| 2002年07月15日(月) |
◆武道先進国の役目! |
「書きたい放題/2002年02月15日(金) 勝手史観!」の中で、先進国の規範ということに触れました。
“先進国”という定義はなんでしょう。それに対しては後進国ではなく、“発展途上国”と表現されますが…先進国たる所以は、彼の国を援助して発展を促し、制度など場合によっては文化にも立ち入って善導するということでしょう。
例えば、女性の性差別など、文化に由来するもの。エイズ、伝染病など、貧困に由来するもの。独裁政治、人権の問題など、国家体制によるものなど…。いずれにせよ、経済問題を含め(善導の)範囲は多岐に渡ります。厄介なのはクジラ、犬などの食文化。…してみると、日本、韓国は先進国ではないのですか(?)
■ 一方で、先進国発信の悪影響も深刻な問題です。核保有・核戦争の問題。武器輸出の問題。あるいは、富の独占などの問題です。また、地球温暖化、森林伐採など、発展途上国と先進国が共に関わる問題も深刻です。テロ問題の遠因というより根本は、先進国が引き起こした「自分さえ良ければ!」というエゴイズムの手痛いしっぺ返しと言えます。
皮肉にも、麻薬問題や児童ポルノ問題などは需要者?と供給者?が貧富の関係で強く結び合っています…。
ともかく、先に核を保有しておいて、後の国が持つことまかりならん! あるいは、他国の資源/木で家を建てておきながら、今になったら、木は切るな!うちは切らん!では、たまったものではありません。しかし少しずつですが、矛盾を解決しようとする意志/良心が働きつつあるようにも見受けられます。
■ 前置きが長くなりましたが、先進国と発展途上国の麻薬の問題に匹敵するのが、最近、テレビで放映される格闘技番組ではなかろうかと考えるようになりました。
昨日の「K1戦」。プライド(総合格闘技)側の選手がK1ルール、打撃技のみに挑戦し、一勝一敗の成績で終わりました。面白かったのは「かつてK1の中で、これほどの野獣性を感じさせる選手がいたでしょうか」と選手紹介したことで、失礼ですが…苦笑してしまいました。
ところが、紹介通り、プライドには野獣性剥き出しのとんでもない試合シーンがありました。それは、両方の選手がお互いの首を持ち合って、一歩も引かずに殴り合うものでした。血がほとばしるそれは技? 根性? 両者、どういう精神状態になっているのでしょう…。
■ 昔、テレビの血の色は黒かった…。今はハイビジョンにより、血そのもの!
K1では今後、膝蹴り無しのルールを検討中ということです。ただし、石井和義氏によれば「“ブラウンカン・スポーツ”(←造語ですか?)として、膝蹴りを禁止にするとクリンチが少なく、パンチが多用されるのでKO決着となり易く、観ていて面白い」(要旨)というのがその理由らしく、残念ながら“膝蹴りは危険!”ということからではないようです…。
フランス・スポーツ省の判断はキックボクシングの膝蹴りは危険という認識です。当然、プライドルールは認められないでしょう。しかし、フランスは柔道が大変盛んで、武道、格闘技が嫌いな民族ではないようです。この点、先進性を感じます。つまり、国家が武道、格闘技に対して見識を持っていることになるのです。
■ 何年か前、「サカキバラ」を名乗る少年による“生首事件”がありました。その際、青少年の暴力を助長するような表現の漫画、テレビアニメ、ドラマの暴力シーンなどが問題にされました。
なのに…それに勝るとも劣らないシーンが茶の間で放映されています。悪いことに放送機器の発達により、リアルな映像、それの保存、インターネットによる手軽な再生などなど。残酷な場面が永遠?に消えることがないのです…。ノド元過ぎればなんとやら…。今、格闘技番組、特に“プライド”は問題があると考えます。
我が国にも飲酒、喫煙は20歳過ぎ。成人映画の判断は表現の自由の問題があるせよ、18歳という基準があります。放送禁止用語もあります。何故、格闘技に対する放送基準がないのでしょう…?
この感覚に疎いのは、案外、我が国が“武道の国”であることが災いしているからではないでしょうか…。いかにこの番組、乃至この格闘興行が、本来、武道先進国である日本国民に暴力性を植え付けるか…今後、研究機関できちんと調査する必要があるでしょう。
■ タイの“ムエタイ”は肘打ち、膝蹴り有りという打撃ルールを発信しました。ブラジルの“ヴァーリートゥードゥ”は目、金的、噛む以外なんでも有りの総合ルールを発信しました。しかし両国は貧困層が多く、残念ながら青少年の生活と直結していたからこそ、発達して来たものなのでした。
先進国がその情報をキャッチして増幅しました。今は、豊かな側の人々がそれを行うのが不思議でなりません。元々、先進国は残酷な格闘技を、例えばグローブを発明したり、人間が傷つかないような安全なルールを考案して発信したのです。ちなみに、サンボに締め技が無いのは人を殺すことを連想するからだそうです。
■ 柔道は締め技こそありますが、当身技を取り除きました。発展の段階で、試合で危険な技を禁止して来ました。日本拳法は自衛隊でも取り入れている総合格闘技型ですが、防具で身を守ります。伝統空手(全空連)は面を付けて寸止めします。一部では行っていますが、合気道は対戦試合を放棄しました。
すべて、先人は武術、格闘技の持っている危険性/暴力性を了解していたのです。言ってみれば、武術を知的格闘技に仕上げたのでした。武の精神を保ちながら、大和の精神を養う。これが日本の文化である“武の道”なのです。
今、少林寺拳法も武道先進国の一員たる自覚を持って、さらに私達の“徳”性を、正しく世界に発信し、且つ、世界の武道人を善導して行こうではありませんか!
|