| 2025年09月28日(日) |
ハウス・オブ・ダイナマイト、エディントンへようこそ、そこにきみはいて、星と月は天の穴 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ハウス・オブ・ダイナマイト』“A House of Dynamite” 2010年2月紹介『ハート・ロッカー』でアカデミー賞🄬監督 賞の栄冠に女性では初めて輝いたキャスリン・ビグロー監督 が、2018年1月14日付題名紹介『デトロイト』以来8年ぶり に発表した最新作。 なおこの作品は9月2日にヴェネチア国際映画祭でプレミア 上映され、10月24日よりNetflix にて全世界配信されるもの だが、それに先駆けて一部の国での先行劇場公開が決定し、 それに伴って試写が行われた。 映画の巻頭では第2次大戦後の核開発から核軍縮、そこから さらに核拡散の時代に入ったとの歴史の流れが紹介される。 そして突然、所属不明のミサイルがアメリカ本土に向けて発 射されたとの報告がもたらされる。 この事態にアメリカ政府は直ちにリアル及びリモートの国防 会議を招集、まずは迎撃ミサイルの発射が承認される。その 一方でレーダー観測による計測から着弾までの時間がおよそ 16分と予測され、さらにその着弾点が絞り込まれて行く。 こうした動きがリアルタイムで、さらに登場人物のそれぞれ の立場ごとにオムニバスのように描かれて行く。しかもそこ に様々な人間ドラマが織り込まれる。その巧みさは正に職人 技とも言える作品になっていた。 出演はイドリス・エルバ、レベッカ・ファーガソン。他にガ ブリエル・バッソ、ジェイソン・クラーク、グレタ・リー。 そしてジャレッド・ハリス、トレイシー・レッツ、アンソニ ー・ラモス、モーゼス・イングラム。 さらにアン・ティー、ブリタニー・オグレイディ、ベンガ・ アキナベ、ウィラ・フィッツジェラルド、レネイ・エリース ・ゴールズベリイ、カイル・アレン、ケイトリン・デバーら が脇を固めている。 なお脚本は2017年5月紹介『ダイバージェント FINAL』など のノア・オッペンハイム。巻頭からの見事な構成には緊迫感 が横溢しており、監督も素晴らしいがこの脚本にも拍手を贈 りたい作品だ。 また音楽を2025年2月紹介『教皇選挙』などのフォルカー・ ベルテルマンが担当して、特徴的な音楽が物語に見事な彩を 加えている。 ある種の終末戦争ものと言えると思うが、それを市井の描写 を極力避けて政府及び軍内部の動きだけで描き切るというの はかなりの集中力を必要とする作業だと思う。それを脚本家 と監督が見事に成し遂げた作品だ。 しかもかなり複雑な動きを丁寧に判りやすく描き切ったとい うのも特筆すべきところだろう。それにしても実際に事が起 きたら、事態はこんな風に推移していくのだということが手 に取るように理解できた。 そしてそれに伴う苦悩や責任なども見事に描かれており、こ れは今を生きる全ての人が観て考えるべき作品だ。嬉しそう に「核兵器が一番安上がり」などと言っている輩には是非と も観て貰いたい。 公開は10月10日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社イオンエンターテインメントの 招待で試写を観て投稿するものです。 またこの試写会は前週に行われましたが、情報解禁の関連で 今回紹介するものです。
『エディントンへようこそ』“Eddington” 2018年10月紹介のデビュー作『ヘレディタリー継承』以降、 新作が常に話題を呼ぶアリ・アスター監督が、2023年12月に 紹介『ボーはおそれている』のホアキン・フェニックスを再 び主演に招いて描いた新たな世界。 時代背景は2020年5月の後半。COVID-19禍で社会が混沌とす る中で物語は進行する。そして舞台はニューメキシコ州の辺 境の町。そこでホアキンが演じるのは、喘息持ちでマスクが 息苦しいと主張する町の保安官だ。 そんな主人公は州知事及び市長が出したマスク着用命令に不 満だが、そこには彼の妻と市長との過去をめぐる経緯もある ようだ。そしてそんな彼の妻は陰謀論に憑りつかれて、彼に 様々なネット上の噂を突き付ける。 こんな状況の中で、市長が推し進めるIT企業の誘致に陰謀 論の影を見付けた主人公は、それを盾に対立候補として市長 選への立候補を表明する。しかし思い付きだけの立候補には 支援者も現れず…。 そんな状況が混乱に混乱を呼び、遂には只ならぬ事態を招来 してしまう。果たして陰謀論は真実なのか…? 共演は2023年1月紹介『マッシブ・タレント』などのペドロ ・パスカルと、2018年12月16日付題名紹介『女王陛下のお気 に入り』などのエマ・ストーン。因にストーンは本作と同じ A24製作の2025年8月紹介『テレビの中に入りたい』ではプ ロデューサーも務めていた。 他にオースティン・バトラー、ルーク・グライムス、ディー ドル・オコンネル、マイクル・ウォード、アメリ・ホーファ ーレ、クリフトン・コリンズ・Jr.、ウィリアム・ベルーら が脇を固めている。 日本もアメリカも世界中が陰謀論に憑りつかれた感のある現 代だが、アリ・アスター監督はそこを見事に突いてきたとい う感じもする作品だ。しかもそこを強烈に笑い飛ばす。これ は見事な作品だ。 その上そこにはアメリカの銃社会の恐ろしさも漂っている。 まあここまでくると日本人には他山の石と見ていられるが、 アメリカでは…? しかもそこも笑い飛ばす。それもお見事 だ。 公開は12月12日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて 全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ オの招待で試写を観て投稿するものです。
『そこにきみはいて』 2018年4月15日付題名紹介『四月の永い夢』を脚本・監督し た中川龍太郎が原案を手掛け、2022年『の方へ、流れる』な どの竹馬靖具監督に託して映画化した現代に生きる若者の恋 愛事情を描く作品。 映画のプロローグは、街の雑踏を歩いている女性の姿と住宅 街らしい場所で邂逅する男性2人。男性2人は大学時代の同 窓でその一方は新進作家というが、2人の間には過去に経緯 があった様子が伺える。 そして女性はキャリアウーマンだが勤務先では少し浮いた感 じもする。そんな女性が男性たちの他方である弁護士と法律 上の相談を持ち、そこから2人の関係が始まるが、そこには 少し歪な感じもある。 しかしその関係が進展する中で事件が起き、女性は作家と出 会うことになるが…。 出演は2024年1月紹介『湖の女たち』などの福地桃子と、同 月紹介『身代わり忠臣蔵』などの寛一郎、それに原案者でも ある中川龍太郎。他に兒玉遥、遊屋慎太郎、緒形敦、長友郁 真、川島鈴遥。 さらに諫早幸作、田中奈月、拾木健太、久藤今日子、朝倉あ き、筒井真理子らが脇を固めている。 作品を観ているとき登場人物の人間関係からは2006年11月紹 介『スキトモ』を思い出していた。設定などは全然違うのだ けれど、この手の作品ではだいたい斎藤工の初期の主演作で あるこの作品が思い浮かぶ。 そこから僕自身は全然進歩していないが、この作品ではその 後の世の中の流れがこんな風に進化してきたのだということ も理解できる作品になっていた。大元の物差しは変えられな いけど、理解のスケールを変えることのできる作品だ。 しかもそれは決して良い方向だけでないことはちょっと悲し かったかな。そんなところに現代の若者の辛さも描かれてい るように感じられたものだ。共感する人も相当数の割合でい るのかな。そんな悲しい物語だ。 公開は11月28日より、東京地区はヒューマントラストシネマ 渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社日活の招待で試写を観て投稿す るものです。
『星と月は天の穴』 「1969年の思い出」という添え書きのされた吉行淳之介原作 を、2023年9月紹介『花腐し』などの荒井晴彦脚本・監督で 映画化した作品。主演も同作の綾野剛が務めている。 綾野が扮するのは10年前に妻に逃げられ、独身のまま齢40代 を迎えた作家。表面上は娼館に馴染みの娼婦を持つなど自由 を楽しんでいる感じだが、その内面は複雑だ。そんな作家が ふと立ち寄った画廊で女子大生と巡り合う。 一方、作家には絶対に人に言えない秘密があり、そのコンプ レックスから恋愛を拒んできた事情もあったのだが…。女子 大生との関係が深まるうちに、彼の抱えていた事情が徐々に 変化していく。 共演は2025年4月紹介『桐島です』にも出ていた咲耶。他に プロダクションスタッフとしても経歴がある岬あかり。さら に吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈 らが脇を固めている。 上に続いての作家が物語の中心にいる作品になったが、片や 令和に対するは昭和という感じで、この対比はなかなか面白 かった。それにしても本作は、正しく昭和文学という佇まい なのも楽しくなる。 しかもその時代設定が1969年というのは、僕のような人間に とっては感慨深い年号であって、その点が物語の中でもしっ かりと抑えられていたのは嬉しかった。ここが1970年でなか ったことも面白い。 そんな中での物語だが、何というか男性作家の願望みたいな ものが横溢しているのは正しくこれが昭和という感じでもあ りそうだ。こんな展開は令和では許されないかな。そんなこ とも考えてしまった。 吉行淳之介は1924年生まれ。1969年は45歳だった訳で、まあ こんな妄想を描いてしまうのかな。もう少し後では僕自身が 試写会の帰りなどに銀座で女性編集者を連れて歩いている姿 を見掛けたこともあったが、和装が格好良かった人だ。 そんな人の頭の中がこんなだったことも興味深かった。男同 士としてその点は理解できる。監督は1947年生まれだから、 その辺の共鳴はあったのだろう。僕が監督の同年代者として 嬉しくなる作品だった。 公開は12月19日より、東京地区はテアトル新宿他にて全国ロ ードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ オの招待で試写を観て投稿するものです。
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