TOM's Diary
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2004年06月10日(木) 雨の中のS氏

S氏は雨が好きであった。
だが、雨の中出かけるのは好きではなかった。
だから梅雨のこの時期S氏は出かけるのがとても億劫である。

S氏は傘をさして道を歩いていると、大きな水たまりがあった。
台風でも近づいているのだろうか?
激しい雨で、もう、靴もズボンの裾もびしょ濡れである。
S氏は気にせず水たまりに足を入れた。

「うわっ!」
S氏の身体が突然浮いた。

目の前にあぶくがいくつも見える。
水の中に浮かんでいるようだ。
上を見上げると水面が見える。
水たまりの中をのぞき込む子供の顔あ見えた。

どうやらS氏は水たまりの中に入ってしまったようだ。
まさかこんなに水たまりが深かったとは・・・
これでは水たまりではなく池ではないか。
どうして町中のアスファルトの歩道にこんな大きな池が広がっているのだろう。
いや、いくら何でもそんなことはないだろう。

これはS氏が突然小さくなってしまったに違いない。
その証拠に上に見える子供の顔はとても大きい。

子供がこちらを指さして誰かを呼んでいる。
S氏は突然恥ずかしくなった。
できればそっとしておいて欲しかったが、子供は容赦ない。
いや、助けを呼んでいるのかもしれない。

「やめろ」と言おうと思ったところで、ふと息をしていないことに気が付いた。
そうだ、水中だから息が出来るはずがない。
突然苦しさを感じて必死で水面に向かって泳ぎはじめた。
傘が邪魔だったので傘を投げ出した。

S氏はもともと泳ぎが上手くなかったのでなかなか水面が近づいてこない。
子供がこちらに手を伸ばしてきた。
必死でその腕を掴む。
子供が慌てて手を引いた。
その弾みでS氏は水面に顔を出した。


S氏は我に返ったように必死で空気を吸い込んだ。
どうやら足を滑らせて転んでしまい、気を失っていたようだ。
全身びしょ濡れで水たまりの横に倒れていた。
それにしても気を失っている間に嫌な夢を見てしまった。
いくら夢の中とは言え、水たまりの中に落ちるなんてどうやったら思いつくのだろう。
自分の夢のばからしさに呆れてしまう。
これだから雨の日は嫌いだ。

先ほどの子供が親を連れて戻ってきた。
「大丈夫ですか?この穴深いんですよ、何人もここで溺れてるんです。
まったく役所に何度も言って・・・」
S氏は身体を起こそうと手を水たまりにつこうとしたとたん、
再び水中へ転落したのだった・・・


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