井口健二のOn the Production
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2019年02月10日(日) ndjc:若手映画作家育成、シー・ラヴズ・ミー(波乗りオフィス、福島は語る、マックイーン、ドント・ウォーリー、新宿タイガー、COLD WAR)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※
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『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2018・合評上映会』
文化庁の事業として2006年から行われている若手監督の育成
プログラムで、2018年度に選ばれた5人の監督による作品の
上映会を初めて見学させてもらった。
選考の経緯は、昨年5〜6月に映画関連の連盟や映画祭、学
校等の各種団体からの推薦が受け付けられ、今回は80人の応
募者の中から15人が書類選考されて8月にワークショップを
実施。そこでは専門家の指導の許、同じテーマによる5分間
の短編を制作し、その結果5人が選ばれたとのことだ。
その5人に対して、8〜10月に脚本開発、10〜12月に撮影、
12〜1月に仕上げのスケジュールで、35�丱侫�ルムを使って
25分以上30分以内の作品が製作された。その作品が今回上映
されたものだ。さらに各作品の上映後には、それぞれ監督及
び出演者によるトークショウも行われた。
「サヨナラ家族」
脚本・監督の眞田康平は、1984年生まれ、東京藝術大学大学
院映像研究科監督領域修了。その修了作品「しんしん」は劇
場公開の実績もある。出演は石田法嗣、根岸季衣、村田唯、
土居志央梨、佐野和宏、斎藤洋介。
主人公は父親の一周忌で帰省した男性。父の死を受け入れ切
れていない彼の目には、いろいろ怪奇な現象が見えている。
巻頭、斎藤のホラーっぽい演技が良くて、これは…と思わせ
たが、その後は凡庸かな。上映後のトークでは、監督自身が
実父の死に際して思いついた話のようだ。それは僕も自分の
父の死に対してはいろいろ思ったところはあったが、自分が
還暦も過ぎて棺桶に片足突っ込んでいるような立場だと、そ
の想いを共有することがあまりできなかった。

「うちうちの面達(つらたち)は。」
脚本・監督の山元環は、1993年生まれ、大阪芸術大学映像学
科卒。その卒業制作「ゴロン、バタン、キュー」がPFF アワ
ード2015で審査員特別賞と神戸賞を受賞してる。出演は田中
奏生、田口浩正、濱田マリ、小川未祐、山元駿。
登場するのは父親と姉弟の3人家族。実は2週間前に夫婦喧
嘩で母親が家出、父親はその行き先の見当もついていない。
しかし13歳の弟は母の居場所を知っていた。2016年4月紹介
『団地』を少し思い出すところもあったが、本作の舞台は一
戸建てでさらに大掛かりなものだった。濱田の特技を生かし
た演技も見所だが、ここはもう1回逃げ切って欲しかったか
な。でもそれでは上映時間が超過だったのだろう。奇想天外
というか、現実にもありそうだが、かなり意表を突いた展開
は充分に楽しめた。

「くもり ときどき 晴れ」
脚本・監督の板橋基之は、1976年生まれ、法政大学文学部日
本文学科卒業。フリーのディレクターとしてCMやドキュメ
ンタリーなどを手掛け、2016年初監督の短編「おべんとう」
は世界各地の映画祭で上映・受賞している。出演はMEGUMI、
浅田美代子、水橋研二、有福正志。
母親と2人暮らしの主人公の許に、25年前に生き別れた父親
の生活保護扶養照会が届く。その通知に別に所帯を持つ兄と
母親は冷淡な対応だったが、主人公には父親に対する悪感情
はないようだ。そんな父親は元金属加工職人で、その口癖は
「設計図通りに生きろ」だった。そして主人公はその父親に
会いに行くが…。痴呆の進んだ父親は娘が名乗っても何の反
応も示さなかった。家族の機微は巧みに描かれた作品だ。た
だし結末の1カットシーンは少し違う感じがした。

「はずれ家族のサーヤ」
脚本・監督の岡本未樹子は、1984年生まれ、大阪芸術大学映
像学科卒業。在学中に制作した短編作品「おねえちゃんのす
きなひと」が2007年アジア国際青少年映画祭にて上映、受賞
している。卒業後はフリーの助監督として活動。出演は横溝
菜帆、黒川芽以、増子倭文江、田村泰二郎、森優理斗。
母親が新しい恋人との子供を宿し、祖母と2人暮らしの実家
に残された少女。母親の里帰りで連れてくる父親の違う弟と
は仲も良いが、満たされないものも感じている。そんな少女
が公園で不思議な物売りに出逢う。その商品の小箱には不思
議な力があるというが…。レイ・ブラッドベリの短編小説に
でもありそうなファンタスティックで、残酷な物語が展開さ
れる。物語も良いが姉弟を演じる子役が素晴らしい。そして
上映後のトークでそれを引き出した演出力に納得した。

「最後の審判」
脚本・監督の川上信也は、1976年生まれ、東京工芸大学デザ
イン科卒業後、映像制作会社にて数多くのCM、MVなどを
演出、国内外の賞を多数受賞している。出演は須藤蓮、永瀬
未留、黒沢あすか、荒谷清水。
主人公は日本最高峰の美大の受験に浪人5年目。今年で最後
と決めた試験の課題は2日間で描き上げる人物着彩。その試
験開始の直前に平然と現れる独特な風貌の女性。しかし試験
が始まると、彼女はとてつもない画力で他を圧倒し、主人公
もその絵を意識するあまり自分のペースを見失ってしまう。
そして帰り道、自分の不甲斐なさにも怒る主人公は彼女に声
を掛け、画力の秘密を聞き出そうとするが…。監督の実体験
に基づく部分もある話ようだ。
今回上映された作品では、最後の作品を除いていずれも「家
族」が描かれたが、それは特に意図されたものではないとの
ことで、時代がそういう作品を選んだようだ。その中で最後
の作品だけが異彩を放ったが、それで少し損してしまった感
じもしないではない。でも何れも優れた才能の片鱗を見せて
貰えた。

2006年に開始されたプロジェクトからは、すでに2018年1月
21日題名紹介『花は咲くか』の谷本佳織。2018年2月4日題
名紹介『ANIMAを撃て!』の堀江貴大。2018年8月5日
題名紹介『パパはわるものチャンピオン』の藤村亨平らの才
能を輩出しており、今後も期待されるものだ。
一般公開は3月2日〜8日に有楽町スバル座、8日〜14日に
名古屋ミッドランドスクエア、16日〜21日にシネ・リーブル
梅田にて期間限定ロードショウとなる。

『松竹ブロードウェイシネマ シー・ラヴズ・ミー』
                   “She Loves Me”
2017年8月紹介『ホリデイ・イン』に続くニューヨーク・ブ
ロードウェイの舞台を撮影した作品。
舞台は1963年に初演され、1999年に公開されたトム・ハンク
ス、メグ・ライアン共演の映画『ユー・ガット・メール』の
元にもなった名作ミュージカル。今回上映の2016年再演版は
トニー賞で2部門に輝いている。
主人公は街角に建つ香水店で働く男性店員。同世代の同僚と
年配の店員、それにレジ係の女性と共に働いているが、同僚
には少し問題があるようだ。そしてその同僚が馘になり、代
わって有能な女性店員が雇われる。
ところが主人公と女性店員とは最初の出会いから少し行き違
いが生じて、主人公は何かと辛く彼女に当ってしまう。そん
な2人は共に独身で、心の支えはまだ会ったことのない匿名
のペンフレンドとの文通だったが…。
1999年の映画では電子メールだったが、オリジナルは手紙。
私書箱でやり取りされて住所も本名も判らないというのは、
今なら電子メールの方が理解し易いが、1960年代にもこんな
ことは行われていたようだ。
そしてちょっとした行き違いが様々なドラマを生んで行く。

出演は、テレビの人気番組で主演を務めた他、2013年12月紹
介『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』にも出ていたザカ
リー・リーヴァイ、ブロードウェイで多数のミュージカルの
舞台の他、テレビの『スーパー・ガール』にも出ていたロー
ラ・ベナンティ。
また、ブロードウェイやロンドン・ウェストエンドなどの舞
台の他、2015年の映画『ピクセル』にも出ていたジェーン・
クラコウスキー。2009年11月紹介『ジュリー&ジュリア』な
どのバイロン・ジェニングス。そして自ら劇団も主宰する若
手のギャヴィン・クリールらが脇を固めている。
監督はデヴィッド・ホーン。そして舞台のセット・デザイン
をデヴィッド・ロックウェルが担当して、2017年のトニー賞
ではミュージカル部門リバイバル作品賞と装置デザイン賞を
受賞している。
電子メールの無い時代の話が、今の若い人たちにどう受け止
められるかは判らないが、その時代を生きてきた人間には、
正に胸キュンという感じの物語になっている。でも多分これ
は時代を超えて現代にも通用するものだろう。
それに加えて本作では、トニー賞も受賞した舞台のセット装
置が素晴らしくて、特に巻頭の路上から一気に店内に移る場
面転換には正に度肝を抜かれた。さらにそこから後ろの部屋
や別の情景にも転換する。これは本当に見事だった。
その妙技を見るだけでも価値のある作品だ。
なお、本作は巻頭にも「HD」と銘打たれていて恐らく毎秒
30フレームで撮影されていると思われるが、実は僕が観た試
写会では画面にちらつきがあった。これはフレーム数の誤差
と思われ、もしかするとプロジェクターの設定が映画用の毎
秒26フレームのままだった可能性がある。
ちらつき自体はさほど目立ちはしないが、僕には気になった
もので、できれば是正して欲しいところだ。

公開は4月19日より、東京は築地東劇にて3週間限定ロード
ショウ。その後は5月24日より大阪なんばパークスシネマ、
名古屋ミッドランドスクエア シネマでも限定ロードショウ
となる。

この週は他に
『波乗りオフィスへようこそ』
(四国の右下と自称する徳島県、その中でも右下に位置する
美波町を舞台に、IT企業が地方に開発部門を設置し軌道に
乗るまでを描いた実話に基づく作品。主人公が社長を務める
小さなIT企業では大手に押されて人材不足が深刻だった。
そんな折に帰郷した社長は、ふと自然の中で働くことを思い
付く。それは思わぬ人材を集めることになるが…。登場する
会社名も実名なので、まあその通りなのだろうけど、お話は
少し綺麗事かな。多少のトラブルはあるけれど、それも定番
でドラマとしては物足りない感じが残った。実話だから仕方
ないのだろうが。出演は、映画初主演の関口知宏。その脇を
宇崎竜童、柏原収史、宮川一朗太、岩崎加根子らが固めてい
る。脚本と監督は美波町の出身で、2018年3月11日題名紹介
『終わった人』のプロデューサーを務めた明石知幸。公開は
4月5日からイオンシネマ徳島で先行上映の後、東京は19日
より有楽町スバル座他で全国順次ロードショウ。)

『福島は語る』
(2009年「パレスチナ」4部作や2015年「ガザ」5部作など
を発表してきた土井敏邦監督が、原発事故によって生活基盤
を奪われた人たちの姿を5年の歳月を掛けて描いた14の証言
からなる2時間50分のドキュメンタリー。今や事故から8年
が経ち、各地の原発再稼働も推進され、福島の教訓は何だっ
たのかと思ってしまう状況の中、未だに放射能が充満してる
実家には帰ることもできない人たち。その一方で残留放射能
自体が風評被害という言葉の許に封じられ、それでもその作
物は消費者に拒絶される。また避難した子供たちも避難先の
学校では差別が続く。そんな生々しい現実が描かれる。現実
は都心の放射能だって以前よりは増えたままなのに、五輪の
名の下にその事実さえ隠されている。証言だけのドキュメン
タリーの難しさは2018年12月23日の題名紹介で指摘したが、
本作にはそれを超えた重みがある。公開は3月2日から新宿
K's cinemaで先行上映の後、9日より全国ロードショウ。)

『マックイーン モードの反逆児』“McQueen”
(1992年に彗星のごとく登場し、一世風靡したファッション
デザイナーを描いたドキュメンタリー。ロンドン下町で6人
兄弟の末っ子が、サヴィル・ローのテーラーに雇われ、イタ
リアのアトリエを経て、再びロンドンの服飾学院に学ぶ。そ
してその卒業制作がファッション誌の編集者の目に留まり、
破格の金額でコレクションが買い取られたことでデビューに
繋がる。ところが彼の繰り広げるファッションショーは過激
なアイデアで賞賛と非難が半ばする。それでもブランドとの
契約を勝ち取るが…。このような出来事が多数のアーカイヴ
の映像と家族らの証言によって綴られる。それにしても映像
テクノロジーを駆使したそのファッションショーの奇抜さに
は、映像を見慣れている僕の眼にも驚きを感じさせた。監督
はイアン・ボノートとピーター・エテッドギー。劇映画の作
家たちのドキュメンタリー初挑戦だ。公開は4月5日より、
東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)

『ドント・ウォーリー』
       “Don't Worry, He Won't Get Far on Foot”
(2010年に他界したアメリカの風刺漫画家ジョン・キャラハ
ンの生涯を描いた作品。酒浸りだった男が交通事故で下半身
不随となり、さらに自暴自棄な暮らしとなるが。ある切っ掛
けから自分を憐れむことを止め、自虐も含めた世間に対する
風刺の目で、自己を再生させて行く。在りがちな話でもある
が、散りばめられた鋭い風刺が見事に人間を描き出す。脚本
と監督はガス・ヴァン・サント。2014年に他界した故ロビン
・ウィリアムスが残した企画を、生前相談を受けていた監督
が完成させた。出演はホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒ
ル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック。他にウド・キ
アも登場する。映画前半の字幕に「おっぱい石」とあって、
原語は‘material rock’だったと思うが、前後の台詞から
訳語が違うような気もして、いろいろ調べたが結論は出なか
った。判る人がいたら教えて貰いたい。公開は5月、東京は
新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)

『新宿タイガー』
(20世紀の時代から繁華街で時折見掛ける奇人の姿を追った
ドキュメンタリー。本人は1948年生まれ、1972年に祭りの屋
台でタイガーのお面を見付け、以降の生涯をこのお面を着け
て過ごそうと思い立つ。収入源は新聞配達。今も早朝と夕方
の繁華街一円に朝日新聞を配っている。余分のお金は要らな
いと言い、仕事以外の時間は、映画と女性と、ロマンと夢に
生きている。そんな彼の生き様と、彼が流れ着いた1970年代
の激動の新宿が、彼自身が語る人生観や周囲の人々の証言と
共に描かれる。実は試写会に本人が来場していて、上映後に
拍手が沸いた。それは彼へのリスペクトと共に描かれた彼の
生き様に感銘を受けたためでもある。素敵な作品だ。監督は
1975年愛知県出身。南カリフォルニア大学で映画制作学科を
卒業。すでに劇映画では映画祭受賞も果たしている俊英の初
ドキュメンタリーだ。公開は3月22日より、東京はテアトル
新宿他で全国順次ロードショウ。)

『COLD WAR あの歌、2つの心』“Zimna wojna”
(2013年『イーダ』でオスカー外国語映画賞を受賞したポー
ランドのパヴェウ・パヴリコフスキ監督が、自らの両親と同
じ名前の男女を主人公に、冷戦下の東欧の男女の姿を描いた
作品。民族舞踊の振興を目的に国家が設立した舞踊団。そこ
に応募してきた女性を音楽家の男性が見初める。しかしベル
リンでの公演中に西側への亡命を試みた男性に女性は付いて
行かなかった。そしてパリで成功した男性は、フランスのパ
スポートを持って再び女性の許を訪れるが…。国際情勢など
が2人の仲を引き裂いて行く。物語は両親の実話とは異るよ
うだが、冷戦に翻弄される男女の姿は見事に描き尽くされて
いる。なお字幕の中で「ワルシャワは東のパリ」という言葉
に引っ掛かったが、前後の状況をよく考えると納得できるも
のではあった。台詞のニュアンスが微妙だったものだ。公開
は6月28日より、東京はヒューマントラストシネマ有楽町他
で全国順次ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
なお、もう1本『コードギアス 復活のルルーシュ』を見て
いるが、公開済みであるので紹介は割愛する。


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井口健二