| 2025年06月22日(日) |
DROP/ドロップ、タンゴの後で、マルティネス、また逢いましょう、ミッシェル・ルグラン−世界を変えた映画音楽家 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『DROP/ドロップ』“Drop” 2019年3月17日付題名紹介『パージ:エクスペリメント』な どを製作したプラチナム・デューンズが、同作と同じくユニ ヴァーサル+ブラムハウスと組んで、ブラムハウスの2014年 公開作『パラノーマル・アクティビティ:呪いの印』などの クリストファー・ランドン監督で描いたアクション作品。 主人公は夫に先立たれたシングルマザー。夫の死からはなか なか立ち直れなかったが、妹の勧めもあってようやくマッチ ングアプリで知り合ったカメラマン男性とのディナーデート に漕ぎ着ける。 こうして高層ビル上階の豪華なレストランで初対面のデート が始まるが、そこで彼女のスマホにメッセージがドロップさ れる。それは彼女の家で妹と息子を人質にしたとし、彼女に ある指令を発するものだった。 そのメッセージのドロップが可能な範囲は15m。レストラン のフロア内に犯人はいる。この状況で犯人の要求に従いつつ 反撃を試みる彼女だったが…。犯人の要求はエスカレート。 しかもそれは彼女のトラウマにも関っていた。 出演はメーガン・フェイヒー、ブランドン・スクレナー、バ イオレット・ビーン、ジェイコブ・ロビンソン、リード・ダ イアモンド、ガブリエル・ライアン、ディサラ・マコーマッ ク、ジェフリー・セルフ、エド・ウィークス、トラビス・ネ ルソン。 あまり馴染みのない俳優名が並ぶが、主にテレビや配信系の 作品に出ている人たちのようだ。 また脚本は、ブラムハウスの2020年作『ファンタジー・アイ ランド』などのジリアン・ジェイコブスとクリス・ローチが 担当している。 主なシーンは高層階のレストランフロアだけという、2010年 10月紹介『ソウ』などのソリッド・シチュエーションに近い 作品になるが、そこにSNSを介して外部との繋がりを生じ させるのは、現代化というところだろう。 ただ後半はそのシチュエーションを抜け出しての展開となる が、そこがほぼアクション一辺倒となるのは少し残念かな。 まあその方が最近の「映画」ファンには解り易いのかもしれ ないが、古い映画ファンには物足りなくはあった。 とは言えそのアクション自体はかなり強烈だから、それは古 いファンにもアピールはするものだ。まあこれが現代の映画 という作品になっている。 公開は7月11日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社東宝東和の招待で試写を観て投 稿するものです。
『タンゴの後で』“Maria” 1973年に日本公開されたベルナルド・ベルトルッチ監督の問 題作『ラストタンゴ・イン・パリ』。その作品に主演して時 代の寵児になったマリア・シュナイダー。その状況と出演作 公開後の彼女が辿った道程を描いたドラマ作品。 マリアは1952年パリ生まれ。父親は名優とされるダニエル・ ジェランだが、母親の許にはあまり寄り付かず母子家庭のよ うに育ったようだ。そんなマリアが19歳の時、新進気鋭の監 督ベルトルッチに見出される。 その作品はかなり過激な内容で男優もなかなか契約に至らな かったが、その役にマーロン・ブランドが決まり、その相手 役としてマリアが抜擢される。その役柄にはヌードシーンも あると知らされてはいたが…。 そして撮影は順調に進んで行き、そんな中でベルトルッチは アドリブの演技を要求し始める。それはある種の緊張状態の 演技を引き出す目的だったが。それが脚本では「暴力的」と いう一言から、あるシーンを生み出すことになる。 こうして完成された作品は予想以上の評判を呼び、マリアは 一躍時代の寵児となって行くが、彼女自身は撮影時のトラウ マに悩まされ続けていた。そんな中で彼女はある若い女性と 出会う。そして撮影時の出来事を訴え始める。 しかし彼女の声はなかなか世間には届かなかった。 脚本と監督はベルトルッチの許でインターンをしたこともあ るというジェシカ・パルー。監督に対しての想いもあるとい う女性監督が、マリアの従姉妹ヴァネッサ・シュナイダーが 発表した原作と出会ったことから誕生した作品だ。 出演は2021年の主演作でリュミエール賞を受賞したというア ナマリア・ヴァルトロメイ。相手役にジョゼッペ・マッジョ とマット・ディロン。他にセレスト・ブランケル、イヴァン ・アタル、マリー・ジランらが脇を固めている。 男性にとってかなり手厳しい作品であることは間違いない。 しかも元の作品の公開当時を知る者としては、こんなことが あったのかという思いもするが、正直に当時を思い出すとか なり複雑な思いにもなる。 しかも彼女の主張が認められなかったという現実は忸怩たる 思いにもなる。そんな弱かった女性の立場を改めて描くこと が歴史を見据える意味でも大切な作品と言える。まあ昨今は こんなにも無視されることはなくなったと思いたいが。 ここから未来に向かっての警鐘とも言える作品だ。 公開は9月5日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷シャン テ他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社トランスフォーマーの招待で試 写を観て投稿するものです。
『マルティネス』“Martínez” 本作で長編デビューの女性監督が描く、異国の町で老境を迎 えることになった男性が、ふとした切っ掛けで人生を見つめ 直すことになるヒューマン・ラヴストーリー。 主人公はチリからメキシコにやってきて事務職で勤務する男 性。一人住まいのアパートでは階下から四六時中響くテレビ の音に悩まされ、勤務先では引退を促されて後任らしい男も 入ってくる。 そんな彼の住むアパートで、階下の女性がテレビをつけたま まの孤独死で発見される。そして遺品を整理していた大家か ら、彼宛てに残されていたプレゼントの包みを手渡された主 人公は…。 脚本と監督は、1978年グアダラハラ生まれで地元の大学で映 像を学んだ後に奨学生でニューヨークの大学で学び、さらに バルセロナの大学に留学するなど、15年間に5カ国で暮らし たというロレーナ・パディージャ。 すでに短編作品で受賞歴などもある才媛が母国で発表した長 編デビュー作だ。 出演は2017年製作でアカデミー賞® 国際映画賞を受賞したチ リ映画『ナチュラルウーマン』に主演のフランシスコ・レジ ェス。他にウンベルト・ブスト、マルタ・クラウディア、メ リー・マンソ、マリア・ルイーサらが脇を固めている。 因に元の脚本では主人公はメキシコ人だったが、主演が決ま らない中でレジェスの演技を見てオファーしたとのこと。そ のためにキャラクターも変化したが、異国で暮らす主人公の 孤独感には監督自身の体験も反映されているのかな 一方、俳優は主人公のモデルが監督の父親だと聞いて即決し たそうだ。そんな思惑のコラボレーションが見事に作品に昇 華している。まあ主人公の変化の切っ掛けの部分には少し悩 むところはあったが…。 いずれにしても主人公に限らず現代人の抱える孤独感みたい なものが、見事に表現されている作品だ。そしてそこに未来 への希望みたいなものが見えてくるのも素晴らしい。いろい ろな小道具も素敵な作品だった。 自分も老境を迎えた身としては、何かを始めようという勇気 も貰える作品だ。 公開は8月22日より、東京地区は新宿シネマカリテ、ヒュー マントラストシネマ有楽町、UPLINK吉祥寺他にて全国順次ロ ードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社カルチュアルライフの招待で試 写を観て投稿するものです。
『また逢いましょう』 2019年2月24日付題名紹介『嵐電』でプロデューサーを務め た西田宣善による第1回監督作品で、京都市右京区でデイケ ア施設を運営する伊藤芳宏氏の著書を基に描いたヒューマン ドラマ。 東京で暮らしていた漫画家の女性が京都で一人暮らしの父親 が事故に遭ったとの知らせで京都に帰ってくる。その父親は 幸い一命を取り留めるが、頑固な性格の父親を介護施設に馴 染ませるためのすったもんだが始まる。 そこでケアマネージャーに紹介されたのは、少し変わった所 長が運営する施設。そこでは所長の聞き取りにより入居者の 人生を振り返るイヴェントが行われていた。そんな中でさら にそれを発展させるアイデアが出され…。 出演は『嵐電』にも出ていた2022年7月紹介『夜明けまでバ ス停で』や2025年1月紹介『初級演技レッスン』などの大西 礼芳。他に中島ひろ子、カトウシンスケ。 さらに伊藤洋三郎、加茂美穂子、田川恵美子、神村美月、梅 沢昌代、田中要次、田山涼成、筒井真理子らが脇を固めてい る。 また脚本を『夜明けまでバス停で』などの梶原阿貴が担当し ている。 人生を振り返るという設定で特に本作の後半の展開では、是 枝裕和監督の1999年作品『ワンダフルライフ』を思い出した が、僕が是枝監督の最高作と考えている同作の域には達して いなかったかな。 ただし本作の目的はそこではなくて、介護の現状を訴えたか ったということのようだが、その部分が何ともステレオタイ プなのは興を削ぐというか問題の本質を見失わさせてしまう 感じもした。 正直に言ってこの描き方では原作者の意図にも沿わない感じ で、果たしてこれでいいのかという感じもしてしまったもの だ。もっとストレートに原作本来の味わいを描いて欲しかっ た感じかな。 まあそれだと是枝作品にに過ぎてしまう心配もあったのかも しれないが…。いずれにしてもいろいろな要素を盛り込み過 ぎた感じはする作品だった。言っていることが正しいだけに 勿体なくも感じたところだ。 公開は7月19日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国 順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試 写を観て投稿するものです。
『ミッシェル・ルグラン−世界を変えた映画音楽家』 “Il était une fois Michel Legrand” 1964年『シェルブールの雨傘』や1967年『ロシュホールの恋 人たち』などの音楽家の生涯を、多数のフィルムクリップや アーカイヴ映像、関係者へのインタヴュー、生前の密着取材 などを交えて描いたドキュメンタリー。 ルグランは1932年生まれ。11歳でパリ高等音楽院に入学し、 20歳で卒業するまで音楽の基礎をみっちりと叩き込まれた。 そして卒業後はフィリップスのレコード会社で編曲家として 音楽活動をスタート。22歳で最初のアルバムを発表する。 さらに1954年にアンリ・ベルヌイユ監督の作品で映画音楽家 のキャリアを開始。その後はヌーヴェル・ヴァーグの監督た ちと交流し、ジャック・ドゥミ監督と巡り合って数々の名作 を生み出す。 また1967年から1969年まではロサンゼルスにも居住してノー マン・ジュイスン監督の作品などでアカデミー賞🄬 は3度の 受賞に輝いている。そんな音楽家の生涯が描き、語り尽くさ れている。 脚本と監督はデヴィッド・ヘルツォーク・デシテス。カンヌ 市役所の職員ながら就業後には国際映画祭の上映会に潜り込 む程の映画マニアで1999年『ファントム・メナス』に触発さ れてそのファンを描いたドキュメンタリーを制作。 その後は映画のメイキングや予告編の製作会社などを立ち上 げて映画界に入り、2017年からルグランの密着取材を開始。 幼少期からの憧れだった音楽家の最後を描くことになったも のだ。 映画は巻頭からルグランの映画音楽が流れて、正にその時代 に映画を観始めた自分としては懐かしにいきなり引き込まれ てしまった。そこから本作はルグランの生涯やその音楽性の 根源を紐解いて行く。 個人的には『シェルブール』と『ロシュホール』には自分の 映画音楽の原点みたいなところがあって、もちろんそれ以前 のハリウッドミュージカルも観てはいるが、舞台の焼き直し ではない音楽と映画が一体になった作品に引き込まれた。 そんなルブランへの想いもあって本作は本当に楽しませて貰 えた。そしてそこにルグランの親族やクロード・ルルーシュ らの映画関係者、スティングらの音楽関係者がルグランの真 価を語り尽くしてくれる。これは本当に素晴らしい。 さらに日本人の観客にはルグランの親日家の面も強調され、 特に逝去の前年に行われた日本公演の模様や、それ以前の日 本公演ではシャンソン歌手・俳優の高英雄さんとの共演シー ンなどもあって、正に僕のようなファンへの贈り物のように も感じられる作品だった。 この映像を見せてくれたことに感謝したい。 公開は9月19日より、東京地区はヒューマントラストシネマ 有楽町他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アンプラグドの招待で試写を観 て投稿するものです。
|