7日の日曜日、TBS放映『情熱大陸/脅威の頭脳棋士・羽生善治のパリ、チェス決戦』を見ました。たまたま、当日午前中、NHK教育テレビの将棋番組でも、羽生氏の変り種記録を紹介していたのです。NHK杯戦における最大年齢差記録は、「大山(確か65歳だったかな?)対、羽生(18歳)戦」というものでした。
故大山康晴名人は60歳を過ぎてもA級の現役棋士であったという、化け物的な棋士です。一方、羽生氏も、小学生名人になって以来、15歳(中学生)でプロ棋士となり、史上初の7冠王に輝くなどの記録を持つ天才棋士です。ちなみに上の対戦は、羽生氏が勝ち。
■ 将棋は、例えば竜王戦一日制の場合、持ち時間は各自5時間。対局は深夜にまで及ぶ場合があり、それでも千日手などになると、三十分休息の後、指し直しとなるルールです。今回、メジャーリーグのオールスター戦で(選手の健康面を考えて)延長引き分けがありましたが、将棋の場合、100%引き分けがありません。過酷な完全決着方式なのです。
不思議なことに、棋士の中には体力があるようには見受けられない方がいるのです。羽生氏もそうです。将棋でも体力がある方が有利と思います。先程の深夜の再試合などは、明らかに年配棋士にとっては不利ですから…。
またデーターによれば、NHK杯戦のように持ち時間が短く、使い切って一手三十秒になると、「ある種の反射神経が良い若手が有利なのでは…?」と島朗八段がコメントしていた通り、早指し戦では圧倒的に10代、20代棋士の勝率が勝るのだそうです。しかし、特別な条件を除けばそうでもないようです…。
■ 番組中、私が凄いなーと思ったのは、羽生氏が年に一回の貴重な十日間という長期休暇を、趣味であるチェスの世界大会出席の為に費やすことなのです。これには驚きました。
凡人の感覚では、毎日毎日、将棋を指す生活をしていてそんな長期休暇が取れたら、温泉などでのんびり頭を休めたいと思うのです…。しかし羽生さん、フランスの名門チェスクラブ主宰の世界大会に出席して、またまた頭をかきむしっていました。成績は10人中、5位たって…普段チェスの駒なんか握らないでこうですから…凄いです。
伝説のプレーヤと対戦して引き分けに持ち込んだりとか、優勝した選手には勝っても、上位入賞に大事な一戦を12歳の天才少年によって阻まれる、などのドラマがありました。興味深かったのは「将棋は家元制度があったりという伝統文化なんですが、チェスはスポーツなんです」(要約)と表現したことです。ただし、本論では羽生氏の言には触れません…。
確かに、将棋、チェス、あるいは囲碁に代表されるゲームは盤を挟めば年齢、体力、性別などは関係ありません。一緒になって知的格闘を楽しめるのです。その意味ではテレビゲームも同じですが、「ゲームは攻略本があるけれども、囲碁は答えが無い所が面白い!」と、最近の囲碁ブームにコメントを求められたある子供が模範的?な解答をしていました。
私の道場には立派な将棋盤と駒が置いてあります。チェスもあります。少年拳士の中には将棋に興味を示す子供がいて、「先生、練習が終わったら将棋やろう!」とねだってきます。で、飛車角落ち。将棋では二枚落ちと言いますが、「お願いします!」と頭を下げあって対戦します。
■ 憎しみを発生させないで、勝敗を楽しむ。これがスポーツであり、将棋、チェス、カードなどのゲーム/知的格闘技の醍醐味です。ですから、例えば将棋にお金を賭けると一転します。ゲームから“賭け事”になり、優れた徳性が失われます。
羽生氏の今回のチェス大会は当然自費ですし、勝っても賞金など出ません。仕事(同じような将棋?ですが)を離れ、静かに知的格闘技を楽しむ羽生氏の精神的、肉体的タフさに驚嘆しました。
どなたか、チェスしません?
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