井口健二のOn the Production
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2019年06月09日(日) 風をつかまえた少年、ジョナサン(暁闇、トールキン旅のはじまり、JKエレジー、グッド・ヴァイブレーションズ)、「フランス映画祭2019」

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※
※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『風をつかまえた少年』
          “The Boy Who Harnessed the Wind”
2013年の『それでも夜は明ける』でオスカー候補にもなった
2018年4月紹介『死の谷間』などの俳優キウェテル・イジョ
フォーが、長編映画の初監督、脚本に挑戦し、出演も務めた
アフリカが舞台の実話に基づく作品。
1987年にアフリカ南東部の共和国マラウイの中部州ドーワ県
で生まれたウィリアム・カムクワンバは、高校に進学するも
2002年にマラウイ全土で数千人規模の餓死者を出した大旱魃
に遭遇。営農者だった両親の困窮で学業を断念する。
しかし村の図書館で独学を続けた少年は、図書館で目にした
“Using Energy”という本から風力発電と、その電気を利用
した揚水ポンプのシステムを思いつくが…。15歳少年のアイ
デアは大人の常識からは考えの及ばないものだった。

出演は現地で行われたオーディションで選ばれたケニア出身
のマックスウェル・シンバ。監督のイジョフォー。それにセ
ネガル出身で2006年3月紹介『隠された記憶』や同年12月紹
介『パリ、ジュテーム』などに出ていたアイサ・マイガ。
またマラウイ出身ミュージシャンのリリー・バンダ。2016年
9月18日題名紹介『アイ・イン・ザ・スカイ』などのレモハ
ン・ツィパ。さらに2002年『堕天使のパスポート』などのノ
ーマ・ドゥメズウェニ。オーディションで選ばれたマラウイ
出身のフィベール・ファラケサらが脇を固めている。
脚本は、カムクワンバがジャーナリストのブライアン・ミー
ラーとの共同で2009年に著した書籍に基づき、それに触発さ
れたイジョフォーが自ら脚本を執筆。
その脚本を2017年11月26日題名紹介『アウトサイダーズ』な
どのアンドレア・カルダーウッドと、2006年3月紹介『ナイ
ロビの蜂』などのゲイル・イーガンの両プロデューサーに見
せて映画化に漕ぎ着けた。
さらに本作には、前回紹介『ピータールー』などの撮影監督
ディック・ホープ。2008年8月紹介『ブラインドネス』など
の美術監督トゥレ・ペヤク。2016年09月25日題名紹介『マダ
ム・フローレンス!』などの編集ヴァレリオ・ポネッリ。
また2002年11月4日付「東京国際映画祭」で紹介『シティ・
オブ・ゴッド』などの音楽を担当したアントニオ・ピントら
が結集している。なお出演者のリリー・バンダも2曲提供し
ている。
僕自身が技術屋出身の目からすると、これだけの風力があっ
たら、発電→電動ポンプの手順を採らなくても、直接風力で
揚水するシステムもあるのではないかと考えるが。実話は、
まず発電でラジオを鳴らし電灯を点けたことが評価されたの
だそうで、その順番ならこの流れも理解できるものだ。
まあいきなり揚水システムというのは、主人公の父親でなく
てもできるとは思えないだろう。でも実際にこれで揚水まで
実現したのだから、その実行力には驚かされる。
そして映画では、世界最貧国とされるマラウイの現状も詳細
に描き出しており、その悲惨さにも胸を打たれる。この状況
の世界に向けたアピールこそが、イジョフォーがこの映画に
込めた最大のテーマのようにも感じた。
単に成功して良かったね…では済まされない、アフリカの現
実が描かれた作品だ。

公開は8月2日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽
町、新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウとなる。

『ジョナサン ふたつの顔の男』“Jonathan”
2018年5月20日題名紹介『クリミナル・タウン』などのアン
セル・エルゴートの主演で、ある特殊な状況を生きる男性を
描いた作品。
主人公のジョナサンは設計事務所で才能を発揮する建築士。
しかし彼には定時に出社して定時に退社しなければならない
事情がある。その事情は雇い主も了承のはずだったが、新た
なプロジェクトに彼の才能が不可欠となる。しかし彼の事情
は変えられなかった。
その事情とは彼が2つの人格の持ち主であること。そのもう
一つの人格であるジョンはかなり自由人のようだが、彼らは
ヴィデオメッセージを通じてやり取りをし、互いにその日の
出来事を伝え合うことで日々の暮らしに支障が生じないよう
にしていた。
そして2つの人格は耳の裏に取り付けられた装置によって所
定の時間ごとに切り替えられ、昼を生きるジョナサンと夜を
生きるジョンとして、それぞれの人格が独立して生きて行け
るようになっていた…。ジョナサンがジョンの行動に疑いを
持つまでは。

共演は、2016年7月31日題名紹介『高慢と偏見とゾンビ』な
どのスーキー・ウォーターハウスと、2019年1月紹介『マイ
・ブックショップ』などのパトリシア・クラークソン。他に
2016年11月13日題名紹介『マグニフィセント・セブン』など
のマット・ボマーらが脇を固めている。
脚本と監督は、プリンストン大学を卒業後にホイットニー美
術館の研究プログラムに選ばれ、そこで制作した初の映像作
品が多くの映画祭での上映を勝ち取り、さらにアメリカン・
フィルム・インスティチュート(AFI)で学んだというビル
・オリヴァの長編デビュー作。
なお脚本は、グレゴリー・デイヴィス、ピーター・ニコウィ
ッツとの共同となっている。
多重人格の話は、2014年8月紹介『Frankie & Alice』など
いろいろな作品があるが、本作ではある種の科学的な対応も
採られていて、SFの範疇でも見ることができる。実際に本
作は、2018年のTrieste Science+Fiction FestivalにてBest
First Feature Filmの作品賞を受賞しているものだ。
そしてこの作品は多重人格のテーマに新たな側面を与えるも
のとも言える。さらに映画の内容では、互いの人格の心理面
での葛藤も巧みに描かれており、僕はその方にも見応えを感
じていた。そこには太陽に憧れるジョンと星空を見られない
ジョナサンなど、心に響く表現もあった。
ところがその一方で本作の宣伝チラシでは、「(人格が)午前
7時と午後7時に切り替わる」との記載があり、映画の中で
もそういう台詞があったのだが。それでは睡眠時間が考慮さ
れていないという疑問が生じた。
その睡眠時間は、映画の中では午前3時から午前7時までの
4時間とされており、そうであるならジョンからジョナサン
への切り替えのタイミングはその中間点の午前5時、その逆
は午後5時であるはずなのだ。
そうでないとジョンの活動時間だけが4時間短くなってしま
い、不公平になる。これは単純に24時間制の17時と午後7時
の読み違えとも取れるが、口煩いSF映画ファンとしては気
になってしまうものだった。

公開は6月21日より、東京は新宿シネマカリテ他で全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『暁闇』
(音楽と映像の融合が主題の「MOOSIC LAB 2018」長編部門
にて準グランプリに輝いた阿部はりか監督のデビュー作。自
分自身の居場所を持てない中学生の男女が、ネット配信でカ
ルト的な人気を誇るLOWPOPLTD.の音楽を切っ掛けとして廃ビ
ルの屋上に集うようになるが…。閉塞感の横溢する物語が展
開される。出演は2018年7月紹介『教誨師』などの青木柚、
2018年4月22日題名紹介『明日にかける橋』などの越後はる
香、モデルで舞台でも活躍する中尾有伽。他に2018年11月紹
介『デッドエンドの思い出』などの若杉凩、2012年11月紹介
『ユダ』などの水橋研二らが脇を固めている。映画に登場す
る屋上が見事で、たまたま試写会場がロケ地の近くだったの
で帰りに確認しようかと思ったが、実はそこにはないとのこ
と。その情報に映画の主人公と同じ感覚に襲われた。そんな
異空間に紛れたような感覚の作品だ。公開は7月20日より、
東京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)

『トールキン旅のはじまり』“Tolkien”
(『指輪物語』の原作者が、その物語を書き始めるまでを描
く作品。第一次世界大戦に出征した作家が欧州戦線の塹壕で
過ごした日々と、アフリカから母子家庭で帰国し、名門校に
入学したものの周囲と馴染めなかった若き日の作家が仲間と
出会うまでの経緯などが語られる。監督は2019年5月19日題
名紹介『トム・オブ・フィンランド』のドメ・カルコスキ。
出演は2018年11月25日題名紹介『ライ麦畑の反逆児』などの
ニコラス・ホルトと2014年3月紹介『シャドウハンター』な
どのリリー・コリンズ。他に2016年6月12日題名紹介『ペレ
伝説の誕生』などのコルム・ミーニー、2017年8月6日題名
紹介『ダンケルク』などのトム・グリン=カーニー、2011年
1月紹介『英国王のスピーチ』などのデレク・ジャコビらが
脇を固めている。塹壕の中で作家に付き添う兵士がサムとい
う名前なのはニヤリとしたが…。公開は8月30日より、東京
はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『JKエレジー』
(群馬県桐生市を舞台に、学業は優秀だが家族の事情で未来
を閉ざされた女子高生の焦燥の日々が描かれる。母親とは死
別で父親はギャンブル狂、生活保護を受けている一家はニー
トの兄の同居も隠している。そんな中で大学進学を諦めてい
た主人公は、同級生の支えで奨学金を得られそうになるが、
ある事情からその道も閉ざされる。出演は2018年2月25日題
名紹介『聖なるもの』に出ていた希代彩。他に舞台『刀剣乱
舞』などの猪野広樹、2017年12月紹介『野球部員、演劇の舞
台に立つ!』などの芋生悠。同じく2017年12月紹介『ホペイ
ロの憂鬱』などの小室ゆら。2018年9月2日題名紹介『栞』
などの前原滉。さらに山本剛史、森本のぶ、阿部亮平、川瀬
陽太らが脇を固めている。脚本と監督は大阪芸術大学出身の
松上元太。少し前ならここまでは…と思えたが、今は現実に
もありそうかな。そんな気分になる作品だ。公開は8月9日
より、東京はテアトル新宿他で全国順次ロードショウ。)

『グッド・ヴァイブレーションズ』“Good Vibrations”
(1977年に北アイルランドのベルファストでレコード店を開
業し、そこを基盤に多くのアイルランド・パンクのバンドを
デビューさせたテリー・フーリーの実話に基づく作品。当時
のベルファストは、アイルランド共和軍(IRA)による武力
闘争の最中であり、映画にも爆弾テロの様子などがアーカイ
ブ映像で挿入される。しかし主人公らは音楽を愛し、同時に
金を稼ぐことを目標にレコード出版やツアーを続けて行く。
とは言え彼らのパンクは容易には評価されなかったが…。そ
れでも対立する社会の間を縫って彼らの活動は続く。出演は
2006年9月紹介『ヘンダーソン夫人の贈り物』に出ていたリ
チャード・ドーマー。2011年12月紹介『善き人』などのジョ
ディ・ウィッテカー。同日紹介『戦火の馬』などのリーアム
・カニンガム。主人公は正直に言って馬鹿野郎(肯定)だが、
その生き様は見事だ。公開は8月3日より、東京は新宿シネ
マカリテ他で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。

 今週は、6月20日から23日まで横浜みなとみらいホール、
イオンシネマみなとみらい他で開催される「フランス映画祭
2019」での上映作品のマスコミ試写も行われた。その中から
日本公開未定の作品を中心に鑑賞したので以下に紹介する。
        *         *
『愛しのベイビー』“Mon Bébé”
夫の浮気で離婚した女性が、女手一つで3人の子供を育て上
げる。その末の娘の巣立ちを切っ掛けに様々な思いが描かれ
た作品。
長女と長男はすでに独立しており、残っていた末娘が高校卒
業を機にカナダの大学への留学を希望する。そんな娘と母親
の残された日々が、娘の成長の記録と共に描かれる。
しかもそれをいくつもの時制を交錯させて巧みに描き切る。
それは実に巧みな構成の作品であり、2人の愛情が見事に描
き尽くされていた。
自分が男親の立場としては、悔しいけれどこれには敵わない
な…と思わされた。そんな感じの作品だった。
脚本と監督は、女優マリー・ラフォレの娘で2018年3月4日
題名紹介『ダリダ あまい囁き』などのリサ・アズエロス。
母親役を2013年8月紹介『シャンボンの背中』などのサンド
リーヌ・キベルラン、末娘役を監督の実子のタイス・アレサ
ンドランが演じている。

『カブールのツバメ』“Les Hirondelles de Kaboul”
イスラム原理主義のタリバンが支配するアフガニスタンの首
都を舞台に、暴力や惨劇に怯えながら暮らす若い男女の姿が
描かれる。
そんな状況の下でも、将来の夢と希望を糧に生きてきた2人
だったが、ある残虐な出来事を切っ掛けにその前途に暗雲が
広がり始める。
世界50カ国語に翻訳されたヤスミナ・カドラの原作を基に、
女優・映画監督のサブー・ブライトマンと、アニメーション
作家エレア・ゴベ・メヴェックの共同監督で描かれた作品。
実写では到底描けない物語が、アニメーションによって表現
されるが、それでも震撼とさせられる作品だ。
声優には2006年11月紹介『007/カジノ・ロワイヤル』な
どのシモン・アブカリアン、2016年セザール賞有望若手女優
賞受賞のジタ・アンロ、2011年6月紹介『匿名レンアイ相談
所』などのスワン・アルローらが起用されている。

『嵐』“HURLEVENT”
強風の中、道端に置かれた本のページが捲られ、印刷された
文字や記号が動き出す。フレデリック・ドアザン監督による
上映時間6分の作品。
パラパラ漫画を思わせるアニメーションだが、僕は本作を見
て夢枕獏のデビュー作『カエルの死』を思い出した。当時は
タイポグラフィで創られた作品が、今ならこんな風に描かれ
るのだろう。
本作の中では、アルファベットや記号が突然0と1だけにな
るなど、それは印刷文化とディジタルの戦いのような雰囲気
もあったが。全体としてはその変遷の意味が明確ではなく、
観る人が見れば判るのかもしれないが、僕には何かもどかし
い感じもした。
まああまり深い意味は考えず、アニメーションだけを楽しめ
ば良いのかもしれないが。
なお本作は短編のため、映画祭では『愛しのベイビー』『カ
ブールのツバメ』『マイ・レボリューション』と併映で上映
される。

『社会の片隅で』“Les Invisibles”
パリの道端で暮らす女性ホームレスたちを描いたセミドキュ
メンタリー・タッチの作品。
街角で女性ホームレス専用のシェルターを運営していた主人
公は、行政の指示で社会復帰の実績が上がらない施設の閉鎖
の危機に襲われる。その事態に何とか彼女たちの社会復帰の
道を広げようと奮闘するのだったが…。
遠隔地に作られて誰も行きたがらない公営シェルターの問題
など、恐らく現実が直面している問題も描かれているのだろ
う。それを別にしても半ボランティアのように活動する主人
公らの努力が報われない様子が怒りにも似て描かれる。
海外からの流入者など、日本の状況とは異なる面もあるのか
もしてないが、オリンピックなどを控えて我々の近い将来が
描かれている作品かもしれない。
ただし映画は、そんな状況でも奮闘する主人公らの前向きな
姿を描いたものだが。
脚本と監督は本作が長編4作目というルイ=ジュリアン・プ
ティ。出演は2014年『美女と野獣』などのオドレイ・ラミー
と、2017年4月2日題名紹介『アムール、愛の法廷』などの
コリンヌ・マシエロ。

『男と女�� 人生最良の日々(仮)』
         “Les Plus belles années d'une vie”
1966年にフランシス・レイの音楽と物憂げなスキャットの主
題歌で一世風靡したクロード・ルルーシュ監督の出世作が、
53年の歳月を経て大団円を迎えた。
この物語では1986年に『�供戮盧遒蕕譴燭茲Δ世�、本作では
そこからさらに33年後が描かれる。そこでは結局2人は結婚
しておらず、老いたスピードレーサーは介護施設で痴呆症と
戦っている。その姿に息子は、父親が今も名前を口にする女
性の許を訪れるが…。
出演は1930年生まれのジャン=ルイ・トランティニアンと、
1932年生まれのアヌーク・エーメ。そして66年作品で2人の
それぞれの息子と娘を演じたアントニー・サイアとスアド・
アミドゥが同じ役柄で再登場。
他にモニカ・ベルッチ、1991年『美しき諍い女』などのマリ
アンヌ・ドニクールらが脇を固めている。
90分の映画には66年作のシーンもふんだんに登場し、さらに
ルルーシュ監督が1976年に発表した9分間の作品“C'était
un rendez-vous”がほぼ全編登場して、1937年生まれの監督
の正に集大成といった感じに仕上げられている。
なお本作は日本配給が決定して2020年に公開されそうだ。

『シノニムズ』“SYNONYMES”
2018年のベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いた作品。
題名は「同義語」「類義語」という意味のようだが、映画の
見た目では「同じ穴の狢」といった感じかな。パリにやって
きたイスラエル出身の男性が、アイデンティティを得て行く
姿が描かれる。
脚本と監督は実際にイスラエル出身のナダヴ・ラピドによる
ものだが、何というか主人公の尊大とも言える感じの態度が
観ていて気になる作品だった。多分これは監督自身が行って
いることでもあるのだろうが、状況が不明の日本人の目から
すると、イヤミな感じにも映るものだ。
イスラエル=ユダヤ人というとシオニズム(Zionism)という
言葉も頭に浮かんで来るが、本作の題名と語感が似ているの
も気になった。本作はフランス=イスラエルの合作なので、
どちらかを揶揄した作品ではないのだろうが、勉強不足の自
分には理解の難しい作品だった。
まあフランス人もドイツ人もユダヤ人に対しては後ろめたい
ものがあるから、このような作品で自らを見つめ直している
のかもしれないが。

『マイ・レボリューション』
      “Tout ce qu'il me reste de la révolution”
2014年『ウィークエンドはパリで』などの女優ジュディス・
デイヴィスが、自らの脚本、主演で初監督に挑んだ作品。
主人公は共産主義の両親の許で育った30代の都市計画プラン
ナー。しかし勤務先の設計事務所を人員整理で馘になり、老
害とも言える経営者への不満を爆発させる。そして年老いた
父親や、中産階級に嫁いだ姉へも不満をぶつけるが…。
家族を置いたまま出て行ったとされる母親から、姉を通じて
会いたいというメッセージが届き、全てに行き詰った主人公
は母親との再会に活路を期待する。
主人公の感じている不満は、多分現代人の誰しもが感じてい
るもので、その点では共感もする作品だが。その不満をただ
やみくもに述べ立てられると、さすがに辟易する。特に本作
では、長台詞の多用がその気分を倍加させる。
それが狙いというなら成功とも言えるが、観客の気分を害し
続けることは得策には思えない。私憤を公憤にすり替えるの
演説で共感を得るテクニックだが、本作はその逆でこれを個
性としてよいのだろうか?

 なお「フランス映画祭2019」では、上記の他に2018年東京
国際映画祭でグランプリ受賞『アマンダと僕』、2019年4月
題名紹介『ゴールデン・リバー』、2019年5月紹介『ディリ
リとパリの時間旅行』など、全16作品の上映が予定されてい
る。


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井口健二