道院長の書きたい放題

2002年03月13日(水) ◆拳の握り方!

拳の握り方を考えてみました…。

■ 空手の経験者は、(全てとは言いませんが)独特な拳の握り方をするのに気が付きました。新入門に「正拳を作ってみなさい」というと、中には第2〜5指の第1関節からギュッと、甲をやや反らし気味に曲げて拳を作る人がいます。まず空手の経験者とみなします。つまり、熊手状の形を一端作り、次に根元から曲げるのです。これは、堅い物をイメージして突いていたからではないでしょうか? あるいは、左右の手の役割が分化していて、片方は拳、片方は手刀となっていて、一端、拳を握ると容易に解かなかったのではと推察されます。

対して少林寺拳法は、一気に根元から曲げ握ります。違いのニュアンスが伝わりますか? 剛柔一体に使用する場合、時に拳、時に手刀、時に掛け手と、瞬時に手の形状を変化させます。目打ち、中段の段突き。(襟十字などの)目打ち、掛け手などなど。まるでアーミー・ナイフの様で、正拳はあくまでその一部だからです。

■ ところで、手の第1指と第5指は対立筋になっており、片方を伸ばせば、片方は曲がる。あるいは五指を張る際、1指と5指を張るほど良いという関係にあります。したがって、少林寺と空手の手刀の形状は、実はどちらも自然な身体操作で、強く張ったり伸ばしたりすれば、より作り易いのです。

初心者を見ていると、蹴る時など、拳を作っているようで親指が立っているケースがありますよね…。コヒーカップを、小指を立てて飲んでいる人を見かけますよね…。若い女の子などは「イヤラシイ!」と言いますが、これ、対立筋だからです。私などは、意識して小指を立てないように飲みます…。ですから、手刀より正拳を作る方が、より学習的な動作といえましょう。

『わが柔道/木村政彦著』中に、相手の道着を握る力を強くしたい為に空手の巻藁を突くクダリがありますが、非常に面白いです。対立筋のこと。拳の握りは後天的な学習動作であることが判ります。

■ ジャンケンをする時の握りだと思うのです。少林寺拳法拳の拳の握り方は…。根拠があります。「カッパブック/秘伝少林寺拳法」の中に各種、拳の図が載っています。ちなみに初版の教範以外に「拳の図」はありません。そこには、人差し指の第2関節を伸ばし親指を重ねている拳がありますが、この拳は、一端、熊手状の握りをする方法では絶対に作れません。ただし、ゆっくりやれば出来ます…。これが出てくるので、少林寺拳法の拳の握り方が了解されます。

話はここから面白くなってきます。『新空手道教程(普及版)/中山正敏著』の中にも、人差し指を伸ばす拳が「拳の握り方2」として述べられています。実は今、判りましたが、冒頭の握り方は「拳の握り方1」なのでした。

ところが、最近の同書/改訂版にはどうした訳か「2」がありません…。私の持っている本もかなり古いのですが、発行年月日がどこにも書いてありません。何年前からそうなったのかは、詳しく調べませんでした。いずれにせよ、身体操作的に正反対の握り方でしたから、統一したのでしょうか…? 「1」は握る強さはあっても、素早さにおいては「2」が勝ると思います。

「空手は豪壮。少林寺拳法は飛燕の如く」と開祖は喩えられましたが、正拳の握り方にもそんな違いがありますね。

拳の握り方は重要なので、また述べたいと思います。


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あつみ [MAIL]