| 2020年03月15日(日) |
小説の神様、ミセス・ノイズィ(トキワ荘、島にて、海辺の映画館、恋する男、ジャズ喫茶、ルース・エドガー、朝が来る、タゴールS、追龍) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『小説の神様 君としか描けない物語』 『ミセス・ノイズィ』 今週は小説作家を主人公にした映画の試写を2本観たので、 纏めて紹介する。 1本目は2009年の鮎川哲也賞受賞でデビューした推理作家の 相沢沙呼が2016年に文庫書下ろしで発表したライトノベルの 映画化。 主人公は2人。その1人目は中学生の時に応募した作品が受 賞して作家デビューしたという男子高校生。しかしその後に 発表した作品では評価が下がり続け、SNSでも酷評が続い て作家としての自信を完全に失っている。 そしてもう1人は彼の居るクラスに転入してきた女子高生。 実は彼女も華々しくデビューした作家だったが、最近は少し スランプ気味だった。そんな彼女を部長から命を受けた主人 公が文芸部に勧誘する。 斯くして2人のプロ作家が揃った文芸部だったが、2人の意 見は小説の在り方を巡って対立。そんな2人に出版社からあ る提案がされる。それは構成力に長ける彼女のプロットで、 文章力のある彼が共作しないかというものだった。 その提案に渋々応じた彼だったが、2人の共同作業が進む内 に、彼は彼女の意外な秘密を知ることになる。 出演はEXILE TRIBEの所属で2019年2月17日題名紹介『4月 の君、スピカ。』などの佐藤大樹と、2019年11月17日題名紹 介『シグナル100』などの橋本環奈。 他に佐藤流司、柴田杏花。さらに莉子、坂口涼太郎、山本未 來、片岡愛之助、和久井映見らが脇を固めている。 脚本は2015年公開の歴史映画『杉原千畝 スギハラチウネ』 の鎌田哲郎。監督は2016年からの『HiGH&LOW』シリーズで そのほとんどを手掛ける久保茂昭が担当した。 典型的なライトノベルという感じの作品だが、主演の2人の 雰囲気にはマッチしている感じかな。それに2人がそれぞれ 抱える作家としての使命感みたいなものも、それなりに理解 できる感じがした。 活字離れというか、書籍離れが進む時代には、こんな物語が あってもいいかなあと思える作品だ。 公開は5月22日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード ショウとなる。 2本目は、2012年1月紹介『桃まつり〜すき〜』の中で『フ ィガロの告白』という作品を発表していた天野千尋監督の、 オリジナル脚本による長編デビュー作。 主人公は主婦でもある兼業の作家。そんな作家が夫と幼い娘 と共に郊外の集合住宅に引っ越してくる。ところが締め切り に追われ荷解きも疎かに徹夜した彼女は、早朝から始まった 隣部屋からの布団叩きの騒音に苛立ちを募らせる。 その上、編集部に持ち込んだ原稿がダメ出しされて落ち込ん だ彼女は、ベランダ越しに文句を言ってしまうが…。彼女が 執筆にかまけている間に幼い娘が部屋から出てしまい。隣部 屋の住人と一緒にいたことが判明する。 この状況にさらに怒りを募らせた彼女はそれを小説に書いて しまう。しかしそれが好評を呼び、さらにある出来事が起き て…。 出演は2019年2月24日題名紹介『さよならくちびる』などの 篠原ゆき子と、2017年9月24日題名紹介『レミングスの夏』 などの大高洋子(共に初主演?)。それに2019年7月28日題名 紹介『駅までの道をおしえて』などの新津ちせ。 他に長尾卓磨、宮崎太一、米本来輝。さらに洞口依子、和田 雅成、田中要次、風祭ゆきらが脇を固めている。 実は映画の中でも主人公の作品には登場人物に深みがないと 言われるのだが、その点が本作にも呼応してしまっている。 それは特に主人公が作家のステレオタイプに描かれ過ぎてい る点が気になった。 これに対して隣部屋の住人に関してはそれなりに描かれてい るから、観客としては何とも居心地が悪くなる。恐らく監督 はこれで主人公に普遍性を持たせたかったのだろうが、これ では映画としてのバランスが覚束ない。 やはり映画ではそれなりの感情移入のできるキャラクターが 欲しいものだ。それと新津ちせが何となく活かされていない 感じなのも気になった。以前の短編の時には子役が良いと書 いたが、これもキャラクターが立っていないせいかな? いずれにしても何かもったいない感じがした。もしかすると 小説家という設定にはしない方が良かったのかもしれない。 でもまあそんなことを気にしなければ、SNSの現状など、 それなりに面白く観られる作品ではあった。 公開は5月から、東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロード ショウとなる。
この週は他に 『トキワ荘の青春』 (東京都豊島区椎名町五丁目にかつて在った木造アパート。 そこには『スポーツマン金太郎』などの寺田ヒロオを中心に 手塚治虫、藤子不二雄、石森章太郎、赤塚不二夫、水野英子 らが居住し、共に研鑽していた。この物語をすべて実名にて 市川準の脚本、監督で映画化した1996年の作品。登場人物も 凄いが、出演者にも寺田役の本木雅弘を始め、阿部サダヲ、 古田新太、生瀬勝久。さらにきたろう、原一男、内田春菊、 時任三郎、桃井かおりらの面々が並ぶ。この内、本木は先に 日本アカデミー賞を取っていたが、阿部は映画デビュー作、 古田は2作目、生瀬もデビュー作という公開当時の新進気鋭 のメムバーだ。僕は個人的には日本SF作家クラブ会員だっ た手塚さんとしか面識はないが、劇作家の北村想が演じたそ の姿はよく似ている感じがした。それに石森が「イシモリ」 と呼ばれていたのにもニヤリとしたものだ。公開は5月29日 より、東京はテアトル新宿他で全国順次ロードショウ。)
『島にて』 (2017年8月6日題名紹介『夜間もやってる保育園』などの 大宮浩一監督と同作で監督補を務めた田中圭の共同監督で、 山形県酒田市から連絡船で75分、日本海に浮かぶ県内唯一の 有人離島・飛島に取材した平成最後の1年間。かつては海上 交通の要衝として交易や漁業で栄えた島だが、現状は過疎化 が進み人口140人の大半は後期高齢者という状況だ。そんな 島に9年前に移住してきた夫妻はデイサービスなどで理想の 老人介護事業を目指す。そして夫妻の3人の子供の末っ子が 中学3年になった春から卒業の冬までを軸に島での暮しが描 かれる。そこには島内の3つの神社に宮司は1人で、神社ご とに異なる獅子舞や神楽などの神事が行われる様子や、それ でも無くなった行事の思い出なども語られる。その一方で島 に若者を呼び戻すための事業計画など未来の展望も描かれ、 正しく離島や過疎の縮図と言える作品だ。公開は5月16日よ り、東京はポレポレ東中野他で全国順次ロードショウ。)
『海辺の映画館―キネマの玉手箱』 (2019年11月7日付「第32回東京国際映画祭」でも紹介した 大林宣彦監督作品。物語については前回紹介したのと変わり ないので、ここではメインキャスト以外の出演者を記録して おこう。一応登場順ということで、高橋幸宏、小林稔侍、中 野章三、ヤニック、武田鉄矢、村田雄浩、稲垣吾郎、浅野忠 信、渡辺裕之、片岡鶴太郎、南原清隆、品川徹、入江若葉、 伊藤歩、寺島咲、尾美としのり、柄本時生、蛭子能収、根岸 季衣、渡辺えり、有坂来瞳、ミッキー・カーチス、手塚眞、 犬童一心、星豪毅、金井浩人、本郷壮二郎、川上麻衣子、大 森嘉之、大場泰正、長塚圭史、満島真之介、窪塚俊介、中江 有里、白石加代子、笹野高史、犬塚弘。大林監督の遺作にな るという話もあったから、これはもう凄い顔ぶれだが。実は プレス資料に寄せた監督のコメントには「今日も映画作りに 励んでおります。」の一文もあり、これは…と思わせてもく れるところだ。公開は4月10日より、全国ロードショウ。)
『恋する男』 (2018年9月紹介『BD−明智探偵事務所−』などの小木茂 光と、2019年9月1日題名紹介『爆裂魔神少女』などの佐々 木心音共演で、配給会社マーメイドフィルム代表の村田信男 による初監督作品。脚本は村田と2018年7月紹介『教誨師』 などの佐向大が共同執筆している。妻子に逃げられ、勤務先 をリストラされた男性が一念発起で会社を設立。事業は成功 するが…。男性の心は2人の女性で揺れ動き、それが失敗を 招く。共演はグラビアアイドルの出口亜梨沙。何と言うか、 男の妄想をそのまま映画にしたような作品で自分が男性とし ては正直恥ずかしくなった。こんな妄想は男なら誰でも持つ のだろうが、それは公にしてはいけないのではないかな。女 性の観客には馬鹿にされそうで、観ていて居た堪れなくもな った。物語としては主人公の失敗が戒めなのだろうが。これ を喜ぶ男もいるのだろうか? 公開は4月25日より、東京都 写真美術館ホールにて、特集上映の1本として公開。)
『ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)』 (昭和初期に始まり、現在でも全国に600軒は下らないとさ れるレコード演奏を主体としたジャズ喫茶。その中でも世界 一と言われる岩手県一関市に50年続く店とそのマスターを中 心に、奥深いジャズ/オーディオの世界を写したドキュメン タリー。マスターの名前は菅原正二。早稲田大学を卒業後に 故郷に戻って店を開いた。そこには名機とされる拘りのオー ディオ機器が鎮座し、一緒にライヴ演奏のスペースも設けら れる。そこで名盤が再生されると共に、世界中のアーティス トが訪れて名演奏が披露された。それらのアーカイヴ映像や マスターの含蓄ある解説。そして渡辺貞夫や小澤征爾、坂田 明から鈴木京香まで様々な所縁の人たちへのインタヴューが 綴られる。その内容も聞き応えがある。もちろん限られた時 間の中ではもっと聞きたいと思うものもあるが、そこが節度 という感じに見事に描かれた作品だ。公開は5月29日より、 東京はアップリンク渋谷他で全国順次ロードショウ。)
『ルース・エドガー』“Luce” (ナイジェリア出身でニューヨーク大学に学んだジュリアス ・オナー監督が、テレビ脚本家のJ.C.リーが2013年に発表 した戯曲を基に共同脚本で描いたアメリカに暮らす黒人の物 語。主人公は紛争国から養子縁組でやってきた少年。それか ら10年が経ち、高校生の彼は文武両道で将来を嘱望されてい る。しかし提出した課題のレポートが波紋を呼ぶ。そこには 過激な思想家の発言が活写されていたのだ。果たして彼はそ の思想を実践するのか? それとも単に思想を準っただけな のか? 様々な思惑が校内を、家庭を、そして社会を揺り動 かす。差別の問題は色々と考えてきたが、この作品はそんな 目にも新たな視点を与えてくれた。出演は2018年9月9日題 名紹介『IT COMES AT NIGHT』などのケルビン・ハリスンJr. と、ナオミ・ワッツ、オクタビア・スペンサー、ティム・ロ ス。他国に居ては判らないアメリカの現実が炙り出される。 公開は5月15日より、全国ロードショウ。)
『朝が来る』 (直木賞受賞(2012年)作家の辻村深月が2015年刊行した小説 を、2017年4月23日題名紹介『光』などの河瀬直美脚本、監 督で映画化した作品。子供に恵まれず「特別養子縁組」を選 んだ夫婦。それから数年が経って掛かってきた1本の電話。 その声の主は「自分が産みの母で、子供を還して欲しい」と 告げた。果たしてその真意は…。そして物語は声の主の数奇 な運命も描いて行く。出演は永作博美、井浦新、蒔田彩珠、 浅田美代子、佐藤令旺。他に田中偉登、中島ひろ子、平原テ ツ、駒井蓮、山下リオ。さらに山本浩司、三浦誠己らが脇を 固めている。直上の作品も養子の話だったが、こちらは正に 日本社会を背景にした作品だ。しかも巧みな展開で最後の瞬 間に全ての駒がピタリと収まる、そんな極上のミステリーに なっていた。カンヌの申し子ともされる河瀬監督が今回はパ ルムドールも狙える作品と思うが、果たして…。公開は6月 5日より、全国ロードショウ。)
『タゴール・ソングス』 (東京外国語大学でヒンディ語とベンガル文学を専攻した女 性監督が初めて挑んだ映像作品。凡そ1世紀前の1861年から 1941年まで80年の生涯を送ったインドの詩人の業績を追った ドキュメンタリー。その足跡を辿ってインドのコルカタやバ ングラディシュのダッカにも取材し、戦前の日本を訪れたこ ともある詩人の思いを検証する。物凄く気持ちの籠った作品 であることは理解する。しかしこの作品では詩人本人の人物 像が見えてこない。監督には自明のことなので省いてしまっ たのかも知れないが、まず本作ではそれを知らしめることが 重要なのではないかな。僕はノーベル文学賞を西欧人以外で 初めて受賞したとか、インドとバングラディシュ両国の国歌 を作ったこと以外の詩人の生い立ちや、生涯などをもっと知 りたかった。そういった点で不満に感じる作品だった。公開 は4月18日より、東京はポレポレ東中野他で全国順次ロード ショウ。)
『追龍』“追龙” (前回題名紹介『イップ・マン完結』などのドニー・イェン と、2018年6月24日題名紹介『SHOCK WAVE 爆弾処理班』な どのアンディ・ラウ共同製作・初共演で、1970年代の香港を 舞台に黒社会と警察の癒着を描いた実話に基づく作品。ラウ が扮するのは彼自身が1991年の映画『リー・ロック伝』でも 演じた香港警察の捜査主任。イェンが演じるのは満州からの 不法移民ながら黒社会でのし上がった麻薬王。そんな2人が 結託し、絶対権力を握るイギリス人警司の眼を掠めて巨大な 富を築いて行く。それはもちろん不正ではあるが、見方を変 えれば絶対権力への反抗を描いた作品とも言える。それらが 2人の友情や信頼と共に描かれて行く。脚本・監督・製作は 1993年『シティハンター』(北条司原作)などのバリー・ウォ ン。公開は6月26日より、東京は新宿武蔵野館他で全国順次 ロードショウ。なお本作は2017年の作品で、2019年には同じ く実話に基づく『追龙�供戮睨楾颪埜�開されたようだ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
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