空虚。
しずく。



 無題 一。

カッターを取り出して、二の腕を切ってみた。

痛みがまったくなかったから、徐々に力を込めていった。

申し訳程度の血が出た。

まだ力が足りない。

もっと深く切らなければ。


目の前が暗くなってきた。

貧血だろうか。

身体の動きが鈍ってくる。

太ももに刃を当てて、適当に動かした。

切れた。血が出た。


掲げた旗に目をやった。

「・・・Sieg Heil」

この場にそぐわない言葉を呟く。


少し気分を変えようと、シャワーを浴びた。

乱暴に、傷口をこすった。

あまりにも痛みを感じない身体に腹が立った。

バスタオルで身体を拭きながら、またこすった。

ちりっと、痛みが走って、血が出た。

少し、満足した。


「手に入らなければ、壊す」

悪名高き独裁者はこう言った。

その言葉と生き方に少しだけ何かを動かされた。


自分が転がり落ちそうな、嫌な予感がした。

2002年06月07日(金)
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