| 2003年03月10日(月) |
◆年表から読み取る問題点・３ |
【本題を論じる】
■本題を前にして、ずいぶんとページを割いてしまった。しかし本稿は個人の立場から発する論である。例えば検討委員会の“まとめ”とかいう性格のではない。であれば、その個人のある種、思想的な背景を語らねば、論が正しく伝わりはすまい。で、ついつい綴ってしまったのである。ご理解頂きたい…。
まず、年表から読み取れる問題点を指摘する。
�‐�林寺における乱捕り問題の議論は、本質論から来るものと安全論から来るものとに大別され、開祖ご存命中は前者で展開し、ご逝去後は後者を主に展開する。
�∪笋┐�(競技)乱捕り復活を望む、ある種勢力がある。
��その勢力は拳士の死亡事故に鈍感である。
�ち反イ箸靴凸汰�している。乱捕りの定義がそのつど異なる。
＊第２次検討委員会により第1次検討委員会の結論をあっさり覆したこと。また委員会が進行中で、答申を出していないのに関わらず、乱捕りを「運用法」として昇段試験に取り入れたこと。このふたつは特におかしい。
�ネ霾瓩衞簑蠅脇颪靴ぁ帖�が、開祖は着実に進歩された。
■乱捕りに関する諸問題は、昭和40年度版以降の教範「防具着用の乱どりについて｣の項で述べられている。しかしこれが難解？で、読み方によって異なる結論？？が導き出される。
ひとつの喩えとして…ここに薬があったとする。効能書きは読んでも、注意書きを良く読まないで服用すれば大事に至る…。
少林寺では、確かに乱捕りが初期の頃から行われていた。若い拳士達は興味を示したであろう。昭和27年の機関紙には、すでに乱捕り一筋の新人拳士が紹介されている。
ずっと年代が下がった私達の頃、学生拳法は（大会の為に）演武派、乱捕り派に分かれていた。大会の練習ばかりを主にして、全国大会に優秀な成績を残すある支部で、三段の試験を全員が落ちたなどという実話があった。
当時の学生拳士の修行は偏っていた。だから修行が偏らないよう、改革後の学生連盟は乱捕り種目に出場する拳士は演武に参加していること、あるいは演武で予選を通過した者に限る、などと工夫した時期があった。
（余談だが、近年でも団体演武の優秀常連校が、同じく三段の“実技”試験に全員落ちたという実話があった。）
…一番大切な個所は、「剛法組演武の補助手段としてのみ行うべき」という但し書きである。
■昭和38年、開祖が少林寺拳法創始16年目にして、カッパブックスで「試合がない」と著述されたことは、教範に書くことより意味が大きい。教範は部内用であるがカッパは公共性があり、しかもベストセラーになった。少林寺に試合が無いことを世間に大々的に宣言したことになったのである。
その2年後、昭和40年に記述されたのが「防具着用の乱どりについて｣である。
＊「…少林寺拳法に関する限り、防具着用の乱捕りを主にすることは絶対に不可であり、あくまでも法形の組演武を主体として演練すべきである。そして防具着用の乱捕りはあくまでも剛法組演武の補助手段としてのみ行うべきである。」
と述べられた先生の心境を思う時、乱捕りに関する単なる警鐘に止まらず、先生が目指す少林寺の方向性を明らかにされたのであり、「法形・演武」を主行とする行き方に焦点を絞ったことを意味している。
別の言い方をすれば、乱捕りの格付けをご自身でされたのである。ここを読み取らなければならない。私はそう考える。
第三次乱捕り検討委員会で最後までこの言葉を定義に入れるよう主張したのだが、残念ながら通らなかった…。
■最近強調され出した「基本」「法形」「演武」「乱捕り」の位置付けは、むしろ、初期から中期、昭和30年以前の実技実体ではなかろうか…。これはある意味、一般の武道の体系とさほど変わらない。先生はそこから抜け出されたのだ。次の段階にステップアップされたのだ。
昭和48年度版に追記された「組演武について」は、むしろ教範という訂正が利きにくい書物において、「防具着用の乱どりについて｣の形を変えた補足？ではなかったのか、とさえ思っている…。
大会改革後のある日、東京に滞在中であった開祖の元にご報告にお伺いした。競技乱捕りの廃止、演武の順位制廃止、剛法組演武の新種目提示をお伝えすると、「それでよろしい！」というお言葉が返って来た。
ホテルの一室。開祖はベッドの上にまだ寝巻き姿で、新聞に目を通されていたところであった…。
(同義語的使用への異議・４に続く)
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