| 2018年10月21日(日) |
ヒューマンフロー(アリー、アメリカン、セルジオ&、MOST、キックス、マシュー・B、TAXi、愛と銃弾、まぼろしの、それだけが、この道) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ヒューマンフロー 大地漂流』“Human Flow” 2013年9月紹介『アイ・ウェイウェイは謝らない』では被写 体になっていた中華人民共和国の現代芸術家=艾未未が、自 らカメラを持って撮影、監督した世界の難民キャンプを巡る ドキュメンタリー。 最初の画面は大海原を飛翔する白い鳥。その国境を持たない 自由な姿と裏腹に、眼下にはすし詰めの人々を乗せた難民船 が登場する。その船はトルコから地中海に浮かぶギリシャ領 のレスボス島を目指しているのだ。 本作の紹介記事では、このプロローグを作品の象徴として賞 賛している文章も見掛けたが、僕はこのような映像を今まで 何度見ただろうか? その既視感が問題の根深さを暗示し、 監督の真意はそこにあるようにも感じた。 作品は監督が世界23カ国、40箇所もの難民キャンプを訪ね、 状況の異なる各キャンプの問題を洗い出して行く。それは政 治や宗教などの原因は敢えて深く追及せず、原状そのものに 焦点を当てているところも見識のように感じる。 その中では、設営からすでに40年以上が経過し、キャンプの 中だけで独自の文化が誕生しているなどの話もあるが、一方 で教育が行き届かず、それが貧困と復讐心を呼び、ISの台 頭へと繋がる図式も描かれる。 さらには米墨国境の状況や、ミャンマーからタイ、バングラ ディシュに流れるロヒンギャ、パキスタンのアフガン難民。 あるいは世界最大の難民キャンプとされるケニア・ダダーブ に暮らす50万の人々など…。 実に様々な難民を取り巻く状況が描かれる。そこにはさらに 根深い問題を抱えているものもあるのだろうが。それも深く は追及せず、敢えて現状の難民の置かれた環境などの問題が 描かれる。これもまた見識とよべる。 僕自身が過去に観た難民を描いた作品では、2010年11月紹介 『君を想って海をゆく』が印象に残るが、そこに描かれたフ ランス・カレーの難民キャンプはすでになく、1万とも言わ れる難民はホームレス化したそうだ。 このようなヨーロッパでの新たな難民事情も描かれる。それ は各国の状況も反映するが、難民の置かれた環境のさらなる 悪化も懸念される。この点が監督の最も言いたかったことの ようにも感じられた。 そして終盤に登場するある画像。それはそれまで避けてきた ように写さなかった映像が唐突に登場する。その衝撃もまた 監督の言いたかったことであろうし、それが観客の胸に突き 刺さる。 鮮烈で過酷な作品だ。それに目を背けることなく、真摯に描 き切る。これが艾未未の真骨頂なのだろう。 公開は2019年1月、東京は渋谷シアター・イメージフォーラ ム他にて全国順次ロードショウとなる。
この週は他に 『アリー スター誕生』“A Star Is Born” (1937年のオリジナルから、1954年、1976年にも映画化され た物語の3度目のリメイク。アルコール依存で落ちぶれ始め ているスター歌手が、ふと立ち寄った場末のクラブで才能豊 かな女性歌手と出会い、彼女をスターダムへと押し上げる。 そして2人は愛し合い結婚に至るが、酒に溺れるスター歌手 は彼女の負担になって行く。37年版はハリウッドが舞台で、 54年版は歌手の話だが映画界も関る。それが76年版と本作で はロック音楽が背景にされている。ただ才能はあるがスター 性に欠ける女性が、一気に駆け登る姿は夢の実現であり、何 時の時代にも共感を呼ぶものだろう。とは言え結末は…そろ そろ変えられないのかな? 出演は映画初主演のレディ・ガ ガと、初監督も兼ねるブラッドリー・クーパー。元はクリン ト・イーストウッド監督の企画だったが、盟友とも言えるク ーパーが実現した。公開は12月21日より全国ロードショウ。 東京国際映画祭のオープニングも飾る。)
『アメリカン・ミュージック・ジャーニー』 “America's Musical Journey” (両親はパナマからの移住者という南カリフォルニア出身の シンガーソングライターが、新曲制作のためにアメリカ音楽 のルーツを訪ねるドキュメンタリー。内容は奴隷たちの歌に 始まり、ルイ・アームストロングやエルヴィス・プレスリー などアメリカ音楽史が綴られたもので、それがアメリカ各地 の風景と共に実に判り易く提示されている。正直には、後半 にIMAGINE という文字がチラリと映るが、イギリスを除いた アメリカ音楽が興味深く描かれた作品と言える。正に入門編 という感じの作品だ。因に鑑賞したのは通常の試写会場だっ たが、エンドクレジットには15/70IMAXという表記があり、 制作は70��15Perforations横送りの正規IMAXで行われたよう だ。そして画面でも魚眼風のレンズが多用されており、これ はIMAX、若しくはIMAXドームで観たくなるものだが、原状の 日本ではその上映は難しそうだ。公開は11月16日より、東京 は新宿武蔵野館と全国イオンシネマで限定ロードショウ。)
『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』 “Sergio and Serguéi” (日本ではカップヌードルのCMにも登場した旧ソ連の宇宙 飛行士の実話に、大幅なフィクションを加えて映画化したキ ューバ作品。時は1991年、登場するのは旧ソ連の宇宙ステー ション・ミールに滞在するセルゲイ。実は滞在期限は過ぎて いたが、母国の政情不安から交代要員の派遣が決まらず滞在 が延長されていた。そして12月、ソ連邦の崩壊によって滞在 は無期限とされてしまう。一方のセルジオはキューバ国民。 モスクワ留学の経験もある彼は真の共産主義者だったが、ア マチュア無線の趣味からアメリカ人との交信もあり、要注意 人物でもあった。そんな彼が宇宙からの無線を傍受し、宇宙 飛行士の窮状を知ることになる。しかもステーションには危 機が迫っていた。物語の大半は作り物だが、当時の世界情勢 との絡みなどは辛辣で面白い。主演2人はキューバ俳優で、 ロン・パールマンがゲスト出演している。公開は12月1日よ り、東京は新宿武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『MOST BEAUTIFUL ISLAND』“Most Beautiful Island” (スペイン出身の女優アナ・アセンシオが、自らの体験を基 に描いたとする初監督作品。2017年SXSW映画祭で最高賞 の審査員大賞を受賞した。ニューヨークに暮らす不法移民の 女性がドレスを着て出席するだけで高額のギャラが貰えると いうパーティに参加。しかしそこはサディスティックなセレ ブが集う危険なパーティだった。そこで彼女が体験した出来 事とは…。出演は監督自身が主人公も演じ、他に日テレのア メリカチャンネルにも出ているというロシア人のナターシャ ・ロマノヴァらが脇を固めている。テーマ的には2018年9月 23日題名紹介『MAKI』に共通するかな。ただし主人公の 体験する内容が、これが実体験と言われると言葉はないが、 セレブの遊びという割には低レヴェルで漫画チック。先の作 品の方が社会性もあって現実的のように感じられた。でもま あこれも現実なのだろう。公開は2019年1月12日より、東京 は新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『キックス』“Kicks” (2012年“Nani”という短編作品で多くの受賞に輝いている ジャスティン・ティッピング監督による長編デビュー作。憧 れのエア・ジョーダンを漸く手に入れた少年が、隣町の不良 グループに襲われてスニーカーを奪われ、強敵の手からそれ を取り返そうと奮闘する姿を、ロサンゼルスのスラム街の様 子や若者たちが熱中するスニーカー・カルチャーなどと共に 描く。主演は新人のジャーキング・ギロリー。他にもクリス トファー・メイヤー、クリストファー・ジョーダン・ウォー レスらフレッシュな顔ぶれが並ぶ。また2017年2月5日題名 紹介『ムーンライト』でオスカー受賞のマハーシャラ・アリ らが脇を固めている。基本的にはアメリカの悪ガキたちの話 なのだけれど、銃なども平気でぶっ放す割には物語に共感で きるところもあって、やり方は違ってもこれが若者なのだと 思わせてくれた。公開は12月1日より、東京は渋谷シネクイ ント他で全国順次ロードショウ。)
『マシュー・ボーン IN CINEMA シンデレラ』 “Matthew Bourne's Cinderella” (バレエ界の鬼才と称されるイギリスの振付師が、1946年に 発表されたプロコフィエフの楽曲に基づき、誰もが知る童話 の名作に挑んだ舞台。その全編を撮影した作品。物語の背景 は1941年のロンドン。ナチスドイツによる激しい空襲に怯え る人々は、そんな厳しい環境の許でも恋をし、未来への希望 を失っていなかった。そして主人公は、意地悪な継母の許で 使用人のような生活に甘んじていたが、そこに英国軍将校主 催の舞踏会の案内状が届く…。物語は童話に準えているが、 第2次大戦中という設定にはさすがに驚かされた。そこが鬼 才の真骨頂なのかもしれないが、最近のイギリス映画でこの 時代を懐かしむような作品が増えていると感じるのは、何か 背景があるのかな? その辺が僕には不明だと、全体的に違 和感の残る作品だった。でもまあそれなりに妖精らしき存在 や、魔法のようなものはあるのだが。公開は11月3日より、 東京はYEBISU GARDEN CINEMA他で全国順次ロードショウ。)
『TAXiダイヤモンド・ミッション』“Taxi 5” (1997年に第1作発表のリュック・ベッソン脚本、製作によ る人気カーアクションシリーズが、主人公らのキャスティン グを替えて装いも新たに帰ってきた。登場するのは抜群の検 挙率と運転技術を誇るが、スピード狂が祟ってパリ警察を追 われた刑事。彼はマルセイユ市警に配属されるが、そこでは フェラーリなどの高級車を操る連続宝石強奪事件が横行して いた。一方その町には運転技術の抜群に低いウーバー運転手 がいたが、実は彼は伝説のタクシー運転手ダニエルの甥で、 整備士である彼の姉の許にはプジョー407が再出馬を待って いた。そして強盗団の次の狙いが判明する。出演は、脚本監 督も兼ねるフランク・ガスタンビドと、彼の盟友のマリク・ ベンタルハ。またシリーズ脇役のベルナール・ファルシー、 エドゥアルド・モントートらがそれぞれ前作より階級を上げ て再登場している。公開は2019年1月18日より、日本語吹替 版も同時上映で全国ロードショウ。)
『愛と銃弾』“Ammore e malavita” (2012年10月紹介『宇宙人王さんとの遭遇』などのアントニ オ&マルコ・マネッティ兄弟の脚本監督による2018年ダヴィ ッド・ディ・ドナテッロ賞で最優秀作品賞など5部門受賞の 作品。イタリアの港町ナポリを舞台に、そこの水産市場を仕 切る顔役の犯罪に巻き込まれた看護師と、顔役に雇われた殺 し屋との激しい恋の顛末が、1983年『フラッシュダンス』の 主題歌のイタリア語版など多数のカンツォーネと共に描かれ る。因に楽曲は上記以外は新たに作曲されたようだが、ナポ リ音楽が基調とされたもので多分イタリア人にはそれなりに 伝わるものがあるのだろう。出演は2018年2月25日題名紹介 『いつだってやめられる』などのジャンパオロ・モレッリ、 ミュージカル女優のセレーナ・ロッシ。コメディだが社会性 などのテーマは面白い。でもちょっと人死が多いかな。公開 は2019年1月より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA、新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
『まぼろしの市街戦』“Le roi de coeur” (1966年、フィリップ・ド・ブロカ監督の名作が4Kリマス ターにより再公開される。物語の背景は第1次大戦末期のフ ランスの田舎町。敗走するドイツ軍はイギリス軍の侵攻を阻 止すべく町に大型の時限爆弾を仕掛け撤退する。その情報は パルチザンよってイギリス軍に伝えられるが、内容が不鮮明 で、フランス語の判る伝書鳩兵が確認に派遣される。ところ が住民も避難した街には精神病院から出てきた患者たちが思 い思いの生活を始めており、そこに来た主人公は「ハートの 王様」として敬われることになってしまう。そして時限爆弾 の期限は刻々と迫ってくるが…。出演はアラン・ベイツと、 ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド。戦争の愚かしさを極限まで 描き切ったような作品だ。なお今回の再上映はフランスでの オリジナル版だそうで、以前の日本公開版とは少し異なるそ うだが、50年前の記憶は定かでなかった。公開は10月27日よ り、東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
『それだけが、僕の世界』“그것만이 내 세상” (イ・ビョンホンと、2013年11月紹介『FLU』などのパク ・ジョンミン、それに2012年2月紹介『青い塩』などのユン ・ヨジョンの共演で、元ボクサーの兄とサヴァン症候群でピ アノに天分を持つ弟、その母親を描いたヒューマンドラマ。 主人公は元東洋チャンピオンにまで登り詰めたが、素行の問 題などでタイトルを剥奪され、40歳を過ぎて寝泊まりしてい たジムも追い出される。そんな彼が街で母親に再会し、生家 に帰ってくる。そこは母親と弟の2人暮らしだったが、弟の 世話に掛り切りの母親の姿は、17年前に彼が家を出る原因で もあった。それでも暮らし始めた主人公は徐々に弟の素晴ら しさに気付くが…。物語は有り勝ちかなとも思えるが、映画 はピアノ演奏をクライマックスに据えて実に巧みに作られて いる。しかもそこで演奏される曲が僕らでも判るようなクラ シックの名曲で、その盛り上がりも見事に描かれる。素晴ら しい作品だ。公開は12月28日より、全国ロードショウ。)
『この道』 (1918年『赤い鳥』創刊から100年を記念して製作された日 本童謡のルーツとされる北原白秋と山田耕筰との交流を描く 作品。物語は天才詩人とされるも姦通罪で逮捕されるなどの 北原と、ドイツで音楽を学び日本音楽に新風を呼び込もうと する山田の確執や友情。そこに戦争へと向かう当時の世相な どが描かれる。出演は大森南朋とEXILEのAKIRA。他に貫地谷 しほり、羽田美智子、松重豊、柳沢慎吾、松本若菜、小島藤 子、津田寛治、升毅、由紀さおり、安田祥子らが脇を固めて いる。監督は2017年4月16日題名紹介『八重子のハミング』 などの佐々部清。映画では大正14年のラジオ放送開始の様子 なども描かれ、ここでのラジオ塔の登場はマニア的には嬉し かったが、実際の設置は昭和5年からなのでちょっと勇み足 かな。後半の出征兵士のシーンでは正しいものだが。公開は 2019年1月11日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロ ードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
先週は風邪を引き、インフルエンザではなかったが、1週間 試写会に行けなかった。幸い月曜日が休日だったりしたので 見逃した本数は少なかったが、2本ほど最終試写に行けない 作品も出てしまった。 以前は風邪を引いても2、3日で復帰できたものだが、しか も今年は春先と2回目で、さすがにこれは寄る年波というと ころかな。 今後は出来るだけ気を付けますのでよろしくお願いします。
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