メーコの芋ちゃん日記

2003年11月28日(金) メーコに欠けているもの

メーコの旅かばん・第一部で、メーコに欠けているものは「カネと男と計画性」という話を書いた。
が、妊娠を機にメーコは、自分にもう一つ欠けているものがあることに気がついた。
言うまでも無い。「自覚」である。
遡れば3月、「もしかしたら妊娠したかも」という状態にもかかわらず某日本人大リーガーとの合コンに参加し、妊娠の可能性どころか自分が結婚していることすらも隠し通し、「妊娠初期にアルコールは厳禁」の常識を思いっきり無視してビールと赤ワインを浴びるほど飲んだくれたのを皮切りに、その後は妊娠5ヶ月に入るまで平然と厚底サンダルにミニスカートという出で立ちで野球観戦に繰り出し、6ヶ月目には特大スーツケースを2つ抱えて一人で日本に帰ってここぞとばかりに連日新宿や六本木に繰り出して遊びまくり、7ヶ月目に入ってアメリカに戻ってきた後は、大分お腹も目立ってきたというのにこれまた往復200キロの道のりをかけて連日野球観戦に出かけ、そして、臨月に入ってからマタニティスイミングを始めた上に新居への引越しまでやり出したというメーコの7ヶ月間の生活の中に、「自分が妊婦だという自覚」を探すことは、宝くじの当たり券を探すのと同じくらい難しいのではないかと思う。

が、しかし。 「何とかと何とかは紙一重」と言われるように、こぉ〜んな無謀なメーコの生活も、捉えようによってはフツーの人には真似することのできない、とーっても偉大なことなのではないだろか??と、ある日突然、メーコはそう思った。
うん、そーだ。 きっとそうに違いない。 これは、メーコだからできることなのだ。 他の人には絶対にできない、とってもとっても偉大なことなんだ。
…などと、周りの人が聞いたら「そんな発想こそがアンタにしかできないんだよ」と言われそうなことをメーコは勝手に思いこみ、調子に乗って更なる無謀の積み重ねに走った。
出産予定日まであと10日を切り、「もういつ産まれてもおかしくない」という状態にもかかわらず、引越し先の家に敷き詰められていた古いカーペット(←メーコの新居は中古なのだ)をたった一人で全部引っ剥がし、それが終わると今度は脚立に乗っかって壁のペンキ塗りを始め、さらに暇を見つけては車を走らせて家具屋めぐりに明け暮れた。

そして。
出産予定日まで「あと5日」と迫った日の昼、「後は残すところリビングの壁一面のみだぜ〜♪」というところでメーコはついに破水した。 アメリカ東海岸時間、10月25日土曜日の出来事である。
が、破水した量も少なく、且つ陣痛らしき腹部の痛みも全く無かったことに加えて、何よりもまずメーコがとぉ〜ってもおバカだったためそれを破水だとは思わず、一緒にペンキ塗りをしていたダーリンに「いや〜ん、メーコってば気合入れすぎてシッコ漏らしちまったかもー」などと笑いながら話し、そのまま作業を続けてリビングの壁を塗り終えてしまった。
だが、ペンキ塗りを終えてアパートに戻ってきた後も謎の流水は止まらない。さすがのメーコも「もしかして??」と思い始め、一応出産の手引書を読み返してみたのだが、本に書かれているような「破水をするとすぐに陣痛が始まる場合が多い」という状況には全く当てはまらなかったため、「やっぱシッコだね。困った膀胱ちゃん♪」などと言いながら夜までのほほんと過ごしてしまったのであった。

が、その後。
何を隠そうこの日はニューヨークヤンキース対フロリダマーリンズのワールドシリーズ(←日本で言うところの日本シリーズ)第6戦。 今日、マーリンズが勝てば6年ぶりの全米優勝が決まるとあって、テレビの向こうで繰り広げられる熱戦を一喜一憂しながら観ていたメーコは、マーリンズ優勢で迎えた7回の裏に、とうとう出血してしまったのである。
ここまでくれば、いくらおバカで自覚のないメーコといえど「困った膀胱ちゃん♪」などとは言っていられない。 ドクターからも、「破水をしたり、出血したり、陣痛が5分間隔になったりしたら直ぐに病院に行くように」と言われていたことを思い出し、「どーやら今がその時らしい」とは思ってみたものの、陣痛の「じ」の字もまだ来てないし、それに何よりフロリダ州民としてマーリンズ優勝の瞬間は見逃せないではないか。 う〜む、困ったぞ。 今すぐ病院に駆け込むべきか、はたまた試合終了まで待つべきか。
医者が聞いたら、呆れてアゴが外れてしまいそうなことをメーコは真剣に悩んだ。 そして、悩みに悩んだ挙句、断腸の思いで野球を諦めることにしたのである。

「くっそー。 あともうちょっとだったのにー。 何だってこんな時に出血するのさー。 もー、子宮のバカったれ〜。」
病院に向かって車を走らせながら、メーコは何度も何度もそう呟いた。
全世界に出産経験者は何億人と存在するのだろうが、これからお産が始ろうという時に、子宮に文句を言いながら車を運転している妊婦はメーコくらいなものであろう。 
そして、病院に到着したメーコは、最初の破水から12時間近くが経過してしまっていたため、その場で緊急入院となった。
だが、その期に及んでもなお、「破水しちゃったら細菌感染の恐れがあるっていうのに、アナタは一体12時間も何をしていたの??」という看護婦さんの問いかけに、「ペンキ塗りをしてそれから野球を観てました〜♪」と自信満々の笑顔で答えていたのはこのメーコである…。
…自覚のなさも、ここまでくれば表彰状モノであろう…。

さぁ! いよいよ出産だぁ〜!


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メーコ