道院長の書きたい放題

2002年06月20日(木) ◆頑張れ!武道人!

 NHK/地球に乾杯「精霊の森のレスラーたち」 を観て、武道の在り方を考えました。

■ アフリカ/コートジボワールの少数民族に伝わるこのレスリング試合。レスラー達は、ただただ個人と村の名誉の為にのみ闘うといいます。リングは乾いたアフリカの大地。素朴な力比べといったら、失礼ですか…。

この番組を観て印象深かったことを述べます。試合を開始する前、レフリーが競技者に、「殴るなよ!」と注意する場面です。この言葉に、何故か非常に平和的なものを感じました。なるほど、人間が暴力を「暴力!」と認識するのは、打撃/殴る、蹴ることなのだと再認識しました…。

古代のレスリング/パンクラチオンですか…は、打撃、投げ、締め、逆技有りという、殺伐とした殺し合いに近いものであったようです。さすがに、人間の善性が発動されたのでしょう。流血を避けるルールが考案、確立され、おおよそ現在のルールとなったのです。すなわち、投げたら勝ち、背中を着けたら勝ちなどというものです。

世界各地に相撲、レスリングに類する種目は多々有りますが、このルールは打撃技無しと共に共通の様です。ですから日本のプロ相撲(アマチュア相撲はこの限りではない)は、張り手、ケタ繰り、頭突き、カチ上げ有りと、かなり特殊な過激な様式と言えましょう。これを除けば、組技、投げ技系は非常に暴力性を排除した格闘様式と言えます。

この少数民族のレスリングルールによって対抗試合をしても、選手同士の怪我や流血はまず考えられません。かといって熱気が無いわけではありません。掲示板にも書きましたが、「憎しみなき熱狂!」というものがあります。

■ この平和的な格闘技はシステムも変わっていて、敗れた選手に再戦のチャンスがありません。このルールも非常に興味深かったです。つまり、勝者を三人?とすることが可能だからです。

どういうことかと言うと、仮にAがBに負ける。再戦をしてAが勝てば、際限がない戦いが続くことになります。しかし、新たにBを倒したCに勝てば、ジャンケンの「グー」「チョキ」「パー」となって敗者無し、三人の名誉が守れることになるのです。

面白いシステムですね。極めて平和的な志向の民族と考えられます。

■ 現在の地球の状況を眺めるまでもなく、世界の到る所で戦争や紛争が絶えません。個人間に置き換えても闘争/ケンカは絶えず、また、先祖返り?でもあるまいし、古代レスリングを再現したような流血の格闘技が存在し、それを多くの若者が観戦して楽しみます。

本来の闘争本能は個の存在維持の為に付与されたもので、その為に防衛本能、攻撃本能が備わっていると考えます。本能である以上、否定はできません。しかし、人間/武道人の理性はそれにどう関わるのでしょう。

現在の地球の状態はちょっと病的/暴力的な感じがします。ペタス選手の骨折事故の為に購入した『格闘技通信』に、気が重くなる編集後記が書いてありました。

■「オランダの格闘技雑誌をみていたら“読者が選ぶベストファイター”みたいな企画があった。…ホーストやシュルト、アーツらもベスト10には入っていたが、それより、あの“喧嘩屋”が上なのだ。つまりオランダのファンは、技術より、いかに激しい試合をみせるかに、価値を置いてるってこと…技術を語るのは大切だが、そういう価値観も持ち続けたい。(S)」

私が掲示板に書いた通り、「英国のフーリガンも悪名高いですが、オランダのフーリガンは相当危険らしい…! オランダは格闘王国と言われるくらい格闘技が盛んだそうですが、フーリガンの暴力性となにか関連があるのでしょうか…?」(投稿日: 6月11日(火)12時23分30秒)

なにか符号していますね…。また、オピニオンリーダーたるマスコミの編集者の姿勢がこうでは、推して知るべしです…。この先、ワールドカップがどこかの国で開催された時、武道本家の「日本人のフーリガンは危ない!」なんてことにならないよう、切に祈っています。

頑張れ! 武道人!


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あつみ [MAIL]