| 2022年06月26日(日) |
復讐は私にまかせて、川っぺりムコリッタ、激怒 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『復讐は私にまかせて』 “Seperti Dendam, Rindu Harus Dibayar Tuntas” 2018年9月30日題名紹介『アジア三面鏡 Journey』の一篇を 監督したインドネシアの俊英エドウィンが、同作でも組んだ 撮影監督の芦澤明子を招請して制作した2021年に本国公開の ヴァイオレンスアクション作品。 時代は1989年、場所はインドネシア・バンドン郊外のボジョ ンソアン地区。主人公の青年アジョはバイクレースと喧嘩に 明け暮れていた。そんな若者は町の悪徳実業家を叩きのめそ うと思い立ち、奴が経営する採石場に向かう。 そこで若者を迎えたのは、女ながらに伝統武術シラットを極 めたイトゥンだった。彼女は実業家のボディーガードを務め ており、2人は死力を尽くした戦いを繰り広げる。そしてそ れが2人の愛を育む。 こうして愛し会うようになった2人は結婚に漕ぎ着けるが、 アジョには他人には話せない秘密があった。それは彼が子供 の頃のトラウマから勃起不全だったのだ。そのことを聞いた イトゥンはトラウマの原因への復讐を思い立つが…。 彼女が原因究明のために取った行動が2人の愛に亀裂を生む ことになる。 脚本監督のエドウィンは2008年の長編デビュー作でロッテル ダム国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞、次いで2011年の 第2作ではアジア・フィルム・アワード新人監督賞に輝き、 第4作の本作でロカルノ国際映画祭の最高賞を受賞した。 一方、黒沢清監督の諸作や、沖田修一、原田眞人監督作品な どでも知られる芦澤撮影監督は、エドウィン監督がフィルム での撮影を希望していると言われて参加を即断。芦澤監督の 伝でコダックフィルムでの撮影が実現したということだ。 物語はインドネシアでのベストセラー小説が原作となってお り、脚本には原作者も参加しているようだが、映画はアクシ ョン中心で物語は端折られた感じなのかな。特に後半に登場 する呪術的な部分はもう少し説明が欲しかった。 でもまあ、特に東南アジアの映画ではこのような展開は良く あることだし、それはそれで了解できないことはないから、 これでよしということになるのだろう。アクションがそれを 凌駕しているとも言えるものだ。 公開は8月20日より、東京はシアター・イメージフォーラム (渋谷)他にて全国順次ロードショウとなる。
『川っぺりムコリッタ』 2006年1月紹介『かもめ食堂』などの荻上直子監督で2020年 9−10月に撮影され、当初2021年11月に封切り予定だったが COVID-19の影響などで延期されていた作品が、ようやく今秋 公開となる。 物語の舞台は北陸の石川県。そこに在る塩辛製造工場に一人 の男性が就職する。寡黙な男性は工場の社長の紹介で川沿い にある長屋風の住宅に入居し、風呂上がりには牛乳を飲み、 一人で米を炊いて食事の準備をするが…。 そこに隣人と称する中年男性が現れ、風呂を借りたいと言い 出す。そして男はずけずけと部屋に上がり込む。その他、長 屋には、女手一つで娘を育てる女性大家や、幼い息子の手を 引いて墓石を売り歩くセールスマンなどもいて…。 やがて主人公の許に封書が届き、そこには彼の生い立ちに関 る行政からの通知が記載されていた。 出演は松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆。 他に江口のりこ、田中美佐子、柄本佑、緒形直人。さらに薬 師丸ひろ子、笹野高史。そして元「たま」の知久寿焼が出演 と共に主題歌も担当している。 監督は、前作の2016年12月25日題名紹介『彼らが本気で編む ときは』から自身で「第2章」と称しているようだが、確か にそれまでの作品とはテイストが一変している。しかしそれ 以上に人間を深く見つめていると言えるだろう。 因に江口のりこと田中美佐子は前作に引き続いての出演だ。 ファンタスティックな要素もいろいろある作品だが。正直に 言って、作品全体に流れる死生観みたいなものが少し重苦し くも感じられる。まあそれが監督の狙いなら仕方がないが、 全体はコメディだし、ちょっと気になった。 ただマイノリティというか、社会弱者の人々に向ける目の暖 かさは前作同様で、この辺が監督自身の言う「第2章」なの だろう。しかも前作より裾野が広がった感じで、これはもっ と追及していって欲しいものだ。 なお題名の「ムコリッタ(牟呼栗多)」とは仏教における時間 の単位で、1/30日の時間=48分間だそうだ。最小単位の刹那 よりは長いが、人生から観れば一瞬かも知れない時間だ。 公開は9月16日より、東京は新宿ピカデリー、UPLINK吉祥寺 他にて全国ロードショウとなる。
『激怒』 1969年生まれ、早稲田大学文学部除籍で、映画評論や字幕翻 訳、ポスターアートなども手掛けるという高橋ヨシキ脚本・ 監督による長編デビュー作。なお本作では2020年1月12及び 19日紹介『AI崩壊』などに出演の川瀬陽太が主演及び製作 も務めている。 物語の背景はニューヨークの世界貿易センタービルが崩壊し ていないパラレルワールドなのかな? 川瀬が演じるのは、 とある町の警察本署に勤務する中年刑事。いわゆるステレオ タイプの刑事で、勤務中にその手の連中とつるんだり、捜査 のやり方も強面だ。 ところがその町に奇妙な空気が流れ始める。それは「安全・ 安心」をスローガンに掲げる町民運動で、その流れもあって 主人公は暴力刑事の名の下に海外の矯正施設に送られてしま う。そして数年が経ち、治療を終えた主人公は元の町に帰っ てくるが…。 矯正施設の描き方は1971年の映画『時計じかけのオレンジ』 へのオマージュなのかな。暴力を矯正するというテーマだか ら当然だが、それならもっと突っ込んで、オマージュを明確 にした方が良かったような気もする。昨今だとパクリと言わ れることを気にしたのかもしれないが。 それに映画前半の刑事がステレオタイプなのは理解するが、 後半の町民運動の様子もステレオタイプに描いたのは勿体な い。ここには監督のアーチストとしての心意気が発揮されて 欲しかった。本作で描くべきはコロナ禍でのマスク警察の様 な社会現象への問題提起にも思えたので。 いずれにしても、映画としての体裁はそれなりに取れている が、全体として何か食い足りない。映画へのシンパシーは僕 に近いものも感じるので、もっといろんな映画の要素を取り 入れて、暴力に関しての映画表現の極致みたいなものを感じ させて欲しかった。 共演は、プロ社交ダンサーとしてレッスン講師も行っている という彩木あや、2018年5月13日題名紹介『菊とギロチン』 などの小林竜樹、2012年3月紹介『サイタマノラッパー』な どの奥野瑛太。 公開は8月26日より、東京は新宿武蔵野館、大阪はテアトル 梅田他にて全国順次ロードショウとなる。
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