井口健二のOn the Production
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2019年03月17日(日) パラレルワールド・LS(ニューヨーク公共図書館、魂のゆくえ、うちの執事が言うことには、としまえん、氷上の王、パージEX、ハロウィン)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『パラレルワールド・ラブストーリー』
2017年7月紹介『ナミヤ雑貨店の奇跡』や、2018年9月2日
題名紹介『人魚の眠る家』など多数の映画化もあるベストセ
ラー作家東野圭吾が1995年に発表した、1996年「このミステ
リーがすごい!」で第24位の作品の映画化。
主人公は山手線で通っていた学生時代、並行して走る京浜東
北線の車中に立つ女性を目に留める。その後は同じ時間、同
じ車両の同じ位置に乗ることを続け、何度か視線が交差する
ときもあったが…。
卒業式の日、思い切って京浜東北線に乗り換えた車両に彼女
の姿はなかった。そして並行して走る山手線の車中に彼女を
見付けた主人公は次の駅で乗り換えるが、彼女に会うことは
叶わなかった。
そして数年が経った時、主人公は幼い頃からの親友で今も同
じ職場で働く男性から恋人ができたと報告される。その親友
には身体障害があり、そんな親友の報告に喜ぶ主人公だった
が、彼が連れてきたのは車中の彼女だった。
ところがその親友の研究テーマを知った日、主人公は彼女と
同棲している世界に紛れ込む。その世界で親友はアメリカの
研究所に招かれ、研究を続けているはずだった。しかし音信
が途絶え、主人公の周囲で謎めいた事象が起き始める。

出演は、ジャニーズ「Kis-My-Ft2」の玉森裕太、2018年6月
紹介『パンク侍』などの染谷将太、2018年8月26日題名紹介
『音量を上げろタコ!』などの吉岡里帆。他に筒井道隆、石
田ニコル、田口トモロヲらが脇を固めている。
監督は2012年『宇宙兄弟』などの森義隆。脚本は2017年4月
23日題名紹介『イイネ!イイネ!イイネ!』などの一雫ライ
オンが担当した。
実は、試写を観終った直後は物語の展開があり得ないのでは
ないかと考えていた。それは親友の行為があまりに無責任と
感じたからだ。しかしじっくりと考えた末に、事件の首謀者
が別にいること気付いた。
そのヒントや伏線がどれほど仕込まれていたかは、1回観た
だけでは不明だが、その展開なら辻褄が合う。とは言うもの
の、映画の中ではもう少し説明があっても良いのではないか
な? そんな風には考えてしまった。
それと事件の首謀者が主人公の2人以外にいるというのは、
少しルール違反のようにも感じる。勿論そこに伏線があった
のであればこれもOKだが。そして主人公を守るという意味
ではよくできた物語だ。
東野の原作では前に観た『人魚の眠る家』もそうだったが、
最先端技術の危険性を問うという意味では面白い作品だ。し
かもその技術を行う者の立場を守る点は理解ができた。これ
には東野自身が技術者出身という経歴もあるのだろう。
僕自身も技術系の出身者として納得のできる作品だった。

公開は5月31日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード
ショウとなる。

この週は他に
『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』
        “Ex Libris: New York Public Library”
(吉田秋生原作アニメの舞台になって新たなアニメの聖地と
もされる文化施設を、2018年8月19日題名紹介『ジャクソン
ハイツヘようこそ』などのフレデリック・ワイズマン監督が
描いたドキュメンタリー。前作と同様のナレーションを排し
た映像と現場音だけで構成される作品だが、その内容には圧
倒される。1911年に設立され、市当局とカーネギー財団など
の支援により市内全域に92の施設を擁するその規模は、正に
世界の図書館の鑑と言えるもの。そしてその中では単に書籍
の収集や保存、閲覧だけでなく、文化人を招いた様々な催し
から幼児向けの算数教室まで、実に多彩なイヴェントが実施
されている。さらにバックヤードでは電子書籍に対する取り
組みからホームレス対策まで、こちらも多岐に亙る問題が登
場する。それらが巧みな編集で提示され、観客としてはその
全てに刮目し、共感する作品だ。公開は5月18日より、東京
は神田の岩波ホール他で全国順次ロードショウ。)

『魂のゆくえ』“First Reformed”
(2003年10月紹介『ボブ・クレイン』などのポール・シュレ
イダー監督が50年間温め続け、自身初のオスカー脚本賞候補
になった作品。物語の背景はアメリカで250年の歴史を持つ
キリスト教改革派の教会。そこで牧師を務める主人公は、以
前は従軍牧師で、息子を戦場で亡くす心の傷も負っていた。
そんな牧師が信者の女性に助けを求められる。それは過激な
自然保護思想を持つ夫が地球の未来に悲観して身籠った彼女
に堕胎を迫っているというのだ。そこで彼は夫と面会し話を
聞くことにするが…。教会の記念行事のスポンサーが公害企
業であるなど、彼自身にも向けられる矛先が彼の心に重く圧
し掛かってくる。出演はイーサン・ホーク、アマンダ・セイ
フライド。他に2009年6月紹介『キャデラック・レコード』
などのセドリック・ジ・エンターテイナーことセドリック・
カイルズらが脇を固めている。公開は4月12日より、東京は
シネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)

『うちの執事が言うことには』
(1999年メフィスト賞受賞で作家デビューした高里椎奈が、
2014年から発表している小説シリーズ第1巻の映画化。財閥
の御曹司が集う日本の社交界を背景に、英国帰りでいきなり
当主とされた主人公と朴訥な新米執事との互いに信頼を築く
までの成長が、家名を汚す事件の顛末と共に描かれる。出演
はジャニーズ「King & Prince」の永瀬廉と2017年8月20日
題名紹介『HiGH&LOW THE MOVIE』などの清原翔。他にキン・
プリの神宮寺勇太、2018年4月1日題名紹介『ママレード・
ボーイ』などの優希美青。さらに村上淳、原日出子、嶋田久
作、吹越満、奥田瑛二らが脇を固めている。脚本は、2011年
5月紹介『日輪の遺産』などの青島武。監督は2016年『白鳥
麗子でございます THE MOVIE』などの久万真路。まあアイド
ル主演ということでは、それなりに楽しめる作品にはなって
いたかな。公開は5月17日より、東京は丸の内TOEI、新宿バ
ルト9他で全国ロードショウ。)

『映画 としまえん』
(東京都練馬区の老舗遊園地・豊島園の全面協力で撮影され
た都市伝説に基づくホラー作品。洋館の扉を叩いてはいけな
いとか、お化け屋敷で返事をしてはいけないとか、ミラーハ
ウスの鏡を覗き込んではいけないとか。これで異世界に連れ
て行かれるなら、すでに何千人も行方不明になっていそうな
設定。でもそれが都市伝説というもの。そこそこの怖がらせ
はあるが、アイドル主演の狙いがG指定では大人の鑑賞には
限界はある。出演は2017年12月10日題名紹介『サニー/32』
の北原里英、2017年8月27日題名紹介『氷菓』の小島藤子、
2018年4月15日題名紹介『TOKYO LIVING DEAD ID♡L』の浅川
梨奈、2019年2月24日題名紹介『賭ケグルイ』の松田るか。
他に中島ひろ子、竹中直人らが脇を固めている。地元住民だ
とロケーションも判って楽しめるかな? 最後がこの乗り物
なのにはニヤリとした。公開は5月10日より、東京はユナイ
テッド・シネマとしまえん他で全国ロードショウ。)

『氷上の王、ジョン・カリー』“The Ice King”
(イギリス出身で1976年インスブルック冬季五輪フィギュア
男子シングルスの金メダルに輝いたジョン・カリーを追った
ドキュメンタリー。幼い頃に舞踊に興味を持ったカリーは、
厳格な父親から「バレエは男らしくない」と禁じられたもの
の、スポーツと認められたアイススケートに活路を見出す。
そして父親の死後はフィギュアスケートにバレエの要素を取
り入れた新たな展開に挑み、当時はコンパルソリーなど技術
重視だったフィギュアに風穴を開ける。さらに金メダル受賞
後はプロに転向し、正に芸術性満開のアイスショウを繰り広
げる。ところがメダルの受賞直後にゲイであることが暴露さ
れ、様々なカルチャーの注目を浴びてしまう。そんなカリー
の生涯が、友人に宛てた手紙と共に綴られ、そこに華麗なス
ケーティングの模様も挿入される。その中には日本での公演
の様子(笑)も含まれていた。公開は初夏に、東京は新宿ピカ
デリー、UPLINK吉祥寺他で全国ロードショウ。)

『パージ:エクスペリメント』“The First Purge”
(2015年6月と2017年4月に紹介した近未来サスペンスシリ
ーズの第4弾。ただし本作は続きではなく、パージ法を施行
する前にニューヨーク市のスタテン島で行われたとされる実
証実験の様子が描かれる。それは1人の女性学者のアイデア
から始まるが…。出演はイラン・ノエル、レックス・スコッ
ト・デイビス、ジョイバン・ウェイドらいずれも新人で前作
からの引継ぎもないようだ。そこにマリサ・トメイ、2002年
『マイノリティ・リポート』に出ていたスティーヴ・ハリス
らが脇を固めている。脚本は前作までの脚本・監督を務めた
ジェームズ・デモナコ。監督は長編2作目のジェラード・マ
クマリーが担当した。元々無理のある設定だが、その最初と
いうことでさらに混乱しているのも面白い。それを強行して
行く政治家のやり口が風刺にもなっているかな。日本も他山
の石ではない。公開は6月、東京はTOHOシネマズ日比谷他で
全国ロードショウ。)

『ハロウィン』“Halloween”
(1978年公開のオリジナルで鮮烈な映画デビューを飾った当
時20歳のジェイミー・リー・カーティスが、40年後の同じ役
に挑む最新作。因に女優は1998年の20周年作にも主演してお
り、シリーズ全作に何らかの形で関っている。そして本作の
背景は事件から40年後のハロウィン前日。過去の事件を検証
していたジャーナリストが唯一の生き残りの女性に取材を試
みる。しかし彼女には何処か秘めたものがあるようだ。そこ
に医療刑務所に収監されていた犯人の脱走が報じられ、俄か
に事態が動き始める。それは40年間待ち続けた復讐の開幕だ
った。共演は2019年2月17日題名紹介『リアム16歳』などの
ジュディ・グリア、新進のアンディ・マティチャック。脚本
と監督は2018年3月4日題名紹介『ボストン ストロング』
などのデヴィッド・ゴードン・グリーン。監督としてはジャ
ンルに初挑戦のようだ。公開は4月12日より、東京はTOHOシ
ネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
また今週も他に1本、本国公開前の作品があり、その掲載は
後日とします。


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