学校は自主退学し、親友のピン
ボールと共に町で煙草を売って金を稼いでいる。母親は刑務
所に収監中で、2カ月後の彼の16歳の誕生日の前日に出所す
る予定だ。                      
彼の夢は、母親と平穏な暮らしをすること。そのために彼は
いろいろな手立てで資金を集めようとする。そして狙ったの
が母親の愛人で粗暴な男スタンの隠し持つドラッグ。リアム
とピンボールはまんまとそれを盗みだし、売り捌いて母と住
む家の購入の頭金を作る。               
しかし、勝手に商売を始めた少年たちに町のボスが目を付け
る。ところがボスの前に引き出されたリアムは、逆にボスに
気に入られ、やがてピザ配達を隠蓑にしたドラッグ商売で売
り上げを伸ばして、2カ月の間に大金を稼ぐ身分になるのだ
が…。                        
社会の底辺で暮らす人々を好んで描くローチ監督だが、この
少年の壮絶な生き方、そして母親に捧げる愛情の深さ、しか
しそれを裏切る母親の姿。また聡明でありながらシングルマ
ザーの主人公の姉と母親との確執、ピンボールの屈折した友
情など、キャラクターも鮮明で、これこそドラマという感じ
がした。                       
成り上がりのちんぴらが、結局、馬鹿をやって破滅して行く
のは、この手のドラマの定石ではあるが、本作では主人公の
心情が痛いほど理解できて、さすがカンヌで脚本賞を受賞し
ただけのことはあると感じた。             
なお、台詞は強いスコットランド訛りで、英語のはずなのに
聴いていてもほとんど理解できない。カンヌで上映されたと
きにはイギリス映画に英語の字幕が付いたということで、本
国での上映の際にも、字幕を付けるかどうかで論議がされた
そうだ。                       
                           
『エルミタージュ幻想』“Russian Ark”         
サンクト・ペテルブルグのエルミタージュ美術館を舞台に、
そこで起きたいろいろな歴史的な出来事を再現した映像オデ
ッセイ。しかもこれを90分ワンカットという荒技で作り上げ
ている。                       
全く予備知識なしで観てしまったのだが、最初はロシア語の
なんとも気怠い感じのナレーション(監督のソクーロフが入
れたもので、カメラも彼の目となっており、全ては一人称で
語られる。)が、ちょっとうっとうしい感じだった。しかし
徐々に作品の意図しているところが判り始めてからは、結構
面白く見られた。                   
といってもロシアの歴史をよく知らないので、そこで起きて
いる出来事の意味が全部理解できている訳ではないのだが、
それでもエカテリーナ大帝や、ピョートル大帝などという名
前が出て来ると、なるほどと思ってしまう。       
そして再現された舞踏会など、出演者は総勢2,000人。これ
が全員コスチュームを着け、90分ワンカットの中で入れ替わ
り立ち替わり演技をするのだから、そのなんと言うか壮大さ
みたいなものは良く感じられた。            
ライトのせいで、せっかくの絵画がよく見えないのがちょっ
と残念だったが、本当の一発勝負でこれをやり遂げた人々の
意気は感じられるし、巨大な実験映画としては評価したいと
思った。結末もちょっと面白かったし。         
                           
『トランスポーター』“Le Transporteur”        
リュック・ベッソン脚本、製作によるフランス製アクション
映画。                        
主人公は、依頼されたものは何でも確実に運搬する運び屋。
BMWを華麗なドライヴィング・テクニックで疾走させ、銀
行強盗をパトカーの追跡を振り切って逃走させたり、多少や
ばいものでも、中身を見ずに運ぶのが信条だったのだが…。
ある日、依頼されたバッグの運搬で、気になった主人公は中
を見てしまう。そこには若い女が手足を縛られ入っていて、
それを見たことから、彼の運命が変わり始める。     
フランス製のアクション映画が面白くなってきたことは以前
にも書いたが、本作でもカーアクションから、クンフーアク
ション、爆破アクションまで、90分程度の中によくもまあ詰
め込んだと思うくらいに、次から次にいろいろなアクション
が繰り出されてくる。                 
一つ一つを取ってみれば、どこかで見たようなものばかりか
も知れないが、それでもこれだけサーヴィス精神旺盛に見せ
てくれると、それだけで満足できる感じだ。       
なお、映画の台詞は大半が英語で、フランス映画なのにちょ
っと変な感じだが、主人公はフランス在住のイギリス人とい
う設定で、調べに来る刑事はそのために英語を喋っていると
いうこと。またヒロインは中国人で彼女も英語を話すが、刑
事が部下に命令するシーンはフランス語になっているし、ヒ
ロインが父親と話すシーンは中国語という具合で、一応不自
然ではないようだ。                  
                           
『24アワー・パーティ・ピープル』          
               “24 Hour Party People”
70年代後半から90年代に懸けてのマンチェスターの音楽シー
ンを描いたドキュドラマ。               
中心となる登場人物のトニー・ウィルスンは、ぶっつけ本番
のハンググライダー体験などのレポートするマンチェスター
のローカルテレビ局グラナダの体当たりレポーター。   
そのウィルスンが、観客が42人しかいなかったという、76年
6月4日にマンチェスターで行われたセックス・ピストルズ
のデビューライヴに参加したことから、マンチェスターの音
楽シーンに一大ムーヴメントが起きる。         
彼は新しいロックの可能性を追求するために、伝説のライヴ
ハウス・ファクトリーを皮切りとして、ファクトリー・レコ
ードや巨費を投じたライヴハウス・ハシエンダなどを次々に
展開し、マンチェスターの音楽シーンをリードしていったの
だ。                         
映画は、その発端から、91年のハシエンダ閉幕までをドキュ
メンタリータッチで追って行く。夢みたいな物語だが、これ
は全て真実に基づいているということだ。因に、ウィルスン
は現グラナダテレビの社長で、今だにライヴハウスを潰した
りしているようだ。                  
監督は、97年のカンヌでパルムドールに輝いた『ウェルカム
・トゥ・サラエボ』などのマイクル・ウィンターボトム。 
その演出は巧みで、突然ウィルスン役の俳優にカメラに向か
って話させたり、当時のライヴのシーンなどは多分フェイク
なのだろうが、わざと画質を落としたり、ヴィデオからの変
換のように見せたりして、ドキュメンタリーの雰囲気を見事
に演出している。                   
僕は、当時の音楽シーンのことなどは全く知らないが、ライ
ヴのシーンの演奏などはフェイクとは思えない迫力があり、
結構楽しめた。                    
                           
『ボーン・アイデンティティー』“The Bourne Identity”
元脚本家でミステリー作家となり、昨年1月に他界したロバ
ート・ラドラム原作の映画化で、ラドラム自身が製作総指揮
を勤めた作品だ。                   
大荒れの地中海で漁船が背中に銃弾を受け、海を漂流してい
た男を救出する。男は自分の名前を思い出せなかったが、男
の尻にはレーザーでスイス銀行の貸金庫の番号を描き出す装
置が埋め込まれていた。                
男は記憶喪失のままスイス銀行に行き、貸金庫を開く。そこ
には巨額の各国紙幣と名前の違う6通の各国の正規のパスポ
ートが保管されていた。男は次に領事館に向かったが、そこ
に追手が迫り、男は偶然居合わせた女と共に、パスポートに
記載されていたパリの住所へと向かう。         
実は男は、CIAで訓練を受けた暗殺者で、アフリカの独裁
者の暗殺を目論んだが失敗。このため失敗を隠そうとするC
IAに命を狙われることになるが、彼は訓練によって意識せ
ずに動き出す身体能力と知識で窮地を切り抜けて行く。  
この主人公を、『グッド・ウィル・ハンティング』でオスカ
ー脚本賞を獲得した若手俳優のマット・デイモンが演じる。
何しろリアルと言うか、ワイアー・アクションのない格闘シ
ーンを久しぶりに観たという感じだ。こういう格闘シーンは
ちょっと前だとスティーヴン・セガール辺りがやっていたも
のだが、これを若いデイモンがやってみせるというのも見所
といえそうだ。                    
それに、カーチェイスも派手な激突シーンなどはほとんどな
くて、ミニクーパーがパリの狭い路地を巧みに抜けて追手を
捲いて行く面白さ。ハリウッド映画とはかなり違う、ヨーロ
ッパスタイルのスパイドラマという感じだった。     



2002年11月15日(金) 第27回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回もリメイクの情報から紹介しよう。        
 まずは、以前から計画されていた75年製作のパラマウント
作品“The Stepford Wives”(日本未公開)の再映画化に、
ニコール・キッドマンの出演が発表されている。     
 この作品は、『ローズマリーの赤ちゃん』などのアイラ・
レヴィン原作の映画化で、内容は、郊外の町に引っ越してき
た一家の妻が、町の様子の異常さに徐々に気付いて行き、町
の謎に迫って行くというもの。75年の映画化では、イギリス
出身のブライアン・フォーブスが監督、『卒業』や『明日に
向かって撃て!』などのキャサリン・ロスの主演で、脚色は
『明日に…』のウィリアム・ゴールドマンが担当していた。
 そしてその後この作品は、80年以降のテレビで“Revenge
of the Stepford Wives”“The Stepford Children”
“The Stepford Husbands”という続編が3本も作られる程
の長い人気を保っている。因に最後の作品は、ルイーズ・フ
レッチャーらの出演で96年に製作されたものだ。        
 オリジナルはサスペンスタッチで作られていて、キッドマ
ンにとっては『アザーズ』や、途中降板した『パニックルー
ム』の系統を期待したいところだが、実は今回の映画化は、
監督が元マペッツで、『リトル・ショップ・オブ・ホラー』
などのフランク・オズになっており、ブラックコメディの色
を濃くした作品にするということだ。          
 なお、キッドマンは来年1月に撮影開始予定の“Birth”
という作品の次に本作に入ることになっている。因に、先行
する作品は、35歳の女性が10歳の少年から恋を打ち明けられ
るが、その少年は彼女の死んだ夫の生まれ変わりを主張し、
彼女と夫との過去の出来事を語り始めるというもの。ニュー
ライン傘下のアート作品ブランド、ファインラインで製作さ
れる作品だが、同ブランドでは過去最高の2,000万ドルの製
作費が計上されているという作品だ。          
        *         *        
 お次は人気コミックスの映画化で、“The Phantom”。  
 原作のコミックスは、1936年2月17日にスタートした最初
のコスチュームヒーローと呼ばれている作品で、この後の、
38年スタートの『スーパーマン』や、39年の『バットマン』
の誕生の元になったとも言われている。特に『バットマン』
については影響が強いと言われているようだ。      
 また、物語の紀元も古く、初代のファントムは、元はアメ
リカを発見したコロンブスの部下で後に海運で成功したサー
・スタンディッシュという人物の息子というのだから、400
年以上の歴史の描かれた作品ということになる。     
 なお、設定では、父親と共にインド洋を航海中に海賊に襲
われ、唯一人の生き残りとなった息子のキットが、ピグミー
族の助けを借りて神秘の森の奥深くに基地を設け、そこから
世界の悪との戦いを繰り広げるというもの。従って本人は普
通の人間で、その使命は代々引き継がれているのだが、コス
チュームで素顔を隠しているために、一般には不死身のヒー
ローと思われているという物語だそうだ。        
 そしてこの原作は、43年に15巻の連続活劇として最初の映
画化がされているが、実は、96年にパラマウントの製作で、
サイモン・ウィンサー監督による長編映画化もされている。
 この96年版は、『メンフィス・ベル』などのビリー・ゼー
ン主演、共演者にはキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ケリー
=ヒロユキ・タガワ、サマンサ・エッガー、パトリック・マ
ッグーハンの名前が並んでいるという大変な作品だったのだ
が、ガイドブックの紹介では、「『インディ・ジョーンズ』
の流れを狙ったが、スタントなども中途半端で、お金の掛け
方で失敗した」と言われているものだ。         
 その作品がリメイクされる訳だが、今回の計画は、前の映
画化とは全く関係のない新たな計画として進められているも
ので、脚本には『ダイ・ハード』などのスティーヴン・デ=
スーザが契約、製作は、MGM及びディズニーと業務提携し
ているハイド・パークが行う。なお同社の首脳は、「子供の
頃から原作のファンだったが、前の映画化には本当にがっか
りした。今回は、『マトリックス』や『スパイダー・マン』
のような路線を目指す」としている。          
 因に、映画化権はすでに原作コミックスの権利を所有する
会社に戻されており、今回はその会社との契約に基づいて映
画化が行われるものだが、実は共同製作でクルセーダーとい
う会社が参加していて、こちらが前作を製作したパラマウン
トと契約しているということで、アメリカ公開はパラマウン
トが配給することになりそうだ。            
        *         *        
 もう1本はリメイクと呼べるかどうか微妙なところだが、
“Shangri-La”という作品が、ソニー・ディジタル・エンタ
ーテインメントの製作によるフルCGIアニメーションで進
められている。                    
 この作品の具体的な内容については明らかにされていない
が、「シャングリ・ラ」と言えば、ジェームズ・ヒルトンの
原作で映画化もある“Lost Horizon”(失われた地平線)に
登場する理想郷の名前で、その37年の映画化がソニー傘下の
コロムビアで行われていることから、この作品もその流れと
いうか、リメイク、若しくは続編のような作品ではないかと
言われているようだ。                 
 ところがここにきて、この作品の脚本に、『ワイルド・ス
ピード』のゲイリー・スコット・トムプスンの起用が発表さ
れた。確かに原作の要素の一つは秘境冒険ものだから、アク
ション作品として映画化することは可能とは思うが、原作に
描かれているシャングリ・ラは、争いのない理想郷というこ
とになっていて、あまりアクションという雰囲気ではない。
それでこの脚本家の起用は一体何を意味するのか、かえって
注目を集めているようだ。               
 因に、37年版はフランク・キャプラ監督の名作だが、オリ
ジナルの2時間12分(Variety紙の記録では2時間5分)と
いう上映時間は当時としては破格のもので、このため一時は
再編集された短縮版が配給されたために、現在、完全なフィ
ルムは保存されていないのだそうだ。これに対して、最近、
失われたフィルムの一部が発見されて復元が行われたようだ
が、それでも未だに一部は、残っていたせりふの音声とステ
ィル写真で補ったものになっているということだ。    
 また、73年にはハル・デイヴィッド、バート・バカラック
の作詞作曲による2時間23分のミュージカル版も作られてい
るが、物語と映像はともかく、音楽の面であまり評価はされ
ていないようだ。                   
        *         *        
 前回、アンジェリーナ・ジョリー主演による“Bitten”と
いう作品を紹介したが、続けてウェアウルフ(狼人間)もの
の話題が届いている。                 
 今回の作品は、ウェス・クレイヴン監督の計画で、『スク
リーム』の脚本家ケヴィン・ウィリアムスンと再びチームを
組む“Cursed”というもの。製作は、『スクリーム』のディ
メンションで、同社の発表では、来年8月8日の公開日を決
定済み、シリーズ化も目指すそうだ。          
 なお計画は、ディメンションの共同経営者のボブ・ウェイ
ンスタインと、クレイヴン、ウィリアムスンが話し合ってい
るときに生まれたもので、彼らはここ数年、新たなホラー映
画の企画を検討して、幽霊ものや、連続殺人鬼ものなどと話
し合っているうちに、あるときウェインスタインが「ずっと
狼人間ものが好きだった」と発言すると、ウィリアムスンが
「それなら今すぐに企画を提出できる」と答え、届けられた
企画を見て直ちにゴーサインを出したということだ。   
 なお作品は、「『スクリーム』と同様に第1に恐がらせる
ことを目的としたものだが、その上お楽しみも一杯詰まって
いる」ということで、特に「スペシャルエフェクトを駆使し
て、今までの観客が見たこともないような映像を展開、今ま
での作品とは違った捻りのある作品をお見せする」というも
のだそうだ。                     
 ということで、来年8月公開を目指して年内にも撮影が開
始されるようだが、実はクレイヴンの計画では、この時期に
は黒沢清監督の『回路』をリメイクする“Pulse”の計画も
発表されていた。しかし前回報告したように主演をオファー
されていたキルスティン・ダンストが出演しないことが判明
し、その上今回のクレイヴン側の発表で、『回路』のリメイ
クの計画は当分お預けということになりそうだ。     
        *         *        
 アメリカでは今年が中間選挙の年ということで、これから
2年後の大統領選挙に向けて政治のシーズンの開幕だが、こ
の時期を狙って大物スターによる政治家を主人公にした作品
の計画が目立ってきている。              
 そんな中で、76年の『大統領の陰謀』で共演したロバート
・レッドフォードとダスティン・ホフマンが相次いで政治家
を主人公にした映画に主演する計画が発表されている。  
 まずはロバート・レッドフォードで、72年に製作主演した
“The Candidate”(候補者ビル・マッケイ)の後日談を描
く計画が発表されている。具体的な内容は明らかにされてい
ないが、オリジナルで上院議員を目指し、メディアを活用し
た選挙戦を繰り広げたマッケイのその後を描くものというこ
とだ。レッドフォードは同じ役での製作主演と、監督も担当
することになっている。製作はワーナー。        
 一方、ホフマンの主演作は、“Mooseport”という作品。
 こちらは、前大統領の主人公(ホフマン)が引退後に東海
岸の小さな町に引っ越してくるが、その町の市長の席が空席
だったことから、周囲の期待を集めてしまうというもの。そ
して対抗馬には、今年のエミー賞を受賞したレイ・ロマーノ
扮する地元の商店主が立候補するのだが…、というコメディ
タッチの作品のようだ。『いまを生きる』のトム・シュルマ
ンの脚本で、監督はロッド・ルーリィ。製作は“T3”も手掛
けているインターメディアで、配給はこれから交渉されると
いうことだ。                     
        *         *        
 カートゥーン・ネットワークで人気の“Johnny Bravo”と
いう30分アニメーションシリーズの実写による映画化権をワ
ーナーが獲得し、これを『スコーピオン・キング』が好調の
ザ・ロックこと、ドウェイン・ジョンスンの主演で検討して
いることが発表された。                
 元々カートゥーン・ネットワークとワーナーは協力関係に
ある会社ということで、すでに両社の間では『パワーパフ・
ガールズ』の劇場版も製作公開されているが、実写映画化を
共同で進めるのはこの作品が初めてになるということだ。因
に、この夏の大ヒット作『スクービー・ドゥ』もカートゥー
ン・ネットワークで放送されていたものだが、この映画化は
ハナ=バーベラの権利に基づいて行われたもので、ネットワ
ークは映画の製作にはタッチしていなかった。      
 そして今回計画されている“Johnny Bravo”は、97年にス
タートしたカートゥーン・ネットワーク製作のオリジナル番
組で、最も成功した看板番組だそうだ。内容は、エルヴィス
・プレスリー似で筋骨隆々、そして母親を愛するフェミニス
トの主人公が、彼を狙う悪と対決するという一種のヒーロー
ものだが、実はジョンスン自身が以前から大ファンだったと
いうことで、今回は彼の希望で映画化が進められているとい
うことだ。                      
 なおジョンスン主演では、『ハムナプトラ2』『スコーピ
オン・キング』に続いて、新作の“Helldorado”もユニヴァ
ーサルの製作で、その間にはコロムビアで企画された“King
Kamehameha”も立ち消えになるなど、ユニヴァーサルの専
属のような感じになってきていたが、思わぬ方向から突破口
が開けることになりそうだ。              
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 『ザ・メキシカン』の脚本家ジョエル・ワイマンと製作者
のジョン・バルディッチのチームで、“R.P.M.”という作品
が計画されている。                  
 題名は自動車などで使われる回転数の意味で、ヨーロッパ
が舞台のカーレースを背景にしたものだが、ちょっとアウト
ローなブッチとサンダンスのような2人組を主人公にしてい
るということだ。なお、映画にはメルセデス、アストン・マ
ーティン、ランボルギーニ、フェラーリなどの名車が続々登
場し、舞台はロンドン、モナコ、パリ、そしてドイツに跨が
るそうだ。来年早々に準備を開始して、撮影は来年5月開催
のモナコ・グランプリで、挿入シーンの撮影から始めるとし
ている。                       
 監督は『トゥームレイダー』のサイモン・ウェスト。製作
はコロムビアで、同社では、04年夏に公開される“The Ama
zing Spider-Man”と並べる作品にしたいようだ。     
        *         *        
 好調なスタートを切ったハリウッド版『ザ・リング』の脚
色を担当したアーレン・クルーガーがユニヴァーサルと契約
し、2作品の計画が発表されている。          
 その1本目は“Skeleton Key”という題名で、20代の女性
を主人公にしたゴシックホラーもの、『ザ・リング』の流れ
を汲む作品のようだ。『光の旅人』のイアイン・ソフトリー
の監督が期待されている。               
 そしてもう1本は、“The Talisman”。スティーヴン・キ
ングとピーター・ストラウブ共作による少年が主人公の異次
元世界を巡るファンタシー小説の映画化で、数年前からステ
ィーヴン・スピルバーグの監督作品として計画されているも
のだ。すでにいろいろな脚本家が参加しても完成に至らなか
ったが、今度こそクルーガーの手腕に期待したい。    
        *         *        
 『ウエディング・シンガー』をヒットさせたドリュー・バ
リモアとアダム・サンドラーのコンビ再会による新作が、コ
ロムビアで計画されている。              
 題名は“Fifty First Kisses”というもので、短時間の
記憶しかもてない女性と、彼女に恋してしまった男の物語。
彼女がすぐに記憶をなくしてしまうために、いつも最初の出
会いから始めなくてはならないという、ちょっと切ないロマ
ンティック・コメディだ。                
 サンドラーとバリモアは製作も担当しており、製作状況は
ジョージ・ウィングという人のオリジナル脚本から、現在ロ
ーウェル・ガンツとババルー・マンデルがリライト中。ただ
し監督は、当初はジェイ・ローチが発表されていたが、彼が
降板したために新たな監督を選考中だそうだ。      
 なお、バリモア主演の『チャーリーズ・エンジェル』の新
作は、“Charlie's Angels 2: Full Throttle”の題名で、
すでに撮影を終了したようだ。             
        *         *        
 『ビューティフル・マインド』のロン・ハワードの次回作
がようやく決定したようだ。              
 今回、発表された作品は、映画の題名は未定だが、トーマ
ス・エジソンという作家の“The Last Ride”という長編小
説を映画化するもので、内容は女性を主人公にした西部劇。
時代は1886年で、主人公の女性は、無法者たちに誘拐された
娘の救出のために、長く疎遠だった父親と協力することにな
る、というもの。そしてこの主人公と父親を、ケイト・ブラ
ンシェットとトミー・リー・ジョーンズが演じることになっ
ている。脚本は、ジョーンズが出演した『スペース・カウボ
ーイ』のケン・カウフマン。製作はリヴォルーションで、来
年3月の撮影開始予定が発表されている。        
 なおハワードの計画で、先に紹介した“The Serpent and
Eagle”は、本作の後で監督する予定だということだ。   
        *         *        
 最後に、キネマ旬報の記事でちょっと気になることがあっ
たので、一言、書かせてもらう。            
 11月下旬号の「幻の映画」の特集の中で、岡本喜八監督の
『日本アパッチ族』についてクレージー・キャッツ主演とあ
るが、これにはちょっと疑問を感じた。実際このときの脚本
は、当時の雑誌に掲載されたものを読んでいるが、どちらか
というと、社会派のシリアスなもので、クレージーが主演す
るような雰囲気のものではなかった。          
 そこで、この経緯について原作者の小松左京氏に聞いたこ
とがあるが、小松氏の発言では「脚本が意に沿わなかったの
で映画化をストップさせた」ということだった。しかし同時
にSF作家の平井和正氏に脚色の依頼をしたということで、
その依頼した内容が「クレージー・キャッツが主演するよう
な作品」だったというのだ。              
 従って小松氏の発言からすると、クレージー・キャッツ主
演の『日本アパッチ族』という企画はなかったようにも思え
るのだが、どうなのだろうか。             
 なおこの話には、平井氏への依頼が多忙のため断念され、
その結果、『日本アパッチ族』がなるはずだった日本人プロ
パーのSF作家原作による映画化の第1号が、平井氏の『狼
の紋章』になったというおちがつく。              



2002年11月04日(月) 東京国際映画祭(後)

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※このページでは、東京国際映画祭の上映映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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(コンペティション部門)               
『恋人』(中国)“天上的恋人”            
中国南部の山岳地帯を舞台にした恋愛映画。       
大きな赤いバルーンが飛来し、それに驚いた老人が銃を暴発
させて失明してしまう。そしてたまたまそこに居合わせたヒ
ロインが犯人呼ばわりされるが、彼女は口が利けないために
言い訳ができない。                  
ところが老人の息子は村人の意見は意に解さず、彼女を妹と
して家に引き入れる。実は彼は耳が聞こえず、こうして目の
見えない老人と、口の聞けない女性と、耳の聞こえない男性
という奇妙な一家の生活が始まる。           
と書くと、かなり不思議な物語に聞こえるが、物語自体は、
これに村の人気者の女性と、ちょっと不埒な青年医者が絡ん
で、どちらかというと真っ当な恋愛ドラマが展開する。  
それにしても、中国の山岳地帯というのは、以前に『山の郵
便配達』という作品もあったが、その風景だけで何か心洗わ
れるような雰囲気があり、それを見ているだけで充分という
感じがする。                     
そんな風景の中での素朴な恋愛ドラマ。殺伐とした不況日本
に暮らすものにとっては、憧れ以外の何物でもない。   
                           
『荒野の絆』(アメリカ)“Skins”           
第11回の東京国際映画祭に『スモーク・シグナル』が出品さ
れたクリス・エア監督の第2作。今回も前作と同様、現代に
生きるインディアンの生活を扱った物語だ。       
主人公は2人兄弟の弟。兄はヴェトナム戦争に従軍し、帰国
後は酒浸りの生活になっている。しかし酒浸りは兄だけでな
く、インディアンに共通する問題のようだ。そして弟は、警
官で、兄の様子を心配しながらの勤務を続けている。   
そんなある日、一人の酔っ払いが暴漢に襲われて死亡、その
犯人を追った弟は岩に躓き頭を打つ。しかしその時から、彼
の中で何かが変る。そして偶然犯人を見つけた彼は、犯人を
襲い、彼らが自首せざるを得ないようにしてしまう。   
さらに、テレビの報道で酒屋が悪いと知った彼は、酒屋に放
火。ところがその酒屋に盗みに入ろうとしていた兄が大火傷
を負ってしまう。火傷自体は何とか治療されるが、同時に長
年の酒浸りの生活が、兄の余命をほとんど奪っていることを
知らされる。                     
岩に宿った精霊が彼に犯行を重ねさせているのかどうかは、
実は映画の中では明らかにされていないのだが、まあそう考
えると一番話の辻褄は合う感じがした。         
社会の底辺に暮らす人々のこのような生活は、インディアン
に限られるものではないと思うが、インディアンに保護が行
き届いていないのは事実のようだ。           
なお、今回監督は来日しなかったが、第11回の時のティーチ
インで「自分はインディアンと呼ばれるのが一番しっくりく
る」と発言していたので、この記事でもインディアンという
表記を使った。                    
                           
『ブロークン・ウィング』(イスラエル)        
                  “Knafaim Shburot”
イスラエルのハイファを舞台にした家族再生ドラマ。   
主人公は17歳で男女の双子の片割れの女性。兄弟は他に幼い
弟と妹がおり、父親はなく母親は助産婦として働いているが、
生活は豊かではない。双子の男子は登校拒否で閉じ込もりに
近い状態になって、いつもネズミの着ぐるみを着て生活して
いる。
そして彼女は歌手を目指しバンドに参加しているが、そのバ
ンド活動も家事のために思うように行かない。      
ところがある日、彼女が妹を迎えに行かなかったために、代
りに行った幼い弟が大怪我で意識不明の重体になる。これを
きっかけに母親と罵りあった主人公は家出し、彼女の歌に興
味を持っていると連絡のあったテル・アヴィヴのレコード会
社へと向かう。結局、彼女には父親の死について負い目があ
り、それを詩にして歌うことで自分自身に相対することがで
きるようになる。そして家へと帰って行く。       
まあ、ちょっと普通ではない部分もあるが、大体のところは
どこの国にもある家族の危機と、そこからの再生の物語だろ
う。ただ、これがイスラエルの作品だというところがどうし
ても引っ掛かる。何しろ映画の中ではパレスチナのパの字も
出てこないし、全く平和な風景が展開しているのだ。   
もちろんイスラエルだからと言って、いつも戦争の話をして
いる訳ではないし、逆に言えば、そんな環境の中でもこれだ
けの作品を作れるということに感心した。        
                           
『シティ・オブ・ゴッド』(ブラジル)“Cidade de Deus”
リオ・デ・ジャネイロ郊外にあるスラム街「神の街」を舞台
にしたドラマ。1960年代から80年代に亙る街のちんぴらギャ
ングたちの抗争の歴史が描かれる。           
最終的に写真家を目指すことになる少年の目を通して、3代
に亙るギャングのボスたちの姿が描かれるが、これらがすべ
て20代に行くか行かないかの若者の話というのが凄い。それ
こそ10歳にも満たないような子供たちが拳銃を持ち、大人を
襲うのだ。                      
「神の街」は平地にあり、『黒いオルフェ』や『ガール・フ
ロム・リオ』に描かれた山側のスラム街とは違うようだが、
原作は、そのスラム街に10歳から9年間暮らした人が書いた
小説だそうで、解説によると全て実話に基づいているという
ことだ。                       
映画は、2時間10分の大作だが、いくつかのエピソードに分
けてストーリーを明確にし、また、ラッシュバックを多用し
た編集も巧みだし、同じシーンを別角度で撮ったり、あるい
は人物の回りをカメラが一周したりといったテクニックを駆
使して、長丁場を飽きさせない。            
出演者たちは、すべてスラム街でオーディションした素人と
いうことだが、かなりドキュメンタリータッチで描かれてい
るので、演技力と言うより演出力でカヴァーしている感じだ
が、それでも拳銃などの使い方が巧みなのは、ちょっと恐ろ
しい感じもした。                   
この作品もアウト・オブ・コンペティションになってしまっ
たが、特にこの作品とイランの作品は、もったいない感じが
した。                        
                           
(特別招待作品)                   
『ゴジラ×メカゴジラ』                
今年も東宝正月怪獣映画の初披露が行われた。      
今回の作品は、2000年度作品を手掛けた手塚監督の下、主演
の闘うヒロイン釈由美子が、バイオメカで建造されたメカゴ
ジラを駆使して、ゴジラに挑む作品だ。         
ゴジラ映画での闘うヒロインというと、00年作品の田中美里
が良かったが、今回の釈も負けてはいない、特にエンディン
グで見せる敬礼の姿は、前作の金子作品でのいい加減さで批
判されたのを受けたのか、見事に決まっている。     
特撮は、生物のゴジラはどうしても動きが緩慢だが、対する
メカゴジラの動きの俊敏さが上手く描かれていた。組打ちは
如何せん腕が短いのでちょっと様にならないが、メカゴジラ
はバックパックのロケット噴射で空中を飛び回るなどアクシ
ョンも心地よく、特に空中から品川の運河に着水するシーン
は、水の描き方と共に良くできていた。         
映画では一瞬しか写っていないが、この運河には水際遊歩道
に彫刻まで配されていたのだそうで、その辺の東宝美術のこ
だわりは昔も今も変っていないということのようだ。   
2000年以降のミレニアムゴジラは、毎作ごとにシリーズ第2
作『ゴジラの逆襲』のリメイクという形を取ってきたようだ
が、メカゴジラと釈由美子の登場で、この先の展開がちょっ
と開けてきたような感じもした。            
                           
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』           
      “Harry Potter and the Chamber of Secrets”
東京国際映画祭で初めて行われたスニーク・プレヴューは、
大方の予想通りこの作品だった。            
会場のオーチャードホールに着くと、ワーナーの人たちが出
迎えてくれたから、その時点で決まりという感じではあった
が、前日にロンドンでワールドプレミアがあったばかりだか
ら、これは凄いことだ。前作の時はロンドンからの衛星中継
記者会見をやったし、力の入れようが感じられる。    
物語は紹介するまでもないが、映画を見た感想としては、原
作の暗い部分がかなり消されて、純粋な冒険物語になってい
る感じがした。特に、ホグワーツに向かう前のノクターン横
町の場面などは、ここで原作ではマルフォイ親子の会話を盗
み聴くシーンがあったはずだが、そういったものが全てカッ
トされている。                    
結局、前作では子供向けにしては暗いのではないかという批
評もあったが、今回はその辺が考慮されたのかも知れない。
それと、裏で進む大人側の権力抗争みたいな話をカットする
ことで、子供向けの純粋さを出してきた感じがした。   
それでも上映時間は2時間41分。前作は2時間32分でまた長
くなった訳だが、原作も長くなっているのだからこれは仕方
がない。でもこの調子で、『炎のゴブレット』はどうなって
しまうのだろう。                   



2002年11月02日(土) イナフ、ピーター・パン2、スコルピオンの恋まじない、Jam Films

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/) ※
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『イナフ』“Enough”                 
全米No.1ヒットを記録した女優で、同時に全米No.1ヒットを
記録した歌手でもあるジェニファー・ロペス主演のサスペン
ス映画。                       
軽食レストランで働く主人公は、ある日、1輪のバラを持っ
た魅力的な男性客に声を掛けられる。しかしそれは彼女を賭
けの対象にした悪戯で、それを見破った別の客に救われる。
そしてその危機を救ってくれた男性と結婚、その男は彼女が
気に入ったという家を、大金を払って強引に買い取るなど、
彼女のために最高に尽くしてくれたのだが…。      
子供が産まれ、その子に物心が着いた頃に男の浮気が発覚。
それを責めた彼女に、男は突如暴力を振るいだす。    
この事態に、友人たちは警察に行くことを進めるが、子供の
父親を犯罪者にできないと我慢をしてしまう。しかしエスカ
レートする男の暴力に、遂に彼女は子供を連れて家を出、名
前を変えて全米を転々とするのだが、男の手は執拗に彼女を
追いかけてくる。                   
そこでようやく法律事務所に駆け込んだ彼女に弁護士は、す
でに何度もチャンスを逸した彼女に最早打つ手はないと宣言
される。そして恐らくは親権裁判にも勝てないと言われた彼
女は、裁判までの残された1カ月に、昔からの友人と新たな
知人の力を借りて最後の勝負に出る。          
何しろ前半は恐怖映画として中々の出来映えだ。物語を知っ
て見ていると、いつ男が豹変するかという恐怖と、その後は
あの手この手を尽くす男の執拗さなど、物語も演出も良くで
きている。                      
それが後半になると一変、救鼠猫を噛むの展開は、最後に思
わず「やったね」と言いたくなるエンディングで、甘いと言
われれば確かに甘いが、娯楽として見るにはこれでも良いの
ではないかと思えた。                 
                           
『ピーター・パン2 ネバーランドの秘密』       
         “Peter Pan in Return to Neverland”
1953年製作の『ピーター・パン』の続編。        
前作から何年も後の話。ナチスドイツの空襲に怯えるロンド
ンの町でウェンディは暮らしていた。結婚して男女2人の子
供のいる家庭、しかし夫は兵役に取られ、暗く沈みがちな生
活の中で、彼女の語るネバーランドでの冒険の物語は、幼い
男の子の心は捕えるが、年頃になりかかった長女ジェーンの
心には響かない。                   
そんなある日、沈んだ心で窓辺で寝てしまったジェーンは、
突然現れたフック船長と海賊たちに捕えられ、無理矢理ネバ
ーランドへ連れていかれてしまう。そこではピーターとフッ
ク船長が昔通りの戦いを繰り広げており、船長はウェンディ
を囮にピーターをおびき寄せ、海の怪物に始末させようとし
ていたのだが…。                   
一応、ウェンディが後に結婚し、ジェーンという女の子が産
まれ、そこにピーターが現れるという物語は、原作のエピロ
ーグに語られているようだ。しかし今回の映画の物語は原作
とは関係なくオリジナルのもの。            
というより、前半では海賊船がロンドンを飛行する際にビッ
グベンの前を掠めたり、後半では死にかかったティンカー・
ベルを心の力で復活させたりと、原作の物語を巧妙に再話し
ているという感じの作品だ。特にフック船長のワニに代わる
新たな敵、海の怪物のリズミカルな音の出し方は笑えた。 
                           
『スコルピオンの恋まじない』             
          “The Curse of The Jade Scorpion”
ウッディ・アレン監督主演の01年作品。         
舞台は1940年。主人公ブリッグスは損害保険会社のベテラン
調査員。この日も盗まれ絵画を発見して会社に貢献したのだ
が、会社はリストラ計画が進行中で、旧態依然の彼のやり方
は、リストラ担当のキャリアウーマン、ミス・フィッツジェ
ラルドの標的となっている。              
ということで、犬猿の仲の2人だったが、ある日、同僚の誕
生パーティで余興の舞台に上がった2人は、怪しげな催眠術
師によって相思相愛になる術を掛けられてしまう。そしてそ
の催眠術は解かれて舞台を下りたはずなのだが…。    
その夜、ブリッグスに電話が掛り、呪文の言葉を告げられた
ブリッグスは、催眠術師の命じるままに邸宅に忍び込み、宝
石を盗み出してしまう。そして被害の報告を受けた保険会社
は、調査を外部の探偵に発注。ブリッグスは探偵と競って調
査を始めるが。                    
アレンは、この前の『おいしい生活』でも泥棒の話を描いて
いたが、どうやらお気に入りのテーマらしい。そういえば、
監督デビュー作の“Take the Money and Run”(泥棒野郎)
も題名の通り泥棒が主人公だったから、原点回帰と言うとこ
ろだろうか。                     
アレンの主人公は、ちょっと年齢が行き過ぎている感じもす
るが、しょぼくれたバツイチ男を演じられる俳優は、そうた
易く見つかりそうもないし、まあこんなところだろう。  
相手役にヘレン・ハントとシャーリズ・セロン、脇をダン・
エイクロイドが固めており、舞台劇でも行けそうな見ていて
安心感のあるコメディ作品だった。           
                           
『Jam Films』                
日本映画の新鋭と言うか、もうベテランに近い人もいるが、
7人の監督が集まって作ったショートフィルム集。それぞれ
個性あふれる作品ばかりで、それなりに楽しめた。    
北村龍平監督の『the messenger』は、さ迷っている死者に
現実を告げる告知者の話。色調を押さえた映像も、アクショ
ンも、北村らしさが溢れていた。            
篠原哲雄監督の『けん玉』は、偶然手に入ったけん玉に隠さ
れた秘密を巡っての男女の物語。起承転結もしっかりしてい
るし、主演の2人の演技も堅実な感じで面白かった。   
飯田譲治監督の『コールドスリープ』は、人類移住を目指し
た先見隊を巡るSFドラマ。筒井康隆も出ていて、それなり
のものにはなっている。イメージもまずまず。      
望月六郎監督の『Pandora』は、ある女性の秘密と秘密の漢
方薬のお話。結末にもう少し捻りがあっても良かったとは思
うが。麿赤兒の身のこなしや雰囲気が良い。       
堤幸彦監督の『HIJIKI』は、アパートの一室に立て籠った人
質犯と住人一家の物語。セットや出演者の臭い演技も良く。
ブラックコメディとして上手くまとまった作品だ。    
行定勲監督の『JUSTICE』は、高校が舞台の青春ドラマ。教
室では外人教師によるポツダム宣言の朗読が続き、校庭では
女子の体育の授業が行われている。教室の生徒たちは、退屈
な授業を過ごすためにいろいろなことをやっているが…。シ
ョートフィルムとして上手くまとまっていた。      
岩井俊二監督の『ARITA』は、広末涼子を主演にした一人芝
居。いろいろなところに現れるアリタという謎のキャラクタ
ーを巡る物語だが、正直に言って7本の中では一番つまらな
い。テーマもはっきりしないし、だいたい最後に質問するの
はアリタの復活のさせ方だろう。            
この7本に、原田大三郎監督のCGアニメーションによるオ
ープニングがついてる。                
春には、アマチュアと言うか学生さんの短編集を見たが、さ
すがにプロな作品は違うと感じた。まあ中には自分の才能に
溺れた感じの人もいるが。               



2002年11月01日(金) 第26回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は、待望のこの話題から、            
 『GODZILLA』『ザ・リング』に続く日本映画から
のハリウッドリメイクで、大友克洋原作、監督の日本製アニ
メーション『AKIRA』の実写によるリメイクがワーナー
から正式に発表された。                
 監督は、以前から発表されていた『ブレイド』のスティー
ヴン・ノリントン。そして脚本を、ノリントン監督と共に新
作の“The League of Extraordinary Gentlemen”を手掛
けたジェームズ・ロビンスンが担当することになった。因に、
ロビンスンとノリントンの前作は、コミックスが原作となっ
ているが、大元はアニメーションだったということで、その
意味でも良いコンビネーションが期待できそうだ。また、ロ
ビンスンは以前に“Comic Book Villains”という作品を脚
本監督したこともあるようだ。             
 さらにロビンスンは発表の席で、「僕は長年のアニメ(an
ime)ファンで、アニメのいろいろな要素を実写映画で活か
すにはどうすれば良いかずっと考えてきた。その思いをよう
やく遂げることができる」と語っており、アニメに対する思
い入れはかなり激しそうだ。なおこの報道は、米誌の記事で
もanimationではなく、animeと表記しており、これは日本製
アニメーションを特定する言い方になっている。     
 進行状況は、現在はロビンスンがプロデューサー側の用意
した原案を微調整中ということで、それが終われば、いよい
よ脚本の執筆となる。製作は“Superman”の新作も進めてい
るジョン・ピータースが担当している。         
 なお物語は、米誌の報道では、暴走族の少年が、政府の秘
密計画AKIRAのために誘拐された弟を救おうとする。そ
してその過程で、反政府組織や貪欲な政治屋、無責任な科学
者と闘う、と紹介されている。ただし、1988年に公開された
アニメーション作品は、当時はまだ原作が完結していなかっ
たために、本当の結末にはなっていなかったと記憶している
が、リメイク版はどうなるのだろうか。         
        *         *        
 お次は、直接映画の話題ではないが、映画会社も関係する
情報ということで、日本では第4巻の『炎のゴブレット』が
発売されたばかりの『ハリー・ポッター』シリーズで、また
ぞろシリーズが延長されるという噂が流れている。    
 このシリーズに関しては、原作者のJ・K・ローリングが
当初から7巻で完結すると言い切っているのだが、ヒット作
は長く続くことを望むのが人情というものなのだろう、いつ
までたっても延長の噂が絶えない。そして今回は、その題名
として“Harry Potter and the Alchemist's Cell”“Harry
Potter and the Chariots of Light”“Harry Potter and
the Pyramids of Furmat”という具体的な名前まで登場して
きたのだ。                      
 ここで、現在までに4巻が発行されて、プラス3つの題名
なら、全部で7つでいいような気もするが、実は、本来は今
年の7月に発行が予定されて、来年6月に発行延期となって
いる第5巻の題名が、すでに“Harry Potter and the Order
of the Phoenix”と発表されているのだ。従ってこれを加
えると全部で8巻となってしまうという訳で、この辺からシ
リーズ延長という説が出てきたようだ。         
 しかし今回の噂の元となった3つの題名は、実はワーナー
映画がイギリスの特許庁に提出した商標登録ということで、
原作本の題名ではないようだ。つまり原作者の関知しない題
名という訳だが、ではなぜワーナーがこういう題名を提出し
たのかというと、これはたぶん他人にこれらの題名を登録さ
れるのを嫌ったのだろう。しかもこの提出が2000年4月とい
うことは、ちょうど映画の第1作の製作が佳境で、その頃に
先を見越した動きがあったことは想像できるところだ。とは
言えちょっと混乱を産む原因にはなってしまったようだ。 
 もっともワーナーは、当初はシリーズの映画化権を第4巻
までしか契約していなかったとも伝えられているし、作られ
た映画をシリーズ化する権利は映画会社側にも発生するよう
だから、もしかするとそういうための準備だったのかも知れ
ない。従って原作本が7巻で完結しても、映画はもっと続く
という可能性は捨て切れないようだ。          
 なお、映画化の第2作“Harry Potter and the Chamber
of Secrets”の公開は、11月末に全世界一斉で行われる予定
だが、それに続く第3作“Harry Potter and the Prisoner
of Azkaban”の製作は、以前から紹介しているようにアルフ
ォンソ・クアロンの監督で来年春から開始の予定で、その公
開は再来年の夏ということになるようだ。        
 そして第4作“Harry Potter and the Goblet of Fire”
の製作に関しては、まだ具体的には始まっていないが、最近
のクリス・コロンバスの発言では、主演の3人を替えるかも
知れないということも言っているようだ。つまり映画製作が
毎年ではなくなるので、俳優の年齢が合わなくなるというの
が発言の主旨のようだが、シリーズ延長の話も含めてちょっ
と気になるところだ。                 
 と、ここまでの記事を書いたところで、ダンブルドア校長
役のサー・リチャード・ハリスの訃報が届いた。元々全7作
への出演は自信がないとも語っていたが、第2作の撮影中か
ら病状はかなり厳しかったということで、それを踏まえると
上のコロンバスの発言も別の側面を見せ始めるが、とりあえ
ずは第3作へ向けての校長の配役に注目が集まることになり
そうだ。                       
        *         *        
 続いては、第6回でも紹介したユニヴァーサルとミラマッ
クス傘下のディメンションの共同で進められている70年代の
人気テレビシリーズ“The Six Million Dollar Man”(600
万ドルの男)の映画化が、具体化し始めた。       
 今回発表されたのは脚本家で、この脚本にトレヴァー・サ
ンズという若手が抜擢され、しかも監督も任されることにな
りそうだ。                      
 この脚本については、以前ユニヴァーサル単独ので進めら
れていた当時に、ケヴィン・スミスによるものが完成されて
いたはずだが、シリーズ化を目指すディメンションにとって
は物足りなかったということだ。そこに新たにサンズのアイ
デアが提案され、これがディメンションの幹部曰く、「創造
性とオリジナリティに溢れた最高の出来映えだった」という
ことで、一気に抜擢が決まったものだ。なお題名は、時代に
合わせて“The Six Billion Dollar Man”(60億ドルの男)
になるようだ。                    
 またこの計画には、ケヴィン・スペイシー主宰のトリガー
ストリート・プロダクションの参加が発表されており、とい
うことはつまりスペイシーの主演ということになりそうだ。
 因にサンズは、脚本監督した“Inside”という短編が各地
で賞を受けるほど評価されており、またメイス・ニューフェ
ルドの製作でデイヴィッド・ブリン原作のスペース・オペラ
“Startide Rising”や、フェニックスでルディ・ラッカー
原作のサイヴァー・パンク小説“Software”、さらにビーコ
ンで“Repairman Jack”などの脚色も手掛けている。   
 なお、オリジナルのテレビシリーズについては、以前にも
紹介したようにマーティン・ケイディンの小説“Cyborg”を
原作としたもので、ケイディンはさらに“Operation Nuke”
“High Crystal”“Cyborg IV”を発表している。そして
今回はこのシリーズ全4作の映画化権が一括して契約され、
シリーズ化を目指して映画化が進められているものだ。また、
このシリーズでは、同時期に女性版の“The Bionic Woman”
(バイオニック・ジェミー)も放送されていた。     
        *         *        
 もう1本テレビシリーズからの映画化で、ラリー・ハグマ
ンの主演で78年から91年まで続いた人気シリーズ“Dallas”
(ダラス)の映画化の計画が発表されている。      
 このシリーズは、60年代の『ペイトンプレイス物語』に匹
敵する典型的なソープオペラと呼ばれた作品で、何しろ放送
されていた14年間に総勢140人近い登場人物が入れ代わり立
ち代わりドラマを組み立てて行くというもの。      
 最近では『ER』などもこの手法をとっているが、『ダラ
ス』の場合は、街の権力者の座を狙う主人公JRを中心に、
これらの人々の人間模様が実社会さながらに描かれていた。
そして、特に80年シーズンの最後でJRが狙撃されて終った
時には、“Who Shot J.R.”ということで、次のシーズンが
始まるまで半年間の話題を独占したものだ。       
 まあ今で言う、クリフハンガーという奴で、『新・スター
・トレック』などでも毎シーズンの終りには、主人公が絶体
絶命だったり、銀河存亡に危機みたいな状況で終ったりして
いたのだが、その走りのような番組だ。         
 ということで、極めて話題性の高い番組だった訳だが、こ
の映画版を今回計画しているのはリジェンシー、そしてパー
トナーを組んでいるのが元ソニーのマイクル・コスティガン
という人物で、コスティガンはソニー時代に『チャーリーズ
・エンジェル』の映画版に関わっていたということで、その
手腕が期待されているようだ。             
 登場人物や物語などは一新されることになるが、当然JR
に相当する主人公と、その周囲にうごめく人々という構図は
代わるはずもない訳で、オリジナルの番組の放送中なら1エ
ピソードの映画化ということもできるが、単独の映画として
どのような展開になるのか、興味を曳かれるところだ。  
        *         *        
 以下は、新しい情報をお伝えしよう。         
 新感覚の映画として大きな話題を呼んだ『マルコヴィッチ
の穴』のチャーリー・カウフマン脚本による新作“Eternal
Sunshine of the Spotless Mind”に、ジム・キャリー、
ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンストの共演が
発表されている。                    
 物語は、主人公の男(キャリー)が、前の恋人(ウィンス
レット)との熱い想い出を消そうとするが、それを同僚の女
性(ダンスト)がじゃましてしまうというもの。つまり、カ
ウフマンお得意の人間の心理に関わる物語ということで、こ
れを如何に料理したか、そしてそれをどのようにキャリーの
キャラクターに合わせたかが興味を呼んでいるようだ。  
 監督は、カウフマン脚本で昨年の東京国際映画祭のコンペ
に出品された『ヒューマンネイチュア』のミシェル・ゴンド
リーが担当している。製作はフォーカス。        
 なおこの作品には、『スパイダーマン』で一気にブレイク
したキルスティン・ダンストが出演しているが、彼女は、現
在はリヴォルーション製作で、マイク・ニューウェル監督、
ジュリア・ロバーツ共演による“Mona Lisa's Smile”に出
演中で、その後の来年1月から本作の撮影に入り、続けて来
年春からコロムビア製作のシリーズ第2作“The Amazing
Spider-Man”ということだ。               
 しかし、実は彼女はミラマックスとの間で優先契約を結ん
でいて、その中では、黒沢清監督の『回路』を、ウエス・ク
レイヴン監督がハリウッドリメイクする“Pulse”への出演
という情報もあったのだが、そのほうは一体どうなってしま
ったのだろう。夏ごろの情報では、ちょうど今回の作品の辺
りに入っていたはずなのだが。             
        *         *        
 『ブレイド』を始め、最近、吸血鬼ものがやたらと目に付
くが、今回は本家本元の『ドラキュラ』を題材にした作品の
計画が2本発表されている。              
 まず1本目は、“The Last Voyage of the Demeter”と
いう題名で、この作品はブラム・ストーカーの原作の中の船
長日誌の章を拡大するもの。ドラキュラを運ぶ船の中で乗組
員が1人ずつ謎の失踪をして行くという物語だそうだ。具体
的な情報はまだあまりないが、ブラーギ・シャットの脚本で、
フェニックスで進められている。            
 そしてもう1本は、ユニヴァーサル製作で、題名は“Van
Helsing”。つまりドラキュラの宿敵ヴァン・ヘルシング教
授を主人公にした作品で、これを『ハムナプトラ』のスティ
ーヴン・ソマーズの脚本監督で映画化しようというものだ。
 この監督の手に掛かると何でもアクション大作になってし
まいそうだが、本作もその通りアクションアドヴェンチャー
と紹介されている。主演は『ニューヨークの恋人』のヒュー
・ジャックマンで、彼がタイトルロールのようだ。    
 そしてドラキュラ役には、イギリス出身でバレエダンサー
のウィル・ケムプが発表されている。ケムプは、話題のミュ
ージカル“The Car Men”の主演などで知られるが、アメリ
カでは4月に公開されたディメンション製作、レニー・ハー
リン監督、ヴァル・キルマー共演の“Mindhunters”で映画
デビューし、今後は舞台と並行して映画スターも目指すのだ
そうだ。撮影はこの秋に開始される。          
        *         *        
 ついでという訳ではないが、吸血鬼と並ぶ往年のホラー映
画のキャラクターで狼人間ものが1本計画されている。  
 題名は“Bitten”。ケリー・アームストロングという作家
の原作で、カナダを舞台に謎の狼の群れの中で暮らした女性
を主人公にした作品。これだけだと、『ジャングルブック』
系の物語のようにも思えるが。展開は、彼女は狼に噛まれ、
群れの中で生活するうちに、狼人間に変身する能力を身に付
ける。しかし彼女は獣の本能を押さえて普通の人間になろう
とし、人間社会に入ってジャーナリストとなり恋もするのだ
が、本能が目覚めることへの不安から群れに引き戻されて行
くというもの。                    
 米誌の報道では、原作には、ジャック・ニコルスン主演で
映画化された『ウルフ』などの狼男ものに通じる不思議な雰
囲気があるということだが、この物語だとナスターシャ・キ
ンスキー主演でリメイクされた『キャット・ピープル』の方
が近そうだ。                     
 そしてこの原作の映画化権をワーナーが獲得し、その脚色
を、ティム・ロスの監督デビュー作で98年製作の“The War
Zone”などを手掛けた脚本家のアレグザンダー・スチュアー
トに依頼しているということだ。また主人公には、パラマウ
ント製作の“Tomb Raider 2: Cradle of Life”の撮影が
進行中のアンジェリーナ・ジョリーが予定されている。因に、
脚本家とジョリーは同じエージェントの所属で、その関係で
今回の企画が動いているようだ。            
 なお、ジョリーは撮影中の作品の次にはワーナーの製作で
“Taking Lives”という作品が予定されており、それに続
いて今回の作品という期待がされているようだ。      
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 前々回セット火災を報告したディズニー製作“Pirates of
the Caribbean”は大禍なく撮影が開始されたようだが、続
けて計画されているやはりディズニーランドのアトラクショ
ンからインスパイアされた作品“Haunted Mansion”の概要
が報告された。この作品は、『スチュアート・リトル』のロ
ブ・ミンコフ監督、エディ・マーフィの主演で進められてい
るものだが、内容は、マーフィを父親とする一家がお化け屋
敷を訪れ、父親はそこで幽霊に出会ってしまう。そして今ま
で無視していた家族への思いを改めるという、家族再生の物
語になるようだ。脚本はデイヴィッド・ベレンバウム。  
 また、水晶球の中の預言者マダム・リオータ役として『モ
ンスターズ・インク』でセリアの声を担当したジェニファー
・タリーの共演が発表されている。           
 前回、“The Serpent and the Eagle”(ロン・ハワー
ド監督)に関連して紹介した“The Alamo”(ジョン・リー
・ハンコック監督)でキャスティングが始まり、その第1号
としてビリー・ボブ・ソーントンのデイヴィー・クロケット
役が決まったようだ。1960年にジョン・ウェインが監督主演
したときには、ウェイン自身が演じた役柄だが、ソーントン
はどのように演じてくれるのだろうか。          
 今年の夏に公開された“Resident Evil”(バイオハザー
ド)の続編の計画が持ち上がっている。オリジナルはポール
・W・S・アンダースンの製作、脚本、監督で、ドイツのコ
ンスタンティンフィルムスで作られたが、アメリカはソニー
傘下のスクリーン・ジェムズが配給して4,000万ドル、全世
界では1億ドル突破の成績を残している。そして今回の発表
では、アンダースンがすでに続編の脚本を執筆中ということ
で、彼は製作も担当するが、監督には他の人を起用する計画
だということだ。監督の交替はいいとして、それより問題は
ミラ・ジョヴォビッチがまた出てくれるかだろう。    
 最後にちょっと残念な情報で、11月にアメリカ公開が予定
されていたヒラリー・スワンク主演のSF大作“The Core”
の公開延期が発表された。理由はVFX制作の遅れというこ
とで、『ザ・リング』もそれで公開が遅れたが、だんだん要
求されるレベルが高くなると、VFXもスケジュール通りに
は行かなくなってきているようだ。でも、『ザ・リング』も
問題なく大ヒットしたようだし、心配はないだろう。なお、
アメリカ公開は来年の第1四半期になるということで、当初
の日本公開は2月だったようだが、それも少し遅れることに
なりそうだ。                     


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井口健二