TOM's Diary
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2004年06月11日(金) S氏ニュースを見る

S氏はニュースを見ていた。
S氏がテレビでニュースを見るのは珍しい。
いや、テレビを見ること自体が珍しい。
普段テレビのスイッチを入れるときは大概がビデオなどで
映画を見るときであって、ニュースを含め普通のテレビ
番組を見ることは滅多にないのだ。

S氏がテレビニュースを見ようと思ったのは、帰り道に
パトカーや救急車がたくさん集まり、野次馬が黒山の人だかり
になっている場所に出くわしたからだ。
野次馬の一人になにがあったのか聞いてみたのだが、その人も
S氏と同じくなにがあったのか知りたくて立ち止まったらしかった。

S氏はしばらく様子を見ていたがなんの動きもなかったので
その場を離れた。だがなにがあったのか気になったので
テレビニュースを見てみることにしたのだった。

目的のニュースはなかなかやらなかった。
だが、気になることがひとつあった。

お昼休みに食堂で与党の代表が記者会見をしている場面を生中継していた。
S氏はあまり見ていなかったのだが、与党の幹部が不当に政治献金を
受け取っていたという疑いがかけられたことに関する記者会見であった。

会見の内容は、「マスコミ等で指摘の通り本来一つの団体もしくは個人
から1年間に受け取ることができる額以上の政治献金を受け取っていた
ことを認めるものであった。
ただし、その幹部はその団体から複数回に分けて献金を受け取っており、
その時点ではその団体からの合計の金額が判っておらず、後日集計をして
上回っていることを確認。通常であれば余剰分は返還するのだが、この
ときは、すでに年度が変わっており、その団体から手数料等が無駄になる
ので、新年度分として扱って欲しいと言うことで返還しなかった。
節約した手数料についても新年度分の献金の一部として扱っており、
問題はないとの判断をしている。
ただ、本来であれば一度返還して改めて納めて頂くべきであり、厳重注意処分
とした。ということでしめくくられた。

これに対し、S氏が今見ているニュースでは、許された金額以上に
献金を受け取ったことを認める場面と、厳重注意処分にしたと言う
ところだけを映しだしており、これでは昼の生中継を見ていなければ
与党の代表が開き直っているようにしか見えない。
これでは公平を謳っているテレビ局が情報操作をしているようなものだ。
これだからS氏はニュースが嫌いだった。

しばらく見ていると、S氏が昼間見た光景がテレビに映し出された。
それによると某ホテルで、人質事件が起きたことを想定した訓練が
行われていたとのこと。抜き打ちテストのように事前に職員はもちろん
住民にも知らされていなかったため野次馬がたくさん集まったと報じていた。
S氏は少しがっかりしたが、画面をよく見るとS氏がほんの少しだけ映って
いるのを発見して、嬉しい気分で床についた。

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その頃S氏が見た現場では、政府の秘密組織の幹部がテレビ局の幹部と
話をしていた。
「こんなこと報道したら国民が不安になってしまいます。避難訓練と
言うことにしてありますからご安心下さい」
「おぬしも悪よのぉ。与党の幹部も我々の計画通り失脚間違いなしだ」
「えぇ、それもあなた様のお陰です」
テレビ局の幹部はそう言うと、重たそうなスーツケースを秘密組織の幹部が
床に置いたまったく同じデザインのスーツケースとこっそり交換したのだった。
テレビ局側のスーツケースの中身は与党の幹部が3年に分けても貰うことが
出来ないほどの多額の現金、そして秘密組織側のスーツケースには次の悪事の
メモが1枚入れられていた。もちろんメモは、スーツケースから出すと、60
秒後に自動的に消滅するような仕掛けが施されていた。
この仕掛けはS氏が考え出したものを秘密組織がこっそり盗み出したものだった。


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