| 2019年07月14日(日) |
見えない目撃者(セカイイチオイシイ、聖なる泉の少女、人間失格、典座、カーマインSTギター、HiGH&LOW THE WORST、サウナ、サタンタンゴ) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『見えない目撃者』 2016年2月に紹介した同名中国作品の日本版。その紹介にも 書いたが本作には2011年製作の韓国映画があり、韓国版、中 国版はいずれもアン・サンフン監督によるもの。今回は初め て別の監督(2008年12月紹介『重力ピエロ』などの森淳一)が 手掛けた。 主人公は盲目の元婦人警官。失明の原因は自損事故で、その 際に弟も失ったことがトラウマになっている。そんな彼女が 交通事故の音を聞く。そして現場に行った彼女は、後部座席 の窓を叩く音と助けを求める声を耳にするが…。 車から降りてきた運転者に押し留められ、かすかにアルコー ルの匂いのした運転者と車は走り去ってしまう。そこで警察 に通報した彼女だったが、彼女が聞き取った名前の行方不明 者はなく、警察は事件としては取り上げてくれない。 そんな中で事故の被害者の若者が見つかり、警察で状況を証 言するが、その内容は彼女の証言と食い違うものだった。こ うして事件は闇に消えようとする。だがその裏には恐るべき 連続殺人が隠されていた。 出演は、2018年8月26日題名紹介『音量を上げろタコ!』な どの吉岡里帆、2019年2月題名紹介『笑顔の向こうに』など の高杉真宙。他に大倉孝二、田口トモロヲ、渡辺大知、柳俊 太郎、松田美由紀、國村隼らが脇を固めている。 オリジナルの物語では、主人公自身が誘拐未遂の被害者で、 それが盲目で元婦警という辺りにかなり無理というか違和感 があった。しかし本作の発端は元婦警の勘が働くという展開 で、その他の点も含めこの改変は納得できた。 監督との共同脚本には、2012年6月紹介『るろうに剣心』な どの藤井清美が参加している。女性脚本家は2016年10月2日 題名紹介『ミュージアム』にも協力しており、今回の作品の レーティングはR15+指定となっているものだ。 これはかなりきつい映像表現が行われていることも意味して いる。しかし物語的には、本作はオリジナルの2作より明確 だし、巧みに構成されている。その点で完成度はオリジナル を上回っていると言える。 ただし韓国版、中国版のいずれもがかなりリアルでドロドロ した感覚だったのに対して、本作はリアルというよりクリア な感じで、何処か安心して観ていられるような安定感があっ た。これは監督の特性なのかな? 実際にはオリジナルの持つ曖昧さを払拭した分、本作ではも やもや感がなくなり、それが多少の物足りなさを生んでいる 可能性はある。その良し悪しは観客の取り方だが、僕には何 か荒々しさみたいなものが薄まっている感じもした。 とは言え映像はR15+指定なものだが、それでも最後にかすか な希望のようなものが見えるのは、これが今の日本映画とい う感じもする。本作だけを観れば、これはもう間違いなしの 完成度の高い作品と言えるのだが…。 公開は9月20日より、全国ロードショウとなる。 因に韓国版の題名はハングル表記の『ブラインド』で、中国 版では邦題は本作と同じだが、原題は『我是証人』だった。 しかし今回も採用された邦題では「見えない」という記述が Blindなのか、Invisibleなのか判り難い。 これは日本語の面白さでもあるが、ちょっと気になったとこ ろだ。
この週は他に 『セカイイチオイシイ水 マロンパティの涙』 (フィリピンの離島で島民の健康を守る水道建設に携わる日 本人の活動を描いた実話に基づく作品。首都マニラから南に 300�厠イ譴織僖淵づ隋�その島のパンダン村の飲料水は井戸 水で掘削は何度も行われたが、掘った井戸には程なく海水が 混じり、多くの村人が腎臓病などに悩まされていた。そんな 村から約10�厠イ譴疹貊蠅砲蓮屮泪蹈鵐僖謄�の涙」と呼ばれ る泉があり、それは島で唯一WHOの基準を満たす泉だった。 そこでその泉から取水し水道を引く計画が立てられるが…。 その事業を進める日本人を見詰める島民には、第2次大戦当 時の苦い記憶が残っていた。出演は美声女ユニットelfin'の リーダーの辻美優(映画初主演)と赤井英和。他に角田信朗、 蝶野正洋、篠原信一、森次晃嗣らが脇を固めている。脚本と 監督は2019年2月紹介『ndjc:若手映画作家育成プロジェク ト』の2016年度に選出の目黒啓太。公開は9月21日より、東 京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『聖なる泉の少女』“Namme/ნამე” (2017年11月4日「東京国際映画祭」で紹介したコンペティ ション部門の出品作(映画祭題名『泉の少女ナーメ』)が一般 公開されることになり、改めて試写を鑑賞した。物語につい ては前回に書いた通りで、特に修正点はなかったが、今回は プレス資料もあって、背景的な部分が少しクリアになった。 それによると近くで行われている工事はダムの建設なのだそ うで、そうなると川の変色は公害ではなく、自然破壊という 意味にも捉えられる。また基となる伝承では少女は一般人の 生活に帰って行ったとのことだが、その観点では映画の結末 は理解できないものになっていた。つまり少女は、映画の結 末ではイエスに準える奇跡を起こしているものだし、その辺 の曖昧さが本作を判り難くしているようにも感じる。単純な 文明批判も困るが、掴みどころのない話にも困惑する。映像 的には素晴らしいと言える作品だが。公開は8月24日より、 東京は岩波ホールでロードショウ。)
『人間失格 太宰治と3人の女たち』 (2016年5月紹介『シンドバッド』などの早船歌江子脚本、 2007年1月紹介『さくらん』などの蜷川実花監督で、文豪・ 太宰治の代表作の誕生秘話を描いた作品。太宰の原作からは 2009年11月紹介の作品もあったが、本作ではさらに文豪自身 に迫っている。その本作で、作家が心中に対して優柔不断な のは、これが真実のようだ。物語の背景は1947年『斜陽』の 発表から1948年表題作の執筆までとなっており、正に文豪の 最期が描かれる。出演は小栗旬と正妻役の宮沢りえ、愛人で 弟子の斜陽夫人役に沢尻エリカ、最後の愛人富栄役に二階堂 ふみ。他に成田凌、千葉雄大、瀬戸康史。さらに藤原竜也が 坂口安吾、高良健吾が三島由紀夫を演じている。宮沢の賢妻 ぶりと沢尻の退廃的な雰囲気は良かった。しかし富栄に関し てはもっとテキパキした人と伝えられており、高良の三島も 少しステレオタイプかな。エンターテインメイントとしては 面白かったが。公開は9月13日より全国ロードショウ。)
『典座 TENZO』 (2016年11月13日題名紹介『バンコクナイツ』などの富田克 也監督が、3・11後の現代日本における宗教について考える ドラマとドキュメンタリーの混交作品。題名は禅寺で六知事 と呼ばれる職務の一つであり、その中の僧侶たちの食事を司 る典座は第五位とされるものだが。日本における曹洞宗の開 祖・道元禅師の遺した「典座教訓」にはその重要性が語られ ているという。そこで登場するのは2人の僧侶。10年前には 一緒に修業した2人だが、1人は山梨県の実家である寺で精 進料理の教室やヨガと座禅のコラボレーション企画、さらに は子ども食堂など多彩な展開で布教活動を行っている。そし てもう1人は、福島県の被災地で瓦礫撤去の土木作業に従事 しながら、本堂も檀家も津波で流された寺の再建を模索して いる。こんな2人の活動を通じて今在るべき宗教が問われて 行く。震撼とするシーンもある作品。公開は10月4日より、 東京はアップリンク吉祥寺他で全国順次ロードショウ。)
『カーマイン・ストリート・ギター』 “Carmine Street Guitars” (2018年11月4日「東京国際映画祭」で紹介したワールド・ フォーカス部門の出品作が一般公開されることになり、改め て試写を鑑賞した。この作品も見直しとプレス資料で理解が 深まったが、実は映画祭で観たときには、音楽ドキュメンタ リーの割には映画監督ジム・ジャームッシュのシーンが少し 長目に感じて、有名監督の登場では仕方ないかな?何て思っ ていた。ところがこの店が今のような手作りギターを始めた のは、映画監督が改築時の廃材を持ち込んで依頼したのが始 まりだったのだそうで、それならこの構成は正しいものだ。 因にジャームッシュ自身も自作品のサウンドトラックを手掛 けるほどのミュージシャンでもある。その他にも作品には、 名だたるバンドのギタリストたちが次々に登場して、彼らが 惜しげもなく演奏を披露するシーンは、音楽ファンにはたま らない作品と言えそうだ。公開は8月10日より、東京は新宿 シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『HiGH&LOW THE WORST』 (2017年10月29日題名紹介『HiGH&LOW』と、2007年〜14年に 映画化『クローズ』の続編で�盒競劵蹈係矯遒痢�WORST』が クロスオーヴァした作品。主な舞台となるのはSWORD地区の 鬼邪高校。元々全日制の生徒と定時制の生徒との間では抗争 があったが、現在は定時制の番長が全体の頭を張っている。 そんな学校の全日制に転入生がやってくる。彼は近隣の団地 出身で幼馴染みには様々なメムバーが揃っており、彼は全体 の頭を取ると宣言する。しかし幼馴染みの1人に違法薬との 関係が疑われ、さらに隣町・戸亜留市にある鳳仙学園との間 で不穏な空気が流れ始める。脚本は�盒兇函�HiGH&LOW』の脚 本チームが合作したもので、�盒兇砲箸辰討禄蕕留撚莎嗚椶� そうだ。まあ元々がどちらも似たような話だから、それを剽 窃などと言わずにうまく収めたのは素晴らしいことだ。出演 は『HiGH&LOW』のメムバーに川村壱馬、志尊淳、白洲迅らが 加わっている。公開は10月4日より、全国ロードショウ。)
『サウナのあるところ』“Miesten vuoro” (フィンランド・日本の外交樹立100周年を記念して公開さ れる同国発祥の入浴設備について語るドキュメンタリー。と 言ってもその歴史などが語られるのではなく、同国では日常 的にあるとされる公衆サウナを舞台に、そこで過ごす主に男 性たちの人生を語る言葉が収録されている。それにしても野 原に建つ孤立のサウナや、公衆電話ボックスを改造したので はないかと思われる1人用サウナなど、日本では考えられな いようなものもいろいろ登場する。しかしながら、中で語ら れる男性たちの人生は、戦争などの要素はあるもののさほど 特徴的でもなく、サウナに特化される話も0ではないが取り 立てて言うほどのものでもない。恐らく彼の地ではサウナが 普遍的過ぎてこんな風にしか描けなかったのだろうけど、個 人的にはプレス資料にあった日本人研究者の視点のような映 画を観たかったかな。公開は9月14日より、東京は新宿シネ マカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『サタンタンゴ』“Sátántangó” (2009年9月紹介『倫敦から来た男』などのハンガリーの鬼 才タル・ベーラ監督が、盟友クラスナホルカイ・ラースロー の原作に基づき、原作者との共同脚本で1994年に映画化した 上映時間7時間18分の怪作。寂れた田舎町を舞台に1年半前 に死んだはずの男が帰ってくるとの情報が流れ、村人たちの 間で様々な思惑が交錯する。さらに映画の後半では帰ってき た男の扇動により村人たちの生活が根底から覆される。原作 が発表されたのは1985年で、この物語に政治的な意味がある かどうか、今となってはその辺のことも理解が難しくなって いる感じだ。ただし全体で150カットという超長回しの作品 ではあるが、観ている間は映画に引き込まれて一気に見終て しまえるものだった。なお上映は2時間18分、2時間4分、 2時間56分の3パートに分けて行われた。公開は9月13日よ り、東京は渋谷のシアター・イメージフォーラム他で全国順 次ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
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