井口健二のOn the Production
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2019年05月19日(日) 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男(アートのお値段、柴公園、トム・オブ・フィンランド、CROSSING、さらば愛しきアウトロ-)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』
                       “공작”
1997年の韓国大統領選挙戦を巡り、その背景に蠢く韓国国家
安全企画部(安企部=旧KCIA)の暗躍を描いた実話に基づく
とされる作品。
物語の始まりは1992年。1人の韓国軍将校にある任務が打診
される。それは北朝鮮の核開発を懸念する安企部から、その
実態を探るためのスパイになれというものだった。その命を
受けた主人公は軍籍を離脱し、実業家となって北京に赴き、
そこで北朝鮮との接触を開始する。
そんなある日、北朝鮮製品の貿易に手広く商談を進める彼の
許に、北京駐在・対外経済委員会の所長から面談の申し込み
が届く。それは緊急な現金調達の依頼で、その所長こそは金
正日にも単独で会えるという側近中の側近だった。
その依頼に応えた主人公は、それに続く様々な“テスト”も
掻い潜り、平壌でのCM撮影という名目を持って遂に金正日
との面会にまで漕ぎ着けるが…。一方の韓国では選挙戦での
野党候補の躍進による新たな局面が生じていた。
偽ロレックスに模造の考古品など虚々実々のやり取りの中で
北朝鮮の中枢に迫って行く様子や、CM撮影のロケハンと称
して核開発の疑われる地方で関係者との接触を目論むなど、
正にスパイ戦という物語が展開される。

主演は2016年8月21日題名紹介『華麗なるリベンジ』などの
ファン・ジョンミン。他に『華麗なる…』でも共演のイ・ソ
ンミン。さらに2017年2月5日題名紹介『お嬢さん』などの
チョ・ジヌン、2019年4月紹介『神と共に』などのチュ・ジ
フンらが脇を固めている。
脚本と監督は2007年1月紹介『許されざるもの』や、2013年
『悪いやつら』、2014年『群盗』などのユン・ジョンビン。
なお脚本は2013年『ハナ奇跡の46日間』などのクォン・ソン
フィとの共同になっている。
実は上記の監督作品及び脚本作品はいずれも試写を観ている
が、描かれている韓国の国内問題が自分の中で咀嚼し切れず
紹介を割愛していたものだ。特に『ハナ』に関しては当時の
日韓の政治問題も引っ掛かった。
その『ハナ』は1991年の実話に基づくもので、本作とも近い
時代背景だったが、その際に気になった政治問題的な描写が
本作にはなく、その解釈は迷うところ。まあ歴史的には本作
の方が正しいと思うが。
いずれにしても軍の内部事情や内政問題、南北問題などにも
精通した監督、脚本家による作品で、本作が事実に基づくこ
とも確かだろう。近い隣国の話ではあるが、軍政国家の恐ろ
しさみたいなものも見事に描かれている。
2018年3月11日題名紹介『タクシー運転手』や、2018年7月
紹介『1987、ある闘いの真実』など、近年の政治問題を描く
韓国映画はその舌鋒も鋭いが、本作もそれに続く作品と言え
るものだ。
派手なアクションはないが、平壌の様子や金正日の別邸など
本来は写せるはずのない背景のVFXによる再現も巧みで、
純粋なスパイ映画として頗る面白い。エンターテインメント
としても上級の作品だ。
ただし1996年4月5日の顛末に関しては事実と異なっている
ようで、その点は気になった。もちろん意図的な創作だろう
が、実はこの部分の真相だけが物語の中でも曖昧なもので、
そのことを敢えて強調しているようにも感じられた。
これは映画制作者たちの怒りなのかな?

公開は7月19日より、東京はシネマート新宿他にて全国順次
ロードショウとなる。

この週は他に
『アートのお値段』“The Price of Everything”
(オークションで高値に取引される現代アートの実態に迫る
ドキュメンタリー。それは高値を招来したオークショナーか
ら美術評論家、コレクター、そしてアーティスト本人まで、
各階層の人物へのインタビューで構成された作品だ。正直に
言って希少性の高い歴史的な芸術品が高値を呼ぶのは理解す
るが、作者も存命中の現代アートが斯くも高値で取引される
のは謎だった。その疑問に本作は明確に答えてくれる。その
答えについては本作を見ていただきたいが、それに対する疑
問なども呈されており、極めて判り易い作品だと言える。特
に芸術品がコレクターに私蔵されることへの危惧に対して、
美術館の倉庫に死蔵されるよりはましと言う論点には納得で
きるものもあった。そんな中で全編を通して繰り返し登場す
る初老のコレクターの行動には共感できるものもあり、それ
らが観ていて気持ち良い作品でもあった。公開は8月より、
東京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)

『柴公園』
(過去にも2013年12月『猫侍』などを紹介しているローカル
TVで放送されているシリーズの劇場版。下町に新築された
タワーマンションに引っ越してきたいずれも柴犬を飼ってい
る3人の中年男が公園で出会い、世間話を続ける内にいろい
ろな事件が起きてくる。出演は渋川清彦、大西信満、ドロン
ズ石本と桜井ユキ。他にBOYS AND MENの水野勝、松本若菜、
寺田農、山下真司。さらに2009年5月紹介『幼獣マメシバ』
の佐藤二朗が同じ役で登場する。監督は2018年4月22日題名
紹介『ゼニガタ』などの綾部真弥。脚本も『ゼニガタ』など
の永森裕二が担当。他愛ない話ではあるが、後半のシーンに
関しては、実は僕自身が近所の人たちと一緒に工事の始まる
前の更地に潜り込んでドッグラン的に楽しんでいた経験があ
り、そんなことを懐かしく思い出したりもした。案外あるあ
るの詰まった作品でもあったものだ。公開は6月14日より、
全国のイオンシネマ系列でロードショウ。)

『トム・オブ・フィンランド』“Tom of Finland”
(同時期に『指輪物語』の原作者を描く“Tolkien”も公開
されるドメ・カルコスキ監督が、ゲイアートの原点とされる
フィンランド人画家の半生を描いたドラマ作品。第2次大戦
中にナチスの支援を受けたフィンランド軍に出征したトウコ
・ラークソネンは、終戦で帰還したものの自室に閉じ籠り、
戦地で出会った逞しい男たちの姿を描き続ける。実は当時の
母国では同性愛が法律で禁じられており、彼の性癖は夜の公
園で取り締まりに怯えながら相手を探すか、自室でファンタ
シーを膨らませるしかなかったのだ。ところがそんな兄の様
子を見かねた妹が、彼を広告業界に推薦したことから転機が
訪れる。彼は広告アートで才能を発揮し、同時に流行りのバ
イカーファッションなども取り入れて自作を進化させる。そ
してアメリカの雑誌に送った絵が表紙に採用され…。文化的
に興味深い作品だ。公開は8月2日より、東京はヒューマン
トラストシネマ渋谷他で全国順次ロードショウ。)

『CROSSING Part�機戞搬席仁悄�亂世浮生 The Crossing”
『CROSSING Part�供戞搬席仁悄Ф筑郊�愛 The Crossing 2”
(ジョン・ウーが2008年8月紹介『レッドクリフ』の後編作
(09年)以来の単独監督を務め、2014、15年に本国公開された
2部作の歴史ロマン。1949年発生の海難事故をクライマック
スとして、1945年の日中戦争末期から国共内紛の中国激動の
時代を背景に、そこに関った3組の男女を描く。1組目は国
民軍将校とその妻。2組目は台湾人だが日本軍に徴用された
医師と日本人の恋人。3組目は国民軍兵士の夫を探す妻と、
彼女と偽装結婚した別の兵士。彼らの人生が中国版タイタニ
ックとも呼ばれる太平輪号で絡み合う。出演はホアン・シャ
オミンとソン・ヘギョ、金城武と長澤まさみ、そしてチャン
・ツィイーとトン・ダーウェイ。正に人気、実力を兼ね備え
た配役が共演している。前編129分、後編126分の大作だが、
前編は戦争映画、後編はパニック映画として緊張感に溢れる
作品だった。公開は前編が6月7日、後編は6月14日より、
東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)

『さらば愛しきアウトロー』“The Old Man & the Gun”
(1936年生まれの俳優ロバート・レッドフォードが引退作と
公言している作品。1980年代初頭のアメリカで、拳銃を見せ
ながらも撃つことはせず、微笑みを浮かべて被害者からも紳
士と証言された銀行強盗フォレスト・タッカー。生涯に16回
もの脱獄を成し遂げ、銀行強盗を繰り返したという男の最後
の大仕事が描かれる。共演はケイシー・アフレック、ダニー
・グローバー、チカ・サンプター、トム・ウェイツ、シシー
・スペイセク、キース・キャラダイン。脚本と監督は2018年
9月紹介『A GHOST STORY』などのデヴィッド・ロウリー。
脚本はNEW YORKER誌に掲載された実録記事に基づくというこ
とだが、原題からはヘミングウェイの『老人と海』も想起さ
れ、そんな男の生き様みたいなものも描かれた作品だ。レッ
ドフォードが最後の作品に選んだというのも頷ける。公開は
7月12日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国ロード
ショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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