あるところからお産への想いを書くように連絡がありました。
お産が好きで産科医になったのですが、好きになった理由は何だったのだろうと、ふと思いました。
学生の頃は産婦人科を選ぼうとは夢にも思いませんでした。
内科系よりは外科系をと漠然にイメージしていたくらいだったようです。
それがなにかに導かれるように、産科医として人生を送るようになっていました。
私とお産との出会いは、わずかに記憶の残る幼児期でした。
母が妹を出産し、産まれたばかりの赤ん坊を産婆さんが産湯に入れていたところに、呼ばれて入ったときのことです。
赤ん坊の顔は全く憶えていないのですが、たらいのお湯の中に、長く白い臍の緒が、ゆらゆら漂うように揺れている光景が、デジャヴェのように浮かんできます。
田舎では当時、自宅出産が普通でした。
ほかの兄弟のときなど、産気づいて大急ぎで産婆さんを呼びに行ったこともあります。
難産だったのか、今でいう微弱陣痛でへとへとになった母親を励ます産婆さんにお金を渡されて、生卵を買いに走らされたこと、卵パワーなのか、なんとか無事に産まれて、隣の部屋でかたずをのんで待っていた家族と喜び合ったことなども、昨日のように思い出します。
昭和35年(1960年)以降10年間で、出産のほとんどが病院などの産科施設で扱われるようになったのですが、それまでの産婆さんの社会的地位はとても高いように感じました。
生活の一部としてのお産という位置づけはこの頃まででしたね。
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