道院長の書きたい放題

2002年02月06日(水) ◆(続) K1対 猪ノ木軍/異次元の戦い!

前回、異種格闘技戦を観戦して感じたことは「次元の違い」と述べましたので、続きを述べます。

■ 「次元」と表現したのは、打撃系と組み技/寝技系が激突した時に出現する技術、戦い方の違いでした。しかし、個々のルールの違い全てが、実は次元ということになり、さらに心象も含まれます。

立法上と平面上の戦いは自身に有利な空間の奪い合いで、試合場の形状が重要となります。試合場に壁があれば、相手を押し付けられる組み技/寝技系が有利であり、辺り一面の草原であれば、フットワークが使える打撃系が有利です。もっとも、壁/ローブを利用して倒されないようにするという逆の発想もありましょう…。

■ 個人の闘いとは異なりますが、毛利元就が陶晴賢を破った厳島の戦いは、大軍を身動きママならない小島/小空間に誘い込んだからであり、逆に、浅井の裏切りで大軍を閉じ込められた信長は、躊躇せずに脱出しています。

近代では、日本海軍は巨艦主義で空母に目が向きませんでした。これは戦いを海面上での戦艦対戦艦、つまり平面上のみで考えていたからであり、海と空、航空母艦と飛行機という立体的な戦いを考えていたアメリカ海軍に大敗しました。Uボート作戦のドイツ海軍は、同じ海でも海面から下の立法を考えていたのでしょうか…。

現代ではベトナム戦争におけるジャングル戦と地下壕作戦。アメリカ軍の戦闘空間の概念は全く通じませんでした。さらに深刻な戦闘様式/空間の食い違いは、今回の同時多発テロ事件に認められます。したがって、ブッシュ大統領が「これは新しい戦争だ!」と表現したのは、このような意味合いをも含むと考えています…。

戦争で興味深いのは、フランス/ナポレオン対ロシア、日中戦争、旧ドイツ対ソ連、戦争を仕掛けた側がすべて小国で、国土/空間の概念がかけ離れていたと思わざるを得ません。特に、ロシアが自らの領土を焦土と化したモスクワ炎上/焦土戦法は、狭い国土のフランス人の常識には無かったんでしょうね…。

■ 心象が含まれると、事情は複雑になります。心象という言葉には宗教、教条が含まれますが、自爆は戦争/闘争における最悪の精神状態です。そこまで言わなくても、単なるケンカと思っていたら、相手は「殺すつもりだった!」などということも有る訳です。ですから、他人同士のケンカの仲裁は良く見極めないといけません。大変危険です。

格闘技の世界の宿命(?)として、最強論、あるいは最強者論があります。これは今まで述べた通り、ルールという範囲上になりたつ仮想の論です。ノンルールの異種格闘技戦などは、まず試合場の決定からして大変であり、また、なにをもって勝ちとすべきかも難しい問題です。よしんば勝っても、どちらかが死亡したり片輪になりかねません。

それでも、(仮に行われるにしても)興行なら最低、素手というルールは守られるでしょう。しかし、路上闘争でのノンルールは、凶器が持ち出されたり、複数で掛かられたりを覚悟しなければなりません。現実に鼻を噛み千切りに来る者がいるのです。また、その場はいわゆる勝ったとしても、こっぴどくやっつけてしまえば後々の仕返しが予想されます。

■ 少林寺拳法の技法である地王拳。目突き、金的蹴りと一般的には大変卑怯な攻撃です。また、いきなりの首締めなどに対する技法や対凶器の法形もあります。これらは拳士が用いる攻撃ではなく、路上闘争での用心を教える法形と考えます。

開祖は「負けたと思わなければ負けではない!」と語られています。この言葉は、自分にも相手にも同様に当てはまり、したがって「愛撫統一」しなければ真の勝ちを修めたとは言い難いのです。開祖の闘争に関する次元は一般的な武道人とは異なるようです…。

次回は、異種格闘技戦に現れた具体的な技法について述べたいと思います。(続く)


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あつみ [MAIL]