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2018年03月21日(水)
高橋徹也『REFLECTIONS 2018』

高橋徹也『REFLECTIONS 2018』@風知空知


このあとふたりしてはあああ〜と感嘆のため息つきましたよね。いーやーここのバンドいつもすごいんだけど、その日の状況や環境、メンバーのコンディションから当日の天気迄“ライヴ”という作品にしてしまう力を持っている。

2004年にリリースされ、現在入手困難のアルバム『REFLECTIONS』。遅れてきたリスナーである当方、何度かAmazonで購入を試みるも入手出来ないままです。アラートも設定していて、「ご注文いただけるようになりました、在庫があるうちに是非☆」という通知がある度手続きしても「発送までしばらくお待ちください」というお知らせが何度か届いたあと、結局「やっぱり用意出来ませんでしたテヘ☆」みたいなお詫びが届くあのシステム、なんなんだろう…何度ぬか喜びしたことか……。タッチの差で他の誰かが先に買ったのなら購入手続き迄いかないと思うんだよねえ。

それはともかく。何故今? と思いつつも、『REFLECTIONS』の楽曲がライヴで聴ける機会が唐突に訪れたものだから、とても楽しみにしていたのでした。成熟どころかそのポテンシャルは天井知らず、コンビネーションの充実ぶりを見せつけてくれるバンドが演奏するわけで、所謂記念碑的な「再現」だけでは終わらないだろうという期待もありました。季節外れの冷たい雨のなか(昼過ぎ迄雪だった!)ウキウキ下北沢へ。

収録楽曲は全て演奏されました。ライヴで初めて聴く曲も多かったんだけど、発表された時代が反映されているなあという印象が結構あった。フュージョンやフューチャージャズ、クラブ/ビートミュージックの影響も感じられる。人力ブレイクビーツみたいなリズム展開のものもあってたまげた。勿論初めて聴いたのでタイトルが判らず、いつかアルバムを聴ける日がきたときのためにと必死に歌詞を追っていたんですが、これがまた奇跡のように「流石、音と言葉で絵を描く高橋徹也だぜ!」といいたくなるシチュエーションを呼び込みましたよ。風知空知にきたことがある方はご存知でしょうが、ここはサンルームのようなスペースがあるのです。後方に席をとると、所謂フロア部分とそのサンルームの境目の位置になるのですが、そこがまあ雨の音がすごい(笑)。雨の日にきたのが多分初めてだったもので、開演迄これはどうなるかなと不安に思っていたのです。幸いバンドセットの音は後方迄しっかり届いてくれました。そこへ件のブレイクビーツの曲。うわっ、こんなアレンジの曲があったんだ。脇山さんのドラムすごいな、スネアの残響が気持ちいい、なんて思っていたところ耳に飛び込んできた高橋さんの声、「窓の外は雨」。

もともと雨も冬も大好きだがこういうことがあるともーギャッハーとなりますわ。ちっちゃい声で「ぅぇ」くらいは口に出してたかもしれん。風知空知以外のライヴスペースで、バンドの音と、雨の情景を唄う高橋さんの声と、雨の音をいっぺんに聴ける機会はそうそうなかろう。サマソニでNINが演奏してるときどしゃ降りになって、ステージ後方で稲光が閃いたときくらいアガったな!

セットリスト(後述)からするとこの「ストレンジャー」と、その次に演奏した「夜の亡霊、夜の国境」がまーすっさまじかった。「ストレンジャー」のアウトロにあっけにとられ、拍手することにすら戸惑っていると間髪入れずに次曲のイントロへ。ここが最高到達点だ、と思ったときにはもうそこにいないよね…もっと先に行ってますね……このバンドが「新しい世界」や、この日演奏された「ユニバース」をレパートリーに持っているのって象徴的だ。上昇が続く。ようやく終わりが見えてきた、という気配とともに、弾けるように歓声と拍手が起こった。この二曲の流れは圧巻だった。

14年前の楽曲? 今のバンドのために用意されたかのようじゃないか。この編成で演奏されるのを待っていたかのよう……というか、高橋さんが「今のこのバンドで当時の曲をやったら面白いことになる」と判断したうえでの今日のライヴだったのだろう。MCで当時聴いてたジャズとかフュージョンに影響があると話していたが、『REFLECTIONS』収録曲は難物が多い印象だった。相当なスキルとジャンルレスな感覚を持ち合わせていないと、楽曲に演奏がふりまわされてしまうのではないだろうか。緊迫感あふれる演奏が続きましたが、面白いことにそういう展開になればなる程プレイヤーたちはリラックスしていくようで、笑顔も見られる。「おお、すごいな」と互いに思っているのだろうなあ。すると高橋さん曰く「見惚れて(聴き惚れて)しまってミスをする」(笑)。「おお、今日すごいな、って思った瞬間間違える」だって。皆さんすごかったのですが、レコーディングの際いなかったメンバー、イコール当時は存在していなかったパートでもある宮下さんの「曲が出来たときからいますけど何か?」とでもいうようなピースの埋まりっぷりったらありませんでした。普段はのばす音をカッティングにしたりして、本人も楽しみながらいろいろ仕掛けているよう。その度高橋さんがおっ、っとした表情になり、宮下さんに笑顔を向けるいい光景。

ちなみに「メンバーのクレジットはバンドに入った順なんです。だから年齢は脇山くんの方が上なんだけど、佐藤くん(sugarbeans)よりあとなんです」とのこと。「宮下くんのあとに誰も入らなかったら、ずっと球拾いだね」だって(笑)。うふふウチのバンドすごいでしょ〜もう大好き〜ってな様子が全開で、「脇山くんはほんとかっこいい」「佐藤くんは新しい風を吹き込んでくれて(これよくいってますね)」「俺鹿島さんの女性の好みとか服の好みがわかる、オリンピック見てるだろうな、カーリング見てるだろうな、あのーちなみさん?(吉田知那美選手)好きだろうなって訊いたらやっぱりそうで。服買いに行ってもこの服鹿島さん好きだろうなあ、この靴似合うだろうなあなんて思ってる」。もはやノロケですがな。

その鹿島さん、演奏の手応えが率直に挙動に顕れるひとのようにお見受けしますが、この日の後半は飛んだり跳ねたりノリノリであった。高橋さんが「春になるとおかしなひとが……調子に乗ったひとが出てきますけど、僕もそうで、足を怪我しちゃって」とのことで1〜2割は座奏だったのですが(控室からステージへの移動もたいへんなのでアンコールは本編からそのまま続けてやった)、その高橋さんの分迄と思ってのことかは判らないが、普段よりアクションが激しく感じられたのは気のせいか。佐藤さんも演奏を放棄して手拍子しまくったりしてましたが、その放棄も演奏の一部だわねえ。高橋さんも長い腕を拡げる、手をかざす。長身の彼が腕を伸ばすと、決して高くはない風知空知の天井に届きそう。夜空が近い。雨降りでも、その上には星空がある。バンドの現状を目(耳?)のあたりにしたよい夜でした。

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その他。

・『REFLECTIONS』が再発されないのは、通常のCDと8cmCDとの二枚組という仕様と、仮に一枚にまとめたとしても、曲目クレジットの印刷含めパッケージを流用出来ないからとのこと。印刷物のデータも残っていないそうで、やるなら一から作りなおさねばならないようです。権利云々ではなくコストの問題だとしたら、配信のみでもいいのでリリースしてほしいなあ

・控室にカポを忘れてきた高橋さん。「ギターケースのなかに……」との声を聞いてスタッフが慌ててとりにいく。何故か佐藤さんがカポを持っており、「さっすがあ」と受けとる高橋さん。控室からガタガタガサガサ音が聞こえる。あーまだ探してるよ……ようやくカポを手に戻ってきたスタッフ、「あ、大丈夫ですよー」と返されて事情が分からず困惑顔。「使わないの? 使わないでやるのかな?」と話してました(苦笑)

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・窓の外は雨 窓の外はスペイン│夕暮れ 坂道 島国 惑星地球
そうか、ステージからだと雨の風景が見えたんだなあ



ちょっと! 動画公開! えらいこっちゃ。chinacafeさんのツイートにもあるように、現在ブートでもないと聴ける環境がない楽曲なのです。仮にブートがあったとしても、そういうのをわざわざ探して聴くような輩は既に高橋徹也を知っているひとでしょうしね……これをきっかけに彼を知るひと、楽曲に興味を持つひとが増えるといいな

よだん。動画でもちょっと映ってますが、この日の衣装はパリッとした白いシャツ。たいそうお似合いだったのですが、隣のひとが「ユニクロの店員さんみたい」といっててウケた



2018年03月17日(土)
BOOM BOOM SATELLITES『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』リリース記念トークイヴェント

BOOM BOOM SATELLITES『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』リリース記念トークイヴェント@代官山蔦屋書店



聞き手はMUSICA編集長の有泉智子さん。学生時代からブンブンの熱心なリスナーであり、長い間彼らの記事を書いてきた方です。川島さんに最後に会ったジャーナリストではないだろうか。オフィシャルプロダクトに掲載するインタヴューやライナーを任されていることからも、バンドとの信頼関係が窺えます。作品に関してのシリアスなインタヴューは既にいろいろなところに出ているので(後述リンク参照)ここでは楽しかった思い出話をしましょう、とのことで笑いの絶えないトークイヴェントになりました。

以下おぼえがき。記憶で起こしているのでそのままではありません。話の順序もバラバラです。なるべく中野さんの喋りのニュアンスに近づけるべく書いていますが(あのおだや〜かな口調を想像し乍ら読んでほしい・笑)明らかな解釈違い等ありましたらメールフォームやtwitterでご指摘ください。

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・この『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』がBOOM BOOM SATELLITESの最後のライヴとなったわけですが、では、ブンブンがいちばん最初にやったライヴのことって憶えてますか?

「いきなり、そんな、変化球?(場内爆笑)……憶えてますよ! 新宿のACB HALLでした。今は改装されて綺麗になってますが、当時は場末のキャバレーみたいな感じのハコで。その頃バンドは四人編成で、Vo川島くん、Gがふたり…川島くんともうひとりいて、あとDJがいて、僕がBで。若かったし、やんちゃだったし、こどもみたいな川島くんがいたと思います」

「歳をとるとともにだいぶ安定していったけど、川島くんは自信家で、気分屋で。『今日のライヴあんまりよくなかったね』なんていうとすっごいおちこむ。あの頃はSNSもないし、ネットはあっても今みたいに便利ではないし、家の電話に公衆電話からメッセージを残しておいたりして会う予定を決めるんだけど、じゃあ◯日の◯時に行くから曲をつくろうって約束して、その日に向けてすっごい準備して、川島くんのうちに行ったら川島くんが遊びに出かけるところだった(笑)。◯時間後に帰ってくるから僕は部屋で作業しとくよとか……」

・鹿野(淳)さんも話してましたけど、フジでライヴのあと挨拶に行こうとしたらとめられて…おおきな音がして……なんか飛んでるー、とか……

「またその話い?(場内爆笑)友だちってことから始まった関係だし、やっぱりずっと友だちなんですよ。ライヴやレコーディングのことでぶつかることがあっても、スイッチが切り換えられる。どんなにケンカしても、ごはん食べたりするときには友だちに戻ってる」

・あれだけ激しくぶつかっても、切り換えられるってところがすごいと思います。スタジオを見学させて頂いたことがありますが、ふたりっきりで長い時間作業しますよね。そんなときに川島さんが… twitterにもちょっと画像を載せてらっしゃいましたが川島さんが全身タイツを……(場内思い出し笑いとどよめきが起こる)

「裏PVね(笑)」


・(笑)そう、「Kick It Out」には裏PVがあるんですよね?

「バンドによっては、自分のパートを録り終わったらもうスタジオにこないひともいるそうですが、僕らの場合はそうじゃなくて。川島くんは自分のギターや歌のレコーディングが終わっても、スタジオに毎日くるんです。朝、僕が作業を始める前にコーヒー淹れてくれたり、先にきてスタジオを掃除しといてくれたりするんだけど、作業が進むにつれふたりとも煮詰まっていくんですね。そしたらある日、僕がスタジオに行ったら、川島くんがオレンジの全身タイツ着てて……(あちこちからじわじわと笑いが)『…どうしたの?』って訊いたら、『テンションあげていこう』って(場内爆笑)。タイツのことを『これはエフェクターだ』って(笑)」

・その格好で踊る川島さんを撮ったのが「Kick It Out」裏PVですね。私も見せて頂いたんですが、マキシマムザホルモンのメンバーも見て爆笑してました。あれは白の全身タイツだったと思うんですけど、

「あれね一度撮ったらあんまりイケてなくて、着替えてもう一度最初っから踊ってもらって撮りなおしたの(笑)。だから白とオレンジのと二種類ある。川島くん、いろんな色の全身タイツを買ってきてて、一緒に透明なプラスチックのケースも買って、それにタイツを詰めて、ケースに『エフェクター』って書いて(爆笑)」

・ドン・キホーテで買ったそうですけど、どんな気持ちで選んでいたんでしょうね……(有泉さんがしみじみしたような口調でいうので尚更笑えた)

「あと、『Intergaractic』って曲、あれギターを弾き乍ら唄うのが難しい曲で。なのでライヴのリハで、川島くんはひとり早くきて練習してたんですけど、ある日(リハに)僕が行ったら川島くんが銀色の全身タイツを着てて……『…なんで銀色?』って訊いたら、『いんたーぎゃらくてぃっくだから(途中から笑ってしまって震え声に)』って……(爆笑)。そのあと平井さんが白のタイツ着て、僕が黒着てリハをして(笑)。でも僕が全身タイツ着てもあんまり面白くなくて。ただの、筋肉を鍛えあげたスピードスケートの選手みたいで、面白くならなかった(すごく残念そうだった)」


・そうやって川島さんはいろいろ面白いことをいっていますが、中野さんは何かいったりすることはなかったんですか?

「僕が何かいう場合は、『ちゃんとやろうよ』とか(笑)」

「そんな感じで川島くんはときどき素っ頓狂なことをするんですよね。忘れものとかもしょっちゅうだったし、おっちょこちょいで。NYに行ったとき、リュックから水が出てて。水の入ったペットボトルをリュックに入れてて、飛行機に乗ったりしてる間にキャップがゆるんじゃったんでしょうね。スタッフがあわてて『川島さん、水出てます!』って声をかけたんだけど、状況がわからない川島くんが『え? え?』って振り向いたりするとますます水が撒き散らされて(笑)NYの街のど真ん中で。『川島さん、水出てます!』っていわれてもそれだけじゃ意味わからないじゃないですか。それがもうおかしくて、しばらく『川島さん、水出てます!』がキラーワードになってた(笑)」

「あとロンドンに行ったとき帰りの飛行機のチケットを失くして。帰るよってときにヒースロー空港で気がついて、どうしようってなって、僕やスタッフが『川島くん!』とか『川島さん!』とか日本語でいってたのを聞いてた空港の職員さんが、『Ka wa shi ma……?』『あーっ!』って。実は川島くん行きの時点で帰りのチケット失くしてて(空港だか行きの機内だかに落としていたらしい・爆笑)空港で保管してくれてたらしくて。行きの時点で失くしてるのに気づいたの帰る当日。で、帰れましたけど」

「とまあ、こんなふうに川島くんのことを面白おかしく話してますけど僕も相当で……昨日ツイートしたんだけど、学生時代にバイトしてたジャズバーに番組の企画で行ったんですけど」


「久しぶりだから手土産を、と思ってたんだけど当日寝坊して。タクシー乗ってお菓子屋さんに行って、焼き菓子を買って、そこから電車に乗って。遅刻するわけにはいかないからお菓子屋さんにはタクシーで行って、時間短縮出来たなと思って。ふと気がついたらお菓子が、ない」

・タクシーに忘れた?

「いや…お菓子屋さんに……(場内爆笑)電話したらこちらが名乗る前からあわあわしてて。お菓子忘れたひとだってすぐわかったんでしょうね。『お店から送ってもらえますか……』って住所伝えて。ジャズバーの店長に『明日お菓子が届きます』っていったら『ぽい、ぽい!』っていわれた」

・それで思い出しましたけど、以前MUSICAで中野さんとカール・ハイドの対談を企画したときに中野さんが寝坊して、コントレックスだけ持って現れたことがありましたね

「ああ、あの頃はコントレックスがブームだったんですよ」

・いや、(そういうことじゃなくて)コントレックスだけを持ってきたってのが。他に何も持たず。前日呑んでたとかだったんでしょうけど、コントレックスだけを持った中野さんが公園通りを疾走していたっていうのが面白かったなーって

「遅刻しちゃいけないと思って……。僕も川島くんも、音楽以外のこととなると本当に抜けてるんです。作品をつくるにしても、遅いんですよね」

・それは、ミックスからマスタリング迄ふたりで話し合い乍ら、納得する迄詰めていくからでしょう。遅いということはないと思いますよ

「他にやり方をしらないから。有難いことにいろいろなところからお声がけ頂いて、プロデュースとか裏方的な仕事をやっているんですけど。バンドでやってきたことが通用するのかということも含め、これからどうやって音楽に関わっていくかを考え乍らやっています。だからきた話は時間が許す限り断らないで受けていこうと思ってて。音楽に限らずだけど、家族よりも長く一緒にいて、沢山の時間を過ごした友だちを失ったことで、これからの人生の時間をどう過ごしていけばいいのか、模索中なところもあります」

「表に出る機会がないので『何やってんのかなー』と思われてると思うんですけど、仕事してるんですよ。まだいえない仕事を。解禁日とかね、あるんです。一年後に公開のアニメの音楽とか、そういうの。なので日々フル稼働してます」

・ソロの作品も、皆さん待っていると思います

「そうですね。長い間、BOOM BOOM SATELLITESの音楽を聴き続けてくれているひとたちもいると思います。そんなひとたちや、同年代のひとに向けて、残るような作品をつくりたいですね。聴いたひとの、人生に寄り添えるような音楽を。バンドが終わったことで、僕はライヴという、ファンのひとたちと交流する場を奪われてしまったわけで……ひとまえに出る機会もあまりないし。だから今日はファンと会える貴重な機会。次はいつになるかわからないけど……そうそう、川島くん、あのひとすごくモテたんですよ。格好よかったし、ただ立ってるだけでも色気があるんですよね(頷いてるひと多数)。街を歩いてても目立つし、とにかく声をかけられる。BOOM BOOM SATELLITESの川島さんですよねって。本人はあんまりそういうことに興味がなくて、普通にサインして握手して……僕は全然、声とかかけられない」

・怖いイメージがあるんじゃないでしょうかね……

「こわい? そうなのかな、こわくはないんですけど……でも、僕を街とかで見かけても、放っておいてください(笑)」

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思い出を面白おかしく、でもひとつひとつ噛みしめるように話していた。笑い乍ら話を聞いていると、一瞬川島さんがもういないことを忘れる。そしてすぐにいや、もういないんだと現実に引き戻される。中野さんは何度も僕らは、とか川島くんと僕は、とかふたりとも、といういい方を繰り返した。あらゆる場で口にしているが、ライヴの場を失ったことで、リスナー、ファンとの交流をも断たれてしまったことをとても残念に思っているようだった。それは勿論、中野さん本人がライヴを出来ないことを悔しく思っている、ということでもあるだろうが、言葉の端々に、BOOM BOOM SATELLITESの未来を見失って途方に暮れているファンへの気遣いが感じられた。

このバンドは青春だった、といっていた。その時間は二度と戻らない。しかし、戻らない時間だからこそ、今後手を加えられることもない。思い出せばいつでも瑞々しく、輝いていたあの音が、光景が甦る筈だ。川島さんと過ごした青春の思い出をシェアしてくれた中野さんに、話を引き出してくれた有泉さんに感謝します。そして、中野さんのこれからの作品を楽しみにしている。待っている。人生のサウンドトラックになる音楽を。BOOM BOOM SATELLITESの音楽がそうであったように。

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・『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』インタビュー 中野雅之が振り返る、BOOM BOOM SATELLITESが歩んだ軌跡とラストライブの裏側│Real Sound

・BOOM BOOM SATELLITES『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』インタビュー│Billboard JAPAN

・BOOM BOOM SATELLITESが最後に伝える、音楽と人生の魅力│CINRA.NET

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(20180403追記:この日の記事が出ました。ウチんとことの誤差はご愛嬌でひとつ宜しく)
・BOOM BOOM SATELLITES 中野雅之が語る「川島道行と過ごした時間、そしてこれからのこと」│RollingStone



2018年03月07日(水)
『年イチの「金・銀・パール」2018〜パールとビブラトーンズ〜』

『年イチの「金・銀・パール」2018〜パールとビブラトーンズ〜』@Shibuya CLUB QUATTRO



知ってるひとは知っている。私のメールアカウント、いや遡れば同人誌をつくっていたときのサークル名の由来です。ライヴでやるのちょ〜レアよ! てか『Toyvox』ツアー以外でやったっけかというくらいよ! ちょっとお〜ただでさえ自分にとって特別なバンドなのに今こんなん聴かされたら人生ふりかえりもするわよ。しかも今回のライヴはいろいろ思いを馳せる要素がありすぎた。まあそういうのは年々増える一方で、だからこそ可能な限り足を運びたいのだ。とはいっても、いちばんの目的は彼らのピカイチの演奏を聴くことですけどね。

というわけでどうやら年イチでやってくれるようです、パール兄弟のお祭り。新譜『馬のように』(アートワークはしりあがり寿)からのトガったナンバーも披露、往年の名曲は演奏にますます磨きがかかり(いやもうすごすぎて笑う)、サエキけんぞうの未来つまり現在をズバリと読んだ嗅覚鋭い歌詞に唸り、そしてこのバンドには欠かせぬ品ある下ネタにゲラゲラ笑うハッピーなライヴでした。ゲストは近田春夫&ほぼビブラトーンズ! 当初予定されていたゲスト、エンちゃん(福岡ユタカ)は結局欠席。あのオタケビが聴けなかったのはで残念だけど、「AOR大歓迎」のコーラスは東京タワーズ(! 加藤賢崇、岸野雄一、中嶋勇二)が務めてくれました。周知のとおり、ビブラトーンズを脱退というかクビになった窪田晴男と、ハルメンズが崩壊状態だった佐伯健三が結成したのがパール兄弟。リアルタイムで聴いた近田作品もビブラストーンからで、当然ビブラ(トーンズ)は後追いです。『Midnight Pianist』のナンバーが今ライヴで聴けるとは。窪田晴男と岡田陽助が並んでギターを弾く図が観られるとは。ガン宣告からもはや数年、近田さんもお元気そうでなにより。

中西俊夫は昨年ガンで亡くなった。コピー、コピー、スベテハコピー♪ あのとしちゃんの素っ頓狂な声はもう聴けないんだなあ。川勝正幸は今年七回忌。この週はアカデミー賞の話題でtwitterがにぎわっており、オスカーを獲得したギレルモ・デル・トロ監督がらみで川勝仕事の『パンズ・ラビリンス』に関するツイートも流れてきた。まだあまり日本で知られていない監督をどう紹介するか……作られたプレスやフライヤー、そしてパンフレットは川勝さんらしい視点とアイディアが駆使されたもの。先月亡くなったECDはリーマンズのメンバーでもあった。私が上京して二番目に知ったラッパーがECDだ。一番目はDr. Tommy。ビブラストーンのライヴで、近田さんに紹介されて出てきたのがECDだった。ゆかりのあるひとたちがどんどん去っていく。陽ちゃんがECD IN THE PLACE TO BEシャツを着てるなーと思ってたんだけど誰も話をふらない(笑)。中嶋さんがしていたネクタイは川勝さんのものだったらしい。盛り沢山の構成につき進行でいっぱいいっぱいのサエキさんに川勝さんとECDの話をふってくれた賢崇さんグッジョブ。

(20170310追記:後述リンク、サエキさんのFBに掲載されたセットリストによると「ここで賢崇さんが川勝さんとECDの話をする」って進行になってたみたいですね。しかしそういうことも進行に入れとくあたりがサエキさんらしいよ…各方面への気配りが過ぎて逆にやっつけ仕事みたいに見えちゃうっていうね……)

とまあしみじみしつつ、しかし演奏がはじまると笑ってばかりです。毎度のことだがアホかという程に巧い。ヴォーカル以外(笑・これいつもいってるが事実だからとしかいいようがない。サエキさんは言葉を紡ぐ才能と魅力的な声があるからいいのです)。ワンマンのときより曲数少なめとはいえ、テーマ(今回は「エロ」でした。サエキさん毎回趣向を凝らしてくれます)に沿ってレアな選曲。前述した「Flip Flop Lover」もだが「How to X」とか「真赤なリヴォルーション」とか、技術が問われるややっこしい楽曲をポップソングとしてスマートに聴かせることといったら。今回ポジションどりを誤ってバカボン鈴木と矢代恒彦が殆ど見えなかったんだが音は堪能した…何度鳥肌たてたことか。ヤッシーのアナログ魂(サエキさん曰く「全部アナログ機材だから運搬がたいへん」)にも感銘を受け、松永俊弥がだんだん高橋幸宏に似てきたなあなんて思う。音だけでなく容姿も。スネアにエフェクトかけててそれも格好よかったなー。

窪田さんはFu Manchu(否バンド)に似る説を継続しつつ(笑)、長時間のライヴに最後迄出来るか不安とかいいつつ、立奏でやりとおしましたよ。そして演奏は勿論キレッキレのキレッキレでしたよ。「色以下」久々に聴けてうれしかったなあ、あのイントロ! となりのおっちゃんと同時に「おおお!」と声をあげてしまったよ。「焼きソバ老人」や「◯。◯◯◯娘」のロックアレンジにもにっこり。いつまでも、いちばん好きなギター弾き。

「ヨーコ分解」はやらなかったのでバカボンのスティックは聴けませんでしたが、年イチでこういう催しがあるならまた聴けるチャンスもある、と思えて楽しみです。来年の開催、待ってますね。



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・ECD IN THE PLACE TO BEシャツといえば窪田さんも一時期よく着てたんだけど、このひとはホント着るものに頓着しないひとなので新しく服を買うとそればっか着るのをファンの方はご存知でしょう。なのであードネーションしたんだなというより新しい服を買ったんだなーと思いましたね……

・スティックといえば、これ弾くひとってトニー・レヴィンとバカボン鈴木くらいしかしらないんだけど、いずれスクエアプッシャーが弾きだしそうでこわい。6弦はやり尽くしたとかいって