| 2022年11月20日(日) |
シャドウプレイ、とべない風船、母の聖戦 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『シャドウプレイ』“风中有朵雨做的云” 2008年5月紹介『天安門、恋人たち』などで中国映画第6世 代の旗手とも言われるロウ・イエ監督による2018年の作品。 なお本作は2019年第20回東京フィルメックスのオープニング でも上映されているが、今回はその際の上映時間より約5分 長い【完全版】となっている。 物語の発端は2006年、水辺の草むらで身体を重ねていた若い カップルが腐乱しかけた遺体を発見する。 それから7年後の2013年4月14日、広州市の「都会の村」と 呼ばれるビジネス街の中の開発から取り残された地区で、立 ち退きを迫る開発業者とそれに反対する住民との間で大規模 な騒乱事件が起きる。 その現場を訪れた市当局の開発担当は住民の説得に奔走する が、ふと関係者が目をくらませた隙に、その担当者が近くの ビルの屋上から転落。果たしてその転落は事故か他殺か。そ の解明はやがて思いもよらぬ事件に発展する。 出演は、中国のオーディション番組での優勝者というジン・ ボーラン、2008年8月紹介『レッド・クリフ』に出演のソン ・ジア、2010年7月紹介『スプリング・フィーバー』などイ エ監督作品の常連チン・ハオ。 さらにマー・スーチュン、チャン・ソンウェン、ミシェル・ チェン、エディソン・チャンらが脇を固めている。因にエデ ィソン・チャンの出演シーンはフィルメックス時の公開版で はカットされていたそうだ。 劇中描かれる2013年の騒乱事件は実話だそうで、この辺も検 閲の対象だったのかな。そんな実在の事件を背景に様々な要 素の絡まるクライム・サスペンスが展開される。 その物語にはいくつもの時間軸があってかなり複雑。しかも 2つの時間軸が交錯するシーンがあるなど、トリッキーな演 出も施されている。しかし事件の顛末に関しては明快で、そ れは判り易く作られていた。 でもそこに盛り込まれた人間模様は複雑かつ深刻で、この巧 みさはイエ監督の真骨頂という感じかな。とにかく見ごたえ のある、これぞ映画という感じの作品で、久しぶりに映画を 堪能した気分になれた。 公開は2023年1月20日より、東京は新宿K's cinema、池袋シ ネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他にて全国順次ロードショ ウとなる。
『とべない風船』 広島を拠点にCMや短編作品の制作で受賞歴もある宮川博至 監督が、多島美に彩られる瀬戸内の島を舞台に平成30年7月 の豪雨災害の傷跡を描いた作品。 主人公の女性は、都会の生活に疲れてその島に住む父親の許 を訪れるが、数年前にその島で亡くなった母親の死の状況を 巡って父親と確執があるようだ。しかし元教師でもある父親 は島では先生と呼ばれて、静かな暮らしぶりだった。 そんな父親の許には毎日近所の漁師が釣果を持ってくるが、 脚に傷を負い寡黙なその男性には記憶から消すことのできな い過酷な過去があった。そんな男性が気になる主人公は、少 しずつ彼に近付いて行くが…。 出演は、2019年11月24日題名紹介『ロマンスドール』などの 三浦透子と2018年8月26日題名紹介『ビブリア古書堂の事件 手帖』などの東出昌大。さらに小林薫、浅田美代子。さらに 原日出子、堀部圭亮、笠原秀幸、子役の有香らが脇を固めて いる。 題名の中にある「風船」はスクリーンでは風の字が逆さまに なっているが、劇中では糸に繋がれたままの風船が風に翻弄 されて、悶えているようにも見える感じなのかな。それが結 末のシーンにも繋がるようになっているものだ。 2018年の豪雨災害に関しては、その少し後に行った広島遠征 で山陽本線の車窓から見えたそこここにある山崩れの爪痕が 衝撃だったものだが、実際に 100人以上が亡くなった出来事 の記憶が部外者の僕にも鮮明に甦ってきたものだ。 それを思い出させるのも本作の目的の一つだろうし、その意 味では充分にその力を発揮した作品だったと言える。1980年 生まれの監督が長編デビュー作として、正しく満を持した感 じも伝わってくる作品だ。 ただ一点、劇中で奇異に感じたところがあって、それは浅田 が演じる居酒屋のシーンでカウンターに置かれるビールの瓶 が全て後ろ向きだったことだ。まあ酒飲みであればそれでも 銘柄は判るものだが、これはスポンサーの意向なのかな。 主演男優のトラブルのことも考えると、何となく勘ぐってし まうところだった。 公開は12月より広島県で先行上映の後、東京は2023年1月か ら新宿ピカデリー他にて全国順次ロードショウとなる。
『母の聖戦』“La civil” ベルギー、ルーマニア、メキシコの合作で、メキシコで横行 する誘拐ビジネスの恐怖を描き、2021年の東京国際映画祭で 審査員特別賞を受賞した作品。 主人公はメキシコ北部の町に暮らすシングルマザーの女性。 10代で少し反抗期の娘との2人暮らしだったが、ある日その 娘が犯罪組織に誘拐される。そして要求された身代金は彼女 には払いきれない額だった。 そこで彼女は娘の父親にも頼み込み、それなりの金品を用意 して組織の手先の男に手渡すが娘は解放されず、さらに過大 な要求が突き付けられる事態となる。そこでやむなく母親は 警察に訴え出るのだが…。 その訴えは直ちに組織に内通され、さらなる要求が突き付け られる。この事態に彼女が取った手段は…? 脚本と監督はルーマニア出身でチャウセスク政権下の圧制を 逃れてベルギーに渡り、さらにアメリカで学んだというテオ ドラ・アナ・ミハイ。元々ドキュメンタリーの制作者だった 女流監督は当初は本作もその手法の予定だったという。 ところが本作のモデルとなった女性の取材を続ける内に、そ の取材に大きな危険が伴うことを感じ取り、その危険を回避 するためにドラマにすることを決意したというものだ。しか し危険は回避しきれなかったようだ。 共同脚本は、監督の学生時代からの友人というメキシコ人の アバクク・アントニオ・デ・ロザリオ。以前から麻薬戦争と それが市民に与える影響をテーマとした執筆活動で受賞歴も あるという作家の協力が迫真のドラマを作り上げている。 出演は、母親役をNetflixなどで100本以上の映画、テレビに 出演しているベテランのアルセリア・ラミレス。他にメキシ コを代表する俳優と言われるアルバロ・レゲロ、さらにホル ヘ・A・ヒメネスらが脇を固めている。 映画の後半では軍隊まで登場して麻薬組織との対決が描かれ る。それがどこまで実話に則したものかは判らないが、実は 取材に応じて物語のモデルとなった女性は、その後に組織の 報復で惨殺されたそうだ。 プレス資料には誘拐は割に合わないと書かれているが、実際 には今も誘拐ビジネスは横行しているされる。麻薬組織との 闘いの難しさが如実に描かれた作品とも言える。 公開は2023年1月20日より、東京はヒューマントラストシネ マ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA他にて 全国順次ロードショウとなる。
|