doo-bop days
ブーツィラの音楽雑記



 密林のポリフォニー / イトゥリ森ピグミーの音楽

アフリカの密林の奥地を移住しながら生活し、大人でも身長140cm前後というピグミー族。
古代エジプト人は、ピグミーの歌と踊りの素晴らしさを約4,500年も前から知っていたという。
そのピグミーの音楽の一端に触れられ、入門編としても最適な本作は、1983年8月、アフリカ大陸中心部のザイール共和国(現コンゴ民主共和国)イトゥリ森において、ピグミーの音楽を現地録音したCDである。

収録されているのは、密林に入る拠点となる宿の番頭によるリケンベ(親指ピアノ)の弾き語り。子供を含む部族の人たちが誰からともなく即興で歌い、反応しあいながらも、全体としては絶妙なアンサンブル&精緻で美しいサウンドとなっている合唱。リズムとハーモニーが次々と重なりあうリケンベと合唱によるトラック。いつまでも聴いていたくなるようなリケンベの三重奏など。どのトラックも驚嘆させられるものばかりで、ピグミーの音楽が「人類最高の音楽」とまで讃えられているのも頷けてしまう。

視界が極めて限られる密林で生活するピグミーにとって「音」は、危険の察知や動物の動き、仲間への伝達など、あらゆる場面において大変重要な意味を持つのだろう。「文明人」とはまったくの別次元へと聴覚を研ぎ澄ます環境で太古から生きてきたピグミー。その音楽的才能が驚異的レベルにあるのは、もしかしたら当然なのかもしれない。

本作は、高性能の録音機材の使用により、あたかもその場にいるかのような臨場感のある音となっている。密林における鳥や虫の鳴き声といった自然音/環境音も、ピグミーたちのサウンドの一部と化しており、とても心地よい。
ピグミーのCDならほぼ無条件で購入し、聴いていこうと思わせた作品である。

『密林のポリフォニー / イトゥリ森ピグミーの音楽』(『Polyphony Of The Deep Rain Forest - Music Of The Ituri Pygmies』, ビクターエンタテイメント)

2004年09月17日(金)
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