TOM's Diary
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2004年06月09日(水) 満月とS氏

S氏は読んでいた本を枕もとに置くと、スタンドの明かりを消して
布団に潜り込んだ。暗闇の中、月明かりが窓際を怪しく照らし出す。

そう、今日は満月だ。

S氏はなかなか寝付けなかった。
満月で血が騒ぐ・・・と言う訳ではなく、月の明るさが気になりだしたら
眠れなくなってしまったのだ。

月の明るさは今日に始まったことではない。当たり前の話だがS氏が
覚えている限り昔から明るかった。S氏に子供のころがあったのか
どうか覚えていないが、月明かりで影絵を作って遊んだこともある。

太陽の光が月面に反射し地上に降り注いでいる。知識としては知っているし
なんの不思議も感じていなかった。だが、今日はふいに「なぜこんなに
明るいのだろう」と思ってしまったのだ。

月をじっくり観察すると、真っ白である。きっと真っ白な土で出来ている
ので、こんなに明るく反射しているのだろう。
でも・・・いったいどんな土で出来ているのだろう?
白い土なんて想像できない。
地上の土とそんなに変わるとは思えないが、地上にもそのような土はある
のだろうか?
S氏は自宅の庭を思い浮かべた。赤土である。そう言えば昔旅行で行った
先の公園の土は白かった。だが月のような白さではなくどちらかと言うと
黄色に近かった。
そう言えば月の石を博物館で見た事があるが白くはなかった。

そうか、太陽の光が明るすぎるので真っ白に見えるのかな?
とっても明るい照明の下に手をかざすと、肌色の手が真っ白く見える。
きっとそれと同じなんだろう。太陽と月の距離を考えると、相当太陽って
言うのは明るいんだな。
でも、待てよ、地上ではどんなにお天気が良い日でもすべてのものが
真っ白に見えるなんてことはないなぁ。

S氏はベットの中から顔だけを窓の方に向けて、改めて月を見てみた。
満月だけあって、いつもよりも大きく感じる。とっても大きい。
月に吸い込まれそうな気分になる。
月はどんどん大きくなって窓枠からはみださん勢いだ。
S氏は月から目が離せなかった。
窓枠からはみだした月は部屋の中に侵入して、S氏を飲み込もうとする。
S氏は身動きが出来ず、ついに逃げ場を失ってしまった。
そのままS氏は月の明るい光にすっぽりと包み込まれた。

あたり一面真っ白な光に包まれてS氏は目覚めた。
年に1度あるかないかというほどの、とても気持ちの良い朝だった。


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