doo-bop days
ブーツィラの音楽雑記



 「エレキの神様 学校へ行く! ギタリスト 寺内タケシ」

ジミ・ヘンドリックスのオフィシャル・ブートCD『Live At The Isle Of Fehmarn』(Dagger Records)が2005年12月に発売されたが、本作はピッチが高い(速い)。Dagger Recordsでは、ピッチの問題はプレス・ミスとの理由から、CDの交換を受け付けているらしい(『PAGE FULL OF JIMI』 - 「Guest Book」2006年1月9日付より)。『Live At The Isle Of Fehmarn』は、私の所には12月下旬に届いている。やはりピッチが高い(速い)ものの、交換依頼はまだしていない。
本作は基本的にはネット通販のみだが、店頭販売で購入することになった際は、ピッチの狂っているプレス・ミス盤を掴まされないよう注意が必要である。

「才能――そんな言葉は大人の負け言葉だと信じてやってきた61年だったよ。まさかこんなにやってくるとは思わなかった。でもたった一つ、半世紀以上、61年かけて、泣いて笑って命を懸けてわかったことがある。一言だ。『ギターは弾かなきゃ音が出ない』、たったこれだけわかった。いいかみんな、この世の中、なんのかんのと能書きだらけだろ。能書きガタガタ、能書き言ったところで何も出来やしない。今から長い人生待ってるぞ。もし迷った時は、この言葉を思い出せ。『ギターは弾かなきゃ音が出ない』。そしてな、思い出深い良い人生送るんだ。また会おう、押忍!」

2005年12月13日に神奈川県大和市のある中学校で行われた、寺内タケシとブルージーンズのスクールコンサート。上に記した寺内タケシのMCに続き、約2時間のスクールコンサートの最後は、寺内タケシの代表曲の一つで、津軽民謡を寺内流エレキ版にアレンジした「津軽じょんがら節」で締めくくられた。
「感動しました」「凄かった」「ノリが良かった」「おじさんって感じがしない」「すげぇカッコよかった」
画面に映るどの生徒も興奮気味で、素直に感動している様子がダイレクトに伝わってくる。

録画しておいたビデオを先日見た。番組は、1/20(金)AM8:35〜9:25放映のNHK総合テレビの『生活ほっとモーニング』「エレキの神様 学校へ行く! ギタリスト 寺内タケシ」と題し、寺内タケシが50分間生出演した。

1965年、栃木県足利市教育委員会がエレキ禁止令を出したのを発端に、「エレキギターは不良の温床」として、全国規模でエレキ弾圧・追放運動が起きたという。番組での寺内タケシの発言によると、エレキのライヴに行ったら停学、エレキをやったら退学らしい。そんな全国のエレキ少年たちからの窮状を綴った手紙や声、エレキ禁止令への反発から寺内タケシが始めたのがスクールコンサートである。

もっとも、当初は学校関係者の無理解に苦労したそうで、スクールコンサートの実現に向け、寺内タケシは3年間で100校回ったものの、どこも門前払い。話だけ聞いてくれた学校でさえ、たった3校のみという。落ち込んだ寺内タケシが「恥を忍んで」訪れたのは、故郷の茨城県土浦の母校だった。
「噂には聞いていた。泣くんじゃない。うちの学校でやれ。正式に『芸術鑑賞会』として取り上げる。命を懸けてもお前を守る」
母校の校長(柔道八段)の理解と協力により、エレキ禁止令から3年後の1968年、寺内タケシは母校の茨城県立土浦第三高校でのコンサートを実現した(寺内タケシの第1回スクールコンサートは、公式には1974年らしい?)。
寺内タケシによると、年間180回行うコンサートのうち、40回がスクールコンサートとのこと。1回につき百万円もの赤字を背負うことになるスクールコンサートを、寺内タケシは今までに約1,300校で行い、2004年12月には、音楽を通じた青少年教育に貢献したとして、文化庁長官表彰を受けている。

番組の後半は、寺内タケシのエレキ人生 / エレキひと筋60年。有名なエピソードもいくつかあるが、後半の主な内容を箇条書きで記しておこう。
・初めて手にしたギターは5歳の頃で、出征した兄が所有するスペイン製のクラシック・ギターだった。
・小唄と三味線の家元である母が弾く三味線の音の大きさに対抗するため、電話のコイルを利用してエレキギターの原型を作った。
・戦時中、防空団長だった寺内タケシの父(市会議員・市会議長、実業家、電気店も経営)は、空襲警報のサイレンを鳴らす担当だった。ある夜、寺内タケシは自作のエレキギターが鳴るよう、空襲警報用の16本のラウドスピーカーにつなぎ、爆音を轟かせた結果、市中の人々は空襲警報と勘違いして防空壕に避難。翌日、父は特高警察に連れて行かれた。
・映画作家の大林宣彦とギタリストの渡辺香津美からのコメント(VTR出演)
・競演した二人について − 元ヴェンチャーズのノーキー・エドワーズおよび故チェット・アトキンス(指の大きさがバナナくらいあった: 寺内タケシ談)
・番組の最後は、男性司会者のリクエストに応えて「禁じられた遊び」のエレキギター独奏による生演奏。これが絶品だった。寺内タケシはリクエスト曲を事前に知らされていなかった(?)ようで、久しぶりとなるこの曲の演奏に「緊張した」らしい。

「エレキの神様 学校へ行く! ギタリスト 寺内タケシ」は、とても充実した内容の番組で、一度きりの放映ではもったいない。エレキギターを弾く度&いくら練習しても、「エレキギターの入り口が遠くなる」「いつまで経ってもエレキギターの入り口に辿り着けない」との寺内タケシの発言も印象的だった。

寺内タケシ(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
寺内タケシとブルージーンズ ハイスクールコンサートの御案内(『TERRY TERAUCHI OFFICIAL HOMEPAGE』)
第53回 音遊人 2005年4月8日放送 ギタリスト 寺内タケシ(テレビ東京『音遊人』)

2006年01月23日(月)
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