井口健二のOn the Production
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2019年06月16日(日) X-MEN:ダークフェニックス(ハッパGoGo、やっぱり契約破棄、ラスト・ムービーS、えんとこの歌、HOT SUMMER NIGHTS、無限ファンデーション)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『X-MEN:ダークフェニックス』“Dark Phoenix”
単発の作品を除けば2002年の『スパイダーマン』、2008年の
『アイアンマン/アベンジャーズ』に先駆け、2000年にスタ
ートしたマーヴェルコミックス映画化の人気シリーズ最新作
で、本作で完結の噂もある作品。
実はX-Menに関しては今まで試写状を貰っていなくて、一部
の作品は劇場やテレビなどで観てはいたが、ここでの紹介は
できなかった。それが今回は特別に試写状を送って貰えたも
ので、ここでは初めての紹介となる。
マーヴェルコミックスの映画化に関してはディズニーとの間
で包括的な契約が結ばれていて、すでにSpider-Manの一部も
The Avengersに取り込まれた状況だが、そんな中でも独自性
を保ってきたのがX-Menだった。
それは彼らが必ずしも人類の味方とは言い切れないという、
特殊な事情にあるとも言える。実際に一部は人類に敵対する
立場をとり、いつ全体が寝返るかもしれない状況もあり得。
人類もそれに対抗する術を持ち始めているのだ。
それでも人類との共存を模索するミュータントたちの姿が、
ある意味、混沌とした時代を反映している物語と言えるのか
もしれない。しかも本作の時代背景は1992年で、正に1989年
のベルリンの壁崩壊直後なのも象徴的だ。
そして本作の物語は、これも時代の象徴だったスペースシャ
トルの事故から始まる。その救助を合衆国大統領から要請さ
れたミュータントたちは宇宙に飛び出し、超能力を駆使して
乗員の救出には成功するのだが…。
その作戦の最中に女性のミュータントが謎の放射線を浴び、
それは彼女のダークサイドを覚醒させてしまう。そこにさら
に彼女のダークサイドを操ろうとする謎の女が登場し、人類
の存亡を賭けた物語が展開される。
それは大宇宙を破壊するような大袈裟なものではないが、僕
らが期待する超能力vs.超能力の戦いを、シュールなリアル
さで映像化したとも言える作品だ。

出演はジェームズ・マカヴォイ、ニコラス・ホルト、ジェニ
ファー・ローレンス、マイクル・ファスベンダーら旬な顔ぶ
れに加えて、エヴァン・ピータース、アレクサンドラ・シッ
プ、ソフィー・ターナー、コディ・スミット=マクフィーら
の若手が並ぶ。
そして本作には、2014年11月紹介『インターステラー』など
のジェシカ・チャスティンが登場する。
脚本と監督は、2010年1月紹介『シャーロック・ホームズ』
などの脚本や2013年8月紹介『エリジウム』などの製作を手
掛けたサイモン・キンバーグ。本シリーズでも脚本/製作に
関ってきたベテランが満を持しての監督デビューを飾ったも
のだ。
試写会で配られたプレス資料のTIMELINEによると、2000年に
スタートした初期のシリーズは2002年から2006年を時代背景
としていたもので、それに対して現在のシリーズは1962年か
ら1992年を描いている。つまり初期シリーズの前日譚に当る
ものだ。
従ってこの後には初期シリーズが続くはずなのだが…。シリ
ーズの中には2023年と1973年を結ぶ作品もあり、また紀元前
8000年や紀元前3600年が絡む話もあって、時間軸はいろいろ
とややこしくなっている。
しかも今回の作品ではSFファンには悩ましい展開もあり、
これはこのままでは終わらせて欲しくない気分にもなった。
取り敢えずの決着は付くが、謎の女の存在など話はまだまだ
続きそうな感覚だ。

公開は6月21日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『ハッパGoGo 大統領極秘指令』“Misión No Oficial”
(2013年に世界で初めて国家としてマリファナを合法化した
南米ウルグアイで、国家統制による販売を決めたものの栽培
や輸入が難航し、ついに大統領の極秘命令でアメリカからの
密輸入を画策するというお話。冒頭に「これはフィクション
です」というテロップは出るが、合法化を断行した前大統領
ペペ・ムヒカ本人が登場するなど、かなりぶっ飛んだ展開の
作品だ。原案・脚本・監督・主演はダニー・ブレックナー。
脚本と監督はアルフォン・グレロ、モルコス・ヘッチとの共
同で2人は撮影も担当している。他に監督の実母や大学教授
らが共演。フィクションと銘打たれているが、米国での大麻
フェスの様子などにはドキュメンタリーな部分もあり、興味
深い作品にはなっている。ただ映画祭などの受賞はあるが、
エピソードはぶつ切りで全体の纏まりは弱いかな。この傾向
は、最近の観客にはあまり抵抗がないようだが。公開は7月
13日より、東京は新宿K's cinemaにて公開。)

『やっぱり契約破棄していいですか!?』
        “Dead in a Week: Or Your Money Back”
(ノルマ不達成で馘になりそうな殺し屋と、執筆がうまく行
かず自殺願望に取り憑かれたものの失敗し続けている作家を
巡るブラックコメディ。物語は欄干の外に立って躊躇してい
る作家に殺し屋が声を掛けることから始まる。結局その自殺
にも失敗した作家は、「確実に殺す」とする殺し屋に金を支
払って契約を結ぶのだが…。出演は2011年12月紹介『ミッシ
ョン・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』などのトム
・ウィルキンスンと、2017年9月17日題名紹介『プラハのモ
ーツァルト』などのアナイリン・バーナード、それに2018年
9月23日題名紹介『モダンライフ・イズ・ラビッシュ』など
のフレイア・メイヴァー。脚本と監督はオックスフォード大
出身でアンソニー・ミンゲラに師事したというトム・エドモ
ンズの長編デビュー作。発想は悪くないが、意味のない殺人
は少し気になったかな。公開は8月30日より、東京はヒュー
マントラストシネマ有楽町他で全国ロードショウ。)

『ラスト・ムービースター』“The Last Movie Star”
(1972年の『脱出』や1974年の『ロンゲスト・ヤード』に主
演し、78〜82年にはマネーメイキングスターのトップを保持
したバート・レイノルズが、自身を映したとも言える老境の
映画俳優に扮した最後の主演作。全盛期に建てた豪邸で暮ら
す主人公は、長年寄り添った老犬との別れを迎え、少し落ち
込んでいたところに、「国際ナッシュビル映画祭」から回顧
上映と特別功労賞授与の招待を受ける。しかし最初は無視し
た主人公だったが、友人の勧めや過去にイーストウッドも受
賞との情報で出席を回答するが…。共演は子役出身のアリエ
ル・ウィンターと、2010年10月紹介『キック★アス』などの
クラーク・デューク。他にチェヴィー・チェイスらも登場。
また劇中には主人公と若き日のレイノルズの共演シーンもあ
る。脚本と監督は2008年8月紹介『LOOK』などのアダム
・リフキン。映画愛に溢れた作品だ。公開は9月6日より、
東京は新宿シネマカリテ他で全国ロードショウ。)

『えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤滋』
(2013年12月に試写は観たものの紹介を割愛した『シバ/縄
文犬のゆめ』などのドキュメンタリスト伊勢真一監督が、大
学時代の学友である遠藤滋氏の日々の姿を追った作品。先天
的な障害を持ち、それでも大学を出て障害児教育の現場に立
つまでになった遠藤氏だが、その後も障害が進み、現在はほ
ぼ全身が麻痺して介助なしでは生きて行けない状態。それで
も本人の人徳なのか、彼の周囲には様々な人が集まり、生活
が続いている。同じ遠藤氏を追った作品を1999年にも発表し
ている伊勢監督が、別の障碍者を追った作品の完成時に氏の
許を再訪したのがきっかけで続編となる本作が作られた。し
かしそこには2016年7月に神奈川県の津久井で起きた事件も
影を落とし、人の命について深く見つめ直す作品にもなって
いる。ドラマとは違うことを改めて感じる作品だった。公開
は7月6日〜26日に東京は新宿K's cinemaにて毎日10時から
の1回上映。会期中トークイヴェントも行われる。)

『HOT SUMMER NIGHTS』“Hot Summer Nights”
(湾岸戦争が始まり、フレディ・マーキュリーが亡くなった
1991年夏のアメリカ東海岸ケープ・コッドを舞台に、父親の
死を受け入れられないまま叔母の家に預けられた少年が、都
会からの避暑客と地元民との狭間で、ひと夏の思い出と云う
にはあまりに過酷な思い掛けない体験をしてしまう。大麻の
蔓延が始まり、drive-in theaterが隆盛だったころの物語。
出演は2019年2月3日題名紹介『ビューティフル・ボーイ』
などのティモシー・シャラメと、2016年3月紹介『フィフス
・ウェイブ』でも共演のマイカ・モンロー、アレックス・ロ
ウ。他に2014年11月紹介『ミュータント・タートルズ』など
のウィリアム・フィクトナー、2013年12月紹介『スティーラ
ーズ』などのトーマス・ジェーンらが脇を固めている。監督
は自らの脚本でデビューを飾るイライジャ・バイナム。脚本
は大学時代の友人に想を得たそうだ。公開は8月16日より、
東京は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)

『無限ファンデーション』
(前回題名紹介『暁闇』と同じく「MOOSIC LAB 2018」で、
ベストミュージシャン賞(西山小雨)と女優賞(南沙良)を受賞
した作品。西山の楽曲「未來へ」をモティーフに、未來の定
まらない女子高生の不安と周囲との交流が描かれる。主人公
は母子家庭に暮らす少女。勉強は得意ではないが、ファッシ
ョンイラストを描くことと、そのイラストを衣装に仕上げる
ことは得意だ。そんな少女が演劇部に誘われて、大会に出る
劇の衣装を担当することになるが…。そこでいろいろなトラ
ブルにも巻き込まれる。そんな少女は通学路にあるリサイク
ルの資材置き場でウクレレで弾き語りをする女性と出会う。
監督は、2006年7月紹介『キャッチボール屋』や2015年『お
盆の弟』などの大崎章。物語の感性も瑞々しくて良いが、弾
き語りで楽曲を披露する西山の存在感が抜群に良くて、それ
だけでも見惚れてしまう作品だった。公開は8月24日より、
東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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