井口健二のOn the Production
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2020年02月09日(日) 囚われた国家、ndjc(優作について/CLUB DEJA-VU、カゾクデッサン、ポップスター、彼女は夢で、ムヒカ、白い暴、オーバー・ザ・L、悪い偶)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『囚われた国家』“Captive State”
2011年『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の監督を務めた
ルパート・ワイアットの製作・脚本・監督で、2018年に襲来
した地球外生命体(エイリアン)により世界各国が支配された
後の未来社会を描いた作品。
その侵略は突然始まった。その混乱の中、シカゴの中心街か
ら脱出しようとした一家は攻撃を受け、前部座席にいた両親
は即死、後部座席で身を屈めていた11歳と15歳の兄弟が辛う
じて生き延びる。
それから9年後の2027年、世界の主要都市はエイリアンの支
配下に置かれていた。そして各都市の地下にはエイリアンの
居住区が設けられ、特にアメリカ政府は地下資源を搾取する
エイリアンに追従するばかりだった。
このためアメリカ社会では、エイリアンに協力する富裕層と
反抗する下層階級との格差が広がり、下層階級からはテロに
よる現状の打開が期待された。しかし圧倒的なエイリアンの
武力の前にそれは叶わぬ夢のまた夢だった。
そんな未来社会で、生き延びた兄弟の兄はテロリストのリー
ダーとして警察の追及を受ける身となり、他方の弟は父親の
元同僚だった警察特捜司令官の許で仕事も貰っていたが…。
その弟に行方不明だった兄との連絡の機会が訪れる。
そして再会した兄は、エイリアンへのテロ攻撃の最後の計画
を進めていた。

出演は、2017年2月5日題名紹介『ムーンライト』で10代の
主人公を演じたアシュトン・サンダースと、2019年5月紹介
『荒野の誓い』などのジョナサン・メジャース。他にジョン
・グッドマン、ベラ・ファーミガらが主要な役で登場する。
プレス資料によると監督は、脚本を書くに当ってはジャン=
ピエール・メルヴィル監督の1969年『影の軍隊』と、ジッロ
・コンテコルヴォ監督の1966年『アルジェの戦い』を参考に
したそうで、その点では本作はSFというよりレジスタンス
映画の雰囲気を捉えている。
その一方で監督は、歴代最高のSF作家として1982年『ブレ
ードランナー』の原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか
?』の著者フィリップ・K・ディックの名前を挙げており、
確かにそのイメージはあると言える。
とは言え本作ではレジスタンス映画の色彩は濃いもので、そ
の点では特に前半はSFの目で見るのは辛いかもしれない。
しかし後半に入ってテロの計画が進み始めると、警察との攻
防などが巧みにSFになって行く。それはSF映画ファンの
目にも好ましいものだった。
なお本作ではシカゴでの攻防戦が描かれるが、エイリアンの
支配は東京を含む世界各地で行われているもので、これは場
所を変えての別の攻防戦も描けそうだ。そんなシリーズ化も
期待したくなった。

公開は4月3日より、東京は池袋シネマ・ロサの他、全国の
イオンシネマでロードショウとなる。

『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019・合評上映会』
2019年2月にも紹介した文化庁事業の2019年度版。事業の主
旨は昨年の記事にも書いた通りで、本年度も各映画団体から
推薦された若手監督による35�丱侫�ルムを使った各々30分の
作品が3本制作され、会場で上映された。
「あなたみたいに、なりたくない」
シナリオ・センター推薦。1986年生まれの川崎僚監督作品。
主人公は28歳の地味なOL。地味ゆえに土曜出勤なども頼ま
れやすいが、その場を救ってくれるやはり未婚の地味な先輩
もいる。そんな先輩を尊敬しながらも、ああはなりたくない
と思っている主人公だったが…。
主人公はその手の会社に登録して婚活を始め、様々な男性が
彼女の前に現れる。しかし彼女自身は何か違うものを感じて
いた。出演は阿部純子、小島聖、鳥谷宏之、吉倉あおい、藤
田真澄。
上映後のQ&Aによると監督自身も婚活経験ありようだが、
実体験に基づいている所為か、それなりに地に足の着いた安
定の作品にはなっていた。物語の展開も悪くはないが、そこ
までかな。もう一投何か変化球が欲しい感じがした。
「Le Cerveau - セルヴォ -」
デジタルハリウッド大学推薦。1986年生まれの島田欣征監督
作品。
主人公は女手一つで必死に息子を育ててきた母親。しかし息
子が病魔に侵され、救う手立ては彼女からの生体移植に限ら
れる。そんな時に交通事故に遭ってしまった主人公が目覚め
ると、彼女の精神は別の身体に宿っていたが…。
彼女を瀕死の状態から救ったという少年科学者の制止を振り
切り、彼女の元の身体と息子のいる病室に向った主人公は、
徐々に事件の真相に近付いて行く。出演は田中沙依、藤崎絢
己、南岐佐、八田浩司、上瀧昇一郎。
CGデザイナーでもある監督はVFXも手掛けたようで、そ
れらはそれなりに観られた。ただ物語はいろいろな要素を盛
り込み過ぎて30分には収まり切れなかったかな。少年科学者
など奇を衒った設定も物語に活きていなかった。
「魚座どうし」
PFF推薦。1997年生まれの山中瑶子監督作品。
主人公は小学4年生の女子。家庭は父親が長期の海外赴任中
で、母親の心にはぽっかり穴が開いているようだ。それを埋
める術がないことも幼いながらに判っている。そして同級生
の男子の家も父親不在で…。
その男子の母親が宗教に凝っていたり、彼の姉が反抗期にな
るなど、主人公の周囲で起きる出来事が描かれる。それでも
少女は明日を信じて生きて行く。出演は根本真陽、外川燎、
山田キヌヲ、伊東沙保、カトウシンスケ。 
上映後のQ&Aによると監督は10代半ばにこの物語を書き始
めたそうで、長編映画のダイジェストという感じなのかな。
全体的に物語が言い切れていない気がして、もやもやしたも
のが残った。
全体的に、今回の3作品はいずれも何か中途半端な感じで、
昨年の5作品に比べると物足りない思いがした。ただ通常の
試写で観る作品も近年そんな思いのすることが多いから、こ
れが時流なのかな。
なお例年5本程度作られてきたこのプロジェクトでは、今回
の3本は最少だが、実はこのプロジェクトの一環として別途
に長編の制作が進められたのだそうで、その作品は秋以降に
一般公開の予定とのこと。それも期待したい。

この週は他に
『優作について私が知っている二、三の事柄』
『CLUB DEJA-VU ONE NIGHT SHOW
            松田優作・メモリアル・ライブ』
(1989年11月6日に40歳で他界した松田優作。その翌年12月
3日に原田芳雄の呼び掛けにより池袋サンシャイン劇場にて
行われた追悼コンサートを写したヴィデオテープの復刻。同
コンサートを演出した崔洋一監督が再編集し、新たに制作さ
れたコンサートの出演者らへのインタヴューと共にDVD化
された。出演者の顔ぶれも見事だが、インタヴューで語る水
谷豊、桃井かおりらの発言や表情も堪らない。呼び掛け人の
原田も既に亡く、本編はプロデューサーの黒澤満が亡くなっ
てその遺品から発見されたとのこと。僕自身は同世代の人間
だから松田の偉大さは判っているし、そんな目で見ていると
残された者の無念や切なさも胸に迫ってくる。僕には1973年
『狼の紋章』の試写で松田が演じた羽黒獰を観た原作者・故
平井和正氏の感心振りも思い出された。なお本作のDVDは
2月5日に既に発売されたものだが、崔監督は劇場公開も希
望しているとのことなので、その支援のためここに記す。)

『カゾクデッサン』
(CMなどのスタジオマン出身で、2004年にnet配信の短編
を初監督したという今井文寛監督が脚本・製作も務める長編
デビュー作。ヒモ暮しをしている男の働くバーに場違いな少
年が現れる。少年は男の元恋人が母親だと言い、その母親が
交通事故で意識不明となり目を覚まさせる方法を探している
と告げる。その言葉に男は病室を訪れるが…。出演は2019年
6月9日題名紹介『暁闇』などの水橋研二、2019年6月紹介
『火口のふたり』などの瀧内公美、2018年2月25日題名紹介
『ミスミソウ』などの大友一生。他に中村映里子、大西信満
らが脇を固めている。ドラマとしてはありそうな展開だが、
細かい部分が色々と工夫されている感じの作品だった。皆が
事実を知っていながら、お互いを思ってそれを口にしない、
そんな家族の機微も良く描けていた。それに試される療法も
理に適っていてそれも心地よかった。公開は3月21日より、
東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『ポップスター』“Vox Lux”
(2016年9月紹介『シークレット・オブ・モンスター』にて
2015年ヴェネツィア映画祭の新人監督賞及びオリゾンティ部
門の脚本賞に輝いたブラディ・コーベットの監督第2作で、
ナタリー・ポートマンとジュード・ロウを製作総指揮及び主
演に招き、若くして人気の頂点に立ったスターを描く作品。
21世紀の始りの年、通っていた高校で銃乱射に巻き込まれた
主人公は負傷のリハビリで作った楽曲によりスターへの一歩
を踏み出す。それから17年後、スターの座から転落した彼女
はアルコールに溺れる日々だったが、再起を賭けたツアーの
直前に新たな乱射事件が報道される。しかもそこには彼女の
歌を想起させる仮面が使われていた。共演は2015年5月紹介
『トゥモローランド』などのラフィー・キャシディ。ポート
マン自身が過去には大ヒットシリーズに出演した際の葛藤を
語ったこともあり、そんな思いも込められた作品だ。公開は
4月3日より、全国ロードショウ。)

『彼女は夢で踊る』
(広島県出身の時川英之監督が広島市に実在したストリップ
劇場を舞台に、劇場のラストステージを迎える社長と全国か
ら集まった踊り子たち、そして劇場で繰り広げられた過去の
栄光とラヴストーリーなどが交錯する物語。その劇場は何度
も閉館が予告され、その度に復活して「閉館詐欺」などとも
呼ばれていたが…。楽屋から舞台に向かう階段の壁には無数
の口紅の跡が残され、それには舞台に立つ決意や様々な思い
が宿っていた。出演は2019年12月8日題名紹介『嘘八百』な
どの加藤雅也と、2018年8月紹介『仮面ライダービルド』の
犬飼貴丈、他に2017年9月24日題名紹介『ビジランテ』など
の岡村いずみ、現役ストリッパーとして活躍する矢沢ようこ
らが脇を固めている。舞台の劇場は2019年に遂に本当に閉館
になったようだが、映画には多少ファンタシーの要素もあっ
ていろいろ楽しめる作品だった。公開は4月10日より、東京
は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)

『ムヒカ世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』
(2012年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連
持続可能な開発環境会議」での演説が話題になり、イギリス
・BBC放送が「世界一貧しい大統領」と紹介し、日本では
2014年に演説からの翻訳が絵本として出版されたウルグアイ
の元大統領ホセ・ムヒカを取材したドキュメンタリー。その
演説は、各国首脳がそれぞれの自国の基準で持続の可能性を
訴えたのに対して、ひと個人の幸せをそれぞれの立場から考
え直そうとするもの。その考えに共鳴したテレビの報道記者
が3年間5度にわたる渡航取材と、その間に行われた2015年
の訪日の様子を併せて本作は描かれる。実は冒頭では記者の
子供の誕生が報告され、これはやばいかなあとも思ったが、
この個人レヴェルの話題が実は大統領の演説にも呼応してこ
れはしたたかな作品に思えた。恐らくこの展開だから大統領
の訴える本質が描けたとも言えるのかな。公開は4月10日よ
り、東京はシネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)

『白い暴動』“White Riot”
(「英国病」とも呼ばれる経済破綻状態にあった1970年代の
イギリス。戦後復興のための労働力として世界中から呼び寄
せられた移民は何時しか市民の不安と不満の矛先となり、移
民=人種差別へと向って行く。それは移民排斥を掲げる政党
の台頭とそれを支持する白人社会の動向に顕著だった。そん
な中で発足された“Rock Against Racisim”略称RARは音
楽と結びつき、「Love Music, Hate Racism」のスローガン
の下で様々な活動を進めて行く。それが遂には10万人規模の
音楽フェスの実現となり時代を変革した。本作はその様子を
当事者へのインタヴューと様々なアーカイヴ映像。それに当
時の音楽と共に再現するドキュメンタリーだ。監督はオース
トラリア出身でイギリスBBCから多くのドキュメンタリー
を発表しているルビカ・シャー。これは今またEU脱退など
内に向く英国民に突き付ける作品だ。公開は4月3日より、
東京はアップリンク吉祥寺他で全国順次ロードショウ。)

『オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡』
                  “Over the Limit”
(2016年リオデジャネイロオリンピックの新体操ロシア代表
だったマルガリータ・マムーンの軌跡を追ったドキュメンタ
リー。その才能で彼女は栄冠を獲得できるとされていたが、
練習では完成されている技が、本番ではその実力が発揮され
ることなく、いつも2位の座に甘んじていた。そんな彼女を
指導しているのは、1994年世界選手権の個人総合で銀メダル
を獲得したウズベキスタン出身のアミーナ・ザリポアだった
が…。そんな2人の練習の場に現れたのは2008年から全ロシ
ア連邦新体操総裁を務めるイリーナ・ヴィネル。ザリポアを
見いだしたことでも知られるヴィネルは早速マムーンに激し
い言葉をぶつけ彼女を鼓舞し始める。その結果は。いやはや
日本だったらすぐさまパワハラで訴えられるところだろう。
海外では2015年の『セッション』にも比較されているが、こ
れはドキュメンタリーだ。公開は4月10日より、東京は新宿
ピカデリー他で全国順次ロードショウ。)

『悪い偶像』“우상”
(2018年7月紹介『1987、ある闘いの真実』などのソル・ギ
ョングと、2007年10月紹介『ユゴ|大統領有故』などのハン
・ソッキュのW主演で、ある交通事故が炙り出す人間の欲望
を描いた作品。一方は清廉なイメージで次期知事の座を狙う
市議会議員。他方は市井の労働者。ところが議員の息子がひ
き逃げ事件を起こし、被害者である労働者の息子が道端の遺
体で発見される。しかしその裏には政治生命を守ろうとする
政治家の画策があった。しかもそこに目撃者の存在が浮かび
上がり、その目撃者を巡って加害者の父親と被害者の父親の
攻防が始まるが…。脚本と監督はデビュー作がマーティン・
スコセッシに絶賛されたというイ・スンジンの第2作。見事
な展開というか、韓国の国情に合わせた物語の推移は正直な
ところは他国民の目には判り辛いが、じっくりと描き込まれ
た作品の見応えは充分だった。公開は4月17日より、東京は
シネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二