doo-bop days
ブーツィラの音楽雑記



 安東ウメ子さんのDVD発売

故・安東ウメ子さんのDVD『ウメ子ウポポ全曲集 けうとぅむ』が完成した。制作はマクンベツアイヌ文化伝承保存会と幕別町教育委員会で、4/10(月)から幕別町教育委員会などで販売されている。

アイヌ音楽伝承に尽力、故安東さんの歌声 幕別の団体などDVD制作(『北海道新聞』2006年4月7日付 )

DVDは、2003年12月から亡くなる約4ヶ月前の2004年3月まで(注)に安東ウメ子さんがこの世に遺したウポポ(アイヌ語で歌の意)全31曲を収録。ウメ子さんが保存会の余興やライヴでも披露したことのある、アイヌ語による「北国の春」も入っているそうで、ウメ子さんの姿はもちろん、録音時の映像や十勝の自然風景も収められているとのこと。

DVDの値段は3,000円(+送料)。制作数は800枚。私は4/10(月)に送金したので、DVDは早ければ今週末あたりに届くだろうか(→追記4/15到着)。

アイヌ文化・ウポポの伝承者 故安東ウメ子さんの歌声後世に 〜(十勝メールドットコム[幕別町めーる]2005年2月26日付)
→4/14追記故安東さんの世界を後世に DVD「けうとぅむ」製作(十勝めーる[幕別めーる]2006年4月6日付)
→(注): 『北海道新聞』2006年4月7日付の「○四年三月までの録音」は誤りで、実際は2004年4月23日までの録音を収録している(DVD入手により判明)。

→4/30追記DVD『けうとぅむ』の感想
DVD『けうとぅむ』は、安東ウメ子さんの熱心なファンの方なら、是が非でも入手しておくべき作品である。制作数800枚の完売後、再プレスされる保障はない。

ウメ子さん最晩年の闘病中における録音ながら、あの自然体で揺らぎのある優しい歌声は、本DVDでも健在。なかでも、ラスト・レコーディングとなった2004年4月23日(亡くなる約3ヶ月前)の、「マツエヤイサマ」(即興曲, 荒田マツエ伝, 『イフンケ』収録の「ヤイサマ」と同曲)を歌うウメ子さんの姿をとらえた映像でのウポポは、本作のハイライトと言えるくらいに素晴らしい。このシーンには、ウメ子さんのウポポの神々しさまでもが真空パックされている。
なお、本DVDにムックリ(アイヌ民族の口琴)の演奏は入っていない。トンコリ奏者のOKIとウメ子さんのコラボレーションでは取り上げられなかったウポポは、7曲収録されている(アイヌ語による「北国の春」を含む)。

ところで、DVD『けうとぅむ』はいろいろと不満のある作品でもある。大きく分けて3つ挙げておこう。
1つめは、DVDの本編である「ウメコウポポ全曲集」(70分)には、ウメ子さんの映像は一切収録されていない。北海道十勝地方の四季の自然風景にアイヌ民族の儀式や踊りなどを挿入した本編映像も悪くはないが、DVDの特典映像で追加収録的な「ウポポ録音風景」(30分)と同じように、ウメ子さんの歌う姿とウメ子さんの魅力の一つであるトークのみで構成すべきだった。

2つめは、DVDの本編「ウメコウポポ全曲集」(70分)におけるウメ子さんの歌声には、リヴァーブが施されている。曲によって程度の差があるが、リヴァーブの作為的な響きが耳に付くウポポもある。ウメ子さんのウポポを永久保存し、後世に伝えるという本作の趣旨と、リヴァーブなしの「ウポポ録音風景」(30分)での歌声から判断すると、リヴァーブは不要に思える。そのうえ、本編映像には、ウメ子さんのウポポに鳥のさえずりや川のせせらぎなどの音が、擬似フィールド録音/効果音風に被せてある曲も多い。これらは、あまり気にならないとして受け入れる方が多いかもしれないが、個人的には初めて本作を見た時はもちろん、現時点でも違和感があるのは否めない。

3つめは、安東ウメ子さんが逝去されたのは「2004年7月15日」と新聞等で広く報道されているが、「ウポポ録音風景」(30分)のエンディングの画面には「2004年7月14日」と出てくる。これは誤りではないか。さらに、人の名前も正確に記すべきと私は思う。DVDのパッケージ等において、「ウメ子ウポポ全曲集」ではなく、「ウメコ〜」とカタカナで表記してあるが、いかがなものか。

以上、いろいろと不満はあるものの、ウメ子さんの真の遺作であるDVD『けうとぅむ』をほとんど毎日見ている。大腸がんという病にも関わらず、亡くなる直前まで歌い続け、貴重なウポポをこの世に遺してくださった安東ウメ子さんに改めて感謝している。

2006年04月10日(月)
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