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re-invention



 応時中で学ぶ

今日は玉置先生お薦めの応時中へ。
見開き一枚,カラー印刷の学校要覧からして違う。
やりたいこと・伝えたいことが一目瞭然。
教員のベクトルが明確でぶれないことが伺える。
目標だらけで,結局何をしたいのかわからない学校とは大違い。
来校者からのアンケートも,次に生かすことを考えてのもの。

掲示物が抜群にいい。
















生徒一人一人の掲示が廊下に張り出されているのは,
いたずらされないからできること。
行事についての掲示物もいい。

思春期の子どもの
ハートをくすぐる掲示物も
あちこちに。
こんなものを,自分も
もっとふやしていきたい。


まずは公開授業。
数学,采女先生の授業を見せていただく。
授業が始まると,何と自己紹介。
こんな一言がさっと出るところが凄い。

前回欠席者が多かったため,復習から。
「確率は1が一番大きい。」
生徒のたったこれだけの言葉を取り上げて,
小さな語り合い・学び合いを行わせる。
それだけでもその意味を生徒同士が話し合い,思考している。
集中させる聞かせ方がいい。
「それってどういうこと?」「もう一度言ってくれる?」
次々に指名されて,生徒も緊張感の中で必死に聞こうとする。
巧みなキャッチアンドレスポンス。
教師の語りの中でのキーワードを,
まるで穴埋め問題のように生徒に語らせていく。
なるほど,なるほど。
授業のテンポのよさ。
「何で確率1/2?」に対して当てた生徒は
「裏と表だから。」
生徒の答えに対して間髪入れず「あっ,そうだったよな。」
こう言われたらうれしいだろうな。
ペットボトルのキャップの表裏が1/2でないわけについても,
「教科書に書いてあるから」 「教科書何ページ?」
「よく見ているね。教科書便利だよな。」
単語だけの生徒の語りを認め,きちんとつないでいく。
自分なら,こうは受け止められないだろう。
生徒の言葉を引き出すタイミングの気持ちいいこと。
生徒の発言に間髪入れずに受容する発言ができるのがいい。

所々で「笑うところですよ」・・もいい。
「一枚のコインの出る出方は,表と裏。
 これOKな人,手を挙げて。」
手を挙げさせることで生徒の参加意識が高まる。
手を挙げることで,体の力が柔らかく抜ける感じ。

いくつかのスモールステップの後,
本時の課題を板書。
「一枚のコインを○回投げたら,何通り?」
まずは2回から。
確認の後,生徒の要望を取り入れて
一気に4回へジャンプ。
これもいい感じの展開。
4人班になって,それぞれが考え,話し合い。
「○×と×○って一緒じゃないの?」
樹形図を描いていながら,
そうでない発想の話も聞く女の子。
柔らかな空気が流れる。
樹形図の良さは,
そうでない数え方をして
はじめてわかること。
学びは単純ではない。
本時の目標は,「数え方の工夫」・・・なるほど。

しばらくして,
「一生懸命に数えるのは良いけれど,数学の授業だから,
 ちょっと整理できないかな? 工夫してごらん。
 人に説明するときにわかりやすく整理してごらん。」
という投げかけで,数学化へ生徒を誘う。
5回だったらどうなるのか,を始めている生徒もいる。

思わず顔がほころぶ授業。ここへ来て良かった!!
同時に,単なるテクニックだけではない,
授業者のねらいや授業展開の確かさも見えてくる。
自分が学ぶべきことがここにある!
生徒たちに無性に会いたくなる。

樹形図を描けたから分かったのではない。
「これは3回目には,何が出たの?」
「4回目には,何通りなの?どこを見たらいいの?
 もう一回グループで。」
刺激し,理解を確認。
思考を深めるためのグループ活動だけでなく,
正解を確認するためのグループ活動があるのは,
自分のスタンドアップ方式と同じ。
さらに全体できちんと確認しているのは大きな差。

「それなら,5回投げたらどうなるの?・・・どうぞ!」
「16×2」「えっ? 16×2,どういうこと?」
切り返しの速さ。
「ちなみに何通りになるの?」
「○○君が2の累乗になるって言っていたんだよな・・」

次の時間は,いろいろな先生の授業を見せていただく。
中でも,school55のコラムで拝見していた栗木先生の授業で,
なるほどと思うことがいくつも。
ワークシートや
生徒同士を関わり合わせる雰囲気も,もちろんだが,
何より教師の聞く姿勢が素晴らしい。
全体で生徒に発言させる場面では,
中央の椅子に先生自身も座って
生徒の発言を聞かれている。
主役は生徒。
教師は引き立て役という姿勢。

教師の体の柔らかさ。
だから生徒の体も,上手く力が抜けている。
荒れた学校を乗り越えてきた自負がここにもある。

自分のスタンドアップは,
生徒の不安を利用しているのもしれない。
コの字形座席と4人班のグループ活動は,
生徒間の安心をベースにしている感じ。
一人一人の声は小さい。
でも,考え・学んでいるように見える。

授業の約束とは別のところで学びが起きている。

掲示されている
「教えてと言うまで教えない」というのとは,ちょっと違う。
それぞれが学んで必要なことをやりとりしている。
阿吽の呼吸ができている感じ。
声に落ち着きがありトーンが違うのも,それがあるから。
どのクラスにも掲示してある,
「授業は真剣勝負」は伊達じゃない。

聞いてつなぐことができるか。
ファシリテーターになれるかどうか。
堀田先生のメディつきで感じた個々の学びが,ここにはある。
生徒の思いが伝わってくる。
ベースとなる人間関係のよさがあって,この授業がある。

よくよく聞いてみると,コーチングだけでなく,
様々な人間関係づくりのプログラムを行っているとのこと。
南山大学の主催する研修会に参加したり,
南山大学の先生を招いて,校内研修を行い,
それを元に,年間を通して道徳や学活で,
人間関係づくりの授業を実施しているとのこと。
自分の学校が来年度行おうとしていることをすでに
4年前から実行していた学校があったのか。


中心授業は社会。「杉田玄白になろう」
原書に当たる面白さ。
ターヘルアナトミアのオランダ語原文を
中1の生徒に翻訳させるのが課題。
いくつかの単語の訳を書いた紙を元に,
たった8行ばかりの部分を訳すのだが,
生徒は本気。

これも4人グループでやることで,
それぞれが貢献しようとする気持ちを引き起こす。


授業者以外は,
生徒の目線になって
生徒を観察している教師たちもいい。
普段から,
生徒を本当に受け止めようと
しているから気づくこと。できること。

生徒と同じ視線になると,それまで見えなかった表情が見える。

それぞれが本当に
いい顔をしている。
だからこそ,
生徒が話す言葉の本当の意味も
見えてくるのだろう。


効率を考えたら,もっといい方法もあるのだろうけれど。
真剣にアンダーラインを引き,単語集をチェックしていく生徒。
「これってc?e?」と聞く生徒の問いかけにも,
「どう思う?」と切り返して任せる。
生徒も,「じゃあeにしよう」と言って読み込んでいく。

ここから,どこで集団に持ち込むのか。
どこまで待てるのか。何を問うのか。
生徒の本気度が見て取れる中で,悩む授業者。

14:00「いったん止めてください。」
   「これはどこのこと?」という投げかけ。
残念ながら,班の話し合いが深まったり進んだわけではない。
教師の思いをよそに,何とか翻訳を試みる生徒。
つぶやきを拾うと,一生懸命さは伝わってくる。
どこかでジャンプがおきるのだろうか?

「これは何のために使う道具ですか?嗅覚に使う。」
「なんかおかしいな。何がおかしいんだろう。」
「全部だよ,道具というのもおかしい」
「道具だろ?いいんじゃない?」

「これnがないよね。ingでなくてigになっている。」
「ホントだ。違うのかな?」
「昔から言葉が少し違うとか。ウーン」

「この文どこまで?」
「英語と一緒。動詞は最後じゃない。主語があって・・・」

「この多くの役に立たない 無駄な 液体は・・・」
「もう・・・何でもいいや」
「何でもよくなくないから,今考えているんだよ。」
「もういっぺん言って。もう一回言って。」
「わかるけど書けない。」

授業者なら,焦るだろうな。
授業終了8分前に「はい 残念だけど止め」
翻訳を言う一人の生徒の発言を,しっかり聞く他の生徒。

「やってみてどうでした?
 見たこともない文書を訳すのは難しかった?
 あの人たちもそう。
 でも,あの人たちより,君たちの方が情報がある。
 あなた方がやったように,30分の作業を,
 あの人たちも,少しずつわかる単語を繋げて,
 4年掛けて翻訳したんだよ。
 一つの単語がわからずに,2日もかかったこともある。」
「昔の人の功績が,わかりましたか?
 ノートに振り返りを書いてみよう。」
「オランダの辞書がなかった。当時は鎖国だった。
 もっと外国の文化が入ってきたら違っただろう。」
授業者の熱い語りは,まだまだ続きタイムアップ。

その後の研究協議も面白い。
生徒一人一人の学びをとらえようとしているから,
出てくる言葉が具体的。
本音で突っ込んで,今日の授業のポイントをとらえている。

佐藤雅彰先生のご指導も,なるほどさすが。
・忍耐ではなく忍待
・聞く力を子どもに持たせるためには,教師が手本を見せること。
・聴く・・,耳だけが多い。眼,心の眼で聴くと言うことが大事。
 見ようとしない人には見えない。
・グループ活動の時に,前段でもう途切れていた子がいた。関わってほしい。最後尾を後押しする先生になってほしい。自分の目から,どの子がはずれそうかを見てほしい。
・子どもの気づきから入っているのがいい。それが本来の学びのスタート。偶然子どもは教材に出会う。わかりたいという気持ちが必然になっている。
・子どもたちにとって新しい知識を繋げてあげられたときにジャンプが生まれる。止めても良かったと思う。
・差異を埋めるのが教師の役割。埋めるときに,課題を低くする。そうすると,友達に依存しない。依存できることが大事。授業の中で,困っているなと感じることが大事。
・差異を作るのではなく,感じることが大事。一生懸命説明するときに,聴いていることもあれば,聴いていない子もいる。一斉でもできる。なにかわからないところがある?と聴いてもいい。でも,それを聴いていると時間がかかり,授業が単調になる。だからグループ。グループは一つの手段だが。埋めるために聴いて−つないで−戻す。これがキーワード。
・これが高い課題かどうかは生徒や学校によるはずだ。自分の目の前の子どもを見て考えるべきだ。自分で作れる教師になってもらいたい。
・応時中は3年生が良いなあと,育っているなあと思った。一年生も落ち着いていた。目立つ子はいる。でも,そんな子が学びの中に参加する,それが大事だ。それが子どもたちの幸せにつながる。それでもなおかつ,参加できない子がいる。だからケアしてほしい。そんな子のそばに立つ先生でいてほしい。

協議会の後も,教頭先生や采女先生から,
たくさんのことを教えていただく。
帰りの電車の中でも,いただいた資料をひたすら読む。
あっという間に静岡へ。

2006年02月22日(水) 過年度生の出願に思う
2005年02月22日(火) 2次選抜発表
2004年02月22日(日) 責任の所在


2007年02月22日(木)
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