井口健二のOn the Production
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2026年04月05日(日) ヴィヴァルディと私、ニッポン狂想曲、名無し

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『ヴィヴァルディと私』“Primavera”
ヴァイオリン協奏曲『四季』などの楽曲で知られるイタリア
の作曲家アントニオ・ヴィヴァルディと、彼が所属した修道
院で師弟関係にあったとされる女性ヴァイオリニストの存在
を描いた小説の映画化。
主人公はヴェネツィアのピエタ修道院に暮らす女性。赤ん坊
の時に修道院に置き去りにされ、そのまま音楽隊の楽士とし
て成長したが、今でも深夜に寝床を抜け出しては顔も憶えて
いない母親への手紙を書き続けている。
そんな彼女のいるピエタ修道院に司祭としてヴィヴァルディ
が赴任する。そして作曲の傍ら音楽隊の指導も任されたヴィ
ヴァルディはいち早く彼女の才能を見極め、彼女に第一ヴァ
イオリンのリーダーの席を与える。
こうして音楽の道に邁進することになった主人公だったが、
修道院に暮らす彼女らがそこを出る方策は実の母親が迎えに
来るか、支援者である貴族の許に嫁ぐしかなかった。そして
彼女には戦場で武勲を挙げた貴族が決まる。
しかし音楽の道を究めたい主人公は貴族との結婚を躊躇い、
ある手段で婚約の破棄を狙うのだが…。

出演は2004年生まれで幼い頃から音楽の訓練を受け、シンガ
ーとしても活動しながら20歳の時に出演したTVシリーズで
ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の主演女優賞と新人賞をW
受賞したテクラ・インソリア。
相手役は2013年9月紹介『眠れる美女』やフランスのTVシ
リーズ『モンテクリスト伯』などに出演のミケーレ・リオン
ディーノ。他にアンドレア・ペンナッキ、ファブリツィア・
サッキ、イルデガルド・デ・ステーファノらが脇を固めてい
る。
ティツィアーノ・スカルパの原作から脚本を執筆して監督を
手掛けたのは、ミラノのスカラ座からロンドンのロイヤル・
オペラ・ハウス、パリ・オペラ座など世界中の劇場でオペラ
を演出してきたダミアーノ・ミキエレット。
ヴェネツィア生まれでイタリア音楽を知り尽くした演出家が
正しく満を持して描いた初監督作品となっている。
映画の原題はヴィヴァルディが作曲した『四季』で「春」の
タイトルだそうで、映画では正にその楽曲の誕生の瞬間も描
かれる。因に当時の音楽隊には優秀な女性ヴァイオリニスト
も実在していたようだ。
そんな虚実も巧みに織り込まれた作品だが、同時に当時の修
道院やそこで暮らしていた女性たちの姿も詳細に描かれてい
て、当時の女性たちが普通に生きることの困難さみたいなも
のも丁寧に描かれた作品になっている。
そんな困難を生き抜いた女性の物語。そしてその姿を22歳の
女優が見事に演じ切っている。特に母親の呪縛からも解かれ
て結末に向かうシーンは素晴らしさに溢れるものだった。こ
の女優テクラ・インソリアにも注目したい。

公開は5月22日より、東京地区はシネスイッチ銀座、渋谷の
ユーロスペース、アップリンク吉祥寺他にて全国順次ロード
ショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社彩プロの招待で試写を観て投稿
するものです。

『ニッポン狂想曲』
国立・鹿児島大学名誉教授の木村朗氏の企画で、2025年10月
紹介『もしも脳梗塞になったなら』や2023年11月紹介『沖縄
狂想曲』などの太田隆文監督・構成で描いた日本の現在地を
探るドキュメンタリー。
映画の第1章は能登地震。その被災地の復興が遅延している
ことを紹介し、その原因として関西大阪万博との競合問題が
指摘される。その指摘は今さらという感じだが、そこから取
材スタッフへのネットでの誹謗中傷問題が報告される。
その誹謗中傷は殆んどが捨てアカで行われており、その元を
解析して行くと3人の政治家(2人は国会議員)に繋がるのだ
そうだ。能登の問題は落選した前の県知事にも取材して欲し
かったが、製作者の意図はそこにはないようだ。
そこから視点は安倍暗殺とトランプ暗殺未遂に繋がり、真犯
人は他にいるという観点からまことしやかに伝えられるある
問題に繋げられる。そしてそれはコロナワクチン問題とも繋
がっているという指摘がなされる。
その問題を様々な分野の専門家や著名人たちの証言やインタ
ヴューによって綴って行く。

出演は山本太郎、大石あきこ、船瀬俊介、小林興起、孫崎享
原口一博、エマニュエル・パストリッチ、乗松聡子、ピータ
ー・カズニック、石川知裕、辻恵、平野貞夫、高橋清隆、植
草一秀、奥野卓志、井上正康、池田としえ、川田龍平、甲斐
正康、鳩山友紀夫。
実に多士済々という感じの人々が証言やインタヴューに応え
ているものだが、特に映画の後半ではその論点は所謂ディー
プステートに繋げられており、それを信じるか否かは観る側
の判断になる作品だ。
とは言え暗殺未遂から議事堂襲撃に至るトランプ問題では、
トランプを擁護しているように見せて実はディープステート
に踊らされているというようにも見え、安倍晋三の立場も含
めてなかなか面白い考察にも思えた。
それとコロナワクチン問題に関しては、実は昨年9月に全く
科学に基づかない半ワク論者の意見だけを垂れ流した作品を
観せられて、その時はあまりの酷さに評価を取りやめたが、
本作では視点も変えてそれなりの感じはした。
しかもそれもディープステートに絡まるという。この辺は確
かに面白いという感じだった。それを信じるか否か、その判
断の一助にはなる作品だ。そしてその観点にはある種の痛快
さもあった。

公開は5月16日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社青空映画舎の招待で試写を観て
投稿するものです。

『名無し』
2025年10月紹介『爆弾』で日本アカデミー賞最優秀助演男優
賞受賞の佐藤二朗が、2020年3月22日付題名紹介『はるヲう
るひと』以来の原作・脚本・出演で描いた作品。なお監督及
び脚本協力として2024年12月紹介『嗤う蟲』などの城定秀夫
がクレジットされている。
登場するのは突然殺人鬼となった男。彼は目に見えない凶器
で次々に人を襲い、命を奪って行く。その事件には当然捜査
本部が立てられるが、それまでに犯罪の記録がなく、身元も
はっきりしない男は捜査網を潜り抜けてしまう。
それでも警察は何とか彼の住まいを見つけ出し、そこで張り
込みが開始されるが、男の想定外の動きから刑事が襲われ、
拳銃を奪われる事態になってしまう。このため本庁が動き出
し、地元の刑事たちは隅に追いやられるが…。

共演は2025年3月紹介『金子差入店』などの丸山隆平、同年
5月紹介『蔵のある街』などのMEGUMI、2026年3月紹介『幕
末ヒポクラテスたち』などの佐々木蔵之介。さらに夙川アト
ム、望月歩、久保勝史、東宮綾音、大高洋夫、しおつかこう
へい、久松信美、今藤洋子らが脇を固めている。
恐らく今年一番の問題作と言われそうな作品だろう。佐藤の
原作は映画化不可能とされて最初は配信マンガで映像化され
たそうだが、それが城定監督の力も借りて映画化が実現した
というところのようだ。
テーマ的には超能力ものということになるが、それに振り回
される幼少期というのはスティーヴン・キングの『ファイア
・スターター』にも似た衝撃というか悲しみを感じる。そん
な異能者ゆえの苦悩が描かれた作品だ。
しかし佐藤はそこから苦悩を爆発させる方向に物語を持って
行ってしまう。それが佐藤らしさではあるのだけれど、それ
が一般の観客に理解されるか? でもこれでこそ主人公の苦
悩が最大限に表現されているものでもあるのだ。
しかもそれは現代社会において普遍的に見られる事象かもし
れない。それを見て見ぬふりをして我々は生きてしまってい
る。そんな突き付けられるような感情も抱いてしまう作品だ
った。
これは間違いなく今年一番の問題作と言える作品だろう。

公開は5月22日より全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。


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井口健二