TOM's Diary
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2004年05月11日(火) S氏の腕前

昨日一日がかりでエンジンをかけられるようになったS氏は
早速クルマを動かしてみることにする。

教習所には朝一番で申し込みに行ったのだが、さすがに今日は
申し込みをしただけで、なにも教わっていない。
エンジンをかけるだけで1日かかったS氏に果たしてすぐに
クルマが動かせるのだろうか。

S氏自身、若干の不安はあったが、そこはS氏のことだ、
エンジンをかけるために説明書をすみからすみまで読んでいる上に、
もともと工作好きで機械ものの構造はだいたい判っているか、
判らなくても動きから類推してなんとなく判ってしまう。
クルマだって同じで、これだけ街にありふれていれば、
その気はなくてもだいたいのことは見ていれば判る。

ギアを入れ、サイドブレーキを解除し、アクセルを踏む。
ギアは遊星ギアとトルクコンバーターを組み合わせた
トランスミッションをDレンジに入れておけば適度な
ギアレシオに自動的に切り替わる。
多少アクセルをラフに分でもトルクコンバーターが
回転数の差を吸収してくれるはずだ。

S氏はエンジンをかけてDレンジにシフトレバーをチェンジし
サイドブレーキを解除して、そっとアクセルを踏む。
クルマはゆっくりと動き出した。
「いいぞ、いいぞ」
ゆっくりとハンドルを切ってクルマを庭の方へ移動する。

S氏はあらかじめ庭に白い線を引いて置いた。
その線にそってゆっくりとゆっくりとクルマを移動させる。

さすがに初運転。
速度計の針はほとんど10km/h以下を差したままだったが
S氏は大満足だった。

S氏は白線を新たに引き直すことにした。
庭を一週するように線を引き、ぐるぐると回ろうというのだ。

S氏は庭の真ん中にクルマを停め、ドアを開けてクルマを降りた。
そのとたん、クルマはするすると動き始めた。
そう、S氏はDレンジにギアを入れたまま、サイドブレーキも引かずに
クルマを離れてしまったのだ。

クルマは無人のまま、樹齢100年の大木に激突したのだった。



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