| 2022年06月19日(日) |
霧幻鉄道、映画 バクテン!!、1640日の家族、アンデス |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『霧幻鉄道』 2022年10月1日に全線復旧が予定されているJR東日本只見線 の復旧までの道のりを描いたドキュメンタリー。 2011年7月26日から30日にかけて新潟県、福島県を襲った豪 雨により、両県の山間を縫って結ぶ只見線は、路線に沿って 流れる只見川の増水で福島県内の3つの鉄橋が流失。以来全 線での運行は不通となっていた。 しかも同線はもともとが赤字路線であり、豪雪などの理由で 国鉄再建法に基づく廃線対象からは除外されていたものの、 3つの鉄橋を再建してまでの復旧には問題が多かった。実際 に福島県が行った検討でもバス転換が有力だった。 それがなぜ全線復旧するに至ったのか…。そこには只見線を 数10年に亙って年間 300日撮影しているという一人のカメラ マンの存在があった。星賢孝。彼は只見線の映像を内外に発 信し、写真展や講演会などでその魅力を訴えた。 その成果は徐々に実を結び、2016年頃には台湾から団体で観 光客が訪れるなど活況を呈し始める。そんな中で撮影ツアー のガイドを務めて撮影スポットでの撮り方を惜しげもなく紹 介するなど、絶景撮影の名所としての価値を上げ続ける。 その熱意が福島県や沿線自治体を動かし、遂には路線の全線 復旧へと繋いでいったのだ。そして現在では、全線復旧に向 けた撮影スポットの整備など、より高い観光立地に向けた努 力が続けられている。 監督と撮影は、テレビドキュメンタリーの出身で2011年以降 に福島県に制作拠点を移して作品を発表している安孫子亘。 同県を中心に行政から教育問題まで様々なドキュメンタリー を精力的に発表している監督だ。 ただし本作に関しては、なぜ現時点を以って本作の終わりと したのかが理解できない。それは一つの区切りとなるはずの 全線復旧が目前に迫っている時点であり、それを敢えて結末 としなかった意図が掴めなかった。 特に作中では、せっかく準備したのに観客が集まらなかった 実例なども紹介されており、それが復旧後にどうなったか、 そんな検証があっても良かったと思えた。そのため僕にはも やもや感が残って作品も中途半端に感じられた。 全線復旧後を描いたPart 2はありなのかな? 公開は地元福島県ではすでに行われており、東京は7月29日 より、ヒューマントラストシネマ渋谷、UPLINK吉祥寺他にて 全国順次ロードショウとなる。
『映画 バクテン!!』 東日本大震災から10年の2021年4〜6月に深夜のフジテレビ 他で全12話が放送されたアニメーションシリーズの映画版。 宮城県岩沼市の私立高校を舞台に、男子新体操に打ち込む若 者たちの青春ストーリーが展開される。 実はテレビシリーズは観ていないのだが、前回紹介の『劇場 版ねこ物件』と同じく本作もシリーズに続く物語のようだ。 とは言うもののシリーズの抜粋なども回想形式などで卒なく 紹介され、シリーズを観ていなくても違和感なく物語に入れ るように工夫がされていた。 それで多分、シリーズでの目標だったインターハイ大会が終 わり、3年生の引退やその後の進路の問題、そして新たな目 標に向かっての主人公たちの動きが描かれる。それはまあこ の手の部活ものではよくあるテーマだが、男子新体操という ちょっと特殊なシチュエーションも活かされた展開だった。 そんなある意味定番の物語だが、そこで何と言っても作品の 見どころは随所に挿入される男子新体操の演技だろう。それ らはプロのパフォーマーや大学、高校などの新体操部現役部 員による演技をモーションキャプチャーしたもので、それは 見事な映像が展開される。 しかも映画版では、さらにその背景に3D-CGIが導入され、そ の中で視点を縦横に移動させる映像は、観ていて思わず興奮 してしまう美しさに表現されていた。それは実物をドローン 撮影でも同じかもしれないが、アニメーションという形態の 中で特に見事に昇華されていた。 監督はシリーズも手掛けた2016年『舟を編む』などの黒柳ト シマサ。脚本もシリーズを手掛けた2022年『機動戦士ガンダ ム/ククルス・ドアンの島』などの根元歳三。因にクレジッ トには原作者名があるが、ネットの情報ではオリジナルアニ メーションとなっている。 声優は土屋神葉、石川界人、小野大輔、近藤隆、下野紘、神 谷浩史、櫻井孝宏、佐倉綾音ら、シリーズと同じメムバーが 担当している。 という作品だが、実は僕が観た試写の時点では3D-CGIとモー ションキャプチャーの映像との繋ぎ目で少し乱れがあった。 ただし僕が観たのは試写の初回だったので、もしかすると公 開までに修正があるかもしれない。 それと映画後半でマットへのプロジェクションマッピングの シーンが登場するが、これは映画のクライマックスでもやっ て欲しかったかな。最近話題になっているものなのでこの辺 も期待したい。 公開は7月2日より、東京は新宿バルト9、TOHOシネマズ日 比谷他で全国ロードショウとなる。
『1640日の家族』“La vraie famille” フランスの里親制度を背景とした実話に基づくとされる本国 では2021年公開のドラマ作品。 登場するのは夫婦と3人の子供のいる一家。子供たちも仲良 く遊ぶ一家だが、一番下の子は寝る前のお祈りが他の家族と 異なる。実はその子は生後18か月の時に一家の許にやってき た里子だったのだ。 それでも他の子と宗教以外では分け隔てなく育ててきた一家 だったが…。ある日、その子の実の父親が息子を還してくれ と申し立ててくる。それは里親一家には抗うことのできない 法律に従ったものだった。 そんな一家の残された日々が描かれて行く。 脚本と監督は短編映画の出身で、2017年の長編デビュー作で 映画祭受賞歴もあるファビアン・ゴルジュアールの第2作。 デビュー作は代理母を描いたコメディだったようだが、本作 は監督の実体験に基づく物語だそうだ。 出演は、2017年12月紹介『ロープ 戦場の生命線』などのメ ラニー・ティエリー、フランス版『カメラを止めるな!』に 出演のリエ・サレム、それに2012年8月紹介『リヴィッド』 などのフェリックス・モアティ。そして子役のガブリエル・ パヴィが素晴らしい演技を見せる。 配偶者の死去などで、残された片親が世話し切れなくなった 幼い子供の面倒は、日本の場合は児童施設に預けられるのが ほとんどのようだ。それに対してフランスでは多くが里子に 出され、健全な家庭での成長が推奨される。 しかもそこでは里親と同時に実の親との交流も行われ、本作 のように週末は実の親と過ごすようなことも普通のようだ。 しかしそこに本作のような事態も起こりうる。本作は監督の 実体験に基づくとされているものだ。 もちろん監督はこのやり方を批判しているものではないが、 それにしてもやるせない物語で、何か他に解決策はないのか とも思ってしまう。その辺を考えさせるのが本作の目的でも あるのだろう。 ただし家族間に入る行政官の描き方には、かなり厳しい目も 向けられている感じだが…。 公開は7月29日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国 ロードショウとなる。
『アンデス、ふたりぼっち』“Wiñaypacha” 2017年製作のペルー映画で、5月紹介『マタインディオス、 聖なる村』に先駆けたシネ・レヒオナル(地域映画)の一篇。 本作は2018年のグアダラハラ国際映画祭(メキシコ)で最優秀 新人監督賞と撮影賞を受賞した。 物語の舞台は、背景に氷河や滝も見えるアンデスの山懐。電 気もガスもない寂れた高原に老夫婦が暮らしている。二人は 神を信じ、助け合いながら生活しているが、その暮らし振り は厳しさに満ちている。そして悲劇が襲う。 いやはや壮絶な物語で、そこには目をそむけたくなるような シーンもリアルに描かれる。これがアンデスに生きることの 現実なのかとも思わせる。兎にも角にも、荒野に生きること の厳しさがてんこ盛りに描かれた作品だ。 因に原題の「ウイニャイパチャ」は現地の言葉で「理想郷」 の意味だそうだが…。 脚本と監督、撮影は1987年生まれのオスカル・カタコラ。大 学で演技とコミュニケーションを学び、当初は俳優を目指し ていた若者は独学で映画制作を習得。2007年に制作した中編 映画が評価されて徐々に台頭。本作に漕ぎ着けた。 しかし2021年、長編第2作の撮影中に34歳の若さで急逝した とのことだ。デビュー作から4年での第2作というのは、周 囲にかなりの期待があったと思われるが、その期待は叶わな かった。そんな監督が遺した唯一の長編作品だ。 作品の中では都会に出て行った息子の存在も言及されるが、 果たして…。その存在自体を否定するような描写もあったよ うに思える。それはある種の全体が幻想のようにも受け取れ るが、それを上回るリアルさが映画を貫いている。 因に劇中で老夫を演じているビセンテ・カタコラは、監督の 母方の祖父だそうで、映画には監督の自叙伝の意味合いもあ るようだ。ただしそれは作中で言及される両親を見捨てた息 子ではなく、幼い頃に祖父の許で暮らした思い出という。 しかし現実社会では映画のように両親の許を訪れない世代も 多いとのことで、そういった人々への警鐘も込められている ようだ。いずれにしても厳しい現実が描かれた作品だ。 公開は7月30日より、東京は新宿K's cinema他にて全国順次 ロードショウとなる。
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