| 2002年07月01日(月) |
◆受け、技有り!ワールドカップから |
熱狂のうちに、昨日30日、サッカー・ワールドカップが終了しました。この歴史的なイベントの最終舞台が横浜であったことは、ハマッ子の一人としてまことに感慨深いです。本大会については色々と述べられていますが、私は少林寺の拳士として、「守り」という視点から述べてみたいと思います。
■ 決勝におけるブラジルとドイツの攻防は本当に見応えがありました。ブラジルは“攻撃のサッカー”と喧伝されていましたが、あにはからんや、他チームとの対戦でハットトリックを達成したドイツの選手は、ブラジルの守りを「固かった!」と評しました。
攻防一体と言います。特に、サッカーのような団体競技は守りが固いと攻撃に専念できます。結果、攻撃力が増します。“守りのチーム”と言われたドイツも、カーン選手の存在によって予選リーグでは8点も奪った試合がありました。
カーン選手の、両手を広げてガニ股で前進する防御スタイルを真似すると、少年拳士達は「先生、怪しい!」と大喜び?します。「少林寺拳法と同じなんだよ」と説明すると、「…???」返事が返ってきます。
彼の防御構えは股下がガラ空きです。しかし“気”で押されるのか、その構えで前に出てこられると、相手は吸い込まれるように作られた隙にシュートしてしまいす。多分、シュート直前の選手からすると、あの姿は数倍の大きさとなって目の前に立ちはだかるのでしょう。前半のロナウド選手は明らかに気圧されていました。
■「書きたい放題/2001年11月07日(水) 布陣法/構えについて! 」の中で、「一字構えは中段の攻撃、主に回蹴りに強い構えです。ですから、中野先生は仁王拳においてやや前屈、上段を誘うが如くの構えをとります。」と書きました。実はこれは、「気の先」といわれる“気構え”があって成立するもので、通常拳士が行うような単に待つ、誘う構え/守りではないのです。
剣道では、気で押していって相手が堪え切れずに打ってくるところを打つと言います。以前、日本空手協会の大会をテレビで見ました。こちらの大会は全空連のように面を付けず、素面で試合します。もちろん寸止めですが、拳サポーターは無し。真剣勝負の匂いが漂います。解説者はしきりに「気で詰めて行く!」と言い、確かに堪え切れずに打って出てしまう選手に対して、「対の先」「後の先(受け手を伴う)」の返し技を決めていました。
もっとも、海外の大会では文化の違い?でしょうか、気のせめぎ合いという妙味が理解されないようで、ピョンピョンと外人選手にフットワークで間合いを外されていましたが…。
ともかく、股下に対してシュートを放つことは前述の話と同様、カーン選手にとっては思う壺で、一瞬に閉じてブロックしてしまいます。まさに、彼にとっては必勝のパターンです。つまり一番守り易いのです。どうです! 少林寺拳法と呼吸が同じですね!
■ 個人的に守りについては、『七人の侍/黒澤明監督』の中で、志村喬、扮する老武士が、「城をただ守るだけではダメだ。一箇所、隙を作り、そこに敵を誘い込んで攻めるのだ!」(要約)というセリフが印象深いです。で、野武士が襲って来ると作戦通り柵を開き、誘い入れて闘います。あの老武士の、「一騎、通ーすぞー!」という声と、村人とノブセリの泥臭い戦闘シーンが記憶に残っています…。
さて、今回の大会では2対0でブラジルが勝ちましたが、ロナウド選手とカーン選手に関しては、私はカーン選手の守りが勝ったと思います。攻撃点のみが得点されるからで、もし防御点が加点されたら、(確か5回シュートしたから)3対2でカーン選手の勝ちでしょう。他にも野球でいう、「一点に匹敵する守り/受け、技有り」が随所にあったからです。
できれば、ロナウドとカーンが一対一になって、あの股下を“抜けるや否や!?”という真の盾と矛の激突を観たかったですね!
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