井口健二のOn the Production
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2019年11月10日(日) 9人の翻訳家 囚われたベストセラー(ジョジョ・ラビット、オリ・マキの人生で最も幸せな日)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』
                  “Les traducteurs”
「ダ・ヴィンチ・コード」が世界的なベストセラーになった
ダン・ブラウン原作「ロバート・ラングドン」シリーズで、
その第4作「インフェルノ」の世界同時出版の際に、各言語
の翻訳者を一堂に集め、外部に情報が漏れないようにしたと
される実話から発想したミステリー作品。
物語の始まりはドイツで開かれるブックフェア。その会場で
世界的ベストセラーとなったシリーズの第3巻にして完結編
の出版が報告される。その出版権を獲得したのは出版社社長
でビジネスマンの男性。しかも彼は世界同時出版を宣言し、
そのため翻訳家を一堂に集めてフランス語の原稿を翻訳させ
ると発表する。
そこで集められたのは、英語、ロシア語、ギリシャ語、スペ
イン語、中国語など9人の翻訳家。彼らは携帯電話や外部と
の通信の可能性のあるノートPCも取り上げられて、ロシア
人の富豪が核戦争避難のために建てたという地下深い要塞に
閉じ込められる。こうして毎日20ページずつ渡される原稿の
翻訳が始まるが…。
作業が進み、全編の半ばを過ぎたころ、事件が起きる。原稿
の冒頭10ページがネットに露出され、500万ユーロを指定の
刻限までに支払はなければ次の100ページを公開するとの脅
迫が出版社社長に届いたのだ。その脅迫を最初無視した社長
だったが、刻限を過ぎると100ページが公開され、さらに高
額の要求が届く。
果たして犯人はだれなのか、そしてその原稿を入手した方法
は?

出演は2011年1月紹介『神々と男たち』などのランベール・
ウィルソン、2018年10月紹介『ジョニー・イングリッシュ』
などのオルガ・キュリレンコ、2016年10月30日題名紹介『僕
と世界の方程式』などのアレックス・ロウザー。
さらに2018年3月4日題名紹介『ダリダ〜あまい囁き〜』など
のリッカルド・スカマルチョ、2016年11月20日題名紹介『王
様のためホログラム』などのシセ・バベット・クヌッセン。
2013年2月10日題名紹介『ラストスタンド』などのエドゥア
ルド・ノリエガらが脇を固めている。
脚本と監督は、2013年6月20日「フランス映画祭2013」で紹
介『タイピスト!』などのレジス・ロワンサル。
基となった実話があるとは言え、描かれた物語は映画的にも
なかなか面白かった。ミステリー仕立てというのも、もとも
との話と重なって興味を惹かれるものだ。脅迫の真犯人は消
去法で大体の予測はついたが、そこからの展開には意外性も
あった。
ただ後半に発生する事件に関してはもう少し詳細に描いて欲
しかったかな。警察の動きもちょっと唐突で、その辺の詰め
が多少甘いようにも感じられた。でもまあ下手にだらだらす
るよりは、この方が良いのかもしれない。
今回は1度見ただけだが、2度見すればさらに色々見えてき
そうな、そんな感じもする作品だ。

公開は2020年1月24日より、東京はヒューマントラストシネ
マ有楽町、渋谷シネクイント、新宿ピカデリー他で全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『ジョジョ・ラビット』“Jojo Rabbit”
(ハーヴァードで学んだ女流作家クリスティン・ルーネンス
が2008年に発表した小説“Caging Skies”から、2017年『マ
イティ・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティが
脚色、監督した作品。第2次世界大戦中のドイツを舞台に、
ヒトラーユーゲントに憧れる少年と、彼の家に匿われていた
ユダヤ人少女との交流が描かれる。少年はユーゲントの合宿
で失敗しウサギとあだ名されるが…。イマジナリーフレンド
としてアドルフ・ヒトラーも登場し、大人も社会も一方向に
向いた中で育つ少年が真実に目覚めてゆく姿をユーモアを込
めて描く。出演は新人のローマン・グリフィン・デイヴィス
と、2018年『足跡はかき消して』などのトーマシン・マッケ
ンジー。ワイティティ監督がアドルフ役を演じ、サム・ロッ
クウェル、スカーレット・ヨハンソンらが脇を固めている。
現代にも通じる全体主義国家の恐ろしさが巧みに描かれた作
品だ。公開は2020年1月17日より、全国ロードショウ。)

『オリ・マキの人生で最も幸せな日』“Hymyilevä mies”
(1962年夏に行われたフィンランド史上初の世界チャンピオ
ンを迎えてのボクシングタイトルマッチ。その戦いに挑んだ
ボクサーの姿を描く実話に基づいた作品。主人公は欧州チャ
ンピオンにも輝き、正に国民期待の星だったのだが…。ある
事情から体重を1ランク落としての挑戦を余儀なくされる。
とは言え減量も苦も無くやってのける主人公だったが、彼は
1人の女性に恋をしてしまう。そしてトレーニングの最中に
もデートを重ねて行く。スポーツドラマだと思って観ている
と後半あれあれと思うが、実は物語は微笑ましい青春ドラマ
なのだ。出演は、主人公と同郷のヤルコ・ラハティと映画初
出演のオーナ・アイロア。監督も長編デビュー作のユホ・ク
オスマネン。因に映画の終盤で主人公とすれ違う老夫婦は御
本人たちだそうだ。本作は2016年カンヌ国際映画祭・ある視
点部門グランプリを獲得した。公開は2020年1月17日より、
東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二