空虚。
しずく。



 メロディ。

すぐにあなただと解かるよう。

着信メロディを変えていた。

その音が鳴るたび、胸がドキドキした。

ボタン一つ押すだけで、声が聞ける。

・・・、

あなただと知らせる、着信メロディ。

心臓が、冷たく波打つ。

携帯電話を壁に叩きつけて、耳をふさぐ。

音が止むと同時に、電源を切った。


いつから、だろうね。

あなたの音が、ただ痛いだけに変わったのは。


机の引き出しから、替え刃を取り出す。

一本を選び、紙で表面の脂を取る。

カッターの底を外し、使い古した刃を取り出す。

新しい刃をはめ、元どおりに底をはめた。


ゆっくりと、上にスライドさせる。

まだ血を吸ってない、鈍く光る刃。


すっ。

肉が裂けて、血が出て。

「・・・満たされるはずもないけど。」

左の二の腕、左腕。

右の二の腕、右腕も。

手の甲、頬にも刃を当てる。


流れ出る血を手のひらですくう。


ざり、ざり、ざり。

「生臭い。」


『俺、死んでいいか?』

・・・勝手に死ねば。

声の主も、詮索しない。


こんな手でも、ピアノが弾ける?

「弾けるよ。」

選んだ一曲。弾いて。


醜く隆起した、紅い線が残った両腕。

手元に残った、約四十錠ほどの薬。

「どうして飲まなかったのだろう。」

あの人から、連絡があれば。

飲めたはずなのに。


畜生、畜生、畜生。


夢か、現か、幻覚か。

自分の内臓を引っ張り出した。

垂れ下がった腸を持ったとき、とても興奮した。

このままオナニー出来そうなくらいだ。


泣きたくなってきた。

父親も、母親も、弟も。

泣きたくなってきた。

その、一言一言が突き刺さる。

泣きたくなってきた。

ああ、殺したい。こいつら、殺したい。

泣きたかった。

こんなやつら。こんな。


全部お前らのせいだ。

嫌いだ。畜生、死ね。


あんたもだ、みんなだ。


ほら、壊れてきた。

2002年06月19日(水)
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