空虚。
しずく。



 手錠。

支柱に鎖を通し、手首に錠をかける。
手首に走るおぞましい感覚に、笑う。
金属の冷たい感触で、これなら・・・、
他人に触れられたら一体どうなるんだろうな。

金属の触れ合う音がする。
冷たいこの感触が、
よく解からない気分をもたらす。
これは、何だ?
かつて感じた・・・、

懐かしく、
おぞましく、
泣き叫んだ?

・・・、
それにしても、
間抜けな格好だ。
自分で自分を拘束するなんて。

なんとなく、
変態。
と口にしてみる。
別にこれに快楽を感じるわけじゃないが。

ふと、手元にあったカッターを遠くに投げた。

"切れない刃は要らないんだ。"

癇に障る。
過剰な反応を示すこの手首。
一体何があったって言うんだよ。
私は何も知らないのに。

ここまでくるともう、"他人"だ。
この中に"私"など存在していないんだ。

ああ、解からない。
まるで迷路だ、この中は。
無数の鏡が映し出すのは、私、か?

・・・ここは、暗いよな。
光が射し込んだことすらない。
そう、君の愛する"あの人"すら照らせない。

いつまで瞳を逸らすんだ。
光を宿さなくても構わない。
受け入れなくてもいい。
ただ、拒むな。

見ろよ。
これを。

作り上げたのは、お前だ。

この闇をはらせるのは、"私"しかいないんだよ。

2002年03月15日(金)
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