| 2019年08月25日(日) |
アップグレード、国家が破産する日(宮本から君、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・W、幽玄、ドリーミング村上春樹、サラブレッド) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『アップグレード』“Upgrade” 2019年6月紹介『アス』などを手掛けるジェイスン・ブラム が製作を担当し、2004年9月紹介『ソウ』に始まるシリーズ の脚本、製作や、2016年『インシディアス:序章』で監督に も進出したリー・ワネルの脚本、監督による近未来SFサス ペンス。 物語の背景は、A.I.の発達で乗用車も目的地を告げるだけで 自動操縦が行われる時代。主人公はそんな時代でもガソリン エンジンのマニュアル操縦車に拘り、そのメンテナンスを続 けているような男。 ところがメンテナンスの完了した車をA.I.産業の大物の自宅 に届け、妻と共に妻所有の自動運転車での帰路。突然暴走を 始めた車はスラム街に突入。そこで横転した車は暴徒に襲わ れ、妻は殺されて主人公も全身麻痺の重傷を負う。 しかしそんな主人公の病室をA.I.産業の大物が訪れ、ある提 案が行われる。それは新開発のチップを脊髄に埋め込み、四 肢の動きを取り戻すというものだったが…。倫理に反するそ の手術は主人公に超人的な行動力をもたらす。 マーヴェルコミックスの映画化にでもありそうな展開だが、 本作ではそれを真面なSFに仕上げている。 出演は、2012年7月紹介『プロメテウス』などローガン・マ ーシャル=グリーン、テレビシリーズ『パワーレンジャー』 などのメラニー・ヴァレイヨ、2019年2月紹介『アンフレン デッド:ダークウェブ』などのベティ・ガブリエル。 他に2014年『ニード・フォー・スピード』などのハリスン・ ギルバートソン、2017年11月紹介『エターナル』などのベネ ディクト・ハーディ、オーストラリア出身のサイモン・メイ デン(声優)らが脇を固めている。 脚本、監督のリー・ワネルに関しては、『ソウ』の紹介文で も書いたように、当時の会見ですごく優秀な人のように感じ たし、『ソウ』のシリーズ化やその他のヒットシリーズでも 彼の脚本の良さが光っていると思えたものだ。 そのワネルの監督デビュー作は見逃したが、本作でも緻密な 脚本と巧みな演出は見事。特に四肢の動きの微妙な変化や、 その制御が利き難くなってからのアクションなどは、正に自 分がその状態に陥っているような感覚も与えてくれた。 しかも敢えて幻想的なシーンなどを挟むこともなく、現実の 映像だけで押し切っているところも、最後の衝撃に巧みに繋 げられている。さらにこのシーンを描いたら、次は復活篇だ な…という期待も抱かせたものだ。 本作中では主人公の妻がやってきたことへの示唆はあるが、 その追及はなされておらず、これはぜひとも続編を期待した い作品だ。 公開は10月11日より、東京は渋谷シネクイント、新宿シネマ カリテ他にて全国ロードショウとなる。
『国家が破産する日』“국가부도의 날” 1997年に韓国を襲った経済危機、その裏側を描いた事実に基 づくとされるドラマ作品。 1988年のソウルオリンピックから、1996年のOECD加盟へと続 き好調かに見えた韓国経済。しかしその背後では放漫な経済 政策による危機が迫っていた。それはその事実に気付いた海 外投資家の動きに始まり、外貨準備高の急激な減少から破綻 のタイムリミットが7日後に迫っていると判断される。 そこで韓国政府は秘密裏に対策チームを立ち上げ、IMF(国際 通貨基金)への支援要請を検討するが、それは韓国経済を外 部に明け渡すことを意味し、国民生活に大打撃を与えること 必至なものだった。それに対して韓国銀行の通貨対策担当者 は代案を立てるが…。 その危機を巡る政府内の動きを中心に、事態を素早く察知し て自らの利益誘導に動く経済アナリスト、そして危機のあお りをもろに受ける町工場の経営者など、物語は多角的に展開 される。 出演は2013年『観相師』などのキム・ヘス、2019年1月13日 題名紹介『バーニング』などのユ・アイン、2010年10月紹介 『黒く濁る村』などのホ・ジュノ。他に2019年8月紹介『王 宮の夜鬼』などのチョ・ウジン、さらにヴァンサン・カッセ ルらが脇を固めている。 監督は本作がデビュー2作目のチェ・グクヒ。脚本も新鋭の オム・ソンミンが執筆している。 脚本は、1997年当時に非公開だった対策チームの存在が近年 明らかにされ、その事実に基づいて描かれているものだが、 内部での会話などの記録は残されておらず、そこは全て脚本 家の創作とのことだ。しかしそこにはそうあって欲しかった という希望も込められているとのこと。 その中には日本への支援要請の検討が言下に否定されるシー ンなどもあり、日本人としてはその真偽も知りたいところだ が、同時に韓国人の複雑な気持ちも描かれているようだ。 それにしても、2018年3月11日題名紹介『タクシー運転手』 から2018年7月紹介『1987、ある闘いの真実』、2019年5月 紹介『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』 など、近年の韓国社会派映画には見応えの感じられる作品が 多くある。 それは2008年3月紹介『光州5・18』辺りから続いている ものでもあるが、そこには映画人の信念も感じ取ることがで きるものだ。そしてこの映画の結末では、2018年平昌オリン ピックを終えた現在にも警鐘を鳴らしている。 公開は11月8日より、東京はシネマート新宿、大阪はシネマ ート心斎橋他にて全国順次ロードショウとなる。
この週は他に 『宮本から君へ』 (1992年に小学館漫画賞青年一般部門を受賞した新井英樹の 原作から2018年に連続ドラマ化された作品を、監督、脚本の 真利子哲也、主演の池松壮亮、蒼井優もそのままに映画化。 文房具メーカーの営業マンの男性が同じ職場の年上の女性と 結ばれるが、女性の元カレや営業先の社長の息子らに振り回 される。それでも必死に彼女を守って行くさまが描かれる。 共演は井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生。他に星田英利、古 舘寛治、ピエール瀧、佐藤二朗、松山ケンイチらが脇を固め ている。そんなに酒が弱いのならいっそ飲むなと言いたくも なるが、そんな失敗に上乗せして非力な主人公が暴力上等の ラガーマンに立ち向かって行く姿が面白いのかな。それにし ても、今の時期にこれを公開してしまうのもいろいろな意味 で凄いことだ。因に題名はダニエル・キース原作映画の邦題 『まごころを君に』から採っているそうだ。公開は9月27日 より、東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』 “C'era una volta il West” (1969年に『ウエスタン』の邦題で短縮版が公開されたマカ ロニ・ウエスタンの巨匠セルジオ・レオーネの集大成とも言 える作品が、邦題も変えて2時間45分のオリジナル版で再上 映される。大陸横断鉄道が西へ西へと延伸されている時代。 谷間に建つ一軒家で一家が惨殺される。それは父親と長男、 長女、それに幼い末弟も皆殺しという残忍なものだ。しかも その日は父親が新たな妻を迎える婚礼の日だった。こうして 遅れてきた新妻は一家の葬儀が最初の仕事となるが…。1人 残された彼女の耳にハーモニカの音色が聞こえ、現れた男は 殺人者の後を追い始める。出演は、クラウディア・カルディ ナーレ、ヘンリー・フォンダ、ジェイスン・ロバーズ、チャ ールズ・ブロンスン。原案をレオーネとダリオ・アルジェン ト、それにベルナルド・ベルトルッチが手掛け、西部開拓の 終わりを告げる物語が描かれる。公開は9月27日より、東京 は新宿ピカデリー他で全国順次ロードショウ。)
『シネマ歌舞伎・幽玄』 (最近では2019年3月31日題名紹介『鷺娘』を紹介したシネ マ歌舞伎の特別編。佐渡の鬼太鼓座を基に1981年にベルリン でデビューした和太鼓集団・鼓童と、21世紀に入ってその演 出指導を行ってきた坂東玉三郎が直接コラボレーションした 作品。その来歴と共に「羽衣」「道成寺」「石橋」の3演目 が収録されている。それぞれは物語紹介のテロップに続けて 玉三郎と鼓童によるパフォーマンスが行われるもの。ただし 「羽衣」に関しては優美な舞に鼓童は合わせ難かったかな。 他の石見神楽の大蛇が登場する「道成寺」と、連獅子登場の 「石橋」は舞踊と鼓童のパフォーマンスとの融合に見応えが あったが…。因に舞踊の振り付けは花柳寿輔で、歌舞伎舞踊 の主流である藤間流の踊りとは一味違う感じになっている。 それも見どころと言えそうだ。とは言え「羽衣」で漁師が艪 を漕ぐ手振りは少し気になった。公開は9月27日より、東京 は築地東劇他で全国ロードショウ。)
『ドリーミング村上春樹』“Dreaming Murakami” (2010年に制定されて隔年に贈賞されるデンマークのハンス ・クリスチャン・アンデルセン文学賞を、2016年に受賞した 村上春樹。その作品を20年以上に亙って同国に紹介し続けて いる翻訳家メッテ・ホルムの姿を追ったドキュメンタリー。 デンマーク生まれの女性翻訳家はゴブラン織に憧れてフラン スに留学、そこで川端康成の作品に出会い1983年に初来日。 日本語を学ぶと共に、日本を心の故郷のように過ごしてきた という。そして1995年の来日時に『ノルウェイの森』を読ん だことから村上春樹の翻訳を手掛けることになる。そんな彼 女が多元的な意味を持つ日本語の翻訳に腐心する姿と共に、 村上原作の「かえるくん、東京を救う」の主人公をVFXで 画面に登場させて、翻訳家が村上ワールドを掘り下げて行く 過程に、かえるくんとみみずくんの戦いがオーヴァーラップ される。この構成も見事だった。公開は10月19日より、東京 は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『サラブレッド』“Thoroughbreds” (幼馴染みだが少し疎遠だった2人の少女が再会し、それが 恐ろしい犯罪に繋がって行くサスペンス作品。主人公は周囲 との人間関係をうまく保てない少女。そんな少女が、大きな 屋敷に住む少女の許に学びの一環としてやってくる。そして 2人は、互いに反発したりもしながら一緒の時間を過ごすよ うになるが…。屋敷に住む少女が抑圧的な継父を嫌っている ことが判った辺りから、2人の間に恐ろしい計画が芽生え始 める。出演は2018年『レディ・プレイヤー1』などのオリビ ア・クックと、2017年5月紹介『ウィッチ』などのアニヤ・ テイラー=ジョイ。それに本作が遺作となったアントン・イ ェルチン。脚本と監督はニューヨークを拠点に舞台脚本家、 演出家として活動しているコリー・フィンリー。本作の脚本 も元々は舞台用に執筆したが、魅力的な出演者を得て映画監 督デビューを果たしている。公開は9月27日より、東京は渋 谷シネクイント他で全国ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
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