井口健二のOn the Production
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2019年05月06日(月) ROMA ローマ、麻雀放浪記2020

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※今週は10連休中で試写会が無かったので、公開に際して※
※のマスコミ試写が行われなかった作品の中から、劇場で※
※観て気になった2作品について少し書くことにします。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ROMA ローマ』“Roma”
アルフォンソ・キュアロン監督が Netflixで制作し、2019年
のアメリカアカデミー賞で外国語映画賞、監督賞、撮影賞を
受賞した作品。
本作は昨年の東京国際映画祭でも上映されたが、その際にも
マスコミ向けの試写は行われず、本上映のチケットも一瞬で
売り切れてしまった。さらに2019年3月9日からの劇場公開
に向けた試写も行われなかったものだ。
しかし重要な作品と思われるので劇場で鑑賞した。公開済み
なので物語の詳細は割愛するが、語られているのはキュアロ
ン監督の思い出に基づくもの。監督は1961年生まれだから、
背景が1971年のこの物語は、彼が10歳ごろのことになる。
当時のメキシコは1968年オリンピックと1970年FIFAワールド
カップが開催された後で、壁には貼り残されたポスターなど
も見て取れる。しかし映画の中でほとんど言及がないのは、
10歳の少年には関心が湧かなかったのかな?
それに対して主人公一家が映画を見に行くエピソードでは、
その作品がジョン・スタージェス監督の1968年アメリカ映画
『宇宙からの脱出』“Marooned”であったことまでしっかり
描かれている。
実はこの作品は、キュアロン監督が1回目のアカデミー監督
賞を受賞した2013年『ゼロ・グラビティ』の元ネタとも言わ
れていたもので、本作ではその作品へのリスペクトを表した
と言えるのだろう。ファン的には嬉しい話だ。
それと物語の中ではもう1点、映画の後半で一家が訪れる海
も気になった。
キュアロン監督の作品で海というと2002年6月紹介『天国の
口、終りの楽園』も印象に残るが、その作品にも女性の生き
方みたいなものが描かれており、監督にとっての海と女性の
関係がこんなエピソードに基づくのかと思ったものだ。
因に本作に登場する海岸は、Tuxpanというメキシコ湾に臨む
東岸。それに対して『天国の口』で主人公たちが訪れるのは
Boca del Cieloという南部の太平洋岸だそうだ。何となく同
じ場所かなとも思ったが、そうではなかった。

あとは技術的な指摘を1点。本作の撮影に用いられたカメラ
はディジタルで、ARRI社製のALEXA 65というもの。このカメ
ラの解像度は6.5Kで、いわゆるHiVisionの2Kや、最近話題
の4Kを超えるものだそうだ。
ここでディジタルとフィルムの比較を行っておくと、2Kの
画質はフィルムの16�仭蠹�をされており、4Kで35�仭蠹�。
従って70�个硫莠舛鯑世茲Δ箸垢襪硲牽砲�必要ということに
なる。
これだけ書くと70mmに劣っているように見えるが、フィルム
の感光材の粒子が個別のフィルムごとにランダムであるのに
対して、ディジタルの撮像素子の画素の位置は固定。これが
画面のちらつきに対しては有利に働く可能性がある。
ここで、昨年70mmフィルムでの上映が話題になった『2001年
宇宙の旅』について触れておくと。同作では「宇宙で星は瞬
かない」という原則から70mmで撮影された映像を35�个望討�
付ける際に、粒子のずれによって生じるちらつきを考慮して
小さい星をマスクで消したという話もある。
ところがこれがディジタルの場合には、画素の位置が固定で
あるために、粒子のずれによって生じるちらつきの恐れはな
い。つまり粒子のサイズの比較だけでない利点が生じる可能
性もあるのだ。
もちろん画素が直線に並んでいることにより、水平に近い線
がスクリーン上でちらつくなどの別の問題はあるが、解像度
の面だけから言えば6.5Kで充分に70mmのフィルムに匹敵する
ことは理解できる。
なおALEXA 65という名称に関しては、70mm映画の初期に使用
されて『ベン・ハー』などに採用されたMGMカメラ65など
も思い出され、映画ファン的には懐かしさがこみ上げてくる
ものだ。
ついでにこのカメラの仕様を記しておくと撮像素子のサイズ
は54.12×25.59mmで、これは70mmフィルムの52.5×23.0�个�
り大きいものになっている。ただしこの場合の横:縦の比率
は2.11:1で、70mmフィルムの2.20:1より縦に大きい。
そこで上映用の70mmフィルムへのプリントでは上下を切って
いるものだが、さらにアメリカのデータベースでは 2.39:1
という記載もあって、これがディジタル上映での比率、且つ
監督が意図した比率になっているようだ。
僕自身は特別な事情がない限り、テレビモニター上で映画を
観る趣味は持たないので、 Netflixで配信された映像がどの
ようなものであったかは知らないが、本作は充分に映画館で
見る価値のある作品に思えるものだった。

『麻雀放浪記2020』
1978年度直木賞作家の色川武大が1969年に阿佐田哲也名義で
発表した小説の映画化。同作からは1984年に和田誠監督によ
る映画化もあったが、同作の大ファンだという俳優の斎藤工
が熱望してリメイクが実現したとのことだ。
因にこの作品に関しては、通常は試写のスケジュールが記載
される部分が空欄になった「マスコミ試写は行わない」旨の
案内状が届いたものだ。
映画の発端は第2次大戦直後の東京の闇市。そこには1940年
に開催予定だった東京五輪が、戦争のため中止されたという
状況もある。
物語は、そんな時代に玄人雀士だった「坊や哲」が「五筒」
を握りしめたまま、突然2020年にタイムスリップするところ
から始まる。そこは開催予定だった東京オリンピックが戦争
のため中止されたという世界でもあった。
そんな世界に突如放り込まれた主人公は、時代錯誤の行動も
行うが、やがてオリンピックの代替で麻雀競技会が行われる
ことを知り、それに挑戦することになる。しかしその相手は
AI搭載のサイボーグ雀士だった。
一方、主人公がタイムスリップした原因は、「九蓮宝燈」を
上がったことが切っ掛けと考えられ、主人公は過去に戻るた
めに再びその役満を上がるべく、決勝戦の勝負に挑むことに
なるが…。

出演は、坊や哲役に斎藤工。共演に姉妹音楽ユニット「チャ
ラン・ポ・ランタン」のもも。さらにベッキー、的場浩司、
ピエール瀧、伊武雅刀、矢島健一、吉澤健、堀内正美、小松
政夫、竹中直人らが脇を固めている。
脚本と監督は2019年4月21日題名紹介『凪待ち』などの白石
和彌。なお脚本は2017年7月9日題名紹介『蠱毒(こどく)』
などの佐藤佐吉、2017年1月紹介『3月のライオン』などの
渡部亮平との共同になっている。
タイムスリップした主人公が過去から持ってきた「五筒」を
オリンピックの「五輪」に引っ掛ける辺りはニヤリとした。
そこにAI搭載のサイボーグとくればSFファンには興味の
惹かれるところだ。
ただ「五筒」と「五輪」の関係にはもう少し何かがあっても
良かったのではないかな。将来的には競技種目の噂もある麻
雀なので、その辺の捻りも欲しかった。まあオリンピックを
前面に出すといろいろ揉めたのかもしれないが。
一方、麻雀ファンにはどうなのかな。いろいろイカサマの手
口を見せる辺りはオリジナルも同じだったと思うが、その仕
込みが、最初は符牒だったのが後半はテレパシーというのは
SFファンとしても納得ができない。
ここはもっと心理戦のような、阿吽の呼吸みたいな表現も欲
しかったところだ。麻雀を今時という意見もあるが、2016年
12月18日題名紹介『咲-saki-』では麻雀の描き方もしっかり
していたもので、それくらいの作品にはして欲しかった。

いろいろとトラブルの多い作品にはなってしまったが、SF
テーマの部分は悪いとは思わなかったので、これからも頑張
って欲しいところだ。


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井口健二